説明

車体下部の補強構造

【課題】車体下部の捩じれ剛性を強化し、かつ良好な乗り心地性能を発揮させること。
【解決手段】車室フロアFの左右の両側縁に沿って設置されたロッカー3と、車室フロアFから延出する左右のサイドメンバ1の間に車幅方向に架設されたクロスメンバ2の車幅方向中央部とを、長手方向中間位置が緩やかな鈍角状に屈曲して上方へ向けて開いたほぼく字形をなす左右一対のブレース5で連結する。左右のブレース5の長手方向中間の屈曲部51とその上方の車体側の部位1bとを上下方向に連結するダンパー(緩衝部材)6を架設し、ブレース5とダンパー6との組み合わせにより適度なバネ性能を発揮させつつ、車室フロアF側の左右位置の前後逆相への変形を抑えて車体の捩じれ剛性を強化するとともに良好な乗り心地を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体下部の補強構造、特に車体の捩じれ剛性を強化する補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の、特に固定ルーフ部の無いオープンカーはルーフ部のある普通乗用車に比べて車体の捩じれ剛性が低くなる。このため、オープンカーでは車体の捩じれ共振周波数が著しく低下し、車両走行時にサスペンションからの入力等で車体が捩じれ振動しやすいといった不具合がある。そこで従来のオープンカーでは、車室フロア側と、車室フロアから前方へ延出するフロントサイドメンバの延出部側とをブレースで連結して車体の捩じれ振動を逓減することが行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8はこの種の従来の代表的な補強構造を示し、車両前後方向に平行に延びる左右のフロントサイドメンバ1,1は、後半の基端部が車室フロアFの下面に沿って結合され、前半が車室フロアFの前縁から前方のエンジンルーム側に延出されている。フロントサイドメンバ1,1の前半の延出部には、車幅方向にクロスメンバ(サスペンションクロスメンバ)2が架設されている。車室フロアFの左右両側縁沿いにはロッカー3,3が設置され、かつ車室フロアF上面には車幅方向に左右両側縁のロッカー3,3間を架けわたすフロアクロスメンバ4が、左右のフロントサイドメンバ1,1の基端部と交差するように設けられている。
【0004】
そして、車室フロアF下面側の左右のフロントサイドメンバ1,1の基端部と、延出部のクロスメンバ2の車幅方向中央部とを金属製の棒材またはパイプ材からなる左右一対のブレース5,5で平面視ほぼV字形に連結することが行なわれている。これら左右のブレース5,5を設けることにより、車体の捩じれ共振周波数が著しく低下するのを防ぎ、車両走行時のフロントサスペンションからの入力等による車体の捩じれ振動を防ぐ。
【特許文献1】特開平5−116648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オープンカーはルーフ部のある普通乗用車をベースに生産され普通乗用車と共通の車体下部構造が適用されるので、取付スペースの関係から左右のブレース5,5は比較的小径の金属棒材またはパイプ材が用いられる。しかしながら小径の金属棒材またはパイプ材からなるブレース5,5では車体の捩じれ剛性強化の効果が必ずしも充分とは言えず、車両走行時の速度や路面状況などの条件により車体が捩じれ振動するおそれがある。また直線状の棒材やパイプ材からなるブレース5,5ではフロントサスペンションからの入力がそのまま車室フロア側に伝わって、走行時に乗員にゴツゴツ感が与えられ乗り心地性があまりよいとは言えない。そこで本発明は、車体の捩じれ振動を確実に逓減し、良好な乗り心地性能を発揮させることができる車体下部の補強構造を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車室フロア下面側の左右両側位置と、車室フロアから延出する左右のサイドメンバの延出部間に架設されたクロスメンバの車幅方向中央部とを、左右一対のブレースで平面視ほぼV字形に連結した車体下部の補強構造において、 各ブレースを、その長手方向中間位置が緩やかな鈍角状に屈曲して上方へ向けて開き形状をなすほぼく字形に形成し、各ブレースの基端を車室フロアの左右の両側縁に沿って設置されたロッカーに連結し、先端を上記クロスメンバの中央部に連結し、上記ブレースの中間の屈曲部と、該屈曲部の上方の車体下部とを緩衝部材により上下方向に連結せしめる(請求項1)。
ブレースにより車室フロア下面側の左右両側位置とサイドメンバ側のクロスメンバの車幅方向中央部とを連結して、車両走行時のサスペンションの入力等により車幅方向左右へ変位するクロスメンバ中央部の振動を抑えつつ、ブレースを上方へ向けて開いたほぼく字形に形成したので、ブレースに変形性を与え、ブレースの変形による屈曲部の上下の変位を、屈曲部と車体とを上下に連結する緩衝部材で抑制するとともにこれらのバネ性能により車体の捩じれ振動を減衰することができ、良好な乗り心地を実現する効果を奏する。
【0007】
上記左右のロッカーの前端付近と、左右のフロントサイドメンバの車室フロアから前方へ延出する延出部間に架設されたフロントサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部とを、上記ブレースで連結せしめる(請求項2)。
上記左右のロッカーの後端付近と、左右のリヤサイドメンバの車室フロアから後方へ延出する延出部間に架設されたリヤサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部とを、上記ブレースで連結せしめる(請求項3)。
本発明は車体のフロント側およびリヤ側の補強に適用され得る。
【0008】
上記ブレースは屈曲部の屈曲角度を、150度から170度の範囲に設定する(請求項4)。
車室フロアの左右の前後逆相の変形によるブレースの両端の連結部間の間隔の変化をブレースの屈曲部の上下方向のストロークの大きな変位に置き換えることで緩衝部材を効率よく作動させることができる。
【0009】
上記緩衝部材を、上記ブレースの中間の屈曲部と車体下部との間に上下方向かつ傾斜状に架けわたし、該緩衝部材の傾斜姿勢とは反対向きの傾斜姿勢で上記屈曲部と車体下部とを上下方向かつ傾斜状に連結する補助部材を設ける(請求項5)。
緩衝部材を上下方向かつ傾斜状に配置するので緩衝部材の設置スペースを確保することができ、比較的に大型で緩衝性能のよい緩衝部材を用いることができる。
ブレースの屈曲部の上下の変位は、屈曲部と車体下部とを傾斜状につなぐ補助部材により、補助部材の車体下面との固定部付近を中心に回転するように規制され、この変位を緩衝部材が効率よく抑制する。
【0010】
上記緩衝部材を、車室フロアから延出する上記サイドメンバの延出部と上記ブレースの中間の屈曲部とを上下方向に傾斜姿勢で連結するように設け、
上記補助部材を、車室フロアの下面に沿う上記サイドメンバの基端部と上記ブレースの中間の屈曲部とを上下方向に傾斜姿勢で連結するように設ける(請求項6)。
車室フロアから延出する上記サイドメンバの延出部の下側には空間があり、緩衝部材を設置するのに好適である。
【0011】
上記緩衝部材と上記補助部材との間の開き角度を鈍角状に形成する(請求項7)。
補助部材により規制され、補助部材の車体下面との固定部付近を中心とする円弧に沿って変位するブレースの屈曲部の変位を緩衝部材により効率よく抑制することができる。
【0012】
上記緩衝部材として、上記ブレースの屈曲部の上下方向の変位を抑制するように設けた液圧式ダンパー装置で構成する(請求項8)。
緩衝部材として液圧式ダンパー装置を好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を適用して車体前側の下部を好適に補強する実施形態を説明する。図1、図2に示すように、車体前側の下部には、左右両側に前後方向に延びる一対のフロントサイドメンバ1,1がほぼ平行に設けてある。左右のフロントサイドメンバ1,1は、前方のエンジンルーム側に延出する延出部1aの後端は屈曲して後斜め下方へ延びる傾斜部1bとなり、傾斜部1bの下端から後方へ延びる基端部1cは延出部1aよりも一段低くしてある。基端部1cは車室フロアFの下面に沿って結合してある。
【0014】
左右のフロントサイドメンバ1,1には延出部1aと傾斜部1bとの境の下方位置に、車幅方向にフロントサスペンションクロスメンバ(以下、単にフロントクロスメンバという)2が架設してある。フロントクロスメンバ2は、中央に開口部を有する略枠状に形成してある。
【0015】
フロントクロスメンバ2は、左右両端の前部25を左右のフロントサイドメンバ1,1の延出部1aの下面後端にボルト締め固定し、左右両端の後部26を左右の傾斜部1bの下面中間位置にボルト締め固定してある。フロントクロスメンバ2は、その下面の高さ位置がフロントサイドメンバ1の基端部1cとほぼ同じか若干低い位置に配設してある。
【0016】
車室フロアFの左右の両側縁にはこれらに沿ってロッカー3,3が設けてある。左右のロッカー3,3はフロントサイドメンバ1の基端部1cとほぼ同じ高さ位置に設置され、前端がそれぞれ車室フロアFの左右の前縁に沿って車幅方向に延びるフロアクロスメンバ40,40により左右のフロントサイドメンバ1,1の基端部1cの前端と連結してある。また左右のロッカー3,3中間位置には、車室フロアFの上面に沿って車幅方向にこれらを架けわたすフロアクロスメンバ4が設置してあり、フロアクロスメンバ4が左右のフロントサイドメンバ1,1の基端部1cと交差するように設けてある。図2のDは車室フロアFの前縁から起立するダッシュパネルを示す。
【0017】
左右のロッカー3,3とフロントクロスメンバ2の幅方向中央部とは、左右一対のブレース5,5で平面視ほぼV字形に連結してある。左右のブレース5,5は同一で、金属製の丸パイプ材からなり、長手方向の中間部が緩やかな鈍角状に屈曲して上方へ向けて開き形状をなすほぼく字形に形成してある。ブレース5の中間の屈曲部51はその屈曲角度が約160度に設定してある。ブレース5の両端52,53はパイプ材を上下に押し潰して平板状にし、ボルト貫通孔を設けた取付部が形成してある。
【0018】
左右のブレース5,5は基端52,52の取付部をそれぞれ左右のロッカー3,3の前端寄りの下面に重ね合わせてボルト締め連結してあり、これら連結部から互いに前方かつ車内側へ向けて斜め傾斜状に延設してある。そして、両者5,5の各先端53,53の取付部を上下に重ね合わせてフロントクロスメンバ2の車幅方向中央部の前部下面にボルト締めして連結してある。尚、左右のブレース5,5の先端53,53はフロントクロスメンバ2の車幅方向中央部付近に車幅方向に隣り合わせて連結してもよい。
【0019】
左右のブレース5,5の屈曲部51,51は車室フロアFの前縁よりも前側位置で、かつ左右のフロントサイドメンバ1,1の傾斜部1b,1bと対応する下方位置に配置してある。そして、両屈曲部51,51と傾斜部1b,1bとの間には上下方向に緩衝部材たるダンパー6,6が架設してある。
【0020】
図3(A),(B)に示すようにダンパー6は周知の油圧式ダンパーで、シリンダ60と、シリンダ60に対して伸縮作動可能に組み付けたピストンロッド61とで構成してある。シリンダ60内はその一端から摺動自在に嵌入したピストンロッド61のピストン63により長手方向に2室に仕切られ、第1油室r1と第2油室r2が形成してある。シリンダ60の上記一端はロッド本体を挿通する蓋部材66で閉じてあり、両油室r1,r2にはオイルが充填してある。
【0021】
ピストン63には第1油室r1と第2油室r2との間をオイルが行き来可能な複数のオリフイス(小穴)64,65が設けてあり、一方のオリフイス64にはピストンロッド61の伸長時に第1油室r1から第2油室r2へのオイルの移動を許容する一方、収縮時の移動を禁止する弁が設けてある。他方のオリフイス65には収縮時に第2油室r2から第1油室r1へのオイルの移動を許容し、伸長時の移動を禁止する弁が設けてある。ダンパー6はピストンロッド61の伸縮動作で各オリフイス64,65をオイルが流通し、オイルの流動抵抗によりピストンロッド61の伸縮動作が抑制される。また、ダンパーとしては必ずしも各オリフイス64,65に弁を備えたものを用いる必要はなく、弁のないタイプのダンパーでもよい
【0022】
各ダンパー6,6は、シリンダ60の他端(上端)に設けたリング状の取付部を貫通する支軸により左右のフロントサイドメンバ1,1の傾斜部1b,1bの側面に軸支して前後方向揺動自在に連結してある。そして、ピストンロッド61の下端は、左右のブレース5,5を幅方向に貫通する支軸によりブレース長手方向前後に揺動可能に連結したブラケットを介してピストンロッド61下端のリング状の取付部を左右のブレース5,5の屈曲部51,51に揺動自在に連結してある。尚、ダンパー6,6の下端は、上記ブラケットを使用せず、直接にブレース5,5の屈曲部51,51の側面に揺動自在に軸支してもよい。
【0023】
車両走行時、フロントサスペンション等からの入力等により左右のフロントサイドメンバ1,1の延出部1a,1aが、両者1a,1a間の車幅方向中心線を軸に上下逆相に変位して捩じれ振動が発生することとなる。この場合、左右の延出部1a,1aよりも下側位置に架設したフロントクロスメンバ2ではその車幅方向中央部が左右に変位振動する。
本実施形態では、車室フロアFの左右両側のロッカー3,3と、フロントクロスメンバ2の車幅方向中央部とを平面視V字状に連結する左右の一対のブレース5,5により上記フロントクロスメンバ2の左右の変位振動を抑制し、上記左右のフロントサイドメンバ1,1の延出部1a,1aの捩じれ振動を抑制する効果を奏する。
【0024】
この場合、左右のブレース5,5は上方へ向けて開き形状をなすほぼく字形に形成して変形性が与えられているから、直線状のブレースを用いたもの(図8)よりも車室フロアFの左右の変位抑制力は若干小さく、ブレース5,5は屈曲部51の屈曲角度が変化して屈曲部51は上下方向に変位するが、屈曲部51とその上方の車体部分との間にはダンパー6が設けてあるから、ダンパー6のバネ弾性により屈曲部51の上下変位は減衰され、これにより車体の捩じれ振動を減衰し、ゴツゴツ感のない良好な乗り心地を実現することができる。
【0025】
左右のブレース5,5は屈曲部51の屈曲角度を鈍角に設定すると、両端52,53の連結部間の間隔の変化に対して、上記屈曲部51の上下の変位量が拡大して現れ、効率よくダンピング効果が奏される。但し、屈曲角度が90度に近づくと変位量の拡大率は小さくなり、反対に直線に近づくと拡大率は大きくなるが突っ張り力が強くなりすぎる。ブレース5,5の屈曲角度は150度〜170度程度に設定することが好ましい。
【0026】
上述の実施形態では車体の前側下部を補強したが、車体の後側下部も補強することが好ましい。以下、図4、図5に基づいて本発明を用いた車体後側下部を補強する他の実施形態を説明する。尚、本実施形態の基本構造は先の実施形態のそれとほぼ同じで、同一部材は同一符号で表しそれらの詳細説明は省略する。
【0027】
左右のロッカー3,3の後端にはそれぞれ、これらの車内側面から後方へ延びる左右のリヤサイドメンバ7,7が連結してある。左右のリヤサイドメンバ7,7は、平面視、ロッカー3,3後端の連結部から斜めに後方かつ車内側へ向かう傾斜部7bと、その後端から屈曲して後方へ延びる延出部7aとを備えている。またリヤサイドメンバ7,7はロッカー3,3後端の連結部から後端にかけて、側面視、上方へ突出するアーチ状に形成してある。
【0028】
左右のリヤサイドメンバ7,7間には枠状のリヤサスペンションクロスメンバ(以下、単にリヤクロスメンバという)8が設けてある。リヤクロスメンバ8の左右両端の前部および後部はそれぞれ左右のリヤサイドメンバ7,7の傾斜部7b,7bの下面および延出部7a,7aの下面にボルト締め固定してある。リヤクロスメンバ8の後枠部82は下面がロッカー3の下面とほぼ同じ高さ位置に配設してある。
【0029】
左右のロッカー3,3の後端とリヤクロスメンバ8の車幅方向中央部の後縁側とが左右のブレース5,5により平面視、ほぼV字形に連結してある。左右のブレース5,5は基端52,52をそれぞれ左右のロッカー3,3の後端下面にボルト締めして連結してあり、これらの連結部から後方かつ車内側へ向けて斜めに延び、各先端53,53の取付部をそれぞれリヤクロスメンバ8の下面の車幅方向中央部付近に隣り合わせてボルト締めして連結してある。尚、左右のブレース5,5の先端53,53はリヤクロスメンバ8の車幅方向中央部に重ね合わせて連結してもよい。
【0030】
左右のブレース5,5の中間の屈曲部51,51はそれぞれ前後中央部よりも基端52寄りの位置に設けてあり、左右のリヤサイドメンバ7,7の傾斜部7b,7bに対応する下方位置に配置してある。そして、両屈曲部51,51と傾斜部7b,7bとの間には上下方向にダンパー6,6が架設してある。各ダンパー6,6は、シリンダ60上端の取付部を支軸により左右のリヤサイドメンバ7,7の傾斜部7b,7bの側面に前後方向揺動自在に軸支し、ピストンロッド61下端の取付部を支軸により左右のブレース5,5の屈曲部51,51の側面に揺動自在に軸支してある。
【0031】
本実施形態によれば、先の実施形態と同様の作用効果が得られ、ブレース5とダンパー6の組み合わせによりバネ性能を発揮して捩じれ振動を減衰しつつ乗り心地の向上効果を奏する。
【0032】
次に、車体前側の下部を補強する本発明の更に他の実施形態を図6、図7に基づいて説明する。本実施形態の基本構造は最初の実施形態のそれとほぼ同じで相違点を中心に説明し、図において同一部材は同一符号で表す。
【0033】
図6、図7に示すように本実施形態の補強構造では、左右のブレース5の中間屈曲部51と、フロントサイドメンバ1とを上下方向かつ前傾の傾斜姿勢をなすダンパー6Aで連結してある。各ダンパー6Aは先の実施形態のダンパー6と同種の油圧式で先の実施形態のものよりも全長が長いものを用いる。ダンパー6Aは、水平方向に対して傾斜角が30°ないし60°をなす前傾姿勢で、シリンダ60の上端をフロントサイドメンバ1の傾斜部1bとフロントクロスメンバ2の後部26との結合部に軸支して前後方向揺動可能に連結するとともに、ピストンロッド61の下端をブレース5の屈曲部51に前後方向揺動可能に軸支してある。
【0034】
更に、ブレース5の屈曲部51は、ダンパー6Aとは反対向きに傾斜する補助部材9により車室フロアFの下面に沿うフロントサイドメンバ1の基端部1cと連結してある。
補助部材9は金属板からなる左右両縁に補強フランジを備えた浅い断面ほぼコ字形の帯状体またはパイプ材で構成してある。補助部材9は下端をブレース5の屈曲部51にボルト締めし、屈曲部51から上方かつ後方へ向けて水平方向に対して60°ないし30°の後傾姿勢をなし、上端91をフロントサイドメンバ1の基端部1cの下面にボルト締め固定してある。
【0035】
ダンパー6Aと補助部材9との間の角度は鈍角に設定してあり約90°ないし120°の範囲に設定してある。
【0036】
本実施形態によれば、車体下部のフロントサイドメンバ1の傾斜部1bの下方には空間がありダンパー設置スペースを確保しやすい上、ダンパー6Aを傾斜姿勢としたので傾斜部1b側の固定部とブレース5の屈曲部51との距離を長くでき、先の実施形態の垂直方向に設置するダンパー6に比べて、ダンパー6Aは全長の長い大型にできる。従って、ダンパー6Aは一般的に量産されている安価で、かつ振動減衰性能の高いダンパーを利用でき、経済的である。
【0037】
ブレース5によるフロントサイドメンバ延出部1aの捩じれ振動の抑制時に、ブレース5の屈曲部51にこれを上下方向に変位させる力が作用すると、屈曲部51と車体下部とを連結する後傾の補助部材9がその上端91とフロントサイドメンバ1の基端部1Cとの結合部を中心に起倒揺動し、これによりブレース5の屈曲部51の変位は上記結合部を中心とする補助部材9下端の円弧軌道沿いに規制され、屈曲部51の変位方向と前傾姿勢のダンパー6Aの伸縮方向とがほぼ一致するので、ダンパー6Aにより屈曲部51の変位を減衰する。従って、先の実施形態同様、車体の捩じれ振動を減衰しつつ、良好な乗り心地を実現できる。
【0038】
本実施形態では車体の前側下部の補強に用いたが、車体の後側下部の補強に用いてもよい。
【0039】
尚、上述の複数の実施形態はいずれもすべての点で例示であって本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は上述の実施形態を様々に変形、変更したものも含まれる。例えば、上述の実施形態ではいずれも、ブレースにより車室フロア側と、フロントまたはリヤのサスペンションクロスメンバとを連結したが、サスペンションクロスメンバに限らず、他の目的でフロントまたはリヤサイドメンバ間に架設したクロスメンバを用いてもよい。ブレースはパイプ材に限らず棒材としてもよい。またダンパーは油圧式のものに限らず、粘弾性ゴムを2枚の金属板で挟み込み、一方の金属板の上端を車体側へ固定し、他方の金属板の下端をブレースの屈曲部側に固定する構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の補強構造を車体の前側の下部に適用した実施形態を示す概略平面図である。
【図2】上記実施形態の概略側面図である。
【図3】図3(A),(B)は本発明に用いる緩衝部材たるダンパーの作用を示す説明図である。
【図4】本発明の補強構造を車体の後側の下部に適用した他の実施形態を示す概略平面図である。
【図5】上記実施形態の概略側面図である。
【図6】本発明の補強構造を車体の前側の下部に適用した更に他の実施形態を示す概略平面図である。
【図7】上記実施形態の概略側面図である。
【図8】従来の車体の下部補強構造を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0041】
F 車室フロア
1 フロントサイドメンバ(サイドメンバ)
1a 延出部
2 フロントサスペンションクロスメンバ(クロスメンバ)
3 ロッカー
5 ブレース
51 屈曲部
52 基端
53 先端
6,6A ダンパー(緩衝部材)
7 リヤサイドメンバ(サイドメンバ)
7a 延出部
8 リヤサスペンションクロスメンバ(クロスメンバ)
9 補助部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室フロア下面側の左右両側位置と、車室フロアから延出する左右のサイドメンバの延出部間に架設されたクロスメンバの車幅方向中央部とを、左右一対のブレースで平面視ほぼV字形に連結した車体下部の補強構造において、
各ブレースを、その長手方向中間位置が緩やかな鈍角状に屈曲して上方へ向けて開き形状をなすほぼく字形に形成し、
各ブレースの基端を車室フロアの左右の両側縁に沿って設置されたロッカーに連結し、先端を上記クロスメンバの中央部に連結し、
上記ブレースの中間の屈曲部と、該屈曲部の上方の車体下部とを緩衝部材により上下方向に連結せしめたことを特徴とする車体下部の補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体下部の補強構造において、
上記左右のロッカーの前端付近と、左右のフロントサイドメンバの車室フロアから前方へ延出する延出部間に架設されたフロントサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部とを、上記ブレースで連結した車体下部の補強構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車体下部の補強構造において、
上記左右のロッカーの後端付近と、左右のリヤサイドメンバの車室フロアから後方へ延出する延出部間に架設されたリヤサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部とを、上記ブレースで連結した車体下部の補強構造。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の車体下部の補強構造において、
上記ブレースは屈曲部の屈曲角度を、150度から170度の範囲に設定した車体下部の補強構造。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載の車体下部の補強構造において、
上記緩衝部材を、上記ブレースの中間の屈曲部と車体下部との間に上下方向かつ傾斜状に架けわたし、該緩衝部材の傾斜姿勢とは反対向きの傾斜姿勢で上記屈曲部と車体下部とを上下方向かつ傾斜状に連結する補助部材を設けた車体下部の補強構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車体下部の補強構造において、
上記緩衝部材を、車室フロアから延出する上記サイドメンバの延出部と上記ブレースの中間の屈曲部とを上下方向に傾斜姿勢で連結するように設け、
上記補助部材を、車室フロアの下面に沿う上記サイドメンバの基端部と上記ブレースの中間の屈曲部とを上下方向に傾斜姿勢で連結するように設けた車体下部の補強構造。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車体下部の補強構造において、
上記緩衝部材と上記補助部材との間の開き角度を鈍角状に形成した車体下部の補強構造。
【請求項8】
請求項1ないし7に記載の車体下部の補強構造において、
上記緩衝部材として、上記ブレースの屈曲部の上下方向の変位を抑制するように設けた液圧式ダンパー装置で構成した車体下部の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−195372(P2008−195372A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153741(P2007−153741)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】