説明

車体骨格構造

【課題】生産性を悪化させることなく湾曲したメンバやリインフォース等の骨格部材を補強できる車体骨格構造を得る。
【解決手段】トンネルアンダーリインフォース60の内側に設けられる補強部材94には、変形部66に対応して先細部100が形成されている。先細部100は幅方向両端が先端側へ向けて漸次先細に形成されており、しかも、先細部100の先端(後端)が変形部側側壁88に当接しないように、基部98の略車両前方側の端部からの延出寸法が変形部66の曲率に応じて設定されている。このため、先細部100や先細部側側壁106、112が、変形部側側壁76に干渉されることはない。これにより、トンネルアンダーリインフォース60の内側の適切な位置に補強部材94を容易に配置でき、補強部材94の組み付けが車体の生産性を悪化させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の車体を構成するメンバやリインフォース等の骨格部材を含む車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体を構成する骨格部材として、長手方向に対して直交する方向に沿って切った断面形状を略「コ」字形状に形成され、更に、その幅方向に湾曲したサイドメンバが用いられることがある。また、車両前方側からの荷重に対し、上記の構造のサイドメンバの強度、特に、湾曲部分の強度を向上させるための構成が下記特許文献1で提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された構成では、サイドメンバと同様の断面「コ」字形状に形成された補強材がサイドメンバの内側に嵌め込まれてスポット溶接により一体的に結合されている。
【特許文献1】特開平9−150751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1で提案された構造では、サイドメンバの湾曲部分の強度を向上させるために、サイドメンバの湾曲部分に対応して補強材も湾曲している。この補強材の湾曲した部分はサイドメンバの湾曲した部分に嵌合してスポット溶接にて結合されるが、スポット溶接するためには、溶接部分が互いに接していなくてはならない。
【0005】
しかしながら、このように補強材が湾曲していることで、補強材の底壁及び両側壁をサイドメンバの底壁及び両側壁に全て当接させることが難しく、生産性が悪いと言う問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、生産性を悪化させることなく湾曲したメンバやリインフォース等の骨格部材を補強できる車体骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車体骨格構造は、幅方向一方の側に曲がった変形部が長手方向の一方の側に形成された骨格側底壁を有すると共に、前記骨格側底壁の幅方向両端部から骨格側側壁が前記骨格側底壁の厚さ方向一方の側へ向けて立設された骨格部材と、全体が前記骨格部材の内側に配置され、少なくとも前記変形部よりも前記長手方向の他方の側で、幅方向両端部から骨格側底壁の厚さ方向一方の側へ向けて補強側側壁が立設されると共に、前記変形部の側で前記長手方向一方の側へ向けて漸次細幅の先細部が前記骨格側底壁の厚さ方向に沿って前記変形部に対向して形成された補強部材と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車体骨格構造では、骨格部材の内側に補強部材が配置され、これにより、骨格部材が補強されるが、骨格部材の骨格側底壁において幅方向一方の側へ変形した変形部の側では、補強部材の先細部が骨格側底壁の厚さ方向に沿って変形部と対向するように骨格部材の内側に配置される。
【0009】
ここで、先細部は長手方向一方の側へ向けて漸次先細となっているため、先細部又は先細部の幅方向両端に補強側側壁が立設される場合には補強側側壁が、変形部の幅方向両端に立設された骨格側側壁に干渉されることなく、骨格部材の内側の適切な位置に補強部材を容易に配置できる。
【0010】
なお、本発明において、骨格として車体を構成する部材は、サイドメンバやリインフォース等の実際に用いられる部材名称に拘わらず、基本的に全て骨格部材に含まれる。
【0011】
また、本発明において先細部は先端側へ向けて(すなわち、長手方向一方の側へ向けて)先細形状になっていれば、幅方向端部は直線的であってもよいし曲線的に湾曲していてもよい。また、先細部は先端側へ向けて幅方向両端が幅方向中央へ変位するような先細形状であってもよいし、幅方向一端のみが幅方向中央へ変位するような先細形状であってもよい。
【0012】
さらに、本発明では、補強側側壁は少なくとも先細部よりも長手方向他端側で補強側底壁の幅方向両端から立設されていればよい。したがって、先細部の幅方向両端からは補強側側壁を立設させなくてもよいし、先細部の幅方向両端から補強側側壁を立設させてもよい。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車体骨格構造は、請求項1に記載の本発明において、前記変形部よりも前記骨格側底壁の長手方向他方の側に前記骨格側側壁と前記補強側側壁との固定部位を設定すると共に、前記骨格側底壁と前記補強側底壁との固定部位を前記変形部の側に設定することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係る車体骨格構造では、骨格側側壁と補強側側壁との固定部位が変形部よりも骨格側底壁の長手方向他方の側に設定される。このため、骨格側側壁及び補強側側壁の双方が変形部における変形の影響を受けることない。これにより、骨格側側壁と補強側側壁との面合わせを容易にでき、骨格側側壁と補強側側壁とを確実に固定できる。
【0015】
一方、骨格側底壁と補強側底壁との固定部位は変形部の側に設定される。上記のように、先細部や先細部にて立設された補強側側壁は変形部にて立設された骨格側側壁に干渉されることがなく、したがって、先細部は変形部に接する。このため、骨格側底壁と補強側底壁との面合わせを容易にできるうえ先細部を溶接等で確実に変形部に固定できる。
【0016】
先細部を変形部に固定できることにより、先細部が変形部から離間するように浮き上がることがない。このように、本発明に係る車体骨格構造では、骨格部材に対して補強部材を適切に固定でき、補強部材を設けることによる骨格部材の補強効果を一層確実に得ることができる。
【0017】
請求項3に記載の本発明に係る車体骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記先細部は幅方向中央部を軸とする線対称の先細形状に設定されたことを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の本発明に係る車体骨格構造では、先細部が幅方向中央部を軸とする線対称の先細形状である。したがって、変形部の変形の向きが反対向きの骨格部材に同一の補強部材を適用しても、先細部や先細部の両端の補強側側壁が変形部の幅方向両端の骨格側側壁に干渉されない。このため、変形部の変形の向きが反対向きの骨格部材に同一の補強部材を適用できる。
【0019】
請求項4に記載の本発明に係る車体骨格構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記先細部の幅方向両端から前記補強側側壁を立設させたことを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車体骨格構造では、先細部の幅方向両端にも補強側側壁が立設されるため、変形部における骨格部材の機械的強度、特に、応力が集中しやすい変形部の基端部(すなわち、骨格側底壁における変形部の変形開始位置)の機械的強度を高めることができ、骨格部材に外力に作用しても、変形部の基端部に応力が集中することを防止又は抑制できる。
【0021】
さらに、変形部における骨格部材の幅方向を軸方向とする軸周りの曲げ変形等に対する機械的強度が効果的に向上する。しかも、変形部に対応した補強側底壁は先細部であるため、上記のように、補強側側壁が、変形部の幅方向両端に立設された骨格側側壁に干渉されることなく、骨格部材の内側の適切な位置に補強部材を容易に配置できる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る車体骨格構造は、請求項4に記載の本発明において、前記先細部の幅方向両端部に形成された前記補強側側壁は、前記先細部の先端側へ向けて前記先細部からの立設寸法が漸次小さくなるように設定されたことを特徴としている。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る車体骨格構造によれば、変形部に対応した先細部の幅方向両端の補強側側壁は、先細部の先端側(すなわち、骨格側底壁の長手方向一方の側)へ向けて前記先細部からの立設寸法が漸次小さくなるため、変形部における骨格部材の機械的強度は先細部の先端側へ向けて漸次小さくなる。このため、外力によって生じる変形部での骨格部材の変形は、変形部の基端側から機械的強度が小さくなる先端側へ向けて漸次変形が大きくなる。このように、特定の部位でのみ大きな変形が生じることを防止又は抑制でき、変形部における変形が緩和される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車体骨格構造では、骨格部材に補強部材を組み付けるにあたり、骨格部材の内側に補強部材を容易に配置できるため、補強部材の組み付けが車体の生産性を悪化させることがない。
【0025】
請求項2に記載の本発明に係る車体骨格構造では、骨格部材に対する補強部材の浮き上がり等を生じさせることなく骨格部材に対して補強部材を適切に固定でき、補強部材を設けることによる骨格部材の補強効果を一層確実に得ることができる。
【0026】
請求項3に記載の本発明に係る車体骨格構造では、変形部の変形の向きが互いに相反する骨格部材に同一の補強部材を適用できるため、部品コストを安価にできる。
【0027】
請求項4に記載の本発明に係る車体骨格構造では、変形部における骨格部材の機械的強度をより一層向上でき、特に、変形部における骨格部材の幅方向を軸方向とする軸周りの曲げ変形等に対する機械的強度を向上できる。
【0028】
請求項5に記載の本発明に係る車体骨格構造では、変形部における骨格部材の変形を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<本実施の形態の構成>
(全体構成の概略)
図6には本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造を適用した車体下部骨格10の全体構成の概略が平面図により示されている。
【0030】
この図に示されるように、車体下部骨格10は、フロントフロア部12と、リヤアンダボディー部14とを備えている。フロントフロア部12には車両前後方向に沿って合計6本の車体骨格部材が配置されており、前面衝突時の前後方向入力荷重に対して6本の車体骨格部材で伝達する(入力荷重を6本の車体骨格部材を使って車両後方側へ流す)ようになっている。
【0031】
具体的には、フロントフロア部12の両サイドには、車両前後方向に沿って延在する左右一対のフロアサイドメンバ16が配設されている。さらに、フロントフロア部12におけるフロアサイドメンバ16の内側には、車両前後方向に沿って延在しかつ途中から車両幅方向外側へ斜めに延びる左右一対のフロントサイドメンバ18が配置されている。さらに、フロントフロア部12におけるフロントサイドメンバ18の内側には、車両後方側から車両前方側へ向かうにつれて裾広がりにラウンドする各々が骨格部材としての左右一対のトンネルアンダーリインフォース60が配設されている。
【0032】
トンネルアンダーリインフォース60の前端部は、フロントサイドメンバ18の途中部位(フロントフロア部12の領域内へ入り始めた部位)の内側の側面に溶接されている。また、トンネルアンダーリインフォース60の後端部は、フロアサイドメンバ16の後端部間に車両幅方向に沿って配置された第3クロスメンバ22の前面に溶接されている。さらに、フロントサイドメンバ18の後端部は、左右のフロアサイドメンバ16の長手方向中間部間に車両幅方向に沿って二分割されて配置された第2クロスメンバ24の前面に溶接されている。
【0033】
なお、第2クロスメンバ24の外側の端部はフロアサイドメンバ16の長手方向中間部の内側の側面に溶接されており(この点については後述する)、内側の端部はトンネルアンダーリインフォース60の外側の側面に溶接されている。また、左右一対のフロントサイドメンバ18の前端部間には、車両幅方向に沿って延在する第1クロスメンバ26が配設されている。
【0034】
一方、リヤアンダボディー部14側にも、左右一対のリヤアンダサイドメンバ28が車両前後方向に沿って延在されている。これらのリヤアンダサイドメンバ28の前端部は、車両幅方向外側へ裾広がり状にラウンドされてフロアサイドメンバ16の後端部の内側の側面に溶接されている。また、リヤアンダサイドメンバ28間には、複数のリヤクロスメンバ30が車両幅方向を長手方向として配置されている。
【0035】
(要部の構成)
図6の点線Cにて囲まれた部分を拡大した図1の要部拡大分解斜視図に示されるように、上述したトンネルアンダーリインフォース60は骨格側底壁としての底壁62を備えている。図2の要部拡大平面図に示されるように、底壁62は基部64を備えている。基部64は略車両前後方向(図2の矢印FR方向及びその反対方向)に対して略車両左右方向(図2の矢印RT方向及びその反対方向)に傾斜した所定の方向(図2の矢印L方向及びその反対方向)沿って長手とされた細幅板状に形成されている。基部64の長手方向後端(図2の矢印L方向とは反対方向側の端部)からは連続して変形部66が形成されている。
【0036】
変形部66は細幅板状である点に関しては基部64と同じであるが、底壁62の車幅方向外側(図2では矢印RT側)の所定位置を曲率中心として略車両上下方向(各図の矢印UP方向及びその反対方向)を軸に湾曲している。図1、図2、及び図4(A)に示されるように、底壁62の車幅方向内側(図2では矢印RTとは反対側)の端部からは、側壁68が略車両上方(図3の矢印UP方向)側である底壁62の厚さ方向一方の側へ向けて立設されている。
【0037】
側壁68は基部側側壁70を備えている。基部側側壁70は、長手方向が基部64の長手方向に沿い、幅方向が側壁68の厚さ方向に沿った細幅平板状とされ、その幅方向上端部にはフランジ70を構成する基部側フランジ74が連続して形成されている。基部側フランジ74は基部64に対して平行な細幅板状に形成されており、基部側側壁70の上端部から車幅方向内方側へ向けて延出されている。
【0038】
一方、基部側側壁70の略車両後方側の端部からは、基部側側壁70と共に側壁68を構成する変形部側側壁76が連続して形成されている。変形部側側壁76は基部側側壁70と同様の細幅板状に形成されて、その幅方向両端位置も基部側側壁70と同位置にあるが、変形部側側壁76は変形部66の車幅方向外側の端部からも連続していることから、変形部66の車幅方向内側の端部に沿って湾曲している。
【0039】
また、変形部側側壁76の幅方向上端部には、基部側フランジ74と共にフランジ70を構成する変形部側フランジ78が連続して形成されている。変形部側フランジ78は変形部66に対して平行な細幅板状に形成されており、変形部側側壁76の上端部から車幅方向内方側へ向けて延出されている。また、変形部側フランジ78は変形部側側壁76の上端部に沿って形成されており、このため、変形部66と同様に底壁62の車幅方向外側(図2では矢印RT側)の所定位置を曲率中心として略車両上下方向を軸に湾曲している。
【0040】
これに対して、図1乃至図3に示されるように、底壁62の車幅方向外側(図2では矢印RT方向側)の端部からは側壁80が略車両上方(図3の矢印UP方向)側である底壁62の厚さ方向一方の側へ向けて立設されている。側壁80は基部側側壁82を備えている。基部側側壁82は、長手方向が基部64の長手方向に沿い、幅方向が側壁80の厚さ方向に沿った細幅平板状とされている。
【0041】
基部側側壁82の幅寸法は基部側側壁70の幅寸法に略等しく、このため、基部側側壁82の幅方向上端部は基部側側壁70の幅方向上端部に対して略同じ位置にある。基部側側壁82の幅方向上端部にはフランジ84を構成する基部側フランジ86が連続して形成されている。基部側フランジ86は基部64に対して平行な細幅板状に形成されており、基部側側壁82の上端部から車幅方向外方側へ向けて延出されている。
【0042】
一方、基部側側壁82の略車両後方側の端部からは、基部側側壁82と共に側壁80を構成する変形部側側壁88が連続して形成されている。変形部側側壁88は基部側側壁82と同様の細幅板状に形成されて、その幅方向両端位置も基部側側壁82と同位置にあるが、変形部側側壁88は変形部66の車幅方向内側の端部からも連続していることから、変形部66の車幅方向内側の端部に沿って車幅方向外側へ湾曲している。また、変形部側側壁88の幅方向上端部には、基部側フランジ86と共にフランジ84を構成する変形部側フランジ90が連続して形成されている。
【0043】
変形部側フランジ90は変形部66に対して平行な細幅板状に形成されており、変形部側側壁88の上端部から車幅方向外方側へ向けて延出されている。また、変形部側フランジ90は変形部側側壁88の上端部に沿って形成されており、このため、変形部66と同様に底壁62の車幅方向外側(図2では矢印RTとは反対側)の所定位置を曲率中心として略車両上下方向を軸に湾曲している。
【0044】
以上の構成のトンネルアンダーリインフォース60は、上記のフランジ70、84の少なくとも何れか一方の一部がトンネルアンダーリインフォース60の上側に位置するフロアパネル92に溶接等の固着手段又はねじやボルト等の締結手段等の固定手段により一体的に固定される。
【0045】
一方、図2乃至図4に示されるように、トンネルアンダーリインフォース60の内側には補強部材94が配置されている。補強部材94は補強側底壁としての底壁96を備えている。図2、図3、及び図4(A)に示されるように、底壁96は基部98を備えている。
【0046】
基部98は、トンネルアンダーリインフォース60の底壁62を構成する基部64の長手方向(すなわち、図2の矢印L方向及びその反対方向)に沿って長手方向とされた細幅板状に形成されている。その長手方向後端部(図2の矢印L方向とは反対側の端部)からは連続して先細部100が形成されている。
【0047】
先細部100は細幅板状である点に関しては基部98と同じであるが、図5に示されるように、先細部100の幅方向一端部は基部98の幅方向一端部に対して先細部100の幅方向内方側へ向けて所定角度θだけ傾斜している。また、先細部100の幅方向他端部は基部98の幅方向他端部に対して先細部100の幅方向内方側へ向けて所定角度θだけ傾斜している。このため、先細部100は、基部98の長手方向、ひいては、基部64の長手方向の後方側へ向けて漸次細幅(先細)となる。
【0048】
なお、本実施の形態では、基部98の幅方向端部に対する先細部100の幅方向端部の傾斜角度θを先細部100の幅方向一端部と他端部とで同じにした構成であったが、基部98の幅方向一端部に対する先細部100の幅方向一端部の傾斜角度と、基部98の幅方向他端部に対する先細部100の幅方向他端部の傾斜角度とを異ならせてもよい。また、本実施の形態では、上記のように先細部100の幅方向両端を傾斜させた構成であるが、基部64に対する変形部66の湾曲方向側(すなわち、本実施の形態では図2の矢印RT方向側)とは反対側の先細部100の幅方向端部のみを傾斜させ、基部64に対する変形部66の湾曲方向側の先細部100の幅方向端部は傾斜させない構成としてもよい。
【0049】
また、先細部100は、補強部材94をトンネルアンダーリインフォース60の内側の所定位置に配置した状態で、先細部100の先端(後端)が変形部側側壁88に当接しないように、基部98の略車両前方側の端部からの延出寸法が変形部66の曲率に応じて設定されている。
【0050】
図1、図2、及び図4(A)に示されるように、以上の構成の底壁96の車幅方向内側(図2では矢印RTとは反対方向側)の端部からは側壁102が略車両上方(図4の矢印UP方向)側である底壁96の厚さ方向一方の側へ向けて立設されている。側壁102は基部側側壁104を備えている。基部側側壁104は、長手方向が基部98の長手方向に沿い、幅方向が側壁102の厚さ方向に沿った細幅平板状で、その幅寸法は側壁68の幅寸法よりも充分に短く、その上端は側壁68の上端よりも下方に位置している。
【0051】
図1及び図2に示されるように、基部側側壁104の略車両後方側の端部からは、基部側側壁104と共に側壁102を構成する先細部側側壁106が連続して形成されている。先細部側側壁106は基部側側壁104と同様の細幅板状に形成されているが、先細部側側壁106は先細部100の車幅方向外側の端部からも連続していることから、先細部100の車幅方向外側の端部に沿って先細部100の幅方向内方側へ傾斜している。しかも、図1及び図4(B)に示されるように、先細部側側壁106は先細部100の幅方向端部からの立設寸法が先細部100の先端側へ向けて略直線的に漸次低くなっている。
【0052】
これに対して、図1、図2、図3、及び図4(A)に示されるように、底壁96の車幅方向外側(図2では矢印RT方向側)の端部からは側壁108が略車両上方(図3及び図4の矢印UP方向)側である底壁96の厚さ方向一方の側へ向けて立設されている。側壁108は基部側側壁110を備えている。
【0053】
基部側側壁110は、長手方向が基部98の長手方向に沿い、幅方向が側壁108の厚さ方向に沿った細幅平板状に形成されており、基部98の幅方向に沿って基部側側壁104と対向している。基部側側壁110の幅寸法は基部側側壁104の幅寸法に略等しく、基部側側壁82の幅寸法よりも充分に短い。このため、基部側側壁110の幅方向上端は側壁68の幅方向上端よりも下方に位置している。
【0054】
基部側側壁110の略車両後方側の端部からは基部側側壁110と共に側壁108を構成する先細部側側壁112が連続して形成されている。先細部側側壁112は基部側側壁110と同様の細幅板状に形成されて、その幅方向両端位置も基部側側壁110と同位置にあるが、先細部側側壁112は先細部100の車幅方向外側の端部からも連続していることから、先細部100の車幅方向外側の端部に沿って先細部100の幅方向内方側へ傾斜している。
【0055】
すなわち、以上の構成の側壁108は、基部98の幅方向中央を境として側壁102に対して線対称形状となっている。しかも、図1及び図4(B)に示されるように、先細部側側壁112は先細部100の幅方向端部からの立設寸法が先細部100の先端側へ向けて略直線的に漸次低くなっている。
【0056】
図4(A)に示されるように、以上の構成の補強部材94の基部98側では、は基部98の長手方向中間部にて、基部側側壁70及び基部側側壁104に設定された固定部位としての溶接部114にてスポット溶接が施されて基部側側壁70と基部側側壁104とが一体的に結合されると共に、基部側側壁82及び基部側側壁110に設定された固定部位としての溶接部116にてスポット溶接が施されて基部側側壁82と基部側側壁110とが一体的に結合される。
【0057】
また、基部64及び基部98に設定された溶接部118にてスポット溶接が施されて基部64と基部98とが一体的に結合される。これに対して、図4(B)に示されるように、補強部材94の先細部100側では、変形部66及び先細部100に設定された固定部位としての溶接部120にてスポット溶接が施されて変形部66と先細部100とが一体的に結合される。
【0058】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0059】
上記のように、変形部66において湾曲したトンネルアンダーリインフォース60の内側には補強部材94が配置され、これにより、トンネルアンダーリインフォース60が補強される。
【0060】
ところで、底壁62を構成する変形部66の側では、補強部材94の先細部100が及び先細部側側壁106、112が変形部側側壁76、88の間に配置される。ここで、先細部100では幅方向両端が基部98の幅方向一端部に対して先細部100の幅方向内方側へ向けて所定角度θだけ傾斜している。しかも、先細部100は、補強部材94をトンネルアンダーリインフォース60の内側の所定位置に配置した状態で、先細部100の先端(後端)が変形部側側壁88に当接しないように、基部98の略車両前方側の端部からの延出寸法が変形部66の曲率に応じて設定されている。
【0061】
このため、先細部100や先細部側側壁106、112が、変形部側側壁76に干渉されることはない。これにより、トンネルアンダーリインフォース60の内側の適切な位置に補強部材94を容易に配置でき、補強部材94の組み付けが車体の生産性を悪化させることがない。
【0062】
また、このようにトンネルアンダーリインフォース60の内側に配置された補強部材94は、溶接部114、116にてスポット溶接が施され、基部側側壁70と基部側側壁104とが溶接されて固定されると共に、基部側側壁82と基部側側壁110とが溶接されて固定される。ここで、基部側側壁70、82及び基部側側壁104、110は何れも底壁62の基部64の側であるため、変形部66の変形の影響を受けない。
【0063】
これにより、基部側側壁70と基部側側壁104とは容易に面合わせを行なうことができ、更に、基部側側壁82と基部側側壁110とは容易に面合わせを行なうことができる。このため、溶接部114、116におけるスポット溶接を的確に施すことができ、基部側側壁70と基部側側壁104とを確実に固定でき、基部側側壁82と基部側側壁110とを確実に固定できる。
【0064】
一方、底壁62と底壁96とは溶接部118、120においてスポット溶接を施すことで溶接されて固定される。ここで、上記のように、先細部100や先細部側側壁106、112が変形部側側壁76に干渉されることはないため、変形部66と先細部100とを確実に当接させることができ、溶接部120にて確実にスポット溶接を施すことができる。これにより、変形部66と先細部100とを確実に固定でき、変形部66に対する先細部100の浮き上がり等を確実に防止でき、補強部材94による補強効果をより一層効果的に得ることができる。
【0065】
また、補強部材94は、先細部100の幅方向両端に先細部側側壁106、112が形成されるため、変形部66におけるトンネルアンダーリインフォース60の機械的強度、特に、応力が集中しやすい変形部66の基端部(すなわち、底壁62における変形部66の変形開始位置)の機械的強度を高めることができ、トンネルアンダーリインフォース60に前方側からの過剰な外力に作用しても、変形部66の基端部に応力が集中することを防止又は抑制できる。さらに、変形部66におけるトンネルアンダーリインフォース60の幅方向を軸方向とする軸周りの曲げ変形(すなわち、上下の曲げ変形)等に対する機械的強度を効果的に向上できる。
【0066】
また、変形部66に対応した先細部側側壁106、112は、先細部100の先端側へ向けて先細部100からの立設寸法が漸次小さくなるため、変形部66におけるトンネルアンダーリインフォース60の機械的強度は先細部100の先端側へ向けて漸次小さくなる。したがって、例えば、車両前方側からの外力によって生じる変形部66でのトンネルアンダーリインフォース60の変形は、変形部66の基端側から機械的強度が小さくなる先端側へ向けて漸次変形が大きくなる。このように、特定の部位でのみ大きな変形が生じることを防止又は抑制でき、変形部66における変形を緩和できる。
【0067】
また、図6に示されるように、車幅方向に沿って対を成すトンネルアンダーリインフォース60は変形部66の変形の向きが互いに逆である。しかしながら、本実施の形態では、先細部100は、その幅方向中央部を軸とする線対称の先細形状である。このため、上記のように変形部66の変形の向きが反対向きのトンネルアンダーリインフォース60に同一の補強部材94を適用でき、部品コストを安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造の要部を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造の要部を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造の要部を示す図2の3−3線に沿った正面断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造の要部を示す側面断面図で、(A)は図2のA−A線に沿った正面断面図であり、(B)は図2のB−B線に沿った正面断面図である。
【図5】先細部を拡大した平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る車体骨格構造を適用した車体下部骨格の全体構成を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
60 トンネルアンダーリインフォース(骨格部材)
62 底壁(骨格側底壁)
66 変形部
68 側壁(骨格側側壁)
80 側壁(骨格側側壁)
94 補強部材
96 底壁(補強側底壁)
100 先細部
102 側壁(補強側側壁)
108 側壁(補強側側壁)
114 溶接部(固定部位)
116 溶接部(固定部位)
120 溶接部(固定部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向一方の側に曲がった変形部が長手方向の一方の側に形成された骨格側底壁を有すると共に、前記骨格側底壁の幅方向両端部から骨格側側壁が前記骨格側底壁の厚さ方向一方の側へ向けて立設された骨格部材と、
全体が前記骨格部材の内側に配置され、少なくとも前記変形部よりも前記長手方向の他方の側で、幅方向両端部から骨格側底壁の厚さ方向一方の側へ向けて補強側側壁が立設されると共に、前記変形部の側で前記長手方向一方の側へ向けて漸次細幅の先細部が前記骨格側底壁の厚さ方向に沿って前記変形部に対向して形成された補強部材と、
を備える車体骨格構造。
【請求項2】
前記変形部よりも前記骨格側底壁の長手方向他方の側に前記骨格側側壁と前記補強側側壁との固定部位を設定すると共に、前記骨格側底壁と前記補強側底壁との固定部位を前記変形部の側に設定することを特徴とする請求項1に記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記先細部は幅方向中央部を軸とする線対称の先細形状に設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体骨格構造。
【請求項4】
前記先細部の幅方向両端から前記補強側側壁を立設させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車体骨格構造。
【請求項5】
前記先細部の幅方向両端部に形成された前記補強側側壁は、前記先細部の先端側へ向けて前記先細部からの立設寸法が漸次小さくなるように設定されたことを特徴とする請求項4に記載の車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131246(P2007−131246A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327914(P2005−327914)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】