説明

車体構造

【課題】 車体構造において、所定の取付強度を維持しつつ、部品点数を少なくすることができ、コストを低減することができるとともに軽量化を図る。
【解決手段】 パネル4が支持フレーム2,3間に固定され、パネル4の一方の面側に配置されたナット24にパネル4の他方の面側からねじ込むボルト22によって、パネル4の他方の面に車両用装備品を取り付けるようにした車体構造であって、パネル4の一方の面側に、断面コ字形状の補強フレーム30を、パネル4の反対側へ開口部30aが向けられた状態に配設するとともに、補強フレーム30内にナット24を配設し、さらに、補強フレーム30を、支持フレーム2,3間に架設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両における車両用装備品を取り付けるための車体構造として、シートベルトのアンカ部材の取付強度を高めるための技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車体構造では、車体のフロアパネルのシートベルトのアンカ部材の取付部に略U字形状のアンカステイの両端部が固定され、フロアパネルと略U字形状のアンカステイとによって形成される閉空間にプロペラシャフトを貫通させ、さらに、車体を支持するクロスメンバの後側に取り付けられたブラケットの貫通口に、前記略U字形状のアンカステイの中央部が遊挿されている。
【0004】
このような車体構造によれば、アンカステイがフロアパネルの変形を阻止する規制部材として機能するようになっており、これによって、シートベルトのアンカ部材の取付強度が高められるようになっている。
【0005】
また、その他の車体構造として、図9に示すように、フロアパネルPに平板状のブラケットBが取り付けられ、このブラケットBに断面ハット形状の補強フレームFがさらに取り付けられることにより、シートベルトのアンカ部材Aの取付部位が補強されたものも知られている。
【特許文献1】特開平10−264767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の車体構造では、シートベルトのアンカ部材の取付強度を高めるため、フロアパネル側からクロスメンバ側へ連結するアンカステイを別途設ける必要があった。また、このようなアンカステイを介する構造であるため、アンカ部材からの荷重が補強部材であるクロスメンバに直接伝わらないという難点があった。
【0007】
また、図9に示した車体構造は、フロアパネルPと補強フレームFとの間にブラケットBが介設されるという簡単な構造であるが、ブラケットBが介設される分、アンカ部材Aからの荷重が補強フレームFに直接伝わらなかった。この場合、ブラケットBを排除することが考えられるが、そうすると、取付部位の強度が低下するおそれがあるため採用できない。
【0008】
そこで、本発明では、所定の取付強度を維持しつつ、部品点数を少なくすることができ、コストを低減することができるとともに軽量化を図ることができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決した本発明のうち請求項1に係る車体構造は、車体を構成するパネルが支持フレーム間に固定され、前記パネルの一方の面側に配置されたナットに前記パネルの他方の面側からねじ込むボルトによって、前記パネルの他方の面に車両用装備品を取り付けるようにした車体構造であって、前記パネルの一方の面側に、断面コ字形状の補強フレームを、前記パネルの反対側へ開口部が向けられた状態に配設するとともに、前記補強フレーム内の底部に前記ナットを配設し、さらに、前記補強フレームを、前記支持フレーム間に架設したことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、パネルの他方の面側からパネルの一方の面側の断面コ字形状の補強フレームの底部に配設されたナットにボルトをねじ込むことにより、パネルの他方の面側に車両用装備品を取り付けることができる。補強フレームは、パネルの反対側へ開口部が向けられた状態でパネルの一方の面側に配設されるとともに、パネルが固定されている支持フレーム間に架設されているので、車両用装備品は、取付強度が高められた状態で補強フレームに固定されることとなる。しかも、従来のように、パネルと補強フレームとの間にアンカステイやブラケットが介設される構造ではないので、車両用装備品からの荷重が補強フレームに対して直接的に伝わることとなり、効率的な荷重伝達が行われる。
さらには、車両用装備品をパネルに取り付けるための部材は、ナットを備えた補強フレームとボルトだけで済み、部品数が少なく構成も簡単になる。したがって、組み付けが行い易く、軽量化を図ることができるとともに、コストを低減することができ、さらには、取付スペースの狭小化を図ることもできる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体構造において、前記補強フレームは、前記支持フレームに対して溶接付けにより固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、補強フレームが、支持フレームに対して溶接付けにより固定されているので、車両用装備品からの荷重が補強フレームを介して支持フレームに直接伝えられることとなり、効率的な荷重伝達が行われる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の車体構造において、前記補強フレームは、前記車体の前後方向に延設されて前記支持フレーム間に架設されており、前記ボルトによりシートベルトのアンカ部材が取付可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、補強フレームが車体の前後方向に延設されているので、例えば、急ブレーキ等によりアンカ部材から補強フレームに伝わる荷重は、前後方向に延設された補強フレームによって受け止められる状態となる。すなわち、補強フレームが車体の前後方向に延設されているため、補強フレームが荷重に対して突っ張るように作用し、パネルの変形が抑制される。したがって、アンカ部材からの荷重の入力に抗することができ、強度を高めることができる車体構造が実現される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の取付強度を維持しつつ、部品点数を少なくすることができ、コストを低減することができるとともに軽量化を図ることができる車体構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る車体構造の詳細について説明する。なお、説明において、「前後」,「左右」,「上下」は、車体構造の主要部を構成する補強フレームを、車体のリアフロアパネルに取り付けた状態を基準とする。
【0017】
参照する図面において、図1は本発明の一実施の形態に係る車体構造を説明するための車体後部の構造を示す斜視図、図2は同じく車体構造を説明するための車体後部の構造を示す拡大斜視図、図3は同じく主要部を示した拡大斜視図、図4は同じく主要部の分解斜視図、図5は図3のV−V線断面図、図6は補強フレームの取付状態を説明するための模式側面図、図7は補強フレームの拡大斜視図である。
【0018】
はじめに、図1,図2を参照して、本実施形態の車体構造が適用される車体後部の構造について説明する。
車体C後部の構造は、車体Cの左右に配置される一対のリアサイドフレーム1,1と、このリアサイドフレーム1,1間に配置されたミドルクロスメンバ(支持フレーム)2と、このミドルクロスメンバ2の後方にて一対のリアサイドフレーム1,1間に配置されたリアクロスメンバ(支持フレーム)3とを備え、各リアサイドフレーム1,1間にはミドルクロスメンバ2から後方に向かってパネルとしてのリアフロアパネル4が延設されている。
【0019】
一対のリアサイドフレーム1,1の前方には、サイドシル5,5が延設され、このサイドシル5,5間にフロアパネル5Aが接合される。
【0020】
ミドルクロスメンバ2は、車体後部の左右方向に延設された略L字形状の鋼板であり、図6に示すように、リアフロアパネル4の前壁部4Aの背部にあって、前壁部4Aを支持している。より詳しくは、ミドルクロスメンバ2は、前端部に、前壁部4Aの垂直部に接合される垂直フランジ2aを有するとともに、後端部に、前壁部4Aの水平部に接合される水平フランジ2bを有している。なお、前壁部4Aの垂直部の下部はフロアパネル5A(図2参照)へ延設されている。
【0021】
図6に示すように、リアフロアパネル4は、前記した前壁部4Aと、この前壁部4Aの後方に続く上り傾斜状の傾斜壁4Bと、この傾斜壁4Bの後端から垂直に下る垂直壁4Cと、この垂直壁4Cの下端から後方へ水平に続く、水平壁4Dとを主として備えて構成される。そして、傾斜壁4Bの後部下面と垂直壁4Cの前方側面とによって構成される角部に前記リアクロスメンバ3が接合されている。
より詳しくは、リアクロスメンバ3は、前端部に、傾斜壁4Bの水平部4B’に接合される水平フランジ3bを有するとともに、後端部に、垂直壁4Cに接合される垂直フランジ3aを有している。
【0022】
傾斜壁4Bは、図示しないリアシートを固定するための床面を構成しており、また、水平壁4Dは、荷室の床面を構成している。
【0023】
図2に示すように、傾斜壁4Bには、図示しないリアシート上の乗員を拘束するシートベルトのバックルを固定するための固定部10Aが形成されている。この固定部10Aの上面側(パネルの他方の面側)には、本発明の特徴的構成である車体構造を示すものとして、図3に拡大して示すように、車両用装備品としてのシートベルトのアンカ部材20が固定されるようになっている。
【0024】
傾斜壁4Bの固定部10Aの下面側(パネルの一方の面側)には、断面コ字形状を呈する補強フレーム30が車体C(図1参照)の前後方向に向けて固定部10Aの下面に沿う状態に配設されている。本実施形態では、車体C(図1参照)の下方へ開口部30a(図4参照)が向けられた状態で固定部10Aの下面に補強フレーム30が固定されるようになっている。つまり、補強フレーム30は、固定部10Aの下面に補強フレーム30の後記する天板31(図5参照)が当接する状態に固定される。また、補強フレーム30は、このように固定部10Aの下面側に配置された状態で、図6に示すように、その前部31Aが前記ミドルクロスメンバ2に固定されるとともに、その後部31Bが前記リアクロスメンバ3に固定されるようになっている。
【0025】
図7を参照して(適宜図3,図6参照)補強フレーム30を説明すると、補強フレーム30は、天板31と、この天板31に連続する左右の側板32,32とを備えてなり、断面コ字形状(断面ハット形状、図5参照)に形成されている。
天板31は、傾斜壁4B(図3参照)の固定部10Aに沿う傾斜状に形成されており、前部31Aが、ミドルクロスメンバ2の水平フランジ2b(図6参照)に沿う水平板状に延設されているとともに、後部31Bが傾斜壁4B(図6参照)の水平部4B’に沿う水平板状に形成されている。前部31Aには、ビード31aが形成されているとともに、このビード31aの左右両側方には、側板32のフランジ部32Aを前方へ延設して下方へ折曲した折曲壁32a,32aが形成されている。この折曲壁32aは、図6に示すように、ミドルクロスメンバ2の垂直壁に当接可能となっている。また、天板31の後部31Bは、リアクロスメンバ3の水平フランジ3bに当接可能となっている。
【0026】
さらに、天板31には、前後方向に延びるビード部31Cが形成されており、このビード部31Cの前方にアンカ部材20(図3参照)を取り付けるためのボルト孔31Dが形成されている。
【0027】
側板32は、図6に示すように、側面視で略ひし形に形成されており、下端部には、図7に示すように、前後方向に延びるフランジ部32Aが形成されている。このフランジ部32Aは、前記のように、前部31Aに延設されて折曲壁32aと一体に形成されている。
本実施形態では、補強フレーム30がこのような天板31と側板32,32とから構成されることにより、中央から前部31Aと後部31Bに向かうにつれて上下方向に薄く絞られる形状となるように形成されている。そして、補強フレーム30はこのような断面コ字形状に形成されていることから、図5に示すように、アンカ部材20を固定するためのボルト22に螺合するナット24は、補強フレーム30の内側(天板31の下面部)に配置される。つまり、ナット24は、補強フレーム30内に収められ、開口部30aより突出することがない。
【0028】
このような補強フレーム30は、図4に示すように、開口部30aを車体C(図1参照)の下方へ向けて、傾斜壁4Bの下方から固定部10Aの下面に配設し、図6に示すように、補強フレーム30の前部31Aをミドルクロスメンバ2の水平フランジ2bに対してスポット溶接により固定するとともに、後部31Bの天板31をリアクロスメンバ3の水平フランジ3bに対してスポット溶接により固定する。これにより、補強フレーム30は、ミドルクロスメンバ2とリアクロスメンバ3と間に架設された状態に固定される。
【0029】
その後、図4に示すように、アンカ部材20を固定部10Aの上面に配置し、ボルト22をワッシャ23に通した後、これをアンカ部材20の孔20a、固定部10Aの孔4b、補強フレーム30のボルト孔31Dにそれぞれ通して、補強フレーム30の内側に挿入されて予め溶接固定されたナット24に螺合する。このとき、アンカ部材20の前後の縁部20b,20bが固定部10Aに形成された凸部4b’,4b’にそれぞれ係合して、アンカ部材20のボルト22周りの回動が規制される。このようにして、アンカ部材20が傾斜壁4Bの固定部10Aに固定される。
【0030】
以上説明した本実施形態の車体フロア構造によれば、補強フレーム30は、車体Cの下方(パネルの反対側)へ開口部30aが向けられた状態で傾斜壁4Bの固定部10Aの下面側(一方の面側)に配設されるとともに、ミドルクロスメンバ2とリアクロスメンバ3との間に架設されているので、アンカ部材20が取付強度が高められた状態で補強フレーム30に固定されることとなる。しかも、従来のように、アンカステイやブラケットが介設される構造ではないので、図示しないシートベルトからバックル21およびアンカ部材20を通じて補強フレーム30にかかる荷重が、補強フレーム30に対して直接的に伝わることとなり、効率的な荷重伝達が行われる。
さらには、アンカ部材20を傾斜壁4Bに取り付けるための部材は、主としてナット24を備えた補強フレーム30とボルト22だけで済み、部品数が少なく構成も簡単になる。したがって、組み付けが行い易く、軽量化を図ることができるとともに、コストを低減することができ、さらには、取付スペースの狭小化を図ることもできる。
【0031】
また、補強フレーム30が、ミドルクロスメンバ2とリアクロスメンバ3とに溶接付けにより固定されているので、アンカ部材20からの荷重が補強フレーム30を介してミドルクロスメンバ2とリアクロスメンバ3とに(急ブレーキ時などには主としてミドルクロスメンバ2)に直接伝えられることとなり、効率的な荷重伝達が行われる。
【0032】
また、この際、補強フレーム30が車体Cの前後方向に延設されているので、急ブレーキ時などにアンカ部材20から補強フレーム30に伝わる荷重は、補強フレーム30によって受け止められる状態となる。すなわち、補強フレーム30が車体Cの前後方向に延設されているため、補強フレーム30が荷重に対して突っ張るように作用し、傾斜壁4Bの変形が抑制される。したがって、アンカ部材20からの荷重の入力に抗することができ、強度を高めることができる固定構造が得られる。
【0033】
なお、図8に示すように、補強フレーム30の前部31Aの折曲壁32a,32aをミドルクロスメンバ2の垂直壁に対してスポット溶接により固定するようにしてもよい。
また、補強フレームは、車体Cの左右方向に配設され、リアサイドフレーム1,1間に架設されるように構成してもよい。さらに、補強フレームは、シートレール等の固定に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車体構造を説明するための車体後部の構造を示す斜視図である。
【図2】同じく車体構造を説明するための車体後部の構造を示す拡大斜視図である。
【図3】同じく主要部を示した拡大斜視図である。
【図4】同じく主要部の分解斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】補強フレームの取付状態を説明するための模式側面図である。
【図7】補強フレームの拡大斜視図である。
【図8】補強フレームのその他の取付状態を説明するための模式側面図である。
【図9】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 リアサイドフレーム
2 ミドルクロスメンバ
2a 垂直フランジ
2b 水平フランジ
2b 水平部
3 リアクロスメンバ
3a 垂直フランジ
3b 水平フランジ
3b 水平部
4 リアフロアパネル
4A 前壁部
4B 傾斜壁
4B’ 水平部
4C 垂直壁
4D 水平壁
10A 固定部
20 アンカ部材
24 ナット
30 補強フレーム
30a 開口部
31 天板
31A 前部
31B 後部
31D ボルト孔
32 側板
32A フランジ部
32a 折曲壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するパネルが支持フレーム間に固定され、前記パネルの一方の面側に配置されたナットに前記パネルの他方の面側からねじ込むボルトによって、前記パネルの他方の面に車両用装備品を取り付けるようにした車体構造であって、
前記パネルの一方の面側に、断面コ字形状の補強フレームを、前記パネルの反対側へ開口部が向けられた状態に配設するとともに、前記補強フレーム内の底部に前記ナットを配設し、
さらに、前記補強フレームを、前記支持フレーム間に架設したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記補強フレームは、前記支持フレームに対して溶接により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記補強フレームは、前記車体の前後方向に延設されて前記支持フレーム間に架設されており、前記ボルトによりシートベルトのアンカ部材が取付可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−341624(P2006−341624A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162306(P2005−162306)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】