説明

車体後部構造

【課題】ルーフラック取付用のブラケットを備えた車体の後部開口の剛性を高める。
【解決手段】ルーフパネル5の車幅方向端部の裏面にはルーフラック取付ブラケット11を固定し、ルーフラック取付ブラケット11に、ルーフパネル5の車幅方向端部の上面にて車体前後方向に延びるルーフラックを取り付ける。ルーフラック取付ブラケット11は、車幅方向内側がルーフパネル5の裏面から離間するよう屈曲形成して補強部材取付部11cを備え、この補強部材取付部11cの下面に、ほぼ三角形状の補強部材19の第1の取付部19aを取り付ける。補強部材19の第2の取付部19bはリアルーフレール補強部材27のルーフパネル5側に、第3の取付部19cはリアルーフレール補強部材27のバックピラーアウタ47側に、それぞれ固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルの裏面に設けられ、ルーフパネルの車幅方向端部上面にて車体前後方向に延びるルーフラックが固定されるルーフラック取付ブラケットを備える車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、車体後部におけるバックドア開口付近のルーフパネルの裏面側に、車幅方向に延びるバックドアオープニングフレームを設け、このバックドアオープニングフレームの車幅方向端部とルーフパネルの裏面とをハット形のブラケットにより互いに連結し、このブラケットにルーフパネルを間に挟んだ状態でルーフレール(ルーフラック)の後端部を固定する構造が記載されている。
【特許文献1】実開平4−123740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来の構造では、ルーフラックの後端部を固定するブラケットを、車幅方向に延びるバックドアオープニングフレーム上に取り付けているだけであり、このため車体の後部開口に対する剛性向上については考慮していない。
【0004】
そこで、本発明は、ルーフラック取付用のブラケットを備えた車体の後部開口の剛性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ルーフパネルの裏面に設けられ、前記ルーフパネルの車幅方向端部上面にてルーフラックが固定されるルーフラック取付ブラケットを備える車体後部構造であって、車体の後部開口における、前記ルーフラック取付ブラケットと車体側部のピラー部材側の上端部付近とを補強部材により互いに連結したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車体の後部開口における、ルーフラック取付ブラケットと車体側部のピラー部材側の上端部付近とを補強部材により互いに連結したので、ルーフラック取付用のブラケットを備えた車体の後部開口の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係わる車体後部構造を示す、車体前左上方から見た車体後部の左側ルーフ角部付近の斜視図である。図2は、図1における車体後部の左側ルーフ角部付近を車体内側から見た斜視図である。なお、図中で矢印FR方向が車体前方、同UP方向が車体上方、同LH方向が車体左方向をそれぞれ示す。
【0009】
車体1は、図1に二点鎖線で示す左右のサイドパネル3の上端にルーフパネル5を取り付けてあり、この車体1の後部開口7には図示しないバックドアが開閉可能に取り付けられる。また、ルーフパネル5の車幅方向端部付近の裏面には、ルーフラック9(図3参照)を取り付けるためのルーフラック取付ブラケット11を固定している。
【0010】
ルーフラック取付ブラケット11は、図1のA−A断面図である図3に示すように、ルーフパネル5の裏面に固定するルーフ取付部11aと、ルーフ取付部11aの車幅方向内側(図3中で左側)の端部から車体内側下方に向けて傾斜する傾斜部11bと、傾斜部11bの下端からほぼ水平に車体内側に向けて延びる補強部材取付部11cとをそれぞれ有し、全体として車幅方向に沿って屈曲形成されている。
【0011】
これにより、補強部材取付部11cがルーフパネル5の裏面に対して離間する位置にあり、これら相互間に隙間12が形成される。
【0012】
そして、ルーフ取付部11aに対応するルーフパネル5上にルーフラック9の後端部付近を載せた状態で、ルーフパネル5に設けたボルト挿入孔および図1に示すルーフ取付部11aに設けたボルト挿入孔11dに下方からボルト13を挿入し、該ボルト13をルーフラック9の内部に溶接固定したナット15に締結する。あるいは、ルーフラック9側に設けたスタッドボルトを、ルーフパネル5のボルト挿入孔およびボルト挿入孔11dに挿入し、該スタッドボルトにナットを締結するようにしてもよい。
【0013】
ルーフラック9の車体1への上記した取付部位より車体前方側についても、例えば図2に示してあるルーフラック取付ブラケット17などを用いて、上記と同様にしてルーフパネル5上に固定する。
【0014】
ルーフラック取付ブラケット11の補強部材取付部11cには、図1,図2に示すようなほぼ三角形状をなす補強部材19の、三角形の一つの頂点に相当する位置の第1の取付部19aが固定される。第1の取付部19aに対応する補強部材取付部11cのルーフパネル5側には、図3に示すようにナット21を溶接固定し、このナット21に第1の取付部19a側からボルト23を挿入して締結する。
【0015】
なお、図3において、符号25で示すものはリアピラーインナ、27はリアルーフレール補強部材である。
【0016】
また、補強部材19における三角形の他の一つの頂点に相当する位置の第2の取付部19bは、ルーフパネル5の車体後端部の裏面において車幅方向に延びるリアルーフレール29の車幅方向端部とリアルーフレール補強部材27との結合部31に固定する。図4は、図1のB−B断面図であり、上記した第2の取付部19bは、リアルーフレール29のリアルーフレールロア33に対し、ボルト35をリアルーフレールロア33の内面に溶接固定しているナット37に締結することで固定する。
【0017】
なお、図4において、符号39で示すものはリアルーフレールアッパである。
【0018】
また、補強部材19における三角形のさらに他の一つの頂点に相当する位置の第3の取付部19cは、リアルーフレール補強部材27における車体側部の上端部付近に固定する。図5は、図1のC−C断面図であり、リアルーフレール補強部材27にナット41を溶接固定し、このナット41に第3の取付部19c側からボルト43を挿入して締結する。
【0019】
リアルーフレール補強部材27は、図2の車内側からの斜視図で示すように、前記したリアルーフレール29との結合部31に対応する車幅方向端部27aから、リアピラーインナ45の上下方向ほぼ中央位置に下端部27bが達している。さらに、リアルーフレール補強部材27は車体前方に突出する前端部27cを備えている。
【0020】
したがって、リアルーフレール補強部材27は、車体後部の上端角部に設定される部材であって、該上端角部の中心から、車幅方向内側に向けて湾曲形成されつつ突出する車幅方向端部27a、車体下方に向けて湾曲形成されつつ突出する下端部27bおよび、車体前方に向けて湾曲形成されつつ突出する前端部27cを備えることになる。
【0021】
なお、図5中で、符号47で示すものはピラー部材としてのバックピラーアウタ、符号49はリアサイドアッパ補強部材である。
【0022】
ここで、前記した補強部材19の第3の取付部19cは、前述したようにリアルーフレール補強部材27における車体側部の上端部付近に固定してあり、したがって補強部材19は、ルーフパネル5側の車幅方向端部付近と車体側部のピラー部材側の上端部付近とを、第2の取付部19bと第3の取付部19cとにより互いに連結していることになる。
【0023】
図6,図7,図8は、図1のそれぞれD−D断面図,E−E断面図,F−F断面図である。
【0024】
以上のように構成した車体後部構造によれば、車体1の後部開口7における、ルーフパネル5側の車幅方向端部付近とピラー部材側の上端部付近とを、補強部材19により互いに連結したので、ルーフラック取付用のブラケット11を備えた車体1の後部開口7の剛性を高めることができる。
【0025】
また、補強部材19の第1の取付部19aをルーフラック取付ブラケット11に連結したので、ルーフラック取付ブラケット11によるルーフラック9の支持剛性を高めることができる。この際一つの補強部材19により、ルーフラック9の支持剛性を高めつつ、同時に後部開口7の剛性を高めているので、後部開口7の剛性を高めるための専用の補強部材や、ルーフラック9の支持剛性を高めるための専用の補強部材が不要となるので、部品点数の増大を回避することができる。
【0026】
また、上記した補強部材19の第1の取付部19aによるルーフラック取付ブラケット11への連結位置は、ルーフラック取付位置より車幅方向内側の補強部材取付部11cとしているので、ルーフラック取付ブラケット11の車幅方向内側の剛性が高まり、ルーフラック9の車幅方向内側へ倒れ変形に効率よく対抗してルーフラック9の支持剛性が向上する。
【0027】
さらに、補強部材19の第1の取付部19aによるルーフラック取付ブラケット11への連結位置は、該ルーフラック取付ブラケット11の車体前後方向後側端部近傍としているので、補強部材19へのルーフラック取付ブラケット11からの入力によるモーメントを小さくでき、ルーフラック取付ブラケット11をより効果的に支持することができる。
【0028】
この際ルーフラック取付ブラケット11は、ルーフパネル5の裏面に固定するルーフ取付部11aと、ルーフパネル5の裏面に対し離間する位置にあって補強部材19を固定する補強部材取付部11cとをそれぞれ有し、これら相互間が傾斜部11bにより連続して車幅方向に沿って屈曲形成されているので、ルーフラック取付ブラケット11自体の剛性が向上する。
【0029】
また、上記の屈曲形成により、図3に示すように補強部材取付部11cとルーフパネル5との間に隙間12が形成されているので、締結具であるナット21やボルト23もしくは、特に図示していないが、ルーフラック取付ブラケット11をルーフパネル5に取り付ける際の位置決めを行う位置決めピンを収容することができ、取り付け位置精度を高めることができる。
【0030】
図9は、図2に示すルーフラック9を装着する車体1に対し、ルーフラック9を装着しない車体1Aの図2に対応する斜視図である。この場合には、図2における三角形状の補強部材19に代えて、別の補強部材51を取り付けている。また、ルーフラック取付ブラケット11,17は取り付けられていない。
【0031】
補強部材51は、図2と同様のリアルーフレール補強部材27の後部開口7の周縁に沿って、車幅方向端部27aから下端部27b近傍に達するよう屈曲形成した状態で取り付けてあり、車幅方向端部27aに一方の上方取付部51aを、ボルト53を用いて図2の第2の取付部19bと同様な方法で、車幅方向端部27aの第2の取付部19bから車体後方へずれた位置に固定し、他方の下方取付部51bを、ボルト55を用いて図2の第3の取付部19cと同様な方法で、第3の取付部19cによる取付位置よりも車体後方へずれた位置に固定する。
【0032】
上記図9に示した車体後部構造によれば、車体1Aの後部開口7における、ルーフパネル5側の車幅方向端部付近と車体側部のピラー部材側の上端部付近とを、補強部材51により互いに連結したので、ルーフラック取付用のブラケット11を備えた車体1Aの後部開口7の剛性を高めることができる。
【0033】
また、前記した図2のようにルーフラック9を備えるタイプの車体1は、図9のようなルーフラック9を備えないタイプの車体1Aに対して、補強部材51に替えて補強部材19を取り付けることにより、大幅な重量増しを伴うことなく車体の仕様差に対応することができる。
【0034】
さらに、上記したリアルーフレール補強部材27は、図9に示すように中央の角部にハーネスなどが貫通する開口部27dを形成しているが、この開口部27dは、図2の車体1では三角形状の補強部材19により一部を残してほぼ全域を塞ぐことができるので、この部位周辺の車体剛性を高めることができる。
【0035】
なお、上記した実施形態では、車体後部の左側ルーフ角部付近について説明したが、車体後部の右側ルーフ角部付近についても同様な構造である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係わる車体後部構造を示す、車体前左上方から見た車体後部の左側ルーフ角部付近の斜視図である。
【図2】図1における車体後部の左側ルーフ角部付近を車体内側から見た斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】図1のC−C断面図である。
【図6】図1のD−D断面図である。
【図7】図1のE−E断面図である。
【図8】図1のF−F断面図である。
【図9】図2のルーフラックを装着する車体に対し、ルーフラックを装着しない車体の図2に対応する斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 車体
5 ルーフパネル
7 車体の後部開口
9 ルーフラック
11 ルーフラック取付ブラケット
11a ルーフラック取付ブラケットのルーフ取付部
11c ルーフラック取付ブラケットの補強部材取付部
19,51 補強部材
47 バックピラーアウタ(ピラー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルの裏面に設けられ、前記ルーフパネルの車幅方向端部上面にてルーフラックが固定されるルーフラック取付ブラケットを備える車体後部構造であって、車体の後部開口における、前記ルーフラック取付ブラケットと車体側部のピラー部材側の上端部付近とを補強部材により互いに連結したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記補強部材の前記ルーフラック取付ブラケットへの連結位置は、ルーフラック取付位置より車幅方向内側であることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記補強部材の前記ルーフラック取付ブラケットへの連結位置は、該ルーフラック取付ブラケットの車体前後方向後側端部近傍であることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記ルーフラック取付ブラケットは、前記ルーフパネルの裏面に固定するルーフ取付部と、前記ルーフパネルの裏面に対し離間する位置にあって前記補強部材を固定する補強部材取付部とをそれぞれ有し、車幅方向に沿って屈曲形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12574(P2009−12574A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175436(P2007−175436)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】