説明

車体後方の下部構造

【課題】剛性の高いリヤサスペンションフレームを利用することにより、車両後方から荷重が掛かった時にスペアタイヤの後部を押し上げて車両前方への回動を促進し、車両前方への変位を抑制するとともに、燃料タンク方向への荷重を低減することが可能な車体後方の下部構造を提供することにある。
【解決手段】本発明は、燃料タンク1の後方で、かつスペアタイヤ2の前方に配置されるリヤサスペンションフレーム4を備え、車両後方からの荷重によりスペアタイヤ2の後部2aが跳ね上がる機構を有している車体後方の下部構造において、スペアタイヤ2の前部2bの上下方向中心Cは、リヤサスペンションフレーム4のリヤフレーム12の上下幅の延長線上に重なって配置され、車両後方からの荷重によりスペアタイヤ2が車両前方に移動したとき、スペアタイヤ2がリヤフレーム12に接触し、スペアタイヤ2の後部2aがリヤフレーム12側を中心に押し上げられて縦方向に回動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後方の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体後方の下部には、燃料タンクが配置されているとともに、車体後部には、横置きに配置したスペアタイヤを収納するためのスペアタイヤハウスが設けられている。このような従来の自動車では、車両後方からの荷重による燃料漏れ規制法規に対応するため、車両前方へ変位するスペアタイヤの前方箇所に燃料タンクやキャニスタータンクを配置することは困難であり、レイアウト上の自由度が制限されていた。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に開示されたスペアタイヤ収納構造では、リヤフロア等の形状などに工夫を施すとともに、別部材を設けることにより、車両後方から荷重が掛かった場合に、スペアタイヤの後部が押し上げられ、車両前方へ向かって反時計回りに回動するように構成し、スペアタイヤが車両前方へ向かって水平方向に押し出されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−193046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の収納構造は、リヤフロア等の形状に工夫を施し、別部材を設ける必要があるので、車両後方から荷重が掛かった時に、スペアタイヤを車両前方へ変位させないように調整するのが難しい上に、部品点数の増加によりコスト高を招くという問題があった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、剛性の高いリヤサスペンションフレームを利用することにより、車両後方から荷重が掛かった時にスペアタイヤの後部を押し上げて車両前方への回動を促進し、車両前方への変位を抑制するとともに、燃料タンク方向への荷重を低減することが可能な車体後方の下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、燃料タンクの後方で、かつスペアタイヤの前方に配置されるリヤサスペンションフレームを備え、車両後方からの荷重によりスペアタイヤの後部が跳ね上がる機構を有している車体後方の下部構造において、前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤサスペンションフレームの車幅方向フレームの上下幅の延長線上に重なって配置され、車両後方からの荷重により前記スペアタイヤが車両前方に移動したとき、前記スペアタイヤが前記リヤサスペンションフレームに直接的または間接的に接触し、前記スペアタイヤの後部が前記リヤサスペンションフレーム側を中心に押し上げられて縦方向に回動するように構成されている。
【0008】
また、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向の中央部が車両前方へ向かって凸形状となるように湾曲して形成されている。
さらに、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在するフロントフレーム及びリヤフレームを備え、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの下部には、車幅方向に延びる補強部材が設けられている。
【0009】
そして、本発明において、前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤフレームの上下方向中心よりも上方に位置している。
また、本発明において、前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤフレームと前記補強部材とを合わせた幅の上下方向中心よりも上方に位置している。
さらに、本発明において、前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置されている。
【0010】
そして、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在する車両前方のフロントフレーム及び車両後方のリヤフレームと、車両前後方向に延在して前記フロントフレームと前記リヤフレームとを連結する左右両側のブレースとから構成され、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置され、または前記フロントフレームもしくは前記ブレースより下方に配置されている。
また、本発明において、前記ブレースは、上方へ向かって凸形状に湾曲して形成されている。
【0011】
さらに、本発明において、前記スペアタイヤ側に臨む前記リヤフレームの後面には、平面部が設けられている。
また、本発明において、前記リヤフレームの下部には、当該リヤフレームの平面部と対応した平面部を有する補強部材が設けられ、前記リヤフレームの平面部と前記補強部材の平面部とは面一に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明に係る車体後方の下部構造は、燃料タンクの後方で、かつスペアタイヤの前方に配置されるリヤサスペンションフレームを備え、車両後方からの荷重によりスペアタイヤの後部が跳ね上がる機構を有しているものであって、前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤサスペンションフレームの車幅方向フレームの上下幅の延長線上に重なって配置され、車両後方からの荷重により前記スペアタイヤが車両前方に移動したとき、前記スペアタイヤが前記リヤサスペンションフレームに直接的または間接的に接触し、前記スペアタイヤの後部が前記リヤサスペンションフレーム側を中心に押し上げられて縦方向に回動するように構成されているので、車両後方から荷重が車体後部に掛かった場合、剛性の高いリヤサスペンションフレームによりスペアタイヤやスペアタイヤハウスの車両前方への変位を抑制できるとともに、スペアタイヤの後部を押し上げて車両前方への縦方向の回動を促進することができる。
【0013】
したがって、本発明の下部構造によれば、車体後部に対して車両後方から荷重が加わった際に、スペアタイヤやスペアタイヤハウスが車両前方へ移動しようとしてもリヤサスペンションフレームによって移動が阻止されることになり、燃料タンクやキャニスタータンクの損傷を防ぎ、車両後方からの荷重による燃料漏れ規制法規に対応することが容易になる。具体的には、スペアタイヤなどの挙動を制御するためのフロア構造が不要になる上、燃料タンクやキャニスタータンクのレイアウト位置を車両後方からの荷重が掛かった時のスペアタイヤとリヤサスペンションフレームとが接触する車両前方位置とすることが可能になり、レイアウトの自由度を増大させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向の中央部が車両前方へ向かって凸形状となるように湾曲して形成されているので、車両後方からの荷重によるオフセット荷重でもスペアタイヤがリヤサスペンションフレームの凸形状部に当接し、リヤサスペンションフレームが回動中心として機能することになり、スペアタイヤの後部の跳ね上げる効果を発揮させることができる。しかも、上下方向でスペアタイヤとオーバラップさせるレイアウト条件においては、車両前後方向でスペアタイヤ収納位置にリヤサスペンションフレームを重ねて取付けることが可能となるので、ホイールベースを容易に長く取ることができ、デザインの自由度が増す。
さらに、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在するフロントフレーム及びリヤフレームを備え、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの下部には、車幅方向に延びる補強部材が設けられているので、当該リヤフレームがスペアタイヤの回動中心として機能することになり、スペアタイヤの後部における跳ね上げ効果を促進することができる。
【0015】
また、本発明において、前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤフレームの上下方向中心よりも上方に位置し、あるいは、前記リヤフレームと前記補強部材とを合わせた幅の上下方向中心よりも上方に位置しているので、当該リヤフレームがスペアタイヤの回動中心として機能することになり、スペアタイヤの後部における跳ね上げ効果をより一層促進することができる。
しかも、本発明において、前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置されているので、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤがリヤフレームを押圧した時、車体懸架位置が上方にあると、押圧された箇所が下方に下がりながら変形してタイヤ跳ね上げ効果を促進できる。
【0016】
さらに、本発明において、前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在する車両前方のフロントフレーム及び車両後方のリヤフレームと、車両前後方向に延在して前記フロントフレームと前記リヤフレームとを連結する左右両側のブレースとから構成され、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置され、または前記フロントフレームもしくは前記ブレースより下方に配置されているので、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤがリヤフレームを押圧した時、押圧された箇所が下方に下がりながら変形してタイヤ跳ね上げ効果をより一層促進できる。
しかも、本発明において、前記ブレースは、上方へ向かって凸形状に湾曲して形成されているので、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤがリヤフレームを押圧した時、押圧された箇所が下方に下がりながら変形してタイヤ跳ね上げ効果を更により一層促進できる。
【0017】
また、本発明において、前記スペアタイヤ側に臨む前記リヤフレームの後面には、平面部が設けられ、さらに、前記リヤフレームの下部には、当該リヤフレームの平面部と対応した平面部を有する補強部材が設けられ、前記リヤフレームの平面部と前記補強部材の平面部とは面一に配置されているので、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤハウスの前部とリヤフレーム及び補強部材の後部とが接触した時、スペアタイヤハウスを平面部でしっかりと受け止めて回動中心を維持することができ、タイヤ跳ね上げ効果を更により一層促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車体後方の下部構造を示すものであり、車体に取付ける前の状態にあるリヤサスペンションフレームの斜視図である。
【図2】図1におけるリヤサスペンションフレームを拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の下部構造が適用された車体後部において、リヤサスペンションフレームとスペアタイヤとの配置関係を示す側面図である。
【図4】図3におけるX部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の下部構造が適用された車体後部において、車両後方からの荷重時に、スペアタイヤ及びスペアタイヤハウスとリヤサスペンションフレームとが当接した状態を示す側面図である。
【図6】図5の状態からスペアタイヤの後部がリヤサスペンションフレーム側を中心に押し上げられて縦方向に回動した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態に係る車体後方の下部構造を示すものである。
【0020】
本発明の実施形態に係る自動車の車体後方の下部には、図1、図3及び図4に示すように、燃料タンク1が配置されているとともに、車体後部には、横置きに配置したスペアタイヤ2を収納するための収納凹部たるスペアタイヤハウス3が設けられている。そして、燃料タンク1の後方位置で、かつスペアタイヤ2及びスペアタイヤハウス3の前方位置には、リヤサスペンションフレーム4が配設されている。このリヤサスペンションフレーム4は、車体5と車輪6との間に取付けられ、路面からの衝撃や振動を緩和するためのリヤサスペンション装置を構成するものであり、搭載したスペアタイヤ2の設置高さに合わせて配置されている。なお、図において矢印A方向は、車両前方を示している。
【0021】
また、本実施形態に係る車体後方の下部構造では、車両後方からの荷重によりスペアタイヤ2の後部2aが跳ね上がる機構を有している。そのため、スペアタイヤ2をスペアタイヤハウス3に横置きに収納配置した状態では、後部2aが前部2bより上方に位置し、スペアタイヤ2が前倒された状態で傾斜配置されている。
しかも、スペアタイヤ2の前部2bの上下方向中心Cは、リヤサスペンションフレーム4の車幅方向フレーム(後述するリヤフレーム)の上下幅の延長線上に重なって配置されており、車両後方からの荷重によりスペアタイヤ2が車両前方に移動したとき、スペアタイヤ2がリヤサスペンションフレーム4に直接的(またはスペアタイヤハウス3を介して間接的)に接触し、スペアタイヤ2の後部2aがリヤサスペンションフレーム4側を中心に押し上げられて縦方向に回動するように構成されている。
【0022】
本実施形態のリヤサスペンションフレーム4は、図1〜図4に示すように、車幅方向(矢印B方向)に延在する車両前方のフロントフレーム11及び車両後方のリヤフレーム12と、車両前後方向に延在してフロントフレーム11とリヤフレーム12とを連結する左右両側のブレース13,14とから構成されており、フロントフレーム11及びリヤフレーム12は、パイプ材を用いて屈曲形成されている。そして、スペアタイヤ2もしくはスペアタイヤハウス3からの荷重が掛かるリヤフレーム12の上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置15よりも下方に配置されている。あるいは、リヤフレーム12の上下方向中心は、フロントフレーム11もしくはブレース13,14よりも下方に配置されている。
ブレース13,14は、上方へ向かって凸形状に湾曲して形成されており、これにより、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤ2がリヤフレーム12を押圧した時、押圧された箇所が下方に下がりながら変形するようになっている。
【0023】
リヤサスペンションフレーム4のうち、リヤフレーム12は、車幅方向(矢印B方向)の中央部が車両前方(矢印A方向)へ向かって凸形状となるように湾曲して形成されている。これにより、車両後方からの荷重を受けて車両前方へ移動するスペアタイヤ2もしくはスペアタイヤハウス3が、リヤフレーム12の中央部の凸形状部分に当接するように構成されている。さらに、車両後方からのオフセット荷重でも、スペアタイヤ2がリヤサスペンションフレーム4の凸形状部分に当接し、リヤサスペンションフレーム4の形状に沿って荷重が加えられるので、リヤサスペンションフレーム4が回動中心として機能するように構成されている。
【0024】
また、リヤフレーム12の下部には、当該リヤフレーム12を補強するための第1補強部材16及び第2補強部材17が設けられている。これら補強部材16,17は、車幅方向に沿って延在して取付けられており、第2補強部材17は、第1補強部材16の左右両側にそれぞれ配置されている。しかも、オフセット荷重を受けた場合にはリヤサスペンションフレーム4の中心から偏位した荷重が掛かり、第2補強部材17に大きな荷重が作用することになるため、第2補強部材17は、第1補強部材16よりも高い剛性を有している。
スペアタイヤ2の前部2bの上下方向中心Cは、リヤフレーム12と第1補強部材16とを合わせた幅の上下方向中心よりも上方に位置しており、リヤフレーム12がスペアタイヤ2の回動中心として機能するように構成されている。なお、第1補強部材16が設けられない場合には、スペアタイヤ2の前部2bの上下方向中心Cは、リヤフレーム12の上下方向中心よりも上方に位置している。
【0025】
さらに、スペアタイヤ2側に臨むリヤフレーム12の後面には、図4に示すように、パイプ材を潰して形成した平面部12aが設けられている。また、リヤフレーム12の下部に設けられる第1補強部材16は、リヤフレーム12の平面部12aと対応した平面部16aを有しており、スペアタイヤ2側に臨む後面側において、リヤフレーム12の平面部12aと第1補強部材16の平面部16aとは、上下方向で面一に配置されている。これらリヤフレーム12及び第1補強部材16の平面部12a,16aは、車両後方からの荷重に伴ってスペアタイヤハウス3の前部とリヤフレーム12及び第1補強部材16の後部とが接触した時、スペアタイヤハウス3を受け止める箇所であり、スペアタイヤ2の回動中心を維持する機能を有している。なお、第2補強部材17のスペアタイヤ2側に臨む後面側は、スペアタイヤハウス3を受け止めることが可能なように、下方へ延在する平面部17aとなっている。
【0026】
本発明の実施形態に係る車体後方の下部構造が適用された自動車において、図5に示すように、車両後方から車両前方へ向かって荷重Fが車体5の後部に入力された場合、当該荷重Fは車体5などを介してスペアタイヤハウス3の後部に伝わる。これに伴い、スペアタイヤハウス3が変形しながらスペアタイヤ2と一緒に車両前方へ押圧されて移動し、リヤサスペンションフレーム4のリヤフレーム12及び第1補強部材16の平面部12a,16aもしくは第2補強部材17の平面部17aに当接して停止する。
その後、図6に示すように、荷重Fによってスペアタイヤハウス3が更に変形すると、前倒しに傾斜配置されたスペアタイヤ2の後部2aがリヤフレーム12側の前部2bを中心に、矢印Rで示すように跳ね上げられて、車両前方へ向かって縦方向に回動することになる。
【0027】
このように、本発明の実施形態に係る車体後方の下部構造においては、スペアタイヤ2の前部2bの上下方向中心Cが、リヤサスペンションフレーム4のリヤフレーム12の上下幅の延長線上に重なって配置され、車両後方からの荷重Fによりスペアタイヤハウス3及びスペアタイヤ2が車両前方に移動したとき、スペアタイヤハウス3及びスペアタイヤ2がリヤフレーム12の平面部12a及び第1補強部材16の平面部16aもしくは第2補強部材17の平面部17aに当接し、スペアタイヤ2の後部2aがリヤフレーム12側を中心に跳ね上げられて縦方向に回動するため、車両後方から荷重Fが車体後部に掛かった場合、剛性の高いリヤサスペンションフレーム4を利用することが可能となり、リヤフレーム12及び補強部材16,17により車両前方への移動を効果的に阻止することができる。これにより、リヤサスペンションフレーム4の車両前方に位置する燃料タンク1などの損傷を防止でき、車両後方からの荷重による燃料漏れ規制法規に容易に対応することができる。また、スペアタイヤ2及びスペアタイヤハウス3の挙動を制御するためのフロア構造を設ける必要がなくなり、簡単な構造で燃料タンク1などのレイアウトの自由度を増大させることができる。
また、本実施形態の下部構造では、リヤフレーム12の車幅方向の中央部が車両前方へ向かって凸形状となるように湾曲して形成されているため、車両後方からのオフセット荷重や斜め上方からの荷重に対しても、スペアタイヤ2及びスペアタイヤハウス3の車両前方への移動を阻止することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施形態では、補強部材16,17が別体であるが、一体成形された1つの補強部材でも、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0029】
1 燃料タンク
2 スペアタイヤ
2a スペアタイヤの後部
2b スペアタイヤの前部
3 スペアタイヤハウス
4 リヤサスペンションフレーム
5 車体
11 フロントフレーム
12 リヤフレーム
12a 平面部
13,14 ブレース
15 車体懸架位置
16,17 補強部材
16a,17a 平面部
C スペアタイヤの前部の上下方向中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの後方で、かつスペアタイヤの前方に配置されるリヤサスペンションフレームを備え、車両後方からの荷重によりスペアタイヤの後部が跳ね上がる機構を有している車体後方の下部構造において、
前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤサスペンションフレームの車幅方向フレームの上下幅の延長線上に重なって配置され、車両後方からの荷重により前記スペアタイヤが車両前方に移動したとき、前記スペアタイヤが前記リヤサスペンションフレームに直接的または間接的に接触し、前記スペアタイヤの後部が前記リヤサスペンションフレーム側を中心に押し上げられて縦方向に回動するように構成されていることを特徴とする車体後方の下部構造。
【請求項2】
前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向の中央部が車両前方へ向かって凸形状となるように湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後方の下部構造。
【請求項3】
前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在するフロントフレーム及びリヤフレームを備え、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの下部には、車幅方向に延びる補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体後方の下部構造。
【請求項4】
前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤフレームの上下方向中心よりも上方に位置していることを特徴とする請求項3に記載の車体後方の下部構造。
【請求項5】
前記スペアタイヤの前部の上下方向中心は、前記リヤフレームと前記補強部材とを合わせた幅の上下方向中心よりも上方に位置していることを特徴とする請求項3に記載の車体後部のリヤフロア構造。
【請求項6】
前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の車体後方の下部構造。
【請求項7】
前記リヤサスペンションフレームは、車幅方向に延在する車両前方のフロントフレーム及び車両後方のリヤフレームと、車両前後方向に延在して前記フロントフレームと前記リヤフレームとを連結する左右両側のブレースとから構成され、前記スペアタイヤもしくはスペアタイヤハウスからの荷重が掛かる前記リヤフレームの上下方向中心は、当該リヤフレームの車体懸架位置より下方に配置され、または前記フロントフレームもしくは前記ブレースより下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後方の下部構造。
【請求項8】
前記ブレースは、上方へ向かって凸形状に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項7に記載の車体後方の下部構造。
【請求項9】
前記スペアタイヤ側に臨む前記リヤフレームの後面には、平面部が設けられていることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の車体後方の下部構造。
【請求項10】
前記リヤフレームの下部には、当該リヤフレームの平面部と対応した平面部を有する補強部材が設けられ、前記リヤフレームの平面部と前記補強部材の平面部とは面一に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の車体後方の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241158(P2010−241158A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88931(P2009−88931)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】