説明

車体後部の下部構造

【課題】主にパネル部材を用いた支持構造により、部品取付レイアウト自由度を高くし、部品取付け作業を容易にし、車両重量を低減し、振動及び騒音の発生を防止し、かつ高剛性の構造によって部品を支持可能な車体後部の下部構造を提供する。
【解決手段】リヤフロア2の後縁を、その車幅方向中央を下方に突出させてハット形状に屈曲形成し、リヤフロアの後縁に垂直方向に延びる接合用フランジ2fを設け、車幅方向に延びるバックパネル4を設け、接合用フランジとバックパネルとを重ね合わせて配置し、バックパネルの下縁の車幅方向中央が、リヤフロアの後縁の屈曲部2b,2c,2d,2eに対応した湾曲部4b,4c,4d,4eを有するように下方に突出形成され、部品取付用の取付ブラケット6が、バックパネルの背面4aに取付けられ、かつリヤフロアの屈曲部の接合用フランジとバックパネルの湾曲部との重ね合わせ部分11にて3枚重ね接合されている、車体後部1の下部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部に配置される部品を取付け可能に構成される車体後部の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行する際、車体後部に配置される部品に、車両の加速、減速、旋回、ギャップ等による上下左右前後の動きが発生して、荷重が作用することがある。この荷重によって、車体後部の部品が主に上下方向に振動する場合がある。特に、マフラーのような大型部品には、その大きな重量のために大きな荷重が加わる。当該荷重が大きい場合には、車体後部の部品が衝撃を受けるおそれもある。特に、上述のようにマフラーのような大型部品には、その大きな重量のためにより大きな荷重が加わるので、より大きな衝撃を受けるおそれがある。このような衝撃によって部品の支持構造に応力が集中すると、部品の支持構造が変形することに伴って、部品同士の干渉が発生し、ビビリ音等の問題が発生するおそれがある。
【0003】
一方で、当該マフラーが車両走行時に低周波数の領域にて大きく振動することがある。また、マフラーの内部、及びマフラーに設けられる排気管の内部ではガス流波動が発生するので、このガス流波動によってマフラーが中高周波数の領域にて上下方向及び車幅方向のそれぞれに大きく振動することがある。このような部品の振動により発生する騒音は車室内に伝播し易く、好ましくない。
【0004】
そのため、一般的に、車体後部の部品は高い剛性を有する部材によって支持されている。特にマフラーは、一般的に厚板から構成されることにより高い剛性を有するリヤサイドメンバによって支持されている。このようなリヤサイドメンバを用いた支持構造として、例えば、特許文献1に開示される車体後部の下部構造では、マフラーを支持するために、マフラーの後部から車両後方に向かって延びる排気管が吊り金具によって吊るされ、この吊り金具が、リング状のハンガーゴムを介して、排気管の上方に位置するリヤサイドフレーム等の車体フレームに溶接されたフック部材に吊るされている。
【0005】
また、特許文献2に開示される車体後部の下部構造では、マフラーを支持するために、マフラーの後部から車両後方に向かって延びる支持部材が設けられ、リヤサイドフレームと、リヤフロアに下方に凹んで形成されるスペアタイヤハウスとの間で車幅方向に延在する取付ブラケットが設けられている。支持部材は取付ブラケットの下面に溶接されており、さらに、取付ブラケットの上端はリヤフロアに溶接され、取付ブラケットの後端はバックパネルに溶接され、取付ブラケットの車幅方向の両端は、それぞれリヤサイドフレームとスペアタイヤハウスとに溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−15404号公報
【特許文献2】特開2000−255456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の車体後部の下部構造では、マフラーの支持構造を車体フレームの近傍に配置する必要があるので、マフラーの取付けに関するレイアウト自由度が低くなってしまう。
【0008】
また、特許文献2の車体後部の下部構造では、マフラーを取付けるための取付ブラケットを、リヤフロア、バックパネル、リヤサイドフレーム、及びスペアタイヤハウスのように多くの部材と溶接する必要があるので、溶接作業が煩雑となる。また、当該取付ブラケットは、スペアタイヤハウスとリヤサイドフレームとの間で延在する大型部品となっており、車両重量が増加し、問題となる。
【0009】
そこで、特に上述の部品取付けに関するレイアウト自由度等を考慮して、このような車体後部の部品を、車幅方向に長く延びるバックパネル等のようなパネル部材により主に支持しようとした場合、バックパネルの剛性は低いので、当該部品に荷重が加わることによって、当該部品とともにバックパネルが大きく振動して、大きな騒音が発生することとなり、さらにバックパネルは衝撃を受けると容易に変形してしまうという問題があった。そのため、従来の車体後部の構造では、主にバックパネルによって車体後部の部品を支持する構成は採用されていなかった。
【0010】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、主にパネル部材を用いた支持構造によって、車体後部の部品の取付けに関するレイアウト自由度を高くし、部品の取付け作業を容易にし、車両重量を低減し、振動及び騒音の発生を防止し、かつ剛性の高い構造によって部品を支持することのできる車体後部の下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために、本発明の車体後部の下部構造は、車両のリヤフロアの後縁を、その車幅方向中央を下方に突出させるようにハット形状に屈曲形成し、前記リヤフロアの後縁に垂直方向に延びる接合用フランジを設け、車幅方向に延びるバックパネルを設け、前記リヤフロアの接合用フランジと前記バックパネルとを重ね合わせて配置し、車体後部に配置される部品を取付け可能に構成されている。当該車体後部の下部構造にて、前記バックパネルの下縁の車幅方向中央が、前記リヤフロア後縁の屈曲部に対応した湾曲部を有するように下方に突出形成され、前記部品を取付けるための取付ブラケットが、前記バックパネルの背面に配置され、かつ前記リヤフロアの屈曲部に設けられる前記接合用フランジと前記バックパネルの湾曲部との重ね合わせ部分にて重ね接合されている。
【0012】
本発明の車体後部の下部構造では、前記取付ブラケット上を通る前記バックパネルの湾曲部の法線に対して両側に配置される前記重ね合せ部分のそれぞれにて、前記取付ブラケットと、前記バックパネルと、前記リヤフロアとが重ね接合されている。
【0013】
本発明の車体後部の下部構造では、前記部品が車両用マフラーであり、前記車両用マフラーを支持するマフラーハンガー組立体を構成するとともに前記取付ブラケットに取付けられるステイの一部が、前記法線に沿って延びるように形成されている。
【0014】
本発明の車体後部の下部構造では、前記バックパネル上に配置される前記ステイの一部から前記法線に沿って延びるビードが、前記バックパネルに形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の車体後部の下部構造は、車両のリヤフロアの後縁を、その車幅方向中央を下方に突出させるようにハット形状に屈曲形成し、前記リヤフロアの後縁に垂直方向に延びる接合用フランジを設け、車幅方向に延びるバックパネルを設け、前記リヤフロアの接合用フランジと前記バックパネルとを重ね合わせて配置し、車体後部に配置される部品を取付け可能に構成されている。当該車体後部の下部構造にて、前記バックパネルの下縁の車幅方向中央が、前記リヤフロア後縁の屈曲部に対応した湾曲部を有するように下方に突出形成され、前記部品を取付けるための取付ブラケットが、前記バックパネルの背面に配置され、かつ前記リヤフロアの屈曲部に設けられる前記接合用フランジと前記バックパネルの湾曲部との重ね合わせ部分にて3枚重ね接合されている。
そのため、前記バックパネル及び前記リヤフロアの接合用フランジとの重ね合わせ部分にて、前記車体後部の部品を取付けるための前記取付ブラケットが3枚重ね接合され、さらに、前記取付ブラケットを配置する前記バックパネルの湾曲部は、湾曲により周囲より剛性が高められ、剛性が高くなった前記リヤフロア後縁の屈曲部に対応して配置されているので、前記取付ブラケットの取付け剛性が向上することとなる。従って、振動及び騒音の発生を防止し、かつ剛性の高い構造によって前記部品を支持することができる。さらに、車幅方向に長く延びる前記バックパネルに前記取付ブラケットを取付けることができるので、前記部品の取付けに関するレイアウト自由度を高くすることができる。前記バックパネルの湾曲部及び前記リヤフロアの屈曲部の接合用フランジとともに重ねて配置される前記取付ブラケットを3枚重ね接合すればよいので、従来と比較して接合箇所を少なくでき、前記部品の取付作業を容易にすることができる。前記バックパネルの湾曲部の限られた範囲に配置される前記取付ブラケットは小さいので、従来と比較して車両重量を低減させることができる。
よって、主にバックパネルを用いた支持構造によって、前記車体後部の部品の取付けに関するレイアウト自由度を高くし、前記部品の取付け作業を容易にし、車両重量を低減し、振動及び騒音の発生を防止し、かつ剛性の高い構造によって前記部品を支持することができる。
【0016】
本発明の車体後部の下部構造では、前記取付ブラケット上を通る前記バックパネルの湾曲部の法線に対して両側に配置される前記重ね合せ部分のそれぞれにて、前記取付ブラケットと、前記バックパネルと、前記リヤフロアとが3枚重ね接合されているので、上下方向の成分及び車幅方向の成分を含むように斜め方向に延びる前記法線に対して両側に、接合部が配置されることとなる。そのため、特に斜め方向への取付剛性を向上することができるので、前記部品の上下左右前後の揺動に伴う荷重により発生する低周波数の領域の振動に対して、前記取付ブラケットの取付け剛性を向上させることができ、さらに前記部品が車両用マフラーである場合には、ガス流波動によって上下方向及び車幅方向のそれぞれに発生する中高周波数の領域の振動に対して、前記取付ブラケットの取付け剛性を向上させることができる。
【0017】
本発明の車体後部の下部構造では、前記部品が車両用マフラーであり、前記車両用マフラーを支持するマフラーハンガー組立体を構成するとともに前記取付ブラケットに取付けられるステイの一部が、前記法線に沿って延びるように形成されているので、前記取付ブラケットには前記法線の方向から荷重が加えられることとなり、当該荷重により発生する応力が効率的に前記法線の両側の接合部にそれぞれ分散して、さらに前記取付ブラケットの取付け剛性を向上させることができる。
【0018】
本発明の車体後部の下部構造では、前記バックパネル上に配置される前記ステイの一部から前記法線に沿って延びるビードが、前記バックパネルに形成されているので、前記法線方向から加えられる荷重に対する前記バックパネルの剛性が向上して、当該荷重により発生する応力が低減して、さらに前記取付ブラケットの取付け剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における車体後部の下部構造を適用した車体後部の外観を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における車体後部の下部構造を、車両前方側の斜め上方から見た概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における車体後部の下部構造を、車両背面側の斜め下方から見た概略斜視図である。
【図4】本発明の実施形態にて、車体後部の下部構造におけるマフラー周辺を、車両前方側の斜め下方から見た概略斜視図である。
【図5】本発明の実施形態にて、車体後部の下部構造における取付ブラケット周辺を部分的に示す背面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】本発明の実施形態の第1変形例にて、車体後部の下部構造における取付ブラケット周辺を部分的に示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係る車体後部1の下部構造を説明する。
図1〜図5を参照して、車体後部1の主な構造を説明する。車体後部1には、水平方向に広がるリヤフロア2が設けられている。リヤフロア2の車幅方向両端は、前後方向に延びる車幅方向左右一対のリヤサイドメンバ3に取付けられている。また、車体後部1には、リヤフロア2の後縁に当接するとともに車幅方向に延びるバックパネル4が設けられている。さらに、車体後部1の部品であるマフラー5を取付けるための構成として、取付ブラケット6と、マフラー5を吊るすための第1のマフラーハンガー組立体7を構成するパイプ状のステイ8とが設けられている。取付ブラケット6はバックパネル4の背面4aに配置されており、当該取付ブラケット6にステイ8が取付けられている。ステイ8の一端部8aは、バックパネル4の背面4aにて直線状に延びるように形成されている。その一方で、ステイ8の他端部8bは、バックパネル4の下方にて前方に突出するように形成されている。
【0021】
図2〜図4及び図6を参照して、リヤフロア2の構成について説明する。リヤフロア2には、下方に凹んで形成されたスペアタイヤハウス2aが設けられている。スペアタイヤハウス2aは、リヤフロア2の車幅方向中央に配置され、かつリヤフロア2の後縁で開口している。そのため、リヤフロア2の後縁は、その車幅方向中央を下方に突出させるようにハット形状に屈曲して形成されている。このようなリヤフロア2の後縁には、スペアタイヤハウス2aの上端側に位置する上側屈曲部2b,2cと、スペアタイヤハウス2aの底側に位置する下側屈曲部2d,2eとが形成されることとなる。リヤフロア2の後縁には、垂直方向に延びる接合用フランジ2fが設けられている(図6参照)。なお、本実施形態における接合用フランジ2fは上方に向かって延びているが、これに限定されず、接合用フランジ2fは下方に向かって延びていてもよい。この接合用フランジ2fが、バックパネル4と重ね合わされるように配置されている。
【0022】
図2、図3及び図5を参照して、バックパネル4の構成について説明する。バックパネル4の下部の車幅方向中央は、下方に突出して形成されており、バックパネル4の下部には、リヤフロア2の上側屈曲部2b,2cに対応して、上方かつ車幅方向の車体中央に向かって凹むように湾曲した上側湾曲部4b,4cと、リヤフロア2の下側屈曲部2d,2eに対応して、下方かつ車幅方向の車体端部に向かって突出するように湾曲した下側湾曲部4d,4eとが設けられている。また、バックパネル4には、その背面4aにて凹むように形成されたビード4fが設けられており、当該ビード4fは、ステイ8の一端部8aから、当該一端部8aの延在方向に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態ではビード4fはバックパネル4の背面4aにて凹むように形成されているが、これに限定されず、ビード4fはバックパネル4の背面4aにて突出するように形成されていてもよい。
【0023】
図3〜図5を参照して、マフラー5の構成、及び当該マフラー5を支持するための構成について説明する。マフラー5には、前後方向に延びるように筒状に形成されたサイレンサー5aが設けられている。サイレンサー5aの後部には、後方に突出するエンドパイプ5bが設けられている。また、サイレンサー5aの前部には、前方に延びるセンターパイプ5cが設けられている。このようなマフラー5が、スペアタイヤハウス2aとリヤサイドメンバ3との間に配置されている。
【0024】
サイレンサー5aには、第1のマフラーハンガー組立体7を構成するマフラー支持部材9が取付けられている。詳細には、マフラー支持部材9の一端部9aが、サイレンサー5aのスペアタイヤハウス2a側の側面に沿って形成されるとともに当該側面に取付けられている。その一方で、マフラー支持部材9の他端部9bは、後方に突出するように形成されている。このマフラー支持部材9の下端部9bは、上述したステイ8の他端部8bとともに、第1のマフラーハンガー組立体7を構成する環状のハンガーゴム10にて前後方向に穿設された2つの貫通孔10a,10bにそれぞれ取付けられている。さらに、ステイ8の一端部8aは、バックパネル4の下側湾曲部4dの法線Nに沿って配置されており、かつ取付ブラケット6に取付けられている。この下側湾曲部4dの法線Nは、取付ブラケット6を通り、かつ下側湾曲部4dの湾曲した輪郭と連結するバックパネル4の直線状の辺(図5にて仮想線により示す)同士の交点を通るように延びている。このようなステイ8の一端部8aを取付けた取付ブラケット6は、リヤフロア2の一方の下側屈曲部2dに設けられる接合用フランジ2fと、バックパネル4の一方の下側湾曲部4dとの重ね合わせ部分11に対応して配置されている。なお、ステイ8の他端部8b及びマフラー支持部材9の下端部9bもまた、法線Nに沿って配置されている。
【0025】
このようなリヤフロア2の接合用フランジ2f、バックパネル4、及び取付ブラケット6の接合について、図5及び図6を参照して説明する。リヤフロア2の一方の下側屈曲部2dに設けられる接合用フランジ2fと、バックパネル4の一方の下側湾曲部4dと、取付ブラケット6とは、重ね合せ部分11に配置される第1の3枚重ね接合箇所12a、第2の3枚重ね接合箇所12b、第3の3枚重ね接合箇所12c、及び第4の3枚重ね接合箇所12dにて3枚重ね溶接されている。第1の3枚重ね接合箇所12a及び第2の3枚重ね接合箇所12bは法線Nに対して一方側に配置され、第3の3枚重ね接合箇所12c及び第4の3枚重ね接合箇所12dは法線Nに対して他方側に配置されている。なお、本実施形態は、法線Nに対して両側にそれぞれ2つの3枚重ね接合箇所を設けているが、これに限定されない。ステイ9から加えられる荷重により発生する応力が、法線Nに対して一方側の3枚重ね接合部と、法線Nに対して他方側の3枚重ね接合部とのそれぞれに分散可能であれば、法線Nに対して両側にそれぞれ少なくとも1つの3枚重ね接合箇所が設けられていればよい。
【0026】
また、バックパネル4の一方の下側湾曲部4dと、取付ブラケット6とは、第1の2枚重ね接合箇所13a、第2の2枚重ね接合箇所13b、第3の2枚重ね接合箇所13c、及び第4の2枚重ね接合箇所13dにて2枚重ね溶接されている。第1の2枚重ね接合箇所13a及び第2の2枚重ね接合箇所13bは法線Nに対して一方側に配置され、第3の2枚重ね接合箇所13c及び第4の2枚重ね接合箇所13dは法線Nに対して他方側に配置されている。なお、本実施形態は、法線Nに対して両側にそれぞれ2つの2枚重ね接合箇所を設けているが、これに限定されない。ステイ9から加えられる荷重により発生する応力が、法線Nに対して一方側の3枚重ね接合部と、法線Nに対して他方側の3枚重ね接合部とのそれぞれに分散可能であれば、法線Nに対して両側にそれぞれ少なくとも1つの2枚重ね接合箇所が設けられていればよい。
【0027】
さらに、図4を参照すると、マフラー5を吊るすための第2のマフラーハンガー組立体14、及び第3のマフラーハンガー組立体15が設けられている。第2のマフラーハンガー組立体14は、サイレンサー5aのリヤサイドメンバ3側の側面と、バックパネル4の表面4gにおけるリヤサイドメンバ3より車幅方向外側に位置する部分との間を接続している。また、第3のマフラーハンガー組立体15は、サイレンサー5aの前部と、リヤフロア2におけるサイレンサー5aより前方に位置する部分との間を接続している。そのため、マフラー5は、第1のマフラーハンガー組立体7と、第2のマフラーハンガー組立体14と、第3のマフラーハンガー組立体15とによって支持されている。
【0028】
本発明の実施形態に係る車体後部1の下部構造の組立て方法について説明する。
ステイ8を取付けた取付ブラケット6を、バックパネル4の一方の下側湾曲部4dの法線Nにステイ8の一端部8aを沿わせるように、当該下側湾曲部4dに配置する。バックパネル4及び取付ブラケット6を、法線Nに対して一方側に配置される第1の2枚重ね接合箇所13a、及び第2の2枚重ね接合箇所13bと、法線Nに対して他方側に配置される第3の2枚重ね接合箇所13c、及び第4の2枚重ね接合箇所13dとにおいて2枚重ね溶接する。
取付ブラケット6を取付けたバックパネル4の上側湾曲部4b,4cをリヤフロア2の上側屈曲部2b,2cに合わせ、かつバックパネル4の下側湾曲部4d,4eをリヤフロア2の下側屈曲部2d,2eに合わせるように、バックパネル4をリヤフロア2の接合用フランジ2fと重ねて配置する。リヤフロア2の接合用フランジ2fと、バックパネル4と、取付ブラケット6とを、法線Nに対して一方側に配置される第1の3枚重ね接合箇所12a、及び第2の3枚重ね接合箇所12bと、法線Nに対して他方側に配置される第3の3枚重ね接合箇所12c、及び第4の3枚重ね接合箇所12dとにおいて3枚重ね溶接する。
マフラー支持部材9を取付けたマフラー5をリヤフロア2の下側に配置する。ステイ8の他端部8b及びマフラー支持部材9の他端部9bを、それぞれハンガーゴム10の貫通孔10a,10bに挿通して、マフラー5を車体後部1に取付ける。
【0029】
以上のように本発明の実施形態によれば、リヤフロア2の接合用フランジ2f及びバックパネル4との重ね合わせ部分11にて、マフラー5を取付けるための取付ブラケット6が3枚重ね溶接され、さらに、取付ブラケット6を配置するバックパネル4の湾曲部4dは、湾曲により剛性が高められ、剛性が高くなったリヤフロア2の屈曲部2dに対応して配置されているので、取付ブラケット6の取付け剛性が向上することとなる。従って、振動及び騒音の発生を防止し、かつ剛性の高い構造によってマフラー5を支持することができる。さらに、車幅方向に長く延びるバックパネル4に取付ブラケット6を取付けることができるので、マフラー5の取付けに関するレイアウト自由度を高くすることができる。リヤフロア2の下側屈曲部2dの接合用フランジ2f及びバックパネル4の下側湾曲部4dとともに重ねて配置される取付ブラケット6を3枚重ね溶接すればよいので、従来と比較して接合箇所を少なくでき、マフラー5の取付作業を容易にすることができる。バックパネル4の湾曲部4dの限られた範囲に配置される取付ブラケット6は小さいので、従来と比較して車両重量を低減させることができる。
よって、主にバックパネル4を用いた支持構造によって、マフラー5の取付けに関するレイアウト自由度を高くし、マフラー5の取付け作業を容易にし、車両重量を低減し、振動及び騒音の発生を防止し、かつ剛性の高い構造によってマフラー5を支持することができる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、上下方向の成分及び車幅方向の成分を含むように斜め方向に延びる法線Nに対して一方側に、第1の3枚重ね接合部12a、及び第2の3枚重ね接合部12bが配置され、法線Nに対して他方側に、第3の3枚重ね接合部12c、及び第4の3枚重ね接合部12dが配置されることとなる。そのため、特に斜め方向への取付剛性を向上することができるので、マフラー5の上下左右前後の揺動に伴う荷重により発生する低周波数の領域の振動に対して、取付ブラケット6の取付け剛性を向上させることができ、マフラー5にて発生するガス流波動によって上下方向及び車幅方向のそれぞれに発生する中高周波数の領域の振動に対して、取付ブラケット6の取付け剛性を向上させることができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、取付ブラケット6に取付けられるステイ8の一端部8aが、法線Nに沿って延びるように形成されているので、マフラー5からの荷重が取付ブラケット6に法線Nの方向から加えられることとなる。そのため、当該荷重により発生する応力が、効率的に法線Nに対して一方側の第1の3枚重ね接合部12a、及び第2の3枚重ね接合部12bと、法線Nに対して他方側の第3の3枚重ね接合部12c、及び第4の3枚重ね接合部12dとにそれぞれ分散して、さらに取付ブラケット6の取付け剛性を向上させることができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、バックパネル4上に配置されるステイ8の一端部8aから法線Nに沿って延びるビード4fが、バックパネル4に形成されているので、法線Nの方向から加えられる荷重に対するバックパネル4の剛性が向上して、当該荷重により発生する応力が低減して、さらに取付ブラケット6の取付け剛性を向上させることができる。
【0033】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0034】
例えば、本実施形態の第1変形例として、図7に示すように取付ブラケット6がバックパネル4の一方の上側湾曲部4bに配置されていてもよい。また、取付ブラケット6が他方の上側湾曲部4cに配置されていてもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【0035】
本実施形態の第2変形例として、取付ブラケット6が他方の下側湾曲部4eに配置されていてもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
本実施形態の第3変形例として、車体後部1の部品がマフラー5以外であってもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【0037】
本実施形態の第4変形例として、3枚重ね接合箇所12a〜12d、及び/又は2枚重ね接合箇所13a〜13dの接合方法が、溶接以外の方法であってもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 車体後部
2 リヤフロア
2b,2c 上側屈曲部
2d,2e 下側屈曲部
2f 接合用フランジ
4 バックパネル
4a 背面
4b,4c 上側湾曲部
4d,4e 下側湾曲部
4f ビード
5 マフラー
6 取付ブラケット
7 第1のマフラーハンガー組立体
8 ステイ
8a 一端部
11 重ね合わせ部分
12a 第1の3枚重ね接合箇所
12b 第2の3枚重ね接合箇所
12c 第3の3枚重ね接合箇所
12d 第4の3枚重ね接合箇所
13a 第1の2枚重ね接合箇所
13b 第2の2枚重ね接合箇所
13c 第3の2枚重ね接合箇所
13d 第4の2枚重ね接合箇所
N 法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリヤフロアの後縁を、その車幅方向中央を下方に突出させるようにハット形状に屈曲形成し、前記リヤフロアの後縁に垂直方向に延びる接合用フランジを設け、車幅方向に延びるバックパネルを設け、前記リヤフロアの接合用フランジと前記バックパネルとを重ね合わせて配置し、車体後部に配置される部品を取付け可能に構成される車体後部の下部構造において、
前記バックパネルの下縁の車幅方向中央が、前記リヤフロア後縁の屈曲部に対応した湾曲部を有するように下方に突出形成され、
前記部品を取付けるための取付ブラケットが、前記バックパネルの背面に配置され、かつ前記リヤフロアの屈曲部に設けられる前記接合用フランジと前記バックパネルの湾曲部との重ね合わせ部分にて3枚重ね接合されていることを特徴とする、車体後部の下部構造。
【請求項2】
前記取付ブラケット上を通る前記バックパネルの湾曲部の法線に対して両側に配置される前記重ね合せ部分のそれぞれにて、前記取付ブラケットと、前記バックパネルと、前記リヤフロアとが3枚重ね接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車体後部の下部構造。
【請求項3】
前記部品が車両用マフラーであり、前記車両用マフラーを支持するマフラーハンガー組立体を構成するとともに前記取付ブラケットに取付けられるステイの一部が、前記法線に沿って延びるように形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の車体後部の下部構造。
【請求項4】
前記バックパネル上に配置される前記ステイの一部から前記法線に沿って延びるビードが、前記バックパネルに形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の車体後部の下部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−213329(P2011−213329A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86040(P2010−86040)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】