説明

車両用電源装置

【課題】車載電源の電圧が変化する場合であっても、目標の電力に近い電力を電気負荷へ供給することが可能な車両用電源装置を提供する。
【解決手段】車載バッテリの電圧をサンプリング周期:Tsでサンプリングして検出した電圧値のうち、PWM周期:Tp内のサンプリング個数に相当する“(N)”個((N)=Tp/Ts=6)の連続する電圧値の中で、制御パルスのオン期間内のサンプリング個数に相当する“(L)”個((L)=(N)×(デューティ比)=4)の電圧値を、その値が小さい方から選択し、選択した電圧値:Vs1,Vs2,Vs3,Vs6に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電源からPWM制御された電力を各電気負荷へ供給する車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電源装置では、パワーウインドウ、EPS(電動パワーステアリング装置)、エアコンディショナ、デフォッガ、シートヒータ等、多くの電気負荷へ電力を供給している。各電気負荷の駆動に必要とされる電圧は多かれ少なかれ異なることが多く、これら駆動電圧が異なる電気負荷へ電力を供給する電源装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、車載電源の電圧値を電圧センサで検出し、検出した電圧値に基づいて、負荷制御部が電気負荷に縦続接続された半導体スイッチをPWM制御することにより、電気負荷へ供給する実効電力を制御する技術が開示されている。
【0004】
図4は、従来のPWM制御の例を模式的に示すタイミングチャートである。図中横軸は時間を示し、図4(a),(b),(c)の縦軸は、夫々車載電源の電圧,電気負荷への負荷電流,電気負荷の性能を示す。また、Vs1,Vs2,Vs3は、夫々制御周期:T1,T2,T3において車載電源の電圧をサンプリングして検出した電圧値を表す。制御周期:T2,T3,T4におけるPWM制御のデューティ比は、夫々1つ前の制御周期における検出電圧値であるVs1、Vs2、Vs3に対する目標電圧の比の自乗値に基づいて決定される。これにより、検出した電圧を引き続き電気負荷へ印加した場合に、電気負荷へ供給する電力が目標の電力(即ち電気負荷の定格電力)となるようにPWM制御される。
【特許文献1】特開2006−304515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PWM制御によって車載電源から電気負荷への電力の供給がオン/オフされた場合、図4(a)に示すように車載電源の電圧が前記オン/オフに伴って変化する。このため、前記電圧センサが検出する電圧値も変化し、図4(b)に示す負荷電流をオンさせるデューティ比が、目標の電力を供給するためのデューティ比より小さくなることがある。例えば、電圧センサが検出した電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を算出する制御部1と、半導体スイッチをオン/オフさせる制御部2とが通信手段等で接続されていない場合、制御部1では制御部2によるPWM制御のオン/オフ期間を直接的に把握することができない。
【0006】
この場合、図4(a),(b)に示すように、PWM制御のオフ期間に検出した比較的高い電圧値に基づいて算出したデューティ比は、電気負荷へ電力が供給されているオン期間に検出した比較的低い電圧値に基づいて算出した(例えば制御周期:T1の)デューティ比より小さくなるため、電気負荷へ供給する電力が目標の電力より小さくなるという問題があった。このとき、例えばヒータの温度のような電気負荷の性能は、目標の電力を供給された場合と比較して、図4(c)の実線及び一点鎖線(実線の平均値)に示すように低下する。また、ディーティ比が小さくなることによってオフ期間が相対的に長くなり、車載電源の電圧がオフ期間に検出される確率が高まるため、決定されるデューティ比が更に小さくなる虞がある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車載電源の電圧が変化する場合であっても、目標の電力に近い電力を電気負荷へ供給することが可能な車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る車両用電源装置は、車載電源から電気負荷へ供給する電力をPWM制御するPWM手段と、前記車載電源の電圧値を所定周期で時系列的にサンプリングして検出する検出手段とを備え、該検出手段が検出した電圧値に基づいて前記PWM制御のデューティ比を決定する車両用電源装置において、前記PWM手段は、前記電圧値のうち、連続するJ個(Jは2以上の自然数)の電圧値の中で値が小さい方から選択したK個(KはJ以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
この車両用電源装置では、所定周期でサンプリングして検出した車載電源の電圧値のうち、連続するJ個の中で値が小さいK個(J≧K≧1)の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、車載電源の電圧が高いときに検出した電圧値に基づいて決定したデューティ比よりも大きいデューティ比が決定されるため、車載電源の電圧が低いときに電気負荷へ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制する。
【0010】
第2発明に係る車両用電源装置は、前記サンプリング周期は、前記PWM制御の制御周期より短く定めてあり、前記サンプリング周期に対する前記制御周期の比Rを算出する手段を備え、前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するN個(NはRとの差が1より小さい2以上の自然数)の電圧値の中で値が小さい方から選択したM個(MはN以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
この車両用電源装置では、PWM制御の制御周期内のサンプリング個数に相当するN個の電圧値の中で、値が小さいM個(N≧M≧1)の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、PWM制御に伴って車載電源の電圧が周期的に変化する場合に、前記電圧が高く変化した期間に検出した電圧値に基づいて決定したデューティ比よりも大きいデューティ比が決定されるため、車載電源の電圧がPWN制御の制御周期の中で低く変化した期間に電気負荷へ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制する。
【0012】
第3発明に係る車両用電源装置は、前記連続するN個の電圧値は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、最新のN個の電圧値であることを特徴とする。
【0013】
この車両用電源装置では、PWM制御の制御周期内のサンプリング個数に相当するN個の最新の電圧値の中で、値が小さいM個(N≧M≧1)の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、例えば、車載電源の電圧がPWM制御の制御周期より大きい周期で変化する場合であっても、直前に検出した電圧値に基づいて後続する制御周期のデューティ比が決定されるため、車載電源の電圧変化に良好に追従して安定した電力を供給する。
【0014】
第4発明に係る車両用電源装置は、決定されたデューティ比を記憶する手段と、該手段が記憶したデューティ比及びRの積Pを算出する手段とを備え、前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するN個の電圧値の中で値が小さい方から選択したL個(LはPとの差が1より小さいN以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
この車両用電源装置では、PWM制御の制御周期内のサンプリング個数に相当するN個の電圧値の中で、制御パルスのオン期間内のサンプリング個数に相当するL個(N≧L≧1)の電圧値を、その値が小さい方から選択し、選択した電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、制御パルスがオンして電気負荷へ電力が供給されることにより電圧が低下した期間に、必然的に電圧値を検出することとなり、検出した電圧値に基づいてデューティ比が決定される。従って、電気負荷へ電力を供給して車載電源の電圧が低下する期間に電気負荷へ供給する電力が、目標の電力となるように制御する。
【0016】
第5発明に係る車両用電源装置は、前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するJ個の電圧値の中で最も値が小さい電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあることを特徴とする。
【0017】
この車両用電源装置では、所定周期でサンプリングして検出した車載電源の電圧値のうち、連続するJ個の中で最も値が小さい1個の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、例えば、サンプリングして検出した電圧値にノイズ成分が多いため、検出した電圧値が積分されて制御手段に取り込まれるような場合、車載電源の電圧が最も低いときに近い電圧値を検出し、検出した電圧値に基づいてデューティ比を決定する。従って、車載電源の電圧が最も低いときに電気負荷へ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連続するJ個の電圧値の中で、値が小さいK個(J≧K≧1)の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、車載電源の電圧が高いときに検出した電圧値に基づいて決定したデューティ比よりも大きいデューティ比が決定されるため、車載電源の電圧が低いときに電気負荷へ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制する。従って、車載電源の電圧が変化する場合であっても、目標の電力に近い電力を電気負荷へ供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の概略構成を示すブロック図である。図中1はエンジンに連動して発電するオルタネータ(車載発電機、交流発電機)であり、オルタネータ1には、オルタネータ1の界磁電流を調整して、オルタネータ1が発電及び整流した電圧を定電圧制御及び昇降圧制御するレギュレータ2が付設されている。
【0020】
車両用電源装置は、複数のヒューズF0,F1,F2等を有し、オルタネータ1が発電した電力は、ヒューズF0を通じて、入出力電流値が電流検出器3によって検出される車載バッテリ4に与えられる。電流検出器3の出力端子は、車載バッテリ4の入出力電圧値を検出する電圧入力部57を有する充放電制御ECU5の電流入力部56に接続されている。車載バッテリ4の出力電圧は、図示しないトルク検出器が検出したハンドルの操作力に応じてEPS(電動パワーステアリング装置)のモータ7を駆動するEPS駆動回路8にヒューズF1を通じて印加され、その他の電気負荷へも図示しないヒューズを通じて印加される。
【0021】
車両用電源装置は、また、ヒューズF2を通じて車載バッテリ4の出力電圧をヒータ(加熱器)Haに印加するためのFET(電界効果トランジスタ)61と、該FET61をPWM制御の制御パルスで駆動するPWM出力部62とを有する。PWM出力部62には、ヒータHaのスイッチSW1のオン/オフ信号と、充放電制御ECU5が有する通信部58が出力するデューティ比とが与えられる。
【0022】
充放電制御ECU5の中枢はCPU51であり、CPU51は、プログラム等の情報を記憶するROM52、一時的に発生した情報を記憶するRAM53、及び時間を計時するためのタイマ54と互いにバス接続されている。CPU51には、更に、車両速度を入力する車速入力部55と、上述した電流入力部56及び電圧入力部57と、PWM出力部62へデューティ比等の信号を与えるための通信部58とがバス接続されている。
【0023】
充放電制御ECU5のCPU51は、ROM52に予め格納されている制御プログラムに従って、入出力、演算等の処理を実行する。より具体的には、CPU51は、車速入力部55へ与えられる車両の速度値に基づいて、アイドリング、加速走行、定常走行、及び減速走行の各車両状態を判定し、判定した車両状態に応じた発電モードで発電が行われるように、オルタネータ1及びレギュレータ2を制御する充電制御を行う。発電モードは、加速走行のようにエンジンの負荷が大きいときは、発電電圧を上昇させるように設定されている。これにより、エンジンの負荷を軽減し、車両の燃費向上を図っている。
【0024】
CPU51は、また、電圧入力部57が検出した車載バッテリ4の電圧値に基づいて、ヒータHaへ供給する電力のPWM制御に係るデューティ比を決定し、決定したデューティ比を、通信部58を介してPWM出力部62に与えることにより、ヒータHaに対する放電制御も行う。
PWM出力部62は、ヒータHaのスイッチSW1のオンを検出した場合、通信部58から順次与えられるデューティ比に基づいてPWM制御のオン時間を算出し、FET61のゲートをオン/オフさせる。これにより、車載バッテリ4からFET61を介してヒータHaへ供給される電力がPWM制御されるようになっている。
【0025】
図2は、ヒータHaへの負荷電流及び車載バッテリ4の電圧と、該電圧をサンプリングして検出した電圧値Vs1〜Vs6とを模式的に示す説明図である。図中横軸は時間を示し、図2(a)及び図2(b)の縦軸は、夫々電流及び電圧を示す。
【0026】
図2(a)は、PWM出力部62がFET61を制御パルスでオン/オフさせたときのヒータHaへの負荷電流を表す。図中PWM周期:Tpは制御周期であり、各PWM周期:Tpは制御パルスのオン期間とオフ期間とで構成される。本実施の形態では、PWM周期:Tpの値を一定値としている。制御パルスのオン期間の長さは、PWM周期:Tpと、通信部58からPWM出力部62に与えられるデューティ比との積として、PWM出力部62が算出する。
【0027】
図2(b)は、ヒータHaの負荷電流のオン/オフに伴って変化する車載バッテリ4の電圧を表す。車載バッテリ4からヒータHaへ供給する電流をオフ/オンさせた場合、車載バッテリ4が有する内部抵抗と車載バッテリ4からヒータHaに至る配線が有する抵抗とによって生じる電圧降下のために、車載バッテリ4の電圧が高/低変化する。CPU51は、各PWM周期:Tpに相当する期間内に、電圧検出部57が検出した車載バッテリ4の電圧値をサンプリング周期:Tsでサンプリングして取り込み、取り込んだ電圧値を、RAM53に記憶領域を確保した配列の要素として順次書き込む。CPU51は、配列への書き込みを終える都度、該配列の内容を直ちに読み出し、読み出した内容に基づいて即座にPWM制御のデューティ比を算出する。算出されたデューティ比は、通信部58を介してPWM出力部62に与えられ、
【0028】
図2に例示した場合にあっては、PWM周期:Tpをサンプリング周期:Tsで除した商が6であるため、CPU51は、PWM周期:Tpに相当する期間内に前記電圧値を6回取り込む。この場合、CPU51には、PWM出力部62が実際にPWM制御を行っている期間が通知されないため、CPU51が計時するPWM周期:Tpと、PWM出力部62がPWM制御するPWM周期:Tpとは、夫々図2(b)及び(a)に示すように位相がずれたものとなる。
また、図2の場合、デューティ比が約0.68であるため、車載バッテリ4の電圧値が低下している間にCPU51が前記電圧値を取り込む回数は、概ね4回(6×0.68を整数化した値)となっている。
【0029】
図3は、デューティ比を決定してPWM出力部62へ通知するCPU51の処理手順を示すフローチャートである。以下の処理は、ROM52に予め格納されている制御プログラムに従ってPWM周期:Tp毎に実行される。
尚、“Tp”及び“Ts”は既知の常数であり、「N」、「L」、「J」、「K」、及び「目標電圧値」はRAM53に記憶される変数である。そして、“(変数)”は「変数」の内容を示すものとする。これらの変数のうち、「目標電圧値」は別途設定される値であり、定数としてROM52に記憶するようにしてもよい。また、「V(1)〜V(N)」は、RAM53に記憶領域を確保した要素数:“(N)”の配列であり、「Vs」はCPU51のレジスタに記憶される一時的な変数である。
【0030】
CPU51は、“PWM周期:Tp”を“サンプリング周期:Ts”で除した値を「N」に代入(記憶)し(ステップS11)、“(N)”と“(デューティ比)”との積を「L」に代入する(ステップS12)。そして、CPU51は、“(N)”を四捨五入した値を「N」に代入し(ステップS13)、“(L)”を四捨五入した値を「L」に代入する(ステップS14)。これらの処理により、「N」にはPWM周期:Tp内でのサンプリング回数が、「L」には制御パルスのオン期間と長さが等しい期間内でのサンプリング個数が夫々記憶される。本実施の形態では、「N」及び「L」の内容は、夫々6及び4となる。
尚、上述した処理での四捨五入はこれに限定するものではなく、例えば、切り上げ又は切り捨てを行って整数化するようにしてもよい。
【0031】
その後、CPU51は、PWM周期:Tp内で均等にサンプリングするために“Ts”の1/2の時間だけ待機する(ステップS15)。
尚、待機する時間はこれに限定されるものではなく、例えば上述した処理で切り上げを行ったような場合は、待機を省略してもよい。
そして、CPU51は、「J」及び「K」の夫々に、初期値“(N)”及び“1”を代入する(ステップS16)。
【0032】
次いで、CPU51は、電圧入力部57を介して車載バッテリ4の電圧値:Vsを取り込み(ステップS17)、“(Vs)”を「V(K)」に代入する(ステップS18)と共に、「J」に“(J)−1”を代入して(ステップS19)「J」をデクリメントする。そして、CPU51は、“(J)”が“0”になったか否かを判定する(ステップS20)。
【0033】
“0”になっていないと判定した場合(ステップS20:NO)、CPU51は、サンプリング周期:Tsだけ待機して(ステップS21)次のサンプリングまで休止する。そして、CPU51は、「K」に“(K)+1”を代入して(ステップS22)「K」をインクリメントし、処理をステップS17に戻す。
このように、ステップS17からステップS22までの処理を繰り返すことにより、車載バッテリ4の電圧値をサンプリング周期:Ts間隔で“(N)”回取り込んで配列「V(1)〜V(N)」に順次代入する。
【0034】
ステップS20で“(J)”が“0”になったと判定した場合(ステップS20:YES)、CPU51は、「V(1)〜V(N)」を昇順にソートする(ステップS23)。この場合のソートは、例えば公知のバブルソート、クイックソート等のアルゴリズムを適用する。
その後、CPU51は、「V(1)〜V(L)」の内容の平均値:Avを算出し(ステップS24)、“(目標電圧値)/Av”の自乗値を「デューティ比」に代入する(ステップS25)。そして、CPU51は、通信部58を介して“(デューティ比)”をPWM出力部62へ通知し(ステップS26)、処理を終了する。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、サンプリング周期:Tsでサンプリングして検出した車載バッテリの電圧値のうち、連続する“(N)”個の中で値が小さい“(L)”個((N)≧(L)≧1)の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
これにより、車載バッテリの電圧が高いときに検出した電圧値に基づいて決定したデューティ比よりも大きいデューティ比が決定されるため、車載バッテリの電圧が低いときにヒータへ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制する。従って、車載バッテリの電圧が変化する場合であっても、目標の電力に近い電力をヒータへ供給することが可能な車両用電源装置を提供することが可能となる。
【0036】
また、PWM周期:Tp内のサンプリング個数に相当する“(N)”個の電圧値の中で、値が小さい“(L)”個の電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
従って、車載バッテリの電圧がPWM制御の制御周期の中で低く変化した期間にヒータへ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制することが可能となる。
【0037】
更にまた、検出した最新の“(N)”個の電圧値の中で、値が小さい“(L)”個の電圧値に基づき、最小の時間遅れでPWM制御のデューティ比を決定する。
従って、車載バッテリの電圧変化に良好に追従して安定した電力を供給することが可能となる。
【0038】
更にまた、PWM周期:Tp内のサンプリング個数に相当する“(N)”個の電圧値の中で、制御パルスのオン期間内のサンプリング個数に相当する“(L)”個の電圧値を、その値が小さい方から選択し、選択した電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定する。
従って、ヒータへ電力を供給して車載バッテリの電圧が低下する期間にヒータへ供給する電力が、目標の電力となるように制御することが可能となる。
【0039】
尚、本実施の形態にあっては、PWM周期:Tp内のサンプリング個数に相当する“(N)”個の電圧値の中で、値が小さいものから選択した電圧値に基づいてデューティ比を決定しているが、これに限定されるものではなく、任意の期間内にサンプリングして検出した電圧値の中で、値が小さい電圧値を選択するようにしてもよい。
この場合にも、車載バッテリの電圧が変化するときに、目標の電力に近い電力をヒータへ供給することが可能となる。
【0040】
また、PWM周期:Tp内のサンプリング個数に相当する“(N)”個の電圧値の中で、制御パルスのオン期間内のサンプリング個数に相当する“(L)”個の電圧値を、その値が小さい方から選択し、選択した電圧値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定しているが、これに限定されるものではなく、“(L)”個とは異なる個数の電圧値を、その値が小さい方から選択するようにしてもよい。
この場合にも、車載バッテリの電圧がPWM制御の制御周期の中で低く変化した期間にヒータへ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制することが可能となる。
【0041】
また、検出した複数の電圧値の平均値に基づいてPWM制御のデューティ比を決定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、平均値を算出する対象となる複数の電圧値のうち、最小の電圧値に基づいてデューティ比を決定するようにしてもよい。
これにより、例えば、検出した電圧値が積分されてCPUに取り込まれるような場合、車載バッテリの電圧が最も低いときに近い電圧値を検出し、検出した電圧値に基づいてデューティ比を決定するため、車載バッテリの電圧が最も低いときにヒータへ供給する電力が、目標の電力より小さくなることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用電源装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ヒータへの負荷電流及び車載バッテリの電圧と、該電圧をサンプリングして検出した電圧値とを模式的に示す説明図である。
【図3】デューティ比を決定してPWM出力部へ通知するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】従来のPWM制御の例を模式的に示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0043】
4 車載バッテリ(車載電源)
5 充放電制御ECU
51 CPU
52 ROM
53 RAM(決定されたデューティ比を記憶する手段)
54 タイマ
57 電圧入力部(検出手段)
61 FET
62 PWM出力部(PWM手段)
8 EPS駆動回路
Ha ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電源から電気負荷へ供給する電力をPWM制御するPWM手段と、前記車載電源の電圧値を所定周期で時系列的にサンプリングして検出する検出手段とを備え、該検出手段が検出した電圧値に基づいて前記PWM制御のデューティ比を決定する車両用電源装置において、
前記PWM手段は、前記電圧値のうち、連続するJ個(Jは2以上の自然数)の電圧値の中で値が小さい方から選択したK個(KはJ以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあること
を特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記サンプリング周期は、前記PWM制御の制御周期より短く定めてあり、
前記サンプリング周期に対する前記制御周期の比Rを算出する手段を備え、
前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するN個(NはRとの差が1より小さい2以上の自然数)の電圧値の中で値が小さい方から選択したM個(MはN以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあること
を特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記連続するN個の電圧値は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、最新のN個の電圧値であることを特徴とする請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
決定されたデューティ比を記憶する手段と、
該手段が記憶したデューティ比及びRの積Pを算出する手段とを備え、
前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するN個の電圧値の中で値が小さい方から選択したL個(LはPとの差が1より小さいN以下の自然数)の電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記PWM手段は、前記検出手段が検出した電圧値のうち、連続するJ個の電圧値の中で最も値が小さい電圧値に基づいて前記デューティ比を決定するように構成してあることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−95100(P2010−95100A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266715(P2008−266715)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】