説明

車体前部構造

【課題】簡単な構成で衝突時にフロントメインフレームの圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が確保できる車体前部構造を提供する。
【解決手段】フロント部11、キックアップ部12及びエクステンション部13を備えたフロントメインフレーム10及び、前端部21a及び後端部22がフロント部11及びキックアップ部12に締結固定するサブフレーム20を備え、前面衝突時のフロントメインフレーム10の圧潰変形に伴ってサブフレーム20を下方に折曲変形する車体前部構造1であって、後端部22に先端部41がキックアップ部12内に突出する締結ボルト40を固定し、キックアップ部12に締結ボルト40の先端部41に対向する干渉部材37を備える。サブフレーム20の折曲変形に伴って、締結ボルト40の先端部41が干渉部材37に当接してキックアップ部12の起き上がり変形を阻止してフロントメインフレーム10の安定した衝突エネルギ吸収を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体前部構造に関し、特に車体幅方向両側で前後方向に延在するフロントメインフレーム及び該フロントメインフレームの下方にサブフレームを配置した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体幅方向両側に前後方向に延在する一対のフロントメインフレームの下方に、エンジン及びトランスミッション等からなるパワーユニットを支持するサブフレームを配置した車体前部構造が知られている。
【0003】
このフロントメインフレームの下方にサブフレームを配置した車体前部構造としては例えば特許文献1がある。この特許文献1に開示される車体前部構造の概要を図7乃至図9を参照して説明する。
【0004】
図7は車体前部におけるフロントメインフレームとサブフレームの配設状態を示す側面図である。図7に示すようにフロントメインフレーム102は直状で前後方向に延在するフロント部102Aと、フロント部102Aの後端から下方に傾斜したキックアップ部102Bと、キックアップ部102Bの後端から後方に延在するエクステンション部102Cとが連続形成される。キックアップ部102Bは車室RとエンジンルームEを区画するダッシュパネル101のトーボード101Aの前面に沿って延在し、エクステンション部102Cはトーボード101Aの後方に連続するフロアパネル102Bの下面に接合される。フロントメインフレーム102の前端にバンパステイ107を介してバンパ108が支持される。
【0005】
フロントメインフレーム102の下方に延在するサブフレーム103は、前後方向に延在する側部フレーム103Aを有し、その前端部103Aaをフロントメインフレーム102のフロント部102Aの前端部下面に配設されたブラケット104の下面にボルト105により締結固定し、後端部103Abがエクステンション部102Cの下面にボルト106によって締結固定される。
【0006】
エンジン及びトランスミッションを備えたパワーユニットP/Uは、一対のフロントメインフレーム102のフロント部102Aに跨って該フロント部102Aが軸方向に圧潰変形した際に離脱するように図示しないマウント部材を介して支持されると共に、下部が側部フレーム103Aの前後方向中間部分にマウント部材109を介して支持される。
【0007】
このような車体前部構造において、車両の前面衝突により、フロントメインフレーム102の前端に衝突荷重Fが入力されると、図8、図9に示すようにバンパステイ107が軸方向に圧潰変形すると共に、フロントメインフレーム102のフロント部102Aが前端側から軸方向に圧潰変形する。
【0008】
このフロント部102Aの前端側の圧潰変形の進行により、パワーユニットP/Uがフロント部102Aのマウント部分で離脱する一方、サブフレーム103の側部フレーム103Aには前端部103Aa及び後端部103Abの締結固定部を支点として前後方向の圧縮荷重Faが発生して、側部フレーム103Aがマウント部材109によるパワーユニットP/Uの支持点を頂点としてV字状に下向きに折曲変形する。
【0009】
このフロントメインメンバ102の圧潰変形及びサブフレーム103の折曲変形等により衝突エネルギを吸収すると共に、パワーユニットP/Uを下方に誘導してダッシュパネル101の変形を抑制する。
【0010】
【特許文献1】特開2005−219609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、フロントメインフレーム102のフロント部102Aとエクステンション部102Cとが傾斜するキックアップ部102Bを介してオフセット配置されることから、前面衝突時にフロント部102Aに前方から入力される衝突荷重Fにより屈曲形成されたキックアップ部102Bとエクステンション部102Cの連続部分が屈曲変形してキックアップ部102Bが上方に起き上がり、このキックアップ部102Bの起き上がり変形に伴ってフロント部102Aが上方に大きく揺動することがある。フロント部102Aが上方に揺動すると、衝突荷重Fの入力方向とフロント部102Aの軸方向と同軸性が崩れて衝突荷重Fによる効率的なフロント部102Aの軸方向の圧潰変形が妨げられ、フロント部102Aの圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が達成できないことが懸念される。また、サブフレーム103の後端部103Abとフロントメインフレーム102とを締結するボルト106に大きな剪断荷重が作用し、ボルト106が破断してサブフレーム103の後端部103Abとフロントメインフレーム102との締結が解除されるとサブフレーム103の折れ曲がりによる所期の衝突エネルギ吸収が達成できないことが懸念される。
【0012】
一方、キックアップ部102Bとエクステンション部102Cとの連続部分の屈曲変形を防止するために、該部を補剛すると構造が複雑になると共にフロントメインフレーム102の重量が増大することが懸念される。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、重量の増加を伴うことなく簡単な構成で衝突時にフロントメインフレームの圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が確保できる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1に記載の車体前部構造の発明は、車体の車幅方向両側部に配設され、直状で前後方向に延在するフロント部と該フロント部の後端から下方に傾斜したキックアップ部と該キックアップ部の後端から後方に延在するエクステンション部とを備えた中空断面形状のフロントメインフレーム及び、該フロントメインフレームの下方で前後方向に延在して前端部が上記フロント部に締結固定し後端部がキックアップ部に締結固定するサブフレームを備え、車両の前面衝突時に上記フロントメインフレームの軸方向の圧潰変形に伴って上記サブフレームが前端部と後端部の各締結固定部を支点として中央部分が下方にV字状に折曲変形する車体前部構造であって、上記サブフレームの後端部に固定されて先端部が上記キックアップ部内に突出する締結ボルトと、上記キックアップ部内でかつ該キックアップ部に設けられて上記締結ボルトの先端部の前面に対向する干渉部材とを備え、上記サブフレームの折曲変形に伴って上記締結ボルトの先端部が上記干渉部に当接することを特徴とする。
【0015】
この発明によると、車両の前面衝突によるフロントメインフレームの圧潰変形の進行により、サブフレームが前端部及び後端部の各締結固定部を支点とするV字状で下向きの折曲変形を開始すると、サブフレームの後端部の傾倒により該部に固定された締結ボルトの先端部が干渉部材に当接して干渉部材を前方に押圧してキックアップ部の後方移動を抑制し、キックアップ部とエクステンション部との連続部分の屈曲変形を抑制する。これによりキックアップ部の上方への起き上がり変形が防止されてフロント部の上方への揺動がなくなり、衝突荷重入力方向とフロント部の軸方向との同軸性が維持されてフロントメインフレームの安定した軸方向の圧潰変形が得られ、効率的な衝突エネルギ吸収が達成できる。
【0016】
また、サブフレームの後端部に固定される締結ボルトの先端部をキックアップ部内に突出させると共に、キックアップ部内に干渉部材を配設する簡単な構成で、フロントメインフレームを補剛する必要がなく、フロントメインフレームの大型化及び重量増加が回避できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体前部構造において、上記締結ボルトにより上記サブフレームの後端部とキックアップ部とを締結することを特徴とする。
【0018】
この発明によると、請求項1に加え、サブフレームが前端部及び後端部の締結固定部を支点としてV字状で下向きの折曲変形が開始すると、サブフレームの後端部の下方への揺動に伴い締結ボルトを介してキックアップ部が下方に付勢され、より確実にキックアップ部の起き上がり変形が阻止されてフロントメインフレームの揺動がなくなりフロントメインフレームの安定した軸方向の圧潰変形が得られ、より効率的な衝突エネルギ吸収が達成できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1の車体前部構造において、上記締結ボルトにより取付部材を上記サブフレームに締結することを特徴とする。
【0020】
この発明によると、サブフレームに取付部材を締結する締結ボルトが請求項1の締結ボルトの機能を兼備し、構成の簡素化が得られる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の車体前部構造において、上記サブフレームの後端部に固設された管筒を有し、該管筒に上記締結ボルトが嵌合固定されたことを特徴とする。
【0022】
この発明によると、サブフレームの後端部に管筒を固設し、管筒に締結ボルトが嵌合固定することにより、サブフレームの後端部に締結ボルトを強固に固定することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の車体前部構造において、上記サブフレームの後端部に上記キックアップ部に当接可能な先端が突設されたこと特徴とする。
【0024】
この発明によると、サブフレームの後端部にキックアップ部に当接可能な先端を突設することから、キックアップ部に当接する先端を支点として後端部がより確実に下方に揺動してキックアップ部の起き上がり変形が防止できる。また、サブフレームの後退移動が規制されて、締結ボルトに作用する剪断荷重が軽減される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、車両の前面衝突によりフロントメインフレームの圧潰変形の進行によりサブフレームが前端部及び後端部の各締結固定部を支点としてV字状で下向きの折曲変形を開始すると、サブフレームの後端部に固定された締結ボルトの先端部が干渉部材に当接してキックアップ部の起き上がり変形を阻止してフロントメインフレームのフロント部の揺動がなくなり、フロントメインフレームの安定した軸方向の圧潰変形が得られ、効率的な衝突エネルギ吸収が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の車体前部構造の実施の形態を図を参照して説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1乃至図5は本発明の第1実施の形態を示し、図1はフロントメインフレームとサブフレームの配設状態を示す側面図、図2は図1のA部の拡大斜視図、図3は同じく図1のA部の拡大図、図4は変形後のフロントメインフレームとサブフレームの配設状態を示す側面図、図5は図4のB部拡大断面図である。
【0028】
本実施形態の車体前部構造1は図1に示すように、車幅方向両側に、車両の前部衝突時における主要なエネルギ吸収部材であるフロントメインフレーム10が車体前後方向に延在して配置され、フロントメインフレーム10の下方にエンジン及びトランスミッション等からなるパワーユニットP/Uを支持するサブフレーム20が配置される。
【0029】
図1に示すようにフロントメインフレーム10は、車体前後方向に直状で延在するフロント部11と、フロント部11の後端から斜め下方に屈曲して延在するキックアップ部12と、このキックアップ部12の後端から後方に屈曲して延在するエクステンション部13とが連続形成される。フロントメインフレーム10の前端にバンパステイ15を介してバンパ18が支持される。
【0030】
図2及び図3に示すようにフロントメインフレーム10のフロント部11は、下面11A、対向する側面11B、11C及び上面11Dを有する矩形中空断面形状で車体前後方向に延在する。キックアップ部12はフロント部11の下面11A及び各側面11B、11Cに連続する下面12A、側面12B、12Cを有する上方が開放された断面U字状でフロント部11の後端から斜め下方に延在し、側面12B、12Cの上縁にそれぞれ図示しないダッシュパネルのトーボードの前面に結合するフランジ12Ba、12Caが折曲形成される。同様にエクステンション部13はキックアップ部12の下面12A及び各側面12B、12Cの後端に連続する下面13A、側面13B、13Cを有して上方が開放された断面U字状で車体前後方向に延在し、側面13B、13Cの上縁にそれぞれフロアパネルの下面に結合するフランジ13Ba、13Caが折曲形成される。
【0031】
これらキックアップ部12とトーボード及びエクステンション部13とフロアパネルによってトーボードの前面及びフロアパネルの下面に沿って連続する矩形中空断面形状を形成する。
【0032】
フロントメインフレーム10の下方に延在するサブフレーム20は、下面部23及び上面部24を有して前後方向に延在する中空断面形状の側部フレーム21を有し、その前端部21aをフロントメインフレーム10のフロント部11の前端部下面に配設されたブラケット16の下面にボルト17によって締結固定し、後端部22をキックアップ部12の後端近傍に締結固定する。
【0033】
このフロントメインフレーム10のキックアップ部12と側部フレーム21の後端部22とを締結ボルト40によって締結固定する締結固定部30を図2及び図3を参照して説明する。
【0034】
側部フレーム21の後端部22は後方に突出する先端22aが形成されると共に、下面部23及び上面部24に上下方向に貫通する貫通孔23a、24aが開口する。
【0035】
これら側部フレーム21の貫通孔23a、24bに円筒状の管筒31を嵌挿し、管筒31と側部フレーム21の下面部23と上面部24に溶接等により結合する。これにより側部フレーム21の後端部22に剛性が確保された管筒31が強固に固設される。
【0036】
一方、後端がフロントメインフレーム10のエクステンション部13の下面13Aに図示しないボルトによって結合されて前方に延在する板状の連結部材25の前端部に、側部フレーム21の後端部22に開口する貫通孔23a、24aに対応して貫通孔25aが開口する。
【0037】
また、キックアップ部12の下面12Aにはサブフレーム20に配置される管筒31に対応してボルト挿通孔32が開口する。更に、キックアップ部12の下面12Aに管筒31に対向してナット36を保持するブラケット33が取り付けられる。ブラケット33は管筒31の上端31aと対向する平面状で取付孔34aが穿設された頂面34及び頂面34の外周縁から上方に周面35が折曲形成されカップ状であって、周面35の上端縁にキックアップ部12の下面12A及び側面12B、12Cに結合するフランジ35aが折曲形成される。頂面34には取付孔34aに対応してナット36が取り付けられる。
【0038】
更に、キックアップ部12の側面12Bと12Cとの間に干渉部材37が架設される。キックアップ部12内に架設される干渉部材37は側面12Bと13Cに両端が固設されると共に下面12Aに固設される高張力鋼材からなる板状であって、中央部に後述するボルト挿通孔32からフロントメインフレーム10内に突出する締結ボルト40の先端部41の前面41aと若干の隙間、例えば3〜5mmを隔てて対向して嵌合する断面U字状の当接部38が形成される。側面12Bと12C間に干渉部材37を架設するとことによりキックアップ部12の変形が拘束されてキックアップ部12の剛性が向上する。
【0039】
締結ボルト40は、連結部材25の貫通孔25aから管筒31に挿入されて管筒31に嵌合固定してサブフレーム20の後端部22に強固に固定されると共に、その先端部41がブラケット33の頂面34に形成された取付孔34aに挿入されてナット36に螺合してサブフレーム20の後端部22をメインフレーム10のキックアップ部12に締結する。更にボルト挿通孔32からキックアップ部12内に突出する先端部41の前面側41aが若干の隙間を介して干渉部材37の当接部38に対向する。
【0040】
一方、エンジン及びトランスミッションを備えたパワーユニットP/Uが、一対のフロントメインフレーム10のフロント部11に跨って該フロント部11が軸方向に圧潰変形した際に離脱するように図示しないマウント部材を介して支持され、かつパワーユニットP/Uの側部が側部フレーム21の前後方向中間部分にマウント部材45を介して支持される。
【0041】
このような車体前部構造1において、車両の前面衝突により、図1に矢印で示すようにフロントメインフレーム10の前端部に衝突荷重Fが入力されると、バンパステイ15が圧潰変形すると共に、フロントメインフレーム10のフロント部11が前端側から軸方向に圧潰変形する。このフロント部11の圧潰変形の進行により、パワーユニットP/Uの上部がフロント部11のマウント部分で離脱する一方、サブフレーム20の側部フレーム21には前端部及び後端部22の各締結固定部を支点として前後方向の圧縮荷重Faが発生して、図4に示すように側部フレーム21がマウント部材45によるパワーユニットの支持点近傍を頂点としてV字状で下向きの折曲変形を開始する。
【0042】
この側部フレーム21の折曲変形と共に、側部フレーム21が若干後退して図5に示すように後端部22に突設された先端22aがキックアップ部12の下面12Aの前端近傍に当接して、側部フレーム21の後方移動が規制される。更にキックアップ部12に当接した先端22aを支点として後端部22が下方に揺動して押し下げられると共に、管筒31は、その上端31a側が下端31bより前方になるように傾倒する。この管筒31の下方移動に伴って管筒31に嵌合固定された締結ボルト40及びナット36によって締結されたブラケット33が下方に押し下げてキックアップ12を下方に付勢し、かつ管筒31の傾倒に伴って揺動する締結ボルト40の先端部41が干渉部材37の当接部38に当接して干渉部材37を前方に押圧してキックアップ部12の後方移動を抑制する。
【0043】
これによりキックアップ部12の上方への起き上がり変形が減少し、フロント部11に前方から入力される衝突荷重Fに起因するキックアップ部12とエクステンション部13の連続部分の屈曲変形が抑制されてフロントメインフレーム10のフロント部11が上方に大きく揺動することなくなり、衝突荷重Fの入力方向とフロント部11の軸方向と同軸性が維持されて衝突荷重Fの入力方向フロント部11の安定した軸方向の圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が達成できる。
【0044】
従って、本実施の形態によると、車両の前面衝突により、フロントメインフレーム10の前端部に衝突荷重Fが入力され、フロントメインフレーム10の軸方向に圧潰変形に伴う側部フレーム21の折曲変形が発生した際に、側部フレーム21の後端部22に突設形成され先端22aがキックアップ部12の下面12Aの後端近傍に当接して管筒31の後退移動が阻止され、締結ボルト40に作用する剪断荷重が大幅に軽減されて締結ボルト40の破損が回避される。更に、折曲変形するサブフレーム20によって下方に揺動する後端部22の下方移動に伴ってキックアップ部12が下方に付勢されると共に締結ボルト40の先端部41が干渉部材37の当接部38に当接してキックアップ部12を前方に押圧してキックアップ部12の後方移動を抑制する。これによりフロント部11に前方から入力される衝突荷重Fにより屈曲形成されキックアップ部12とエクステンション部13の連続部分の屈曲変形が抑制されてキックアップ部12が起き上がり変形が減少してフロントメインフレーム10のフロント部11が大きく揺動することなく安定した軸方向の圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が達成できる。
【0045】
更に、このフロントメインメンバ10の圧潰変形に伴う側部フレーム21の折曲変形等により衝突エネルギを吸収すると共に、パワーユニットP/Uを下方に誘導してダッシュパネルの変形を抑制する。
【0046】
また、サブフレーム20の側部フレーム21の後端部に固定される締結ボルト40の先端部41をキックアップ部12内に突出させると共に、キックアップ部12内に干渉部材37を配設する簡単な構成で、フロントメインフレーム10を補剛する必要がなく、フロントメインフレーム10の大型化及び重量増加が回避できる。
【0047】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態を図6を参照して説明する。本実施の形態は第1実施の形態と締結固定部30が異なり、他の構成は第1実施の形態と同様であり、締結固定部30を主に説明して他の詳細な説明は対応する部分に同一符号を付することで該部の説明は省略する。
【0048】
本実施の形態における締結固定部30は、側部フレーム21の後端部22の後方に突出する先端22aが形成されると共に、下面部23及び上面部24に上下方向に貫通する第1貫通孔53a、54aが開口し、かつ第1貫通孔53a及び54aの前方に隣接して第2貫通孔53b、54bを開口する。
【0049】
側部フレーム21の第1貫通孔53a、54aに円筒状の第1管筒51が嵌挿し、第1管筒51と側部フレーム21の下面部23及び上面部24に溶接等により結合する。
【0050】
同様に側部フレーム21の第2貫通孔53b、54bに第2管筒52を嵌挿し、第2管筒52と側部フレーム21の下面部23及び上面部24を溶接等により結合する。
【0051】
一方、フロントメインフレーム10のキックアップ部12における下面12Aにはサブフレーム20に配置される第1管筒51及び第2管筒52に対応して第1ボルト挿通孔32a及び第2ボルト挿通孔32bが開口する。
【0052】
更に、キックアップ部12の下面12Aに第1管筒51に対向して突出してナット36を保持するブラケット33が取り付けられる。更に、側面12Bと13Cとの間に干渉部材37を架設する。干渉部材37は側面12Bと13C間に架設される高張力鋼材からなる板状であって、車幅方向中央部に第2ボルト挿通孔32bからフロントメインフレーム10内に突出する第2締結ボルト62の先端部62aの前面側が若干の隙間を介して嵌合する断面U字状の当接部38が形成される。
【0053】
第1締結ボルト61が連結部材25の貫通孔25aから第1管筒51に挿入され、ブラケット33に設けられたナット36に螺合してサブフレーム20の後端部22をメインフレーム10のキックアップ部12に締結する。
【0054】
第2管筒52に対応する貫通孔56及びナット57が取り付けられた取付部材、例えばサスペンション構成部材55がサブフレーム20上に配置され、第2締結ボルト62が第2管筒52に下方から挿入されて嵌合固定され、その第2締結ボルト62の先端部62aがサスペンション構成部材55の貫通孔56を貫通してナット57に螺合してサスペンション構成部材55をサブフレーム20に締結する。更に第2締結ボルト62の先端部62aが第2ボルト挿通孔32bからフロントメインフレーム10内に突出する先端部62aの前面に対向すると共に若干の隙間を介して干渉部材37の当接部38に嵌合する。
【0055】
このように締結固定部30を構成することにより、第1実施形態と同様に車両の前面衝突によりフロントメインフレーム10の前端部に衝突荷重Fが入力され、フロント部11の前端部の圧潰変形の進行により、側部フレーム21がV字状に下向きに折曲変形を開始すると、側部フレーム21の後端部22に突設形成され先端22aがキックアップ部12の下面12Aの下端近傍に当接し、先端22aを支点として後端部22が下方に揺動付勢されて第1管筒51及び第2管筒52が押し下げられる。これにより第1管筒51に嵌合固定された第1締結ボルト61及びナット36によって締結されたブラケット33を介してキックアップ12を下方付勢し、かつ第2管筒52の傾倒に伴って揺動する第2締結ボルト62の先端部62aが干渉部材37の当接部38に当接して前方に押圧してキックアップ部12の後方移動を抑制する。
【0056】
これにより、フロント部11に前方から入力される衝突荷重Fにより屈曲形成されキックアップ部12とエクステンション部13の連続部分の屈曲変形が抑制されてキックアップ部12が起き上がり変形が減少してフロントメインフレーム10のフロント部11が大きく揺動することなく安定した軸方向の圧潰変形による所期の衝突エネルギ吸収が達成できる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記実施の形態では干渉部材37をキックアップ部12の側面12Bと12Cに架設された板部材により構成したが、締結ボルトの先端部が嵌入可能な筒体をキックアップ部12に固設して構成することもできる。
【0058】
また、上記第2実施の形態では第2締結ボルト62及びナット57によりサスペンション構成部材55をサブフレーム20上に固定したが、サスペンション構成部材55に代えてクロスメンバ等他の取付部材を固設することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施に形態におけるフロントメインフレームとサブフレームの配設状態を示す側面図である。
【図2】図1のA部拡大斜視図である。
【図3】同じく、図1のA部断面図である。
【図4】変形後のフロントメインフレームとサブフレームの配設状態を示す側面図である。
【図5】図4のB部拡大断面図である。
【図6】第2実施の形態におけるフロントメインフレームとサブフレームの後端部の締結固定部を示す断面図である。
【図7】従来のフロントサイドメンバとサブフレームの配設状態を示す側面図である。
【図8】作用状態を示す側面図である。
【図9】作用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 車体前部構造
10 フロントメインフレーム
11 フロント部
12 キックアップ部
13 エクステンション部
20 サブフレーム
21 側部フレーム
21a 前端部
22 後端部
22a 後端
30 締結固定部
31 管筒
33 ブラケット
37 干渉部材
38 当接部
40 締結ボルト
41 先端部
51 第1管筒
52 第2管筒
55 サスペンション構成部材(取付部材)
61 第1締結ボルト
62 第2締結ボルト
62a 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両側部に配設され、直状で前後方向に延在するフロント部と該フロント部の後端から下方に傾斜したキックアップ部と該キックアップ部の後端から後方に延在するエクステンション部とを備えた中空断面形状のフロントメインフレーム及び、該フロントメインフレームの下方で前後方向に延在して前端部が上記フロント部に締結固定し後端部がキックアップ部に締結固定するサブフレームを備え、車両の前面衝突時に上記フロントメインフレームの軸方向の圧潰変形に伴って上記サブフレームが前端部と後端部の各締結固定部を支点として中央部分が下方にV字状に折曲変形する車体前部構造であって、
上記サブフレームの後端部に固定されて先端部が上記キックアップ部内に突出する締結ボルトと、
上記キックアップ部内でかつ該キックアップ部に設けられて上記締結ボルトの先端部の前面に対向する干渉部材とを備え、
上記サブフレームの折曲変形に伴って上記締結ボルトの先端部が上記干渉部に当接することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
上記締結ボルトにより上記サブフレームの後端部とキックアップ部とを締結することを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記締結ボルトにより取付部材を上記サブフレームに締結することを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記サブフレームの後端部に固設された管筒を有し、
該管筒に上記締結ボルトが嵌合固定されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
上記サブフレームの後端部に上記キックアップ部に当接可能な先端が突設されたこと特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−227120(P2009−227120A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75203(P2008−75203)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】