説明

車体側部構造

【課題】車体重量の増加を最小限に止め、且つ簡素に構成することを可能にするとともに、側面衝突が生じたときに車室の変形を効率よく抑制することを可能にする。
【解決手段】車体側方に設けられるセンタピラー15と、このセンタピラー15に設けられる複数のヒンジ42,43と、これらのヒンジ42,43を介して車体11側に開閉自在に取付けられ乗員が乗降するドア(後ドア)28とを備えた車体側部構造40において、複数のヒンジ42,43の間に、車体外方へ向けて突出する突起部44を車体上下方向に連続して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側面の強度を向上させ、側面衝突に対して車室の変形を抑制することができる車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造の強度を増す手法として、車体側方に設けられるセンタピラーの断面積を拡大するもの、センタピラーの板厚を増加するもの、センタピラーに剛性の高い鋼板を使用するものなどが知られている。この種の車体側部構造では、センタピラーの強度を向上させることで、側面衝突に対して防御対策を講ずるものであった。
このような、車体側部構造として、センタピラーに補強部材を回転自在に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車体側部構造は、車室の側部の中央に位置するセンタピラーと、車体の下部の骨格をなすサイドシルと、車室の後方に位置するリヤピラーと、車体の上部の骨格をなすルーフレールと、これらのセンタピラー、サイドシル、リヤピラー及びルーフレールで囲まれるドア開口と、センタピラーの下部に一端が回転自在に取付けられるとともに、他端がリヤピラーに係止可能に取付けられる補強部材(側面強化バー)とから構成される。
【0004】
しかし、特許文献1の車体側部構造では、ドア開口の強度を向上させるために、補強部材を回転自在に設けた。従って、車体重量の増加を招くという課題がある。
また、特許文献1の車体側部構造では、補強部材は可動式となっているので、補強部材を可動させるためにモータ等の動力源を必要とする。そのために、システムが複雑になるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−94114公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体重量の増加を最小限に止めることができるとともに、簡素に構成することができる車体側部構造を提供することを課題とする。また、側面衝突が生じたときに車室の変形を効率よく抑制することができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体側方に設けられるセンタピラーと、このセンタピラーに設けられる複数のヒンジと、このヒンジを介して車体側に開閉自在に取付けられ乗員が乗降するドアとを備えた車体側部構造において、複数のヒンジの間に、車体外方へ向けて突出する突起部を車体上下方向に連続して設けることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、突起部は、複数のヒンジを連結するL字断面の連結部材である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体側部構造に、車体側方に設けられるセンタピラーと、このセンタピラーに設けられる複数のヒンジと、このヒンジを介して車体側に開閉自在に取付けられ乗員が乗降するドアとを備えた。
複数のヒンジの間に、車体外方へ向けて突出する突起部を車体上下方向に連続して設けたので、側面衝突(側突)時に、相手車両のバンパビームに集中荷重を与えてバンパビームを折り曲げ、車室内への相手車両のバンパビームの侵入量を低減することができる。この結果、自車両の車室の変形を抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、突起部は、複数のヒンジを連結するL字断面の連結部材であるので、センタピラーの断面係数も大きくすることができ、センタピラーの曲げ強度の向上を図ることができる。
また、突起部は、複数のヒンジを連結するL字断面の連結部材なので、車体重量の増加を最小限に止めることができる。また、簡素に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車体側部構造を採用した車体の側面図である。
【図2】本発明に係る車体側部構造の斜視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2に示された車体側部構造の作用説明図である。
【図5】図2に示された車体側部構造の集中応力の差を示す比較検討図である。
【図6】図2に示された車体側部構造の補強部材としての差を示す比較検討図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0013】
図1に示されたように、車体11は、車室12の側部前方に設けられるフロントピラー14と、車室12の側部中央に設けられるセンタピラー15と、車室12の側部後方に設けられるリヤピラー16と、これらのフロントピラー14、センタピラー15及びリヤピラー16の下部に渡されるサイドシル17と、フロントピラー14、センタピラー15及びリヤピラー16の上部に渡されるルーフレール18とを備える。
【0014】
フロントピラー14は、車体11に略垂直に延ばされた垂直部21と、この垂直部21から斜め上部後方に延ばされる傾斜部22とから構成される。
垂直部21は、前ドア27を開閉する上下のヒンジ(ドアヒンジ)23,24が設けられる。
【0015】
フロントピラー14、センタピラー15、サイドシル17の前部及びルーフレール18の前部で、前ドア27の前ドア開口25が構成される。
リヤピラー16、センタピラー15、サイドシル17の後部及びルーフレール18の後部で、ドア(後ドア)28の後ドア開口26が構成される。
【0016】
センタピラー15は、車体11に垂直に延ばされる。さらに、センタピラー15は、図3に示されるように、車体外方に設けられるアウタパネル31と、車体内方に設けられるインナパネル32と、これらのインナパネル32とアウタパネル31との間に、且つアウタパネル31に沿わせて設けられるピラースチフナ(補強パネル)33とからなる。
【0017】
図2及び図3に示されるように、車体側部構造40は、先に説明したセンタピラー15と、このセンタピラー15に設けられ、ドア(後ドア)28を開閉する上下のヒンジ(ドアヒンジ)42,43と、これらのヒンジ42,43の間に設けられた突起部44とから構成される。
【0018】
突起部44は、断面視L字の部材である。詳細には、突起部44は、センタピラー15に取付けられる取付面45と、この取付面45から車体外方に向けて立ち上げたエッジ46とから構成される。また、突起部44は、上下のヒンジ42,43のヒンジ間を繋ぐL字断面の連結部材でもある。
【0019】
図4(a)において、自車両10の側面に相手車両48が接近した状態が示され、図4(b)において、自車両10の側面に相手車両48が衝突した状態が示される。
自車両10の側面に相手車両48が白抜き矢印a1の如く衝突した場合には、突起部44のエッジ46で相手車両48のバンパビーム49を折り曲げることができる。これにより、自車両10の車室12内への相手車両48のバンパビーム49の侵入量を低減することができる。
【0020】
図5(a),(b)において、比較例の車体側部構造100が示され、図5(c),(d)において、実施例の車体側部構造40が示される。
比較例の車体側部構造100は、センタピラー101に後ドア(不図示)を開閉する上下のヒンジ(ドアヒンジ)102,103を設けただけの構造である。従って、相手車両118のバンパビーム119は、自車両110のセンタピラー101の車両前後方向全体に渡り当接する。
【0021】
すなわち、相手車両118のバンパビーム119が白抜き矢印f1の如く自車両110に衝突する場合に、相手車両118のバンパビーム119に集中応力を発生させることができない。この結果、自車両110の車室112内に侵入する相手車両118のバンパビーム119の侵入量を低減することはできない。
【0022】
実施例の車体側部構造40では、センタピラー15に、上下のヒンジ(ドアヒンジ)42,43と、これらの車体側部構造40の間に渡される突起部44とが設けられた。
従って、相手車両48のバンパビーム49が白抜き矢印f2の如く自車両10に衝突する場合に、相手車両48のバンパビーム49の一点に集中応力を発生させることができる。
【0023】
すなわち、相手車両48のバンパビーム49を折り曲げることができる。この結果、自車両10の車室12内に侵入する相手車両48のバンパビーム49の侵入量を低減することができる。
【0024】
図6(a)〜(d)において、比較例の車体側部構造100のセンタピラー101と実施例の車体側部構造40とのセンタピラー15の強度の違いが示される。(a),(b)は比較例の車体側部構造100である。(c),(d)は実施例の車体側部構造40である。
【0025】
比較例の車体側部構造100において、センタピラー101は、上端点U1及び下端点D1は固定されたものと見なされる。この上端点U1と下端点D1を結ぶ直線を仮想センタピラー線L1とする。センタピラー101に、外方から荷重W1が作用するときに、仮想センタピラー線L1は、二点鎖線で示されるように車室112の内方に変形される。この変形量をB1とする。
【0026】
実施例の車体側部構造40において、比較例の車体側部構造100と同様に、センタピラー15は、上端点U2及び下端点D2は固定されたものと見なされる。この上端点U2と下端点D2を結ぶ直線を仮想センタピラー線L2とする。センタピラー15に、外方から荷重W2が作用するときに、仮想センタピラー線L2は、二点鎖線で示されるように車室12の内方に変形される。この変形量をB2とする。なお、外方から作用する荷重W1,W2は等しいものとする。
【0027】
実施例の車体側部構造40では、センタピラー15に上下のヒンジ42,43を連結する突起部(連結部材)44を設けたので、この突起部44が補強部材としても作用する。 従って、実施例の車体側部構造40の変形量B2は、比較例の車体側部構造100の変形量B1よりも少ない(B2<B1)ものと考えられる。
すなわち、図4〜図6に示されたように、突起部44は、防御機能と補強機能とを兼ね備えた部材といえる。
【0028】
車体側部構造40は、車体側方に設けられるセンタピラー15と、このセンタピラー15に設けられる複数のヒンジ42,43と、これらのヒンジ42,43を介して車体11側に開閉自在に取付けられ乗員が乗降するドア(後ドア)28とを備える。
複数のヒンジ42,43の間に、車体外方へ向けて突出する突起部44を車体上下方向に連続して設けたので、側面衝突(側突)時に、相手車両48のバンパビーム49に集中荷重を与えてバンパビーム49を折り曲げ、車室12内への相手車両48のバンパビーム49の侵入量を低減することができる。この結果、自車両10の車室12の変形を抑制することができる。
【0029】
突起部44は、複数のヒンジ42,43を連結するL字断面の連結部材であるので、センタピラー15の断面係数も大きくすることができ、センタピラー15の曲げ強度の向上を図ることができる。
また、突起部44は、複数のヒンジ42,43を連結するL字断面の連結部材なので、車体重量の増加を最小限に止めることができる。また、簡素に構成することができる。
【0030】
尚、本発明に係る車体側部構造は、図2に示すように、センタピラー15に2つのヒンジ42,43が設けられたが、これに限るものではなく、3個以上のヒンジを設けるものであってもよい。また、1個の突起部44が設けられたが、2個以上の突起部が設けられるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る車体側部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0032】
10…車両(自車両)、15…センタピラー、28…ドア(後ドア)、40…車体側部構造、42,43…ヒンジ、44…突起部(連結部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側方に設けられるセンタピラーと、このセンタピラーに設けられる複数のヒンジと、このヒンジを介して車体側に開閉自在に取付けられ乗員が乗降するドアとを備えた車体側部構造において、
前記複数のヒンジの間に、車体外方へ向けて突出する突起部を車体上下方向に連続して設けることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記複数のヒンジを連結するL字断面の連結部材であることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−167896(P2010−167896A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11967(P2009−11967)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】