説明

車両用送風機

【課題】モータのシャフトと軸流ファンの回転軸とをギアを介して連結する場合に、ギア部分への異物の侵入を抑制することができる車両用送風機を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、1以上の軸流ファン11、12と、軸流ファン11、12を回転駆動するモータ2とを備える車両用送風機であって、モータ2のシャフト21と軸流ファン11、12の回転軸11a、12aとを、ギア11f、12f、22を介して連結し、ギア11f、12f、22を、ギアボックス5に収容し、ギアボックス5に、シャフト21を貫通させるための貫通孔52aを設け、シャフト21に、貫通孔52aを覆う異物防止部材6を、貫通孔52aと間隔を開けて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファン(JIS B 0132 番号1010参照)を用いた送風機に関するもので、ラジエータ等の車両用熱交換器に冷却風を送風する送風機に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換コア部の長さ(チューブ長手方向の長さ)が長い熱交換器に冷却空気を供給する車両用送風機は、熱交換コア部の空気流れ下流側の面に2つの軸流ファンを設け、それぞれの回転軸にそれぞれファンモータを設けていた。すなわち、複数のファンを有する車両用送風機では、ファンの個数だけファンモータが必要であった。そのため、車両用送風機全体が大型化し、重量が大となるとともに、部品点数が増加するという問題があった。
【0003】
これに対し、熱交換器の熱交換コア部にそれぞれ対向して複数の軸流ファンを配設し、熱交換コア部の端に設けられたタンクに1つのファンモータを固定し、ファンモータの回転軸と軸流ファンの軸とをギアを介して連結した車両用送風機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭62−112470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用送風機は車両に搭載されるため、ギア部分へ水、飛び石、埃等の異物が侵入し、ギアの回転機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、モータの回転駆動軸と軸流ファンの回転軸とをギアを介して連結する場合に、ギア部分への異物の侵入を抑制することができる車両用送風機を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、車両に搭載され、1以上の軸流ファン(11、12)と、軸流ファン(11、12)を回転駆動するモータ(2)とを備える車両用送風機であって、モータ(2)の回転駆動軸(21)と軸流ファン(11、12)の回転軸(11a、12a)とは、ギア(11f、12f、22)を介して連結されており、ギア(11f、12f、22)は、ギアボックス(5)に収容されており、ギアボックス(5)には、回転駆動軸(21)を貫通させるための貫通孔(52a)が設けられており、回転駆動軸(21)には、貫通孔(52a)を覆う異物防止部材(6)が、貫通孔(52a)と間隔を開けて設けられていることを第1の特徴としている。
【0007】
このように、ギアボックス(5)の貫通孔(52a)を覆うように異物防止部材(6)を設けることで、貫通孔(52a)を介してギアボックス(5)内に異物が侵入することを抑制できる。さらに、異物防止部材(6)を回転駆動軸(21)に固定することで、回転駆動軸(21)に付着した液体が回転駆動軸(21)を伝わってギアボックス(5)内部に侵入することを抑制できる。このため、ギア(11f、12f、22)への異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0008】
また、本発明では、ギアボックス(5)における貫通孔(52a)の外側には、異物防止部材(6)側に突出する環状の迷路壁(53、54)が設けられていることを第2の特徴としている。
【0009】
これにより、ギアボックス(5)内に異物が侵入することをより抑制できるため、ギア(11f、12f、22)への異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0010】
また、上記第1および第2の特徴において、異物防止部材(6)に、回転駆動軸(21)が挿通される貫通穴(6a)を設け、回転駆動軸(21)に、貫通穴(6a)と対応する溝部(21a)を形成し、異物防止部材(6)を、貫通穴(6a)に溝部(21a)が係合した状態で、回転駆動軸(21)に固定することができる。
【0011】
また、本発明では、異物防止部材(6)は、弾性変形可能な弾性部材により形成されており、異物防止部材(6)には、その外周端部と貫通穴(6a)とを連結するように切り込まれた切り込み部(6b)が形成されていることを第3の特徴としている。
【0012】
これにより、異物防止部材(6)を切り込み部(6b)から回転駆動軸(21)の溝部(21a)に押し込むだけで、異物防止部材(6)を回転駆動軸(21)に組み付けることができる。したがって、組み付け性を向上させつつ、ギア(11f、12f、22)への異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明では、回転駆動軸(21)における溝部(21a)の近傍には、溝部(21a)と同一形状の第2の溝部(21b)が形成されていることを第4の特徴としている。
【0014】
これにより、回転駆動軸(21)に液体が付着した場合に、その液体が第2の溝部(21b)によって伝わりにくくすることができるため、ギアボックス(5)内に液体が侵入することをより抑制できる。したがって、ギア(11f、12f、22)への異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明では、互いに反対方向に回転する2つの軸流ファンは、二重反転ファン(11、12)を構成しており、二重反転ファン(11、12)は、その回転軸(11a、12a)が同一直線上となるように直列に配置されており、二重反転ファン(11、12)は、凹部を有するボス部(11b、12b)と、ボス部(11b、12b)に設けられたブレード(11c、12c)とをそれぞれ有しているとともに、ボス部(11b、12b)の凹部同士が対向するように配置されており、ギアボックス(5)は、2つのボス部(11b、12b)間に配置されるとともに、2つのボス部(11b、21b)に空気流れ方向両側から覆われており、異物防止部材(6)は、ギアボックス(5)とボス部(11b、21b)との間に配置されていることを第5の特徴としている。
【0016】
このように、ギアボックス(5)が2つのボス部(11b、12b)に覆われている場合に、異物防止部材(6)をギアボックス(5)とボス部(11b、21b)との間に配置することで、ギアボックス(5)内に異物が侵入することをより抑制できる。このため、ギア(11f、12f、22)への異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態は、車両に搭載されるラジエータおよび冷媒放熱器(以下、熱交換器ともいう)に冷却空気を送風する送風機に本発明を適用したものである。なお、ラジエータは、エンジン(内燃機関)の冷却水と空気とを熱交換させて冷却水を冷却する熱交換器であり、冷媒放熱器は、車両用冷凍サイクル(空調装置)内を循環する冷媒と空気とを熱交換させて冷媒を冷却する熱交換器である。本実施形態では、ラジエータは、冷媒放熱器より車両後方側に配置されている。
【0019】
図1は、本第1実施形態に係る送風機1およびファンシュラウド3を車両後方側から見た分解斜視図である。なお、図1において、後述する異物防止板6は車両上下方向で半分に切断した状態を示している。図1に示すように、本実施形態の送風機1は、熱交換器(図示せず)の車両後方側に2つ並列に配置されている。この2つの送風機1は、単一のモータ2にて回転駆動されるようになっている。
【0020】
熱交換器(図示せず)の車両後方側には、ファンシュラウド3が配置されている。ファンシュラウド3は、送風機1と熱交換器との隙間を閉塞して送風機1にて誘起された空気流が熱交換器を迂回して流れることを防止する機能と、送風機1を支持する機能とを有している。
【0021】
ファンシュラウド3は、円筒状(リング状)のシュラウドリング部31と、ラジエータ(図示せず)の背面側の空間をリング部31まで滑らかな流路によって接続するシュラウド平面部32とを有している。そして、本実施形態では、シュラウドリング部31およびシュラウド平面部32等の各部分が全て一体となるように形成されている。
【0022】
シュラウドリング部31は、環状内部において、送風機1が後述するブレード11c、12cの先端に必要な大きさの隙間を残して自由に回転し得るベンチュリ型の流路空間を形成しており、その中で送風機1は後述するギアボックス5の回転軸11a、12aに支持され、かつ回転駆動される。本実施形態では、送風機1が2つ並列に配置されているため、シュラウドリング部31も送風機1に対応するように2つ並列に形成されている。また、シュラウド平面部32の車両後方側(空気流れ下流側)には、モータ2がブラケット4を介して固定されている。
【0023】
次に、本実施形態における送風機1の具体的構成を説明する。2つの送風機1の構成はほぼ同一であるため、ここではモータ2に近い側の送風機1について説明する。
【0024】
図2は、本第1実施形態に係る送風機1を車両上方側から見た断面図である。図2に示すように、本実施形態の送風機1は、第1の軸流ファン11および第2の軸流ファン12を有する二重反転ファンを備えている。第1の軸流ファン11および第2の軸流ファン12は、互いに直列に、すなわち回転軸11a、12aが同一直線上となるように配置されている。また、第1の軸流ファン11は、第2の軸流ファン12より車両前方側(空気流れ上流側)に配置されている。第1の軸流ファン11および第2の軸流ファン12は、互いに反対方向に回転するように構成されている。また、第1の軸流ファン11および第2の軸流ファン12において、誘起する空気流の方向は同一となっている。
【0025】
これにより、第1の軸流ファン11の出口で生じた円周方向の旋回流成分が、第2の軸流ファン12の反転により打ち消されるため、第1の軸流ファン11の出口で生じた旋回流の動圧分が、静圧として回収される。このため、通常の一連の軸流ファンと比較して高静圧が得られるので、図示しない熱交換器に送風する空気風量を増加させることができる。
【0026】
第1、第2の軸流ファン11、12は、それぞれボス部11b、12bから放射状に延びる複数枚のブレード11c、12cを有している。ボス部11b、12bは、一端が閉じた筒状、すなわち断面略コの字形状に形成されており、円形状の底部11d、12dと、底部11d、12dの縁部から略直角に突出する側壁部11e、12eとを有している。底部11d、12dの中心部には、回転軸11a、12aの一端側がそれぞれ接続されている。側壁部11e、12eの外表面には、ブレード11c、12cが接続されている。そして、第1、第2の軸流ファン11、12は、ボス部11b、12bの略コの字形状の凹部同士が対向するように、すなわち側壁部11e、12eの端部同士が対向するように配置されている。
【0027】
また、モータ2(図1参照)のシャフト(回転駆動軸)21における2つの送風機1と対応する部位には、主動側ギア22がそれぞれ固定されている。この主動側ギア22は、例えば螺旋歯車や傘歯車等が使用される。
【0028】
第1、第2の軸流ファン11、12の回転軸11a、12aは、モータ2のシャフト21に対してそれぞれ垂直に配置されている。また、回転軸11a、12aの他端側(ボス部11b、12bに接続されていない側の端部)には、従動側ギア11f、12fがそれぞれ固定されている。従動側ギア11f、12fは、主動側ギア22とそれぞれ噛合しており、これによってモータ2の回転駆動力が、第1、第2の軸流ファン11、12の回転軸11a、12aにそれぞれ伝達され、第1、第2の軸流ファン11、12が互いに反対方向に回転するように構成されている。従動側ギア11f、12fも、螺旋歯車や傘歯車等の歯車が適宜使用される。
【0029】
第1、第2の軸流ファン11、12の回転軸11a、12aは、ギアボックス5に軸受11g、12gを介して回転可能に支持されている。このギアボックス5は、従動側ギア11f、12fとともに主動側ギア22をも収容しており、回転軸11a、12aと同様にシャフト21をも軸受23を介して回転可能に支持している。
【0030】
図1に戻り、ギアボックス5は、ファンシュラウド3に略水平に架け渡されたステー33に取り付けられている。本実施形態では、ステー33は、ギアボックス5の車両上下端部を支持するように2本平行に設けられている。
【0031】
次に、本実施形態における第1、第2の軸流ファン11、12およびギアボックス5の詳細な構成について述べる。
【0032】
図1および図2に示すように、ギアボックス5は、略円筒形状に形成されている。また、ギアボックス5は、2つの軸流ファンのボス部11b、12b間に配置されるとともに、ボス部11b、12bに空気流れ方向両側から覆われている。ここで、ギアボックス5におけるボス部11b、12bの底部11d、12dと対向する円状の面を第1の面51といい、ボス部11b、12bの側壁部11e、12eと対向する面を第2の面52という。
【0033】
図2に示すように、ボス部11b、12bの底部11d、12dには、ギアボックス5の第1の面51側に突出する環状の第1の迷路壁110、120が形成されている。第1の迷路壁110、120は、底部11d、12dと略同心円状、すなわち回転軸11a、12aを中心とする円状に配置されている。
【0034】
一方、ギアボックス5の第1の面51には、ボス部11b、12b側に突出する環状の第2の迷路壁510が形成されている。第2の迷路壁510は、ギアボックス5の第1の面51と回転軸11a、12aとが交わる点を中心とする円状に配置されている。すなわち、第1の迷路壁110、120と第2の迷路壁510は、同心円状に配置されている。また、第2の迷路壁510は、第1の迷路壁110、120より直径が小さくなっている。そして、第1、第2の迷路壁110、120、510により迷路構造が構成されている。
【0035】
図3は図1のA部拡大図で、図4は本第1実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。なお、図3において、後述する異物防止板6は車両上下方向で半分に切断した状態を示している。また、図4において、ギアボックス5の内部構造は図示を省略している。
【0036】
図3および図4に示すように、ギアボックスの第2の面52には、シャフト21を貫通させるための貫通孔52aが形成されている。また、シャフト21には、貫通孔52aを覆う異物防止板(異物防止部材)6が貫通孔52aから間隔を開けて設けられている。本実施形態では、異物防止板6は弾性変形可能な弾性部材(本実施形態ではゴム)からなり、シャフト21と別体に形成されている。
【0037】
図5は、本第1実施形態における異物防止板6を示す斜視図である。図5に示すように、異物防止板6は、その中心部に貫通穴6aを有するドーナツ状に形成されている。貫通穴6aは、その内部にシャフト21が挿通されるようになっている。異物防止板6には、その外周端部から貫通穴6aに向かって切り込まれた切り込み部6bが形成されている。このとき、切り込み部6bは、異物防止板6の外周端部と貫通穴6aとを連結するようになっている。
【0038】
図2に戻り、本実施形態では、異物防止板6の直径は、対向する2つのボス部11b、12bにおける側壁部11e、12eの端部間の距離Bより長くなっている。また、異物防止板6は、ギアボックス5の第2の面52とボス部11b、12bの側壁部11e、12eとの間に配置されている。
【0039】
図6は、本第1実施形態におけるシャフト21を示す斜視図である。図6に示すように、シャフト21には、異物防止板6の貫通穴6aに対応する溝部21aが形成されている。溝部21aは、異物防止板6の組み付け時には位置決めとして使用され、組み付け後には異物防止板6がシャフト21の軸方向に移動することを防止するように構成されている。また、図5および図6に示すように、異物防止板6を切り込み部6bからシャフト21の溝部21aに押し込み、貫通穴6aに溝部21aを係合させることで、異物防止板6をシャフト21に組み付けるようになっている。
【0040】
図2および図4に戻り、ギアボックス5の第2の面52における貫通孔52aの外側には、異物防止板6側に向かって突出する環状のシャフト側迷路壁53が形成されている。シャフト側迷路壁53は、ギアボックス5の第2の面52とシャフト21とが交わる点を中心とする円状に配置されている。シャフト側迷路壁53は、貫通孔52aより直径が大きくなっているとともに、異物防止板6より直径が小さくなっている。また、シャフト側迷路壁53と異物防止板6との間には、隙間が設定されている。
【0041】
以上説明したように、ギアボックス5の貫通孔52aを覆うように異物防止板6を設けることで、貫通孔52aを介してギアボックス5内に異物が侵入することを抑制できる。さらに、異物防止板6をシャフト21に固定することで、シャフト21に付着した液体がシャフト21を伝わってギアボックス5内部に侵入することを抑制できる。このため、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0042】
また、ギアボックス5の貫通孔52aの外側にシャフト側迷路壁53を設けることで、ギアボックス5内に異物が侵入することをより抑制できるため、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0043】
また、シャフト21に溝部21aを設けるとともに、異物防止板6をゴム製とし、切り込み部6bを設けることで、異物防止板6を切り込み部6bからシャフト21の溝部21aに押し込むだけで、異物防止板6をシャフト21に組み付けることができる。したがって、組み付け性を向上させつつ、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入を抑制することが可能となる。
【0044】
また、異物防止板6を、ギアボックス5の第2の面52とボス部11b、12bの側壁部11e、12eとの間に配置することで、ギアボックス5内に異物が侵入することをより抑制できるため、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。なお、上記第1実施形態中の溝部21aを、本第2実施形態では第1の溝部21aという。
【0046】
図7は、本第2実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。なお、図7において、ギアボックス5の内部構造は図示を省略している。図7に示すように、シャフト21の第1の溝部21a近傍には、第1の溝部21aと同形状の第2の溝部21bが複数(本実施形態では3つ)形成されている。本実施形態では第1の溝部21aおよび第2の溝部21bは、等間隔に並べられている。
【0047】
ところで、車種等により、軸流ファン11、12のファン径や2つのギアボックス5間の寸法が異なる場合、シャフト21のそれぞれ異なる位置に第1の溝部21aを設定する必要があるため、生産性が悪化してしまう。これに対し、本実施形態のように、予めシャフト21に第2の溝部21bを設定しておくことで、車種等によらずシャフト21を共通化できるため、生産性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、異物防止板6が固定されない第2の溝部21bをシャフト21に設けることで、シャフト21に液体が付着した場合に、その液体が第2の溝部21bによって伝わりにくくすることができるため、ギアボックス5内に液体が侵入することをより抑制できる。したがって、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図8に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図8は、本第3実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。なお、図8において、ギアボックス5の内部構造は図示を省略している。
【0051】
図8に示すように、本実施形態の異物防止板6には、その外周端部からギアボックス5側に向かって突出する突出壁部6aが設けられている。突出壁部6aは、異物防止板6の板面に対して垂直に設けられている。本実施形態では、突出壁部6aは、異物防止板6と一体に成形されている。突出壁部6aは、シャフト側迷路壁53より外側に配置されており、突出壁部6aとシャフト側迷路壁53との間には隙間が設定されている。また、突出壁部6aのギアボックス5側の端部は、シャフト側迷路壁53の異物防止板6側の端部よりギアボックス5側に配置されている。
【0052】
以上説明したように、異物防止板6に突出壁部6aを設けることで、突出壁部6aおよびシャフト側迷路壁53によって迷路構造を構成することができるため、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入をより抑制することが可能となる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図9に基づいて説明する。上記第3実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。なお、上記第3実施形態中のシャフト側迷路壁53を、本第4実施形態では第1のシャフト側迷路壁53という。
【0054】
図9は、本第4実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。なお、図9において、ギアボックス5の内部構造は図示を省略している。
【0055】
図9に示すように、本実施形態では、ギアボックス5の第2の面52には、異物防止板6側に突出する環状の第2のシャフト側迷路壁54が形成されている。第2のシャフト側迷路壁54は、ギアボックス5の第2の面52とシャフト21とが交わる点を中心とする円状に配置されている。すなわち、第1のシャフト側迷路壁53と第2のシャフト側迷路壁54は、同心円状に配置されている。また、第2のシャフト側迷路壁54は、第1のシャフト側迷路壁53より直径が大きくなっており、第1のシャフト側迷路壁53より外側に配置されている。2つのシャフト側迷路壁53、54の間には隙間が設定されており、この隙間に異物防止板6の突出壁部6aのギアボックス5側の端部が入り込むようになっている。そして、第1、第2のシャフト側迷路壁53、54および突出壁部6aにより迷路構造が構成されている。
【0056】
これにより、主動側ギア22および従動側ギア11f、12fへの異物の侵入をさらに抑制することが可能となる。
【0057】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、送風機1を2つ並列に配置したが、これに限らず、送風機1を1つのみ配置した場合や、送風機1を3つ以上配置した場合であっても、本発明を適用することができる。
【0058】
また、上記各実施形態では、送風機1に二重反転ファンを用いたが、一連の軸流ファンを用いてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態では、異物防止板6をゴム製としたが、これに限らず、ゴム以外の樹脂や金属等にしてもよい。なお、異物防止板6を金属製とした場合、異物防止板6は圧入等によりシャフト21に組み付けられる。
【0060】
また、上記各実施形態では、異物防止板6の直径を、対向する2つのボス部11b、12bにおける側壁部11e、12e間の距離Bより長くしたが、これに限らず、側壁部11e、12e間の距離Bと同じとしてもよいし、側壁部11e、12e間の距離Bより短くしてもよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、ギアボックス5の第2の面52にシャフト側迷路壁53を設けたが、設けなくてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では、ボス部11b、12bとギアボックス5との間の迷路構造を、2つの迷路壁110、120、510を設けることにより形成したが、これに限らず、迷路壁を1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。もしくは、これらの迷路壁を廃止してもよい。
【0063】
また、上記各実施形態では、モータ2を、ブラケット4を介してファンシュラウド3に固定し、ギアボックス5を、ステー33を介してファンシュラウド3に固定したが、これに限らず、それぞれファンシュラウド3に直接固定してもよい。
【0064】
また、上記第2実施形態では、第2の溝部21bを、1つの第1の溝部21aに対し2つ設けたが、これに限らず、1つのみ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態に係る送風機1およびファンシュラウド3を車両後方側から見た分解斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る送風機1を車両上方側から見た断面図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】第1実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。
【図5】第1実施形態における異物防止板6を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態におけるシャフト21を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。
【図8】第3実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。
【図9】第4実施形態におけるギアボックス5およびシャフト21を車両上方側から見た断面図である。
【符号の説明】
【0066】
2…モータ、5…ギアボックス、6…異物防止板(異物防止部材)、6a…貫通穴、6b…切り込み部、11、12…軸流ファン、11a、12a…回転軸、11b、12b…ボス部、11c、12c…ブレード、11f、12f…従動側ギア、21…シャフト(回転駆動軸)、21a…溝部、21b…第2の溝部、22…主動側ギア、52a…貫通孔、53、54…シャフト側迷路壁(迷路壁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、1以上の軸流ファン(11、12)と、前記軸流ファン(11、12)を回転駆動するモータ(2)とを備える車両用送風機であって、
前記モータ(2)の回転駆動軸(21)と前記軸流ファン(11、12)の回転軸(11a、12a)とは、ギア(11f、12f、22)を介して連結されており、
前記ギア(11f、12f、22)は、ギアボックス(5)に収容されており、
前記ギアボックス(5)には、前記回転駆動軸(21)を貫通させるための貫通孔(52a)が設けられており、
前記回転駆動軸(21)には、前記貫通孔(52a)を覆う異物防止部材(6)が、前記貫通孔(52a)と間隔を開けて設けられていることを特徴とする車両用送風機。
【請求項2】
前記ギアボックス(5)における前記貫通孔(52a)の外側には、前記異物防止部材(6)側に突出する環状の迷路壁(53、54)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風機。
【請求項3】
前記異物防止部材(6)は、前記回転駆動軸(21)が挿通される貫通穴(6a)を有しており、
前記回転駆動軸(21)には、前記貫通穴(6a)と対応する溝部(21a)が形成されており、
前記異物防止部材(6)は、前記貫通穴(6a)に前記溝部(21a)が係合した状態で、前記回転駆動軸(21)に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用送風機。
【請求項4】
前記異物防止部材(6)は、弾性変形可能な弾性部材により形成されており、
前記異物防止部材(6)には、その外周端部と前記貫通穴(6a)とを連結するように切り込まれた切り込み部(6b)が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用送風機。
【請求項5】
前記回転駆動軸(21)における前記溝部(21a)の近傍には、前記溝部(21a)と同一形状の第2の溝部(21b)が形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用送風機。
【請求項6】
互いに反対方向に回転する2つの前記軸流ファンは、二重反転ファン(11、12)を構成しており、
前記二重反転ファン(11、12)は、その回転軸(11a、12a)が同一直線上となるように直列に配置されており、
前記二重反転ファン(11、12)は、凹部を有するボス部(11b、12b)と、前記ボス部(11b、12b)に設けられたブレード(11c、12c)とをそれぞれ有しているとともに、前記ボス部(11b、12b)の前記凹部同士が対向するように配置されており、
前記ギアボックス(5)は、前記2つのボス部(11b、12b)間に配置されるとともに、前記2つのボス部(11b、21b)に空気流れ方向両側から覆われており、
前記異物防止部材(6)は、前記ギアボックス(5)と前記ボス部(11b、21b)との間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−38679(P2008−38679A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211716(P2006−211716)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】