説明

車両

【課題】旋回時に旋回しやすい車両を提供する。
【解決手段】車体と、車体に支持される車輪3RRと、一方が車体側に支持され、他方が車輪側に支持されるとともに、キャンバー軸CRを中心として車体に対して車輪側を回動可能とするキャンバー角変更装置4Rと、を備えた車両において、前記キャンバー軸は、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、車両が旋回する時に、旋回外輪のキャンバー軸CRの前側が後側よりも下方となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバー角を調整することができる車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータで各輪個別にキャンバー及びトウを制御することができるようにするために、車輪を支持するアクスルを車体に対し1点で支持するボールジョイントと、アクスルにおけるボールジョイントによる支持点の上側又は下側であり且つ車両前後方向の2点を支持し、この2点の支持点を、車幅方向に個別に変位させる第1及び第2のアクチュエータと、前記2点の支持点を車幅方向において相対的に変位させることで車輪のトウを変化させ、及び/又は前記2点の支持点を車幅方向において同一方向に変位させることで車輪のキャンバーを変化させるように、第1及び第2のアクチュエータを制御する制御手段と、を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は旋回中の車両を示す図、図15は図14の矢印Aから車両を見た図である。従来の技術で、図14に示すような車両1の旋回時には、図15に示すように、車両1にはロールRにより、外側に荷重G1が上方からかかり、内側には荷重G2が下方からかかる。したがって、車体2は、外側が下方に押し付けられ、内側が浮き上がるように傾斜する。そのため、車輪3のキャンバー角をネガティブキャンバーに調整すると、旋回外輪3RRは旋回内側に第1の横力F1が生じるが、旋回内輪3RLは旋回外側に第2の横力F2が生じ、第1の横力F1と第2の横力とがお互いに力を打ち消しあう方向へ作用することとなり、大きな旋回性能の向上を得ることが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、旋回時に旋回しやすい車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明の車両は、車体と、前記車体に支持される車輪と、一方が車体側に支持され、他方が前記車輪側に支持されるとともに、キャンバー軸を中心として前記車体に対して前記車輪側を回動可能とするキャンバー角変更装置と、を備えた車両において、前記キャンバー軸は、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、前記車両が旋回する時に、旋回外輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも下方となることを特徴とする。
【0007】
また、前記車両が旋回する時に、旋回内輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも上方となることを特徴とする。
【0008】
また、一端側を前記車体に連結され、一端側より後方の他端側で前記キャンバー角変更装置を支持するトレーリングアームを有することを特徴とする。
【0009】
また、一端側が前記車輪に対して前記車体の前方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第1のアームと、一端側が前記車輪に対して前記車体の後方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第2のアームと、前記第1のアームの一端側を前記車体に連結する低剛性の第1の緩衝部材と、前記第2のアームの一端側を前記車体に連結する前記第1の緩衝部材よりも高剛性の第2の緩衝部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、車体と、前記車体に支持される車輪と、一方が車体側に支持され、他方が前記車輪側に支持されるとともに、キャンバー軸を中心として前記車体に対して前記車輪側を回動可能とするキャンバー角変更装置と、を備えた車両において、前記キャンバー軸は、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、前記車両が旋回する時に、旋回外輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも下方となるので、キャンバー角変更装置により車輪のキャンバー角をネガティブキャンバーに調整すると、旋回外輪に対して車両が旋回内側に向かうような横力を生じるトウ角を付与することになり、旋回時に旋回しやすい車両を提供することが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前記車両が旋回する時に、旋回内輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも上方となるので、キャンバー角変更装置により車輪のキャンバー角をネガティブキャンバーに調整すると、旋回内輪に対して車両が旋回内側に向かうような横力を生じるトウ角を付与することになり、旋回時にさらに旋回しやすい車両を提供することが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、一端側を前記車体に連結され、一端側より後方の他端側で前記キャンバー角変更装置を支持するトレーリングアームを有するので、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回外輪のキャンバー軸の前側が後側よりも下方となるように傾斜させることが可能となる。また、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回内輪のキャンバー軸の前側が後側よりも上方となるように傾斜させることが可能となる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、一端側が前記車輪に対して前記車体の前方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第1のアームと、一端側が前記車輪に対して前記車体の後方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第2のアームと、前記第1のアームの一端側を前記車体に連結する低剛性の第1の緩衝部材と、前記第2のアームの一端側を前記車体に連結する前記第1の緩衝部材よりも高剛性の第2の緩衝部材と、を有するので、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回外輪のキャンバー軸の前側が後側よりも下方となるように傾斜させることが可能となる。また、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回内輪のキャンバー軸の前側が後側よりも上方となるように傾斜させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における外輪を模式的に示した模式図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の実施形態における内輪を模式的に示した模式図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】本発明の実施形態の車両の旋回時の状態を後方から見た模式図である。
【図6】本発明の第1実施例を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例の旋回外輪を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例の旋回内輪を示す図である。
【図9】本発明の第2実施例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施例の旋回外輪を示す図である。
【図11】本発明の第2実施例の旋回内輪を示す図である。
【図12】他の実施形態を示す図である。
【図13】他の実施形態を示す図である。
【図14】車両の旋回状態を示す図である。
【図15】従来の車両の旋回時の状態を後方から見た模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の車両の車輪支持構造の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、前側とは、車体の前半分側のことではなく、対象物に対してヘッドライト側(前進方向側)を前側とし、その反対側を後側とする。また、対象物に対して上方とは、真上ではなく、対象物の存在する水平面よりも鉛直方向で上側にありさえすればよく、同様に、対象物に対して下方とは、真下ではなく、対象物の存在する水平面よりも鉛直方向で下側にありさえすればよい。
【0016】
図1は本発明にかかる実施形態の旋回外輪を示す図、図2は図1の平面図、図3は本発明にかかる実施形態の旋回内輪を示す図、図4は図3の平面図、図5は車両の旋回時の状態を後方から見た模式図である。なお、各図の旋回時の状態は、図12の矢印Aで示した旋回時の状態である。また、各図における矢印fは車両の進行方向(前進方向)を示す。
【0017】
図1は、旋回外輪3RRを車両1の車幅中心線側から見た図である。本発明にかかる車両の実施形態では、車体2と、車体2に支持される車輪3と、一方が車体側に支持され、他方が車輪側に支持されるとともに、第1のキャンバー軸CRを中心として車体側に支持された一方の部分に対して車輪側に支持された他方の部分を回動可能とするキャンバー角変更装置4と、を備えた車両において、第1のキャンバー軸CRは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成されている。
【0018】
ここで、例えば、車体側とは、車体2又は車体2に支持される部材とし、車輪側とは、車輪(タイヤ及びホイール)を回転可能に支持する部材とする。また、定常走行時とは、平らな道を直進走行している時とする。
【0019】
このような構成は、図5に示すように、車両1にはロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回外側が下方に押し付けられるように傾斜することを利用したものである。
【0020】
このように、第1のキャンバー軸CRは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成することにより、図2に示すように、旋回外輪3RRに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、キャンバー角及びトウ角により車両1が旋回内側に向かうような横力F1が生じる。図中3RRcは旋回外輪3RRの幅方向中心線である。
【0021】
図3は、旋回内輪3RLを車両1の車幅中心線側から見た図である。本発明にかかる車輪支持構造の実施形態では、旋回時に旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となるように構成されている。
【0022】
このような構成は、図5に示すように、車両1にはロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回内側が浮き上がるように傾斜することを利用したものである。
【0023】
このように、第2のキャンバー軸CLは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となるように構成することにより、図4に示すように、旋回内輪3RLに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、車両1が旋回内側に向かうようなトウ角による横力からキャンバー角による横力を引いた横力F2が生じる。図中3RLcは旋回内輪3RLの幅方向中心線である。
【0024】
したがって、図5に示すように、本実施形態の車両は、旋回外輪3RR及び旋回内輪3RLの両者に対して車両1が旋回内側に向かうような横力F1,F2を生じることになるので、旋回時に旋回しやすい車両とすることができる。また、常時トウ角をつけた場合だと、走行抵抗の増加、という問題点を有するが、本発明にかかる実施形態のように旋回時のロールによる荷重変動時にのみトウ角が付くことで、走行抵抗を増加させることなく旋回性能を向上させることができる。なお、旋回方向が逆の場合には、旋回外輪3RRと旋回内輪3RLは逆となる。
【0025】
次に、第1実施例について説明する。図6は本発明の第1実施例を示す図、図7は本発明の第1実施例の旋回外輪を示す図、図8は本発明の第1実施例の旋回内輪を示す図である。
【0026】
図6は、第1実施例の車輪3のうち旋回外輪3RRの通常状態を示す図である。図6に示すように、第1実施例の旋回外輪3RRの車輪支持構造は、一端側を車体2に回動可能に連結され、他端側を第1のキャンバー角変更装置4Rを介して旋回外輪3RR側に連結される第1のトレーリングアーム21Rと、一端側を車体2に連結され、他端側を第1のトレーリングアーム21Rに連結される第1のストラットサスペンション22Rと、一方で第1のトレーリングアーム21Rに支持され、他方で旋回外輪3RRに連結され、旋回外輪3RRを第1のキャンバー軸CRを中心として回動させる第1のキャンバー角変更装置4Rと、を有する。
【0027】
図7は、旋回時の旋回外輪3RRの状態を示す図である。旋回時には、図5に示したように、車両1のロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回外側が下方に押し付けられ、旋回内側が浮き上がるように傾斜する。したがって、第1のトレーリングアーム21Rの車体2に連結された一端側が下方に下がり、旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となる。
【0028】
このように、第1のキャンバー軸CRは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成することにより、図2に示すように、旋回外輪3RRに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、キャンバー角及びトウ角により車両1が旋回内側に向かうような横力F1が生じる。
【0029】
図8は、旋回時の旋回内輪3RLの状態を示す図である。第1実施例の旋回内輪3RLの車輪支持構造は、一端側を車体2に回動可能に連結され、他端側を第2のキャンバー角変更装置4Lを介して旋回内輪3RL側に連結される第2のトレーリングアーム21Lと、一端側を車体2に連結され、他端側を第2のトレーリングアーム21Lに連結される第2のストラットサスペンション22Lと、一方で第2のトレーリングアーム21Lに支持され、他方で旋回内輪3RLに連結され、旋回内輪3RLを第2のキャンバー軸CLを中心として回動させる第2のキャンバー角変更装置4Lと、を有する。
【0030】
旋回時には、図5に示したように、車両1のロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回外側が下方に押し付けられ、旋回内側が浮き上がるように傾斜する。したがって、第2のトレーリングアーム21Lの車体2に連結された一端側が上方に上がり、旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となる。
【0031】
このように、第2のキャンバー軸CLは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となるように構成することにより、図4に示すように、旋回内輪3RLに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、車両1が旋回内側に向かうようなトウ角による横力からキャンバー角による横力を引いた横力F2が生じる。
【0032】
したがって、図5に示すように、本実施形態の車両は、旋回外輪3RR及び旋回内輪3RLの両者に対して車両1が旋回内側に向かうような横力F1,F2を生じることになるので、車両の旋回時に旋回しやすくなる。また、常時トウ角をつけた場合だと、走行抵抗の増加、という問題点を有するが、第1実施例のように旋回時のロールによる荷重変動時にのみトウ角が付くことで、走行抵抗を増加させることなく旋回性能を向上させることができる。なお、旋回方向が逆の場合には、旋回外輪3RRと旋回内輪3RLは逆となる。
【0033】
また、一端側を車体2に連結され、一端側より後方の他端側でキャンバー角変更装置4を支持するトレーリングアーム21を有するので、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの前側が後側よりも下方となるように傾斜させることが可能となる。また、簡単な構造で、車両の旋回時に、旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの前側が後側よりも上方となるように傾斜させることが可能となる。
【0034】
次に、第2実施例について説明する。図9は本発明の第2実施例を示す図、図10は本発明の第2実施例の旋回外輪を示す図、図11は本発明の第2実施例の旋回内輪を示す図である。
【0035】
図9は、第2実施例の車輪3のうち旋回外輪3RRの通常状態を示す図である。図9に示すように、第2実施例の旋回外輪3RRの車輪支持構造は、ダブルウィッシュボーン式であり、一端側が低剛性の第1の緩衝部材としての第1上方ブッシュ25R1を介して車体2に連結され、他端側が第1のキャンバー角変更装置4Rを介して旋回外輪3RR側に連結される第1のアームとしての第1の上方アーム24R1と、一端側が高剛性の第2の緩衝部材としての第2上方ブッシュ25R2を介して車体2に連結され、他端側が第1のキャンバー角変更装置4Rを介して旋回外輪3RR側に連結される第2のアームとしての第2の上方アーム24R2と、一端側が低剛性の第1の緩衝部材としての第1の下方ブッシュ27R1を介して車体2に連結され、他端側が第1のキャンバー角変更装置4Rを介して旋回外輪3RR側に連結される第1のアームとしての第1の下方アーム26R1と、一端側が高剛性の第2の緩衝部材としての第2の下方ブッシュ27R2を介して車体2に連結され、他端側が第1のキャンバー角変更装置4Rを介して旋回外輪3RR側に連結される第2のアームとしての第2の下方アーム26R2と、一方で上方アーム24R及び下方アーム26Rに支持され、他方で旋回外輪3RRを回動可能に支持する支持部材に連結され、旋回外輪3RRを第1のキャンバー軸CRを中心として回動させる第1のキャンバー角変更装置4Rと、を有する。
【0036】
図10は、旋回時の旋回外輪3RRの状態を示す図である。旋回時には、図5に示したように、車両1のロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回外側が下方に押し付けられ、旋回内側が浮き上がるように傾斜する。
【0037】
すると、旋回外輪3RRの車輪支持構造のうち上方アーム24Rでは、車体2に連結された上方アーム24Rの低剛性の第1の上方ブッシュ25R1に連結された第1の上方アーム24R1側の方が高剛性の第2の上方ブッシュ25R2に連結された第2の上方アーム24R2側よりも低くなる。また、旋回外輪3RRの車輪支持構造のうち下方アーム26Rでは、車体2に連結された下方アーム26Rの低剛性の第1の下方ブッシュ27R1に連結された第1の下方アーム26R1側の方が高剛性の第2の下方ブッシュ27R2に連結された第2の下方アーム26R2側よりも低くなる。
【0038】
したがって、旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となる。
【0039】
このように、第1のキャンバー軸CRは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成することにより、図2に示すように、旋回外輪3RRに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、キャンバー角及びトウ角により車両1が旋回内側に向かうような横力F1が生じる。
【0040】
図11は、旋回時の旋回内輪3RLの状態を示す図である。図9に示すように、第2実施例の旋回内輪3RLの車輪支持構造は、ダブルウィッシュボーン式であり、一端側が低剛性の第1の緩衝部材としての第3の上方ブッシュ25L1を介して車体2に連結され、他端側が第2のキャンバー角変更装置4Lを介して旋回内輪3RL側に連結される第1のアームとしての第3の上方アーム24L1と、一端側が高剛性の第2の緩衝部材としての第4の上方ブッシュ25L2を介して車体2に連結され、他端側が第2のキャンバー角変更装置4Lを介して旋回内輪3RL側に連結される第2のアームとしての第4の上方アーム24L2と、一端側が低剛性の第1の緩衝部材としての第3の下方ブッシュ27L1を介して車体2に連結され、他端側が第2のキャンバー角変更装置4Lを介して旋回内輪3RL側に連結される第1のアームとしての第3の下方アーム26L1と、一端側が高剛性の第2の緩衝部材としての第4の下方ブッシュ27L2を介して車体2に連結され、他端側が第2のキャンバー角変更装置4Lを介して旋回内輪3RL側に連結される第2のアームとしての第4の下方アーム26L2と、一方で上方アーム24L及び下方アーム26Lに支持され、他方で旋回内輪3RLに連結され、旋回内輪3RLを第2のキャンバー軸CLを中心として回動させる第2のキャンバー角変更装置4Lと、を有する。
【0041】
旋回時には、図5に示したように、車両1のロールRにより、旋回外側に荷重G1が上方からかかり、旋回内側には荷重G2が下方からかかることによって、車体2の旋回外側が下方に押し付けられ、旋回内側が浮き上がるように傾斜する。
【0042】
すると、旋回内輪3RLの車輪支持構造のうち上方アーム24Lでは、車体2に連結された上方アーム24Lの低剛性の第3の上方ブッシュ25L1に連結された第3の上方アーム24L1側の方が高剛性の第4の上方ブッシュ25L2に連結された第4の上方アーム24L2側よりも高くなる。また、旋回内輪3RLの車輪支持構造のうち下方アーム26Lでは、車体2に連結された下方アーム26Lの低剛性の第3の下方ブッシュ27L1に連結された第3の下方アーム26L1側の方が高剛性の第4の下方ブッシュ27L2に連結された第4の下方アーム26L2側よりも低くなる。
【0043】
したがって、旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となる。
【0044】
このように、第2のキャンバー軸CLは、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、旋回時に旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの進行方向fの前側が後側より上方となるように構成することにより、図4に示すように、旋回内輪3RLに対してキャンバー角を付与するとトウ角も付与される。その結果、車両1が旋回内側に向かうようなトウ角による横力からキャンバー角による横力を引いた横力F2が生じる。
【0045】
したがって、図5に示すように、本実施形態の車両は、旋回外輪3RR及び旋回内輪3RLの両者に対して車両1が旋回内側に向かうような横力F1,F2を生じることになるので、車両の旋回時に旋回しやすくなる。また、常時トウ角をつけた場合だと、走行抵抗の増加、という問題点を有するが、第2実施例のように旋回時のロールによる荷重変動時にのみトウ角が付くことで、走行抵抗を増加させることなく旋回性能を向上させることができる。なお、旋回方向が逆の場合には、旋回外輪3RRと旋回内輪3RLは逆となる。
【0046】
また、一端側が車輪3に対して車体2の前方において車体側に連結されるとともに、他端側でキャンバー角変更装置4を支持する第1の上方アーム24R1、第3の上方アーム24L1、第1の下方アーム26R1又は第3の下方アーム26L1と、一端側が車輪3に対して車体2の後方において車体側に連結されるとともに、他端側でキャンバー角変更装置4を支持する第2の上方アーム24R2、第4の上方アーム24L2、第2の下方アーム24L2又は第4の下方アーム26L2と、第1の上方アーム24R1、第3の上方アーム24L1、第1の下方アーム26R1又は第3の下方アーム26L1の一端側を車体2に連結する低剛性の第1の上方ブッシュ25R1、第3の上方ブッシュ25L1、第1の下方ブッシュ27R1又は第3の下方ブッシュ27L1と、第1の上方アーム24R1、第3の上方アーム24L1、第1の下方アーム26R1又は第3の下方アーム26L1の一端側を車体2に連結する第1の上方ブッシュ25R1、第3の上方ブッシュ25L1、第1の下方ブッシュ27R1又は第3の下方ブッシュ27L1よりも高剛性の第2の上方ブッシュ25R2、第4の上方ブッシュ25L2、第2の下方ブッシュ27R2又は第4の下方ブッシュ27L2と、を有するので、簡単な構造で、車両1の旋回時に、旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの前側が後側よりも下方となるように傾斜させることが可能となる。また、簡単な構造で、車両1の旋回時に、旋回内輪3RLの第2のキャンバー軸CLの前側が後側よりも上方となるように傾斜させることが可能となる。
【0047】
図12は他の実施形態を示す旋回外輪3RRの平面図、図13はさらに他の実施形態を示す旋回外輪3RRの平面図である。
【0048】
図1〜図11に示す実施形態では、平らな道を直進走行している定常走行時にキャンバー角Cが進行方向fに対して平行である場合を例示したが、例えば旋回外輪3RRについて説明すると、図12に示すように、定常走行時に第1のキャンバー軸CRを進行方向に対して平行にせず、進行方向と交差するようにしてもよい。この場合でも、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成されている。
【0049】
また、図13に示すように、定常走行時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRを進行方向に対して平行にせず、進行方向と交差するようにすると共に、旋回外輪3RRの幅方向中心線を進行方向に対して平行にせず、進行方向と交差するようにしてもよい。さらに、あらかじめ定常走行状態で旋回外輪3RRに所定のキャンバー角を付与しておいてもよい。この場合でも、当然、旋回時に旋回外輪3RRの第1のキャンバー軸CRの進行方向fの前側が後側より下方となるように構成されている。
【符号の説明】
【0050】
1…車両、2…車体、3…車輪、3FL…左前輪、3FR…右前輪、3RL…左後輪(旋回内輪)、3RR…右後輪(旋回外輪)、4…キャンバー角変更装置、21…トレーリングアーム、22…ストラットサスペンション、24…上方アーム、25…上方ブッシュ、26…下方アーム、27…下方ブッシュ、C…キャンバー軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持される車輪と、
一方が車体側に支持され、他方が前記車輪側に支持されるとともに、キャンバー軸を中心として前記車体に対して前記車輪側を回動可能とするキャンバー角変更装置と、
を備えた車両において、
前記キャンバー軸は、定常走行時においては、路面に対してほぼ平行となるよう配設されるとともに、前記車両が旋回する時に、旋回外輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも下方となる
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記車両が旋回する時に、旋回内輪の前記キャンバー軸の前側が後側よりも上方となる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
一端側を前記車体に連結され、一端側より後方の他端側で前記キャンバー角変更装置を支持するトレーリングアームを有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
一端側が前記車輪に対して前記車体の前方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第1のアームと、
一端側が前記車輪に対して前記車体の後方において前記車体側に連結されるとともに、他端側で前記キャンバー角変更装置を支持する第2のアームと、
前記第1のアームの一端側を前記車体に連結する低剛性の第1の緩衝部材と、
前記第2のアームの一端側を前記車体に連結する前記第1の緩衝部材よりも高剛性の第2の緩衝部材と、
を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−51584(P2011−51584A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176311(P2010−176311)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】