説明

車体構造のサイドメンバ

【課題】発明は正面壁の領域で互いに接合されるフロントサイドメンバとキャビン底領域のキャビンサイドメンバとから構成された車体構造のサイドメンバに関する。
【解決手段】発明によるとフロントサイドメンバ2APは管状のアルミニウム押出し断面にされる。キャビンサイドメンバ3は閉断面サイドメンバとして、底・アルミニウム板4ABと、上側でそれに接続する熱間成形鋼のサイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWとしてのサイドメンバ・山形断面とによって形成され、フロントサイドメンバ2APとキャビンサイドメンバ3は垂直縦面で整合し、その場合、フロントサイドメンバ2APの後側は正面壁6で終了し、一方、重なり部分10SWのあるキャビンサイドメンバ3の前側は正面壁6を通って導かれ、それによってフロントサイドメンバ2APに密着してそこで接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念部に記載された車体構造のサイドメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車体構造のサイドメンバはDE102004012804A1で知られており、フロントサイドメンバとキャビン底領域のキャビンサイドメンバの2つのサイドメンバ部分から構成され、2つのサイドメンバ部分は正面壁の領域で互いに接合される。
【0003】
具体的には従来の鋼板・車体構造がここでは問題となり、2つの支持部分の接合が二重板に重合わせて溶接接合で行われる。キャビンサイドメンバは中空断面サイドメンバであり、縦方向に延び上方に開き下を底板にした帽子状断面で、帽子の縁に溶接で底板が接合されるように形成され、それによってサイドメンバ中空断面が全体として比較的割れ目の多い流れの好ましくない基部構造で下方に突出する。フロントサイドメンバも外壁に関連して類似の帽子状断面によって溶接で作られる。この従来の鋼板・車体構造には重量軽減の特別の対策が取られていない。
【0004】
またDE10257259A1でアルミニウム・車体構造の前部フレームが知られており、ここでは側方に開くアルミニウム押出し断面としてのフロントサイドメンバは正面壁領域でアルミニウム鋳造構造部にねじ接合される。特にキャビン底領域におけるアルミニウム鋳造構造部の詳細はここでは記載されていない。この車体領域はアルミニウム軽構造として作られるが、しかしアルミニウム材料だけの使用はとりわけ必要な剛性を得るためにも手間がかかり、かつコスト高になる。
【0005】
一般に知られた方法によると、流線型形態の最近の車体の場合、重量軽減によって燃料消費を減らすために、鋼板に追加して材料のミックスで軽金属または軽金属合金、特にアルミニウム材料も使用される。軽金属構成部分の剛性と接合技術は従来の鋼板構造だけのものとは異なり、その結果、それによって発生する問題、すなわち構成部分を適切に組み合わせる際にそれぞれの車体箇所に非常に調和する材料のミックスについての問題と、大量生産用の低コストで適切な接合技術についての問題を解決しなければならない。
【0006】
さらにUS6929314B2でフロントサイドメンバと底サイドメンバを備えた複数部材のサイドメンバ構造が知られており、この場合、正面壁領域においてアルミニウム鋳物の2壁部材から互いに接合される。
【0007】
またDE10151211B4でフロントサイドメンバと底サイドメンバを備えた鋼製のフレーム構造が知られており、この場合、底サイドメンバは折れ曲がり部分を介してフロントサイドメンバに接合される。
【0008】
最後になるが、US6099071Aで、正面壁を介して底サイドメンバに接合されるアルミニウム管のフロントサイドメンバが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE102004012804A1
【特許文献2】DE10257259A1
【特許文献3】US6929314B2
【特許文献4】DE10151211B4
【特許文献5】US6099071A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の課題はこの種の従来の車体構造のサイドメンバにおいて、必要な剛性と高い衝突安全性を備え、さらに接合技術が大量生産に適した軽量構造をもつサイドメンバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、フロントサイドメンバを管状のアルミニウム押出し断面にし、キャビンサイドメンバを閉断面サイドメンバとして、底・アルミニウム板と、上側でそれに接続する熱間成形鋼のサイドメンバ・鋼閉鎖部分としてのサイドメンバ・山形断面とによって形成することによって解決される。フロントサイドメンバとキャビンサイドメンバは縦面において整合して配置し、その場合、フロントサイドメンバの後側は正面壁で終了し、キャビンサイドメンバの前側のサイドメンバ・鋼閉鎖部分の重なり領域は正面壁を通って導かれる。それによってキャビンサイドメンバはフロントサイドメンバの後側領域に重なって密着し、そこでこの領域に接合される。
【0012】
特に、異なった材料にもかかわらず重なり部分によって正面壁において2つのサイドメンバ部分の機能的な分離が発生せず、その結果、剛性が急変することなく力の流れが最適になるので、ここで使用する構造部分の材料のミックスによって必要な剛性と高い衝突安全性が保証される。そのうえ、鋼・重なり部分とアルミニウム・フロントサイドメンバの間で大量生産に非常に適した接合技術が可能になる。
【0013】
フロントサイドメンバはアルミニウム矩形管として実施するのが特に好ましい。この場合、重なり部分はサイドメンバ・鋼閉鎖部分の鋼フランジとして側面が縦に延びる壁延長部である。このような鋼フランジはアルミニウム矩形管の垂直壁に密着し、ねじ接合によって接合される。そのため、鋼フランジには穴パターンを設け、接着とともにセルフタッピングねじを使ってねじ接合が行われる。接合領域のこのような接合によって、密封と腐食防止とともに高い剛性が得られる。
【0014】
鋼フランジは山形状サイドメンバ・鋼閉鎖部分の車両外側となる垂直壁の前方延長部として実施することができる。キャビンサイドメンバを矩形断面で作るために、このようなサイドメンバ・鋼閉鎖部分は縦に延びる底板・折り段に関連して使用される。この場合、底板・折り段はキャビンサイドメンバの底と車両中心側となる垂直側壁とを形成し、サイドメンバ・鋼閉鎖部分はキャビンサイドメンバの天井とキャビンサイドメンバの車両側方となる垂直壁を形成する。
【0015】
正面壁への移行部と前部キャビン底はアルミニウム鋳造構造部として形成され、その一方側にフロントサイドメンバが支持、接続され、他方側に底・アルミニウム板がつながる。さらに、そこを通ってサイドメンバ・鋼閉鎖部分の重なり部分、特に鋼フランジが導かれ、通過箇所は密封される。
【0016】
アルミニウム鋳造構造部は関連するフロントサイドメンバの少なくとも一方側を正面支持領域から始まる係止領域で取り囲むようにする実施形態が特に好ましい。その場合、この係止領域はそれぞれのフロントサイドメンバの関連領域で平坦に接合するのが好ましい。好ましくは関連するフロントサイドメンバの対向する側に配置された複数の係止領域を設け、したがってフロントサイドメンバを対向する側で取り囲む実施形態がここでは特に好ましい。対向する係止領域がU形側部を形成し、それに対し正面支持領域がU形基部を形成するほぼU形状の具体的な形態がここでは好ましい。全体として見ると、このような構造で、特に有利で安定した剛性のある接合が提供される。
【0017】
上記具体的な形態に関連し、平坦に接合する鋼フランジを関連する係止領域に密着させ、さらに鋼フランジの外の領域で鋼フランジ・移行段を使ってフロントサイドメンバに平坦に接合するよう移行すると特に有利となる。鋼フランジに関連する係止領域にも、関連する鋼フランジの穴パターンに整合する穴パターンを設けるのが好ましい。しかし基本的にはフロントサイドメンバに別の係止領域・ねじ接合を設けることもできる。
【0018】
フロントサイドメンバは車両縦方向に直線状に延びてキャビン底に比べて高い位置に配置される。この場合、キャビンサイドメンバの前部領域には上方に湾曲する高さ調整領域が備わる。
【0019】
サイドメンバ・鋼閉鎖部分の鋼フランジがねじ接合によってアルミニウム・フロントサイドメンバに接合されるが、一方、アルミニウム板部分および/またはアルミニウム鋳造部分として作られた正面壁と、底・アルミニウム板とに対するサイドメンバ・鋼閉鎖部分の接続はリベット接合、好ましくはリベット接合と接着によって行われる。
【発明の効果】
【0020】
フロントサイドメンバを管状のアルミニウム押出し断面にし、キャビンサイドメンバを閉断面サイドメンバとして、底アルミニウム板と、上面がそこに接続する熱間成形鋼のサイドメンバ・鋼閉鎖部分としてのサイドメンバ・山形断面とによって形成することによって、異なった材料にもかかわらず重なり部分によって正面壁において2つのサイドメンバ部分の機能的な分離が発生せず、その結果、剛性が急変することなく力の流れが最適になり、ここで使用する構造部分の材料のミックスによって必要な剛性と高い衝突安全性が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車体構造の左側サイドメンバを斜め上方から見た図を示す。
【図2】図1の線A−Aにそって切断した概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および2に、フロントサイドメンバ2APとキャビンサイドメンバ3から構成された車体構造のサイドメンバ1を示す。フロントサイドメンバ2APは車両縦面で水平方向に前方に向かうアルミニウム矩形管の形をしたアルミニウム押出し断面であり、キャビンサイドメンバの垂直縦面に整列して接合される。
【0023】
それに対し、キャビンサイドメンバ3は閉断面サイドメンバとして、サイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWと関連して底・アルミニウム板4ABの折り段によって形成される。このサイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWは熱間成形鋼から作られ、上から底・アルミニウム板4AB上に載せられ、リベットによって接合される。キャビンサイドメンバ3は正面壁6から後端板7ABまで連続して延びる。
【0024】
正面壁6は正面・アルミニウム板要素8ABとアルミニウム・鋳造構造部9AGから形成される。アルミニウム・鋳造構造部9AGはトラフ状に湾曲して下方の底・アルミニウム板4ABにつながり、とりわけサイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWとともに、高い位置にあるフロントサイドメンバ2APと低い位置にあるキャビンサイドメンバ3との間で高さ調整を行う機能を有する。
【0025】
山形状のサイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWは、垂直壁の前方延長部として、フロントサイドメンバ2APの対応する垂直壁11に隣接する鋼フランジ10SWを備える。鋼フランジ10SWは穴パターン12を備え、そこでセルフタッピングねじ接合13によってフロントサイドメンバ2APに接合される。この接合は接着材を追加して、さらに正面壁6の通過箇所に充填材を追加して行われる。
【0026】
図2の概略図から明らかなように、フロントサイドメンバ2APの後側は、少なくとも部分的に正面壁6を形成するアルミニウム・鋳造構造部9AGの正面支持領域22AGで支持され、キャビンサイドメンバ3のキャビン・垂直縦面に整列する。車両外側に向ってサイドメンバ・鋼閉鎖部分5SWのリベット接合14によって別のアルミニウム構成要素15ABに接続し、別のリベット接合16を介して特にAピラー・内側板17に接合される。
【0027】
さらに図2で明らかなように、アルミニウム・鋳造構造部9AGは正面支持領域22AGにおいて、そこからU型に突出する2つの係止領域19AGおよび20AGを備え、関連するフロントサイドメンバ領域を横から取り囲み、そこで接触結合で密着する。
【0028】
さらに鋼フランジ10SWが係止領域19AGに平坦に接続するよう配置され、フロントサイドメンバ2APに平坦に接続して同様に平坦に接続密着するために、鋼フランジ10SWは鋼フランジ・移行段21によって係止領域19AGを越えて延長される。
【0029】
接合はここでは基本的に接着によって行われる。しかし、これに代えて、またはこれに追加して、前述したようにねじ接合13が設けられる。係止領域19AGの領域で欠点のないねじ接合を行うために、この係止領域19AGには鋼フランジ10SWの穴パターン12に適合する穴パターンを備えるのが好ましい。
【0030】
符号に関連して使用される略号において、AGはアルミニウム鋳物を、ABはアルミニウム板を、APはアルミニウム押出し断面を、またSWは熱間成形鋼を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は車体構造のサイドメンバとして利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 サイドメンバ
2AP フロントサイドメンバ
3 キャビンサイドメンバ
4AB 底・アルミニウム板
5SW サイドメンバ・鋼閉鎖部分
6 正面壁
7AB 後端板
8AB 正面・アルミニウム板要素
9AG アルミニウム鋳造構造部
10SW 鋼フランジ
11 垂直壁
12 穴パターン
13 ねじ接合
14 リベット接合
15AB アルミニウム構成要素
16 リベット接合
17 Aピラー・内側板
18 底板・折り段
19AG 係止領域
20AG 係止領域
21 鋼フランジ・移行段
22AG 正面支持領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面壁(6)の領域で互いに接合されるフロントサイドメンバ(2AP)とキャビン底領域のキャビンサイドメンバ(3)とから構成された車体構造のサイドメンバにおいて、
フロントサイドメンバ(2AP)は管状のアルミニウム押出し断面であり、
キャビンサイドメンバ(3)は閉断面サイドメンバとして、底・アルミニウム板(4AB)と、上側でそれに接続する熱間成形鋼のサイドメンバ・鋼閉鎖部分(5SW)としてのサイドメンバ・山形断面とによって形成され、
フロントサイドメンバ(2AP)とキャビンサイドメンバ(3)は垂直縦面で整合し、その場合、フロントサイドメンバ(2AP)の後側は正面壁(6)で終了し、一方、重なり部分(10SW)のあるキャビンサイドメンバ(3)の前側は正面壁(6)を通って導かれ、それによってフロントサイドメンバ(2AP)に密着してそこで接合(13)される
ことを特徴とするサイドメンバ。
【請求項2】
フロントサイドメンバ(2AP)はアルミニウム矩形管として形成され、
重なり部分はサイドメンバ・鋼閉鎖部分(5SW)の鋼フランジ(10SW)として側面が縦に延びる壁延長部であり、
鋼フランジ(10SW)はアルミニウム矩形管の垂直壁(11)に接合される
ことを特徴とする請求項1に記載のサイドメンバ。
【請求項3】
鋼フランジ(10SW)には穴パターン(12)が設けられ、ねじ接合(13)はセルフタッピングねじによって接着とともに行われることを特徴とする請求項2に記載のサイドメンバ。
【請求項4】
鋼フランジ(10SW)は、縦に延びる底板・折り段に関連して断面が矩形のキャビンサイドメンバ(3)が形成される山形状サイドメンバ・鋼閉鎖部分(5SW)の車両外側となる垂直壁の前方延長部であることを特徴とする請求項2または3に記載のサイドメンバ。
【請求項5】
正面壁への移行部と前部キャビン底はアルミニウム鋳造構造部(9AG)として形成され、その一方側にフロントサイドメンバ(2AP)が支持、接続され、他方側に底・アルミニウム板(4AB)がつながり、それを通ってサイドメンバ・鋼閉鎖部分(5SW)の重なり部分、特に鋼フランジ(10SW)が導かれ、通過箇所は密封されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサイドメンバ。
【請求項6】
アルミニウム鋳造構造部(9AG)は関連するフロントサイドメンバ(2AP)の少なくとも一方側を正面支持領域(22AG)から始まる係止領域(19AG,20AG)で特に平坦に接合するよう取り囲み、および/または対向側を対向係止領域(19AG,20AG)で取り囲むことを特徴とする請求項5に記載のサイドメンバ。
【請求項7】
平坦に接合する鋼フランジ(10SW)は関連する係止領域(19AG)に密着し、さらに鋼フランジ(10SW)の外側の領域で鋼フランジ・移行段(21)または鋼フランジ・曲がり部を使ってフロントサイドメンバ(2AP)に平坦に接合するよう移行することを特徴とする請求項6に記載のサイドメンバ。
【請求項8】
鋼フランジ(10SW)に関連する係止領域(19AG)に、関連する鋼フランジ(10SW)の穴パターンに整合する穴パターンが設けられ、および/または少なくとも1つの係止領域(19AG,20AG)はねじ接合(13)によってフロントサイドメンバ(2AP)に接合されることを特徴とする請求項6または7に記載のサイドメンバ。
【請求項9】
フロントサイドメンバ(2AP)は車両縦方向に直線状に延びてキャビン底に比べて高い位置に配置され、キャビンサイドメンバ(3)の前部領域で上方に湾曲する高さ調整領域が設けられることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のサイドメンバ。
【請求項10】
アルミニウム板部分および/またはアルミニウム鋳造部分として作られた正面壁(6)と、底・アルミニウム板(4AB)とに対するサイドメンバ・鋼閉鎖部分(5SW)の接続はリベット接合、好ましくはリベット接合と接着によって行われることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のサイドメンバ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−84269(P2011−84269A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230122(P2010−230122)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(500085758)アウディー アーゲー (41)
【Fターム(参考)】