説明

車両端部構造

【課題】 車両の衝突時にバンパリインフォースメントの延伸部を確実に車両外側へ変形させる。
【解決手段】 車両前部構造10では、車両の前面衝突時に、クラッシュボックス14が車両後側へ圧縮変形されると共に、フロントバンパリインフォースメント16が車両後側へ変位される。ここで、フロントバンパリインフォースメント16の車両後側への変位により、ブラケット26の上側面32及び下側面34がフロントバンパリインフォースメント16の上板20及び下板22を車両前側へ変形させる。これにより、車両の前面衝突時におけるクラッシュボックス14の変形状況に拘らず、フロントバンパリインフォースメント16の上板20及び下板22を確実に車両前側へ変形させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドメンバの車両外側端にバンパリインフォースメントが設けられた車両端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両端部構造としては、平板状部材(バンパリインフォースメント)に接合された一対のチャンネル状ブラケットの両側面がそれぞれ一対のフレーム(サイドメンバ)の両側面に嵌着接合されて、平板状部材が一対のフレームに取り付けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両端部構造では、車両の前面衝突時に、フレームの両側面が拡開変形されることで、チャンネル状ブラケットの両側面が車両前側へ拡開変形される。
【0004】
しかしながら、この車両端部構造では、仮に車両の前面衝突時にフレームの両側面が拡開変形されない構成であると、チャンネル状ブラケットの両側面が車両前側へ拡開変形されず、これにより、チャンネル状ブラケットの側面が一対のフレーム間に設けられたラジエータに干渉してラジエータが損傷する可能性がある。
【特許文献1】特開2002−293264公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、車両の衝突時にバンパリインフォースメントの延伸部を確実に車両外側へ変形させることができる車両端部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両端部構造は、車両の前部又は後部に設けられ、車両の衝突時に車両内側へ変形されるサイドメンバと、前記サイドメンバの車両外側端に設けられると共に、前記サイドメンバの車両外側端よりも車両内側へ延伸された延伸部が設けられ、車両の衝突時に前記サイドメンバの車両内側への変形と共に車両内側へ変位されるバンパリインフォースメントと、前記バンパリインフォースメントの車両内側に設けられ、車両の衝突時に前記バンパリインフォースメントの車両内側への変位により前記延伸部を車両外側へ変形させる変形部材と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両端部構造は、請求項1に記載の車両端部構造において、前記変形部材は、車両内側へ向かうに従い前記バンパリインフォースメントの外側へ向かう方向へ傾斜され、車両の衝突時に前記延伸部を車両外側へ変形させる傾斜面を有する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の車両端部構造では、車両の前部又は後部に設けられたサイドメンバの車両外側端にバンパリインフォースメントが設けられており、バンパリインフォースメントに設けられた延伸部がサイドメンバの車両外側端よりも車両内側へ延伸されている。
【0009】
車両の衝突時には、サイドメンバが車両内側へ変形されると共に、バンパリインフォースメントが車両内側へ変位される。
【0010】
ここで、バンパリインフォースメントの車両内側に変形部材が設けられており、車両の衝突時には、バンパリインフォースメントの車両内側への変位により変形部材がバンパリインフォースメントの延伸部を車両外側へ変形させる。これにより、延伸部を確実に車両外側へ変形させることができる。
【0011】
請求項2に記載の車両端部構造では、変形部材の傾斜面が車両内側へ向かうに従いバンパリインフォースメントの外側へ向かう方向へ傾斜されており、車両の衝突時には傾斜面が延伸部を車両外側へ変形させる。これにより、延伸部を一層確実に車両外側へ変形させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には、本発明の車両端部構造が適用されて構成された実施の形態に係る車両前部構造10が車両左斜め前方から見た斜視図にて示されており、図2には、車両前部構造10が車両左側から見た断面図(図1の2−2線断面図)にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両右方を矢印RWで示し、上方を矢印UPで示す。
【0013】
本実施の形態に係る車両前部構造10は、サイドメンバとしての矩形筒状のフロントサイドメンバ12を一対備えており、一対のフロントサイドメンバ12は車両の前部の右部及び左部に車両前後方向に沿って配置されている。各フロントサイドメンバ12の車両前側部には、クラッシュボックス14が設けられており、各クラッシュボックス14は各フロントサイドメンバ12の他の部分よりも軸方向への圧縮強度が低くされている。
【0014】
一対のフロントサイドメンバ12の車両前側端間(一対のクラッシュボックス14の車両前側端間)には、バンパリインフォースメントとしての板状のフロントバンパリインフォースメント16が架け渡されており、フロントバンパリインフォースメント16は車幅方向に配置されている。フロントバンパリインフォースメント16は、湾曲板状の前板18を有しており、フロントバンパリインフォースメント16は前板18において各フロントサイドメンバ12の車両前側端に固定されている。フロントバンパリインフォースメント16は、延伸部としての断面L字形板状の上板20及び下板22を有しており、上板20及び下板22は前板18から車両後側へ延伸されている。さらに、上板20の先端側部は上側へ突出される一方、下板22の先端側部は下側へ突出されている。
【0015】
各フロントサイドメンバ12には、各クラッシュボックス14の車両後側端において、支持部材としての平板状の支持板24が固定されており、各支持板24は各フロントサイドメンバ12から上側、下側及び車幅方向内側へ突出している。
【0016】
各支持板24には、変形部材としての台形板状のブラケット26が固定されており、各ブラケット26は各フロントサイドメンバ12の車幅方向内側かつフロントバンパリインフォースメント16の車両後方に配置されている。ブラケット26の車両前側面28の上下方向長さはフロントバンパリインフォースメント16の上板20と下板22との間隙の上下方向長さに対して同一又は短くされる一方、ブラケット26の車両後側面30の上下方向長さはフロントバンパリインフォースメント16の上板20と下板22との間隙の上下方向長さに対して長くされている。さらに、ブラケット26の上側面32及び下側面34は平面状の傾斜面とされており、ブラケット26の上側面32は車両後側に向かうに従い上側へ向かう方向へ傾斜されると共に、ブラケット26の下側面34は車両後側に向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。
【0017】
また、車両には、一対の支持板24間において、保護対象としての冷却系36(ラジエータ)が固定されている。
【0018】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0019】
以上の構成の車両前部構造10では、図3に示す如く、車両の前面衝突時に、フロントサイドメンバ12のクラッシュボックス14が車両後側へ圧縮変形されると共に、フロントバンパリインフォースメント16が車両後側へ変位(変形)されることで、衝突荷重が吸収される。
【0020】
ここで、上記フロントバンパリインフォースメント16の車両後側への変位により、ブラケット26の上側面32がフロントバンパリインフォースメント16の上板20を上側かつ車両前側へ変形(変位)させると共に、ブラケット26の下側面34がフロントバンパリインフォースメント16の下板22を下側かつ車両前側へ変形(変位)させる。これにより、車両の前面衝突時におけるフロントサイドメンバ12(クラッシュボックス14)の変形状況に拘らず(車両の前面衝突時にクラッシュボックス14の上面及び下面がそれぞれ上側及び下側へ変形されなくても)、フロントバンパリインフォースメント16の上板20及び下板22を確実に車両前側へ変形させることができる。このため、フロントバンパリインフォースメント16の上板20及び下板22による冷却系36の損傷を防止することができ、車両のダメージャビリティを向上させることができる。
【0021】
さらに、ブラケット26の上側面32が車両後側に向かうに従い上側へ向かう方向へ傾斜されると共に、ブラケット26の下側面34が車両後側に向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。これにより、フロントバンパリインフォースメント16の上板20及び下板22を一層確実に車両前側へ変形させることができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、本発明を車両前部構造10に適用した構成としたが、本発明を車両後部構造に適用した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両前部構造を示す車両左斜め前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両前部構造を示す車両左側から見た断面図(図1の2−2線断面図)である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両前部構造の車両前面衝突時における状況を示す車両左側から見た断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 車両前部構造(車両端部構造)
12 フロントサイドメンバ(サイドメンバ)
16 フロントバンパリインフォースメント(バンパリインフォースメント)
20 上板(延伸部)
22 下板(延伸部)
26 ブラケット(変形部材)
32 上側面(傾斜面)
34 下側面(傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部又は後部に設けられ、車両の衝突時に車両内側へ変形されるサイドメンバと、
前記サイドメンバの車両外側端に設けられると共に、前記サイドメンバの車両外側端よりも車両内側へ延伸された延伸部が設けられ、車両の衝突時に前記サイドメンバの車両内側への変形と共に車両内側へ変位されるバンパリインフォースメントと、
前記バンパリインフォースメントの車両内側に設けられ、車両の衝突時に前記バンパリインフォースメントの車両内側への変位により前記延伸部を車両外側へ変形させる変形部材と、
を備えた車両端部構造。
【請求項2】
前記変形部材は、車両内側へ向かうに従い前記バンパリインフォースメントの外側へ向かう方向へ傾斜され、車両の衝突時に前記延伸部を車両外側へ変形させる傾斜面を有する、ことを特徴とする請求項1記載の車両端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160218(P2006−160218A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358894(P2004−358894)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】