説明

車体へのプライマ焼付無しでの多層コーティングフィルムの形成方法

本発明は、自動車基材上に、順番に、プライマサーフェイサ、ベースコート、およびクリアコート組成物をウェットオンウェットオンウェット方式で塗布するステップと、塗布された3層を一緒に1回の焼付ステップで同時に硬化させるステップとを含む多層コーティングの形成方法に関し、ここで、プライマサーフェイサはフィルム形成性バインダー、揮発性有機液体キャリア、および顔料を含み、およびバインダーは、(a)バインダーの重量を基準にして約30〜80重量%のヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、(b)バインダーの重量を基準にして約10〜30重量%の、メラミン樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤、(c)バインダーの重量を基準にして約10〜40重量%の、非極性有機溶剤に実質的に不溶であると共にコアにグラフトされたアクリルポリマーの非架橋コアと、マクロモノマーの形態でのアクリル系安定剤(前記アクリル系安定剤は非極性有機溶剤中に可溶である)の一端とを含む分散グラフトポリマーを含有し、ここで、組成物は、好ましくは、架橋非水性分散体樹脂粒子または架橋ミクロゲル樹脂粒子または両方を基本的に含まず、および組成物はまた、少なくとも1種の非極性有機溶剤を塗布時に含有する。得られる多層コーティングフィルムは、3つのウェット層塗布方法で形成された場合であっても、優れた美的外観、耐チッピング性、サグ耐性、およびフィルム塗り厚を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年10月7日出願の米国仮特許出願第60/725,014号明細書からの、米国特許法第119条に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、車体またはその部品への多層コーティングフィルムの形成方法、特に、良好な仕上げの外観を、プライマ、ベースコート、およびクリアコート層を同時に焼付することにより得ることが可能である多層コーティングフィルムの形成方法、および上塗りフィルムでの界面にじみに対する優れた耐性を有し、前述の方法において用いられることが可能であるプライマ組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車用コーティング系は、通常、スチール基材に塗布された複数のコーティングを含む。典型的には、スチールは、防錆リン酸層で処理され、次いで、追加的な防錆のための陰極電着塗装プライマが塗布される。プライマ−サーフェイサ(耐チッピングプライマ、プライマ、またはプライマ充填材としても知られている)が次いで用いられて、上塗りのために表面が平滑化され、およびコーティング系に、通常の運転中の石によるチッピングへの耐性がまた提供される。次いで、トップコート系が、時々、単一の有色層として、より頻繁には、現在では、ソリッドカラーでの、またはフレーク顔料を有するベースコートとして塗布され、その後、透明な保護クリアコートが塗布されて、車両の仕上げの魅力的な美的品質を、環境または屋外への長期の露出に対しても保護し、維持する。
【0004】
ベースコートおよびクリアコートのコーティングフィルムの形成は、通常、ウェットオンウェット塗布により達成される(すなわち、クリアコートの塗布前にベースコートを焼付せず(ベースコートは、クリアコートの塗布の前に室温で、短時間フラッシュ乾燥され得るが)にクリアコートをベースコートに塗布し、次いで、続いて、ベースコートおよびクリアコートを同時に焼付して乾燥したおよび硬化された仕上げを形成する)。多層コーティングフィルムを形成する従来の方法においては、しかしながら、下位のプライマサーフェイサ層は、ベースコートおよびクリアコートで上塗りされる前に焼付される。歴史的には、トップコートをその上に塗布するための平滑な表面を提供するためだけではなく、上位のベースコートとの界面にじみまたは混合をも防止すると共に、トップコート仕上げの全体の外観の破損を防止するために、焼付されたプライマが用いられてきた。混合に対する耐性(時々、「ストライクイン(strike−in)」耐性として称される)は、現今では自動車およびトラックで人気のある、魅力的なメタリック仕上げの外観に対して特に重要である。プライマ−サーフェイサ上への塗布後の、メタリックベースコートにおけるメタリック顔料フレーク配向のいかなる乱れも、仕上げのメタリック効果を低減させることとなる。従って、金属顔料フレークが塗布後に乱されないことを確実とするために注意をしなければならない。
【0005】
近年において、自動車組み立て工場の環境負荷または影響を、塗布ブースおよび焼付オーブンの操業で生じるVOC(揮発性有機化合物)排出およびCO2(二酸化炭素)排出を低減させることにより低減させることも強く所望されている。これは、塗料における低い溶剤含有量の使用および、プライマサーフェイサ、ベースコートおよびクリアコートをウェットオンウェットで連続的に塗布して、すべてを一度に一回の焼付で硬化することを可能とする3層ウェット塗料系の開発をもたらした。この単純化された塗布プロセスでは、個別のプライマ塗布ブースおよびプライマオーブンを排除することが可能であり、自動車製造業者への相当の経費削減をもたらす。このプロセスの単純化の技術的な困難性は、しかしながら、顕著である。例えば、界面にじみおよび美的外観、ならびに耐チッピング性などのフィルム特性が、未だに顕著な問題である。
【0006】
プライマコーティング材料の配合物を変性させることにより、前述の問題を解決するための試みがなされてきた。Watanabeらの米国特許第6,863,929号明細書には、3層ウェット塗装プロセス(「3ウェット」または「3−コート−1−焼付」プロセスとしても称される)を用いる多層自動車コーティングフィルムの形成方法が記載されており、ここでは、標準的なポリエステル−メラミン樹脂プライマコーティングは、アクリルポリマー粒子をも含有するよう、すなわち、内部的に架橋された非水性分散体(NAD)ポリマーまたは内部的に架橋されたミクロゲル粒子の形態で含有するよう配合されている。これらの粒子は、プライマサーフェイサとベースコーティングとの間の粘度および溶解度パラメータを高めて、コート層間の界面での混合を防止することを意図している。しかしながら、このような架橋粒子充填系の使用はまた、いくつかの欠点を招く。
【0007】
例えば、微小粒子はまた、ベースコートが流れ込んで混合する可能性がある空隙をウェットプライマの表面に形成して、平滑性、光沢、正面輝度、および/またはメタリック効果の欠損などの美的外観における欠陥をもたらす傾向にある。特に、ドア、フェンダー、ロッカーパネル等などの垂直なパネルでの、これらのコーティングのサギングもまた問題である。これらの粒子充填系はまた、通常の商業レベルでの乾燥フィルム塗り厚を維持することができない。フィルム塗り厚は、従って、NADまたはミクロゲル粒子を界面へ移動させるように減少されなければならない。さらに、薄いフィルムは、下位の防錆性電着塗装プライマ層を過剰なUV光透過および劣化に曝す傾向にあるため、障害がある。薄いフィルムまたは薄いフィルム領域はまた、仕上げ全体の機械特性および視覚的外観が不適当である。
【0008】
従って、ウェットオンウェット(すなわち、3ウェット)方式で塗布した場合に、プライマサーフェイサおよびベースコートおよびクリアコート層の混合を防止すると共に、プライマ焼付プロセスを排除し、コーティング系の環境への影響を低減し、その一方で、フィルム塗り厚、高光沢およびイメージの明瞭性などの全体の外観、およびコーティング系のフィルム特性をも維持することを可能とする、より効果的な方法を見出す必要性が未だ存在する。
【0009】
本発明は、前述の望ましい特徴を有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに、本発明は、プライマコーティング、ベースコーティング、およびクリアコーティングが、順番に、互いの上に、ウェットオンウェット(すなわち、ウェットオンウェットオンウェット)方式で、一緒での焼付前に基材上に塗布される場合に隣接する塗料層の混合、界面にじみ、および各コート層間の界面での転移を制御することが可能であり、その一方でなお、良好な外観、チッピング性能、およびフィルム塗り厚などの今日の性能要求を満たす、多層コーティングフィルムを形成するための方法およびプライマコーティング組成物を提供する。
【0011】
より特定的には、本発明は、基材上へ、プライマ焼付の必要性および通常の商業レベル未満にフィルム塗り厚を低減させる必要性なく、自動車品質および外観の多層コーティングフィルムを形成する方法を提供し、この方法は、プライマコーティング組成物、ベースコーティング組成物、およびクリアコーティング組成物を、ウェットオンウェット方式で、好ましくは電着塗装コートフィルムがその上に形成された、車体またはその部品全体上などの自動車基材上に順番に塗布するステップと、塗布した3層を焼付により同時に硬化するステップとを含み、ここで、プライマコーティング組成物は、フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリア、ならびに任意であるが好ましくは顔料を含み、バインダーは、
(a)バインダーの重量を基準にして約30〜80重量%の、ヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂
(b)バインダーの重量を基準にして約10〜30重量%の、メラミン樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはメラミン樹脂およびブロックトイソシアネートの混合物からなる群から選択される架橋剤
(c)バインダーの重量を基準にして約10〜40重量%の、非極性有機溶剤に実質的に不溶であると共にコアにグラフトされたアクリルポリマーの非架橋主鎖(またはコア)と、その各々が非極性有機溶剤に可溶であると共に一端がコアにグラフトされた安定剤分子を有する複数の実質的に直鎖のアクリル系安定剤成分とを含み、約10,000〜100,000の重量平均分子量を有する溶剤応答性分散体(SRD)として称される分散グラフトコポリマー
を含有し、
ここで、組成物は、好ましくは、架橋NADまたはミクロゲル樹脂粒子または両方を「基本的に含まない」ないし「完全に含まない」。
【0012】
組成物はまた、塗布時に約40〜70重量%の総固形分含有量を有する低VOC、高固形分組成物として配合されることが好ましい。
【0013】
本発明は、一定の比較的高分子量のSRD分岐アクリルポリマーのプライマ組成物中における使用は、続くベースコートがプライマ上にウェットオンウェット方式で塗布される場合に、組成物を、プライマとベースコーティング層との混合が効果的に防止されるようにし、その一方で、美的外観および耐チッピング性および固形分含有量および従来の焼付プライマのものと同等のフィルム塗り厚などのフィルム特性をも提供するという発見に基づいている。
【0014】
本発明はまた、多層コーティングフィルムを形成する前述の方法において用いるための、前述の成分(a)〜(c)を含む高固形分溶剤系プライマコーティング組成物を提供する。上記に定義されたプライマの挙動は、プライマ焼付の欠如にも関わらず、高フィルム塗り厚、高光沢、イメージの明瞭性、および所望の視覚効果(メタリックまたはパールなどの)などの優れた外観、および優れた耐チッピング性(SAE J−400を用いた5の最低等級)を可能にする。
【0015】
本発明の範囲にはまた、本願明細書に開示の方法によりおよびコーティング組成物でコートされた、車体またはその部品などの基材が含まれる。
【0016】
本発明は、自動車およびトラックの車体の外装のすべておよびそれらの部品の仕上げに特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この開示において、多数の用語および略語が用いられている。以下の定義を提供する。
【0018】
「ウェットオンウェット」とは、上位のコートを、下位のコートに、硬化(すなわち焼付)無しでまたは完全に下位のコートを乾燥させることなく塗布することを意味する。
【0019】
本願明細書において「3層ウェット」、「3ウェット」、および「3−コート−1−焼付」と同義に用いられる「ウェットオンウェットオンウェット」とは、プライマ層、ベースコート層、およびクリアコート層が、ウェットオンウェット方式で順番に塗布されることを意味する。
【0020】
プライマコーティングに関して、「基本的に含まない」とは、プライマコーティング組成物が、組成物の総重量を基準にして、1重量%未満、好ましくは0重量パーセントの特定された成分を含有することを意味することとする。
【0021】
「高固形分組成物」とは、組成物の総重量を基準にした重量パーセントで、40パーセント超、好ましくは40〜70パーセントの範囲で総固形分含有量を有する低溶剤のコーティング組成物を意味する。「総固形分」は、成分のいくつかは、室温で、非揮発性固形分ではなく非揮発性液体であり得るが、組成物中における非揮発性成分の総量を指すと理解されるべきである。
【0022】
「SRD」は、ポリマーについての非溶剤の少なくとも1種中に分散された分散ポリマーとして理解される溶剤応答性分散体を意味する。SRDポリマーは、ミクロゲルおよび非水性分散体から、およびSRDは内部架橋性を有しない点で区別される。
【0023】
プライマコート層
本多層コーティングフィルムの形成方法においては、その上にウェットオンウェットで塗布されたときに、トップコート層の混合を防止する性能を有する新規のプライマサーフェイサコーティング組成物が用いられる。このプライマサーフェイサ、プライマ充填材、または耐チッピングプライマ(本願明細書中、以下「プライマ」)は、本願明細書に記載の3層ウェット塗装方法において、良好な仕上げの外観および良好なチッピング性能および良好なフィルム塗り厚を犠牲にすることなく用いることが可能である。
【0024】
溶剤系プライマ組成物は、ウェットオンウェット塗布プロセスにおいて有用なだけではなく、低VOC含有量(揮発性有機含有量)を有するよう配合されることが可能であり、隠すことが容易である灰色のまたは着色組成物に配合されることが可能であり、硬質であるが可撓性でもある仕上げを形成し、冷間圧延スチール、リン酸塩化スチール、電着塗装により塗布された電着塗装プライマで下塗りされたリン酸塩化スチール、ポリエステル強化繊維ガラス、反応射出成形ウレタン、部分結晶性ポリアミドおよび他のプラスチック基材などの予め下塗りされていても下塗りされていなくてもよいプラスチック基材などの多様な基材に対して優れた接着性を有し、および従来のトップコートが接着するであろうような表面を提供する。
【0025】
プライマ組成物は、サーフェイサまたは充填材として用いられて、下塗りされた金属およびプラスチック基材の表面における欠陥をカバーすることが可能であるため、前述の基材に対して特に有用である。例えば、金属基材のプライマでの電着塗装は、度々、小さい欠陥を有する仕上げをもたらし、この組成物を塗布して、欠陥を有さない平滑な、光沢のある仕上げを形成することが可能である。また、繊維ガラスで強化されたポリエステルであるSMC(シート成形化合物)などのプラスチック基材は多くの表面欠陥を含有し、およびサーフェイサでコートされなければならない。
【0026】
本発明の新規のプライマ組成物は、一般的には、フィルム形成性バインダーおよび通常はバインダーについての溶剤である揮発性有機液体キャリアを含有する。組成物が低VOC組成物として配合されることが一般的には望ましい。従って、低VOC組成物については、プライマ組成物は、典型的には、約40〜85重量%のフィルム形成性バインダー含有量、および対応して約15〜60重量%の揮発性有機液体キャリアを有する。一般的には、組成物はまた、約1:100〜150:100の顔料対バインダー重量比で顔料を含有する。
【0027】
上に示したとおり、本発明のプライマ組成物のフィルム形成性部分は、「バインダー」または「バインダー固形分」として称される。バインダーは、一般的には、硬化組成物の固体有機部分に寄与するすべてのフィルム形成性成分を含む。一般的には、本願明細書中後述の触媒、顔料、および安定化剤などの非高分子化学添加剤は、バインダー固形分の一部としては見なされない。顔料以外の非バインダー固形分は、通常は、組成物の約5〜15重量%超には達しない。この開示において、用語「バインダー」または「バインダー固形分」は、さらに本願明細書中以下にさらに記載されるとおり、フィルム形成性ヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、メラミン樹脂またはポリイソシアネート架橋剤、アクリルSRDポリマー、およびすべての他の任意選択のフィルム形成性成分を指す。
【0028】
好ましい実施形態において、組成物に用いられるバインダーまたはフィルム形成性成分は、一般的には、約30〜80重量%の前述のヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、約10〜30重量%のアミノプラスト樹脂および/またはブロックトポリイソシアネート架橋剤;および約10〜40重量%の前述のアクリルSRDポリマーを含む。ブロックトポリイソシアネート架橋剤を、アミノプラストを、所望の場合には部分的にまたはすべて置き換えるために用いることが可能であることが理解されるべきである。ブロックトポリイソシアネートは、しかしながら、組成物の全体的なコストを増加させることが知られており、従ってあまり望ましくない。ほとんどの使用については、組成物は、典型的には、約30〜50重量%のポリエステル樹脂;15〜25重量%のメラミン樹脂;および20〜30重量%のSRDポリマーを含有する。当然、バインダーに用いられる成分の総量は100%に等しくなり、従って、最低量または最大量に等しいまたはに近い量の一つの特定の成分が用いられる場合には、残りの成分の相対量は適宜調節されなければならない。
【0029】
本願明細書において典型的には用いられるポリエステル樹脂は、好ましくは約1,200〜2,400、より好ましくは約1,500〜2,100のMw(重量平均分子量)、好ましくは約50〜200、より好ましくは約75〜175のヒドロキシル価、および好ましくは0〜25mg KOH/g、より好ましくは0〜15の酸価を、コートフィルムの所望のフィルム特性および耐水性を得るために有する。
【0030】
本願明細書に記載のすべての分子量は、ポリスチレンを基準として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0031】
一般には、ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸および/または酸無水物などの酸成分と多価アルコールとの間のポリ縮合反応を実施することにより生成されることが可能である。
【0032】
多価カルボン酸および/または酸無水物の例としては、これらに限定されないが、イソフタル酸、イソフタル酸無水物、フタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ハイミック酸無水物、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット無水物、テレフタル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、コハク酸無水物、ドデセニルコハク酸およびドデセニルコハク酸無水物が挙げられる。
【0033】
多価アルコールの例としては、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0034】
前述の多価カルボン酸および/または酸無水物および多価アルコールに追加して、モノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等を、ポリ縮合反応のために用い得る。乾性油、半乾性油およびそれらの脂肪酸もまた用い得る。その具体的な例としては、Cardura E(登録商標)(Shell Chemical Co.製)などのモノエポキシド化合物およびラクトンが挙げられる。上述のラクトンは、ポリカルボン酸および多価アルコールのポリエステルと開環付加されてグラフト鎖を形成することが可能であり、およびこれらに限定されないが、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリラクトン、クロトラクトン、δ−バレロラクトンおよびδ−カプロラクトンが挙げられる。これらのうち最も好ましいはε−カプロラクトンである。
【0035】
一つの好ましいポリエステルポリマーは、約30〜40重量%のネオペンチルグリコール、7〜12重量%のトリメチロールプロパン、8〜20重量%のアジピン酸、10〜25重量%のイソフタル酸、および20〜30重量%の無水フタル酸を含有し、および115〜160のヒドロキシル価および0〜5の酸価を有する。
【0036】
ポリエステル樹脂成分に追加して、プライマ組成物はまた、フィルム形成性バインダーの一部として、架橋剤を含有する。組成物において用いられる架橋剤は、アミノプラスト樹脂またはブロックトポリイソシアネート樹脂または2つの混合物である。メラミンホルムアルデヒド縮合物などのアミノプラスト樹脂が一般的には好ましい。一般には、アミノプラスト樹脂は、メラミン樹脂、尿素、ベンゾグアナミン、または類似の化合物のアルデヒド縮合物である。通常は、用いられるアルデヒドはホルムアルデヒドであるが、有用な生成物は、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール等などの他のアルデヒドから形成することが可能である。メラミン樹脂または尿素の縮合物が、最も一般的であると共に好ましいが、少なくとも1種のアミン基が存在する他のアミンおよびアミドの生成物もまた用いることが可能である。
【0037】
メラミン樹脂縮合物のうち、部分的にまたは完全にアルキル化されている、単量体または高分子メラミンホルムアルデヒド縮合物樹脂が一般的には好ましい。これらの好ましい樹脂は、有機溶剤に可溶であり、商品名Cymel(登録商標)でニュージャージー州ウェストパターソン(West Patterson,New Jersey)のCytec Industries,Inc.から市販されている。一つの好ましい架橋剤は、約1〜3の重合度を有する、メチル化およびブチル化またはイソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂である。一般的には、このメラミンホルムアルデヒド樹脂は、約50%ブチル化基またはイソブチル化基および50%メチル化基を含有する。特性の良好なバランスのための他の好ましいメラミン樹脂は、Cymel 1156(登録商標)として公知である完全にブチル化された樹脂である。
【0038】
尿素ホルムアルデヒド、ベンゾクアナミンホルムアルデヒドおよびブロックトポリイソシアネートまたは非ブロックトポリイソシアネートまたは前述の架橋剤のいずれかの適合する混合物などの、他の可能な架橋剤もまた、当然用いることが可能である。
【0039】
例えば、上述のアミノプラスト架橋剤は、フィルム特性の増強のために、または、従来のブロックトポリイソシアネート架橋剤のいずれかと、置き換えるまたは任意により組み合わせることが可能である。典型的な遮断剤は、アルコール、ケチミン、オキシム、ピラゾール等である。
【0040】
ポリイソシアネートの典型的な例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート等などの、2〜4個のイソシアネート基/分子を有するイソシアネート化合物である。商品名Desmodur(登録商標)N−3390で、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,Pennsylvania)のBayer Corporationから入手可能であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、商品名Desmodur(登録商標)Z−4470でBayer Corporation等から入手可能であるイソホロンジイソシアネート(イソシアヌレート)のイソシアヌレートなどの、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネートもまた用いることが可能である。
【0041】
前述の有機ポリイソシアネートおよびポリオールのいずれかから形成される、ポリイソシアネート官能基付加物もまた用いることが可能である。トリメチロールプロパンまたはエタンのようなトリメチロールアルカンなどのポリオールを用いることが可能である。一つの有用な付加物は、テトラメチルキシリデンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物であり、およびCythane(登録商標)3160の商品名で入手可能である。本発明の架橋性樹脂が外装コーティングに用いられる場合、耐候性および黄化耐性の観点から、脂肪族または脂環式イソシアネートの使用が、芳香族イソシアネートの使用に対して好ましい。本系において用いることが可能である好適なブロックトイソシアネートの例は、Bayer Corporationから入手可能である1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのピラゾールブロックトポリイソシアネートである。
【0042】
本発明のプライマコーティング組成物は、本願明細書においてSRD(溶剤応答性分散体)ポリマーとして称される、少なくとも1種の分散ポリマーをさらに含む。本発明を、ここで、一般に、一つの特定のタイプのSRDのコンテクストで検討することとする。他のタイプのSRDもまた本発明において用いることが可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0043】
ここで記載されることとなるSRDポリマーは、主鎖(またはコア)およびこれにグラフとされた側鎖(いわゆる「アーム」)を有するグラフトコポリマーであり、これらの部分の一方(アームまたは主鎖のいずれか)は、コーティング組成物に用いられる溶媒混合物に実質的に完全に不溶に生成されている。主鎖(またはコア)部分は、最も望ましくは不溶相として選択され、一方で、SRDのグラフトアームは、最も望ましくは溶媒混合物に可溶として選択される。これは、等しい分子量の溶液ポリマーと比したときに粘度の低い分散ポリマーをもたらす。他の有用なSRDは、主鎖が溶媒混合物に可溶であり、およびグラフトアームが溶媒混合物に不溶であるものである。
【0044】
いずれにしろ、吹付け塗布の際、コーティング組成物は、SRD非溶剤のほとんどを揮発により失う。その結果、グラフトコポリマーは可溶性となり、および分散体より高い粘度を示す。この粘度の増加が、ウェットオンウェットで塗布されたときの、ベースコートとプライマとの混合の防止を補助する。SRDは、従って、このような混合を防止する十分な量で用いられるべきである。広く多様なSRD樹脂を用いることが可能である一方、当業者には明白であろうとおり、これらは、本発明において特に良好であると見出されるものは、アクリルおよびスチレン化アクリルSRDポリマーを含む。
【0045】
いずれの特定のメカニズムによっても束縛されることは望まないが、前述のSRDアクリルポリマーの包含は、増粘剤として作用しそれゆえ、ウェットプライマおよびベースコーティング層の混合を防止すると考えられている。主にSRDに対して非溶剤である溶媒混合物を含有するコーティング組成物に包含された場合、SRDは、コイル状の、密接に充填された粒子であると考えられている。そして、プライマコーティングは、相当量の揮発性溶剤を用いる必要なく吹付けなどによる容易な塗布を可能とする、十分に低い粘度を有することとなる。吹付け塗布の間および基材上にコートされた後、揮発性非溶剤は、先ず、コーティングから揮発して、残りの溶剤中にSRD粒子を巻出させる。このSRDの巻出しは、次いで、ポリマーにその高分子量を発揮させ、およびコーティング組成物を増粘し、これによりコーティングの粘度を、そのベースコートにおける混合またはにじみを防止するに十分なまでに高めると考えられている。
【0046】
上に示したとおり、広く多様なSRD樹脂を用いることが可能である一方で、本発明を、ここで、一般に、主鎖が不溶部分であるアクリルまたはスチレン化アクリルSRD樹脂のコンテクストで検討することとする。
【0047】
主鎖(またはコア)が不溶部分であるこのようなSRDポリマーの調製においては、最終溶剤組成物において可溶である(最終的にアームを形成する)マクロモノマーが先ず調製される。最終グラフトコポリマーが、次いで、主鎖モノマーとマクロモノマーとを、好ましくはフリーラジカル共重合により共重合することによって調製される。好ましくは、主鎖、マクロモノマーまたは両方の形成に用いられるモノマーの少なくとも約5重量%が、プライマコーティング組成物中に存在するフィルム形成性成分と反応することとなるヒドロキシル基などの官能基を含有し、それゆえ、SRDポリマーが最終フィルムネットワークの不変部分となることを可能とする。この構造は、フィルム接着性を増加し、コーティングフィルムの全体の機械特性を向上し、一般的に、SRDポリマーが未反応成分で残留した場合に生じ得る、老化に伴うフィルムの劣化または層剥離を防止する。
【0048】
本発明において用いられるグラフトコポリマーは、約10,000〜100,000、好ましくは約35,000〜85,000の重量平均分子量を有する。グラフトコポリマーは、エチレン性不飽和モノマーを、各々がグラフトのための末端不飽和を有するマクロモノマーの存在下で重合することにより調製することが可能である。得られるポリマーは、結合された複数のマクロモノマー「アーム」を有する主鎖から組成されるとして表すことが可能である。
【0049】
本発明において用いられるグラフトコポリマーの好ましい調製プロセスにおいて、コバルト鎖移動が、2段プロセスの第1のステップにおいて用いられる。この第1のステップは、典型的には、不活性有機溶剤中で、エチレン性不飽和モノマーの混合物を、好ましくはCo+2またはCo+3を含有する触媒性連鎖移動剤を用いて、マクロモノマーを得る重合ステップを含む。
【0050】
上に示したとおり、好ましい触媒性連鎖移動剤は、Co+2またはCo+3を含有する化合物である。例証的なコバルトキレートは、参照によりそれらの全体が援用される米国特許第4,680,352号明細書(Janowiczら)および米国特許第4,722,984号明細書(Janowicz)に記載されているものである。最も好ましいキレートは、ペンタシアノコバルテート(II)、ジアクアビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシマト)コバルテート(II)およびジアクアビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシマト)コバルテート(II)である。Co+3触媒は、参照により本願明細書に援用される国際公開第87/03605号パンフレットに記載されている。このような連鎖移動剤は、通常、モノマーの重量を基準にして5〜250ppmの濃度で用いられる。
【0051】
典型的には、モノマーおよび有機液体の混合物が、好ましくは、制御の容易性のために還流温度に加熱され、および混合物に、選択された触媒性連鎖移動剤が添加される。追加のモノマー、溶剤、およびアゾ開始剤が、時間の経過に伴って添加されて、マクロモノマー溶液が生成される。一般には、分子量(Mw)は、約5,000〜40,000および好ましくは約25,000〜40,000である。用いることが可能である溶剤は、芳香族および脂肪族炭化水素、エステル、ケトン、アルコールおよびこれらの混合物である。
【0052】
グラフトコポリマーを調製する好ましいプロセスにおける第2のステップは、有機溶剤中における、前記既に調製したマクロモノマーの存在下での、エチレン性不飽和モノマーの他の混合物の重合による高分子主鎖の形成ステップを含む。グラフトポリマーの主鎖が形成されるこの重合は、いずれかのフリーラジカルまたはビニル付加重合反応プロセスを利用し得、および連鎖移動剤を必ずしも必要としない。典型的なビニル付加重合反応は、通常は、約80℃〜約160℃、好ましくは90℃〜130℃の範囲内の温度で実施される。
【0053】
主鎖の重合の最中には、一般的には、広く多様な材料から選択されるフリーラジカル開始剤が存在する。好適なタイプの材料としては、過酸化物、ヒドロ過酸化物およびアゾ開始剤が挙げられる。これらのタイプ開始剤の例としては、ジ−第三ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド;アミルペルオキシアセテート;クメンヒドロペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン;ヘキシン−3−第三ブチルクミルペルオキシド;第3アミルペルオキシド;2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサン、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネートおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が挙げられる。開始剤の量は、広く異なることが可能であるが、通常は、約1%〜約8%の範囲の量で存在する(割合は、ビニルモノマー成分の総重量を基準にしている)。
【0054】
一般的には、ビニル付加重合の最中に、好ましい反応温度の維持を補助する溶剤もまた存在する。典型的な溶剤および希釈剤としては、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、エチルアミルケトン、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、エチレングリコール、モノエチルエーテル、VMおよびPナフサ、ミネラルスピリット、ヘプタンおよび他の脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素、芳香族石油留出物、エステル、エーテルおよびケトン等が挙げられる。最適な溶剤は、不溶相の組成によって導き出されるであろう。典型的には、重合に最適な溶剤は、主鎖に対して非溶剤であろう。主鎖は、通常、非極性溶剤中に実質的にないし完全に不溶として配合されるため、脂肪族および芳香族炭化水素などの非極性溶剤が通常は選択される。
【0055】
このグラフトコポリマーは、アルキルメタクリレート、またはアルキルアクリレートまたはこれらの混合物の共重合化モノマーをさらに含むことが可能であり、ここで、アルキル基は1〜18個の炭素原子を有する。任意により、アクリルポリマーは、スチレン、αメチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの他の成分を、約0.1〜50重量%の量で含有することが可能である。ヒドロキシル官能基は、その重合において、ヒドロキシアルキルアクリレート、またはヒドロキシアルキルメタクリレートまたはこれらの混合物のモノマー混合物への導入により、所望の断片に導入されることが可能であり、ここで、アルキル基は1〜8個の炭素原子を有する。
【0056】
分岐アクリルポリマーの形成に用いることが可能である典型的なアルキルアクリレートおよびメタクリレートは以下のとおりである:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート等。アクリルポリマーの形成に用いることが可能である他の成分は、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルである。典型的なヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートは以下のとおりである:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシルブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等。機能的量のSRDポリマーが本配合物において用いられ、および特定のバインダーおよび選択された架橋性樹脂、ならびにそれらの分子量および相対的比率に応じて広く異なるであろう。SRDポリマーの特定の濃度はこれらの可変要素の観点から選択されることとなるが、当業者には明らかであるとおり、量は、一般的には、配合物におけるバインダー固形分の重量を基準にして約10〜40重量%であろう。典型的には、量が10重量%未満である場合、コートフィルムの全体的などの外観は劣ることになり得、およびベースコートフレークの誤配向が生じ得、一方で、量が40重量%を超える場合、接着性および耐チッピング性に劣る場合がある。好ましくは、量は20〜30重量%である。
【0057】
任意により、上記のフィルム形成性バインダー成分に追加して、組成物はまた、アクリル樹脂、アクリロウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等などの他のフィルム形成性バインダーおよび/または架橋性樹脂を含有し得る。しかしながら、上に示したとおり、プライマ組成物は、基本的に、例えばアクリルミクロゲルベースの架橋ミクロゲル樹脂粒子および例えばアクリルNADベースの架橋NAD樹脂粒子をフィルム形成性バインダーの一部としては完全に含まないことが一般的には所望される。
【0058】
フィルム形成性バインダー成分の他に、本発明のコーティング組成物はまた、少量の非バインダー固形分を含み得る。一般的には、触媒、顔料、または安定化剤などの化学添加剤は、バインダー固形分の一部としてはみなされない。顔料以外の非バインダー固形分は、通常は、組成物の約5〜15重量%を超えない。このような追加の添加剤は、当然、コーティング組成物の意図された使用に応じることとなる。
【0059】
例えば、硬化時の組成物の架橋速度を高めるために、触媒を組成物に添加することが可能である。一般的には、バインダーの重量を基準にして約0〜3重量%の触媒が用いられる。このような触媒の典型的なものはブロック酸触媒である。典型的には有用なブロック酸触媒は、アミノメチルプロパノールまたはジメチルオキサゾリンでブロックされた芳香族スルホン酸である。典型的には、有用な芳香族スルホン酸は、パラ−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸である。一つの好ましい触媒は、アミノメチルプロパノールでブロックされたドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0060】
組成物の屋外耐候性を向上するために、およびコートされた基材を早期の劣化から保護するために、組成物は、典型的には、バインダーの重量を基準にして約0.01〜2重量%の紫外光安定化剤(この用語は、紫外光吸収剤、遮蔽剤および消光剤を含む)を含有する。典型的な紫外光安定化剤としては、ベンゾフェノン、トリアジン、トリアゾール、ベンゾエート、ヒンダードアミンおよびこれらのブレンドが挙げられる。
【0061】
組成物において用いることが可能である典型的な顔料は、タルク、カオリン、バライト、炭酸塩、ケイ酸塩などの充填材顔料、および二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化鉄などの金属酸化物などの着色顔料、およびカーボンブラックおよび有機着色顔料および染料である。得られるプライマ組成物は、約1:100〜150:100の顔料対バインダー重量比を有する。
【0062】
顔料は、先ず、練り顔料を、アクリルコポリマー分散剤と共に、または他の適合するポリマーまたは分散剤と共に、サンドグラインド、ボールミルまたは磨砕グラインドなどの従来の技術により形成することにより、プライマ組成物に導入されることが可能である。練り顔料は、組成物において用いられる他の成分とブレンドされる。
【0063】
一般には、カーボンブラックおよび二酸化チタンを主な顔料として用いることにより調製される、灰色のプライマが典型的には用いられる。しかしながら、種々の着色顔料を用いて、例えば、後にその上に直接的に塗布される有色のベースコート層の色調と類似の色調を有する種々の色を提供し得る。これは、可能な限り最薄のフィルム塗り厚で、有色のベースコートの完全な隠蔽の達成を図るためになされる。さらに、少量のタルクを組成物中に含んで、コーティングフィルムの耐チッピング性を向上させることが、一般的には望ましい。
【0064】
液体キャリアについて、従来の有機溶剤または溶剤ブレンドのいずれかを用いて、プライマ組成物を形成することが可能であるが、ただし、高分子バインダー成分が相溶性であると共に、高品質のプライマコーティングを与えるよう溶剤は選択される。典型的には、SRD中の主鎖材料について、非溶剤、典型的には非極性溶剤の少なくとも1種を含む溶剤ブレンドが最適である。コーティング組成物は、好ましくは、極性および非極性溶剤のブレンドを含有し、ここで、非極性溶剤(またはSRDについて非溶剤)は、溶剤の合計重量を基準にして、少なくとも50重量%、好ましくは約60〜90重量%を含む。
【0065】
以下は、組成物の調製に用いられることが可能である溶剤の例である:メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよび他のエステル、エーテル、およびケトンなどの極性溶剤;およびトルエン、キシレン、および従来用いられる脂肪族および芳香族炭化水素溶剤などの非極性溶剤。当然、コア組成物に対する非溶剤対溶剤の比は異なることが可能であり、および分散体の粒径および粘度を有効にするために調節される。典型的には、非溶剤の量を増加させると、より大きな粒径およびより低い粘度の溶液がもたらされる。約500nm以下の分散体粒径、および好ましくは200〜400nmの範囲が、一般的には、塗布中の十分に低い吹付け粘度および良好な流動性を維持するために好ましい。
【0066】
上記の成分に追加して、組成物はまた、強化剤、および例えばResiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320および325(高分子量ポリアクリレート)などの流動性制御剤などの他の従来の配合物添加剤を含み得る。このような追加の添加剤は、当然、当業者に明らかであろうとおり、コーティング組成物の所望の最終特性に応じるであろう。さらに、Garamite(登録商標)クレイなどの従来の流体力学的活性剤、ヒュームドシリカ、尿素サグ抑制剤等もまた、混合耐性の増加のために用いることが可能である。
【0067】
上に示したとおり、高固形分プライマ組成物が、一般的には、本発明の多層コーティングプロセスにおいて用いられるために好ましい。空気汚染を最低限のレベルに維持するために、プライマコーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総重量を基準にして、約40〜70重量%の総固形分含有量(%非揮発性)を塗布時に有し、および好ましくは50〜65重量%を有する。高固形分コーティングは低固形分液体コーティングのような挙動を示すが、より低い溶剤含有量および著しく低減された排出の追加の利益を有する。このような固形分での揮発性有機含有量は、典型的には、ASTM D3960に提供された手法で測定した際に、約3.5ポンド未満の有機溶剤/ガロンの硬化性組成物と言い換えられる。
【0068】
しかしながら、当業者に明らかであろうとおり、塗布時に、噴霧粘度を調節するため、およびコーティングの流動性およびレベリングを制御するため、および他の所望の特性を提供するために、追加の溶剤を必要に応じて追加し得ることが理解されるべきである。
【0069】
プライマ組成物は、プラスチックまたは金属基材に、吹付け、静電塗装、浸漬、ブラッシング、フローコーティング等などの従来の技術により塗布することが可能である。
【0070】
ベースコート層
本発明による多層コーティングフィルムの形成方法において、有色ベースコーティング材料が、ベースコート層の形成に用いられる。ベースコート層は、後述されることとなるクリアコート層と共にトップコートフィルムを形成する。このベースコーティング組成物は、フィルム形成性樹脂、通常は硬化剤、着色顔料および任意により光輝材顔料を含有して、輝き、パール、蛍光、および/またはメタリック外観または硬化コーティング組成物への色の深度の増加などの特殊な視覚効果を付与する。
【0071】
従来公知のベースコート組成物のいずれかを、本発明の方法において用いることが可能である。一般には、ベースコートの組成は本発明によっては限定されない。ベースコーティング組成物は溶剤タイプまたは水系タイプであり得る。
【0072】
ベースコーティング材料中に含まれるフィルム形成性樹脂の例としては、これらに限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、および樹脂は単独でまたは組み合わせて用い得る。フィルム形成性樹脂は硬化剤と組み合わせて用いることが可能である。典型的な硬化剤の例としては、メラミンホルムアルデヒド縮合物および/またはブロックトイソシアネート樹脂などのアミノ樹脂が挙げられる。
【0073】
典型的な高固形分溶剤系ベースコートの例は、着色顔料、任意選択のアルミニウムフレーク、およびUV吸収器に追加して、組成物の重量で、約10%ミクロゲルを、レオロジー制御のために、21%メラミンホルムアルデヒド樹脂、15%分岐ポリエステル樹脂、5%ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、1%ドデシルベンジルスルホン酸触媒、および上述のポリマーを分散および/または希釈するおよび噴霧塗布を促進する40%溶剤を含む。
【0074】
クリアコート層
クリアコート層を形成するために、クリアコーティング組成物が用いられる。クリアコーティング組成物は特に制限されず、およびフィルム形成性樹脂、硬化剤等を含有するクリアコーティング材料であり得る。クリアコーティング材料は、溶剤タイプ、水系タイプまたは粉末タイプであり得る。
【0075】
低VOC(揮発性有機含有量)を有すると共に、現在の汚染規制を満たす高固形分溶剤系クリアコートが一般的には好ましい。典型的には、有用な溶剤系クリアコートとしては、これらに限定されないが、イソシアネートと架橋したポリオールポリマーの2K(2成分)系およびメラミン樹脂と架橋したアクリルポリオールの1K系またはポリオールおよびメラミン樹脂と組み合わせた1Kアクリロシラン系が挙げられる。
【0076】
本発明のプロセスにおいて用いることが可能である好適な1K溶剤系アクリロシランクリアコート系が、参照により本願明細書に援用される米国特許第5,162,426号明細書に開示されている。好適な1K溶剤系アクリル/メラミン樹脂クリアコート系が、参照により本願明細書に援用される米国特許第4,591,533号明細書に開示されている。
【0077】
エポキシ酸系もまた用いることが可能である。このような仕上げは、高い光沢およびDOI(イメージの明瞭性)を含む魅力的な美的外観を有する鏡面状外装仕上げを備える自動車およびトラックを提供する。
【0078】
基材
本発明のコートフィルムの形成方法は、金属、プラスチックおよび発泡体、およびこれらの組み合わせなどの種々の基材に、好ましくは金属表面および成形体に、およびより好ましくはカチオン性電着塗装コートフィルムがその上に形成された金属製品に適用され得る。
【0079】
金属基材の例としては、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびスチールなどのこれらの金属を含有する合金が挙げられる。特定の製品としては、乗用車、トラック、自動二輪車およびバスなどの自動車の車体および部品が挙げられる。
【0080】
特に好ましい金属基材は、リン酸塩、クロム酸塩等での形成処理に予備的に供されたものである。
【0081】
基材は、形成処理に供した表面上に電着塗装コートフィルムを有し得る。電着塗装コートフィルムは、アニオン性またはカチオン性電着塗装コーティング材料から形成され得る。しかしながら、優れた耐腐食性を提供するためカチオン性電着塗装コーティング材料が好ましい。
【0082】
本発明の方法によりコートされることが可能であるプラスチック基材の例としては、ガラス繊維強化ポリエステル、反応−射出成形ウレタン、特に結晶性ポリアミド等またはこれらの混合物が挙げられ、これらは下塗りされていても下塗りされていなくてもよく、または本願明細書に記載のコーティング方法による処理の前に他に処理されていてもよい。これらのプラスチック基材は、度々、フェンダー、バンパー、および/またはトリム部品などの特定の車体部品の製造に用いられる。
【0083】
コートフィルムの形成方法
本発明の多層コートフィルムの形成方法によれば、図1に例示されているとおり、プライマコート層12がプライマコーティング組成物を用いて基材(図1に示されている車体10)上に形成され、次いで、ベースコート層14がベースコーティング材料を用いて、およびクリアコート層16がクリアコーティング材料を用いて、この順番で、ウェットオンウェット方式で形成される。
【0084】
本発明によれば、上述の3つのコーティング組成物が車体に塗布される場合、吹付け、静電塗装、高速回転静電ベル(high speed rotational electrostatic bells)等などの従来のコーティング方法を実施することが可能である。すべての3つのコーティングを塗布する好ましい技術は、典型的に最新の自動車およびトラック組み立て工場において利用されているため、静電増強有り、または無しにおいての空気噴霧吹付け、および高速回転噴霧静電ベルである。
【0085】
本発明によりプライマコーティング材料が車体に塗布されるとき、上記技術のいずれかを用いることが可能である。
【0086】
プライマコーティング材料は、通常は、0.3〜2.5ミル(7〜60μm)、好ましくは0.5〜1.5ミル(12〜36μm)の厚さを有する乾燥したコート層を形成するが、これは意図される使用に従って異なり得る。厚さが上限より厚い場合、イメージ鮮鋭性が悪化し得、または不均一性またはサギングなどのトラブルが塗布時に生じ得る。下限未満である場合、電着−下塗り基材を隠蔽することができず、およびフィルムの不連続性が生じ得、これは下位の電着塗装層を過剰なUV透過および劣化に曝す可能性がある。
【0087】
未硬化プライマコート層上に、ベースコーティング材料およびクリアコーティング材料がウェットオンウェット方式で塗布されて、ベースコート層およびクリアコート層が形成される。
【0088】
ベースコーティング材料は、プライマコーティング材料のように、空気−静電吹付けコーティングまたは回転噴霧静電ベルを用いて、0.4〜1.2ミル(10〜30μm)の乾燥厚を有するように塗布され得る。
【0089】
クリアコート材料が、次いで、ベースコート層上に、平滑な粗度または光沢着色顔料の存在により生じる光沢を目的として、およびベースコート層の表面を保護するために塗布される。クリアコート材料は、ベースコーティング材料のように、回転噴霧静電ベルを用いて塗布され得る。
【0090】
クリアコート層は、好ましくは、約1.0〜3.0ミル、(25〜75μm)の乾燥厚を有するよう形成される。
【0091】
上記で得られる多重コート層は、次いで、図1に示すとおり同時に硬化されて(すなわち焼付されて)、層状のコートフィルムを形成する。これが、「3−コート−1−焼付方法」と呼ばれるものである。この方法は、ベースコート化される前に、プライマコート層を乾燥させるためのオーブンを必要とせず(図2に示される従来のプロセスにおいては必要とされている)、および経済的および環境的観点から好ましい。
【0092】
三層化コートフィルムは、次いで、硬化オーブン中に、100〜180℃、好ましくは130〜160℃の範囲内の硬化温度で、高架橋密度を有する硬化コートフィルムが得られるよう硬化される。硬化時間は硬化温度に応じて異なり得るが、硬化温度が130℃〜160℃のときには10〜30分間の硬化時間が適切である。
【0093】
本発明のプロセスによれば、多層コートフィルムは、3〜5ミル(75〜120μm)の厚さを有するよう形成される。本発明の層の各々においては、薄いフィルム塗り厚は、外観、機械的特性、および下位の層へのUV透過量に影響することとなるため、適切なフィルム塗り厚を有することが重要である。過度に薄いフィルム塗り厚は、電着コート層へUV放射線を透過させる可能性がある。ほとんどの電着塗装層はUV吸収剤は配合されておらず、およびこれらは、UV劣化に対して極めて感受性である傾向にある。
【0094】
以下の実施例は本発明をさらに例示するが、これらは、本発明をそれらの詳細に限定するものと解釈されるべきではない。すべての部および割合は、他に示されていない限りにおいて重量基準である。本願明細書に開示のすべての分子量は、ポリスチレンを基準として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されている。他に規定されていない限りにおいて、すべての薬品および試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のAldrich Chemical Companyから入手することが可能である。
【実施例】
【0095】
以下のSRD分散体を調製し、次いでそれを用いて、以下の本発明の3ウェットプライマコーティング組成物を形成した。
【0096】
実施例1
SRD用マクロモノマーの調製
BMA/EHMA/IBOMA/HEMA、45/30/15/10重量%
攪拌機、コンデンサ、加熱マントル、窒素インレット、熱電対および添加ポートを取り付けた5−リットルフラスコに、99.0グラムのブチルメタクリレート、66.0グラムの2−エチルヘキシルメタクリレート、33.0グラムのイソボルニルメタクリレート、22.0グラムのヒドロキシエチルメタクリレート、317グラムのブチルアセテートおよび477.9グラムの酢酸エチルを添加した。混合物を攪拌し、および窒素下で還流に加熱した。これに、次いで、一度に、2.2グラムのVazo(登録商標)52、129.0グラムの酢酸エチルおよび17.2グラムのおよび0.07グラムのビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメート)コバルテート(II)の溶液の予混合物を添加した。続けて、891.0グラムのブチルメタクリレート、594.1グラムの2−エチルヘキシルメタクリレート、297.0グラムのイソボルニルメタクリレート、198.0グラムのヒドロキシエチルメタクリレートおよび44.8グラムの酢酸エチルの溶液の予混合物を、180分間かけて還流を維持しながら添加した。19.8グラムのVazo52および435.7グラムの酢酸エチルの溶液を、同時に330分の時間をかけて添加した。30分の保持時間の後、1.1グラムの第3級ブチルパーオクトエートおよび52グラムの酢酸エチルの予混合した溶液を、15分間かけて、還流を維持しながら添加した。次いで、バッチをさらなる30分間、還流で保持した。保持時間の最後に、70.3グラムの酢酸エチルを添加した。反応混合物を、次いで冷却した。
【0097】
このように調製したマクロモノマーは、GPCで測定したところ17027の数平均分子量および36450の重量平均分子量を有していた。重量固形分は58.6%であり、および25℃で計測したガードナーホルト粘度(ASTM D1545−98)はX+1/4であった。
【0098】
実施例2
溶剤応答性分散(SRD)ポリマーの調製
[64]MMA/MA/AN/Sty60/32/5/3//[36]BMA/EHMA/IBOMA/HEMA45/30/15/10重量%
攪拌機、コンデンサ、加熱マントル、窒素インレット、熱電対および添加ポートを取り付けた5−リットルフラスコに、839.9グラムの実施例1からのマクロモノマー、166.9グラムのミネラルスピリット、442.6グラムのヘプタン、14.6グラムの酢酸エチルおよび18.2グラムのスチレンを添加し、および窒素下で温度を還流に昇温した。これに、532.6グラムのメチルメタクリレート、284.4グラムのメチルアクリレート、26.9グラムのスチレン、44.4グラムのアクリロニトリル、13.4グラムの第3級ブチルパーオクトエート、23.7グラムの酢酸エチルおよび72.9グラムのミネラルスピリットを予混合した溶液を、210分間かけて、温度を還流で保持しながら添加した。120分の保持時間の後、180グラムの溶剤を蒸留で除去した。反応混合物を、次いで室温に冷却した。
【0099】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量は、重量平均で83000であることを見出した。重量固形分は62.2%であった。
【0100】
実施例3
溶剤応答性分散(SRD)ポリマーの調製
[55]MMA/MA/AN/Sty60/32/5/3//[45]BMA/EHMA/IBOMA/HEMA45/30/15/10重量%
攪拌機、コンデンサ、加熱マントル、窒素インレット、熱電対および添加ポートを取り付けた5−リットルフラスコに、1044.2グラムの実施例1からのマクロモノマー、166.9グラムのミネラルスピリット、442.6グラムのヘプタン、14.6グラムの酢酸エチルおよび15.7グラムのスチレンを添加し、および窒素下で温度を還流に昇温した。これに、459.1グラムのメチルメタクリレート、245.1グラムのメチルアクリレート、23.2グラムのスチレン、38.3グラムのアクリロニトリル、20.0グラムの第3級ブチルパーオクトエート、23.7グラムの酢酸エチルおよび72.9グラムのミネラルスピリットを予混合した溶液を、210分間かけて、温度を還流で保持しながら添加した。120分の保持時間の後、180グラムの溶剤を蒸留で除去した。反応混合物を、次いで室温に冷却した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量は、重量平均で61724であることを見出した。重量固形分は59.5%であった。
【0101】
実施例4
上記SRDを含有する3ウェットプライマの調製
灰色のプライマサーフェイサ組成物を、以下の成分を好適な混合容器中に示す順番で一緒に混合することにより調製した。
【0102】

【0103】
表脚注
1メチルイソブチルケトン溶剤中に130、75%固形分のヒドロキシル価を有する分岐ポリエステルポリオール樹脂。ポリエステル樹脂は、ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパン/アジピン酸/イソフタル酸/無水フタル酸39.1/9.4/12.2/13.8/25.5重量%からなる13.5の酸価を有していた。
2ブチルアセテート溶剤
3ブチルアセテート中50:50重量%のイソブチルアクリレートおよびイソブチルメタクリレートのアクリルコポリマー50.0%重量。
468%固形分の、エステル溶剤中のアクリル樹脂中に分散された二酸化チタン顔料
518.10%総固形分および16.20重量%顔料カーボンブラックColumbian Chemicals Company製のRaven500Ultra II(登録商標)を有するカーボンブラック顔料分散体。
6Resimene(登録商標)CE4514、Surface Specialties Inc.により供給された単量体メラミンホルムアルデヒド樹脂。
7上記実施例2からのSRD−PL5391。
8上記実施例3からのSRD−PL−5479。
99%固形分の、アクリル樹脂溶液および芳香族炭化水素溶剤中のタルク顔料分散体。
1048%のNacure(登録商標)XP−221、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)のKing Industriesにより供給された芳香族スルホン酸。
【0104】
得られる3ウェットプライマサーフェイサ組成物は、69.5%の理論的固体含有量を有し、および吹付け固形分は52重量%であった。
【0105】
実施例5および比較例
従来の焼付プライマと比した上記で調製した3ウェットプライマを用いる3ウェットコーティング方法
リン酸化スチールパネルを:(1)上記で調製したプライマ(実施例3)での3ウェットコーティング方法を用いる;および(2)対照として、標準的な焼付プライマ(比較例)での従来のプライマ焼付プロセスを用いる、二つの異なる方法でコートした。
【0106】
実施例5において、実施例4のプライマサーフェイサを、プライマ−サーフェイサを吹付けることにより、硬化陰極エポキシ樹脂ベースの電着プライマ(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のDuPont Company製のCormax(登録商標)6ED)でコートされたリン酸塩化スチールパネル上に塗布して、23ミクロンのフィルム塗り厚を得た。プライマサーフェイサ層およびすべての続く層を55鋸状ベルカップを用いて塗布した。プライマサーフェイサ塗布の後、パネルを室温で3分間空気フラッシュ乾燥させ、および、その後、シルバーバーチ溶剤系ベースコート(Du Pont Company製の商品コード(commercial code)647A01111)の塗布を、2コートで続けて18ミクロンのフィルム塗り厚をフラッシュオフ3分間で得、および続けて、アクリロシランクリアコート(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のDuPont Company製のGen(登録商標)4ES)を塗布して、この試験のために垂直および水平位置上に40ミクロンのフィルム塗り厚を得、および10分間フラッシュ乾燥し、および30分間140℃で焼付した。
【0107】
上記の3ウェットプライマサーフェイサ組成物を、比較のために、比較例1において、DuPont Company製の1回焼付プライマ708−DN079中の市販のTitanium Frost2と共に、ベースコート塗布との間にプライマを焼付する従来のプロセスを用いて、比較例1のために塗布した。
【0108】
試験結果が以下の表にまとめられている。
【0109】
表において、フロップ、接着性、チッピング、および全体的な外観を、以下の手法に従って試験した。
【0110】
フロップ−フロップ値(仕上げのメタリック効果の品質を計測する)を、各パネルの輝度特性を15°、45°、および110°の角度から計測するX−Rite Inc.製のX−Rite(登録商標)マシーンにより測定した計測値から算出した。3回の読取値の平均を各角度で取り、および以下の式を用いてフロップが算出される。
フロップ=((L15°−L110°)*10/L45°)。
【0111】
接着性(0〜5の接着性を試験法ASTM D3359に従って測定した)最低でも少なくとも4Bの等級が許容される。
【0112】
耐チッピング性(通過する車の車輪によってこの車両に飛ばされる最も通常は石または砂利といった硬質材料による衝撃からの、または同一の車の車輪によってこの車両に飛ばされるロッカーパネルの場合の物理的損傷に耐えるコーティング系の性能を測る)を、グラベロメータを用いて、および試験法SAE J−400に記載の手法に従って測定する。最低でも、少なくとも5の等級が許容される。
【0113】
外観−外観を、Byk Gardnerから入手可能であるwavescan DOI機器を用いて測定した。外観が自動車品質のものであるかの判定、すなわち、コーティングが自動車仕上げの規格を満たす美的外観を有していたかは、上記wavescan DOI機器からの計測値から判定した。この機器は、普通オレンジピールとして知られる状態を示す長波を見ると共に、いわゆる「イメージの明瞭性」またはDOIの定量化を補助する短波をも見ることにより、仕上げの視覚的外観を計測する。これらの組み合わせで得られるパラメータ(WaveScan CF読取値による)は、自動車仕上げの全体的な視覚的外観を定量化するために用いられることが可能である。最低で水平60および垂直50が自動車用に望ましい。
【0114】
表1
DuPont708ラインプライマ、従来のプロセスを用いるパネルの物理特性対3ウェットプライマおよび3ウェットプロセスを用いるパネルの物理特性

【0115】
要約すると、従来の焼付プロセスによって塗布される従来の焼付プライマと同一または類似の特性を有する本発明のプライマコーティング組成物を3−コート−1−焼付(すなわち3ウェット)プロセスで用いて、自動車の高品質な外観を得ることが可能であることを結果は示した。
【0116】
本発明のプロセスおよび組成物の成分の種々の他の改良、変更、付加または置き換えは、本発明の思想および範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかであろう。本発明は、本願明細書に規定の例示の実施形態によっては限定されず、特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明による3層ウェット塗料塗布プロセスの概略図である。
【図2】個別のプライマ噴霧ブースおよびプライマ焼付プロセスを必要とする従来の自動車コーティングプロセスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、順番に、プライマコーティング組成物、ベースコーティング組成物およびクリアコーティング組成物を塗布するステップと、塗布した3層を焼付により同時に硬化するステップとを含む多層コーティングフィルムの形成方法であって、前記プライマコーティング組成物は、フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリアを含み、ならびに任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含んでもよく、前記バインダーは、
(a)前記バインダーの重量を基準にして約30〜80重量%のヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、
(b)前記バインダーの重量を基準にして約10〜30重量%の、メラミン樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤、
(c)前記バインダーの重量を基準にして約10〜40重量%の、非極性有機溶剤に実質的に不溶であると共にコアにグラフトされたアクリルポリマーの非架橋主鎖(またはコア)と、その各々が非極性有機溶剤に可溶であると共に一端がコアにグラフトされた安定剤分子を有する複数の実質的に直鎖のアクリル系安定剤成分と、約10,000〜100,000の重量平均分子量とを含むグラフトポリマー
を含有する、前記方法。
【請求項2】
前記組成物が、少なくとも1種の非極性有機溶剤を塗布時に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プライマ組成物が、非水性分散体樹脂および/または架橋ミクロゲル樹脂の粒子を完全に含まないかまたは基本的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、その上に電着塗装コートフィルムが形成された予め下塗りされた基材に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が車体またはその部品である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プライマサーフェイサと、
着色ベースコートと、
前記ベースコート上に塗布されたクリアコートと
を含み、
前記プライマサーフェイサが、請求項1に記載の組成物でできている多層コーティング。
【請求項7】
プライマサーフェイサの下位が電着塗装プライマコーティングである、請求項6に記載の多層コーティング。
【請求項8】
前記コーティングが自動車およびトラックの外装仕上げである、請求項6に記載の多層コーティング。
【請求項9】
フィルム形成性バインダーおよび有機液体キャリアを含み、ならびに任意により、約1:100〜150:11の顔料対バインダー重量比で顔料を含んでもよく、前記バインダーが、
(a)前記バインダーの重量を基準にして約40〜80重量%のヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、
(b)前記バインダーの重量を基準にして約10〜30重量%の、メラミン樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択される架橋剤、
(c)前記バインダーの重量を基準にして約10〜40重量%の、非極性有機溶剤に実質的に不溶であると共にコアにグラフトされたアクリルポリマーの非架橋主鎖(またはコア)と、その各々が有機溶剤に可溶であると共に一端がコアにグラフトされた安定剤分子を有する複数の実質的に直鎖の安定剤成分と、約10,000〜100,000の重量平均分子量とを含むグラフトポリマー
を含有するプライマコーティング組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1種の非極性有機溶剤を塗布時に含む、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項11】
前記分岐コポリマーが、エチレン性不飽和アクリルモノマーと少なくとも約5重量%のヒドロキシル官能基との重合から形成されると共にコアにグラフトされる非極性有機溶剤に不溶であるコアと、マクロモノマーの形態のアクリル系安定剤の一端とを有し、前記アクリル系安定剤が有機溶剤に可溶である、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項12】
前記アミノプラスト樹脂が、部分的または完全アルキル化単量体または高分子メラミンホルムアルデヒド縮合物である、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項13】
前記バインダーの重量を基準にして約0.1〜6重量%のブロック酸触媒をさらに含有する、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項14】
非水性分散体樹脂および/または架橋ミクロゲル樹脂、および/または前記フィルム形成性ポリマーとしてのポリエステル樹脂の粒子を完全に含まないかまたは基本的に含まない、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項15】
少なくとも40%の総固形分濃度を有する、請求項9に記載のプライマ組成物。
【請求項16】
前記組成物が、複合体ベースコート/クリアコート仕上げの下のプライマ−サーフェイサである、請求項9または14に記載のプライマ組成物。
【請求項17】
請求項9または14に記載の組成物の乾燥および硬化層でコートされた基材。
【請求項18】
前記基材が車体またはその部品である、請求項17に記載の基材。
【請求項19】
3層ウェット塗料系を用いて、プライマ焼付無しで、通常のフィルム塗り厚を自動車基材で得る方法であって、
(a)請求項9に記載のプライマ−サーフェイサ組成物を基材に塗布するステップと、
(b)ベースコート組成物をウェットオンウェットで前記プライマ−サーフェイサ上に塗布するステップと、
(c)クリアコート組成物を、ウェットオンウェットで前記ベースコート上に塗布するステップと、
(d)塗布した3つの重量層を、一緒に1回の焼付で硬化するステップと
を含む方法。
【請求項20】
溶剤、フィルム形成性バインダーおよび顔料を含む3層ウェットプライマコーティング組成物であって、前記バインダーが、ヒドロキシル官能性ポリエステル樹脂、およびメラミン樹脂、ブロックトポリイソシアネート樹脂、またはこれらの混合物からなる群から選択されるそのための架橋剤を含み、前記プライマ組成物中における、NADまたは架橋ミクロゲル樹脂粒子の代わりのSRD(溶剤応答性分散体)ポリマー粒子の使用を含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511252(P2009−511252A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534784(P2008−534784)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/039658
【国際公開番号】WO2007/044774
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】