説明

車体骨格部材の継手構造

【課題】強度・剛性が確保可能で且つ汎用性のある車体骨格部材の継手構造を提供する。
【解決手段】フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21が、それぞれ重ね継手35が形成される側の端部に、閉断面部14f,21fと、この閉断面部14f,21fに隣接してフロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の長手方向に沿って延びるコ字断面部14g,21gとが形成され、フロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14gの内側に、フロントバルクヘッドアッパフレーム21の閉断面部21fを長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせるとともに、フロントバルクヘッドアッパフレーム21のコ字断面部21gの内側に、フロントホイールハウスアッパメンバ14の閉断面部14fを長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体骨格部材の継手構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体骨格部材の継手構造として、二つの閉断面部材の一方の端部に他方の端部を軸方向に挿入して重ね合わせるもの(例えば、特許文献1参照。)、一方の閉断面部材の端部の内側に、他方の閉断面部材の端部を側方から滑り込ませて重ね合わせるもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
特許文献1のFIG.2を以下の図11で説明する。なお、符号は振り直した。
図11に示されるように、一方の部材101は、一端部に受け部102が形成され、他方の部材103は、一端部に挿入部104が形成され、受け部102に挿入部104が挿入されて溶接等で部材101と部材102とが接合される。上記の受け部102及び挿入部104は重ね継手106を構成する部分である。
【0004】
特許文献2のFIG.1及びFIG.2を以下の図12(a),(b)で説明する。なお、符号は振り直した。
図12(a)に示されるように、一方の部材111は、一端部にハイドロフォーム法による形成部112が形成され、他方の部材113は、一端部の側部に切欠き114が形成され、他方の部材113の一端部側方から切欠き114を通じて部材113内に部材111の形成部112が滑り込むように挿入されて重ね合わせられ、溶接等で部材111と部材112とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6701598号明細書
【特許文献2】米国特許第6532639号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11において、一方の部材101と他方の部材103とで角部の稜線が接合部で連続するため、接合部での強度・剛性の低下が抑えられるが、部材101に部材103を長手方向に挿入する構造であるから、部材101と部材103とのそれぞれの中心軸を高い位置精度で合わせる必要があり、生産設備・生産方法を考慮すると、車両への適用部位、適用部品は極めて限定される。
【0007】
図12において、一方の部材111を他方の部材113の切欠き114から内部にスライドさせる構造であるから、部材111と部材113との長手方向に直交する方向の高い位置精度は必要とせず、汎用性があるが、切欠き114によって部材111と部材113との角部の稜線が連続しなくなるため、接合部の強度・剛性を確保することが難しくなり、補強部材の追加が必要になる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、強度・剛性が確保可能で且つ汎用性のある車体骨格部材の継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、多角形状断面を有する二つの閉断面部材を直列に接合する車体骨格部材の継手構造において、二つの閉断面部材が、それぞれ継手が形成される側の端部に、閉断面部と、この閉断面部に隣接して閉断面部材の長手方向に沿って延びる凸部とが形成され、この凸部が、閉断面部の中心に向かって開放する断面形状を有し、一方の閉断面部材の凸部の内側に、他方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせるとともに、他方の閉断面部材の凸部の内側に、一方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせることにより二つの閉断面部材の断面全辺を接合することを特徴とする。
【0010】
一方の閉断面部材の端部に形成された凸部の内側に、この一方の閉断面部材の長手方向に直交する方向から他方の閉断面部材の閉断面部を挿入する。このとき、同時に、他方の閉断面部材の端部に形成された凸部の内側に、この一方の閉断面部材の長手方向に直交する方向から他方の閉断面部材の閉断面部が挿入される。この結果、一方の凸部と他方の閉断面部とが重ね合わせられるとともに、他方の凸部と一方の閉断面部とが重ね合わせられる。
【0011】
この状態で、一方の凸部と他方の閉断面部とを接合し、他方の凸部と一方の閉断面部とを接合することで、2つの閉断面部材が直列に接合される。
一方の閉断面部材の凸部と他方の閉断面部材の閉断面部とが重なり合い、他方の閉断面部材の凸部と一方の閉断面部材の閉断面部とが重なり合うから、各閉断面部材の角部の稜線が連続して形成される。従って、二つの閉断面部材の接合部の強度・剛性が確保される。
二つの閉断面部材は、各閉断面部材の長手方向に直交する方向から重ね合わせられるため、二つの閉断面部材の高い位置精度は必要ない。
【0012】
請求項2に係る発明は、凸部が、少なくとも一つの側壁と、この側壁の上端側から延びる上壁と、側壁の下端側から延びる下壁とを備え、上壁と下壁との長手方向に直交する方向の幅が継手の横幅の半分より短い寸法に設定されることを特徴とする。
【0013】
一方の閉断面部材の凸部に他方の閉断面部材の閉断面部を重ね合わせ、他方の閉断面部材の凸部に一方の閉断面部材の閉断面部を重ね合わせるため、上壁と下壁との長手方向に直交する方向の幅が継手の横幅の半分より短い寸法に設定することで、2つの閉断面部材の凸部の側壁と閉断面部とが確実に重なり合い、接合強度が向上する。
【0014】
上壁と下壁との長手方向に直交する方向の幅が継手の横幅の半分より短いと、二つの閉断面部材の継手に曲げ力が作用する場合に、上壁及び下壁の断面中心に近い側の縁部は、断面中心を通る曲げの中立軸に近くなり、これらの縁部に発生する応力はより小さくなる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、二つの閉断面部材が、それぞれ継手が形成される側の端部に、閉断面部と、この閉断面部に隣接して閉断面部材の長手方向に沿って延びる凸部とが形成され、この凸部が、閉断面部の中心に向かって開放する断面形状を有し、一方の閉断面部材の凸部の内側に、他方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせるとともに、他方の閉断面部材の凸部の内側に、一方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせることにより二つの閉断面部材の断面全辺を接合するので、二つの閉断面部材の端部同士を長手方向に直交する方向に移動させて重ね合わせて接合することができるとともに、二つの閉断面部材の角部の稜線が接合部において双方とも切り欠かずに連続性を有するため、一方の閉断面部材から他方の閉断面部材への荷重伝達にロスがなく、接合部、即ち、継手の剛性、強度を確保することができ、例えば、接合部に切欠き部を有するものに比べて軽量化を図ることができる。
【0016】
また、たとえば、二つの閉断面部材の端部同士を長手方向に嵌合させるときに中心軸を精度良く合わせる必要があるのに比べて、本発明では、二つの閉断面部材を長手方向に直交する方向から重ね合わせるため、二つの閉断面部材の位置合わせに高い精度を必要としないから、コスト低減及び生産性向上を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、凸部が、少なくとも一つの側壁と、この側壁の上端側から延びる上壁と、側壁の下端側から延びる下壁とを備え、上壁と下壁との長手方向に直交する方向の幅が継手の横幅の半分より短い寸法に設定されるので、継手に発生する応力をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車体骨格部材の前部を示す斜視図(実施例1)である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】本発明に係る骨格構成部材の継手構造を示す斜視図(実施例1)である。
【図4】図2に示した継手構造の断面図(実施例1)である。
【図5】本発明に係る骨格構成部材の継手構造の接合手段を示す斜視図(実施例1)である。
【図6】本発明に係る骨格構成部材の継手構造に発生する応力を示す作用図(実施例1)である。
【図7】本発明に係る骨格構成部材の継手構造(実施例2)を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る骨格構成部材の継手構造(実施例3)を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る骨格構成部材の継手構造(実施例4)を示す斜視図である。
【図10】図9に示した継手構造の断面図(実施例4)である。
【図11】従来の車体骨格部材の継手構造を示す第1斜視図である。
【図12】従来の車体骨格部材の継手構造を示す第2斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両の前方を表している(以下同じ)。
図1に示すように、車両のフロントボディ10は、左右のフロントピラー11,11(手前側の符号11のみ示す。)間を連結するダッシュボードアッパ12と、フロントピラー11の中間部から前方に延びるフロントホイールハウスアッパメンバ14と、フロントピラー11の下部から前方に延びるフロントサイドフレーム16と、これらのフロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントサイドフレーム16に取付けられたダンパハウジング17と、フロントホイールハウスアッパメンバ14の先端に上部が接合されるとともに側部がフロントサイドフレーム16に連結されたフロントバルクヘッド18とを備える。
【0021】
フロントバルクヘッド18は、中央部が車幅方向に延びるとともに左右端部が斜め後方に延びてフロントホイールハウスアッパメンバ14の先端に接合されたフロントバルクヘッドアッパフレーム21と、このフロントバルクヘッドアッパフレーム21の中央部の下方に配置されるとともに車幅方向に延びるフロントロアクロスメンバ22と、これらのフロントバルクヘッドアッパフレーム21の中央部及びフロントロアクロスメンバ22の端部同士をそれぞれ連結する左右一対のフロントバルクヘッドサイドフレーム23,24とからなり、左右のフロントバルクヘッドサイドフレーム23,24が左右のフロントサイドフレーム16,16(手前側の符号16のみ示す。)に取付けられている。
【0022】
図2に示すように、フロントホイールハウスアッパメンバ14とバルクヘッドアッパフレーム21とは、各端部が長手方向に直列に継手35により接合される。
接合後は、フロントホイールハウスアッパメンバ14側の4つの角部の稜線14A〜14D(符号14A〜14Cのみ示す。)と、バルクヘッドアッパフレーム21側の4つの角部の稜線21A〜21D(符号21A〜21Cのみ示す。)とがそれぞれ連続している。即ち、稜線14Aと稜線21A、稜線14Bと稜線21B、稜線14Cと稜線21C、稜線14Dと稜線21Dとがそれぞれ連続している。
【0023】
従って、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びバルクヘッドアッパフレーム21からなる前部フレーム26は、単一のフレームに対して強度・剛性の低下が抑えられ、必要な強度・剛性が確保される。
【0024】
図3に示すように、フロントホイールハウスアッパメンバ14は、鋼製の角パイプからなり、矩形断面に形成された閉断面部14fと、この閉断面部14fから一体に長手方向に突出する断面コ字状のコ字断面部14gとを備える。
【0025】
バルクヘッドアッパフレーム21は、矩形断面に形成された基部閉断面部21eと、この基部閉断面部21eに一体に隣接するように矩形断面に近い形状に形成された閉断面部21fと、この閉断面部21fから一体に長手方向に突出する断面コ字状のコ字断面部21gとを備える。
【0026】
上記のフロントホイールハウスアッパメンバ14及びバルクヘッドアッパフレーム21の材質としては、鋼材、アルミニウム合金、マグネシウム合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が好適であり、また、製造方法としては、押し出し、ハイドロフォーム、ロールフォーム、プレス等が好適である。
【0027】
閉断面部21fは、断面を左右に分けたときに左右の断面の高さが異なるように形成された部分である。即ち、左断面部21Lの高さは、右断面部21Rの高さよりも小さい。なお、符号21j,21kは左断面部21Lと右断面部21Rとの境となり、段差を吸収する上傾斜部及び下傾斜部である。
【0028】
図4(a)は図2のa−a線断面を示している。
フロントホイールハウスアッパメンバ14の閉断面部14fが、フロントバルクヘッドアッパフレーム21のコ字断面部21g内に挿入されて重ね合わせられ、接合されている。符号31はフロントホイールハウスアッパメンバ14の閉断面部14fの中心、32は中心31を通る水平線、33は中心31を通る鉛直線である。
【0029】
コ字断面部21gは、側壁21mと、この側壁21mの上端から水平に中心31側に一体に延びる上壁21nと、側壁21mの下端から水平に中心31側に一体に延びる下壁21pとからなり、中心31側に開放している。
【0030】
図4(b)は図2のb−b線断面を示している。
フロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14gとフロントバルクヘッドアッパフレーム21のコ字断面部21gとが、互いに中心31側に開放している。
【0031】
フロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14gは、側壁14mと、この側壁14mの上端から水平に中31心側に一体に延びる上壁14nと、側壁14mの下端から水平に中心31側に一体に延びる下壁14pとからなる。
【0032】
前部フレーム26の幅をW1、コ字断面部14gの上壁14n及び下壁14pの幅をW2、コ字断面部21gの上壁21n及び下壁21pの幅をW3とすると、幅W2は、幅W1の半分よりも小さく(W2<0.5・W1)、幅W3は、幅W1の半分よりも小さい(W3<0.5・W1)。
【0033】
図4(c)は図2のc−c線断面を示している。
フロントバルクヘッドアッパフレーム21の閉断面部21fが、フロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14g内に挿入されて重ね合わせられ、接合されている。
【0034】
フロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14g及び閉断面部14f(図4(a)参照)の高さをH1、フロントバルクヘッドアッパフレーム21の閉断面部21fにおける左断面部21Lの高さをH2、右断面部21Rの高さをH3とすると、高さH2は高さH1よりも小さく(H2<H1)、高さH3は、高さH1よりも大きい(H3>H1)。
【0035】
以上の図4(a)〜(c)に示したように、フロントホイールハウスアッパメンバ14は、一端部に閉断面部14fとコ字断面部14gからなる継手形成部14Sが設けられ、フロントバルクヘッドアッパフレーム21は、一端部に閉断面部21f及びコ字断面部21gからなる継手形成部21Sが設けられ、これらの継手形成部14Sと継手形成部21Sとは、長手方向に直交する方向から挿入されて重ね合わせられる重ね継手35を構成する部分であり、フロントホイールハウスアッパメンバ14とフロントバルクヘッドアッパフレーム21とは、重ね継手35で接合されている。
【0036】
図5(a)に示すように、フロントホイールハウスアッパメンバ14とフロントバルクヘッドアッパフレーム21との接合部である重ね継手35は、閉断面部14f及びコ字断面部14gと、閉断面部21f及びコ字断面部21gとのそれぞれの縁部がすみ肉溶接により連続して接合されている。なお、符号36は溶接部である。
適用される溶接の種類としては、アーク溶接、レーザー溶接、アーク溶接とレーザ溶接とを組み合わせたハイブリッド溶接が好適である。
【0037】
図5(b)に示す別実施例では、フロントホイールハウスアッパメンバ14とフロントバルクヘッドアッパフレーム21との締結部であるリベット継手37は、閉断面部14f及びコ字断面部14gと、閉断面部21f及びコ字断面部21gとのそれぞれがブラインドリベット38により締結されている。
【0038】
以上に述べた重ね継手35の作用を次に説明する。
図6(a)に示すように、前部フレーム26に鉛直線33回りの曲げモーメントが作用した場合(例えば、車両が側面衝突を受けた場合)、鉛直線33は中立軸になり、例えば、コ字断面部14gの側壁14mには引張応力、コ字断面部21gの側壁21mには圧縮応力が発生する。
【0039】
また、コ字断面部14gの上壁14nには引張応力、コ字断面部21gの上壁21nには圧縮応力、コ字断面部14gの下壁14pには引張応力、コ字断面部21gの下壁21pには圧縮応力が発生する。
【0040】
このとき、上壁14n及び下壁14pの各端面14q,14rは鉛直線33に接近しているため、これらの端面14q,14rに発生する引張応力は極めて小さく、同様に、上壁21n及び下壁21pの各端面21q,21rは鉛直線33に接近しているため、これらの端面21q,21rに発生する圧縮応力は極めて小さく、コ字断面部14g,21gを形成したことによる強度への影響はほとんど無い。
【0041】
図6(b)に示すように、前部フレーム26に水平線32回りの曲げモーメントが作用した場合(例えば、車両が正面衝突を受けた場合)、水平線32は中立軸になり、例えば、コ字断面部14gの上壁14n及びコ字断面部21gの上壁21nには圧縮応力が発生し、コ字断面部14gの下壁14p及びコ字断面部21gの下壁21pには引張応力が発生する。
【0042】
また、コ字断面部14gの側壁14mの上半分には圧縮応力、側壁14mの下半分には引張応力が発生し、コ字断面部21gの側壁21mの上半分には圧縮応力、側壁21mの下半分には引張応力が発生する。
【0043】
このとき、上壁14n及び下壁14pの幅W2(図4(b)参照)、上壁21n及び下壁21pの幅W3(図4(b)参照)が十分に大きければ、発生する圧縮応力又は引張応力を分担できるので、コ字断面部14g,21gに発生する応力を小さくすることができ、コ字断面部14g,21gを形成したことによる強度への影響はほとんど無い。
【実施例2】
【0044】
次に本発明の実施例2を説明する。
図7に示すように、第1閉断面部材41と第2閉断面部材42とからなるフレーム部材43が重ね継手45で接合される。
【0045】
第1閉断面部材41は、断面ハット形状にプレス成形された第1パネル47及び第2パネル48のフランジ47aとフランジ48a、フランジ47bとフランジ48bがそれぞれ接合されて出来た部材であり、閉断面部41aと、この閉断面部41aから長手方向に延びる凸部としてのハット状断面部41bとを備え、これらの閉断面部41a及びハット状断面部41bは、継手形成部41cを構成する部分である。
【0046】
第2閉断面部材42は、閉断面部42aと、この閉断面部42aから一体に長手方向に延びるコ字断面部42bとを備え、これらの閉断面部42a及びコ字断面部42bは、継手形成部42cを構成する部分である。
【0047】
第1閉断面部材41の閉断面部41aは、第2閉断面部材42のコ字断面部42b内に挿入されて重ね合わされ、第2閉断面部材42の閉断面部42aは、第1閉断面部材41のハット状断面部41b内に挿入されて重ね合わせられ、溶接にて接合される。
【実施例3】
【0048】
次に本発明の実施例3を説明する。
図8に示すように、第1閉断面部材51と第2閉断面部材52とからなるフレーム部材53が重ね継手55で接合される。
【0049】
第1閉断面部材51は、断面ハット形状にプレス成形された第1パネル57及び第2パネル58のフランジ57aとフランジ58a、フランジ57bとフランジ58bがそれぞれ接合されて出来た部材である。
【0050】
第1パネル57は、閉断面半体57dと、この閉断面半体57dから一体に長手方向に延びるコ字断面半体57eとを備え、第2パネル58は、閉断面半体58dと、この閉断面半体58dから一体に長手方向に延びるコ字断面半体58e(不図示)とを備える。
【0051】
上記の閉断面半体57dと閉断面半体58dとは、閉断面部51aを形成する部分であり、コ字断面半体57eとコ字断面半体58eとは、コ字断面部51bを形成する部分であり、これらの閉断面部51a及びコ字断面部51bは、継手形成部51cを構成する部分である。
【0052】
第2閉断面部材52は、閉断面部52aと、この閉断面部52aから一体に長手方向に延びるコ字断面部52bとを備え、これらの閉断面部52a及びコ字断面部52bは、継手形成部52cを構成する部分である。なお、符号52eはコ字断面部52bの側壁52mの中央に形成されたスリットであり、第1閉断面部材51のフランジ57b,58bとを避ける部分である。
【0053】
第1閉断面部材51の閉断面部51aは、第2閉断面部材52のコ字断面部52b内に挿入されて重ね合わされ、第2閉断面部材52の閉断面部52aは、第1閉断面部材51のコ字断面部51b内に挿入されて重ね合わせられ、溶接にて接合される。
【実施例4】
【0054】
次に本発明の実施例4を説明する。
図9に示すように、第1閉断面部材61と第2閉断面部材62とからなるフレーム部材63が重ね継手65で接合される。
【0055】
第1閉断面部材61は、八角形断面に形成された閉断面部61fと、この閉断面部61fから一体に長手方向に突出する突出部61gとを備える。
【0056】
第2閉断面部材62は、八角形断面に形成された基部閉断面部62eと、この基部閉断面部62eに一体に隣接するように八角形断面に近い形状に形成された閉断面部62fと、この閉断面部62fから一体に長手方向に突出する突出部62gとを備える。
【0057】
図10(a)は図9に示した第1閉断面部材61と第2閉断面部材62とが接合した状態でのa−a線断面を示している。
第1閉断面部材61の閉断面部61fが、第2閉断面部材62の突出部62g内に挿入されて重ね合わせられ、接合されている。符号67は第1閉断面部材61の閉断面部61fの中心、68は中心67を通る水平線、69は中心67を通る鉛直線である。
【0058】
突出部62gは、側壁62jと、この側壁62jの上縁から斜め上方に延びる上傾斜壁62kと、この上傾斜壁62kの縁部から水平に中心67側に延びる上壁62mと、側壁62jの下縁から斜め下方に延びる下傾斜壁62nと、この下傾斜壁62nの縁部から水平に中心67側に延びる下壁62pとからなり、中心67側に開放している。
【0059】
図10(b)は図9に示した第1閉断面部材61と第2閉断面部材62とが接合した状態でのb−b線断面を示している。
第1閉断面部材61の突出部61gと第2閉断面部材62の突出部62gとが、互いに中心67側に開放している。
【0060】
第1閉断面部材61の突出部61gは、側壁61jと、この側壁61jの上縁から斜め上方に延びる上傾斜壁61kと、この上傾斜壁61kの縁部から水平に中心67側に延びる上壁61mと、側壁61jの下縁から斜め下方に延びる下傾斜壁61nと、この下傾斜壁61nの縁部から水平に中心67側に延びる下壁61pとからなり、中心67側に開放している。
【0061】
フレーム63の幅をW5、突出部61gの上傾斜壁61kと上壁61m(及び下傾斜壁61nと下壁61p)の幅をW6、突出部62gの上傾斜壁62kと上壁62m(及び下傾斜壁62nと下壁62p)の幅をW7とすると、幅W6は、幅W5の半分よりも小さく(W6<0.5・W5)、幅W7は、幅W5の半分よりも小さい(W7<0.5・W5)。
【0062】
図10(c)は図9に示した第1閉断面部材61と第2閉断面部材62とが接合した状態でのc−c線断面を示している。
第2閉断面部材62の閉断面部62fが、第1閉断面部材61の突出部61g内に挿入されて重ね合わせられ、接合されている。
【0063】
第1閉断面部材61の突出部61gの高さをH5、第2閉断面部材62の閉断面部62fにおける左断面部62Lの高さをH6、右断面部62Rの高さをH7とすると、高さH6は高さH5よりも小さく(H6<H5)、高さH7は、高さH5よりも大きい(H7>H5)。
【0064】
以上の図10(a)〜(c)に示したように、第1閉断面部材61は、一端部に閉断面部61fと突出部61gからなる継手形成部61Sが設けられ、第2閉断面部材62は、一端部に閉断面部62f及び突出部62gからなる継手形成部62Sが設けられ、これらの継手形成部61Sと継手形成部62Sとは、長手方向に直交する方向から挿入されて重ね合わせられる重ね継手71を構成する部分であり、第1閉断面部材61と第2閉断面部材62とは、重ね継手71で接合されている。
【0065】
上記の図2、図3、図4に示したように、多角形状断面を有する二つの閉断面部材としてのフロントホイールハウスアッパメンバ14とフロントバルクヘッドアッパフレーム21とを直列に接合する車体骨格部材としての前部フレーム26の継手構造において、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21が、それぞれ継手としての重ね継手35が形成される側の端部に、閉断面部14f,21fと、この閉断面部14f,21fに隣接してフロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の長手方向に沿って延びる凸部としてのコ字断面部14g,21gとが形成され、このコ字断面部14g,21gが、閉断面部14fの中心31に向かって開放する断面形状を有し、一方のフロントホイールハウスアッパメンバ14のコ字断面部14gの内側に、他方のフロントバルクヘッドアッパフレーム21の閉断面部21fを長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせるとともに、他方のフロントバルクヘッドアッパフレーム21のコ字断面部21gの内側に、一方のフロントホイールハウスアッパメンバ14の閉断面部14fを長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせることによりフロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の断面全辺を接合するので、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の端部同士を長手方向に直交する方向に移動させて重ね合わせて接合することができるとともに、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の角部の稜線14A〜14Dと稜線21A〜21Dとがそれぞれ接合部において双方とも切り欠かずに連続性を有するため、フロントバルクヘッドアッパフレーム2からフロントホイールハウスアッパメンバ14への荷重伝達にロスがなく、接合部、即ち、重ね継手35の剛性、強度を確保することができ、例えば、接合部に切欠き部を有するものに比べて軽量化を図ることができる。
【0066】
また、たとえば、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21の端部同士を長手方向に嵌合させるときに中心軸を精度良く合わせる必要があるのに比べて、本発明では、フロントホイールハウスアッパメンバ14及びフロントバルクヘッドアッパフレーム21を長手方向に直交する方向から重ね合わせるため、フロントホイールハウスアッパメンバ14とフロントバルクヘッドアッパフレーム21との位置合わせに高い精度を必要としないから、コスト低減及び生産性向上を図ることができる。
【0067】
また、コ字断面部14g,21gが、少なくとも一つの側壁14m,21mと、この側壁14m,21mの上端側から延びる上壁14n,21nと、側壁14m,21mの下端側から延びる下壁14p,21pとを備え、上壁14n及び下壁14pと上壁21n及び下壁21pとの長手方向に直交する方向の幅W2,W3が重ね継手35の横幅W1の半分より短い寸法に設定されるので、重ね継手35に発生する応力をより小さくすることができる。
【0068】
尚、本実施形態では、図5(a),(b)に示したように、溶接による接合やブラインドリベットによる締結を示したが、これに限らず、接着による接合や、これらの溶接、リベット締結、接着のいずれかを併用した接合あるいは締結を適用してもよい。
【0069】
また、図9に示したように、第1閉断面部材61の閉断面部61f及び第2閉断面部材62の閉断面部62fを断面八角形としたが、これに限らず、断面を、六角形や他の多角形としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の車体骨格部材の継手構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0071】
14,21…閉断面部材(フロントホイールハウスアッパメンバ、フロントバルクヘッドアッパフレーム)、14f,21f,41a,42a,51a,52a,61f,62f…閉断面部、14g,21g,42b,51b,52b…凸部(コ字断面部)、14m,21m,61j,62j…側壁、14n,21n,61m,62m…上壁、14p,21p,61p,62p…下壁、26…車体骨格部材(前部フレーム)、31,67…閉断面部の中心、35,45,55,65,71…継手(重ね継手)、41,51,61…閉断面部材(第1閉断面部材)、41b…凸部(ハット状断面部)、42,52,62…閉断面部材(第2閉断面部材)、61g,62g…凸部(突出部)、W1,W5…横幅、W2,W3,W6,W7…幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状断面を有する二つの閉断面部材を直列に接合する車体骨格部材の継手構造において、
前記二つの閉断面部材は、それぞれ継手が形成される側の端部に、閉断面部と、この閉断面部に隣接して閉断面部材の長手方向に沿って延びる凸部とが形成され、この凸部は、前記閉断面部の中心に向かって開放する断面形状を有し、一方の閉断面部材の凸部の内側に、他方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせるとともに、他方の閉断面部材の凸部の内側に、一方の閉断面部材の閉断面部を長手方向に直交する方向から挿入して重ね合わせることにより前記二つの閉断面部材の断面全辺を接合することを特徴とする車体骨格部材の継手構造。
【請求項2】
前記凸部は、少なくとも一つの側壁と、この側壁の上端側から延びる上壁と、側壁の下端側から延びる下壁とを備え、上壁と下壁との長手方向に直交する方向の幅が前記継手の横幅の半分より短い寸法に設定されることを特徴とする請求項1記載の車体骨格部材の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−215125(P2010−215125A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64925(P2009−64925)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】