説明

車両用電源装置

【課題】アイドルストップ機能付車両において、スタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池の電圧低下を抑制するとともにスタータ手段によるエンジンの始動性を向上させ、内燃機関若しくは他の駆動源によるエネルギー消費を低減する車両用電源装置を得る。
【解決手段】
アイドルストップ中か否かを判定するアイドルストップ判定装置300を備えた車両用電源装置において、発電装置200から出力される直流電圧V1を第1の直流電圧制御値V2に変換して出力する電圧変換装置400は、アイドルストップ判定装置300がアイドルストップ中であることを判定した場合、スタータ手段610を含む電気負荷600に供給される電流及び電圧に応じて、鉛蓄電池の目標出力電圧となる 第1の直流電圧制御値V2より高い第2の直流電圧制御値V2aを出力するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源となるエンジン(内燃機関)を自動停止・自動始動させるアイドルストップ機能付車両に搭載される車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷軽減のため、燃費向上を目的にアイドルストップ(自動停止・自動始動装置)機能付車両が増加している。このアイドルストップ機能付車両は、市街地走行時等で頻繁に自動停止・自動始動が繰り返されるため、自動始動時に、エンジン回転速度の吹き上がりや騒音の低減、エンジンの始動性確保、自動始動時の鉛蓄電池の電圧低下を抑制することが技術的な課題となっている。
【0003】
特許文献1では、発電機とスタータをそれぞれ搭載したアイドルストップ機能付車両において自動始動時に、発電機の発電電圧を上げておくことで、自動始動時のエンジン回転速度の吹き上がりを防止している。
【0004】
特許文献2では、発電機で発電した電力を蓄電池に充電することで、蓄電池が放電している期間は、発電を停止し、内燃機関などの駆動源のエネルギー消費を低減でき、スタータ手段の作動によるエンジンの始動性を確保すると共に、発電機の発電電力を安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53794号公報
【特許文献2】特開2010−104123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような構成では、自動始動時にスタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池の放電により、鉛蓄電池の電圧が低下することで電子機器がリセットされ、誤作動が起こることが問題となる。また、エンジンの始動性確保のため発電電圧が0になることも起こり得るため、始動後の発電が安定しないことも問題となる。
また、特許文献2のような構成では、自動始動時に発電を止めておくことで、自動始動時のスタータ手段の作動によるエンジンの始動性は確保できるが、スタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池の放電により鉛蓄電池の電圧が低下することで電子機器がリセットされることによる誤作動が問題となる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、エンジン始動時のスタータ手段の作動によるエンジンの始動性が向上でき、これによってスタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池の電圧の低下を抑制でき、自動始動後の内燃機関のエネルギー消費を低減できる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンの停止条件成立時に前記エンジンを停止し、前記エンジンの始動条件成立時にスタータ手段の作動により前記エンジンを始動するアイドルストップ機能付車両に搭載され、前記エンジンに接続され直流電圧を発生する発電装置と、前記発電装置から出力される直流電圧を第1の直流電圧制御値に変換して出力する電圧変換装置と、前記発電装置と前記電圧変換装置との間に接続された蓄電池と、前記電圧変換装置を介して電流、電圧を供給される前記スタータ手段を含む電気負荷と、前記電圧変換装置の出力により充電され、前記電気負荷への電流供給を行う鉛蓄電池と、アイドルストップ中か否かを判定するアイドルストップ判定装置を備えた車両用電源装置において、前記電圧変換装置は、前記アイドルストップ判定装置がアイドルストップ中であることを判定した場合、前記電気負荷に供給される電流及び電圧に応じて、前記第1の直流電圧制御値より高い第2の直流電圧制御値を出力するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アイドルストップ機能付車両において、スタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池の電圧低下を抑制すると共に、スタータ手段によるエンジンの始動性を向上させ、エンジン若しくは他の駆動源によるエネルギー消費を低減する車両用電源装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1の車両用電源装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における電圧変換装置の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1の車両用電源装置における電圧変換装置の制御フローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1における鉛蓄電池を模擬した等価回路である。
【図5】この発明の実施の形態1の車両用電源装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2の車両用電源装置における電圧変換装置の制御フローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2の車両用電源装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3の車両用電源装置の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3の電圧変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の車両用電源装置の構成図を示すものである。図1における発電装置200は、例えば、整流装置を含むオルタネータやMG(モータジェネレータ)などであり、エンジン(内燃機関)100の回転部にベルト等を介して機械的に接続されている(図示省略)。アイドルストップ判定装置300は、例えば、ECUであり、発電装置200の目標とする発電電圧を算出し、目標の直流電圧値となるよう、発電装置200の発電電圧を制御する。蓄電池700は、例えば電気二重層キャパシタであり、発電装置200が出力する直流電圧V1によって充電され、電圧変換装置400を介して、車両に搭載される電気負荷600へ電流供給を行う。電圧変換装置400は、発電装置200が出力する直流電圧V1を第1の直流電圧制御値V2となるように変圧して出力する。500は鉛蓄電池、600は車両に搭載されている電気負荷であり、共に電圧変換装置400の出力側に接続されている。このため、電圧変換装置400が出力する第1の直流電圧制御値V2は、出力側に接続された鉛蓄電池の目標出力電圧となる。車両に搭載されている電気負荷600には、スタータ手段としてのスタータ610も含まれている。
【0012】
鉛蓄電池500に接続されたスタータ610には、エンジンの停止・始動を行うアイドルストップ判定装置300が接続され、アイドルストップ判定装置300は、エンジン運転中に所定の停止条件(例えば、アクセル全閉、アイドル回転中、停車中、暖機後等)が成立して、自動停止要求が発生したときにエンジン100の燃焼(点火及び/又は燃料噴射)を停止させてエンジン回転を自動停止させるアイドルストップを実行し、このアイドルストップ中に、運転者が車両を発進させる操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み等)又は車両発進のための準備動作(例えば、ブレーキ操作解除、シフトレバーの走行レンジへのシフト操作等)を行ったときに、自動始動要求が発生してスタータ手段の作動によりエンジンを始動させるための動作を行う。
【0013】
図2に電圧変換装置400の構成を示す。電圧変換装置400は、例えば、降圧DC/DCコンバータであり、制御回路410、例えば、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチング素子420および421、リアクトル430、平滑コンデンサ440、電流検出手段450、電圧検出手段460から構成されている。なお、スイッチング素子421は、例えば、ダイオードなどを使用してもよい。
【0014】
次に、電圧変換装置400の電圧変換制御手段について説明する。電圧変換装置400に入力された直流電圧は、半導体スイッチング素子420、421、リアクトル430、平滑コンデンサ440からなる電圧変換回路に入力される。制御回路410は、電圧検出手段460(例えば、出力電圧を抵抗で分圧することで検出)により検出された出力電圧の値に基づいて、当該出力電圧を所望の値とするべく、スイッチング素子420のオン時間を決定する。このスイッチング素子420のオン時間を、例えば、パルス信号として、制御回路410からスイッチング素子420のゲートに入力することでスイッチング素子420をスイッチングさせ当該出力電圧を所望の値とするべく制御を行う。また、過電流保護や電流制御を目的に電圧変換装置400内には電流検出手段450(例えば、シャント抵抗や電流センサにより電流を検出)を備えるものとなっている。このようにして電圧変換装置400は、発電装置200が出力する直流電圧V1の電圧を変圧して第1の直流電圧制御値V2として出力する。
【0015】
次に、以上のように構成されたアイドルストップ機能付車両のアイドルストップから自動始動後までの電圧変換装置400の電圧変換制御手段の制御フローについて図3のフローチャートにより説明する。
【0016】
ステップS1では、アイドルストップ判定装置300は自動停止要求発生でアイドルストップ中か否かを判定する。アイドルストップ中であれば、アイドルストップ判定装置300は、電圧変換装置400へアイドルストップ中であることを示すアイドルストップ状態信号を出力し、電圧変換装置400は、入力されたアイドルストップ状態信号に基づき、電圧変換装置の出力側の直流電圧値を第1の直流電圧制御値V2より高い第2の直流電圧制御値V2aになるように制御を行うべく、第2の直流電圧制御値V2aを決定するためステップS2へ進む。アイドルストップ状態信号がアイドルストップ中ではないことを示す場合は、ステップS10に進む。
【0017】
ステップS2では、第2の直流電圧制御値V2aを決定するため、電圧変換装置400は、電流検出手段450と電圧検出手段460により、車両の電気負荷へ供給する出力電流ILoad、及び出力電圧V2を取得し、ステップS3に進む。このとき取得した電圧変換装置400の出力電流ILoadは、車両の電気負荷へ供給する電流であるため、アイドルストップ中の鉛蓄電池からの出力電流となる。また、電圧変換装置400の出力電圧V2は、電圧変換装置の出力側に鉛蓄電池が繋がれているため、鉛蓄電池の出力電圧となる。
【0018】
ステップS3では、電圧変換装置400は、ステップS2で計測した出力電流ILoadと出力電圧V2から下記式1により車両の電気負荷量RLoadを算出する。前記ステップS3で取得した出力電流と出力電圧はアイドルストップ中の車両の電気負荷へ供給する電流と電圧であるため、下記式1で算出される車両の電気負荷量RLoadはアイドルストップ中に車両の電気負荷が必要とする最小限の電気負荷量である。
【数1】

【0019】
ステップS4では、電圧変換装置400は、ステップS3で算出した車両の電気負荷量Rloadとスタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下量Vdown(例えば、予めデータとして電圧変換装置400が持っておく)から、下記式2によりスタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下により低下する電流量Idownを算出する。
【数2】

【0020】
ステップS5では、電圧変換装置400は、ステップS4で算出した電流量Idownからスタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下時でも車両の電気負荷が動作する電圧量Vupを図4に示す鉛蓄電池の等価回路より下記式3を用いて算出する。
図4に示す鉛蓄電池500の等価回路は、内部抵抗510、起電力520により構成されている。
内部抵抗510に電流が流れることで電圧が上昇するため、ステップS4で算出した電流量Idownと鉛蓄電池500の内部抵抗510から下記式3により、車両の電気負荷が動作する電圧量Vupを算出できる。
この式3は、図4の等価回路により求めたものであるが、鉛蓄電池500の種類や充電状態により内部抵抗も変化するため、鉛蓄電池500の種類や充電状態に応じた等価回路により算出する必要がある。また、予めステップS2で計測したILoadとV2に対する電圧量Vupをマップデータとして持っておき、直接Vupを算出する方法もある。
【数3】

Rvb:内部抵抗510の抵抗値である。
【0021】
また、ステップS5で算出するVupは、式3のようにリニアに決定する他、例えば、高電圧・中電圧・低電圧というように、Idownに応じて、段階的に決定することも可能である。
【0022】
ステップS6では、電圧変換装置400は、ステップS5で算出した電圧量Vupと第1の直流電圧制御値V2から下記式4より第2の直流電圧制御値V2aを算出する。
【数4】

【0023】
ステップS7では、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧値をステップS6で算出した第2の直流電圧制御値V2aになるように制御する。このとき、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧値を第2の直流電圧制御値V2aになるように制御するが、電圧変換装置400は、鉛蓄電池500に直結かつ大電流を扱う部分であるため、サージ防止の観点から、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧値を第2の直流電圧制御値V2aになるように徐々に変化させるものとする。
【0024】
さらに、ステップS7で電圧変換装置400は出力側の直流電圧を第2の直流電圧制御値V2aになるように制御する際の変圧速度も変えることが出来る。例えば、第2の直流電圧制御値V2aが大きいときは、出力側の直流電圧値を変圧する速度を遅くし、第2の直流電圧制御値V2aが小さいときは、出力側の直流電圧値を変圧する速度を早くすることも可能である。
【0025】
ステップS8では、アイドルストップ判定装置300は、自動始動要求が発生したかの判断を行う。自動始動要求が発生したら、ステップS10へ進み、自動始動要求が発生しなかったら、ステップS8へ戻り車両の電気負荷量から、第2の直流電圧制御値V2aを決定し制御する。
【0026】
ステップS9では、アイドルストップ判定装置300は、自動始動要求発生によりスタータ610の作動によるエンジンの始動が行われた際の鉛蓄電池500の電圧から、電圧変換装置400は出力側の直流電圧値を第1の直流電圧制御値V2に制御するか否かを判断する。スタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下後、電圧変換装置400からの充電により鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達しなかった場合は、ステップS9を継続する。鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達した場合、ステップS10に進む。
【0027】
ステップS10では、アイドルストップ判定装置300は、鉛蓄電池500の電圧が第2の直流電圧制御値V2aに達したことでエンジン始動が完了したと判断し、電圧変換装置400にアイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号を出力する。
【0028】
ステップS11では、電圧変換装置400は、入力されたアイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号により、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になるように制御する。
【0029】
また、ステップS9〜S11では、ステップS9でのスタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下後、電圧変換装置400からの充電により鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達する前にステップS10、ステップS11に進むことが可能である。例えば、ステップS9での自動始動要求発生によるスタータ610が作動後、鉛蓄電池500の電圧低下を見て、すぐにステップS10に進む。ステップS10では鉛蓄電池の電圧低下を見てアイドルストップ中ではないことを判断し、ステップS11に進む。そして、ステップS11では電圧変換装置400の出力側の直流電圧を第1の直流電圧制御値V2になるように制御することも可能である。
【0030】
また、ステップS1で、アイドルストップ判定装置は、アイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号を電圧変換装置400に入力した場合、このステップS11で、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になる制御を継続する。これにより、自動停止要求によるアイドルストップから自動始動後までの実施の形態1の電圧変換装置400の電圧変換制御手段の制御フローを示した。
【0031】
本実施の形態1による電圧変換装置400の電圧変換制御手段の制御フローの結果として、アイドルストップから自動始動後までのエンジン回転速度、アイドルストップ状態信号、電圧変換装置400の出力電流、電圧変換装置400の出力側の直流電圧制御値、鉛蓄電池500の電圧のタイミングチャートを図5に示す。
【0032】
図5のグラフG1はエンジン100のエンジン回転速度の推移を、グラフG2はアイドルストップシステムによる自動停止要求の発生、及び自動始動要求の発生を、グラフG3は電圧変換装置400の出力電流を、グラフG4は、アイドルストップ判定装置300からのアイドルストップ状態信号を、グラフG5は本発明による鉛蓄電池500の電圧の推移を示したものであり、グラフG6は、従来装置による鉛蓄電池500の電圧の推移を示したものである。
【0033】
t1は、アイドルストップ条件により自動停止要求が発生した時間である。t1以降アイドルストップ判定装置300はエンジンを停止する動作に入るため、エンジン回転速度は低下していく。
【0034】
t2は、エンジン回転速度が0になった時間であり、アイドルストップ判定装置300がアイドルストップ中と判定した時間でもある。このとき、アイドルストップ判定装置300はアイドルストップ中であることを示すアイドルストップ状態信号を電圧変換装置400に送る。このとき、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2に制御するか、第2の直流電圧制御値V2aに制御するかをアイドルストップ状態信号により判定する。このアイドルストップ状態信号は、例えば、アイドルストップ中である場合はオン、アイドルストップ中ではない場合はオフというオン/オフ信号であってもよい。オン信号であれば、電圧変換装置400はアイドルストップ中と判断し、出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aになるように電圧変換制御を行い、オフ信号であれば、電圧変換装置400はアイドルストップ中ではないと判断し、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になるように電圧変換制御を行う。
【0035】
t3は、エンジン100を始動させるためアイドルストップシステムからの自動始動要求が発生した時間であり、自動始動要求を受けて、スタータ610の作動によりエンジン100の始動を行う。そして、スタータ手段の作動に伴い鉛蓄電池500の電圧は低下する。鉛蓄電池500の電圧低下後、電圧変換装置400からの充電により、鉛蓄電池500の電圧は上昇する。
【0036】
t4は本発明により、鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達した時間であり、アイドルストップ判定装置300が電圧変換装置400にアイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号を出力する時間でもある。アイドルストップ判定装置300から入力されたアイドルストップ状態信号に基づき、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧を第1の直流電圧制御値V2に制御する。
【0037】
t5は従来装置により、鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達した時間である。
これにより、本発明は、アイドルストップ中に、電圧変換装置400の出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aに制御し、スタータ610に通電してエンジン100を自動始動することで、鉛蓄電池500の電圧低下を抑制することを示した。
【0038】
前記ステップS2〜S10は、アイドルストップ中の電圧変換装置400の出力側の直流出力制御値V2を第2の直流電圧制御値V2aにするための制御であり、ステップS1で自動停止要求が発生してもアイドルストップ前に、運転者が再加速させるなどの操作を行ったとしても、エンジン100は回転したままなので、運転者に違和感なく運転を継続することが可能となる。また、アイドルストップ中の車両負荷が少ない時点での車両の電気負荷量を元に、第2の直流電圧制御値V2aを決定するため、蓄電池700からのエネルギーの消費も必要最小限で済む。
【0039】
あるいは、前記ステップS1で、アイドルストップシステムからの自動停止要求が発生した際に、アイドルストップ判定装置300がアイドルストップ中であることを判断する前に、電圧変換装置400の出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aになるように制御することで、アイドルストップから自動始動までが早い場合、スタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下を抑制することができる。また、自動始動要求が発生し、アイドルストップ中であることを判断する前に、運転者が再加速させるなどの操作を行ったとしても、エンジンは回転したままなので、運転者に違和感なく運転を継続することが可能であり、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2に制御するだけで済む。
【0040】
従来は、自動始動時のスタータ610の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下が大きく、また低下した電圧を上昇させる時間もかかるため、電気負荷の種々の不具合の発生が懸念される。
【0041】
本実施の形態1では、アイドルストップ機能付車両において、アイドルストップ中に電圧変換装置400の出力電圧を上げることで鉛蓄電池500の電圧を上昇させ、自動始動時のスタータ手段の作動に伴う鉛蓄電池500の電圧低下を抑制することで、鉛蓄電池500の電圧低下によって引き起こされる電気負荷の種々の不具合を未然に防ぐことが出来る。
【0042】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2の電圧変換装置400の制御フローを示すものである。
実施の形態1のステップS9の部分がステップS9bに変わったものとなっている。
ステップS9bでは、アイドルストップ判定装置300は、自動始動要求発生からスタータ610の作動により始動したエンジン回転速度から電圧変換装置400の出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aに制御するか第1の直流電圧制御値V2に制御するかの判断をする。クランキング後のスタータ610の作動による放電後、エンジン回転速度が所定値(例えば、アイドル回転速度等)に達した場合、ステップS10に進む。一方でエンジン回転速度が所定値に達しなかった場合、ステップS9b を継続し、電圧変換装置400は出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aになる制御を継続する。
【0043】
ステップS10では、アイドルストップ判定装置300は、エンジン回転速度が所定値に達したことで自動始動が完了したと判断し、アイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号を電圧変換装置400に出力する。
【0044】
ステップS11では、電圧変換装置400は、入力されたアイドルストップ状態信号により、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になるように制御する。
このステップS11で、発電機200は、発電に必要な回転速度が得られているため、蓄電池700への充電を素早く行うことが出来る。これにより、蓄電池700の充電電圧が小さくとも、スタータ610によるエンジン始動を行った後、蓄電池700への充電が素早くできるため、鉛蓄電池500の電圧が第1の直流電圧制御値V2に達しなくても、鉛蓄電池500の電圧低下を抑制することが出来る。
これにより、自動停止要求によるアイドルストップから自動始動後までの実施の形態2の電圧変換装置400の電圧変換制御手段の制御フローを示した。
【0045】
図7はこの発明の実施の形態2の電圧変換装置400の制御フローの結果として、自動停止要求によるアイドルストップから自動始動後までの鉛蓄電池500の電圧のタイミングチャートを示すものである。
【0046】
図7のグラフG1はエンジン100のエンジン回転速度の推移を、グラフG2はアイドルストップシステムによる自動停止要求の発生、及び自動始動要求の発生を、グラフG3は電圧変換装置400の出力電流を、グラフG4は、アイドルストップ判定装置300からのアイドルストップ状態信号を、グラフG5は本発明による鉛蓄電池500の電圧の推移を示したものであり、グラフG6は、従来装置による鉛蓄電池500の電圧の推移を示したものである。
【0047】
t1は、アイドルストップ条件により自動停止要求が発生した時間である。t1以降アイドルストップ判定装置300はエンジンを停止する動作に入るため、エンジン回転速度は低下していく。
【0048】
t2は、エンジン回転速度が0になった時間であり、アイドルストップ判定装置がアイドルストップ中であると判定した時間でもある。このとき、アイドルストップ判定装置300は、アイドルストップ中であることを示すアイドルストップ状態信号を電圧変換装置400に出力する。このとき、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2に制御するか、第2の直流電圧制御値V2aに制御するかをアイドルストップ状態信号に基づき判定する。このアイドルストップ状態信号は、例えば、アイドルストップ中の場合はオン、アイドルストップ中では無い場合はオフというオン/オフ信号であってもよい。オン信号であれば、電圧変換装置400はアイドルストップ中であると判断し、出力側の直流電圧制御値を第2の直流電圧制御値V2aになるように電圧変換制御を行い、オフ信号であれば、電圧変換装置400はアイドルストップ中ではないと判断し、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になるように電圧変換制御を行う。
【0049】
t3は、エンジン100を始動させるため自動始動要求が発生した時間であり、自動始動要求を受けて、スタータ610の作動によりエンジンの始動を行う。そして、スタータ手段の作動に伴い鉛蓄電池500の電圧は低下する。鉛蓄電池500の電圧低下後、電圧変換装置400からの充電により、鉛蓄電池500の電圧は上昇する。
【0050】
t4は実施の形態2により、エンジン100のエンジン回転速度が所定の回転速度に達した時間であり、アイドルストップ判定装置300が電圧変換装置400にアイドルストップ中ではないことを示すアイドルストップ状態信号を出力する時間でもある。アイドルストップ判定装置300から入力されたアイドルストップ状態信号に基づき、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧制御値を第1の直流電圧制御値V2になるように制御する。これにより、本実施の形態2によると、エンジン回転速度が所定値に達した際、発電機200の発電を行うことで、蓄電池700の充電電圧が小さくとも、スタータ610によるエンジン始動を行った後、蓄電池700への充電が素早くできるため、鉛蓄電池500の電圧が第2の目標直流電圧に達しなくても、鉛蓄電池500の電圧低下を抑制することが出来る。
【0051】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3の車両用電源装置の構成図を示すものである。図1で示した構成と異なる点は、電圧変換装置400が電気負荷に供給している電流情報をアイドルストップ判定装置に出力している点、及びアイドルストップ判定装置が電圧変換装置400へ第3の直流電圧制御値V2bを出力している点で異なっている。
【0052】
図9に本実施の形態3の電圧変換装置400の構成を示す。電圧変換装置400は、図2と同じ構成となっているが、電流検出手段450で検出した電気負荷へ供給する電流情報を電圧変換装置400内の制御回路410からアイドルストップ判定装置300に出力している点、及びアイドルストップ判定装置300から電圧変換装置400内の制御回路410へ第3の直流電圧制御値V2bを入力している点で異なっている。
【0053】
本実施の形態3による電圧変換装置400は、アイドルストップ中に、電流検出手段450で検出した電気負荷へ供給する電流情報をアイドルストップ判定装置300へ出力する。続いて、アイドルストップ判定装置300は、第3の直流電圧制御値V2bを算出し、この第3の直流電圧制御値V2bを電圧変換装置400へ出力する。そして、電圧変換装置400は、出力側の直流電圧を第3の直流電圧制御値V2bになるように制御する。また、実施の形態1に示す方法で車両の電気負荷を検出するほか、アイドルストップ判定装置300は車両全体の制御も担っているため、ワイパーやエアコンなどの車両の電気負荷の稼動状態を把握することが出来る。この把握した負荷状態を元に、実施の形態1で検出した電気負荷に対して、検出した負荷が多ければ減らし、検出した負荷が少なければ、増やすなどの補正を行うことでより詳細な車両の電気負荷の状態を知ることが可能となる。これにより、アイドルストップ判定装置300によって車両のより詳細な負荷状態を検出することになるため、アイドルストップ判定装置300で第3の直流電圧制御値V2bを決定することは、スタータ610の作動に伴う鉛蓄電池の電圧低下を抑制するだけでなく、蓄電池700のエネルギー消費を低減することも出来る。
以上の異なる点を除けば、本実施の形態3は、実施の形態1および実施の形態2でと同等となるため、説明は省略する。
【符号の説明】
【0054】
100 エンジン、200 発電装置、300 アイドルストップ判定装置、400 電圧変換装置、410 制御回路、420 スイッチング素子、421 スイッチング素子、430 リアクトル、440 平滑コンデンサ、450 電流検出手段、460 電圧検出手段、500 鉛蓄電池、510 内部抵抗、520 起電力、600 電気負荷、610 スタータ、700 蓄電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの停止条件成立時に前記エンジンを停止し、前記エンジンの始動条件成立時にスタータ手段の作動により前記エンジンを始動するアイドルストップ機能付車両に搭載され、
前記エンジンに接続され直流電圧を発生する発電装置と、
前記発電装置から出力される直流電圧を第1の直流電圧制御値に変換して出力する電圧変換装置と、
前記発電装置と前記電圧変換装置との間に接続された蓄電池と、
前記電圧変換装置を介して電流、電圧を供給される前記スタータ手段を含む電気負荷と、前記電圧変換装置の出力により充電され、前記電気負荷への電流供給を行う鉛蓄電池と、アイドルストップ中か否かを判定するアイドルストップ判定装置を備えた車両用電源装置において、
前記電圧変換装置は、前記アイドルストップ判定装置がアイドルストップ中であることを判定した場合、前記電気負荷に供給される電流及び電圧に応じて、前記鉛蓄電池の目標出力電圧となる前記第1の直流電圧制御値より高い直流電圧制御値を出力することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記第1の直流電圧制御値より高い直流電圧制御値は、前記第1の直流電圧制御値に、前記スタータ手段の作動を含む前記電気負荷の増加に対応して算出された電圧量を加算したものであることを特徴とする請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記電圧変換装置は、前記電気負荷へ供給する電流、電圧をそれぞれ検出する電流検出手段及び電圧検出手段を有し、前記アイドルストップ判定装置がアイドルストップ中であることを判定した場合、前記アイドルストップ判定装置から出力されるアイドルストップ状態信号と前記電流検出手段及び電圧検出手段の検出値とに基づき、前記鉛蓄電池の目標出力電圧を前記第1の直流電圧制御値より高い第2の直流電圧制御値に制御する電圧変換制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記アイドルストップ判定装置は、アイドルストップ中であることを判定した場合、前記電圧変換装置に設けられ、前記電気負荷へ供給する電流及び電圧をそれぞれ検出する電流検出手段及び電圧検出手段の検出値に基づき、前記第1の直流電圧制御値より高い第3の直流電圧制御値を算出して前記電圧変換装置に出力し、
前記電圧変換装置は、入力された前記第3の直流電圧制御値に応じて、前記鉛蓄電池の目標出力電圧を前記第1の直流電圧制御値より高い第3の直流電圧制御値に制御する電圧変換制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記エンジンの始動条件の成立時に、前記スタータ手段の作動に伴い低下した前記鉛蓄電池の出力電圧値が、前記電圧変換装置による充電により上昇し、第1の直流電圧制御値以上になった時前記電圧変換装置は第1の直流電圧制御値を出力するように制御されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記エンジンの始動条件成立時に、前記スタータ手段の作動に伴い低下した前記鉛蓄電池の出力電圧値が前記第1の直流電圧制御値以下で、かつ、前記エンジンの回転速度が所定の回転速度以上になった時、前記電圧変換装置は前記第1の直流電圧制御値を出力するように制御されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255361(P2012−255361A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127994(P2011−127994)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】