説明

車体側部構造

【課題】質量増加を抑えながら側面衝突時にルーフリインフォースの変形を防止又は抑制することができる車体側部構造を得る。
【解決手段】接続部40は、車幅方向外側端部の第1折れ部24Xが車幅方向内側端部の第2折れ部38Xよりも車両上下方向の上方位置に設けられるので、所定値以上の側方荷重Fが入力されると、第2折れ部38Xを支点として第1折れ部24Xが車両上方側に回転移動すると共に第1折れ部24Xが車両上方側へ凸となるように折れ曲がり、接続部40がルーフリインフォース20の端面20Bの上部に荷重を入力する。これにより、ルーフリインフォース20に対する曲げモーメントをキャンセルする方向のキャンセルモーメントが発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフの車幅方向に沿って延在するルーフリインフォースの両サイドに車両前後方向に沿って左右一対のルーフサイドレールが配置された車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体においては、側面衝突時におけるセンタピラーの変形量低減のために、センタピラー上部の支持部材としてルーフの車幅方向に沿ってルーフリインフォースを配設している場合がある。しかし、ルーフは通常車幅方向中央部が高く車幅方向両端部側が低くなっているので、側面衝突時にセンタピラーが荷重を受けた場合、ルーフリインフォースには車幅方向中央部で車両上方側に凸となる方向の曲げモーメントが発生する。
【0003】
このため、荷重伝達経路となる、ルーフリインフォースや、ルーフとサイドアウタパネル上部との連結溝部等の変形を防止するために、ルーフリインフォースとルーフサイドレールとの結合部に連結部リインフォースを配設する場合がある(例えば、特許文献1参照)。この構造では、質量増となる連結部リインフォースを追加配設する必要がある。
【特許文献1】特開平10−152070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、質量増加を抑えながら側面衝突時にルーフリインフォースの変形を防止又は抑制することができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車体側部構造は、ルーフの車幅方向に沿って延在するルーフリインフォースの両サイドに車両前後方向に沿って配置された左右一対のルーフサイドレールと、前記ルーフサイドレール側から略車幅方向内側へ延出する第1フランジと、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部側から略車幅方向外側へ延出する第2フランジと、の少なくとも一方を備え、当該少なくとも一方が前記ルーフサイドレールと前記ルーフリインフォースとの結合用のフランジとされ、かつ、当該少なくとも一方には、車幅方向外側端部に第1折れ部が形成されると共に車幅方向内側端部に第2折れ部が形成され、前記第1折れ部が前記第2折れ部よりも車両上下方向の上方位置に設けられる接続部と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体側部構造によれば、左右一対のルーフサイドレールが、ルーフの車幅方向に沿って延在するルーフリインフォースの両サイドに車両前後方向に沿って配置されており、第1フランジと第2フランジとの少なくとも一方を備えた接続部が当該少なくとも一方をルーフサイドレールとルーフリインフォースとの結合用フランジとするので、側面衝突時にピラーに所定値以上の側方荷重が入力されると、ルーフサイドレール側から接続部を介してルーフリインフォース側へ当該荷重が伝達される。
【0007】
ここで、接続部においては、車幅方向外側端部に形成された第1折れ部が車幅方向内側端部に形成された第2折れ部よりも車両上下方向の上方位置に設けられるので、所定値以上の側方荷重が入力されると、第2折れ部を支点として第1折れ部が車両上方側に移動すると共に第1折れ部が車両上方側へ凸となるように折れ曲がり、接続部の第1折れ部側が車両上方側かつ車幅方向内側へ回転する。このため、本来であればルーフサイドレール側からルーフリインフォース側に作用することになる車幅方向中央部で車両上方側に凸となる方向の曲げモーメントを、キャンセルする方向のモーメントが発生し、ルーフリインフォースを変形させる荷重が抑制される。従って、従来例のような連結部リインフォースを追加しなくても、ルーフリインフォースがその車幅方向中央部で車両上方側へ変形するのを防止又は抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体側部構造は、請求項1記載の構成において、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられて略車両上下方向に沿った所定の長さを有する端面が形成され、前記第2フランジが前記接続部の少なくとも一部を構成して前記端部の下部から延出することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車体側部構造によれば、ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられて略車両上下方向に沿った所定の長さを有する端面が形成され、第2フランジが接続部の少なくとも一部を構成して端部の下部から延出するので、所定値以上の側方荷重が入力されると、第2フランジを含む接続部が車両上方側かつ車幅方向内側へ回転するように変形し、ルーフリインフォースの端面上部に当る。これによって、ルーフリインフォースの端面上部に荷重が入力され、車幅方向中央部で車両上方側に凸となる方向の曲げモーメントをキャンセルする方向のモーメントが効果的に発生する。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車体側部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられた端面が形成され、前記接続部が前記第1折れ部及び前記第2折れ部を起点として前記端面と重なるように折れた状態で当該接続部を介して当該端面に対向する当て面を前記ルーフサイドレールに設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車体側部構造によれば、接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点としてルーフリインフォースの端面と重なるように折れた状態で当該接続部を介して当該端面に対向する当て面をルーフサイドレールに設けているので、所定値以上の側方荷重が入力されて接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点としてルーフリインフォースの端面と重なるように折れた場合、ルーフサイドレールの当て面に接続部が当る。このため、側方荷重は、当て面側から接続部を介してルーフリインフォースの端面に伝達され、前記キャンセルする方向のモーメントがより有効に作用する。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車体側部構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成において、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられた端面が形成され、前記接続部が前記第1折れ部及び前記第2折れ部を起点として前記端面と重なるように折れた状態で前記端部と前記ルーフサイドレールとの車両上下方向への相対変位を抑制する変位抑制手段を前記ルーフサイドレール側に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載する本発明の車体側部構造によれば、接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点としてルーフリインフォースの端面と重なるように折れた状態でルーフリインフォースの端部とルーフサイドレールとの車両上下方向への相対変位を抑制する変位抑制手段をルーフサイドレール側に設けているので、所定値以上の側方荷重が入力されて接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点としてルーフリインフォースの端面と重なるように折れた場合、ルーフリインフォースの端部は、ルーフサイドレールに対する車両上下方向への相対変位が変位抑制手段によって抑制され、接続部を介してルーフサイドレールに当った状態が保持される。このため、側方荷重は、ルーフサイドレール側からルーフリインフォース側へ効果的に伝達され、前記キャンセルする方向のモーメントが安定的に作用する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体側部構造によれば、質量増加を抑えながら側面衝突時にルーフリインフォースの変形を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項2に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時にルーフリインフォースの端面上部から荷重入力させてルーフリインフォースに作用する曲げモーメントをより効果的にキャンセルさせることができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項3に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時に接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点として折れた後に側方荷重をルーフリインフォースの端面に効果的に伝達させることができ、その結果、前記キャンセルする方向のモーメントをより有効に作用させることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項4に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時に接続部が第1折れ部及び第2折れ部を起点として折れた後にルーフリインフォースの端部をルーフサイドレールに対して車両上下方向へ相対変位させずに、側方荷重をルーフリインフォースの端面に伝達させることができ、その結果、前記キャンセルする方向のモーメントを安定的に作用させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施形態の構成)
本発明における車体側部構造の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示す。
【0019】
図1に示されるように、車両10には、車体側部における車体前後方向中間部にセンタピラー(Bピラー)12が車体上下方向に沿って配設されている。センタピラー12は、車体上部のルーフサイドレール14の車体前後方向中間部と車体下部のロッカ16の車体前後方向中間部とを上下に繋いでいる。なお、センタピラー12の車両前方側にはフロントピラー(Aピラー)11が配設されており、また、センタピラー12の車両後方側にはリヤピラー(Cピラー)13が配設されている。
【0020】
ルーフサイドレール14は、車体上部に配設されるルーフ(車体天井)18の車幅方向に沿って延在するルーフリインフォース20の両サイドに車両前後方向に沿って左右一対配置されている。なお、ルーフ18は、通常車幅方向中央部が高く車幅方向両端部側が低くなっており、車室内スペースを大きく確保するために、天井裏の車両上下方向の高さ寸法は制約される。図2に示されるように、ルーフサイドレール14は、車室外側に配置されるルーフサイドレールアウタパネル22と、車室内側に配置されるルーフサイドレールインナパネル24と、によって構成された構造部材である。ルーフサイドレールアウタパネル22の上部から略車幅方向内側へ延出する第1フランジとしての上端フランジ部22Aとルーフサイドレールインナパネル24の上部から略車幅方向内側へ延出する第1フランジとしての上端フランジ部24Aとが合わせられて接合されると共に、ルーフサイドレールアウタパネル22の下部から略車両下方側へ延出する下端フランジ部22Bとルーフサイドレールインナパネル24の下部から略車両下方側へ延出する下端フランジ部24Bとが合わせられて接合されることで、閉断面を構成している。なお、上端フランジ部22Aと上端フランジ部24Aとの合わせ部は、ルーフ18の両サイド側で車両前後方向に延在してルーフ18とサイドアウタパネル26の上部とを接合する連結溝部32の底部側に位置している。また、連結溝部32には、溝シール部材33が配設されている。
【0021】
ルーフサイドレールアウタパネル22の車室外側には、サイドアウタパネル26が配置されている。サイドアウタパネル26の上端部26Aは、ルーフサイドレールアウタパネル22の上端フランジ部22Aに重ね合わせられて接合されている。また、ルーフサイドレール14の車両下方側に配置されたセンタピラー12は、車室外側に配置されるセンタピラーアウタパネル28と車室内側に配置されたセンタピラーインナパネル30とを含んで構成されている。センタピラーアウタパネル28の上端部28Aは、ルーフサイドレールアウタパネル22の車室外側に向いた面に接合されており、センタピラーインナパネル30の上端部30Aは、ルーフサイドレールインナパネル24の車室内側に向いた面のパネル下部24Cに接合されている。
【0022】
なお、上記各部材の結合位置等は車種に応じて適宜変更される。また、各部材を構成するパネルの枚数もリインフォースメントの設置の有無等により適宜変更される。
【0023】
ルーフリインフォース20は、左右両側のルーフサイドレール14の間において、ルーフ18を構成するルーフパネル34の車室内側に配設された閉断面構造の補強パネルであり、側面衝突時のセンタピラー12の変形量低減のために側面衝突時にセンタピラー12の上部を支持するようになっている。このルーフリインフォース20は、ルーフパネル34側のルーフリインフォースメントアッパ36と車室内側のルーフリインフォースメントロア38とが車両上下方向に接合され、閉断面に構成されたものである。ルーフリインフォース20の最適板厚や断面高さ等は、図示しない乗員の頭上空間等に応じて定めることができる。
【0024】
図3に示されるように、ルーフリインフォースメントロア38は、車両前後方向における前後端部となる上側フランジ部38Aがルーフリインフォースメントアッパ36の内面に溶接にて接合されると共に、車幅方向から見た側断面視形状が凹凸の連続した屈曲形状とされており、車室側に膨出して車幅方向の略全長に亘る下向き凸部とルーフリインフォースメントアッパ36側に膨出して車幅方向の略全長に亘る上向き凸部とが交互に形成されている。下向き凸部の底部38Bは、ルーフリインフォースメントアッパ36に対して略平行とされており、上向き凸部の頂部38Cは、ルーフリインフォースメントアッパ36の内面に接合されている。なお、上向き凸部の頂部38Cは、ルーフリインフォースメントアッパ36と車両上下方向に離間していてもよい。
【0025】
ルーフリインフォース20の長手方向の端部20Aには、車幅方向外側へ向けられて略車両上下方向に沿った所定の長さを有する端面20Bが形成されている。ルーフリインフォース20の端部20Aの下部(底部38B)からは、第2フランジとしての端末フランジ部38Dが略車幅方向外側へ延出している。図2に示されるように、端末フランジ部38Dは、ルーフサイドレール14の上端フランジ部22A、24A上のサイドアウタパネル26の上端部26Aに重ね合わせられて接合(結合)されている。すなわち、本実施形態では、ルーフサイドレール14の上端フランジ部22A、24Aとルーフリインフォース20の端末フランジ部38Dとを含んで接続部40が構成されると共に、上端フランジ部22A、24A及び端末フランジ部38Dがルーフサイドレール14とルーフリインフォース20との結合用のフランジとされている。なお、ルーフリインフォース20の端末フランジ部38Dには、ルーフパネル34の端末部34Aが重ね合わせられて接合されている。
【0026】
ルーフサイドレールインナパネル24の上端フランジ部24Aには、当該上端フランジ部24Aの延出位置となる車幅方向外側端部に第1折れ部24Xが形成されており、ルーフリインフォースメントロア38の端末フランジ部38Dには、当該端末フランジ部38Dの延出位置となる車幅方向内側端部に第2折れ部38Xが形成されている。ここで、センタピラー12側のルーフサイドレール14とルーフ18側のルーフリインフォース20との結合構造においては、接続部40が車幅方向外側へ向けて斜め上方にやや傾斜しており、第1折れ部24X(断面視では折れ点)は、第2折れ部38X(断面視では折れ点)よりも車両上下方向の上方位置に設けられている。これによって、車幅方向外側から所定値以上の荷重Fが入力された状態では、第1折れ部24Xが第2折れ部38Xを支点として車両上方側に移動すると共に車両上方側へ凸となるように折れ曲がり、接続部40の第1折れ部24X側が車両上方側かつ車幅方向内側へ回転するようになっている(側面衝突対応のルーフリインフォース構造)。
【0027】
また、ルーフサイドレールアウタパネル22の上端フランジ部22Aには、当該上端フランジ部22Aの延出位置となる車幅方向外側端部に折曲部22Xが形成されている。折曲部22Xは、本実施形態では、上端フランジ部22Aの一般面における略車幅方向外側への仮想延長線部よりも車両上方側に設けられて側断面視で略逆V字形状の折れ点を構成し、端末フランジ部38Dの先端部よりも車両上方側の高さ位置に配置されている。このため、折曲部22Xは、車幅方向外側から所定値以上の荷重Fが入力された場合に端末フランジ部38Dの先端部側及びルーフサイドレールインナパネル24の上端フランジ部24Aの第1折れ部24X側を車両上方内側へ変位させやすくしている。
【0028】
さらに、端末フランジ部38Dの第2折れ部38Xは、本実施形態では、端末フランジ部38Dの一般面における底部38B側への仮想延長部よりも車両下方側へ凹んでおり、端末フランジ部38Dの全幅に亘って略凹状に形成されている。端末フランジ部38Dは、第2折れ部38Xの形成位置において低剛性化(脆弱化)されており、第2折れ部38Xは、車幅方向外側から所定値以上の荷重Fが入力された場合に当該第2折れ部38Xを起点とした端末フランジ部38Dの車両上方内側への屈曲を促進する形状(屈曲促進構造)になっている。
【0029】
ルーフサイドレールインナパネル24の上部には、当て面24Dが設けられており、この当て面24Dは、接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点として端面20Bと重なるように折れた状態で接続部40を介して端面20Bに対向する位置に設けられている。すなわち、当て面24Dは、側面衝突時に接続部40の変形が進んだ際に確実にルーフリインフォース20を受けるための面部とされており、本実施形態では、上端部側が車両上方へ向けて車幅方向内側にやや傾斜している。
【0030】
当て面24Dを備えたルーフサイドレールインナパネル24は、当て面24Dとパネル下部24Cとの間に略車幅方向に段差を形成しており、当て面24Dがパネル下部24Cに対して略車幅方向外側へ一段下がる変位抑制手段としての段差構造42を形成している。段差構造42は、接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点として端面20Bと重なるように折れた状態で端部20Aとルーフサイドレール14との車両上下方向への相対変位を抑制するために設けられており、前記折れた状態では、当て面24Dとパネル下部24Cとを繋ぐ壁部24Eがルーフリインフォース20の端部20Aにおける底部38Bの車両下方側に位置するようになっている。また、ルーフサイドレール14の上端フランジ部22A、24Aは、接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点として端面20Bと重なるように折れた状態で、端部20Aを車両斜め上方側から押さえて端部20Aとルーフサイドレール14との車両上下方向への相対変位を抑制する変位抑制手段として機能する。
【0031】
すなわち、ルーフサイドレール14における当て面24D、段差構造42及び上端フランジ部22A、24Aは、側面衝突時に接続部40の変形が進んだ際に確実にルーフリインフォース20を保持するようになっている。
【0032】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
図1に示されるように、左右一対のルーフサイドレール14が、ルーフ18の車幅方向に沿って延在するルーフリインフォース20の両サイドに車両前後方向に沿って配置されており、図2に示されるように、接続部40の上端フランジ部22A、24Aと端末フランジ部38Dとがルーフサイドレール14とルーフリインフォース20との結合用フランジとされるので、側面衝突時にセンタピラー12に所定値以上の側方荷重(側突荷重)Fが入力されると、ルーフサイドレール14側から接続部40を介してルーフリインフォース20側へ荷重Fが伝達される。
【0034】
ここで、接続部40においては、車幅方向外側端部に形成された第1折れ部24Xが車幅方向内側端部に形成された第2折れ部38Xよりも車両上下方向の上方位置に設けられるので、所定値以上の側方荷重Fが入力されると、図4に示されるように、第2折れ部38Xを支点として第1折れ部24Xが車両上方側に回転移動(変形)すると共に第1折れ部24Xが車両上方側へ凸となるように折れ曲がり、接続部40の第1折れ部24X側が車両上方側かつ車幅方向内側へ回転移動する。
【0035】
また、図2に示されるように、ルーフリインフォース20の長手方向の端部20Aには車幅方向外側へ向けられて略車両上下方向に沿った所定の長さを有する端面20Bが形成されていると共に接続部40の端末フランジ部38Dが端部20Aの下部(底部38B)から延出していることにより、所定値以上の側方荷重Fの入力に対して、端末フランジ部38Dを含む接続部40は、車両上方側かつ車幅方向内側へ回転するように変形した後、接続部40より車両上方側に配設されたルーフリインフォース20の端面20Bの上部に(ルーフパネル34の端末部34A側を介して)確実に当り、図4に示されるように、端末フランジ部38Dを含む接続部40側からルーフリインフォース20の端面20Bの上部に(より高い位置から)荷重が入力される。この状態で、ルーフリインフォース20は、センタピラー12側を確実に支持する。
【0036】
以上によって、図4に示されるように、本来であればルーフサイドレール14側からルーフリインフォース20側に作用することになるルーフリインフォース20を車幅方向中央部で車両上方側に凸とする方向の曲げモーメントM1を、キャンセルする方向のモーメント(キャンセルモーメント)M2が発生し、ルーフリインフォース20を曲げ変形させる荷重が抑制される(曲げモーメントの低減)。このように、側面衝突時にルーフリインフォース20の端面20Bの上部からの荷重入力を確実にし、ルーフリインフォース20に作用する曲げモーメントM1をより効果的にキャンセルすることで、質量増加を抑えながら(軽量化の実現)、側面衝突時にルーフリインフォース20がその車幅方向中央部で車両上方側へ曲げ変形するのを防止又は抑制することができる。
【0037】
補足すると、ルーフリインフォースは、車両上下方向の長さが限られたスペースに配置されるので、側方荷重に対する耐力を上げるために板厚を厚くする場合があり、このような場合には、質量増を招くことになるが、本実施形態では、板厚を厚くする対比例に比べて軽量化を実現することができる。
【0038】
また、接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点としてルーフリインフォース20の端面20Bと重なるように折れた状態で接続部40を介して端面20Bに対向する当て面24Dをルーフサイドレール14に設けているので、所定値以上の側方荷重Fが入力されて接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点としてルーフリインフォース20の端面20Bと重なるように折れた場合、ルーフサイドレール14の当て面24Dに接続部40が当る。このため、側面衝突時に接続部40が第1折れ部24X及び第2折れ部38Xを起点として折れた後に側方荷重Fは、当て面24D側から接続部40を介してルーフリインフォース20の端面20Bに効果的に伝達され、キャンセルモーメントM2がより有効に作用する。なお、図4では、側面衝突時における当て面24Dに対するルーフリインフォース20側の相対移動方向を矢印Aで示している。
【0039】
また、接続部40がルーフリインフォース20の端面20Bと重なるように折れた後においては、ルーフリインフォース20は、ルーフサイドレール14における段差構造42の形状を曲げ変形させなければ車両下方側へは移動できず、ルーフサイドレール14における上端フランジ部22A、24Aを逆反り状に曲げ変形させなければ車両上方側へは移動できない。すなわち、ルーフリインフォース20の端部20Aは、段差構造42によってルーフサイドレール14に対する車両下方向側への相対変位が抑制されると共に、上端フランジ部22A、24Aによって押さえられてルーフサイドレール14に対する車両上方向側への相対変位が抑制される。これにより、ルーフリインフォース20の端部20Aは、接続部40を介してルーフサイドレール14の当て面24Dに当った状態が確実に保持され(保持効果の発揮)、衝突現象が終わるまでその保持効果は維持される。このため、側方荷重Fは、ルーフサイドレール14側からルーフリインフォース20の端面20Bに効果的に伝達され、キャンセルモーメントM2が安定的に(衝突現象が終わるまで)作用する。
【0040】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ルーフリインフォースとして、ルーフリインフォースメントアッパ36と側断面視で凹凸の連続した屈曲形状のルーフリインフォースメントロア38とを接合した構造のルーフリインフォース20を用いているが、ルーフリインフォースには、例えば、ルーフパネルの下面に直接接合される断面略ハット形状のルーフリインフォース等のような他の形状のルーフリインフォースを適用してもよい。どのような構成のルーフリインフォースを用いるかは、車種やそれに伴う車体上部構造等との関係で適宜選択すればよい。
【0041】
また、上記実施形態では、側面衝突時に端末フランジ部38Dがルーフリインフォース20の端面20Bの上部に荷重を入力する構成となっているが、例えば、ルーフリインフォースの車幅方向両側の側端面部の上部が車幅方向内側にえぐれているような構造等のような場合であって、側面衝突時に端末フランジ部(第2フランジ)が前記側端面部の(中央よりも)下部に当るような構成となっていても側面衝突状態でセンタピラー側から倒れ込んでくる接続部がキャンセルモーメント(M2)を発生させる向きに回転力を入力するような構造であれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
さらに、上記実施形態では、第2折れ部38Xは、端末フランジ部38Dの全幅に亘って略凹状に形成されているが、第2折れ部は、単なる屈曲部であってもよい。また、上記実施形態における第1折れ部24Xに、側面衝突時における屈曲変形を促進するための凹状部等の屈曲促進部を形成してもよい。また、上記実施形態では、折曲部22Xは、上端フランジ部22Aの一般面における略車幅方向外側への仮想延長線部よりも車両上方側に設けられているが、折曲部は、上端フランジ部22Aの一般面における略車幅方向外側への仮想延長線上に形成されてもよい。
【0043】
さらにまた、上記実施形態では、ルーフリインフォース20から端末フランジ部38Dが延出しているが、例えば、ルーフリインフォースに第2フランジ(端末フランジ部38D)を設けず、ルーフサイドレール側から略車幅方向内側へ延出する第1フランジ(上端フランジ部22A及び上端フランジ部24Aの少なくともいずれか一方)をルーフリインフォースの底部(38B)まで延長して当該底部に接合し、第1フランジに形成する車幅方向外側端部の第1折れ部を、第1フランジに形成する車幅方向内側端部の第2折れ部よりも車両上下方向の上方位置に設けるような他の構成としてもよい。
【0044】
また、他の例として、ルーフリインフォースとは別体の薄肉片部の一端側をルーフリインフォースの底部(38B)に接合して舌状の第2フランジとし、この第2フランジの車幅方向内側端部(底部との接合位置付近)に第2折れ部を形成する構成としてもよい。なお、請求項1の「ルーフリインフォースの長手方向の端部側から略車幅方向外側へ延出する第2フランジ」の概念には、このようなルーフリインフォースに接合されてルーフリインフォースの長手方向の端部側から略車幅方向外側へ延出する片部も含まれる。
【0045】
なお、上記実施形態では、段差構造42及び上端フランジ部22A、24Aが変位抑制手段とされているが、例えば、当て面の下端部より僅かに車両下方側の位置に、略車幅方向内側へ向けられる板状部材を固定してルーフリインフォース端部の下側位置規制用の変位抑制手段としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る車体側部構造が適用された車両を示す斜視図である。
【図2】図1における2−2矢視断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体側部構造が適用された車体側部の上部を一部破断して示す斜視図である。
【図4】側面衝突時における車体側部の変形状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
14 ルーフサイドレール
18 ルーフ
20 ルーフリインフォース
20A ルーフリインフォースの長手方向の端部
20B 端面
22A 上端フランジ部(第1フランジ、変位抑制手段)
24A 上端フランジ部(第1フランジ、変位抑制手段)
24X 第1折れ部
24D 当て面
38D 端末フランジ部(第2フランジ)
38X 第2折れ部
40 接続部
42 段差構造(変位抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフの車幅方向に沿って延在するルーフリインフォースの両サイドに車両前後方向に沿って配置された左右一対のルーフサイドレールと、
前記ルーフサイドレール側から略車幅方向内側へ延出する第1フランジと、前記ルーフリインフォースの長手方向の端部側から略車幅方向外側へ延出する第2フランジと、の少なくとも一方を備え、当該少なくとも一方が前記ルーフサイドレールと前記ルーフリインフォースとの結合用のフランジとされ、かつ、当該少なくとも一方には、車幅方向外側端部に第1折れ部が形成されると共に車幅方向内側端部に第2折れ部が形成され、前記第1折れ部が前記第2折れ部よりも車両上下方向の上方位置に設けられる接続部と、
を有することを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられて略車両上下方向に沿った所定の長さを有する端面が形成され、前記第2フランジが前記接続部の少なくとも一部を構成して前記端部の下部から延出することを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられた端面が形成され、前記接続部が前記第1折れ部及び前記第2折れ部を起点として前記端面と重なるように折れた状態で当該接続部を介して当該端面に対向する当て面を前記ルーフサイドレールに設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記ルーフリインフォースの長手方向の端部には車幅方向外側へ向けられた端面が形成され、前記接続部が前記第1折れ部及び前記第2折れ部を起点として前記端面と重なるように折れた状態で前記端部と前記ルーフサイドレールとの車両上下方向への相対変位を抑制する変位抑制手段を前記ルーフサイドレール側に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−132923(P2008−132923A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321894(P2006−321894)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】