説明

車両用表示装置

【課題】 簡便な光学系によってドライバーの視点位置に基づいた表示光制御を行う両眼視差画像を表示することができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 液晶表示パネル30は、左目用画像及び右目用画像を時分割表示する。照明手段11は、左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rを有し、液晶表示パネル30を透過照明する照明光Lを発する。撮像手段35は、ドライバー36を撮像して撮像データを出力する。視点検出手段41は、撮像データに基づいてドライバー36の視点位置を検出して視点位置データを出力する。光軸制御手段21は、視点位置データに基づいて照明手段11からの照明光Lの光軸を変化させる。光軸制御手段21は、照明手段11からの照明光Lを反射させる一対の平行な反射部材22,23と、反射部材22,23を回動させる駆動部25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な映像を表示する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特殊な眼鏡を用いずに立体映像を表示する表示装置が種々提案されており、例えば特許文献1,特許文献2及び特許文献3に開示されている。斯かる表示装置は、左目用画像及び右目用画像を時分割で液晶表示パネルに表示させると共に、その左目用画像及び右目用画像に同期させて左目用光源及び右目用光源を発光させて、立体映像を表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−236561号公報
【特許文献2】特開2000−4452号公報
【特許文献3】特開2005−266553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示された表示装置では、回転光学系により照明光の光軸方向を変更しており、その照明光をフレネルレンズで拡散板へ平行光として入射させているため、回転光学系の角度に合わせたフレネルレンズの光線屈折設計が必要であり、光学的な設計が煩雑である。また、拡散板と回転光学系と光源との配置関係に制限があり、特に車両用ヘッドアップディスプレイ装置においては車両内の狭いスペースに筐体を埋め込むために配置の制限によって車両への搭載が困難になる場合があるという問題を有していた。
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、簡便な光学系によってドライバーの視点位置に基づいた表示光制御を行う両眼視差画像を表示することができる車両用表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、左目用画像及び右目用画像を時分割表示する液晶表示パネル30と、左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rを有し前記液晶表示パネル30を透過照明する照明光Lを発する照明手段11と、ドライバー36を撮像して撮像データを出力する撮像手段35と、前記撮像データに基づいて前記ドライバー36の視点位置を検出して視点位置データを出力する視点検出手段41と、前記視点位置データに基づいて前記照明手段11からの前記照明光Lの光軸を変化させる光軸制御手段21と、を備えた車両用表示装置であって、前記光軸制御手段21は、前記照明手段11からの前記照明光Lを反射させる一対の平行な反射部材22,23と、前記反射部材22,23を回動させる駆動部25と、を有するものである。
【0006】
また、本発明は、前記照明手段11は、前記左目用発光素子12Lと前記右目用発光素子12Rとの間に設けられた遮光部材14を有するものである。
【0007】
また、本発明は、前記視点位置データに基づいて前記液晶表示パネル30に表示する画像の視点位置を変換する制御手段40を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
視点検出手段から出力された視点位置データに基づいて、照明手段からの照明光の光軸を変化させることにより、ドライバーの視点位置に基づいた表示光制御を行うことができ、簡便な光学系によって両眼視差画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す概観図。
【図2】同上実施形態を示す要部拡大正面図。
【図3】同上実施形態を示す要部拡大正面図。
【図4】同上実施形態を示す要部拡大側面図。
【図5】同上実施形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態を説明する。
【0011】
11は照明手段であり、この照明手段11は、左目用発光素子12L,右目用発光素子12R,コンデンサレンズ13,遮光部材14,レンチキュラレンズ15,拡散板16を有している(図2参照)。左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rは発光ダイオードからなるものであり、左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rが発した光は、コンデンサレンズ13によって平行光にされる。コンデンサレンズ13から出射した光は、レンチキュラレンズ15及び拡散板16を介して、後述するミラーに入射する。遮光部材14は、左目用発光素子12Lと右目用発光素子12Rとの間に設けられている。
【0012】
21は光軸制御手段であり、この光軸制御手段21は、ミラー(反射部材)22,23,ミラーホルダ24,モータ(駆動部)25を有している。ミラー22,23は平面鏡からなるものであり、反射面22a,23aを向かい合わせて、ミラー22,23が平行になるように配置されている。モータ25の軸部25aは、ミラーホルダ24に連結されている。モータ25は、後述するモータ制御部により駆動され、ミラーホルダ24に固定されたミラー22,23を平行状態のままで回動させる。ミラー22,23は、回動軸Aに対して45度の角度でミラーホルダ24に配置されている。
【0013】
29は凸レンズであり、この凸レンズ29は、光軸制御手段21のミラー22,23で反射された照明光Lを集光させる。30は液晶表示パネルであり、この液晶表示パネル30は、左目用画像及び右目用画像を時間的に交互に表示する。液晶表示パネル30は、OCBモードの液晶表示素子からなるものである。31はコールドミラーであり、このコールドミラー31は、液晶表示パネル30から発せられた表示光を反射させ、後述する発光素子から発せられた赤外光を透過させる。
【0014】
32は凹面鏡であり、この凹面鏡32は表示光をフロントガラス33に投影するものである。35は撮像カメラ(撮像手段)であり、この撮像カメラ35はコールドミラー31,凹面鏡32及びウィンドシールド33を介して、ドライバー36を撮像する。37は発光素子であり、この発光素子37は赤外光を発し、コールドミラー31,凹面鏡32及びウィンドシールド33を介して、ドライバー36を照明する。撮像カメラ35及び発光素子37は、コールドミラー31の後側に配置されている。
【0015】
左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rが発した照明光Lは、コンデンサレンズ13によって平行光となる。コンデンサレンズ13から出射した光は、レンチキュラレンズ15及び拡散板16を通過し、ミラー22,23によって反射される。ミラー22,23によって反射された照明光Lは、凸レンズ29によって屈折し、液晶表示パネル30を透過して、コールドミラー31で反射された後、凹面鏡32で拡大されてフロントガラス33に投射される。凹面鏡32にて反射された表示光のうち、フロントガラス33で更に反射された表示光がドライバー36の左目36L及び右目36Rに届く。
【0016】
左目用発光素子12L及び右目用発光素子21Rは交互に点灯するものであり、左目用発光素子12Lが点灯している時には液晶表示パネル30に左目用画像を表示し、右目用発光素子12Rが点灯している時は液晶表示パネル30に右目用画像を表示する。液晶表示パネル30と、左目用発光素子12L及び右目用発光素子12Rとを同期して制御することにより、左目36L及び右目36Rに夫々異なる左目用画像及び右目用画像を映すことのできる光を照射することができ、立体映像をドライバー36に知覚させることができる。
【0017】
図5は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック部である。制御手段40は、視点検出処理部(視点検出手段)41,描画処理部42,時分割制御部43,モータ制御部44を有している。視点検出処理部41は、撮像カメラ35で得られた撮像データからドライバー36の視点位置を検出し、描画処理部42及びモータ制御部44に視点位置データを出力する。モータ制御部44は、前記視点位置データに基づき、ミラー22,23をモータ25によって回動させる。モータ25によって一対のミラー22,23が回動された場合、光軸制御手段21から出射する照明光Lは、平行移動する(図3参照)。
【0018】
描画処理部42は、視点検出処理部41で得られた視点位置データに基づいて、左目36Lと右目36R夫々の視点による画像を生成し、さらにフロントガラス33の湾曲形状に基づく投影時の歪み補正加工を行い、左右夫々の画像を液晶表示パネル30に時分割表示する。また、描画処理部42は、視点位置データに基づいて液晶表示パネル30に表示する画像の視点位置を変換する。ドライバー36は拡大された左目用虚像VLと右目用虚像VRとを見ることができ、奥行きのある立体虚像Vを知覚することができる。なお、液晶表示パネル30に表示させる左目用画像と右目用画像とを切り替える周期は左右夫々60Hz以上であることが望ましく、眼精疲労を防止することができる。
【0019】
本実施形態によれば、視点検出処理部41から出力された視点位置データに基づいて、照明手段11からの照明光Lの光軸を変化させることにより、ドライバー36の視点位置に基づいた表示光制御を行うと共に、立体虚像Vを表示することができる。なお、本実施形態は車両用ヘッドアップディスプレイ装置であったが、例えば、車両用計器装置であっても良い。
【符号の説明】
【0020】
11 照明手段
12L 左目用発光素子
12R 右目用発光素子
14 遮光部材
21 光軸制御手段
30 液晶表示パネル
35 撮像カメラ(撮像手段)
36 ドライバー
41 視点検出処理部(視点検出手段)
42 描画処理部
44 モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左目用画像及び右目用画像を時分割表示する液晶表示パネルと、左目用発光素子及び右目用発光素子を有し前記液晶表示パネルを透過照明する照明光を発する照明手段と、ドライバーを撮像して撮像データを出力する撮像手段と、前記撮像データに基づいて前記ドライバーの視点位置を検出して視点位置データを出力する視点検出手段と、前記視点位置データに基づいて前記照明手段からの前記照明光の光軸を変化させる光軸制御手段と、を備えた車両用表示装置であって、
前記光軸制御手段は、前記照明手段からの前記照明光を反射させる一対の平行な反射部材と、前記反射部材を回動させる駆動部と、を有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記左目用発光素子と前記右目用発光素子との間に設けられた遮光部材を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記視点位置データに基づいて前記液晶表示パネルに表示する画像の視点位置を変換する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−59270(P2011−59270A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207366(P2009−207366)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】