説明

車両用走行制御装置

【課題】運転者による頻繁なスイッチ操作を不要とし、燃費性能の向上、及び、運転者による駆動力の増加要求に対するレスポンスの向上の両立を図ることが可能な車両用走行制御装置を提供すること。
【解決手段】自車両の周辺環境に関する周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力の増加要求の可能性の有無を推定する駆動力増加要求推定手段56を備え、駆動力増加要求の可能性が有ると推定される場合に、駆動力の増加要求に備えてスタンバイ制御を実行し、駆動力増加要求の可能性が無いと推定される場合に、スタンバイ制御を抑制する。これにより、運転者によるスイッチ操作を不要として、燃費性能向上制御のON/OFFを自動的に切り換え、燃費性能の向上と、駆動力増加要求に対するレスポンスの向上との両立を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを備え、走行条件に応じてこれらの動力源を使い分けるハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなハイブリッド車両において、燃費を重視した走行を行う際に、エンジンを駆動させずにモータのみにより走行を行うものがある。
【特許文献1】特開2004−926655号公報
【特許文献2】特開2001−173773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、燃費性能の向上を重視した燃費向上制御を実行する場合、要求に応じた加速が制限されてしまい、運転者はドライバビリティの悪化を覚悟しなければならないといった問題があった。また、従来技術では、運転者のスイッチ操作に基づいて、燃費向上制御を選択するため、運転者が、燃費性能の向上とドライバビリティとの両立を望む場合にあっては、運転者によるスイッチ操作が増加して煩わしいといった問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、運転者による頻繁なスイッチ操作を不要とし、燃費性能の向上、及び、運転者による駆動力の増加要求に対するレスポンスの向上の両立を図ることが可能な車両用走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用走行制御装置は、自車両の駆動力を制御する駆動力制御手段を備えた車両用走行制御装置において、自車両の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得手段と、周辺環境情報取得手段によって取得された周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力の増加要求の可能性を推定する駆動力増加要求推定手段と、を備え、駆動力制御手段は、駆動力増加要求推定手段によって駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、駆動力を円滑に増加させるために準備するスタンバイ制御を実行し、駆動力増加要求推定手段によって駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、スタンバイ制御を抑制することを特徴としている。
【0006】
本発明に係る車両用走行制御装置によれば、自車両の周辺環境に関する周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力の増加要求の可能性の有無を推定する駆動力増加要求推定手段を備えているため、駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、駆動力の増加要求に備えてスタンバイ制御を実行することで、レスポンスの向上を図ることができ、駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、スタンバイ制御を抑制することで、不必要な動力を削減して燃費性能の向上を図ることができる。これにより、従前のような運転者によるスイッチ操作(入力操作)を不要として、燃費性能の向上を重視した走行制御のON/OFFを自動的に切り換えることができ、燃費性能の向上と、運転者による駆動力の増加要求に対するレスポンスの向上との両立を図ることができる。
【0007】
ここで、スタンバイ制御は、自車両の最大駆動力を発生させるために準備する制御であり、周辺環境情報手段は、周辺環境情報として、先行車の有無に関する情報を取得し、駆動力増加要求推定手段は、先行車が存在する場合に、駆動力の増加要求の可能性が無いと推定し、駆動力制御手段は、駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、スタンバイ制御を中止することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る車両用走行制御装置では、駆動力制御手段は、駆動力の上限に制限を加えることで、通常時より燃費性能の向上を重視した燃費向上制御を行う駆動力制限手段と、運転者の前記駆動力の増加要求に応じて、駆動力制限手段による制限を変更する駆動力制限変更手段と、を更に備える構成とすることが好適である。このように、燃費向上制御では、制限量を設定して駆動力の上限を制限することで、通常走行と比較して燃費性能の向上を重視した走行を実現することができる。
【0009】
また、先行車を追従する追従制御を実行する追従制御手段を備え、駆動力制御手段は、追従制御実行中、且つ、燃費向上制御実行中に、駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、燃費向上制御を加速動作開始前に解除することが好ましい。
【0010】
また、先行車との車間距離が所定の距離以上である状態が、所定の時間以上継続していることを確認するための時間を確認時間とし、駆動力制御手段は、確認時間の経過を待たずに燃費向上制御を解除することが好適である。通常の追従制御では、先行車を検出するセンサ(周辺環境取得手段)が先行車を見失った場合において、安全マージンを確保して、すぐには、先行車が未検出であると判定しないようにしている。先行車に関する情報(周辺環境情報)に対して安全マージンを確保することなく(確認時間の経過を待たずに)、すぐに、先行車としての設定を解除し、駆動力の制限量の大きさを通常状態に迅速に復帰させることが可能となる。そのため、燃費性能の向上と、駆動力のレスポンスの向上との両立を図ることができる。
【0011】
また、駆動力制限変更手段は、追従制御が実行中である場合に、追従制御が実行中ではない場合と比較して、駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを大きくする構成とすることが好ましい。追従制御が実行されている場合には、より大きな駆動力が要求される可能性が低いため、追従制御実行中において、駆動力の制限量の大きさを大きくすることで、燃費の向上を図ることができる。
【0012】
また、駆動力制限変更手段は、周辺環境情報に基づいて、自車両が停止中に自車両の前方に障害物があると判定された場合に、自車両が停止中に自車両の前方に障害物があると判定されなかった場合と比較して、駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを大きくする構成とすることが好適である。停止中の自車両の前方に障害物が存在する場合には、運転者が駆動力の増加を要求する可能性が低いため、駆動力の制限量の大きさを大きくすることで、燃費の向上を図ることができる。
【0013】
また、自車両が前方の他車両を追い越そうとしているか否かを判定する追越判定手段を備え、駆動力制限変更手段は、追越判定手段によって、他車両を追い越そうとしていると判定された場合に、他車両を追い越そうとしていると判定されなかった場合と比較して、駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを小さくすることが好ましい。これにより、自車両が他車両を追い越そうとしている場合に、駆動力の制限量の大きさを小さく変更することで、追越時における駆動力の増加に迅速に対応することができる。そのため、燃費の向上と、駆動力のレスポンスの向上との両立を図ることができる。
【0014】
また、自車両は駆動源としてモータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であり、スタンバイ制御は、自車両がモータによる動力のみを利用して、設定された設定車速以上で走行している場合に、駆動力の増加要求に備えて予めエンジンを始動させておくエンジンスタンバイ制御であることが好ましい。
【0015】
また、自車両は駆動源としてモータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であり、スタンバイ制御は、駆動力増加要求に備えてモータへの供給電圧を予め昇圧させておく昇圧制御であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運転者による頻繁なスイッチ操作を不要とし、燃費性能の向上、及び、運転者による駆動力の増加要求に対するレスポンスの向上の両立を図ることが可能な車両用走行制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による車両用走行制御装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成図、図2は、本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置のブロック構成図である。
【0018】
本実施形態に係る車両用走行制御装置10は、図1及び図2に示すように、例えば、車両を推進させる駆動力を発生させる動力源としてエンジン(内燃機関)12及び電動モータ(電動機)14を備えたハイブリッド車両100(以下、「自車両」という。)に搭載され、自車両100の走行を制御するものである。
【0019】
自車両100には、動力分配機構16、発電機18、パワーコントロールユニット20、及びハイブリッド用バッテリ22(以下、「HVバッテリ」という。)が設けられている。そして、車両用走行制御装置10は、上記したエンジン12、電動モータ14、動力分配機構16、発電機18、パワーコントロールユニット20、及びHVバッテリ22と電気的に接続されたハイブリッド電子制御ユニット(以下、「HV−ECU」という。)40を備えている。
【0020】
エンジン12は、例えば6気筒4サイクルガソリンエンジンであり、HV−ECU(図2参照)40からの制御信号によって、スロットル制御、燃料噴射制御、点火時期制御、可変バルブタイミング制御等が実行され、エンジン出力が制御される。
【0021】
電動モータ14は、例えば交流同期型のモータであり、後述するモータージェネレータECU(以下、「MG−ECU」という。)34からの制御信号によって、回転数が制御され、モータ出力が制御される。また、電動モータ14は、自車両100の減速時において、発電機として機能し、発電された電力は、HVバッテリ22に充電される。そして、エンジン12及び電動モータ14によって出力された駆動力は、減速機24を介して駆動輪26に伝達されて、自車両100を推進させる。
【0022】
動力分配機構16は、エンジン12の出力軸に接続され、エンジン出力を分配するものである。分配された一方のエンジン出力は、駆動輪26を駆動する動力として使用され、他方のエンジン出力は、発電機18を駆動する動力として使用される。そして、動力分配機構16では、動力の分配割合(使用割合)を自在に制御することができる。
【0023】
発電機18は、例えば交流同期型の発電機であり、上述したように、動力分配機構16を介して、エンジン出力が伝達され発電を行う。発電機18によって発電された電力は、パワーコントロールユニット20に供給され、電動モータ14の駆動電力と利用されるとともに、HVバッテリ22に充電される。
【0024】
パワーコントロールユニット20は、インバータ28、昇圧コンバータ30、DC/DCコンバータ32、MG−ECU34を有し、電動モータ14、発電機18、HVバッテリ22、及びHV−ECU40と電気的に接続されている。
【0025】
MG−ECU34は、HV−ECU40からの制御信号に従い、インバータ28及び昇圧コンバータ30を作動させる。昇圧コンバータ30は、HV−ECU40からの要求に従い、電動モータ14の動作状況に応じてインバータ入力電圧を昇圧する。インバータ28は、入力された直流電圧を電動モータ14用の交流電流に変換する。
【0026】
また、MG−ECU34は、HV−ECU40からの制御信号に従い、電動モータ14の出力制御を行うとともに、インバータ28からの出力電流値、インバータ温度、電圧など車両制御に必要な情報をHV−ECU40に送信する。
【0027】
次に、HV−ECU40について説明する。このHV−ECU40は、通常走行時より燃費性能の向上を重視した走行を実現する燃費向上制御を選択可能とするものである。HV−ECU40では、自車両100の周辺環境に応じて、自動的に燃費向上制御のON/OFFの切り替えを行うことができる。すなわち、自車両100では、燃費向上制御がON状態であるときに実行される燃費重視走行モードと、燃費向上制御がOFF状態であるときに実行される通常走行モードとが、運転者によるスイッチ操作無しで、自動的に切り替え可能な構成とされている。
【0028】
HV−ECU40は、上記したエンジン12、電動モータ14、発電機18、パワーコントロールユニット20、HVバッテリ22の他に、自車速を検出する車速センサ42、自車両100の周辺の障害物を検出可能なミリ波レーダ44、自車両100の方向指示器の作動状態を検出する方向指示器検出センサ46などの各種センサと電気的に接続されている。また、HV−ECU40は、ブレーキ制御を行うコンピュータを始めとしたその他のコンピュータと、例えばCAN(Control Area Network)などの通信回路で接続されることにより、相互にデータ交換が可能な構成とされている。
【0029】
HV−ECU40は、アクセル開度、シフトポジション、および各種センサからの信号によって自車両100の運転状態に応じたエンジン出力およびモータ出力を求め、各コンピュータに要求値を出力することで、自車両100の駆動力を制御する。
【0030】
車両用走行制御装置10では、エンジン12の動力を機械的に駆動輪26に伝達して走行する制御、エンジン12を停止し電動モータ14の動力のみを利用して走行する制御、エンジン12および電動モータ14の動力を駆動輪26に伝達して走行する制御、エンジン12の動力を発電機18に伝達して発電を行う制御、減速時に電動モータ14によって発電し、エネルギ回収を行う制御が実行可能とされている。そして、燃費向上制御では、例えば、エンジン12を停止し電動モータ14の動力のみを利用して走行する制御が実行される。
【0031】
HV−ECU40は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROMおよびRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。HV−ECU40では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、周辺環境情報取得部52、追従制御部54、駆動力増加要求推定部56、駆動力制御部58、駆動力制御変更部62、追越判定部64、エンジンスタンバイ制御部66、昇圧電圧降下制御部68が構築されている。
【0032】
周辺環境情報取得部52は、ミリ波レーダ44からの情報に基づいて、自車両100の周辺に存在する障害物に関する情報(周辺環境情報)を取得する。また、周辺環境情報取得部52は、車速センサ42、ミリ波レーダ44からの情報に基づいて、自車両100前方の障害物の位置、障害物と自車両100との相対速度、障害物と自車両100との距離などの周辺環境情報を取得する。なお、ここで言う「障害物」とは、自車両100の進行の妨げとなるおそれのあるものであり、例えば、他車両、歩行者等が含まれる。
【0033】
追従制御部54は、周辺環境情報取得部52によって取得された周辺環境情報に基づいて、追従制御の対象となる先行車を設定する。追従制御部54では、先行車を設定するための先行車設定条件が成立しているか否かを判定し、先行車設定条件が成立している場合には、先行車を設定し、設定された先行車を追従する追従制御を実行する。
【0034】
「先行車設定条件」としては、他車両の位置、他車両と自車両100との車間距離に関するものがある。追従制御部54では、所定の設定範囲内に他車両が存在する場合に、他車両を先行車として設定する。また、「先行車設定条件」には、時間的要素が含まれている。すなわち、他車両が設定範囲内に、予め設定された設定時間「t」存在している場合に、他車両を先行車として設定される。
【0035】
また、追従制御部54では、先行車設定条件が成立しなくなった場合に、先行車としての設定を解除する先行車設定解除手段として機能する。追従制御部54は、通常走行モードにおいて、時間的なヒステリズム(ミリ波レーダが先行車を見失っても、先行車としての設定を継続するための許容範囲、安全マージン;確認時間)を確保し、先行車としての設定が直ぐに解除しないようにしている。そして、追従制御部54は、燃費重視走行モードにおいて、確認時間の経過を待たずに(安全マージンを確保することなく)、先行車としての設定が直ぐ解除されるようにしている。これにより、先行車を追従している追従制御中の駆動力を制限する制限量を、直ぐに、緩和させることができ、追従制御実行中における燃費性能の向上を図りつつ、駆動力の応答性能の向上を図ることができる。すなわち、追従制御における燃費向上制御を迅速に解除して、運転者による駆動力の増加要求に迅速に対応することができる。
【0036】
駆動力増加要求推定部56は、周辺環境情報取得部52によって取得された周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力の増加要求(以下、「駆動力増加要求」という。)の可能性の有無を推定する。例えば、先行車との車間距離が短い場合、自車両の直前に障害物が存在する場合に、駆動力増加要求の可能性が無いと推定する。また、先行車が存在しない場合、先行車と車間距離が十分に長い場合、先行車の追い越しが可能な状態である場合に、駆動力増加要求の可能性が有ると推定する。また、推定された要求駆動力に基づいて、駆動力増加要求の可能性の有無を推定することができる。
【0037】
駆動力制御部58は、駆動力増加要求推定部56によって駆動力増加要求の可能性が有ると推定された場合に、通常走行制御(通常走行モード)を選択する一方、駆動力増加要求の可能性が無いと推定された場合に、燃費向上制御(燃費重視走行モード)を選択する。駆動力制御部58では、選択された制御(走行モード)に応じて、エンジン12及び電動モータ14を作動させて、自車両100の駆動力を制御する。また、駆動力制御部58は、自車両100の駆動力の上限に制限を加える本発明の駆動力制御手段として機能する。駆動力制御部58は、燃費重視走行モードにおいて、駆動力上限値を設定し、駆動力上限値を超えないように駆動力制御を実行する。
【0038】
駆動力制御部58は、周辺環境情報取得部52によって取得された周辺環境情報に基づいて、自車両100の運転者が要求する駆動力である要求駆動力を推定する。駆動力制御部58では、例えば、自車両100前方の他車両/障害物に接触せず、かつ他車両/障害物へ接近する際に自車両100の乗員に恐怖を生じさせないような駆動力(必要駆動力)の最大値を要求駆動力として算出する。
【0039】
また、駆動力制御部58では、例えば、先行車(他車両)と自車両100との車間距離が近いほど、より小さい値となるように要求駆動力を算出し、自車速が低いほど、より小さい値となるように要求駆動力を算出する。また、駆動力制御部58では、先行車に対する相対速度(自車両前方を正方向とする)が小さいほど、より小さい値となるように要求駆動力を算出する。また、駆動力制御部58では、先行車の横位置(車幅方向の位置)が自車両100に近いほど、より小さい値となるように要求駆動力を算出し、先行車の横速度の絶対値が小さいほど、より小さい値となるように要求駆動力を算出する。自車両100の正面から先行車が離れていく場合には、より大きい値となるように要求駆動力を算出する。
【0040】
図3は、車間距離と要求駆動力との関係の一例を示すマップである。図3では、横軸に自車両100と先行車との車間距離を示し、縦軸に、要求駆動力を示し、実線で示す必要駆動力線Gが車間距離と要求駆動力との関係を示している。車間距離が0〜dまでの範囲では、必要駆動力線Gは、車間距離に比例し、車間距離が基準値dを超える範囲ではでは、必要駆動力線Gは、最大駆動力Fmaxとなる。なお、最大駆動力Fmaxは、車両100の最大の駆動力である。
【0041】
図4は、相対速度と要求駆動力との関係の一例を示すマップである。図4では、横軸に先行車に対する相対速度を示し、縦軸に、要求駆動力を示し、実線で示す必要駆動力線Gが相対速度と要求駆動力との関係を示している。相対速度がvより小さい範囲では、必要駆動力線Gは、一定の値となり、相対速度がv〜v(v<0<v)までの範囲では、必要駆動力線Gは、相対速度に比例し、相対速度がvより大きい範囲では、必要駆動力線Gは、最大駆動力Fmaxとなる。
【0042】
駆動力制御変更部62は、駆動力制御部58によって推定された要求駆動力が、燃費重視走行モードでは達成できない大きさである場合に、燃費重視走行モードを一時的に実行中止とし、要求駆動力に基づいて駆動力制御部58による制御内容を変更する。駆動力制御変更部62は、要求駆動力が駆動力上限値を超える場合に、燃費向上制御を解除して燃費重視走行モードから通常走行モードへの切替を行い、燃費重視走行モードで設定されていた駆動力上限値を変更して、要求駆動力を達成できるように制御内容を変更させる本発明の駆動力制限変更手段として機能する。
【0043】
また、駆動力制御変更部62は、追従制御が実行中である場合に、追従制御が実行中ではない場合と比較して、駆動力の制限量の大きさを大きくする。これにより、駆動力制御部58は、追従制御が実行中である場合に、駆動力上限値を通常時より低く設定することで、燃費重視走行モードにおける燃費性能を向上させる。
【0044】
また、駆動力制御変更部62は、自車両100が停止中であり、かつ自車両100の前方に障害物がある場合に、自車両100が停止中で、かつ自車両100の前方に障害物がない場合と比較して、駆動力の制限量の大きさを大きくする。これにより、駆動力制御部58は、停止中の自車両100の前方に障害物がある場合に、駆動力上限値を通常時より低く設定することで、燃費重視走行モードにおける燃費性能を向上させる。
【0045】
追越判定部64は、方向指示器検出センサ46からの情報に基づいて、自車両100が先行車を追い越そうとしているか否かを判定する。追越判定部64では、方向指示器が作動状態である場合に、自車両100が他車両を追い越そうとしていると判定する。なお、追越判定部において、ステアリング操作に基づいて追越判定を行ってもよい。
【0046】
また、駆動力制御変更部62は、自車両100が他車両を追い越そうとしていると判定された場合に、そうではない場合と比較して、駆動力の制限量の大きさを小さくする。これにより、駆動力制御部58は、追越操作に応じて、駆動力上限値を高く変更し、レスポンスを向上させる。
【0047】
エンジンスタンバイ制御部66は、自車両100が電動モータ14による動力のみを利用して(HVバッテリ22からの電力を用いて)設定された設定車速(例えば65km/h)以上で走行している場合に、駆動力増加要求に備えて予めエンジン12を始動させておくエンジンスタンバイ制御を実行する。
【0048】
エンジンスタンバイ制御部66では、駆動力増加要求推定部56によって駆動力増加要求の可能性が有ると推定された場合に、エンジンスタンバイ制御を実行可能とする一方、駆動力増加要求の可能性が無いと推定された場合に、エンジンスタンバイ制御を中止(抑制)する。例えば、エンジンスタンバイ制御実行中(エンジン始動中)に駆動力増加要求の可能性が無いと推定された場合には、エンジン12を停止させる。これにより、不必要な動作を削減することで、燃費性能の向上が図られる。
【0049】
昇圧電圧制御部68は、駆動力増加要求に備えて電動モータ14への供給電圧を予め昇圧させておく昇圧制御を実行する。昇圧電圧制御部68では、駆動力増加要求推定部56によって駆動力増加要求の可能性が有ると推定された場合に、昇圧制御を実行可能とする一方、駆動力増加要求の可能性が無いと推定された場合に、昇圧制御による昇圧電圧を降下する昇圧電圧降下制御を実行することで、昇圧制御を抑制する。例えば、昇圧制御実行中に駆動力増加要求の可能性が無いと推定された場合には、昇圧コンバータによる昇圧電圧を降下させる。これにより、昇圧コンバータにおける熱損失を低減させることで、燃費性能の向上が図られる。
【0050】
次に、車両用走行制御装置10で実行される制御処理について図5〜図9のフローチャートに沿って説明する。図5は、本発明の実施形態に係る駆動力制御処理を示すフローチャート、図6は、本発明の実施形態に係る駆動力上限値設定処理を示すフローチャートである。まず、HV−ECU40は、例えば、ミリ波レーダ44から信号を受信して、周辺環境情報を取得する(S1)。また、HV−ECU40は、車速センサ42、方向指示器検出センサ46を始めとした各種センサから信号を受信する。
【0051】
次に、HV−ECU40は、燃費重視走行モードであるか否かを判定する(S2)。ここでは、取得された周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力増加要求の可能性の有無を判定し、駆動力増加要求の可能性が無いと判定された場合に、燃費重視走行モードであると判定して、ステップ3に進み、駆動力増加要求の可能性が有ると判定された場合に、燃費重視走行モードであると判定せず、ステップ7に進む。
【0052】
ステップ3では、HV−ECU40は「駆動力上限値設定処理」を実行する。ここでは、図6に示す処理を実行する。HV−ECU40は、ステップ11に進み、車速センサ42からの情報に基づいて、自車両100が停止中であるか否かを判定する。自車速が0km/hである場合には、自車両100が停止中であると判定し、ステップ12に進む。一方、自車両100が停止中であると判定されなかった場合には、ステップ15に進む。
【0053】
ステップ12では、HV−ECU40は、周辺環境情報に基づいて、自車両100の前方に障害物を検出したか否か判定する。自車両100の前方に障害物を検出しなかった場合には、ステップ13に進み、駆動力の制限量L1を設定して駆動力上限値T1を設定する。一方、自車両100の前方に障害物を検出した場合には、ステップ14に進み、駆動力の制限量L2(>L1)を設定して駆動力上限値T2(<T1)を設定する。すなわち、自車両100の前方に他車両等の障害物が存在する場合には、障害物が存在しない場合と比較して、駆動力の上限を制限する制限量を大きくする(駆動力上限値を低く設定する)。なお、自車両100と障害物との距離に駆動力上限値を比例させてもよい。ステップ13,14終了後、駆動力上限値設定処理を終了し、図5のステップ4に進む。
【0054】
ステップ15では、HV−ECU40は、自車両100が追従制御を実行中であるか否かを判定する。追従制御実行中ではない場合には、ステップ16に進み、駆動力の制限量L3を設定して駆動力上限値T3を設定する。一方、追従制御実行中である場合には、ステップ17に進み、駆動力の制限量L4(>L3)を設定して駆動力上限値T4(<T3)を設定してステップ18に進む。すなわち、自車両100が追従制御実行中である場合には、追従制御実行中ではない場合と比較して、駆動力の上限を制限する制限量を大きくする(駆動力上限値を低く設定する)。ステップ16終了後、駆動力上限値設定処理を終了し、図5のステップ4に進む。
【0055】
ステップ18では、自車両100の方向指示器の動作状態に基づいて、先行車を追い越そうとしているか否かを判定する。方向指示器がON状態である場合には、先行車を追い越そうとしていると判定し、ステップ19に進み、方向指示器がOFF状態である場合には、先行車を追い越そうとしていると判定せずに、駆動力上限値設定処理を終了し、図5のステップ4に進む。
【0056】
ステップ19では、HV−ECU40は、駆動力の制限量をL4からL3に変更し、駆動力上限値をT4からT3へ変更する。すなわち、HV−ECU40は、運転者による運転操作に基づいて、駆動力の増加要求を予測して、駆動力の制限量を小さく変更することで、運転者の駆動力増加要求へのレスポンスを向上させる。ステップ19終了後、駆動力上限値設定処理を終了し、図5のステップ4に進む。
【0057】
次に、HV−ECU40は、図5の駆動力制御処理のステップ4に復帰する。ステップ4では、HV−ECU40は、周辺環境情報に基づいて、要求駆動力を推定する。ここでは、例えば、記憶部に記憶されたマップ(図3,4参照)に従い、要求駆動力を算出する。
【0058】
続くステップ5では、HV−ECU40は、要求推定駆動力が駆動力上限値より大きいか否かを判定する。すなわち、要求推定駆動力と駆動力上限値を比較することで、運転者が燃費重視走行モードでは達成できない駆動力を要求しているか否かを判定する。要求駆動力>駆動力上限値ではない場合には、ステップ6に進み、要求駆動力>駆動力上限値である場合には、ステップ7に進む。
【0059】
ステップ6では、HV−ECU40は、燃費重視走行モードを継続して、駆動力上限値を超えないように駆動力制御を行う。ステップ7では、HV−ECU40は、通常走行モードを選択して、駆動力制御を行う。ここでは、燃費重視走行モードにおける駆動力上限値の設定を解除して、通常走行を行う。これにより、燃費重視走行モードにおいて、達成できない駆動力が運転者によって要求された場合に、燃費重視走行モードを一時的に解除して、要求駆動力に基づく駆動力制御を実行することができる。
【0060】
すなわち、ステップ5では、周辺環境情報に基づいて、要求駆動力を推定し、推定された要求駆動力に応じて、駆動力増加要求の可能性の有無を判定する。要求推定駆動力>駆動力上限値である場合に、駆動力の増加要求の可能性が有ると判定し、ステップ7に進み燃費向上制御を解除して、通常走行モードを選択する。一方、要求推定駆動力>駆動力上限値ではない場合に、駆動力の増加要求の可能性が無いと判定し、ステップ6に進み燃費向上制御を実行する。
【0061】
次に、追従制御における先行車設定解除処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。まず、HV−ECU40は、追従制御実行中であるか否かを判定する(S21)。追従制御実行中である場合には、ステップ22に進み、追従制御実行中ではない場合には、先行車設定解除処理を終了する。
【0062】
ステップ22では、HV−ECU40は、取得された周辺環境情報に基づいて、燃費重視走行モードであるか否かを判定する。燃費重視走行モードである場合には、ステップ23に進み、燃費重視走行モードではない場合には、ステップ24に進む。
【0063】
ステップ23では、HV−ECU40は、設定解除時間に「0」を設定し、ステップ24では、設定解除時間に「t」を設定し、ステップ25に進む。ステップ25では、HV−ECU40は、周辺環境情報に基づいて、先行車設定条件が成立しているか否かを判定する。先行車設定条件が成立している場合には、先行車としての設定を解除することなく、先行車設定解除処理を終了する。一方、先行車設定条件が成立していない場合には、ステップ26に進む。
【0064】
ステップ26では、HV−ECU40は、ステップ23,24で設定された設定解除時間が経過したか否か判定する。設定解除時間が経過した場合には、ステップ27に進み先行車としての設定を解除して、先行車設定解除処理を終了する。設定解除時間が経過していない場合には、ステップ25,26の処理を繰り返し、設定解除時間の経過を待って、先行車としての設定を解除する。
【0065】
先行車設定解除処理では、燃費重視走行モードが選択されている場合、設定解除時間が0に設定され、確認時間の経過を待たずに(安全マージンを確保することなく)先行車としての設定が解除される。そのため、図6の駆動力上限値設定処理で設定される駆動力上限値がT4からT3に変更される(駆動力の制限量が小さく変更される)。これにより、燃費性能の向上を図りつつ、レスポンスを向上させる。なお、ステップ27において、先行車としての設定を解除する際に、燃費重視走行モードから通常走行モードへ変更することで、駆動力の制限量を解除してもよい。
【0066】
次に、HV−ECU40で実行されるエンジンスタンバイオフ実行判定処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、HV−ECU40は、電動モータ14の動力のみを利用した走行中であるか否かを判定する(S31)。自車両100が電動モータ14のみで走行中である場合には、ステップ32に進み、自車両100がエンジン12の動力を利用して走行中である場合には、エンジンスタンバイオフ実行判定処理を終了する。
【0067】
ステップ32では、HV−ECU40は、車速センサ42からの信号に基づいて、自車速を算出し、ステップ33に進む。続く、ステップ33では、HV−ECU40は、自車速が設定車速(例えば、例えば65km/h)以上であるか否かを判定する。自車速が設定車速以上である場合には、ステップ34に進み、自車速が設定車速以上ではない場合には、エンジンスタンバイオフ実行判定処理を終了する。
【0068】
ステップ34では、HV−ECU40は、取得された周辺環境情報に基づいて、燃費重視走行モードであるか否かを判定し、燃費重視走行モードである場合には、ステップ36に進み、燃費重視走行モードではない場合には、ステップ35に進む。
【0069】
ステップ35では、HV−ECU40は、エンジンスタンバイ制御を実行すると判定し、運転者の駆動力増加要求に備えて予めエンジン12を始動させておくエンジンスタンバイ制御を実行する。ステップ36では、HV−ECU40は、エンジンスタンバイ制御を実行すると判定せず、エンジン12を予め始動させないエンジンスタンバイオフ制御を実行する。ステップ35,36実施後、エンジンスタンバイオフ実行判定処理を終了する。
【0070】
すなわち、ステップ34では、周辺環境情報に基づいて、駆動力増加要求の可能性の有無を判定する。例えば、先行車が存在しない場合(先行車との車間距離が長い場合)には、駆動力の増加要求の可能性が有ると判定し、ステップ35に進みエンジンスタンバイ制御を実行する。一方、先行車が存在する場合には、駆動力の増加要求の可能性が無いと判定し、ステップ36に進み、エンジンスタンバイ制御を解除(抑制)する。
【0071】
次に、昇圧電圧降下実行判定処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。HV−ECU40は、取得された周辺環境情報に基づいて、燃費重視走行モードであるか否かを判定し(S41)、燃費重視走行モードである場合には、ステップ43に進み、燃費重視走行モードではない場合には、ステップ42に進む。
【0072】
ステップ42では、HV−ECU40は、昇圧電圧にV1を設定して、パワーコントロールユニット20に制御信号を送信する。パワーコントロールユニット20は、電動モータ14に供給する電圧がV1となるように昇圧電圧制御を行う。
【0073】
ステップ43では、HV−ECU40は、昇圧電圧にV2(<V1)を設定して、パワーコントロールユニット20に制御信号を送信する。パワーコントロールユニット20は、電動モータ14に供給する電圧がV2となるように昇圧電圧降下制御を行う。
【0074】
すわなち、ステップ41では、周辺環境情報に基づいて、駆動力増加要求の可能性の有無を判定する。駆動力の増加要求の可能性が有ると判定された場合には、ステップ42に進み昇圧電圧制御を実行する。一方、駆動力の増加要求の可能性が無いと判定された場合には、ステップ43に進み昇圧電圧を降下させる。
【0075】
このような車両用走行制御装置10では、自車両100の周辺環境に関する周辺環境情報に基づいて、運転者による駆動力の増加要求の可能性の有無を推定する駆動力増加要求推定部56を備えているため、駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、駆動力の増加要求に備えてエンジンスタンバイ制御、昇圧電圧制御を実行することで、レスポンスの向上を図ることができ、駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、エンジンスタンバイ制御、昇圧電圧制御を抑制することで、不必要な動力を削減して燃費性能の向上を図ることができる。これにより、従前のような運転者によるスイッチ操作(入力操作)を不要として、燃費性能の向上を重視した走行制御のON/OFFを自動的に切り換えることができ、燃費性能の向上と、運転者による駆動力の増加要求に対するレスポンスの向上との両立を図ることができる。車両用走行制御装置10によれば、先行車が存在する場合に、燃費向上制御が自動的に選択され、エンジンスタンバイ制御、昇圧電圧制御を中止することができる。
【0076】
また、車両用走行制御装置10では、追従制御実行中、且つ、燃費向上制御実行中に、駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、確認時間の経過を待たずに、加速動作開始前に、燃費向上制御を解除することができるため、燃費向上制御実行中における駆動力の制限量の大きさを通常状態に迅速に復帰させることができる。そのため、燃費性能の向上と、駆動力のレスポンスの向上との両立を図ることができる。
【0077】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、燃費重視走行モードにおいて、電動モータ14の動力のみを利用して、自車両100を推進させる駆動力を発生させてもよく、エンジン12および電動モータ14の動力を利用して、自車両100を推進させる駆動力を発生させても良い。要は、燃費重視走行モードでは、通常走行時より燃費性能の向上を重視した走行を実行可能であればよい。
【0078】
また、周辺環境情報に基づく駆動力増加要求の可能性の推定において、先行車を検出した場合、自車両前方に障害物を検出した場合に、駆動力増加要求の可能性が無いと推定してもよい。また、周辺環境情報として、例えば、信号サイクル情報、渋滞情報、車々間通信による他車両の情報、路車間通信による情報などに基づいて、駆動力増加要求の可能性の有無を推定してもよい。また、周辺環境情報に基づいて、自車両が加速可能な状態である場合に、駆動力増加要求の可能性が有ると推定し、自車両が加速不可能な状態である場合に、駆動力増加要求の可能性が無いと推定してもよい。
【0079】
また、スタンバイ制御は、自車両の最大駆動力を発生させるために準備する制御でもよく、駆動力の増加要求の可能性が無い場合に、当該スタンバイ制御を中止する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用走行制御装置のブロック構成図である。
【図3】車間距離と要求駆動力との関係の一例を示すマップである。
【図4】相対速度と要求駆動力との関係の一例を示すマップである。
【図5】本発明の実施形態に係る駆動力制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る駆動力上限値設定処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る先行車設定解除処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係るエンジンスタンバイオフ実行判定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る昇圧電圧降下実行判定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
10…車両用走行制御装置、12…エンジン(内燃機関)、14…電動モータ(電動機)、16…動力分配機構、18…発電機、20…パワーコントロールユニット、22…ハイブリッド用バッテリ、24…減速機、26…駆動輪、28…インバータ、30…昇圧コンバータ、32…DC/DCコンバータ、34…モータージェネレータECU、40…ハイブリッドECU、42…車速センサ、44…ミリ波レーダ、46…方向指示器検出センサ、52…周辺環境情報取得部、54…追従制御部、56…駆動力増加要求推定部、58…駆動力制御部、62…駆動力制御変更部、64…追越判定部、66…エンジンスタンバイ制御部、68…昇圧電圧制御部、100…自車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の駆動力を制御する駆動力制御手段を備えた車両用走行制御装置において、
自車両の周辺環境に関する情報である周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得手段と、
前記周辺環境情報取得手段によって取得された前記周辺環境情報に基づいて、運転者による前記駆動力の増加要求の可能性を推定する駆動力増加要求推定手段と、を備え、
前記駆動力制御手段は、
前記駆動力増加要求推定手段によって前記駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、前記駆動力を円滑に増加させるために準備するスタンバイ制御を実行し、
前記駆動力増加要求推定手段によって前記駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、前記スタンバイ制御を抑制することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
前記スタンバイ制御は、自車両の最大駆動力を発生させるために準備する制御であり、
前記周辺環境情報手段は、前記周辺環境情報として、先行車の有無に関する情報を取得し、
前記駆動力増加要求推定手段は、先行車が存在する場合に、前記駆動力の増加要求の可能性が無いと推定し、
前記駆動力制御手段は、前記駆動力の増加要求の可能性が無いと推定される場合に、前記スタンバイ制御を中止することを特徴とする請求項1記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
前記駆動力制御手段は、
駆動力の上限に制限を加えることで、通常時より燃費性能の向上を重視した燃費向上制御を行う駆動力制限手段と、
運転者の前記駆動力の増加要求に応じて、前記駆動力制限手段による前記制限を変更する駆動力制限変更手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用走行制御装置。
【請求項4】
先行車を追従する追従制御を実行する追従制御手段を備え、
前記駆動力制御手段は、前記追従制御実行中、且つ、前記燃費向上制御実行中に、前記駆動力の増加要求の可能性が有ると推定される場合に、前記燃費向上制御を加速動作開始前に解除することを特徴とする請求項3記載の車両用走行制御装置。
【請求項5】
前記先行車との車間距離が所定の距離以上である状態が、所定の時間以上継続していることを確認するための時間を確認時間とし、
前記駆動力制御手段は、前記確認時間の経過を待たずに前記燃費向上制御を解除することを特徴とする請求項4記載の車両用走行制御装置。
【請求項6】
前記駆動力制限変更手段は、前記追従制御が実行中である場合に、前記追従制御が実行中ではない場合と比較して、前記駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを大きくすることを特徴とする請求項4又は5記載の車両用走行制御装置。
【請求項7】
前記駆動力制限変更手段は、前記周辺環境情報に基づいて、自車両が停止中に自車両の前方に障害物があると判定された場合に、自車両が停止中に自車両の前方に障害物があると判定されなかった場合と比較して、前記駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを大きくすることを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項8】
自車両が前方の他車両を追い越そうとしているか否かを判定する追越判定手段を備え、
前記駆動力制限変更手段は、前記追越判定手段によって、前記他車両を追い越そうとしていると判定された場合に、前記他車両を追い越そうとしていると判定されなかった場合と比較して、前記駆動力制限手段による駆動力の制限量の大きさを小さくすることを特徴とする請求項3〜7記載の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項9】
前記自車両は駆動源としてモータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であり、
前記スタンバイ制御は、前記自車両が前記モータによる動力のみを利用して、設定された設定車速以上で走行している場合に、前記駆動力の増加要求に備えて予めエンジンを始動させておくエンジンスタンバイ制御であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。
【請求項10】
前記自車両は駆動源としてモータおよびエンジンを備えたハイブリッド車両であり、
前記スタンバイ制御は、駆動力増加要求に備えて前記モータへの供給電圧を予め昇圧させておく昇圧制御であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−292383(P2009−292383A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149635(P2008−149635)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】