車体前部構造
【課題】車体前部のレイアウトの自由度を確保しつつ、及び車室内のスペースを十分に確保しつつ、フロントサイドフレームからの荷重を直接サイドシルへ伝達することを可能にするとともに、ダッシュボードパネルの撓み量を低減することを可能にする。
【解決手段】エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル13と、このダッシュボードパネル13から車体前方に延ばされたフロントサイドフレーム11と、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされたサイドシル17とを備えた車体前部構造10において、フロントサイドフレーム11の水平部後端11aとサイドシル17の前部17aとを、ダッシュボードパネル13内を貫通させて直線状に連結する補強フレーム構造体(連結部材)14を有する。
【解決手段】エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル13と、このダッシュボードパネル13から車体前方に延ばされたフロントサイドフレーム11と、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされたサイドシル17とを備えた車体前部構造10において、フロントサイドフレーム11の水平部後端11aとサイドシル17の前部17aとを、ダッシュボードパネル13内を貫通させて直線状に連結する補強フレーム構造体(連結部材)14を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボード廻りの剛性を高めた車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、エンジンを横置きに配置した車両に採用されるものが知られている。
この種の車体前部構造は、エンジンを横置きに配置した構造では、フロントタイヤの位置が車室に近づき、この車室の隔壁になるダッシュボードパネルはタイヤの転舵を避けるために車室の左右側部へ突出するアーチ形状を呈する。
【0003】
このような車体前部構造として、フロントサイドフレームからの荷重を、フロントピラー及びサイドシルに伝えるために、車室の前部をパイプ材で囲むものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−67082公報
【0004】
特許文献1の車体前部構造は、エンジンルームと車室との間に配設されたダッシュボードパネル(端壁)と、このダッシュボードパネルに接続された左右のフロントサイドメンバと、側方で外側に位置する左右のサイドシルと、これらのサイドシルから立ち上げた左右のAピラー(フロントピラー)とダッシュボードパネルから延ばされるとともにサイドシルに渡された車体フロアとから構成されたものである。
【0005】
エンジンルームより車室(キャビン)に入力される荷重は、主に前輪の振動をダンパーなどのサスペンション部品を介して上方のアッパーメンバからの入力と、下方のサイドフレームからの入力とがある。
後者のサイドフレームからの入力においては、ダッシュボードパネルを反力点(面)とするために、効果的に剛性を上げるにはダッシュボードの剛性向上が必要であった。
【0006】
しかし、車体前部構造では、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外側にクロスメンバやパイプ材などの補強部材を配置すると、前輪(タイヤ)と干渉して車体前部のレイアウトの制約を受け困難である。一方、内側の車室(キャビン)側に補強部材を設ける場合には、車室内のスペースが犠牲にするという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車体前部のレイアウトの自由度を確保しつつ、及び車室内のスペースを十分に確保しつつ、フロントサイドフレームからの荷重を直接サイドシルへ伝達できるとともに、ダッシュボードパネルの撓み量を低減することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルと、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされたフロントサイドフレームと、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされたサイドシルとを備えた車体前部構造において、
フロントサイドフレームの水平部後端とサイドシルの前部とを、ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、連結部材は、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、連結部材は、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともにフロントサイドフレームが延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、且つダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、連結部材のホイールアーチ部側は、ダッシュボード下部により被覆されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルが設けられ、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされるフロントサイドフレームが設けられ、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされるサイドシルが設けられる。
フロントサイドフレームの水平部後端とサイドシルの前部とを、ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有するので、フロントサイドフレームからの荷重を直接サイドシルへ伝達することができる。この結果、フロントサイドフレームからの荷重をサイドシルへ円滑に伝達することができる。
連結部材をダッシュボードパネル内を貫通させたので、車体前部のレイアウトの自由度を確保することができるとともに、車室内のスペースを十分に確保することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ダッシュボードパネルの部位の中でもホイールアーチ部はアーチ状に形成された剛性が高い部分であり、連結部材が、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたので、ダッシュボードパネルの撓み量を低減することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、連結部材が、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともにフロントサイドフレームが延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、ダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたので、連結部材を、ダッシュボードパネル内を貫通させることができる。この結果、ダッシュボードパネルの効果的な補強を実現することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、連結部材のホイールアーチ部側が、ダッシュボードパネルの下部により被覆されたので、連結部材とホイールアーチ部との結合の相乗効果により、さらなるダッシュボードパネルの剛性の向上を図ることができる。また、連結部材とサイドシルとの結合が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体前部構造の斜視図であり、図2は図1に示される車体前部構造の車室側からのダッシュボードパネル廻りの斜視図である。
【0017】
車体10Aは、エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル(ダッシュボード)13と、このダッシュボードパネル13から車体前方向に延ばされる左右のフロントサイドフレーム11,11と、ダッシュボードパネル13の中央部から車体後方に延ばされるセンタトンネル(フロアトンネル)43と、ダッシュボードパネル13の側方から車体後方に延ばされる左右のサイドシル17,17(一方不図示)と、ダッシュボードパネル13の側方から斜め上方に延ばされるAピラー(フロントピラー)23,23(一方不図示)と、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされる車体フロア(フロントフロア)15とを備える。
【0018】
フロントサイドフレーム11,11は、車体幅方向に所定間隔をおいて配置され、車体前後方向に延出され、ダッシュボードパネル13に水平部後端(後端部)11aが接合される。
サイドシル17は、車室22の下部で左右端に設けられ車体フロア15を支持する骨格部材であり、サイドシルインナ45と、サイドシルアウタ46とからなり、前部17aがダッシュボードパネル13に接合される。
Aピラー(フロントピラー)23は、ダッシュボードパネル13の左右から車体後方に且つ斜め上方に延出される。
【0019】
図3は図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの分解斜視図であり、図4はダッシュパネル後分割体を取り除いたダッシュボードパネルの斜視図である。
ダッシュボードパネル13は、エンジンルーム21側に配置されるダッシュパネル前分割体61と、車室22側に配置されるダッシュパネル後分割体62と、これらのダッシュパネル前分割体61及びダッシュパネル後分割体62の間に、連結材(支持部材)41を介して配置される補強フレーム構造体(連結部材若しくはボード補強部材)14とからなる。
なお、連結材41は、ダッシュパネル後分割体62と補強フレーム構造体14との間に配置される。
【0020】
ダッシュパネル前分割体61は、左右のフロントサイドフレーム11,11が車体前方に延出されるフロントサイドフレーム遮蔽部材(前ボードパネル)31と、このフロントサイドフレーム遮蔽部材31の中央下部から後方に延出され、センタトンネル43を接続するダッシュボード下部パネル(トンネル部補強板)64と、フロントサイドフレーム遮蔽部材31の両側に設けられ、前輪(不図示)を囲う左右のホイールアーチ部25,25とからなる。
【0021】
ダッシュパネル後分割体62は、車体10Aをエンジンルーム21側と車室22側と隔てる中央パネル(後ボードパネル)32と、この中央パネル32の両側下部に設けられ、左右のサイドシル17,17に接続する下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28,28とからなる。
【0022】
補強フレーム構造体(連結部材)14は、左右のサイドフレーム間を結合するクロスメンバ(中央連結部材)35と、サイドシル17,17の前部17a,17aを補強するサイドシル補強フレーム(ホイールアーチ下連結部材)37,37と、Aピラー23を補強するピラー補強フレーム(ホイールアーチ上連結部材)38,38と、センタトンネル43を補強するトンネル補強フレーム(トンネルフレーム連結部材)36,36と、からなり、クロスメンバ35をベースに一体化されたものである。
【0023】
クロスメンバ35及び左右のサイドシル補強フレーム37,37は、一本のパイプ部材を曲げ形成して形成される部分であり、サイドシル補強フレーム37,37は、ダッシュボードパネル13を通過させて(貫通させて)略直線状に形成され、クロスメンバ35は、ダッシュボードパネル13内を通過させて(貫通させて)略直線状に形成される。
【0024】
ピラー補強フレーム38,38は、サイドシル補強フレーム37,37の根本にパイプ部材が溶接されたものであり、ダッシュパネル後分割体62を通過させて(貫通させて)、略直線状に形成される。
トンネル補強フレーム36,36は、クロスメンバ35にパイプ部材が溶接されたものである。
【0025】
図5は図1に示される車体前部構造の補強フレーム構造体を模式的に表した斜視図である。
さらに、車体前部構造10では、ピラー補強フレーム38とサイドシル補強フレーム37とで、二股状の補強部材72が構成され、ピラー補強フレーム38とサイドシル補強フレーム37との交差する点を交差部73と呼ぶときに、二股状の補強部材72は、交差部73の交差角度θが60度に設定される。
【0026】
Aピラー下部の取付点74とサイドシルの取付点75とを仮想線76で結ぶときに、交差部73、Aピラー下部の取付点74及びサイドシルの取付点75で略正三角形を形成される。なお、交差部73はクロスメンバ35に連結され、クロスメンバ35及びフロントサイドフレーム遮蔽部材31を介してフロントサイドフレーム11に取付けるフロントサイドフレーム内面の取付点でもある。
【0027】
図6は図1の6−6線断面図であり、図7は図2の7−7線断面図であり、図8は図2の8−8線断面図であり、図9は図2の9−9線断面図であり、図10は図9に示されたダッシュボードパネル廻りの溶接箇所を示す説明図である。なお、図6〜図8及び図10において黒丸印は溶接箇所を示す。
【0028】
図6に示されるように、車体前部構造10では、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25と補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37が溶接され、ホイールアーチ部25とダッシュパネル後分割体62の下サイドパネル28とが溶接され、この下サイドパネル28に中央パネル32及びサイドシル17が溶接されている。
【0029】
すなわち、サイドシル補強フレーム37は、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25の外周縁78(図2参照)に固定(連結)されるとともに、下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28で覆われる(被覆される)。
【0030】
図7に示されたように、車体前部構造10では、ダッシュパネル前分割体61のダッシュボード下部パネル64にダッシュパネル後分割体62の中央パネル32が溶接され、補強フレーム構造体14のトンネル補強フレーム36がダッシュボード下部パネル64及び中央パネル32に溶接され、さらに、中央パネル32は、アルミニウム鋳造継手部材65で補強されている。
【0031】
図8に示されたように、車体前部構造10では、補強フレーム構造体14のトンネル補強フレーム36は、ダッシュパネル前分割体61のフロントサイドフレーム遮蔽部材31の後面31aに溶接(接合)されるとともに、ダッシュパネル前分割体61のダッシュボード下部パネル64とダッシュパネル後分割体62の中央パネル32との間を貫通させて、センタトンネル(トンネル部パネル)43の上部43a裏面に接合される。なお、補強フレーム構造体14のクロスメンバ35も、フロントサイドフレーム遮蔽部材31の後面31aに溶接(接合)されている。
【0032】
図9及び図10に示されたように、車体前部構造10では、ダッシュパネル後分割体62の中央パネル32に連結材41が溶接されるとともに、ダッシュパネル前分割体61のフロントサイドフレーム遮蔽部材31が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31にも連結材41が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31にフロントサイドフレーム11が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31及び連結材41に補強フレーム構造体14のクロスメンバ35が溶接される。
【0033】
すなわち、クロスメンバ(中央連結部材)35は、フロントサイドフレーム遮蔽部材31に固定されるとともに、連結材41を介してフロントサイドフレーム遮蔽部材31と中央パネル32とで挟み込まれたものである。
【0034】
車体前部構造10の組立方法を説明する。
車体前部構造10では、図4に示されたように、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25とフロントサイドフレーム遮蔽部材31を一体に形成したダッシュパネル前分割体61にサイドシル17,17、センタトンネル43及びAピラー23,23に繋がる補強フレーム構造体(連結部材)14を結合し、ダッシュパネル前分割体61及び補強フレーム構造体14の組立体79を作成する。このときに、補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37をホイールアーチ部25の外周縁78に沿わせて固定する。
【0035】
次に、組立体79を、図2に示されたように、フロントサイドフレーム11,11(図5参照)の水平部後端11aに嵌合し、組立体79に補強フレーム構造体14を押さえる連結材41を介在させてダッシュパネル後分割体62の中央パネル32を被せ、サイドシル補強フレーム37をホイールアーチ部25に接合する。
さらに、中央パネル32の下部に、フロントサイドフレーム11,11の車体フロア15下へ傾斜する部分(不図示)を接合する。
【0036】
補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37をサイドシル17へ直接結合し、その後に、車室22側から下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28を被せ、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25と、ダッシュパネル後分割体62の中央パネル32と接合する。
【0037】
図11(a),(b)は図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの比較検討図である。
(a)において、比較例の車体前部構造100では、ダッシュボードパネル101にフロントサイドフレーム102を接続するだけの構造なので、フロントサイドフレーム102に矢印a1の如く荷重が作用したときには、ダッシュボードパネル101のホイールアーチ部103までの広範囲に亘って変形される。
【0038】
(b)において、実施例の車体前部構造10では、ダッシュボードパネル13にフロントサイドフレーム11を補強フレーム構造体(連結部材)14を介して接続した構造なので、フロントサイドフレーム11に矢印a2の如く荷重が作用したときには、ダッシュボードパネル13の変形範囲は限られたものとなり、荷重がサイドシル17やAピラー23(図1,2参照)に円滑に伝達される。
【0039】
例えば、(a)において、変形を受けるダッシュボードパネル101のフロントサイドフレーム102からホイールアーチ部103までの水平距離をL1とし、(b)において、変形を受けるダッシュボードパネル13のフロントサイドフレーム11からホイールアーチ部25までの水平距離をL2とすれば、L1>L2の関係になる。
【0040】
図4及び図9に示されたように、補強フレーム構造体(連結部材)14でフロントサイドフレーム11とホイールアーチ部25を接続することで、補強フレーム構造体(連結部材)14でホイールアーチ部25に支持点(境界)を作ることができる。これにより、ダッシュボードパネル13の撓みを防止することができる。すなわち、入力点と支持点(反力点)との距離を短く設定することができ、フロントサイドフレーム11の荷重(入力)に対する撓み量を少なくすることができる。
【0041】
補強フレーム構造体(連結部材)14でフロントサイドフレーム11とサイドシル17を接続することで、補強フレーム構造体14が直接フロントサイドフレーム11からの荷重をサイドシル17へ伝えるとともに、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25を支えて、ホイールアーチ部25の変形を防止できる。この結果、ダッシュボードパネル13の荷重伝達量も向上を図ることができ、レイアウトを犠牲にせずに、衝突性能と車体剛性との向上を図ることができる。
【0042】
車体前部構造10では、エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル13が設けられ、このダッシュボードパネル13から車体前方に延ばされるフロントサイドフレーム11が設けられ、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされるサイドシル17が設けられる。
【0043】
フロントサイドフレーム11の水平部後端11aとサイドシル17の前部17aとを、ダッシュボードパネル13内を貫通させて直線状に連結する補強フレーム構造体(連結部材)14を有するので、フロントサイドフレーム11からの荷重を直接サイドシル17へ伝達することができる。この結果、フロントサイドフレーム11からの荷重をサイドシル17へ円滑に伝達することができる。
【0044】
補強フレーム構造体(連結部材)14をダッシュボードパネル13内を貫通させたので、車体前部のレイアウトの自由度を確保することができるとともに、車室22内のスペースを十分に確保することができる。
【0045】
車体前部構造10では、ダッシュボードパネル13の部位の中でもホイールアーチ部25はアーチ状に形成された剛性が高い部分であり、補強フレーム構造体(連結部材)14が、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25の外周縁78の一部に固定されたので、ダッシュボードパネル13の撓み量を低減することができる。
【0046】
補強フレーム構造体(連結部材)14は、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25に連結するとともにフロントサイドフレーム11が延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材31に固定され、ダッシュボードパネル13の中央パネル32で挟まれたので、補強フレーム構造体(連結部材)14を、ダッシュボードパネル13内を貫通させることができる。この結果、ダッシュボードパネル13の効果的な補強を実現することができる。
【0047】
補強フレーム構造体(連結部材)14のホイールアーチ部25側は、下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28により被覆されたので、連結部材とホイールアーチ部25との結合の相乗効果により、さらなるダッシュボードパネル13の剛性の向上を図ることができる。また、補強フレーム構造体(連結部材)14とサイドシル17との結合が容易となる。
【0048】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図4に示すように、補強フレーム構造体(連結部材)14は、クロスメンバ35及び左右のサイドシル補強フレーム37,37が一体的に形成され、左右のサイドシル補強フレーム37,37に左右のピラー補強フレーム38,38が溶接されたが、これに限るものではなく、クロスメンバ35及び左右のピラー補強フレームが一体的に形成され、左右のピラー補強フレームに左右のサイドシル補強フレームが溶接される形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る車体前部構造の斜視図である。
【図2】図1に示される車体前部構造の車室側からのダッシュボードパネル廻りの斜視図である。
【図3】図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの分解斜視図である。
【図4】ダッシュパネル後分割体を取り除いたダッシュボードパネルの斜視図である。
【図5】図1に示される車体前部構造の補強フレーム構造体を模式的に表した斜視図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】図9に示されたダッシュボードパネル廻りの溶接箇所を示す説明図である。
【図11】図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの比較検討図である。
【符号の説明】
【0051】
10…車体前部構造、11…フロントサイドフレーム、11a…水平部後端、13…ダッシュボードパネル、14…連結部材(補強フレーム構造体)、17…サイドシル、17a…前部、21…エンジンルーム、22…車室、25…ホイールアーチ部、28…ダッシュボードパネル下部(下サイドパネル)、31…フロントサイドフレーム遮蔽部材、32…中央パネル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボード廻りの剛性を高めた車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、エンジンを横置きに配置した車両に採用されるものが知られている。
この種の車体前部構造は、エンジンを横置きに配置した構造では、フロントタイヤの位置が車室に近づき、この車室の隔壁になるダッシュボードパネルはタイヤの転舵を避けるために車室の左右側部へ突出するアーチ形状を呈する。
【0003】
このような車体前部構造として、フロントサイドフレームからの荷重を、フロントピラー及びサイドシルに伝えるために、車室の前部をパイプ材で囲むものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−67082公報
【0004】
特許文献1の車体前部構造は、エンジンルームと車室との間に配設されたダッシュボードパネル(端壁)と、このダッシュボードパネルに接続された左右のフロントサイドメンバと、側方で外側に位置する左右のサイドシルと、これらのサイドシルから立ち上げた左右のAピラー(フロントピラー)とダッシュボードパネルから延ばされるとともにサイドシルに渡された車体フロアとから構成されたものである。
【0005】
エンジンルームより車室(キャビン)に入力される荷重は、主に前輪の振動をダンパーなどのサスペンション部品を介して上方のアッパーメンバからの入力と、下方のサイドフレームからの入力とがある。
後者のサイドフレームからの入力においては、ダッシュボードパネルを反力点(面)とするために、効果的に剛性を上げるにはダッシュボードの剛性向上が必要であった。
【0006】
しかし、車体前部構造では、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外側にクロスメンバやパイプ材などの補強部材を配置すると、前輪(タイヤ)と干渉して車体前部のレイアウトの制約を受け困難である。一方、内側の車室(キャビン)側に補強部材を設ける場合には、車室内のスペースが犠牲にするという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車体前部のレイアウトの自由度を確保しつつ、及び車室内のスペースを十分に確保しつつ、フロントサイドフレームからの荷重を直接サイドシルへ伝達できるとともに、ダッシュボードパネルの撓み量を低減することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルと、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされたフロントサイドフレームと、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされたサイドシルとを備えた車体前部構造において、
フロントサイドフレームの水平部後端とサイドシルの前部とを、ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、連結部材は、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、連結部材は、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともにフロントサイドフレームが延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、且つダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、連結部材のホイールアーチ部側は、ダッシュボード下部により被覆されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルが設けられ、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされるフロントサイドフレームが設けられ、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされるサイドシルが設けられる。
フロントサイドフレームの水平部後端とサイドシルの前部とを、ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有するので、フロントサイドフレームからの荷重を直接サイドシルへ伝達することができる。この結果、フロントサイドフレームからの荷重をサイドシルへ円滑に伝達することができる。
連結部材をダッシュボードパネル内を貫通させたので、車体前部のレイアウトの自由度を確保することができるとともに、車室内のスペースを十分に確保することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ダッシュボードパネルの部位の中でもホイールアーチ部はアーチ状に形成された剛性が高い部分であり、連結部材が、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたので、ダッシュボードパネルの撓み量を低減することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、連結部材が、ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともにフロントサイドフレームが延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、ダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたので、連結部材を、ダッシュボードパネル内を貫通させることができる。この結果、ダッシュボードパネルの効果的な補強を実現することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、連結部材のホイールアーチ部側が、ダッシュボードパネルの下部により被覆されたので、連結部材とホイールアーチ部との結合の相乗効果により、さらなるダッシュボードパネルの剛性の向上を図ることができる。また、連結部材とサイドシルとの結合が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体前部構造の斜視図であり、図2は図1に示される車体前部構造の車室側からのダッシュボードパネル廻りの斜視図である。
【0017】
車体10Aは、エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル(ダッシュボード)13と、このダッシュボードパネル13から車体前方向に延ばされる左右のフロントサイドフレーム11,11と、ダッシュボードパネル13の中央部から車体後方に延ばされるセンタトンネル(フロアトンネル)43と、ダッシュボードパネル13の側方から車体後方に延ばされる左右のサイドシル17,17(一方不図示)と、ダッシュボードパネル13の側方から斜め上方に延ばされるAピラー(フロントピラー)23,23(一方不図示)と、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされる車体フロア(フロントフロア)15とを備える。
【0018】
フロントサイドフレーム11,11は、車体幅方向に所定間隔をおいて配置され、車体前後方向に延出され、ダッシュボードパネル13に水平部後端(後端部)11aが接合される。
サイドシル17は、車室22の下部で左右端に設けられ車体フロア15を支持する骨格部材であり、サイドシルインナ45と、サイドシルアウタ46とからなり、前部17aがダッシュボードパネル13に接合される。
Aピラー(フロントピラー)23は、ダッシュボードパネル13の左右から車体後方に且つ斜め上方に延出される。
【0019】
図3は図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの分解斜視図であり、図4はダッシュパネル後分割体を取り除いたダッシュボードパネルの斜視図である。
ダッシュボードパネル13は、エンジンルーム21側に配置されるダッシュパネル前分割体61と、車室22側に配置されるダッシュパネル後分割体62と、これらのダッシュパネル前分割体61及びダッシュパネル後分割体62の間に、連結材(支持部材)41を介して配置される補強フレーム構造体(連結部材若しくはボード補強部材)14とからなる。
なお、連結材41は、ダッシュパネル後分割体62と補強フレーム構造体14との間に配置される。
【0020】
ダッシュパネル前分割体61は、左右のフロントサイドフレーム11,11が車体前方に延出されるフロントサイドフレーム遮蔽部材(前ボードパネル)31と、このフロントサイドフレーム遮蔽部材31の中央下部から後方に延出され、センタトンネル43を接続するダッシュボード下部パネル(トンネル部補強板)64と、フロントサイドフレーム遮蔽部材31の両側に設けられ、前輪(不図示)を囲う左右のホイールアーチ部25,25とからなる。
【0021】
ダッシュパネル後分割体62は、車体10Aをエンジンルーム21側と車室22側と隔てる中央パネル(後ボードパネル)32と、この中央パネル32の両側下部に設けられ、左右のサイドシル17,17に接続する下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28,28とからなる。
【0022】
補強フレーム構造体(連結部材)14は、左右のサイドフレーム間を結合するクロスメンバ(中央連結部材)35と、サイドシル17,17の前部17a,17aを補強するサイドシル補強フレーム(ホイールアーチ下連結部材)37,37と、Aピラー23を補強するピラー補強フレーム(ホイールアーチ上連結部材)38,38と、センタトンネル43を補強するトンネル補強フレーム(トンネルフレーム連結部材)36,36と、からなり、クロスメンバ35をベースに一体化されたものである。
【0023】
クロスメンバ35及び左右のサイドシル補強フレーム37,37は、一本のパイプ部材を曲げ形成して形成される部分であり、サイドシル補強フレーム37,37は、ダッシュボードパネル13を通過させて(貫通させて)略直線状に形成され、クロスメンバ35は、ダッシュボードパネル13内を通過させて(貫通させて)略直線状に形成される。
【0024】
ピラー補強フレーム38,38は、サイドシル補強フレーム37,37の根本にパイプ部材が溶接されたものであり、ダッシュパネル後分割体62を通過させて(貫通させて)、略直線状に形成される。
トンネル補強フレーム36,36は、クロスメンバ35にパイプ部材が溶接されたものである。
【0025】
図5は図1に示される車体前部構造の補強フレーム構造体を模式的に表した斜視図である。
さらに、車体前部構造10では、ピラー補強フレーム38とサイドシル補強フレーム37とで、二股状の補強部材72が構成され、ピラー補強フレーム38とサイドシル補強フレーム37との交差する点を交差部73と呼ぶときに、二股状の補強部材72は、交差部73の交差角度θが60度に設定される。
【0026】
Aピラー下部の取付点74とサイドシルの取付点75とを仮想線76で結ぶときに、交差部73、Aピラー下部の取付点74及びサイドシルの取付点75で略正三角形を形成される。なお、交差部73はクロスメンバ35に連結され、クロスメンバ35及びフロントサイドフレーム遮蔽部材31を介してフロントサイドフレーム11に取付けるフロントサイドフレーム内面の取付点でもある。
【0027】
図6は図1の6−6線断面図であり、図7は図2の7−7線断面図であり、図8は図2の8−8線断面図であり、図9は図2の9−9線断面図であり、図10は図9に示されたダッシュボードパネル廻りの溶接箇所を示す説明図である。なお、図6〜図8及び図10において黒丸印は溶接箇所を示す。
【0028】
図6に示されるように、車体前部構造10では、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25と補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37が溶接され、ホイールアーチ部25とダッシュパネル後分割体62の下サイドパネル28とが溶接され、この下サイドパネル28に中央パネル32及びサイドシル17が溶接されている。
【0029】
すなわち、サイドシル補強フレーム37は、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25の外周縁78(図2参照)に固定(連結)されるとともに、下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28で覆われる(被覆される)。
【0030】
図7に示されたように、車体前部構造10では、ダッシュパネル前分割体61のダッシュボード下部パネル64にダッシュパネル後分割体62の中央パネル32が溶接され、補強フレーム構造体14のトンネル補強フレーム36がダッシュボード下部パネル64及び中央パネル32に溶接され、さらに、中央パネル32は、アルミニウム鋳造継手部材65で補強されている。
【0031】
図8に示されたように、車体前部構造10では、補強フレーム構造体14のトンネル補強フレーム36は、ダッシュパネル前分割体61のフロントサイドフレーム遮蔽部材31の後面31aに溶接(接合)されるとともに、ダッシュパネル前分割体61のダッシュボード下部パネル64とダッシュパネル後分割体62の中央パネル32との間を貫通させて、センタトンネル(トンネル部パネル)43の上部43a裏面に接合される。なお、補強フレーム構造体14のクロスメンバ35も、フロントサイドフレーム遮蔽部材31の後面31aに溶接(接合)されている。
【0032】
図9及び図10に示されたように、車体前部構造10では、ダッシュパネル後分割体62の中央パネル32に連結材41が溶接されるとともに、ダッシュパネル前分割体61のフロントサイドフレーム遮蔽部材31が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31にも連結材41が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31にフロントサイドフレーム11が溶接され、フロントサイドフレーム遮蔽部材31及び連結材41に補強フレーム構造体14のクロスメンバ35が溶接される。
【0033】
すなわち、クロスメンバ(中央連結部材)35は、フロントサイドフレーム遮蔽部材31に固定されるとともに、連結材41を介してフロントサイドフレーム遮蔽部材31と中央パネル32とで挟み込まれたものである。
【0034】
車体前部構造10の組立方法を説明する。
車体前部構造10では、図4に示されたように、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25とフロントサイドフレーム遮蔽部材31を一体に形成したダッシュパネル前分割体61にサイドシル17,17、センタトンネル43及びAピラー23,23に繋がる補強フレーム構造体(連結部材)14を結合し、ダッシュパネル前分割体61及び補強フレーム構造体14の組立体79を作成する。このときに、補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37をホイールアーチ部25の外周縁78に沿わせて固定する。
【0035】
次に、組立体79を、図2に示されたように、フロントサイドフレーム11,11(図5参照)の水平部後端11aに嵌合し、組立体79に補強フレーム構造体14を押さえる連結材41を介在させてダッシュパネル後分割体62の中央パネル32を被せ、サイドシル補強フレーム37をホイールアーチ部25に接合する。
さらに、中央パネル32の下部に、フロントサイドフレーム11,11の車体フロア15下へ傾斜する部分(不図示)を接合する。
【0036】
補強フレーム構造体14のサイドシル補強フレーム37をサイドシル17へ直接結合し、その後に、車室22側から下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28を被せ、ダッシュパネル前分割体61のホイールアーチ部25と、ダッシュパネル後分割体62の中央パネル32と接合する。
【0037】
図11(a),(b)は図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの比較検討図である。
(a)において、比較例の車体前部構造100では、ダッシュボードパネル101にフロントサイドフレーム102を接続するだけの構造なので、フロントサイドフレーム102に矢印a1の如く荷重が作用したときには、ダッシュボードパネル101のホイールアーチ部103までの広範囲に亘って変形される。
【0038】
(b)において、実施例の車体前部構造10では、ダッシュボードパネル13にフロントサイドフレーム11を補強フレーム構造体(連結部材)14を介して接続した構造なので、フロントサイドフレーム11に矢印a2の如く荷重が作用したときには、ダッシュボードパネル13の変形範囲は限られたものとなり、荷重がサイドシル17やAピラー23(図1,2参照)に円滑に伝達される。
【0039】
例えば、(a)において、変形を受けるダッシュボードパネル101のフロントサイドフレーム102からホイールアーチ部103までの水平距離をL1とし、(b)において、変形を受けるダッシュボードパネル13のフロントサイドフレーム11からホイールアーチ部25までの水平距離をL2とすれば、L1>L2の関係になる。
【0040】
図4及び図9に示されたように、補強フレーム構造体(連結部材)14でフロントサイドフレーム11とホイールアーチ部25を接続することで、補強フレーム構造体(連結部材)14でホイールアーチ部25に支持点(境界)を作ることができる。これにより、ダッシュボードパネル13の撓みを防止することができる。すなわち、入力点と支持点(反力点)との距離を短く設定することができ、フロントサイドフレーム11の荷重(入力)に対する撓み量を少なくすることができる。
【0041】
補強フレーム構造体(連結部材)14でフロントサイドフレーム11とサイドシル17を接続することで、補強フレーム構造体14が直接フロントサイドフレーム11からの荷重をサイドシル17へ伝えるとともに、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25を支えて、ホイールアーチ部25の変形を防止できる。この結果、ダッシュボードパネル13の荷重伝達量も向上を図ることができ、レイアウトを犠牲にせずに、衝突性能と車体剛性との向上を図ることができる。
【0042】
車体前部構造10では、エンジンルーム21と車室22とを隔てるダッシュボードパネル13が設けられ、このダッシュボードパネル13から車体前方に延ばされるフロントサイドフレーム11が設けられ、ダッシュボードパネル13から車体後方に延ばされるサイドシル17が設けられる。
【0043】
フロントサイドフレーム11の水平部後端11aとサイドシル17の前部17aとを、ダッシュボードパネル13内を貫通させて直線状に連結する補強フレーム構造体(連結部材)14を有するので、フロントサイドフレーム11からの荷重を直接サイドシル17へ伝達することができる。この結果、フロントサイドフレーム11からの荷重をサイドシル17へ円滑に伝達することができる。
【0044】
補強フレーム構造体(連結部材)14をダッシュボードパネル13内を貫通させたので、車体前部のレイアウトの自由度を確保することができるとともに、車室22内のスペースを十分に確保することができる。
【0045】
車体前部構造10では、ダッシュボードパネル13の部位の中でもホイールアーチ部25はアーチ状に形成された剛性が高い部分であり、補強フレーム構造体(連結部材)14が、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25の外周縁78の一部に固定されたので、ダッシュボードパネル13の撓み量を低減することができる。
【0046】
補強フレーム構造体(連結部材)14は、ダッシュボードパネル13のホイールアーチ部25に連結するとともにフロントサイドフレーム11が延出するフロントサイドフレーム遮蔽部材31に固定され、ダッシュボードパネル13の中央パネル32で挟まれたので、補強フレーム構造体(連結部材)14を、ダッシュボードパネル13内を貫通させることができる。この結果、ダッシュボードパネル13の効果的な補強を実現することができる。
【0047】
補強フレーム構造体(連結部材)14のホイールアーチ部25側は、下サイドパネル(ダッシュボードパネル下部)28により被覆されたので、連結部材とホイールアーチ部25との結合の相乗効果により、さらなるダッシュボードパネル13の剛性の向上を図ることができる。また、補強フレーム構造体(連結部材)14とサイドシル17との結合が容易となる。
【0048】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図4に示すように、補強フレーム構造体(連結部材)14は、クロスメンバ35及び左右のサイドシル補強フレーム37,37が一体的に形成され、左右のサイドシル補強フレーム37,37に左右のピラー補強フレーム38,38が溶接されたが、これに限るものではなく、クロスメンバ35及び左右のピラー補強フレームが一体的に形成され、左右のピラー補強フレームに左右のサイドシル補強フレームが溶接される形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る車体前部構造の斜視図である。
【図2】図1に示される車体前部構造の車室側からのダッシュボードパネル廻りの斜視図である。
【図3】図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの分解斜視図である。
【図4】ダッシュパネル後分割体を取り除いたダッシュボードパネルの斜視図である。
【図5】図1に示される車体前部構造の補強フレーム構造体を模式的に表した斜視図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】図9に示されたダッシュボードパネル廻りの溶接箇所を示す説明図である。
【図11】図1に示される車体前部構造のダッシュボードパネルの比較検討図である。
【符号の説明】
【0051】
10…車体前部構造、11…フロントサイドフレーム、11a…水平部後端、13…ダッシュボードパネル、14…連結部材(補強フレーム構造体)、17…サイドシル、17a…前部、21…エンジンルーム、22…車室、25…ホイールアーチ部、28…ダッシュボードパネル下部(下サイドパネル)、31…フロントサイドフレーム遮蔽部材、32…中央パネル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルと、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされるフロントサイドフレームと、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされるサイドシルとを備えた車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームの水平部後端と前記サイドシルの前部とを、前記ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともに前記フロントサイドフレームが延出する前記フロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、且つ前記ダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結部材のホイールアーチ部側は、ダッシュボードパネル下部により被覆されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項1】
エンジンルームと車室とを隔てるダッシュボードパネルと、このダッシュボードパネルから車体前方に延ばされるフロントサイドフレームと、ダッシュボードパネルから車体後方に延ばされるサイドシルとを備えた車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームの水平部後端と前記サイドシルの前部とを、前記ダッシュボードパネル内を貫通させて直線状に連結する連結部材を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記ダッシュボードパネルのホイールアーチ部の外周縁の一部に固定されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記ダッシュボードパネルのホイールアーチ部に連結するとともに前記フロントサイドフレームが延出する前記フロントサイドフレーム遮蔽部材に固定され、且つ前記ダッシュボードパネルの中央パネルで挟まれたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結部材のホイールアーチ部側は、ダッシュボードパネル下部により被覆されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−105532(P2010−105532A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279575(P2008−279575)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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