説明

車両部品アッセンブリの固定構造

【課題】レイアウト上の制約を受け難く、且つ安定した仮置き状態を得ることができる車両部品アッセンブリの固定構造の提供。
【解決手段】クロスメンバ4の被取付板部4aに固定されるブラケット2の第1接続部22は、被取付板部4aの表面上に突出する第1の突出部25と被取付板部4aの裏面上に突出する第2の突出部26とを有する。第2の突出部26は、第1の突出部25から離間する方向へ膨出して第1の突出部25との間に懐状空間27を区画する曲折部28を有する。第1の突出部25と第2の突出部26との間に被取付板部4aを挿入し第1突出部25を被取付板部4aの表面上に載置することにより車両部品アッセンブリ1を仮置き位置に配置するとき、懐状空間27は、仮置き位置に対して傾斜した第1の突出部25と第2の突出部26との間に、被取付板部4aが進入して仮置き位置へ移動することを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部品とこれを支持するブラケットとを備えた車両部品アッセンブリを、ブラケットを介して車体フレームに固定する車両部品アッセンブリの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−145379号公報には、ABSアクチュエータのような車両部品をブラケットを介して車体フレームに締結する際に、作業性の向上と安全性の向上のため、ブラケットの水平方向他方側に係止部に設けた係止部を車体フレームの裏面側に係止させて車両部品アッセンブリを車体フレームに仮置きする構造が開示されている。この係止部は、車体フレームのうちブラケットが支持される面に形成された孔部を通って車体フレームの裏面側に突出する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−145379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構造では、係止部を車体フレームの裏面側に係止させる際に、ブラケットを、車体フレームに対して水平となる所定位置に設定した後、水平方向に移動させたり回転させる必要がある。このため、ブラケットの周囲に、所定位置からのブラケットの移動を許容する空間を確保しなければならない。従って、ブラケットの移動空間の確保が困難な場合には、係る構造を採用できず、レイアウト上の制約を受け易いという不都合があった。
【0005】
そこで、本発明は、レイアウト上の制約を受け難く、且つ安定した仮置き状態を得ることができる車両部品アッセンブリの固定構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車両部品とこの車両部品を支持するブラケットとを備えた車両部品アッセンブリのブラケットを、離間する第1及び第2の車体フレーム間に掛け渡して固定する車両部品アッセンブリの固定構造であって、第1の車体フレームは、表面と裏面とを有する被取付板部を備え、ブラケットは、第1の車体フレームの被取付板部に固定される一端部と、第2の車体フレームの表面上に配置される他端部と、を備える。
【0007】
ブラケットの一端部は、被取付板部の表面上に突出する第1の突出部と、被取付板部の裏面上に突出する第2の突出部と、を有する。第2の突出部は、第1の突出部から離間する方向へ膨出して第1の突出部との間に懐状空間を区画する曲折部を有する。第1の突出部と第2の突出部との間に被取付板部を挿入し第1の突出部を被取付板部の表面上に載置することにより車両部品アッセンブリを仮置き位置に配置するとき、懐状空間は、仮置き位置に対して傾斜した第1の突出部と第2の突出部との間に、被取付板部が進入して仮置き位置へ移動することを許容する。
【0008】
上記構成では、第1の突出部と第2の突出部との間に懐状空間が設けられ、この懐状空間は、仮置き位置に対して傾斜した第1の突出部と第2の突出部との間に、被取付板部が進入して仮置き位置へ移動することを許容する。すなわち、車両部品アッセンブリを車体フレームに対して取り付ける場合、仮置き位置に対してブラケットの一端部を傾斜させ、第1の突出部と第2の突出部との間に被取付板部の先端を進入させながら、車両部品アッセンブリを仮置き位置へ移動させることができる。このため、ブラケットが車体フレームに対して水平となる所定位置に車両部品アッセンブリを設定し、この所定位置から車両部品アッセンブリを水平方向又に移動させたり回転させて仮置き位置へ移動させる場合に比べて、車両部品アッセンブリの移動のために必要となる空間が少なくて済む。従って、車両部品アッセンブリを組み付ける際に他の部材が障害となり難く、レイアウト上の自由度が増す。
【0009】
また、仮置き位置では、ブラケットの第1の突出部と第2の突出部との間に被取付板部が収容されているため、車体フレーム上にブラケットを単に載置した場合に比べて、安定した仮置き状態を得ることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様に係る車両部品アッセンブリの固定構造であって、ブラケットの一端部は、略U字状の切り込み溝が形成された板形状を有する。ブラケットの一端部のうち切り込み溝の内側に区画された領域は、第1の突出部を含む。ブラケットの一端部のうち切り込み溝の外側に区画された領域は、第2の突出部を含む。
【0011】
上記構成では、ブラケットの一端部に他の部材を設けることなく、第1及び第2の突部を形成することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記第1又は第2の態様に係る車両部品アッセンブリの固定構造であって、ブラケットは、一端部を有する第1のアーム部材と、他端部を有する第2のアーム部材と、を備える。第1及び第2のアーム部材の一方は、車両部品が固定される部品固定部と、第1及び第2のアーム部材の他方が固定されるアーム固定部と、を有する。アーム固定部は、部品固定部に車両部品を固定した状態で外部に露出している。
【0013】
車体フレーム間の間隔や高低差は、車種や車型の相違によって異なる場合が多く、さらに同一の車種の車型であっても、異なる場合がある。この点に関し、上記構成では、ブラケットが第1及び第2のアームによって構成されているので、第1及び第2のアーム部材の一方又は他方の寸法形状を変更することにより、車体フレーム間の間隔や高低差が相違する場合であっても、本構造を適用することができる。
【0014】
また、アーム固定部は、部品固定部に車両部品を固定した状態で外部に露出しているので、一方のアーム部材を車両部品に固定した半完成状態の車両部品アッセンブリを共通部品として用意しておき、この半完成状態の車両部品アッセンブリに対し車種に応じて適切な他方のアーム部材を後から固定することができる。このため、共通部品のユニット化を進めることができ、部品共通化によるコストの低減を図ることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様に係る車両部品アッセンブリの固定構造であって、一方のアーム部材のアーム固定部は、段状に曲折する接続面を有する。他方のアーム部材は、段状に曲折し接続面に重ねられて面接触する被接続面を有する。
【0016】
上記構成では、共に段状に曲折する接触面と非接触面とを重ねて面接触させているので、この面接触している部分を溶着等によって固定することにより、一方のアーム部材と他方のアーム部材とを強固に固定することができる。
【0017】
また、上記構成に加えて、他方のアーム部材を板部材で形成する場合に、段状に曲折する被接続面を有するU状部分を形成してもよい。この場合、U状部分が補強用のリブとして機能するため、車両部品アッセンブリに対する他方のアーム部材の剛性を高めることができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、上記第1〜第4の何れかに係る車両アッセンブリの固定構造であって、第1及び第2の突出部と被取付板部とは、これらを締結固定するためのボルトを挿通するボルト挿通孔を有する。第2の突出部には、ボルトと螺合するナットが固定されている。
【0019】
ブラケットを車体フレームにボルト及びナットによって締結固定する場合、車体フレームの裏面側にナットを予め固定しておけば、車体フレームの表面側からボルトを挿通して締め込むだけで済むため、作業性が良い。しかし、車体フレームは大型の部材であるため、ナットを精度良く所定位置に固定することは難しい。この点に関し、上記構成では、車体フレームの裏面上に突出するブラケットの第2の突出部にナットを固定しており、ブラケットは車体フレームに比べて小型であるため、ナットを精度良く所定位置に固定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レイアウト上の制約を受け難く、且つ安定した仮置き状態とすることが可能な車両部品アッセンブリの固定構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本実施形態に係る車両部品アッセンブリの固定構造を示す側面図、図2は図1の固定構造を矢印II方向から視た平面図、図3は図1の固定構造の斜視図、図4は図1の第1のアーム部材をクロスメンバから分離した状態を示す斜視図、図5は図1のブラケットを示す側面図、図6は図1の車両部品アッセンブリの取付方法を示す側面図である。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両部品アッセンブリを仮置きする場合の上方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前方とは車両前方FRであり、後方とは車両後方(車両前方FRに対して反対方向)である。
【0023】
図1〜図5に示すように、車両部品アッセンブリとしてのABSアクチュエータアッセンブリ1は、ブラケット2と車両部品としてのABSアクチュエータ3とを備える。ブラケット2は、車幅方向へ延びて左右のシャーシフレーム(図示外)に接合された第1及び第2の車体フレームとしての前後2本のクロスメンバ4,5に固定される。
【0024】
図1はブラケット2の下面にABSアクチュエータ3を装着した状態を図示しているが、これは、ABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に仮置きした場合の状態を示しており、車両の実際の上下関係は図1とは逆である。すなわち、ABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に締結した後は、シャーシフレーム(図示外)及びクロスメンバ4,5は反転され、ABSアクチュエータ3はブラケット2の上面に搭載された状態となる。なお、以下の説明における上下関係は、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置きする場合を基準とする。
【0025】
前方及び後方のクロスメンバ4,5は、共に後方へ開口する略U状断面を有し、所定距離だけ離間した状態で車幅方向に沿って略平行に延びている。各クロスメンバ4,5の上部の被取付板部4a,5aには、ブラケット2が締結固定される。なお、後方のクロスメンバ5の後部内側には補強板19が固着され、クロスメンバ5と補強板19とにより閉空間が形成されている。
【0026】
ブラケット2は、第1のアーム部材6と第2のアーム部材7とを備える。第1及び第2のアーム部材6,7は、金属板に対して打ち抜き加工及びプレス加工を施すことにより、それぞれ所定形状に成形されている。
【0027】
第2のアーム部材7は、基板部8と、第1及び第2の部品固定部9,10と、ブラケット2の他端部としての2箇所の第2接続部11,12と、を備えている。
【0028】
基板部8は、ABSアクチュエータ3の上方に配置される。第1の部品固定部9は、基板部8の前端から下方へ曲折され、第2の部品固定部10は、基板部8の後端から下方へ曲折されている。第2接続部11,12は、基板部8の後端から斜め後下方へ曲折されて延び、第2の部品固定部10は、2箇所の第2接続部11,12の間に配置されている。第1の部品固定部9は、ABSアクチュエータ3の前面下部にボルト・ナット40により締結固定され、第2の部品固定部10は、ABSアクチュエータ3の後面上部にボルト・ナット41により締結固定される。
【0029】
基板部8の前方領域には前下方へ向かって段状に曲折する接合支持部20が形成され、接合支持部20の表面はアーム固定部としての接続面13を構成している。接続面13は、基板部8の後方領域の表面に連続する第1面13aと、第1面13aの前端から下方へ延びる第2面13bと、第2面13bの下端から前方へ延びて第1の部品固定部9の後面に連続する第3面13cと、を有する。第1及び第2の部品固定部9,10とABSアクチュエータ3とを締結固定した状態で、接続面13は外部に露出している。
【0030】
第2接続部11,12の後端部には、基板部8と略平行に曲折されて後方へ延びる締結固定部42,43が設けられている。締結固定部42,43と後方のクロスメンバ5の被取付板部5aとには、これらを締結固定するためのボルト15を挿通するボルト挿通孔16,17が形成されている。また、被取付板部5aの裏面には、ボルト15と螺合するナット18が固定されている。
【0031】
第1のアーム部材6は、接合固定部21と、ブラケット2の一端部としての第1接続部22と、を備えている。
【0032】
接合固定部21は第2のアーム部材7の接合支持部20と重なり合うように段状に曲折し、接合固定部21の裏面は被接続面23を構成している。被接続面23は、第1のアーム部材6の後端に位置する第1面23aと、第1面23aの前端から下方へ延びる第2面23bと、第2面23bの下端から前方へ延びて第1接続部22の裏面に連続する第3面23cと、を有する。接合固定部21と接合支持部20とを重ねて両者を最も近接させると、第1のアーム部材6と第2のアーム部材7とは、その第1面23a,13a同士及び第3面23c,13c同士が面接触し、且つその第2面23b,13b同士が面接触又は近接した状態となる。係る状態で、これら第1面23a,13a同士及び第2面23b,13b同士がスポット溶接等によって溶着され、これにより第1のアーム部材6が第2のアーム部材7に固定される。なお、これら第1面23a,13a同士、第2面23b,13b同士、及び第3面23c,13c同士の関係は、その中の2組が面接触し、残りの1組が面接触又は近接するように設定すればよい。また、溶着する部分についても、第1面23a,13a同士、第2面23b,13b同士、及び第3面23c,13c同士のうち、少なくとも1組を溶着すればよい。
【0033】
第1接続部22は、接合固定部21の前端から前方へ延びている。この第1接続部22には、前方が底となるような略U字状の切り込み溝24が形成されている。第1接続部22のうち、切り込み溝24の内側に区画された領域は、第1の突出部25を構成し、切り込み溝24の外側に区画された領域は、第2の突出部26を構成する。
【0034】
第1の突出部25は、接合固定部21の前端部と略同一面内に配置され、接合固定部21の前端から前方へ延びている。ABSアクチュエータアッセンブリ1を後述する仮置き位置に配置したとき、第1の突出部25の前端部25aは、前方のクロスメンバ4の被取付板部4aの表面上に突出する。
【0035】
第2の突出部26は、第1の突出部から離間する方向(下方)へ膨出するように略J字状に曲折する曲折部28を有する。この曲折部28は、第1の突出部25との間に懐状空間27を区画する。第2の突出部26の前端部26aは、曲折部28の前端から前方へ曲折されて第1の突出部25と略平行に延びている。第2の突出部26の前端部26aは、第1の突出部25の前端部25aの先端よりも所定距離だけ下方に位置する。この所定距離は、第1の突出部25と第2の突出部26との間に被取付板部4aの進入を許容すると共に、仮置き位置で前端部25aの裏面と被取付板部4aの表面とを近接又は接触させ且つ前端部26aの表面と被取付板部4aの裏面とを近接又は接触させる大きさに設定されている。また、懐状空間27は、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置に配置するとき、仮置き位置に対して傾斜した第1の突出部25の前端部25aと第2の突出部26の前端部26aとの間に、被取付板部4aが進入して仮置き位置へ移動することを許容する寸法形状に設定されている。そして、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置に配置したとき、第2の突出部26の前端部26aは、前方のクロスメンバ4の被取付板部4aの裏面上に突出する。
【0036】
前方のクロスメンバ4の被取付板部4aと第2の突出部26の前端部26aとには、これらを締結固定するためのボルト29を挿通するボルト挿通孔30,31が形成されている。また、第2の突出部26の前端部26aの裏面には、ボルト29と螺合するナット32が固定されている。
【0037】
ABSアクチュエータアッセンブリ1の組み立ては、第2のアーム部材7とABSアクチュエータ3との締結と、第1のアーム部材6と第2のアーム部部材7との溶着とによって行う。具体的には、ABSアクチュエータ3の前面下部及び後面上部に、第2のアーム部材7の第1及び第2の部品固定部9,10をそれぞれ締結固定する。また、第1のアーム部材6の接合固定部21を第2のアーム部材7の接合支持部20に重ねて両者を最も近接させ、第1面23a,13a同士及び第2面23b,13b同士を溶着する。なお、ABSアクチュエータ3と第2のアーム部材7との締結と、第1のアーム部材6と第2のアーム部材7との溶着とは、何れを先に行ってもよい。
【0038】
ABSアクチュエータアッセンブリ1では、第1の突出部25の前端と第2接続部11,12の後端との距離L1は、前方及び後方のクロスメンバ4,5の間の距離L2よりも長く設定されている。また、第1及び第2のアーム部材6,7は、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置に配置したときに、ABSアクチュエータ3が傾くことなく安定した姿勢となるような寸法形状に設定されている。
【0039】
ABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に取り付ける場合、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置に配置した後、第1及び第2のアーム部材6,7をクロスメンバ4,5に固定する。
【0040】
ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置に配置する作業では、図6に示すように、まずABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5の上方で全体的に前下方へ傾け、第1の突出部25の前端部25aと第2の突出部26の前端部26aとの間に前方のクロスメンバ4の被取付板部4aの後端を挿入する。次に、ABSアクチュエータアッセンブリ1の後端側を斜め前下方(図6中矢印45方向)へ移動することにより、被取付板部4aの後端を第1の突出部25の前端部25aと第2の突出部26の前端部26aとの間に進入させる。このとき、被取付板部4aの進入は、懐状空間27によって許容される。そして、前方のクロスメンバ4の被取付板部4aの表面上に第1のアーム部材6の第1の突出部25の前端部25aを載置すると共に、また後方のクロスメンバ5の被取付板部5aの表面上に第2のアーム部材7の締結固定部42,43を載置する。これにより、ABSアクチュエータアッセンブリ1が仮置き位置に配置される。
【0041】
仮置き位置に配置されたABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に固定する作業では、第1のアーム部材6のボルト挿通孔30と前方のクロスメンバ4のボルト挿通孔31との位置を合わせると共に、第2のアーム部材7のボルト挿通孔16と後方のクロスメンバ5のボルト挿通孔17との位置を合わせる。そして、各ボルト挿通孔30,31,16,17へ上方からボルト29,18を挿入してナット32,18と螺合させることにより、第1及び第2のアーム部材6,7を前方及び後方のクロスメンバ4,5にそれぞれ締結固定する。これにより、離間するクロスメンバ4,5間にブラケット2が掛け渡されて固定され、ABSアクチュエータアッセンブリ1がブラケット2を介してクロスメンバ4,5に固定される。
【0042】
このように本実施形態では、第1の突出部25と第2の突出部26との間に懐状空間27が設けられ、この懐状空間27は、仮置き位置に対して傾斜した第1の突出部25と第2の突出部26との間に、被取付板部4aが進入して仮置き位置へ移動することを許容する。すなわち、ABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に対して取り付けるときに、仮置き位置に対して第1及び第2の突出部25,26を傾斜させて、第1の突出部25と第2の突出部26との間に被取付板部4aの後端を挿入し、ABSアクチュエータアッセンブリ1の後側を斜め前下方へ移動させることによって、ABSアクチュエータアッセンブリ1を仮置き位置へ移動させることができる。このため、ブラケット2をクロスメンバ4に対して水平となる所定位置にABSアクチュエータアッセンブリ1を設定し、この所定位置からABSアクチュエータアッセンブリ1を水平方向に移動させたり回転させて仮置き位置へ移動させる場合に比べて、ABSアクチュエータアッセンブリ1の移動のために必要となる空間が少なくて済む。従って、ABSアクチュエータアッセンブリ1を組み付ける際に他の部材が障害となり難く、レイアウト上の自由度が増す。
【0043】
また、仮置き位置では、第1の突出部25と第2の突出部26との間に被取付板部4aが収容されているため、クロスメンバ4,5上にブラケット2を単に載置した場合に比べて、安定した仮置き状態を得ることができる。
【0044】
また、第1のアーム部材6に略U字状の切り込み溝24を形成し、この切り込み溝24の内側に区画された領域を第1の突出部25とし、切り込み溝24の外側に区画された領域を第2の突出部26としたので、第1のアーム部材6に、他の部材を別途設けることなく、第1及び第2の突部25,26を形成することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0045】
また、クロスメンバ4,5間の間隔や高低差は、車種や車型の相違によって異なる場合が多く、さらに同一の車種の車型であっても、異なる場合がある。この点に関し、本実施形態では、ブラケット2を第1及び第2のアーム6,7によって構成しているので、第1及び第2のアーム部材6,7の一方又は他方の寸法形状を変更することにより、クロスメンバ4,5間間の間隔や高低差が相違する車両に対して、本構造を適用することができる。
【0046】
例えば、クロスメンバ4,5間の間隔が本実施形態よりも広い場合には、図7に示すように、上記第1のアーム部材6よりも長い第1のアーム部材50と上記第2のアーム部材7とを用いればよく、また、クロスメンバ4,5間の間隔が本実施形態よりも狭い場合には、図8に示すように、上記第1のアーム部材6よりも短い第1のアーム部材51と上記第2のアーム部材7とを用いればよい。
【0047】
また、第2のアーム部材7とABSアクチュエータ3とを締結固定した状態で、第2のアーム部材7の接続面13は外部に露出しているので、第2のアーム部材7をABSアクチュエータ3に固定した半完成状態のABSアクチュエータアッセンブリ1を共通部品として用意しておき、この半完成状態のABSアクチュエータアッセンブリ1に対し車種に応じて適切な第1のアーム部材6,50,51を後から固定することができる。このため、共通部品のユニット化を進めることができ、部品共通化によるコストの低減を図ることができる。
【0048】
また、第1のアーム部材と第2のアーム部材7とを、共に段状に曲折する接触面13と非接触面26とを重ねて面接触させて溶着することにより固定しているので、第1のアーム部材6と第2のアーム部材7とを強固に固定することができる。
【0049】
さらに、前方では第2の突出部26の前端部26aの裏面にナット32を固着し、後方では被取付板部5aの裏面にナット18を固着しているので、ブラケット2をクロスメンバ4,5に締結固定する際に、各ボルト挿通孔30,31,16,17へ上方からボルト29,18を挿入してナット32,18と螺合させればよい。従って、ナット32,18の共回りを防止するための作業が不要であるため、作業性が良好である。
【0050】
また、前方では、クロスメンバ4に比べて小型の部材である第1のアーム部材6にナット32を固着しているので、大型の部材であるクロスメンバ4にナット32を固着する場合に比べて、精度良く且つ容易にナット32を所定位置に固着することができる。
【0051】
次に、本実施形態の変形例を図9に基づき説明する。
【0052】
この変形例は、上記第1のアーム部材6に代えてU状の湾曲部分53を有する第1のアーム部材52を用いたものである。この湾曲部分53の後面及び下面(裏面)は、被接続面23を構成する。このような第1のアーム部材52を採用することにより、U状部分53が補強用のリブとして機能するため、ABSアクチュエータ3に対する第1のアーム部材52の剛性を高めることができる。
【0053】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、上述の実施形態以外であっても種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上記実施形態では、ブラケット2を2つのアーム部材6,7によって構成する場合について説明したが、両アーム部材を備えた一部品からなるブラケットを採用することも可能である。また、上記実施形態では、ABSアクチュエータアッセンブリ1をクロスメンバ4,5に固定する場合について説明したが、本発明の車両部品アッセンブリの固定構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ABSアクチュエータ3以外の他の車両部品アッセンブリに適用したり、クロスメンバ4,5以外の車体フレームに適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両部品とこれを支持するブラケットとを備えた車両部品アッセンブリを、ブラケットを介して車体フレームに固定する様々な構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両部品アッセンブリの固定構造を示す側面図である。
【図2】図1の固定構造を矢印II方向から視た平面図である。
【図3】図1の固定構造の斜視図である。
【図4】図1の第1のアーム部材をクロスメンバから分離した状態を示す斜視図である。
【図5】図1のブラケットを示す側面図である。
【図6】図1の車両部品アッセンブリの取付方法を示す側面図である。
【図7】図1の第1のアーム部材の他の態様を示す側面図である。
【図8】図1の第1のアーム部材の他の態様を示す側面図である。
【図9】図1の第1のアーム部材の他の態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1:ABSアクチュエータアッセンブリ(車両部品アッセンブリ)
2:ブラケット
3:ABSアクチュエータ(車両部品)
4:前方のクロスメンバ(第1の車体フレーム)
4a:被取付板部
5:後方のクロスメンバ(第2の車体フレーム)
5a:被取付板部
6:第1のアーム部材
7:第2のアーム部材
8:基板部
9:第1の部品固定部
10:第2の部品固定部
11:第2接続部(ブラケットの他端部)
12:第2接続部(ブラケットの他端部)
13:接続面(アーム固定部)
15:ボルト
16:ボルト挿通孔
17:ボルト挿通孔
18:ナット
20:接合支持部
21:接合固定部
22:第1接続部(ブラケットの一端部)
23:被接続面
24:切り込み溝
25:第1の突出部
26:第2の突出部
27:懐状空間
28:曲折部
29:ボルト
30:ボルト挿通孔
31:ボルト挿通孔
32:ナット
50:第1のアーム部材
51:第1のアーム部材
52:第1のアーム部材
53:湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部品と該車両部品を支持するブラケットとを備えた車両部品アッセンブリの前記ブラケットを、離間する第1及び第2の車体フレーム間に掛け渡して固定する車両部品アッセンブリの固定構造であって、
前記第1の車体フレームは、表面と裏面とを有する被取付板部を備え、
前記ブラケットは、前記第1の車体フレームの被取付板部に固定される一端部と、前記第2の車体フレームの表面上に配置される他端部と、を備え、
前記ブラケットの一端部は、前記被取付板部の表面上に突出する第1の突出部と、前記被取付板部の裏面上に突出する第2の突出部と、を有し、
前記第2の突出部は、前記第1の突出部から離間する方向へ膨出して該第1の突出部との間に懐状空間を区画する曲折部を有し、
前記第1の突出部と前記第2の突出部との間に前記被取付板部を挿入し前記第1の突出部を前記被取付板部の表面上に載置することにより前記車両部品アッセンブリを仮置き位置に配置するとき、前記懐状空間は、前記仮置き位置に対して傾斜した前記第1の突出部と前記第2の突出部との間に、前記被取付板部が進入して前記仮置き位置へ移動することを許容する
ことを特徴とする車両部品アッセンブリの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両部品アッセンブリの固定構造であって、
前記ブラケットの一端部は、略U字状の切り込み溝が形成された板形状を有し、
前記ブラケットの一端部のうち前記切り込み溝の内側に区画された領域は、前記第1の突出部を含み、
前記ブラケットの一端部のうち前記切り込み溝の外側に区画された領域は、前記第2の突出部を含む
ことを特徴とする車両部品アッセンブリの固定構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両部品アッセンブリの固定構造であって、
前記ブラケットは、前記一端部を有する第1のアーム部材と、前記他端部を有する第2のアーム部材と、を備え、
前記第1及び第2のアーム部材の一方は、前記車両部品が固定される部品固定部と、前記第1及び第2のアーム部材の他方が固定されるアーム固定部と、を有し、
前記アーム固定部は、前記部品固定部に前記車両部品を固定した状態で外部に露出している
ことを特徴とする車両部品アッセンブリの固定構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両部品アッセンブリの固定構造であって、
前記一方のアーム部材のアーム固定部は、段状に曲折する接続面を有し、
前記他方のアーム部材は、段状に曲折し前記接続面に重ねられて面接触する被接続面を有する
ことを特徴とする車両部品アッセンブリの固定構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の車両部品アッセンブリの固定構造であって、
前記第1及び第2の突出部と前記被取付板部とは、これらを締結固定するためのボルトを挿通するボルト挿通孔を有し、
前記第2の突出部には、前記ボルトと螺合するナットが固定されている
ことを特徴とする車両部品アッセンブリの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−186056(P2007−186056A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5256(P2006−5256)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】