説明

車両用難燃性防音・防振材及びその製造方法

【課題】 優れた難燃性と優れた耐熱劣化性を両立して実現すると共に、圧縮残留ひずみ特性を向上し、更には低コスト化を図った車両用難燃性防音・防振材を提供することにあり、また、そのような優れた特性を有する防音・防振材を有利に製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】 有機ポリイソシアネート成分として、(A)2,4′−MDI及び4,4′−MDIを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含み、且つ(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−MDIが含有されたものを用いる一方、ポリオール成分として、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合で含んでなるものを用いて、ポリウレタンフォームを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用難燃性防音・防振材及びその製造方法に係り、特に、耐熱性及び難燃性に優れ、しかも圧縮残留ひずみの少ない軟質ポリウレタンフォームにて構成される防音・防振材と、そのような防音・防振材を有利に製造し得る手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両においては、車外や車室に漏れる騒音を低減するために、各種の防音材が用いられてきており、例えば、車両のエンジンルーム内では、騒音の発生源たるエンジンの周りに、かかるエンジンからの放射音の低減を図るべく、エンジンカバーやサイドカバー、更にはオイルパンカバー、アンダーカバー等が、金属板等の剛性部材に発泡ゴムや発泡ウレタン等の発泡体を固着せしめてなる構造において、設けられている(特許文献1の図1参照)。また、車両のエンジン本体の周辺部には、種々の付属装置や部品が近接して配置されることとなるところから、エンジン本体とそれらの装置や部品との間に、必然的に、間隙が存在するようになるが、そのような構造においては、エンジンの作動時に、その間隙に定在波が発生し、この定在波によってエンジン騒音が増長するという不具合が惹起されることとなる。このため、そのような定在波を抑制して、エンジンからの放射音を低減せしめるべく、特許文献2等においては、それらエンジン本体とその周囲の装置や部品との間の間隙(空間)に、発泡ゴムや発泡ウレタン等の発泡体からなる緩衝材を、スペーサとして充填せしめることが、提案されている。
【0003】
ところで、かくの如き防音材乃至は緩衝材として用いられる発泡ゴムや発泡ウレタン等の材料には、それがエンジン本体に近接して配置されるという特殊な条件から、耐熱劣化性及び難燃性の両者に優れていることが望まれているのであるが、従来から発泡ゴムとして用いられるEPDMの発泡体にあっては、耐熱劣化性は良好であるものの、難燃性が不充分であるという問題があり、また、発泡ゴムの他の一つであるエピクロルヒドリンゴムの発泡体にあっては、難燃性は良好であるものの、耐熱劣化性において不充分なものであった。
【0004】
また、かかる発泡ゴムと同様に用いられる発泡ウレタン(ポリウレタンフォーム)としては、特許文献3や特許文献4等に明らかにされている如き、アスファルトと共に発泡成形されたアスファルト含浸ポリウレタンフォームが知られている。具体的には、このアスファルト含浸ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートと発泡剤及びアミン触媒と難燃剤及びアスファルトとからなる組成物を、所定の成形型内に注入し、発泡成形することにより製造されており、そしてその得られたアスファルト含浸ポリウレタンフォームは、適度に安価で耐熱性に優れるという特徴を有するものであるが、難燃性が不充分であるという問題を内在している。尤も、ポリウレタンフォーム中への難燃剤の含有量を増大せしめれば、難燃性は向上するものの、原料コストが上昇することを避け得ないことに加えて、耐熱劣化性が低下し、フォームとしての物性も低下するようになるところから、そのような難燃剤の含有量を増大せしめる態様も、採用し難いものであった。
【0005】
さらに、特許文献5においては、ポリオール成分としてスチレン系ポリマーポリオールを用いて得られた、難燃剤含有の防音用難燃ウレタンフォームが明らかにされているが、そこでは、難燃剤との併用によって、ポリウレタンフォームの難燃性と耐熱劣化性を両立させようとするものであるところから、その低コスト化は困難であったのであり、しかも、その耐熱劣化性は、120℃の温度で評価されているに過ぎないものであるために、そのような温度を越えると、フォーム中に含有せしめられている難燃剤が飛散し、難燃性が損なわれたり、またポリウレタンフォームの耐熱劣化特性が低下する問題を内在するものであった。
【0006】
更にまた、特許文献6には、制振性と吸音性に優れ、且つ止水性にも優れた車両用制振吸音部材を、ポリオール成分として飽和炭化水素樹脂骨格を有するポリオレフィンポリオールを用い、親水性基含有脂肪酸エステル骨格の界面活性剤の存在下において、有機ポリイソシアネート成分と反応せしめて得られる発泡体(ポリウレタンフォーム)を用いて、構成することが明らかにされているが、そこでは、得られるポリウレタンフォームに、優れた難燃性と耐熱劣化性を同時に付与するために、如何なる手段を採用すべきかについて、何等明らかにされてはいない。
【0007】
かかる状況下、本発明者らは、他の発明者らと共に、先に、特許文献7において、特定の有機ポリイソシアネート成分と特定のポリオール成分とを用いることによって、具体的には、有機ポリイソシアネート成分として、ジフェニルメタンジイソシアネートと共に、そのカルボジイミド変性体及び/又はそのウレトンイミン変性体を含む、NCO含有量が29〜33%とされたモノメリックMDIを主成分とし、且つ該モノメリックMDI中に、1〜45重量%の割合で、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが単量体及び/又は変性体構成成分として含有せしめられてなるものを用いる一方、前記ポリオール成分として、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合で含んでなるものを用いることによって、難燃剤を用いなくとも、耐熱劣化試験の前後で優れた物性を維持し、且つ不燃性で、成形性に優れた軟質ポリウレタンフォームが、得られることを明らかにした。
【0008】
これにより、従来の難燃剤の多量の配合に基づく製品コストの上昇等、各種の問題が有利に解消され得ることとなったのであるが、上述せる如き軟質ポリウレタンフォームにて構成される防音・防振材にあっては、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体及び/又はそのウレトンイミン変性体(以下、カルボジイミド変性体等という。)の使用によってへたり易く、圧縮残留ひずみが大きくなるといった問題が招来されることが、新たに明らかとなったのである。また、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体等を使用することによって、難燃剤を多量配合する場合に比べてコストの低廉化を図ることが可能となったのであるが、カルボジイミド変性体等の変性体は、他のポリイソシアネート化合物よりも原料コストが高く、更なる低コスト化が求められているのが、実情である。
【0009】
【特許文献1】特開2000−220467号公報
【特許文献2】実公昭59−7545号公報
【特許文献3】特公昭57−22051号公報
【特許文献4】特公昭61−50965号公報
【特許文献5】特開平7−233236号公報
【特許文献6】特開平10−81142号公報
【特許文献7】特開2003−97645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた難燃性と優れた耐熱劣化性を両立して実現すると共に、圧縮残留ひずみ特性を向上し、更には低コスト化を図った車両用難燃性防音・防振材を提供することにあり、また、そのような優れた特性を有する防音・防振材を有利に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明者らは、そのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原料コストが高いカルボジイミド変性体等を用いなくとも、先に出願した特定のポリイソシアネート成分と特定のポリオール成分のうち、特に、ポリイソシアネート成分の構成成分を代えることによって、圧縮残留ひずみ特性の向上をも効果的に図り得ることを見出したのである。
【0012】
従って、本発明は、かくの如き知見に基づいて完成されたものであって、その第一の態様とするところは、有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応、発泡させて得られた軟質ポリウレタンフォームにて構成される防音・防振材にして、前記有機ポリイソシアネート成分が、(A)2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含んで構成されており、且つ該(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含有する一方、前記ポリオール成分が、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合において含んで、用いられており、更に前記ポリウレタンフォームは、その密度が70〜150kg/m3 、50%圧縮荷重値が(5〜60)×10-2N/mm2 、引張強度が120kPa以上、伸び率が100%以上、圧縮残留ひずみが15%以下であり、且つ160℃×72時間の熱老化性試験の前後においてFMVSS−302燃焼性試験方法で不燃性を示すことを特徴とする車両用難燃性防音・防振材にある。
【0013】
なお、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材における望ましい第二の態様にあっては、前記有機ポリイソシアネート成分のNCO含有量が、31.0〜33.5%に調整されることとなる。
【0014】
また、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第三の態様においては、前記ポリウレタンフォームは、160℃×72時間の熱老化性試験後における引張強度と伸び率において、何れも、かかる試験前の値の50%以上である特性を有している。
【0015】
さらに、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第四の態様においては、前記モノメリックMDIが、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートからなり、且つかかるモノメリックMDI中に、該2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが、40〜50重量%の割合において含有せしめられる。
【0016】
加えて、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第五の態様においては、前記多核体イソシアネートが、分子中に3個以上のベンゼン環を有する粗製MDIからなるポリメリックMDIであり、該多核体イソシアネートが、前記有機ポリイソシアネート成分中に、8.5〜19.5重量%の割合において、用いられる構成が、好適に採用される。
【0017】
ところで、本発明は、車両用難燃性防音・防振材の製造方法をも、また、その対象とするものであって、有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応、発泡させて得られる軟質ポリウレタンフォームにて、目的とする防音・防振材を製造するに際して、前記有機ポリイソシアネート成分として、(A)2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含み、且つ該(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが含有せしめられてなるものを用いる一方、前記ポリオール成分として、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合で含んでなるものを用い、それら有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、NCO/OHインデックスが0.6〜1.2となるようにして、反応せしめることにより、密度が70〜150kg/m3 、50%圧縮荷重値が(5〜60)×10-2N/mm2 、引張強度が120kPa以上、伸び率が100%以上、圧縮残留ひずみが15%以下であり、且つ160℃×72時間の熱老化性試験の前後においてFMVSS−302燃焼性試験方法で不燃性を示す前記軟質ポリウレタンフォームが形成されるようにしたことを特徴とする車両用難燃性防音・防振材の製造方法を、その第一の態様としている。
【0018】
なお、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の製造方法における好ましい第二の態様では、前記有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応が、発泡剤の存在下において行なわれることにより、前記ポリウレタンフォームが形成されることとなる。
【発明の効果】
【0019】
そして、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材における、先述した第一の態様によれば、車両用難燃性防音・防振材を与えるポリウレタンフォームが、特定の有機ポリイソシアネート成分と特定のポリオール成分とを用い、それらを反応せしめることによって形成されるところに、大きな特徴を有しているのであり、そこでは、有機ポリイソシアネート成分の活性や架橋特性とポリオール成分の活性や架橋特性とが、効果的にバランスせしめられていることによって、耐熱劣化試験の前後で優れた物性を維持すると共に、不燃性(耐燃焼性)が良好で、且つ、圧縮残留ひずみ特性にも優れた軟質ポリウレタンフォームを得ることが出来ることとなったのである。
【0020】
特に、本発明にあっては、有機ポリイソシアネート成分として、(A)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の2,4′−体と4,4′−体とを特定の割合で含むモノメリックMDIと、(B)分子中に3つ以上の複数の芳香環(核)を有する多核体イソシアネートと、(C)プレポリマー化イソシアネートとが、ぞれぞれ、特定の配合割合において組み合わされてなるものが用いられていることにより、圧縮残留ひずみ特性が有利に向上せしめられるようになったのである。しかも、フォームの耐熱劣化特性が効果的に向上せしめられているのであり、また、フォームに炎が接触しても、フォームが熱で融け落ちて、炎が伝播しなくなる不燃性特性が、難燃剤やカルボジイミド変性体等の配合をも要することなく、効果的に付与せしめられ得ているのである。
【0021】
従って、本発明にあっては、カルボジイミド変性体等を用いた際に惹起されていた圧縮残留ひずみの発生が効果的に防止され得ることとなったのであり、また、目的とする車両用防音・防振材を不燃性とするために、それを与えるフォーム中に何等の難燃剤を含有せしめる必要もなく、更にはカルボジイミド変性体等を使用しないところから、従来の如き難燃剤の多量の配合に基づく各種の問題が惹起されるようなことが有利に解消され得ると共に、製品の低コスト化を極めて効果的に図ることが出来るのである。
【0022】
なお、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第二の態様によれば、本発明の特徴が、より一層、有利に発揮せしめられることとなる。
【0023】
また、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第三の態様においては、非常に優れた耐熱老化性が付与されているのである。
【0024】
さらに、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第四の態様によれば、圧縮残留ひずみ特性の向上を効果的に図ることが出来る。
【0025】
加えて、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の上記した第五の態様に従って、多核体イソシアネートとして、分子中に3個以上のベンゼン環を有するクルードMDIを採用して、かかる多核体イソシアネートの含有量を調整すれば、本発明の目的が、より一層、有利に実現されることとなる。
【0026】
また、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の製造方法によれば、上述せる如き優れた特徴を有する車両用難燃性防音・防振材が、良好なる成形性をもって形成され得、またその製造も容易であって、安価に防音・防振材を成形することが可能となるのである。
【0027】
さらに、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材の第二の製造方法においては、ポリウレタン化の反応と発泡とが同時に実現され得て、目的とするポリウレタンフォームからなる防音・防振材が、効果的に成形せしめられ得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ところで、本発明において、目的とする車両用難燃性防音・防振材を与える軟質ポリウレタンフォームを形成するための反応成分の1つである、有機ポリイソシアネート成分としては、(A)2,4′−MDI及び4,4′−MDIを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含み、且つ(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−MDIが含有せしめられているものが、用いられることとなる。
【0029】
ここにおいて、かかる有機ポリイソシアネート成分を構成するモノメリックMDI(A成分)とは、MDIの異性体である2,4′−体と4,4′−体とが組み合わされたものであり、本発明においては、そのようなモノメリックMDI中に、40重量%以上の割合において、2,4′−MDIが、含有せしめられている必要がある。なお、2,4′−MDIは、モノメリックMDI中において、4,4′−MDIよりも多く含有せしめられていてもよいのであるが、MDIの製造上において、2,4′−MDIのみを単独で得ることが難しく、現状において、4,4′−MDIに対する2,4′−MDIの生成比率の上限は、実質的に約50/50程度となっているところから、2,4′−MDIのモノメリックMDI中における含有量の上限は、一般に、50重量%程度とされることとなる。また、かかる2,4′−MDIのモノメリックMDI中における含有量が、40重量%未満となると、圧縮残留ひずみ特性の向上を図ることが困難となったり、耐熱劣化試験の前後において、伸び率等の物性が低下するようになる。
【0030】
そして、本発明においては、上述せる如き2,4′−体と4,4′−体とを含むモノメリックMDIが、有機ポリイソシアネート成分中に、75〜90重量%、好ましくは80〜90重量%の割合において含有せしめられることとなる。なお、かかるモノメリックMDIの有機ポリイソシアネート成分中における含有量が、少なくなり過ぎると、得られるフォームが燃え易くなる傾向があり、また、多過ぎると、耐燃焼性は良好に確保されるものの、圧縮残留ひずみ特性に劣るようになる。
【0031】
また、有機ポリイソシアネート成分を構成する多核体イソシアネート(B成分)としては、分子中に、3つ以上の複数の芳香環(核)を有する公知の各種ポリイソシアネート化合物が、適宜に選択して用いられることとなるが、特に、本発明においては、それらの中でも、3個以上のベンゼン環を有する(従って、NCO基を3個以上有する)粗製MDIからなるポリメリックMDIが、好適に用いられることとなる。なお、かかる粗製MDI分子中の核数(ベンゼン環数)の上限は、特に限定されるものではないが、一般に、6程度とされ、本発明においては、そのような核数(3〜6個)の多核体イソシアネートが、有利に採用されることとなる。そして、このような多核体イソシアネートの架橋特性を利用して、発泡反応を行ない、目的とするポリウレタンフォームが形成されるのである。
【0032】
そして、本発明においては、そのような多核体イソシアネートが、有機ポリイソシアネート成分中に、8〜24.9重量%、好ましくは8.5〜19.5重量%の割合において含有せしめられることとなる。なお、かかる多核体イソシアネートの有機ポリイソシアネート成分中における含有量が、8重量%未満の場合には、ポリウレタンフォームの圧縮残留ひずみ特性を充分に向上せしめることが困難となる一方、24.9重量%を超えるようになると、耐燃焼性が低下して燃え易くなる。
【0033】
さらに、有機ポリイソシアネート成分を構成するプレポリマー化イソシアネート(C成分)は、従来から公知の手法に従って、ポリイソシアネート化合物を、ポリオールと反応させて得られる、NCO基を2個以上、好ましくは3個以上有するプレポリマーであり、例えば、上記したMDIを、3官能ポリオールと反応せしめることにより、3つのウレタン結合を有するプレポリマー化イソシアネート等を挙げることが出来る。特に、本発明においては、3官能のエーテル系ポリオールとMDIとを反応せしめて形成される、イソシアネート末端のプレポリマーが好適に採用される。ここで、3官能のエーテル系ポリオールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、分子量:2000程度のポリエーテル基(末端にOH基を有する)の3つが結合してなる、分子量:6000程度のポリオールを、挙げることが出来る。このようなプレポリマー化イソシアネートを含有せしめることによって、フォームの架橋形態が良好となり、圧縮残留ひずみ特性や耐熱老化性が向上せしめられるようになる。
【0034】
また、本発明では、そのようなプレポリマー化イソシアネートが、有機ポリイソシアネート成分中に、0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%の割合において含有せしめられることとなる。なお、かかるプレポリマー化イソシアネートの有機ポリイソシアネート成分中における含有量が、0.1重量%未満の場合には、得られるポリウレタンフォームがへたり易くなって、圧縮残留ひずみ特性を向上せしめることが出来なくなる一方、2重量%を超えるようになると、耐燃焼性の悪化が惹起される。
【0035】
かくして、有機ポリイソシアネート成分としては、上述せる如きA成分、B成分及びC成分が、それぞれ、75〜90重量%、8〜24.9重量%及び0.1〜2重量%の割合において含有せしめられたものが、用いられることとなるのである。なお、本発明においては、これらA成分、B成分及びC成分のみから構成されたものが、有機ポリイソシアネート成分として有利に採用され得るのであるが、本発明の有用な作用・効果に悪影響をもたらさない限度において、適宜に、それらA成分、B成分及びC成分以外の、公知の他のポリイソシアネート化合物を配合せしめたものも、用いることが出来る。
【0036】
そして、本発明にあっては、上述せる如き各種のポリイソシアネート化合物にて構成される有機ポリイソシアネート成分において、そのNCO含有量が、重量基準にて、31.0〜33.5%の範囲内となるように、調製されているのである。なお、そのような有機ポリイソシアネート成分のNCO含有量が、31.0%よりも低くなると、フォームが燃焼し易くなる虞があるからであり、また、33.5%を超える割合の実現は、上記した配合割合を採用する場合、困難である。
【0037】
このように、本発明においては、上述せる如きA〜C成分が特別な配合割合において含有せしめられている有機ポリイソシアネート成分が用いられていることにより、得られる樹脂(ポリウレタンフォーム)が、優れた耐熱劣化特性を実現すると共に、難燃剤或いはカルボジイミド変性体等を用いなくとも、耐熱劣化試験の前後において燃えないという特徴を発揮するようになっているのである。ここで、燃えないというのは、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards:米国連邦自動車安全基準)−302試験の規格に基づいた判定結果であり、実際には、燃焼試験時にフォームに炎が当たるとフォームが熱で融け落ちて、炎が伝播しなくなるために、「不燃性」という判定となるのである。つまり、フォームが融け落ちる速さの方が、炎が伝播する速さよりも速いために、本発明に従って得られるポリウレタンフォームは、燃え続けない性質を有しているのである。しかも、そのようにして得られた本発明に従うポリウレタンフォームにあっては、良好な圧縮残留ひずみ特性、具体的には、圧縮残留ひずみが15%以下となるのであり、そこに、大きな特徴を有しているのである。
【0038】
一方、本発明において、かかる有機ポリイソシアネート成分と反応して、目的とするポリウレタンフォームを形成するポリオール成分としては、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを、50重量%以上の割合において含むものが用いられ、これによって、前記した有機ポリイソシアネート成分とのポリウレタン化の反応を有効に行なわしめて、不燃性の軟質ポリウレタンフォームを、有利に形成し得るのである。なお、そのようなポリオールの官能基数が、2よりも少なくなると、有機ポリイソシアネート成分との連鎖反応が途絶えて、高分子化が困難となり、フォームの成形が出来なくなる等の問題を生じるのであり、また官能基数が8を越えるようになると、得られるフォームの伸びが極端に低下する等の問題を惹起することとなる。また、分子量が1000未満のポリオールを用いると、フォームが硬くなり、弾性が失われて、軟質フォームの性質を得難く、また分子量が10000を超えるポリオールを用いると、粘度が上昇して、有機ポリイソシアネート成分との反応・発泡作業工程を困難とする。そして、このような官能基数及び分子量のポリオールが、ポリオール成分の50重量%以上の割合を占めるようにすることによって、目的とするポリウレタンフォームを与える有機ポリイソシアネート成分との反応を、有利に進行せしめ得るのである。
【0039】
なお、そのような官能基数及び分子量のポリオールとしては、従来から知られているものが適宜に選択されて、用いられ得、例えば、多価ヒドロキシ化合物やポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリマーポリオール類、ポリエーテルエステルポリオール類、ポリエーテルポリアミン類、ポリエステルポリアミン類、アルキレンポリオール類、ウレア分散ポリオール類、メラミン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、フェノール変性ポリオール類等の、公知の各種のポリオール類の中から選択されて、単独で或いは組み合わせて、用いられることとなる。
【0040】
そして、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材は、上述の如き、特定の有機ポリイソシアネート成分と特定のポリオール成分とを組み合わせて反応、発泡せしめることにより得られる、軟質ポリウレタンフォームにて構成されるものであるが、特に、車両用防音・防振材として有利に用いるべく、かかる軟質ポリウレタンフォームは、その密度が70〜150kg/m3 、50%圧縮荷重値(50%圧縮時の単位面積当たりの荷重:ASTM−D−3574)が(5〜60)×10-2N/mm2 、引張強度が120kPa以上、伸び率が100%以上の特性を有するように形成されることとなる。
【0041】
なお、かかる軟質ポリウレタンフォームにおいて、フォーム密度が70kg/m3 未満では、物性、例えば圧縮残留ひずみ特性の充分な改善を期待できなかったり、また強度が不足したりして、本発明の用途には適さなくなるのであり、一方150kg/m3 を越えるようになると、製品重量が増大して、車両の軽量化の点からして不利となる問題を有している。また、50%圧縮荷重値は、ポリウレタンフォームの硬度を間接的に示すものであって、それが5×10-2N/mm2 よりも低くなると、そのようなフォームが隙間充填部材として用いられるに際して、そのような隙間への嵌め込みが困難となったり、隙間からの脱落が惹起され易い等の問題があり、更に60×10-2N/mm2 を越えるような硬度の場合にあっては、硬くなり過ぎて、隙間を埋め難くなったり、防音効果を充分に発揮し得ない等の問題が惹起される。更に、引張強度や伸び率が低くなり過ぎると、所定の場所に製品として装着したときに、製品が破壊してしまう恐れがあり、また車両寿命の際まで形状を保持することが出来ない等の問題を惹起するところから、それら引張強度や伸び率は、前記した規定値以上とする必要があるのである。
【0042】
また、そのようなポリウレタンフォームは、前述の如き特定の有機ポリイソシアネート成分の活性及び架橋特性と、前記したポリオール成分の活性及び架橋特性との、適当なバランスによって、上述せる如き優れた特性を有するものとなる。
【0043】
さらに、このようなポリウレタンフォームは、有利には、160℃×72時間の熱老化性試験後における引張強度と伸び率とが、何れも、該試験前の値の50%以上である特性を有しているように、調製されることが望ましい。このように、耐熱劣化試験前後で、優れた物性を維持することにより、車両用防音・防振材としての機能が、より長期に亘って発揮せしめられることとなるのである。
【0044】
また、本発明に従う車両用難燃性防音・防振材を製造するに際しては、前記した特定の有機ポリイソシアネート成分と特定のポリオール成分とが、適当な発泡成形型中において、反応・発泡せしめられることにより、目的とする形状を有するポリウレタンフォーム(発泡体)からなる防音・防振材が形成され得るのであり、その際、有機ポリイソシアネート成分或いはポリオール成分には、従来と同様に、公知の触媒、架橋剤、発泡剤、整泡剤、鎖伸張剤、減粘剤等が、添加物として適宜に配合せしめられることとなる。
【0045】
なお、触媒としては、公知のアミン系触媒や有機金属系触媒等が用いられ、具体的には、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチル−N′−(ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N−メチルモノフォリン、N−エチルモノフォリン、トリエチルアミン等を挙げることが出来、また有機金属触媒としては、ラウリン酸錫、オクタン酸錫等を挙げることが出来る。
【0046】
また、発泡剤としては、公知の水が、好適に用いられることとなるが、水以外でも、塩化メチレン、フロン、CO2 ガス等も、発泡剤として用いることが可能である。そして、そのような発泡剤の使用量は、上述せる如き密度となるように経験的に決定され、従来のポリウレタンフォームの製造に際して用いられる量と同様な量において、用いられることとなる。例えば、発泡剤としての水にあっては、ポリオール成分の100重量部に対して、一般に、1〜6重量部程度の割合において用いられることとなるのである。
【0047】
さらに、架橋剤は、硬さに応じて、比較的低分子量の小さな架橋剤の中から、適宜に選択されて用いられ、例えばジオールやトリオール、多価アミン、またはこれらにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加した化合物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等を挙げることが出来る。加えて、整泡剤としても、通常のポリウレタンフォーム製造用のシリコーン系整泡剤が、その代表的なものとして挙げられ、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製のSRX−274C、日本ユニカー株式会社製のL−5390、SZ1313、ゴールドシュミット社製のB−4113等の商品名にて市販されているものを、挙げることが出来る。
【0048】
その他、上述した配合成分以外にも、フォームに要求される性能に応じて、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤等が、必要に応じて、本発明の目的を逸脱しない程度において、添加せしめられることとなる。
【0049】
そして、目的とするポリウレタンフォームを製造するに際しては、通常、前述した特定のポリオール成分に対して、発泡剤としての水や触媒、整泡剤、その他の助剤を、それぞれ、所定量、予め混合して、調製したレジンプレミックス(プレミックスポリオール)を用い、これに、前述の如き特定の有機ポリイソシアネート成分を配合して反応せしめ、更に発泡させる手法が採用されるのである。具体的には、そのようなレジンプレミックスと有機ポリイソシアネート成分とを、公知のウレタン発泡機を用いて、それらの混合比が、NCO/OHインデックス(等量比)が0.6〜1.2、好ましくは0.9〜1.1、更に好ましくは1となる割合において配合せしめ、所定の成形型内に注入して、反応・発泡させることにより、目的とする形状のポリウレタンフォームが成形されるのである。
【0050】
なお、かかる有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応に際しては、NCO/OHインデックスが、0.6未満では、物性が低下する問題があり、また1.2を越えるようになると、架橋反応が進み過ぎるようになるために、フォームが燃焼し易く、またキュア性が悪く、成形性の悪いフォームとなる等の問題が惹起される。
【0051】
そして、かくの如くして得られる軟質ポリウレタンフォームは、本発明に従う難燃性の防音・防振材として、有利に用いられ得、例えば車両のエンジンルーム内において、エンジンの周りに配備され、かかるエンジンからの放射音の低減を図るために、エンジンカバー、サイドカバー、オイルパンカバー、アンダーカバー、フードサイレンサー、ダッシュボードサイレンサー等として用いられ、中でも、エンジンとその周りに位置する補機類との間に形成される空間に充填せしめられて、その間に発生する定在波を抑制するスペーサとして、有利に用いられることとなる。
【0052】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した発明の実施の形態における記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【実施例1】
【0053】
先ず、ポリオール成分として、PPG(三洋化成工業株式会社製、平均分子量=6000、官能基数=3)を用い、その100重量部に対して、架橋剤としてのジエチレングリコール(DEG)、発泡剤としての水、アミン触媒(花王株式会社製、トリエチレンジアミン)、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー株式会社製)、顔料(大日精化工業株式会社製、カーボンブラック)を、それぞれ、下記表1に示される割合において配合せしめて、プレミックスポリオールを調製した。
【0054】
【表1】

【0055】
一方、ポリイソシアネートとして、4,4′−MDIと2,4′−MDI、又はそれらとクルードMDI(多核体イソシアネート)やプレポリマー化MDIの含有組成がそれぞれ異なる3種の市販品を用い、これらを適宜に選択して、所定の割合で組み合わせることにより、下記表2に示される組成を有する本発明例1,2及び比較例1〜4に係る各種の有機ポリイソシアネート成分(組成物)を調製した。なお、プレポリマー化MDIとしては、3官能のエーテル系ポリオールとMDIとのプレポリマー(分子量:6000程度)を用いた。
【0056】
【表2】

【0057】
次いで、かかる調製されたプレミックスポリオールと、各種有機ポリイソシアネート成分を用い、NCO/OHインデックスが1となるように、プレミックスポリオール(POL)と各種有機ポリイソシアネート成分(ISO)を、それぞれ、重量比で、POL:ISO=7:3程度の割合で、混合せしめた。その後、原料温度:22℃にて、所定のモールド(金型)に注入し、金型温度:52℃、硬化時間:5分において、発泡、硬化させることにより、120mm×120mm×60mmのサイズの各種ポリウレタンフォーム(本発明例1,2及び比較例1〜4)を得た。
【0058】
このようにして得られた各種ポリウレタンフォームについて、それぞれの密度、50%圧縮荷重値、引張強度(TB)及び伸び(EB)を測定して、それらの結果を、下記表3に示した。なお、50%圧縮荷重値は、ASTM−D−3574に準拠して測定されたものである。
【0059】
また、かかるポリウレタンフォームについて、FMVSS−302燃焼性試験方法に基づいて、それぞれの燃焼性を評価すると共に、JIS−K−6400−1997の「7.圧縮残留ひずみの測定方法」に従って、圧縮装置により、荷重を負荷して50%の割合で圧縮し、70℃×22時間にてその状態を維持した後、次いで、荷重を解除して室温にて所定時間放冷して、厚さを測定することにより、圧縮残留ひずみを求め、得られた測定値を下記表3の耐ヘタリ性の欄に示すと共に、かかる値から、圧縮残留ひずみ特性の評価を行なって、その結果を併せ示した。なお、FMVSS−302燃焼性試験方法による燃焼性の評価は、フォーム試料を水平に保持して、その一端にバーナーの火炎を15秒間当てた後、火炎を除いてからの燃焼性を評価する水平試験手法に従って評価し、かかる火炎を除いた後に、フォーム試料が直ちに自己消火した場合に、「合格」とした。また、圧縮残留ひずみ特性の評価基準は、◎:12%以下、○:12%超15%以下、△:15%超20%以下、×:20%超とした。
【0060】
さらに、かかるポリウレタンフォームに対して、160℃×72時間の耐熱老化試験を施した後、各ポリウレタンフォームの燃焼性試験を行って、その得られた結果を、下記表3に示すと共に、耐熱老化試験後の各ポリウレタンフォームの引張強度及び伸びを測定した。そして、常態時の引張強度及び伸びに対する、耐熱老化試験後の引張強度及び伸びの比率を、それぞれ算出し、TB保持率(%)及びEB保持率(%)として、下記表3に示した。また、かかるTB保持率(%)及びEB保持率(%)の値から耐熱老化性の評価を行ない、その結果を下記表3に併せ示した。なお、評価基準は、◎:TB保持率及びEB保持率が共に70%以上、○:TB保持率及びEB保持率が共に60%以上、△:TB保持率及びEB保持率が共に50%以上、×:TB保持率及びEB保持率が共に50%未満とした。
【0061】
【表3】

【0062】
かかる表3の結果から明らかなように、同一のポリオール成分(官能基数:3、分子量:6000)を使用した場合に、有機ポリイソシアネート成分として、4,4′−MDI、2,4′−MDI、クルードMDI及びプレポリマー化MDIを、上述せる如き特定の配合割合において含むものを用いて得られた本発明例1及び2に係るポリウレタンフォームにあっては、何れも、優れた難燃性と優れた耐熱劣化性が付与され、更に、圧縮残留ひずみ特性も良好に確保され得ており、それらポリウレタンフォームが、車両用難燃性防音・防振材として有利に用いられ得るものであることが、分かる。
【0063】
これに対して、モノメリックMDIの含有量が多く、且つプレポリマー化MDIが何等含有せしめられていない比較例1及び比較例3のポリウレタンフォームにあっては、充分な圧縮残留ひずみ特性が付与されていないことが分かる。また、比較例1にあっては、耐熱老化性にも劣っていることが、認められる。さらに、プレポリマー化MDIの含有量が多い比較例2、及びクルードMDIの含有量が多く、且つモノメリックMDIの含有量が少ない比較例4にあっては、FMVSS−302燃焼性試験による燃焼性評価において劣り、充分な難燃性を有するとは言い難いものとなっている。
【実施例2】
【0064】
また、本実施例においては、各種のポリオール成分を準備した。即ち、ポリオール成分として、PPG(1)(三洋化成工業株式会社製、平均分子量=6000、官能基数=3)、ポリマーポリオール(旭電化工業株式会社製、平均分子量=6000、官能基数=3)、PPG(2)(三洋化成工業株式会社製、平均分子量=6000、官能基数=4)又はPPG(3)(三洋化成工業株式会社製、平均分子量=7000、官能基数=4)を用い、その100重量部に対して、架橋剤としてのジエチレングリコール(DEG)、発泡剤としての水、アミン触媒(花王株式会社製、トリエチレンジアミン)、シリコーン系整泡剤(日本ユニカー株式会社製)、顔料(大日精化工業株式会社製、カーボンブラック)を、それぞれ、下記表4に示される割合において配合せしめて、5種類のプレミックスポリオールa〜eを調製した。
【0065】
【表4】

【0066】
一方、ポリイソシアネートとして、4,4′−MDIと2,4′−MDI、又はそれらとクルードMDIやプレポリマー化MDIの含有組成がそれぞれ異なる3種の市販品を用い、これらを所定の割合で組み合わせることにより、下記表5に示される組成を有する有機ポリイソシアネート成分aを調製した。なお、プレポリマー化MDIとして、3官能のエーテル系ポリオールとMDIとのプレポリマー(分子量:6000程度)を用いた。また、比較のために、変性体(カルボジイミド変性体及び/又はウレトンイミン変成体)を含有する、下記表5に示される組成を有する有機ポリイソシアネート成分bを調製した。
【0067】
【表5】

【0068】
そして、上記で準備されたプレミックスポリオールa〜eと、有機ポリイソシアネート成分a,bを用い、NCO/OHインデックスが1となるように、プレミックスポリオール(POL)と有機ポリイソシアネート成分(ISO)を、それぞれ、重量比で、POL:ISO=7:3程度の割合で、混合せしめた。その後、原料温度:22℃にて、所定のモールド(金型)に注入し、金型温度:52℃、硬化時間:5分において、発泡、硬化させることにより、120mm×120mm×60mmのサイズの各種ポリウレタンフォーム(本発明例3〜6及び比較例5)を得た。
【0069】
このようにして得られた各種ポリウレタンフォームについて、それぞれの密度、50%圧縮荷重値、TB及びEBを測定して、それらの結果を、下記表6に示した。また、かかるポリウレタンフォームについて、上記実施例1と同様にして、燃焼性試験を行う一方、圧縮残留ひずみを測定し、圧縮残留ひずみ特性の評価と共に、得られた結果を下記表6に示した。
【0070】
さらに、かかるポリウレタンフォームに対して、160℃×72時間の耐熱老化試験を施した後、各ポリウレタンフォームの燃焼性試験を行うと共に、引張強度及び伸びを測定して、TB保持率(%)、EB保持率(%)を算出し、それらの結果を、下記表6に示した。なお、評価基準は、上記実施例1と同様とした。
【0071】
【表6】

【0072】
かかる表6の結果から明らかなように、カルボジイミド変性体を含む比較例5にあっては、圧縮残留ひずみ特性が劣っていることが、わかる。これに対して、本発明例3〜6は、何れも、圧縮残留ひずみ特性、難燃性及び耐熱劣化性が良好であることが、認められる。
【0073】
また、ポリマーポリオール(平均分子量=6000、官能基数=3)を用いた本発明例4では、常態時の引張強度が329kPaとされ、本発明例3〜6の中でも特に優れた引張強度が実現されている。更に、PPG(2)(平均分子量=6000、官能基数=4)を用いた本発明例5では、圧縮残留ひずみが5%とされ、本発明例3〜6の中でも特に優れた圧縮残留ひずみ特性が発現されている。また更に、PPG(3)(平均分子量=7000、官能基数=4)を用いた本発明例6では、TB保持率及びEB保持率が高く、耐熱老化性に優れていることが認められる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応、発泡させて得られた軟質ポリウレタンフォームにて構成される防音・防振材であって、
前記有機ポリイソシアネート成分が、(A)2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含んで構成されており、且つ該(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含有する一方、前記ポリオール成分が、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合において含んで、用いられており、更に前記ポリウレタンフォームは、その密度が70〜150kg/m3 、50%圧縮荷重値が(5〜60)×10-2N/mm2 、引張強度が120kPa以上、伸び率が100%以上、圧縮残留ひずみが15%以下であり、且つ160℃×72時間の熱老化性試験の前後においてFMVSS−302燃焼性試験方法で不燃性を示すことを特徴とする車両用難燃性防音・防振材。
【請求項2】
前記有機ポリイソシアネート成分のNCO含有量が、31.0〜33.5%に調整されている請求項1に記載の車両用難燃性防音・防振材。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームの、160℃×72時間の熱老化性試験後における引張強度と伸び率とが、何れも、かかる試験前の値の50%以上である特性を有している請求項1又は請求項2に記載の車両用難燃性防音・防振材。
【請求項4】
前記モノメリックMDIが、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートからなり、且つかかるモノメリックMDI中に、該2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが、40〜50重量%の割合において含有せしめられている請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用難燃性防音・防振材。
【請求項5】
前記多核体イソシアネートが、分子中に3個以上のベンゼン環を有する粗製MDIからなるポリメリックMDIであり、該多核体イソシアネートが、前記有機ポリイソシアネート成分中に、8.5〜19.5重量%の割合において、用いられている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用難燃性防音・防振材。
【請求項6】
有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応、発泡させて得られる軟質ポリウレタンフォームにて、目的とする防音・防振材を製造するに際して、
前記有機ポリイソシアネート成分として、(A)2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを含むモノメリックMDIの75〜90重量%と、(B)多核体イソシアネートの8〜24.9重量%と、(C)プレポリマー化イソシアネートの0.1〜2重量%とを含み、且つ該(A)モノメリックMDI中に、40重量%以上の割合で、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが含有せしめられてなるものを用いる一方、前記ポリオール成分として、官能基数:2〜8、分子量:1000〜10000のポリオールを50重量%以上の割合で含んでなるものを用い、それら有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、NCO/OHインデックスが0.6〜1.2となるようにして、反応せしめることにより、密度が70〜150kg/m3 、50%圧縮荷重値が(5〜60)×10-2N/mm2 、引張強度が120kPa以上、伸び率が100%以上、圧縮残留ひずみが15%以下であり、且つ160℃×72時間の熱老化性試験の前後においてFMVSS−302燃焼性試験方法で不燃性を示す前記軟質ポリウレタンフォームが形成されるようにしたことを特徴とする車両用難燃性防音・防振材の製造方法。
【請求項7】
前記有機ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応が、発泡剤の存在下において行なわれることにより、前記ポリウレタンフォームが形成される請求項6に記載の車両用難燃性防音・防振材の製造方法。


【公開番号】特開2006−70241(P2006−70241A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88790(P2005−88790)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】