説明

車体前部構造

【課題】車両前端から後方側に向けて荷重が入力された場合に、バッテリを保護することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部1にラジエータサポートメンバ9を設け、該ラジエータサポートメンバ9の車両後方にバッテリ13を設けると共に、これらのラジエータサポートメンバ9およびバッテリ13の間にラジエータリキッドタンク15を介設し、前記ラジエータサポートメンバ9に後方への荷重が入力されてラジエータサポートメンバ9が後方移動したときに、前記ラジエータリキッドタンク15がラジエータサポートメンバ9とバッテリ13との間に挟持されることによって前記荷重を吸収するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。更に詳しくは、エンジンルームの前端部に配置したバッテリ近傍における配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンルーム前端に車幅方向に沿ってラジエータサポートメンバを橋渡し、該ラジエータサポートメンバにラジエータを取り付けている。また、バッテリをラジエータサポートメンバの近傍に配置する車体構造が公知である(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−269097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の車体前部構造では、ラジエータサポートメンバの後方側に近接してバッテリを配置しているため、車両前端から後方側に向けて荷重が入力された場合、ラジエータサポートメンバが後方移動して前記バッテリを破損させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、車両前端から後方側に向けて荷重が入力された場合に、バッテリの損傷を効率的に抑制することができる車体前部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる車体前部構造にあっては、車体前部に配設したラジエータサポートメンバと、該ラジエータサポートメンバから車両後方に所定間隔をおいて配置したバッテリと、これらのラジエータサポートメンバおよびバッテリの間に介設した液体収容体とを備え、前記ラジエータサポートメンバに後方への荷重が入力されてラジエータサポートメンバが後方移動したときに、前記液体収容体がラジエータサポートメンバとバッテリとの間に挟持されることによって前記荷重を吸収するように構成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる車体前部構造によれば、別途新たな部材を設けることなく、車両前部から荷重が入力された場合に、エンジンルーム内のバッテリの損傷を効率的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態にかかる車体前部の全体を示す平面図である。
【図2】図1の要部を拡大した平面図である。
【図3】車体前部の断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる車体前部を車両前方から見た正面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるラジエータリキッドタンクの近傍を斜め後方から見た斜視図である。
【図6】車体前端から後方に向けて荷重が入力した場合の、車体前端部の変形状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
図1は本発明の実施形態にかかる車体前部の全体を示す平面図、図2は図1の要部を拡大した平面図、図3は車体前部の断面図、および、図4は本発明の実施形態にかかる車体前部を車両前方から見た正面図である。
【0011】
図1に示すように、車体前部1にはエンジンルーム3が配設されている。該エンジンルーム3は、車幅方向に沿って延びるカウルトップ5と、前後方向に沿って延設された左右一対のサイドメンバ7と、車体前端に配設され、サイドメンバ7の前端部同士を車幅方向に連結するラジエータサポートメンバ9と、によって画成されている。また、エンジンルーム3における左側の後側角部には、ストラットタワー11が配設されており、前側角部には、バッテリ13およびラジエータリキッドタンク(液体収容体)15が配設されている。
【0012】
ラジエータサポートメンバ9は、図4に示すように、上側に配置され、車幅方向に沿って延びるラジエータサポートメンバアッパ(以下、「ラジコアアッパ」という)21と、下側に配置され、車幅方向に沿って延びるラジエータサポートメンバロア(以下、「ラジコアロア」という)23と、ラジエータサポートメンバサイド(以下、「ラジコアサイド」という)25とからなる。さらに、このラジコアサイド25は、上側に配置されたラジエータサポートメンバサイドアッパ(以下、「ラジコアサイドアッパ」という)27と、下側に配置されたラジエータサポートメンバサイドロア(以下、「ラジコアサイドロア」という)29とから構成される。従って、図4から明らかなように、ラジコアアッパ21の幅方向端部21aとサイドメンバ7の上面とをラジコアサイドアッパ27によって上下に連結し、ラジコアロア23の幅方向端部23aとサイドメンバ7の下面とをラジコアサイドロア29によって上下に連結している。このように、ラジエータサポートメンバ9は、車両前方から後方に向けて見た場合に略ロの字状に形成されている。また、ラジエータリキッドタンク15は、アッパタンク31とロアタンク33とに分かれている。
【0013】
図3,4に示すように、ラジコアアッパ21の幅方向端部21aおよびラジコアサイドアッパ27がラジエータリキッドタンク15の前側に配置され、ラジエータリキッドタンク15のアッパタンク31の後側にバッテリ13が配設されている。
【0014】
なお、図3に示すように、ラジコアアッパ21の幅方向端部21aは下側が開口した略コ字状に形成されており、ラジコアサイドアッパ27の上面にボルト締結されている。サイドメンバ7の前端には、バンパーステー35が車幅方向に沿って延設されている。
【0015】
そして、図2、5に示すように、アッパタンク31の上端の供給口にはキャップ37が配設され、アッパタンク31の前側上端部から前方に向けてプレート状の支持片39が突設されており、該支持片39の前端はボルト41を介してラジコアアッパ21に結合されている。また、図2に示すように、バッテリ13はバッテリトレイ53の上に載置されている。さらに、図3〜5に示すように、ラジコアサイドロア29の内側面43には、矩形状の係止孔45が穿設されており、該係止孔45に、ロアタンク33の外側面の下端に設けた係止片47が挿入および係止されている。この係止片47は、車幅方向外側に向けて延びると共に、その先端部47aが下方に向けて屈曲している。これによって、ラジエータリキッドタンク15に車幅方向内側への所定値以下の荷重が入力されても、係止片47の先端部47aがラジコアサイドロア29の内側面における係止孔45の周縁部に引っかかるため、ラジエータリキッドタンク15が外れて位置が大きく変化することはない。ただし、所定値を超える荷重が入力されると、後述するように、係止片47がラジコアサイドロア29に形成した係止孔45から外れるように構成されている。なお、図5に示すように、ラジエータ49はラジエータサポートメンバ9に保持されている。
【0016】
次いで、本発明の実施形態による車体前部に後方に向けて荷重が入力された場合における変形挙動を図3,6を用いて説明する。
【0017】
図6は、車体前端から後方に向けて荷重が入力した場合の、車体前端部の変形状態を示す断面図である。
【0018】
まず、荷重入力前は、図3に示すように、サイドメンバ7の前端にバンパーステー35が配設されているため、バンパーステー35に後方に向かう荷重が入力されたときには、サイドメンバ7に対して軸方向の圧縮荷重が伝達される。
【0019】
ここで、車両前端部では、サイドメンバ7に結合されているバンパーステー35、ラジコアアッパ21、およびフード51を比較すると、バンパーステー35よりも、ラジコアアッパ21やフード51の方が脆弱に形成されている。
【0020】
従って、図6に示すように、車両前端に後方へ向かう荷重が入力されると、脆弱なラジコアアッパ21やフード51がバンパーステー35に対して、より大きく後方に変形移動する。すると、ラジコアアッパ21およびこれに結合しているラジコアサイドアッパ27が後方に移動する。ラジコアサイドアッパ27は、サイドメンバ7の上面に接合されている下端部を中心として上部が車両後方に回動するような変形をする。よって、ラジコアアッパ21の幅方向端部21aおよびラジコアサイドアッパ27とバッテリ13によってラジエータリキッドタンク15を挟持して押し潰すことにより、衝突エネルギーが吸収され、バッテリ13に損傷を与えることがない。また、ラジエータリキッドタンク15の上端は支持片39がラジコアアッパ21にボルト締結されているのに対して、下端は係止片47がラジコアサイドロア29の係止孔45に挿入および係止されているため、図6のように、上端が確実に結合される一方、下端の係止片47は係止孔45から外れる。このように、ラジエータリキッドタンク15の上端がラジコアアッパ21に保持されるため、車両前端に荷重が入力された場合にも、ラジエータリキッドタンク15はラジエータサポートメンバ9とバッテリ13との間に確実に保持される。
【0021】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0022】
(1)車体前部1にラジエータサポートメンバ9を設け、該ラジエータサポートメンバ9の車両後方にバッテリ13を設けると共に、これらのラジエータサポートメンバ9およびバッテリ13の間にラジエータリキッドタンク(液体収容体)15を介設し、前記ラジエータサポートメンバ9に後方への荷重が入力されてラジエータサポートメンバ9が後方移動したときに、前記ラジエータリキッドタンク15がラジエータサポートメンバ9とバッテリ13との間に挟持されることによって前記荷重を吸収するように構成している。従って、別途新たな部材を設けることなく、車両前部から荷重が入力された場合に、エンジンルーム内のバッテリの損傷を効率的に抑制することができる。
【0023】
(2)前記ラジエータリキッドタンク15の上部を、前記ラジエータサポートメンバ9に固定する一方、ラジエータリキッドタンク15の下部を前記ラジエータサポートメンバ9に、所定値以上の荷重が入力されたときに外れるように係止している。従って、車両前部から荷重が入力された場合に、ラジエータリキッドタンク15がラジエータサポートメンバ9とバッテリ13との間に確実に保持される。即ち、車両前部から荷重が入力されると、ラジエータリキッドタンク15が取り付けられているラジエータサポートメンバ9が変形するため、このラジエータサポートメンバ9の変形に伴ってラジエータリキッドタンク15も移動しようとする。ここで、ラジエータリキッドタンク15の上部はラジエータサポートメンバ9に固定され、下部は所定値以上の荷重が入力されたときに外れるように係止している。よって、ラジエータリキッドタンク15の下部は外れ上部のみ固定されてラジエータサポートメンバ9に伴って移動することにより、ラジエータリキッドタンク15はラジエータサポートメンバ9とバッテリ13との間に確実に保持される。
【0024】
(3)前記ラジエータリキッドタンク15の下部を、ラジエータサポートメンバ9における車内側の側面に係止している。従って、ラジエータリキッドタンク15の車幅方向の取付位置がバラツクことなく、ほぼ同一の位置に配置される。
【符号の説明】
【0025】
1…車体前部
9…ラジエータサポートメンバ
13…バッテリ
15…ラジエータリキッドタンク(液体収容体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部にラジエータサポートメンバを設け、該ラジエータサポートメンバの車両後方にバッテリを設けると共に、これらのラジエータサポートメンバおよびバッテリの間に液体収容体を介設し、
前記ラジエータサポートメンバに後方への荷重が入力されてラジエータサポートメンバが後方移動したときに、前記液体収容体がラジエータサポートメンバとバッテリとの間に挟持されることによって前記荷重を吸収するように構成したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記液体収容体の上部を、前記ラジエータサポートメンバに固定する一方、液体収容体の下部を前記ラジエータサポートメンバに、所定値以上の荷重が入力されたときに外れるように係止したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記液体収容体の下部を、ラジエータサポートメンバにおける車内側の側面に係止したことを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188898(P2010−188898A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36211(P2009−36211)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】