車体後部構造
【課題】部品数が少なく簡単な構成により、後面衝突に対する車体後部を補強すること。
【解決手段】車体10の後部は、左右のリヤサイドフレーム14,16と、該左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡された前クロスメンバ13及び後クロスメンバ17とからなり、バー18とブラケット27を含む。後クロスメンバは、車幅方向両端部17b,17bよりも低い中央部17aに、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部17c,17cを有する。該バーは、車体の下方へ凸となるように湾曲しており、前及び後クロスメンバの各中央部13b,17a間を連結する。該ブラケットは、バーの後端部18bを、車体の下方から包み込みつつ後クロスメンバに取り付ける。
【解決手段】車体10の後部は、左右のリヤサイドフレーム14,16と、該左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡された前クロスメンバ13及び後クロスメンバ17とからなり、バー18とブラケット27を含む。後クロスメンバは、車幅方向両端部17b,17bよりも低い中央部17aに、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部17c,17cを有する。該バーは、車体の下方へ凸となるように湾曲しており、前及び後クロスメンバの各中央部13b,17a間を連結する。該ブラケットは、バーの後端部18bを、車体の下方から包み込みつつ後クロスメンバに取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後端に対する衝突、いわゆる後面衝突に対して改良された車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造としては、例えば特許文献1及び特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1で知られている車体の後部を、次の図11(側方から見た車体後部の断面図)に示す。図11に示されるように、特許文献1で知られている車体100の後半部は、フロントフロアパネル101と左右のフロアフレーム102とリヤフロアパネル103と左右のリヤサイドフレーム104とクロスメンバ105とからなる。左右のフロアフレーム102は、フロントフロアパネル101の下で前後に延びている。左右のリヤサイドフレーム104は、リヤフロアパネル103の下で前後に延びている。クロスメンバ105は、左右のリヤサイドフレーム104間に掛け渡されている。リヤフロアパネル103の下に且つクロスメンバ105の前には、燃料タンク106が配置されている。
【0004】
該燃料タンク106の下面は、左右の保持バンド107によって車体100に保持されている。該左右の保持バンド107は、左右のフロアフレーム102とクロスメンバ105との間に掛け渡されている。このような左右の保持バンド107は、燃料タンク106を保持するための薄板状の部材であって、後面衝突が発生したときの衝突荷重に対しては、大きな抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)を発生しない。
【0005】
特許文献2で知られている車体の後部を、次の図12(車体後部の底面図)に示す。図12に示されるように、特許文献2で知られている車体110の後半部は、左右のサイドシル111,111と前クロスメンバ112と左右のリヤサイドフレーム113,113と後クロスメンバ114と左右のステー116,116とからなる。前クロスメンバ112は、左右のサイドシル111,111の後端部間に掛け渡されている。左右のリヤサイドフレーム113,113は、左右のサイドシル111,111の後端から後方へ延びている。後クロスメンバ114は、左右のリヤサイドフレーム113,113間に掛け渡されており、リヤサスペンションが取り付けられる。左右のステー(タンクフレーム)116,116は、後クロスメンバ114の車幅方向中央部からサイドシル111,111の後端部まで、斜向かいに延びている。前クロスメンバ112と左右のリヤサイドフレーム113,113と後クロスメンバ114とによって囲まれた空間には、燃料タンク117が位置している。
【0006】
該左右のステー116,116は、燃料タンク117の下を通っており、クロスメンバ114の車幅方向中央から左右のサイドシル111,111へ、荷重を伝達する機能を有している。該左右のステー116,116は、後面衝突に対しては有効な手段であるが、左右一対必要なので部品数が多く、その分だけ車体重量が増加する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−96185公報
【特許文献2】特開2008−56189公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部品数が少なく簡単な構成によって、後面衝突に対する車体の後部を補強することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明では、車体の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い左右のリヤサイドフレームと、該左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている前クロスメンバと、該前クロスメンバの後方に位置し、前記左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡されている後クロスメンバとからなり、該後クロスメンバは、車幅方向両端部に対して車幅方向中央部を低く設定されており、該車幅方向中央部は、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部を有している、車体後部構造であって、バーとブラケットとを有しており、前記バーは、前記前クロスメンバの車幅方向中央部と、前記後クロスメンバの前記車幅方向中央部とを、連結するための部材であって、車体の下方へ凸となるように湾曲し、前記ブラケットは、前記後クロスメンバの車幅方向中央部の下面に位置している前記バーの後端部を、前記車体の下方から包み込みつつ前記後クロスメンバの下面に取り付けることが可能な部材であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に燃料タンクが配置されており、前記バーは、前記燃料タンクの下を通るように位置していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有し、該フランジは、前記後クロスメンバの下面に重ね合わせて取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記ブラケットは、前記バーの後端部の側面に対面する側板を有し、該側板は、前記側面に臨む開口を有し、該開口を形成している縁を前記側面にミグ溶接によって接合することが可能に、前記バーに重ね合わされていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記バーの前端部は、前記バーの後端部に対して前記車体の上下方向にオフセットしていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、前記バーは、車体前後方向に延びていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、前記バーに対して側方に位置するタンク支持バーを、更に有しており、前記燃料タンクは、前記バーと前記タンク支持バーとによって前記車体に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、前記バーは、前記燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、前記燃料タンクを保護することが可能な部材であることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明では、前記バーの前端部は、前記前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、前記前端部を上下貫通した結合部材によって取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項10係る発明では、前記後クロスメンバの下面及び前記フランジは、ボルトを上下方向に通すことが可能なボルト挿通孔を、それぞれ有し、前記フランジのボルト挿通孔は、前記後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定され、前記フランジは、前記各々のボルト挿通孔を通された前記ボルトによって、前記後クロスメンバの下面に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、後クロスメンバの車幅方向中央部の下面を、前クロスメンバの車幅方向中央部に、バーによって連結したものである。車両などの衝突物が車体の後方から後クロスメンバに衝突した、いわゆる後面衝突が発生した場合に、衝突物から後クロスメンバに作用した衝突荷重(衝突エネルギー)は、バーを介して前クロスメンバの車幅方向中央部に伝わる。後面衝突の際に、バーの長手方向に発生する抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)によって、後クロスメンバの曲げ変形を極力抑制することができる。このように、該バーはステイ(stay)の役割を果たしている。また、後クロスメンバの車幅方向中央部をバーにより支えることによって、後クロスメンバや左右のリヤサイドフレームの負担を軽減することができる。この結果、後クロスメンバや左右のリヤサイドフレームの強度や剛性を低減することができるので、車体の軽量化を図ることができる。しかも、前クロスメンバの車幅方向中央部と後クロスメンバの車幅方向中央部とを、バーによって連結するだけの、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、車体の後部を補強することができる。
【0020】
さらに、請求項1に係る発明では、バーの後端部をブラケットにより車体の下方から包み込むようにして、後クロスメンバの下面に取り付けている。このため、ブラケットによって、バーの後端部を後クロスメンバに強固に取り付けることができる。しかも、バーの後端部の下面は、車体の下方から包み込むブラケットによって、下から押さえられる。このため、衝突荷重によってバーが車体の下方へ変形することを、抑制することができる。従って、バーを下方へ撓み変形させようとする衝突荷重に対して、該バーに生じる抗力(逆向きの力)は大きい。
【0021】
さらに、請求項1に係る発明では、後クロスメンバは、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するために、車幅方向中央部が車幅方向両端部よりも低く設定されている。このため、衝突荷重が後クロスメンバの車幅方向中央部に作用したときに、後クロスメンバには、左右のリヤフレームに接合された車幅方向両端部の基端を基準に、後方へ倒れる方向の曲げモーメントが生じる。これに対して、車体下方へ凸となるように湾曲しているバーの後端部は、車体の下方から包み込むブラケットによって、後クロスメンバの車幅方向中央部に取り付けられている。後クロスメンバからバーの後端部に伝わった衝突荷重は、バーを車体の下方へ撓み変形させようとする。このとき、バーには、下方へ変形させようとする衝突荷重に対して、抗力が生じる。この結果、バーには、上記曲げモーメントを打ち消す方向のモーメント、いわゆる逆向きモーメントが生じる。従って、後クロスメンバの倒れを抑制することができる。
【0022】
請求項2に係る発明では、バーは、前クロスメンバと後クロスメンバとの間に配置されている燃料タンクの下に位置している。該バーは、車体の下方へ凸となるように湾曲しているので、後クロスメンバからバーの後端部へ伝わった衝突荷重によって、下方に撓む。従って、変形したバーが燃料タンクに当たる心配はない。
【0023】
請求項3に係る発明では、ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有した、いわゆる略ハット状断面に形成されている。このような簡単な構成のブラケットによって、バーの後端部を車体の下方から包み込みつつ後クロスメンバの下面に強固に取り付けることができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、ブラケットの側板に形成されている開口の縁を、バーの後端部の側面にミグ溶接によって接合することができる。このため、ブラケットはバーの後端部を強固に包み込んで一体化することができる。
【0025】
請求項5に係る発明では、バーの後端部に対して、バーの前端部を車体の上下方向にオフセットしているので、該バーを燃料タンクの下面に沿うように通すことができる。
【0026】
請求項6に係る発明では、バーは、後クロスメンバの車幅方向中央部から、前クロスメンバの車幅方向中央部まで、車体前後方向に延びている。このため、衝突物から後クロスメンバに作用した衝突荷重を、バーを介して前クロスメンバの車幅方向中央部に効率良く伝えることができる。
【0027】
請求項7に係る発明では、バーと、該バーの側方に位置しているタンク支持バーとの、2個のバーによって、燃料タンクを車体に取り付けている。このため、燃料タンクを車体に強固に取り付けることができる。
【0028】
請求項8に係る発明では、バーは、燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、該燃料タンクを保護するための保護部材を兼ねることができる。
【0029】
請求項9に係る発明では、バーの前端部は、前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、上下貫通した結合部材によって前クロスメンバに強固に取り付けられる。前クロスメンバは、左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている、車体の高強度部材である。このため、バーは、後面衝突の際に大きい抗力を発生することが可能である。
【0030】
請求項10係る発明では、フランジのボルト挿通孔が、後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定されているので、後クロスメンバの下面にフランジをボルト止めするときに、各々のボルト挿通孔の位置合わせが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る車体の後部を下方から見た斜視図である。
【図2】図1に示された車体の後部を右側から見た側面図である。
【図3】図1に示された車体の後部の底面図である。
【図4】図1に示された車体の背面図である。
【図5】図2に示されたバーを拡大した図である。
【図6】図1に示されたバーの両端の取付構造を示す図である。
【図7】図3に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合の作用を説明する図である。
【図8】図2に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合のバーの撓み作用を説明する図である。
【図9】図8に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合の後クロスメンバとバーの関係を説明する図である。
【図10】本発明の実施例2に係る車体のバーの両端の取付構造を示す図である。
【図11】第1の従来の車体の後部を側方から見た断面図である。
【図12】第2の従来の車体の後部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0033】
実施例1の車体後部構造を説明する。図1〜図3に示される車体10は、乗用車等の車両に採用される。該車体10の後下部は、左右のリヤサイドフレーム14,16と、該左右のリヤサイドフレーム14,16に接合された前後のクロスメンバ13,17とからなる。
【0034】
左右のリヤサイドフレーム14,16(以下、リヤフレーム14,16という。)は、車体10の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い部材である。左のリヤフレーム14の前端部14aは、左のサイドシル11の後端部11aに接合されている。右のリヤフレーム16の前端部16aは、右のサイドシル12の後端部12aに接合されている。左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16aの下面14b,16bは、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aの下面11b,12bよりも上に位置している。
【0035】
左右のリヤフレーム14,16は、前端部14a,16aから後方へ延びた略水平なフレーム前部14c,16cと、該フレーム前部14c,16cの後端から後上方へ延びた傾斜部14d,16dと、該傾斜部14d,16dの後端から後方へ延びた略水平なフレーム後部14e,16eとからなる。
【0036】
前クロスメンバ13は、左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16a間に掛け渡されている。より具体的には、前クロスメンバ13は、車幅方向に略水平な部材であって、左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16aと、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aとの、接合部分に掛け渡されている。前クロスメンバ13の下面13aは、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aの下面11b,12bと略同じ高さに位置している。
【0037】
後クロスメンバ17は、前クロスメンバ13の後方に位置し、左右のリヤフレーム14,16間に掛け渡されている。例えば、後クロスメンバ17は、左右のリヤフレーム14,16の長手中央部、つまり、左右のフレーム後部14e,16e間に掛け渡される。
【0038】
図1、図2及び図4に示されるように、後クロスメンバ17は、車幅方向の中央部17aが両端部17b,17bよりも低くなる、概ねU字状に形成されている。後クロスメンバ17の両端部17b,17bは、左右のフレーム後部14e,16eの側面に接合されるとともに、中央部17aへ向かって下がるように傾斜している。該中央部17aは略水平状に形成されており、車幅方向両端にアーム支持部17c,17cを有する。該中央部17aの下面17dは、前クロスメンバ13の下面13aと略同じ高さに位置している。
【0039】
図4に示されるように、該左右のアーム支持部17c,17cは、左右の後輪41,42を懸架するための左右のリヤサスペンション43,44を支持する部分である。該左右のリヤサスペンション43,44は、例えばダブルウイッシュボーン式やマルチリンク式の構成であって、それぞれロアアーム45,46を有している。該左右のロアアーム45,46の先端部45a,46aは、左右のアーム支持部17c,17cにピン47,47によって連結されている。この結果、左右のロアアーム45,46は左右のアーム支持部17c,17cに支持される。
【0040】
図1〜図3に示されるように、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bの下面13aと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aの下面17dとは、互いに連結バー18によって連結されている。
【0041】
図3に示されるように、車体10の上面にはフロアパネル19が張られている。該フロアパネル19の下方において、左右のリヤフレーム14,16と前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とによって囲まれた空間Spには、燃料タンク21が配置されている。
【0042】
該燃料タンク21は、図2及び図3に示されるように、連結バー18とタンク支持バー23とによって車体10に下方から取り外し可能に取り付けられている。該タンク支持バー23は、連結バー18に対して車幅方向(側方)に離れて位置し、車体10の前後方向に延び、両端が例えばフロアパネル19にボルト止め等により取り外し可能に取付けられている。連結バー18とタンク支持バー23との、2個のバーによって、燃料タンク21を車体10に取り付けているので、該燃料タンク21を車体10に強固に取り付けることができる。
【0043】
連結バー18とタンク支持バー23は、燃料タンク21の下を通るように位置することによって、該燃料タンク21の下面21aの少なくとも一部を覆っている。つまり、該連結バー18と該タンク支持バー23は、燃料タンク21を車体10に取り付けるとともに、燃料タンク21を保護することが可能な部材(タンクプロテクションバー)である。
【0044】
以上の説明から明らかなように、車体10の後部を補強するための連結バー18は、燃料タンク21を保護するための保護部材の役割を兼ねることができる。つまり、車体10の下部に位置している燃料タンク21の下方に、連結バー18を配置することにより、該連結バー18によって燃料タンク21を保護することができる。また、車体10の後部を補強するための連結バー18によって、燃料タンク21を保護する部材を兼ねることができるので、部品数を減らすことができて、車体10のコストを低減することができる。
【0045】
以下に、連結バー18(以下、バー18という。)の取付構造について詳しく説明する。図2に示されるように、前クロスメンバ13の中央部13bの下面13aは、バー18の前端部18aを取り付けるための平坦な取付面13cを有している。該取付面13cは、後クロスメンバ17の中央部17aの下面17dよりも高さHiだけ高い位置に設定された水平面である。
【0046】
バー18の後端部18bは、後クロスメンバ17の中央部17aの下面17dに取り付けられる。該バー18が前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とに取り付けられた状態において、前端部18aは後端部18bよりも上方に位置している。つまり、前端部18aは、後端部18bに対して車体10の上下方向にオフセットしている。このため、バー18を燃料タンク21の下面21aに沿わせて容易に配置することができる。
【0047】
図5は、図2に示されたバー18を拡大して表している。該バー18は、車体10の下方へ凸となるように湾曲、つまり弓形に形成されている。ここで、該バー18の前端部18aの上面と後端部18bの上面とに接する直線25のことを接線25という。
【0048】
図6(a)は、車体10に対するバー18の取付構造の分解状態を示している。図6(b)は、車体10に対してバー18を取り付けた状態を示している。図6(c)は、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込んで、溶接した状態を示している。
【0049】
バー18は、断面矩形状の角棒であって、幅広の面を車体10に取り付けることになる。該バー18の前端部18aは、上下貫通した1個のボルト挿通孔18cを有している。該ボルト挿通孔18cは、真円状の丸孔である。前クロスメンバ13に前端部18aを取り付けるには、先ず、前クロスメンバ13の取付面13cに前端部18aを重ね合わせ、該ボルト挿通孔18cに下からボルト31を通して、前クロスメンバ13のナット32にねじ込む。このように、バー18の前端部18aは、前クロスメンバ13の下面13aに重ね合わされるとともに、前端部18aを上下貫通したボルト31(結合部材31)によって取り付けられている。
【0050】
このように、バー18の前端部18aは、前クロスメンバ13の下面13a、つまり取付面13cに重ね合わされるとともに、上下貫通した結合部材31によって前クロスメンバ13に強固に取り付けられる。図3に示されるように、前クロスメンバ13は、左右のリヤサイドフレーム14,16の前端部14a,16a間に掛け渡されている、車体10の高強度部材である。このため、バー18は、後面衝突の際に大きい抗力を発生することが可能である。
【0051】
一方、バー18の後端部18bは、後クロスメンバ17にブラケット27によって取り付けられる。該ブラケット27は、バー18の後端部18bを車体10の下方から包み込みつつ後クロスメンバ17の下面17dに取り付ける部材であって、上が開放されたハット状断面に形成されている。
【0052】
詳しく述べると、該ブラケット27は、水平な底板27aと、該底板27aの左右両端から上方へ延びて互いに対面し合う左右の側板27b,27cと、左右の側板27b,27cの上端から互いに相反する方向へ水平に延びる左右のフランジ27d,27eとからなる。このように、該ブラケット27は、底板27aと左右の側板27b,27cとによって略U字状断面に形成されるとともに、上端に左右のフランジ27d,27eを有している。
【0053】
底板27aは、バー18の後端部18bの下面18eに対面することが可能に、重ね合わされている。左右の側板27b,27cは、バー18の後端部18bの側面18d,18dに対面することが可能である。該側板27b,27cは、側面18d,18dに臨む矩形状の開口27f,27fを有しており、該開口27f,27fを形成している縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接(MIG welding(metal inert gas welding))によって接合することが可能に、重ね合わされている。
【0054】
左右のフランジ27d,27eは、後クロスメンバ17の下面17dに重ね合わせて取り付けられる部分であって、上下貫通したボルト挿通孔27h,27hを有している。後クロスメンバ17の下面17dは、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hに対応した位置に、上下貫通した2個のボルト挿通孔17e,17eを有している。該ボルト挿通孔17e,17eは、真円状の丸孔である。これに対し、フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、バー18の長手方向に平行な長孔状に設定されている。
【0055】
後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eと、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、ボルト33,33(結合部材33,33)を上下方向に通すことが可能である。フランジ27d,27eは、各々のボルト挿通孔27h,27hを通されたボルト33,33によって、後クロスメンバ17に取り付けられる。フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hが長孔によって構成されているので、後クロスメンバ17の下面17dにフランジ27d,27eをボルト止めするときに、各々のボルト挿通孔17e,17e,27h,27hの位置合わせが容易である。
【0056】
後クロスメンバ17にバー18の後端部18bを取り付ける方法は、例えば次の2つがある。
第1の取付方法は次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込む。次に、後クロスメンバ17の下面17dにバー18の後端部18b及び左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、ボルト挿通孔17e,17e,27h,27h同士の位置合わせをする。次に、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hと、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eとに、下からボルト33,33を通して、後クロスメンバ17のナット34,34にねじ込む。最後に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合して、取付作業を完了する。
【0057】
第2の取付方法は次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込んで、互いの位置合わせをする。次に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合する。次に、後クロスメンバ17の下面17dにバー18の後端部18b及び左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、ボルト挿通孔17e,17e,27h,27h同士の位置合わせをする。最後に、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hと、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eとに、下からボルト33,33を通して、後クロスメンバ17のナット34,34にねじ込んで、取付作業を完了する。
【0058】
このように、ブラケット27の左右の側板27b,27cに形成されている開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合することができる。このため、ブラケット27はバー18の後端部18bを強固に包み込んで一体化することができる。しかも、開口27f,27fを通して、バー18の後端部18bの側面18d,18dとブラケット27の左右の側板27b,27cとを、容易に且つ効率良く接合することができる。
【0059】
以上の説明のように、ブラケット27はバー18の後端部18bを下方から包み込むようにして、後クロスメンバ17に取り付けている。このため、バー18の後端部18bを後クロスメンバ17に強固に取り付けることができるとともに、バー18の撓み変形を抑制することができる。
【0060】
さらには、ブラケット27は、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジフランジ27d,27eを有した、いわゆる略ハット状断面に形成されている。このような簡単な構成のブラケット27によって、バー18の後端部18bを車体10の下方から包み込みつつ後クロスメンバ17の下面17dに強固に取り付けることができる。
【0061】
なお、フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、長孔の代わりに、図6(d)に示されるように、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eよりも大径の丸孔に形成されてもよい。
【0062】
以上に述べた車体後部構造の作用を次に説明する。
図7に示されるように、車体10の後部に後方から後突車両などの衝突物35が衝突した、いわゆる後面衝突が発生した場合には、白抜き矢印のように、衝突物35から後クロスメンバ17へ衝突荷重Fb(衝突エネルギー)が作用する。この結果、後クロスメンバ17は、車体前方へ塑性変形しようとする。
【0063】
バー18に相当する部材を有していない「一般的な車体」では、後クロスメンバ17は両端が左右のリヤサイドフレーム14,16に接合されているだけの、いわゆる両端固定梁の構造である。このため、後クロスメンバ17には大きい曲げモーメントが生じる。衝突荷重Fbに対する後クロスメンバ17の変形を抑制するために、例えば、後クロスメンバ17及び該後クロスメンバ17に接合されている左右のリヤサイドフレーム14,16の強度や剛性を高める必要がある。
【0064】
これに対して、本実施例では、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aとが、バー18によって連結されている。このため、衝突物35から後クロスメンバ17へ作用した衝突荷重Fbは、該後クロスメンバ17からバー18を介して前クロスメンバ13に伝わる。このように、前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とバー18とを組み合わせた複合体によって、衝突荷重Fbを受け止めることができる。
【0065】
さらには、後面衝突の際に、バー18の長手方向に発生する抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)によって、後クロスメンバ17の変形を極力抑制することができる。従って、後クロスメンバ17の変形を極力抑制することができる。このように、該バー18はステイ(stay)の役割を果たしている。また、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aをバー18により支えることによって、後クロスメンバ17や左右のリヤフレーム14,16の負担を軽減することができる。この結果、後クロスメンバ17や左右のリヤフレーム14,16の強度や剛性を低減することができるので、車体10の軽量化を図ることができる。しかも、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aとを、バー18によって連結するだけの、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、車体10の後部を補強することができる。
【0066】
さらには、図8に示されるように、バー18が車体下方へ凸となるように湾曲している。このため、後クロスメンバ17から前端部18aへ伝わった、バー18の長手方向の衝突荷重Fbによって、バー18は図中の太い破線によって示すように下方に撓む。従って、変形したバー18が燃料タンク21に当たって押し上げる心配はない。
【0067】
さらには、図6に示されるように、バー18の後端部18bをブラケット27により車体10の下方から包み込むようにして、後クロスメンバ17の下面17dに取り付けている。このため、ブラケット27によって、バー18の後端部18bを後クロスメンバ17に強固に取り付けることができる。しかも、バー18の後端部18bの下面18eは、車体10の下方から包み込むブラケット27によって、下から押さえられる。このため、図9に示されるように、衝突荷重Fbによってバー18が車体10の下方へ変形することを、抑制することができる。従って、バー18を下方へ撓み変形させようとする衝突荷重Fbに対して、該バー18に生じる抗力(逆向きの力)は大きい。
【0068】
さらに、図4に示されるように、後クロスメンバ17は、左右のリヤサスペンション43,44のロアアーム45,46を支持するために、車幅方向中央部17aが車幅方向両端部17b,17bよりも低く設定されている。このため、図9に示されるように、衝突荷重Fbが後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aに作用したときに、後クロスメンバ17には、左右のリヤフレーム14,16に接合された車幅方向両端部17b,17bの基端を基準に、後方へ倒れる方向の曲げモーメントM1が生じる。これに対して、車体10の下方へ凸となるように湾曲しているバー18の後端部18bは、車体10の下方から包み込むブラケット27によって、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aに取り付けられている。後クロスメンバ17からバー18の後端部18bに伝わった衝突荷重Fbは、バー18を車体10の下方へ撓み変形させようとする。このとき、バー18には、下方へ変形させようとする衝突荷重Fbに対して、抗力が生じる。この結果、バー18には、上記曲げモーメントM1を打ち消す方向のモーメントM2、いわゆる逆向きモーメントM2が生じる。従って、後クロスメンバ17の倒れを抑制することができる。
【0069】
さらには、バー18は、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aから、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bまで、車体10の前後方向に延びている。このため、後クロスメンバ17に作用した衝突荷重Fbを、バー18を介して前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bに効率良く伝えることができる。
【実施例2】
【0070】
実施例2の車体後部構造を説明する。図10は、実施例2の車体10Aのバー18の両端の取付構造を示している。実施例2の車体10Aは、上記図6(a)〜図6(c)に示される実施例1のブラケット27を、図10に示されるブラケット27Aに変更したことを特徴とし、他の構成及び作用については上記図1〜図9に示される車体10の構成及び作用と同じなので、説明を省略する。
【0071】
具体的には、実施例2のブラケット27Aの左右のフランジ27d,27eは、後クロスメンバ17に対してボルト止めではなく、溶接していることを特徴とする。このため、左右のフランジ27d,27eはボルト挿通孔を有していない。底板27aは、上下貫通した1個のボルト挿通孔27iを有している。該ボルト挿通孔27iは、バー18の長手方向に平行な長孔状に設定されている。一方、バー18の後端部18bの下面18eは、ボルト挿通孔27iに対応した1個のネジ孔18fを有している。
【0072】
後クロスメンバ17にバー18の後端部18bを取り付ける方法は、例えば次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込む。次に、ボルト挿通孔27iにボルト38を差し込んで、ネジ孔18fに緩くねじ込む(仮り止め)。次に、後クロスメンバ17の下面17dに左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、溶接する。次に、ネジ孔18fにボルト38を堅くねじ込む。最後に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合して、取付作業を完了する。
【0073】
なお、本発明では、バー18は、矩形断面の角棒に限定されるものではなく、例えば矩形断面の角パイプや断面コ字状のバーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の車体後部構造は、乗用車の車体に適用するのに好適である。
【符号の説明】
【0075】
10,10A…車体、13…前クロスメンバ、13a…下面、13b…車幅方向中央部、14,16…左右のリヤサイドフレーム、14a,16a…前端部、17…後クロスメンバ、17a…車幅方向中央部、17b…車幅方向両端部、17c…アーム支持部、17d…下面、17e…ボルト挿通孔、18…バー、18a…前端部、18b…後端部、18d…側面、21…燃料タンク、21a…下面、23…タンク支持バー、27,27A…ブラケット、27b,27c…側板、27d,27e…フランジ、27f…開口、27g…開口を形成している縁、27h,27i…ボルト挿通孔、31…結合部材(ボルト)、33…ボルト、43,44…左右のリヤサスペンション、45,46…ロアアーム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後端に対する衝突、いわゆる後面衝突に対して改良された車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造としては、例えば特許文献1及び特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1で知られている車体の後部を、次の図11(側方から見た車体後部の断面図)に示す。図11に示されるように、特許文献1で知られている車体100の後半部は、フロントフロアパネル101と左右のフロアフレーム102とリヤフロアパネル103と左右のリヤサイドフレーム104とクロスメンバ105とからなる。左右のフロアフレーム102は、フロントフロアパネル101の下で前後に延びている。左右のリヤサイドフレーム104は、リヤフロアパネル103の下で前後に延びている。クロスメンバ105は、左右のリヤサイドフレーム104間に掛け渡されている。リヤフロアパネル103の下に且つクロスメンバ105の前には、燃料タンク106が配置されている。
【0004】
該燃料タンク106の下面は、左右の保持バンド107によって車体100に保持されている。該左右の保持バンド107は、左右のフロアフレーム102とクロスメンバ105との間に掛け渡されている。このような左右の保持バンド107は、燃料タンク106を保持するための薄板状の部材であって、後面衝突が発生したときの衝突荷重に対しては、大きな抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)を発生しない。
【0005】
特許文献2で知られている車体の後部を、次の図12(車体後部の底面図)に示す。図12に示されるように、特許文献2で知られている車体110の後半部は、左右のサイドシル111,111と前クロスメンバ112と左右のリヤサイドフレーム113,113と後クロスメンバ114と左右のステー116,116とからなる。前クロスメンバ112は、左右のサイドシル111,111の後端部間に掛け渡されている。左右のリヤサイドフレーム113,113は、左右のサイドシル111,111の後端から後方へ延びている。後クロスメンバ114は、左右のリヤサイドフレーム113,113間に掛け渡されており、リヤサスペンションが取り付けられる。左右のステー(タンクフレーム)116,116は、後クロスメンバ114の車幅方向中央部からサイドシル111,111の後端部まで、斜向かいに延びている。前クロスメンバ112と左右のリヤサイドフレーム113,113と後クロスメンバ114とによって囲まれた空間には、燃料タンク117が位置している。
【0006】
該左右のステー116,116は、燃料タンク117の下を通っており、クロスメンバ114の車幅方向中央から左右のサイドシル111,111へ、荷重を伝達する機能を有している。該左右のステー116,116は、後面衝突に対しては有効な手段であるが、左右一対必要なので部品数が多く、その分だけ車体重量が増加する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−96185公報
【特許文献2】特開2008−56189公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部品数が少なく簡単な構成によって、後面衝突に対する車体の後部を補強することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明では、車体の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い左右のリヤサイドフレームと、該左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている前クロスメンバと、該前クロスメンバの後方に位置し、前記左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡されている後クロスメンバとからなり、該後クロスメンバは、車幅方向両端部に対して車幅方向中央部を低く設定されており、該車幅方向中央部は、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部を有している、車体後部構造であって、バーとブラケットとを有しており、前記バーは、前記前クロスメンバの車幅方向中央部と、前記後クロスメンバの前記車幅方向中央部とを、連結するための部材であって、車体の下方へ凸となるように湾曲し、前記ブラケットは、前記後クロスメンバの車幅方向中央部の下面に位置している前記バーの後端部を、前記車体の下方から包み込みつつ前記後クロスメンバの下面に取り付けることが可能な部材であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に燃料タンクが配置されており、前記バーは、前記燃料タンクの下を通るように位置していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有し、該フランジは、前記後クロスメンバの下面に重ね合わせて取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記ブラケットは、前記バーの後端部の側面に対面する側板を有し、該側板は、前記側面に臨む開口を有し、該開口を形成している縁を前記側面にミグ溶接によって接合することが可能に、前記バーに重ね合わされていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記バーの前端部は、前記バーの後端部に対して前記車体の上下方向にオフセットしていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、前記バーは、車体前後方向に延びていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、前記バーに対して側方に位置するタンク支持バーを、更に有しており、前記燃料タンクは、前記バーと前記タンク支持バーとによって前記車体に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、前記バーは、前記燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、前記燃料タンクを保護することが可能な部材であることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明では、前記バーの前端部は、前記前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、前記前端部を上下貫通した結合部材によって取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項10係る発明では、前記後クロスメンバの下面及び前記フランジは、ボルトを上下方向に通すことが可能なボルト挿通孔を、それぞれ有し、前記フランジのボルト挿通孔は、前記後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定され、前記フランジは、前記各々のボルト挿通孔を通された前記ボルトによって、前記後クロスメンバの下面に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、後クロスメンバの車幅方向中央部の下面を、前クロスメンバの車幅方向中央部に、バーによって連結したものである。車両などの衝突物が車体の後方から後クロスメンバに衝突した、いわゆる後面衝突が発生した場合に、衝突物から後クロスメンバに作用した衝突荷重(衝突エネルギー)は、バーを介して前クロスメンバの車幅方向中央部に伝わる。後面衝突の際に、バーの長手方向に発生する抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)によって、後クロスメンバの曲げ変形を極力抑制することができる。このように、該バーはステイ(stay)の役割を果たしている。また、後クロスメンバの車幅方向中央部をバーにより支えることによって、後クロスメンバや左右のリヤサイドフレームの負担を軽減することができる。この結果、後クロスメンバや左右のリヤサイドフレームの強度や剛性を低減することができるので、車体の軽量化を図ることができる。しかも、前クロスメンバの車幅方向中央部と後クロスメンバの車幅方向中央部とを、バーによって連結するだけの、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、車体の後部を補強することができる。
【0020】
さらに、請求項1に係る発明では、バーの後端部をブラケットにより車体の下方から包み込むようにして、後クロスメンバの下面に取り付けている。このため、ブラケットによって、バーの後端部を後クロスメンバに強固に取り付けることができる。しかも、バーの後端部の下面は、車体の下方から包み込むブラケットによって、下から押さえられる。このため、衝突荷重によってバーが車体の下方へ変形することを、抑制することができる。従って、バーを下方へ撓み変形させようとする衝突荷重に対して、該バーに生じる抗力(逆向きの力)は大きい。
【0021】
さらに、請求項1に係る発明では、後クロスメンバは、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するために、車幅方向中央部が車幅方向両端部よりも低く設定されている。このため、衝突荷重が後クロスメンバの車幅方向中央部に作用したときに、後クロスメンバには、左右のリヤフレームに接合された車幅方向両端部の基端を基準に、後方へ倒れる方向の曲げモーメントが生じる。これに対して、車体下方へ凸となるように湾曲しているバーの後端部は、車体の下方から包み込むブラケットによって、後クロスメンバの車幅方向中央部に取り付けられている。後クロスメンバからバーの後端部に伝わった衝突荷重は、バーを車体の下方へ撓み変形させようとする。このとき、バーには、下方へ変形させようとする衝突荷重に対して、抗力が生じる。この結果、バーには、上記曲げモーメントを打ち消す方向のモーメント、いわゆる逆向きモーメントが生じる。従って、後クロスメンバの倒れを抑制することができる。
【0022】
請求項2に係る発明では、バーは、前クロスメンバと後クロスメンバとの間に配置されている燃料タンクの下に位置している。該バーは、車体の下方へ凸となるように湾曲しているので、後クロスメンバからバーの後端部へ伝わった衝突荷重によって、下方に撓む。従って、変形したバーが燃料タンクに当たる心配はない。
【0023】
請求項3に係る発明では、ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有した、いわゆる略ハット状断面に形成されている。このような簡単な構成のブラケットによって、バーの後端部を車体の下方から包み込みつつ後クロスメンバの下面に強固に取り付けることができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、ブラケットの側板に形成されている開口の縁を、バーの後端部の側面にミグ溶接によって接合することができる。このため、ブラケットはバーの後端部を強固に包み込んで一体化することができる。
【0025】
請求項5に係る発明では、バーの後端部に対して、バーの前端部を車体の上下方向にオフセットしているので、該バーを燃料タンクの下面に沿うように通すことができる。
【0026】
請求項6に係る発明では、バーは、後クロスメンバの車幅方向中央部から、前クロスメンバの車幅方向中央部まで、車体前後方向に延びている。このため、衝突物から後クロスメンバに作用した衝突荷重を、バーを介して前クロスメンバの車幅方向中央部に効率良く伝えることができる。
【0027】
請求項7に係る発明では、バーと、該バーの側方に位置しているタンク支持バーとの、2個のバーによって、燃料タンクを車体に取り付けている。このため、燃料タンクを車体に強固に取り付けることができる。
【0028】
請求項8に係る発明では、バーは、燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、該燃料タンクを保護するための保護部材を兼ねることができる。
【0029】
請求項9に係る発明では、バーの前端部は、前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、上下貫通した結合部材によって前クロスメンバに強固に取り付けられる。前クロスメンバは、左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている、車体の高強度部材である。このため、バーは、後面衝突の際に大きい抗力を発生することが可能である。
【0030】
請求項10係る発明では、フランジのボルト挿通孔が、後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定されているので、後クロスメンバの下面にフランジをボルト止めするときに、各々のボルト挿通孔の位置合わせが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る車体の後部を下方から見た斜視図である。
【図2】図1に示された車体の後部を右側から見た側面図である。
【図3】図1に示された車体の後部の底面図である。
【図4】図1に示された車体の背面図である。
【図5】図2に示されたバーを拡大した図である。
【図6】図1に示されたバーの両端の取付構造を示す図である。
【図7】図3に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合の作用を説明する図である。
【図8】図2に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合のバーの撓み作用を説明する図である。
【図9】図8に示された車体の後部に後面衝突が発生した場合の後クロスメンバとバーの関係を説明する図である。
【図10】本発明の実施例2に係る車体のバーの両端の取付構造を示す図である。
【図11】第1の従来の車体の後部を側方から見た断面図である。
【図12】第2の従来の車体の後部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0033】
実施例1の車体後部構造を説明する。図1〜図3に示される車体10は、乗用車等の車両に採用される。該車体10の後下部は、左右のリヤサイドフレーム14,16と、該左右のリヤサイドフレーム14,16に接合された前後のクロスメンバ13,17とからなる。
【0034】
左右のリヤサイドフレーム14,16(以下、リヤフレーム14,16という。)は、車体10の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い部材である。左のリヤフレーム14の前端部14aは、左のサイドシル11の後端部11aに接合されている。右のリヤフレーム16の前端部16aは、右のサイドシル12の後端部12aに接合されている。左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16aの下面14b,16bは、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aの下面11b,12bよりも上に位置している。
【0035】
左右のリヤフレーム14,16は、前端部14a,16aから後方へ延びた略水平なフレーム前部14c,16cと、該フレーム前部14c,16cの後端から後上方へ延びた傾斜部14d,16dと、該傾斜部14d,16dの後端から後方へ延びた略水平なフレーム後部14e,16eとからなる。
【0036】
前クロスメンバ13は、左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16a間に掛け渡されている。より具体的には、前クロスメンバ13は、車幅方向に略水平な部材であって、左右のリヤフレーム14,16の前端部14a,16aと、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aとの、接合部分に掛け渡されている。前クロスメンバ13の下面13aは、左右のサイドシル11,12の後端部11a,12aの下面11b,12bと略同じ高さに位置している。
【0037】
後クロスメンバ17は、前クロスメンバ13の後方に位置し、左右のリヤフレーム14,16間に掛け渡されている。例えば、後クロスメンバ17は、左右のリヤフレーム14,16の長手中央部、つまり、左右のフレーム後部14e,16e間に掛け渡される。
【0038】
図1、図2及び図4に示されるように、後クロスメンバ17は、車幅方向の中央部17aが両端部17b,17bよりも低くなる、概ねU字状に形成されている。後クロスメンバ17の両端部17b,17bは、左右のフレーム後部14e,16eの側面に接合されるとともに、中央部17aへ向かって下がるように傾斜している。該中央部17aは略水平状に形成されており、車幅方向両端にアーム支持部17c,17cを有する。該中央部17aの下面17dは、前クロスメンバ13の下面13aと略同じ高さに位置している。
【0039】
図4に示されるように、該左右のアーム支持部17c,17cは、左右の後輪41,42を懸架するための左右のリヤサスペンション43,44を支持する部分である。該左右のリヤサスペンション43,44は、例えばダブルウイッシュボーン式やマルチリンク式の構成であって、それぞれロアアーム45,46を有している。該左右のロアアーム45,46の先端部45a,46aは、左右のアーム支持部17c,17cにピン47,47によって連結されている。この結果、左右のロアアーム45,46は左右のアーム支持部17c,17cに支持される。
【0040】
図1〜図3に示されるように、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bの下面13aと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aの下面17dとは、互いに連結バー18によって連結されている。
【0041】
図3に示されるように、車体10の上面にはフロアパネル19が張られている。該フロアパネル19の下方において、左右のリヤフレーム14,16と前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とによって囲まれた空間Spには、燃料タンク21が配置されている。
【0042】
該燃料タンク21は、図2及び図3に示されるように、連結バー18とタンク支持バー23とによって車体10に下方から取り外し可能に取り付けられている。該タンク支持バー23は、連結バー18に対して車幅方向(側方)に離れて位置し、車体10の前後方向に延び、両端が例えばフロアパネル19にボルト止め等により取り外し可能に取付けられている。連結バー18とタンク支持バー23との、2個のバーによって、燃料タンク21を車体10に取り付けているので、該燃料タンク21を車体10に強固に取り付けることができる。
【0043】
連結バー18とタンク支持バー23は、燃料タンク21の下を通るように位置することによって、該燃料タンク21の下面21aの少なくとも一部を覆っている。つまり、該連結バー18と該タンク支持バー23は、燃料タンク21を車体10に取り付けるとともに、燃料タンク21を保護することが可能な部材(タンクプロテクションバー)である。
【0044】
以上の説明から明らかなように、車体10の後部を補強するための連結バー18は、燃料タンク21を保護するための保護部材の役割を兼ねることができる。つまり、車体10の下部に位置している燃料タンク21の下方に、連結バー18を配置することにより、該連結バー18によって燃料タンク21を保護することができる。また、車体10の後部を補強するための連結バー18によって、燃料タンク21を保護する部材を兼ねることができるので、部品数を減らすことができて、車体10のコストを低減することができる。
【0045】
以下に、連結バー18(以下、バー18という。)の取付構造について詳しく説明する。図2に示されるように、前クロスメンバ13の中央部13bの下面13aは、バー18の前端部18aを取り付けるための平坦な取付面13cを有している。該取付面13cは、後クロスメンバ17の中央部17aの下面17dよりも高さHiだけ高い位置に設定された水平面である。
【0046】
バー18の後端部18bは、後クロスメンバ17の中央部17aの下面17dに取り付けられる。該バー18が前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とに取り付けられた状態において、前端部18aは後端部18bよりも上方に位置している。つまり、前端部18aは、後端部18bに対して車体10の上下方向にオフセットしている。このため、バー18を燃料タンク21の下面21aに沿わせて容易に配置することができる。
【0047】
図5は、図2に示されたバー18を拡大して表している。該バー18は、車体10の下方へ凸となるように湾曲、つまり弓形に形成されている。ここで、該バー18の前端部18aの上面と後端部18bの上面とに接する直線25のことを接線25という。
【0048】
図6(a)は、車体10に対するバー18の取付構造の分解状態を示している。図6(b)は、車体10に対してバー18を取り付けた状態を示している。図6(c)は、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込んで、溶接した状態を示している。
【0049】
バー18は、断面矩形状の角棒であって、幅広の面を車体10に取り付けることになる。該バー18の前端部18aは、上下貫通した1個のボルト挿通孔18cを有している。該ボルト挿通孔18cは、真円状の丸孔である。前クロスメンバ13に前端部18aを取り付けるには、先ず、前クロスメンバ13の取付面13cに前端部18aを重ね合わせ、該ボルト挿通孔18cに下からボルト31を通して、前クロスメンバ13のナット32にねじ込む。このように、バー18の前端部18aは、前クロスメンバ13の下面13aに重ね合わされるとともに、前端部18aを上下貫通したボルト31(結合部材31)によって取り付けられている。
【0050】
このように、バー18の前端部18aは、前クロスメンバ13の下面13a、つまり取付面13cに重ね合わされるとともに、上下貫通した結合部材31によって前クロスメンバ13に強固に取り付けられる。図3に示されるように、前クロスメンバ13は、左右のリヤサイドフレーム14,16の前端部14a,16a間に掛け渡されている、車体10の高強度部材である。このため、バー18は、後面衝突の際に大きい抗力を発生することが可能である。
【0051】
一方、バー18の後端部18bは、後クロスメンバ17にブラケット27によって取り付けられる。該ブラケット27は、バー18の後端部18bを車体10の下方から包み込みつつ後クロスメンバ17の下面17dに取り付ける部材であって、上が開放されたハット状断面に形成されている。
【0052】
詳しく述べると、該ブラケット27は、水平な底板27aと、該底板27aの左右両端から上方へ延びて互いに対面し合う左右の側板27b,27cと、左右の側板27b,27cの上端から互いに相反する方向へ水平に延びる左右のフランジ27d,27eとからなる。このように、該ブラケット27は、底板27aと左右の側板27b,27cとによって略U字状断面に形成されるとともに、上端に左右のフランジ27d,27eを有している。
【0053】
底板27aは、バー18の後端部18bの下面18eに対面することが可能に、重ね合わされている。左右の側板27b,27cは、バー18の後端部18bの側面18d,18dに対面することが可能である。該側板27b,27cは、側面18d,18dに臨む矩形状の開口27f,27fを有しており、該開口27f,27fを形成している縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接(MIG welding(metal inert gas welding))によって接合することが可能に、重ね合わされている。
【0054】
左右のフランジ27d,27eは、後クロスメンバ17の下面17dに重ね合わせて取り付けられる部分であって、上下貫通したボルト挿通孔27h,27hを有している。後クロスメンバ17の下面17dは、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hに対応した位置に、上下貫通した2個のボルト挿通孔17e,17eを有している。該ボルト挿通孔17e,17eは、真円状の丸孔である。これに対し、フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、バー18の長手方向に平行な長孔状に設定されている。
【0055】
後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eと、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、ボルト33,33(結合部材33,33)を上下方向に通すことが可能である。フランジ27d,27eは、各々のボルト挿通孔27h,27hを通されたボルト33,33によって、後クロスメンバ17に取り付けられる。フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hが長孔によって構成されているので、後クロスメンバ17の下面17dにフランジ27d,27eをボルト止めするときに、各々のボルト挿通孔17e,17e,27h,27hの位置合わせが容易である。
【0056】
後クロスメンバ17にバー18の後端部18bを取り付ける方法は、例えば次の2つがある。
第1の取付方法は次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込む。次に、後クロスメンバ17の下面17dにバー18の後端部18b及び左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、ボルト挿通孔17e,17e,27h,27h同士の位置合わせをする。次に、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hと、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eとに、下からボルト33,33を通して、後クロスメンバ17のナット34,34にねじ込む。最後に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合して、取付作業を完了する。
【0057】
第2の取付方法は次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込んで、互いの位置合わせをする。次に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合する。次に、後クロスメンバ17の下面17dにバー18の後端部18b及び左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、ボルト挿通孔17e,17e,27h,27h同士の位置合わせをする。最後に、左右のフランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hと、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eとに、下からボルト33,33を通して、後クロスメンバ17のナット34,34にねじ込んで、取付作業を完了する。
【0058】
このように、ブラケット27の左右の側板27b,27cに形成されている開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合することができる。このため、ブラケット27はバー18の後端部18bを強固に包み込んで一体化することができる。しかも、開口27f,27fを通して、バー18の後端部18bの側面18d,18dとブラケット27の左右の側板27b,27cとを、容易に且つ効率良く接合することができる。
【0059】
以上の説明のように、ブラケット27はバー18の後端部18bを下方から包み込むようにして、後クロスメンバ17に取り付けている。このため、バー18の後端部18bを後クロスメンバ17に強固に取り付けることができるとともに、バー18の撓み変形を抑制することができる。
【0060】
さらには、ブラケット27は、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジフランジ27d,27eを有した、いわゆる略ハット状断面に形成されている。このような簡単な構成のブラケット27によって、バー18の後端部18bを車体10の下方から包み込みつつ後クロスメンバ17の下面17dに強固に取り付けることができる。
【0061】
なお、フランジ27d,27eのボルト挿通孔27h,27hは、長孔の代わりに、図6(d)に示されるように、後クロスメンバ17のボルト挿通孔17e,17eよりも大径の丸孔に形成されてもよい。
【0062】
以上に述べた車体後部構造の作用を次に説明する。
図7に示されるように、車体10の後部に後方から後突車両などの衝突物35が衝突した、いわゆる後面衝突が発生した場合には、白抜き矢印のように、衝突物35から後クロスメンバ17へ衝突荷重Fb(衝突エネルギー)が作用する。この結果、後クロスメンバ17は、車体前方へ塑性変形しようとする。
【0063】
バー18に相当する部材を有していない「一般的な車体」では、後クロスメンバ17は両端が左右のリヤサイドフレーム14,16に接合されているだけの、いわゆる両端固定梁の構造である。このため、後クロスメンバ17には大きい曲げモーメントが生じる。衝突荷重Fbに対する後クロスメンバ17の変形を抑制するために、例えば、後クロスメンバ17及び該後クロスメンバ17に接合されている左右のリヤサイドフレーム14,16の強度や剛性を高める必要がある。
【0064】
これに対して、本実施例では、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aとが、バー18によって連結されている。このため、衝突物35から後クロスメンバ17へ作用した衝突荷重Fbは、該後クロスメンバ17からバー18を介して前クロスメンバ13に伝わる。このように、前クロスメンバ13と後クロスメンバ17とバー18とを組み合わせた複合体によって、衝突荷重Fbを受け止めることができる。
【0065】
さらには、後面衝突の際に、バー18の長手方向に発生する抗力(衝突荷重に対する逆向きの力)によって、後クロスメンバ17の変形を極力抑制することができる。従って、後クロスメンバ17の変形を極力抑制することができる。このように、該バー18はステイ(stay)の役割を果たしている。また、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aをバー18により支えることによって、後クロスメンバ17や左右のリヤフレーム14,16の負担を軽減することができる。この結果、後クロスメンバ17や左右のリヤフレーム14,16の強度や剛性を低減することができるので、車体10の軽量化を図ることができる。しかも、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bと、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aとを、バー18によって連結するだけの、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、車体10の後部を補強することができる。
【0066】
さらには、図8に示されるように、バー18が車体下方へ凸となるように湾曲している。このため、後クロスメンバ17から前端部18aへ伝わった、バー18の長手方向の衝突荷重Fbによって、バー18は図中の太い破線によって示すように下方に撓む。従って、変形したバー18が燃料タンク21に当たって押し上げる心配はない。
【0067】
さらには、図6に示されるように、バー18の後端部18bをブラケット27により車体10の下方から包み込むようにして、後クロスメンバ17の下面17dに取り付けている。このため、ブラケット27によって、バー18の後端部18bを後クロスメンバ17に強固に取り付けることができる。しかも、バー18の後端部18bの下面18eは、車体10の下方から包み込むブラケット27によって、下から押さえられる。このため、図9に示されるように、衝突荷重Fbによってバー18が車体10の下方へ変形することを、抑制することができる。従って、バー18を下方へ撓み変形させようとする衝突荷重Fbに対して、該バー18に生じる抗力(逆向きの力)は大きい。
【0068】
さらに、図4に示されるように、後クロスメンバ17は、左右のリヤサスペンション43,44のロアアーム45,46を支持するために、車幅方向中央部17aが車幅方向両端部17b,17bよりも低く設定されている。このため、図9に示されるように、衝突荷重Fbが後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aに作用したときに、後クロスメンバ17には、左右のリヤフレーム14,16に接合された車幅方向両端部17b,17bの基端を基準に、後方へ倒れる方向の曲げモーメントM1が生じる。これに対して、車体10の下方へ凸となるように湾曲しているバー18の後端部18bは、車体10の下方から包み込むブラケット27によって、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aに取り付けられている。後クロスメンバ17からバー18の後端部18bに伝わった衝突荷重Fbは、バー18を車体10の下方へ撓み変形させようとする。このとき、バー18には、下方へ変形させようとする衝突荷重Fbに対して、抗力が生じる。この結果、バー18には、上記曲げモーメントM1を打ち消す方向のモーメントM2、いわゆる逆向きモーメントM2が生じる。従って、後クロスメンバ17の倒れを抑制することができる。
【0069】
さらには、バー18は、後クロスメンバ17の車幅方向中央部17aから、前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bまで、車体10の前後方向に延びている。このため、後クロスメンバ17に作用した衝突荷重Fbを、バー18を介して前クロスメンバ13の車幅方向中央部13bに効率良く伝えることができる。
【実施例2】
【0070】
実施例2の車体後部構造を説明する。図10は、実施例2の車体10Aのバー18の両端の取付構造を示している。実施例2の車体10Aは、上記図6(a)〜図6(c)に示される実施例1のブラケット27を、図10に示されるブラケット27Aに変更したことを特徴とし、他の構成及び作用については上記図1〜図9に示される車体10の構成及び作用と同じなので、説明を省略する。
【0071】
具体的には、実施例2のブラケット27Aの左右のフランジ27d,27eは、後クロスメンバ17に対してボルト止めではなく、溶接していることを特徴とする。このため、左右のフランジ27d,27eはボルト挿通孔を有していない。底板27aは、上下貫通した1個のボルト挿通孔27iを有している。該ボルト挿通孔27iは、バー18の長手方向に平行な長孔状に設定されている。一方、バー18の後端部18bの下面18eは、ボルト挿通孔27iに対応した1個のネジ孔18fを有している。
【0072】
後クロスメンバ17にバー18の後端部18bを取り付ける方法は、例えば次の通りである。先ず、バー18の後端部18bにブラケット27を差し込む。次に、ボルト挿通孔27iにボルト38を差し込んで、ネジ孔18fに緩くねじ込む(仮り止め)。次に、後クロスメンバ17の下面17dに左右のフランジ27d,27eを重ね合わせて、溶接する。次に、ネジ孔18fにボルト38を堅くねじ込む。最後に、開口27f,27fの縁27g,27gを、バー18の後端部18bの側面18d,18dにミグ溶接によって接合して、取付作業を完了する。
【0073】
なお、本発明では、バー18は、矩形断面の角棒に限定されるものではなく、例えば矩形断面の角パイプや断面コ字状のバーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の車体後部構造は、乗用車の車体に適用するのに好適である。
【符号の説明】
【0075】
10,10A…車体、13…前クロスメンバ、13a…下面、13b…車幅方向中央部、14,16…左右のリヤサイドフレーム、14a,16a…前端部、17…後クロスメンバ、17a…車幅方向中央部、17b…車幅方向両端部、17c…アーム支持部、17d…下面、17e…ボルト挿通孔、18…バー、18a…前端部、18b…後端部、18d…側面、21…燃料タンク、21a…下面、23…タンク支持バー、27,27A…ブラケット、27b,27c…側板、27d,27e…フランジ、27f…開口、27g…開口を形成している縁、27h,27i…ボルト挿通孔、31…結合部材(ボルト)、33…ボルト、43,44…左右のリヤサスペンション、45,46…ロアアーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い左右のリヤサイドフレームと、
該左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている前クロスメンバと、
該前クロスメンバの後方に位置し、前記左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡されている後クロスメンバとからなり、
該後クロスメンバは、車幅方向両端部に対して車幅方向中央部を低く設定されており、
該車幅方向中央部は、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部を有している、車体後部構造であって、
バーとブラケットとを有しており、
前記バーは、前記前クロスメンバの車幅方向中央部と、前記後クロスメンバの前記車幅方向中央部とを、連結するための部材であって、車体の下方へ凸となるように湾曲し、
前記ブラケットは、前記後クロスメンバの車幅方向中央部の下面に位置している前記バーの後端部を、前記車体の下方から包み込みつつ前記後クロスメンバの下面に取り付けることが可能な部材であることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に燃料タンクが配置されており、
前記バーは、前記燃料タンクの下を通るように位置していることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有し、
該フランジは、前記後クロスメンバの下面に重ね合わせて取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記バーの後端部の側面に対面する側板を有し、
該側板は、前記側面に臨む開口を有し、該開口を形成している縁を前記側面にミグ溶接によって接合することが可能に、前記バーに重ね合わされていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記バーの前端部は、前記バーの後端部に対して前記車体の上下方向にオフセットしていることを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記バーは、車体前後方向に延びていることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記バーに対して側方に位置するタンク支持バーを、更に有しており、
前記燃料タンクは、前記バーと前記タンク支持バーとによって前記車体に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【請求項8】
前記バーは、前記燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、前記燃料タンクを保護することが可能な部材であることを特徴とする請求項7記載の車体後部構造。
【請求項9】
前記バーの前端部は、前記前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、前記前端部を上下貫通した結合部材によって取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【請求項10】
前記後クロスメンバの下面及び前記フランジは、ボルトを上下方向に通すことが可能なボルト挿通孔を、それぞれ有し、
前記フランジのボルト挿通孔は、前記後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定され、
前記フランジは、前記各々のボルト挿通孔を通された前記ボルトによって、前記後クロスメンバの下面に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【請求項1】
車体の後部に、車幅方向に互いに離れて位置している、車体前後方向に細長い左右のリヤサイドフレームと、
該左右のリヤサイドフレームの前端部間に掛け渡されている前クロスメンバと、
該前クロスメンバの後方に位置し、前記左右のリヤサイドフレーム間に掛け渡されている後クロスメンバとからなり、
該後クロスメンバは、車幅方向両端部に対して車幅方向中央部を低く設定されており、
該車幅方向中央部は、左右のリヤサスペンションのロアアームを支持するためのアーム支持部を有している、車体後部構造であって、
バーとブラケットとを有しており、
前記バーは、前記前クロスメンバの車幅方向中央部と、前記後クロスメンバの前記車幅方向中央部とを、連結するための部材であって、車体の下方へ凸となるように湾曲し、
前記ブラケットは、前記後クロスメンバの車幅方向中央部の下面に位置している前記バーの後端部を、前記車体の下方から包み込みつつ前記後クロスメンバの下面に取り付けることが可能な部材であることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に燃料タンクが配置されており、
前記バーは、前記燃料タンクの下を通るように位置していることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、略U字状断面に形成されるとともに、上端にフランジを有し、
該フランジは、前記後クロスメンバの下面に重ね合わせて取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記バーの後端部の側面に対面する側板を有し、
該側板は、前記側面に臨む開口を有し、該開口を形成している縁を前記側面にミグ溶接によって接合することが可能に、前記バーに重ね合わされていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記バーの前端部は、前記バーの後端部に対して前記車体の上下方向にオフセットしていることを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記バーは、車体前後方向に延びていることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記バーに対して側方に位置するタンク支持バーを、更に有しており、
前記燃料タンクは、前記バーと前記タンク支持バーとによって前記車体に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の車体後部構造。
【請求項8】
前記バーは、前記燃料タンクの下面の少なくとも一部を覆うことによって、前記燃料タンクを保護することが可能な部材であることを特徴とする請求項7記載の車体後部構造。
【請求項9】
前記バーの前端部は、前記前クロスメンバの下面に重ね合わされるとともに、前記前端部を上下貫通した結合部材によって取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【請求項10】
前記後クロスメンバの下面及び前記フランジは、ボルトを上下方向に通すことが可能なボルト挿通孔を、それぞれ有し、
前記フランジのボルト挿通孔は、前記後クロスメンバのボルト挿通孔よりも大径に設定され、又は長孔状に設定され、
前記フランジは、前記各々のボルト挿通孔を通された前記ボルトによって、前記後クロスメンバの下面に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の車体後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−6053(P2011−6053A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31544(P2010−31544)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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