説明

車庫及び建物

【課題】車両の駐車や乗降の際に車両と壁との衝突による、車両又は壁への傷の発生を抑制するにあたり、外観上好ましくかつ十分な駐車スペースを確保する。
【解決手段】車庫壁32は、壁そのものに緩衝機能を持たせるべく、壁のうち少なくとも高さ方向の中間部に、水平方向に延びかつ壁面の奥行き方向への緩衝機能を有する緩衝用壁材としての緩衝パネル52を備えている。この緩衝パネル52は、外装パネル53とともに車庫壁32の駐車スペース側の壁面を形成している。緩衝パネル52は、緩衝機能を持たせるために、少なくとも表層を柔軟性材料で構成した。更に、壁そのものの緩衝機能を高めるべく、壁の下地材41と緩衝パネル52との間に、駐車スペース側からの衝撃を緩和する緩衝手段としてのダンパ54を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車庫及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物には、自動車等の車両を格納するための車庫が当該建物から独立して又は当該建物の一部を利用して設けられている。このような車庫としては、例えば、駐車スペースを壁が取り囲むことによって形成されてなるものがある。
【0003】
壁によって形成された車庫に車両を駐車したり、あるいは入庫済みの車両に乗降したりする場合、運転者や乗降者の不注意等に起因して車両ボディや車両ドアなどが内壁に衝突したり擦ったりしてしまうことがある。その場合、車両や内壁に傷がついてしまったり、最悪の場合には、車両や内壁が破損してしまったりすることがあった。
【0004】
そこで、このような事態を回避するために、従来においては、車庫を形成する壁のうち車両が衝突しやすい箇所に対し、弾性材料により形成されたクッション材を取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−240915号公報
【特許文献2】実開平7−1218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のクッション材は、壁に対して後から取り付けるものであるため、外観上好ましいとは必ずしもいえなかった。すなわち、上記クッション材を用いて壁の破損や傷の発生を防止するには、クッション材に対し、壁面への衝撃を緩和するのに十分な厚みを持たせることが必要と考えられる。しかしながら、クッション材に十分な厚みを持たせると、壁面に取り付けた際にクッション材が壁面から駐車スペース側へ張り出してしまい、車庫の外観を損ねてしまうおそれがあった。また、壁に対してクッション材が目立たないように壁とクッション材との色彩や模様等を合わせることも考えられるが、後付けであるために困難になりがちという懸念もあった。
【0006】
特に、住宅等の建物に付随して車庫が設けられている場合には、外観の良し悪しは住人にとって重要な要素となり得る。したがって、このような場合には、建物の美観を保持しつつ壁における傷の発生を防止する必要性が高いと考えられる。
【0007】
加えて、クッション材が壁面から駐車スペース側へ張り出すことによって、駐車スペースが狭くなってしまうことも懸念される。特に、間口の狭い車庫の場合には、クッション材を取り付けることによって十分な駐車スペースを確保できないことも考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、車両の駐車や乗降の際に車両と壁との衝突による、車両又は壁への傷の発生を抑制するのにあたり、外観上好ましくかつ十分な駐車スペースを確保できる車庫及びこれを備えた建物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明の車庫は、駐車スペースを囲む壁が形成されてなる車庫であって、前記壁のうち少なくとも高さ方向の中間部に、水平方向に延びかつ壁面の奥行き方向への緩衝機能を有する緩衝用壁材が設けられており、前記緩衝用壁材と他の壁材とにより又は前記緩衝用壁材により前記壁面が形成されているものである。
【0011】
この発明によれば、壁の高さ方向の中間部に緩衝用壁材が設けられている。すなわち、駐車スペースを囲む壁そのもののうち、車両の駐車や乗降の際に車両ドアや車両ボディなどを衝突させやすい箇所を、緩衝機能を有する部材で構成することにより、車両又は壁における傷の発生や破損の抑制を図る。このため、車両又は壁への傷の発生等を抑制するための緩衝用の部材を、壁に対して後から取り付ける必要がない。したがって、車両の駐車や乗降の際に車両と壁との衝突による、車両又は壁への傷の発生等を抑制するのにあたり、車庫の美観が保持され、外観上好ましくすることができる。
【0012】
しかも、緩衝用壁材は、駐車スペースを囲む壁そのものの一部を構成するため、駐車スペースへの張り出しも抑制される。したがって、十分な駐車スペースを確保できる。
【0013】
ここで、他の壁材とは、壁面を構成するのに用いる部材のうち緩衝用壁材以外の1種又は複数種の部材を表す。他の部材としては、例えば、緩衝用壁材よりも緩衝機能が劣る壁材などとしてもよい。
【0014】
緩衝用壁材が壁面の一部を構成する場合、緩衝用壁材により構成される壁面と他の部材により構成される壁面とでは、同一又は近似する意匠にすることが好ましい。
【0015】
本発明においては、前記緩衝用壁材の少なくとも表層が柔軟性材料で構成されていることが好ましい。こうすることにより、車両が壁に衝突したり擦ったりした場合にも、車両や壁に傷が付きにくい。
【0016】
本発明において、より好ましくは、前記壁の下地材と前記緩衝用壁材との間に、前記駐車スペース側からの衝撃を緩和する緩衝手段を介在させる形態である。緩衝手段を設けることにより、緩衝用壁材において壁の奥行き方向への移動が可能になる。その結果、車両が壁に衝突等した際にも、車両及び壁に傷や凹みが発生するのを抑制できる。
【0017】
本発明において、前記緩衝用壁材は、前記緩衝用壁材は、複数並べられており、かつ隣接する緩衝用壁材同士が両者の端部間で屈曲可能なように連結されていることが好ましい。こうすれば、所定の緩衝用壁材に車両が衝突した場合に、これに隣接する緩衝用壁材が所定の緩衝用壁材に追従して変位できる。これにより、車両が所定の緩衝用壁材に衝突した場合であっても、隣接する緩衝用壁材との間に予期しない段差が生じてしまうのを防ぐことができる。その結果、長期に亘り外観が損なわれず、長寿命化に寄与することができる。加えて、上記緩衝手段を備えている場合には、所定の緩衝用壁材への外力がなくなることにより、変位した緩衝用壁材を元の位置に復帰させることができる。
【0018】
また、本発明において、前記緩衝用壁材は、着脱自在に設けられていることが好ましい。こうすれば、緩衝用壁材に傷や破損が発生したとしても交換しやすいため、壁を簡単に補修することができる。特に、緩衝用壁材が複数並べられている場合には、破損又は傷が発生した壁材のみを交換すればよいため、補修作業を行うに際し無駄も少なく、コスト低減も可能になる。
【0019】
本発明において、前記緩衝用壁材は、下部を構成する基礎と、上部のうち前記駐車スペース側の壁面の少なくとも一部を構成し前記緩衝機能が前記緩衝用壁材よりも劣る非緩衝用壁材とを備え、前記緩衝用壁材は、前記基礎の上と前記非緩衝用壁材との間に配置されていることが好ましい。こうすれば、基礎と非緩衝用壁材とによって緩衝用壁材における高さ方向に対する位置決めができる。また、緩衝用壁材における壁の奥行き方向への移動も許容される。
【0020】
また、非緩衝用壁材を有する形態においては、前記緩衝用壁材と前記非緩衝用壁材とが面一になるよう前記緩衝用壁材を規制する規制手段が設けられていることが好ましい。こうすれば、緩衝用壁材における駐車スペース側への張り出しが抑制されるため、良好な外観を保つことができる上、駐車スペースが縮小されるのを防止できる。このような規制手段は、下地材と緩衝用壁材との間に緩衝手段が介在している場合に特に有用である。
【0021】
更に、本発明においては、前記壁において緩衝作用がなくなる限界状態に至ることを警告する警告手段が設けられていてもよい。車両と壁との衝突時に、緩衝用壁材が設けられた部位において緩衝作用がなくなり危険な状態に至ることを運転者や乗降者が覚知できれば、壁及び車両への傷や破損の発生等を最小限に抑えることができるからである。
【0022】
本発明の建物は、上記いずれかの本発明の車庫を備えたものである。こうすることで、上述した作用効果を得ることができ、建物としての価値を高めることができる。
【0023】
特に、住宅等の建物の一部を利用して車庫が設けられている場合、駐車スペースを囲む壁は、車庫が隣接する居室スペースと駐車スペースとを区画する壁にもなり得る。このため、車両による破壊を防止する必要性が高い。したがって、建物本体との境界部位である壁を車両によって破壊してしまうことを防止する観点においても、建物に付随した形態での車庫に本発明の車庫を適用することが好ましい。
【0024】
また、車庫が住宅等の建物の一部を構成している場合には、建物における見栄えも重要視されやすい。したがって、外観上の好ましさの観点からも、本発明の車庫を適用するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施形態]
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は本実施形態の建物全体の概略を表す縦断面図であり、図2は車庫周辺の平面構成を示す平面図である。本実施形態では、建物10として、鋼材を利用した骨組み構造を有する二階建て住宅を例示しており、この骨組み構造に外壁その他の各種建築材が設けられて構築されている。
【0026】
図1に示すように、建物10は、基礎11上に形成された下階部分としての一階部分12と、一階部分12の上方に連続して形成された上階部分としての二階部分13と、二階部分13の上方に形成された屋根部分14とを備えている。本実施形態では、一階部分12には例えば居室21などの居室等が一階床面34上に形成され、同二階部分14には例えば居室24,25が形成されている。また、建物10には、一階部分にインナガレージ(付属車庫)としての車庫20が組み込まれており、車庫20と住居とが一体になっている。
【0027】
車庫20は、建物10の一階部分13に設けられている。具体的には、車庫20は、建物10に組み込まれた所謂インナガレージとなっており、居室25の下方に形成されている。すなわち、車庫20は、およそ地上線GLに設定される車庫床面31と一階部分12/二階部分13の境界部15(車庫天井面36)との間に形成され、三方(両側方及び奥方)に立設する車庫壁32の内壁面によって囲まれている。また、車庫20の一側面には、車庫開口部33が形成されており、その車庫開口部33を通じて車庫20への車両Cや人の出入りが可能となっている。
【0028】
車庫壁32は、図2に示すように、車庫20と車庫20に隣接する居室21,22とを仕切る内壁部37,38と、車庫20と屋外とを仕切る外壁部39とから構成されている。これらの内壁部37,38及び外壁部39は、それぞれの内側面により、少なくとも自動車1台分の駐車が可能な横幅及び縦幅を有する駐車スペースを形成している。
【0029】
車庫壁32(内壁部37,38及び外壁部39)の構成について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。ここで、図3は車庫壁32の内部構造を示す斜視図であり、図4は車庫壁32における分解斜視図である。なお、内壁部37,38及び外壁部39は、その内部構造が同じであるため、以下、内壁部37を中心に説明する。
【0030】
図3に示すように、内壁部37は、基礎11と、下地材41と、外装用壁材51と、を備えている。
【0031】
基礎11は、周知の鉄筋コンクリート造であり、車庫床面31の三方(両側方及び奥方)を囲むようにして設けられている。図3に示すように、基礎11においては、車庫床面31からの高さがH1になっている。この高さH1は、車両Cにおいて壁との衝突の可能性が高い部位のうち最も低い位置における車庫床面31からの高さよりも低くなるよう設定されている。具体的には、車両Cの車両バンパ35(図1参照)よりも低い高さ(例えば、40〜50センチメートル)に設定されている。この設定に際しては、車高が低い(すなわち車両バンパ35の位置が低い)車両を考慮して高さH1を設定すれば、各種車両に適合させることができる。
【0032】
下地材41は、基礎11の上に水平方向全体に亘って立設されている。下地材41は、軽量鉄骨材からなる下地フレーム42を備えており、基礎の上に所定間隔で複数立設されている縦フレーム材42aと、水平方向に延びる横フレーム材42bとから構成されている。これらのうち、縦フレーム材42aには、奥行き方向の両端側面のうち駐車スペース側とは反対の側面に、高さ方向に延びる木レンガ43がタッピングネジ等により組み付けられている。更に、木レンガ43の奥行き方向の側面には、高さ方向に延びる木フレーム44がタッピングネジ等により組み付けられている。また更に、木フレーム44の奥行き方向の側面には、石膏ボード45がタッピングネジ等により組み付けられており、居室22における内壁を形成している。この石膏ボード45と下地フレーム42との間には、例えば防湿層付きのグラスウールにて構成される断熱材46が介装されている。
【0033】
続いて、外装用壁材51について説明する。
【0034】
外装用壁材51は、内壁部37の外装のために用いるものであり、内壁部37のうち駐車スペース側の壁面を形成している。外装用壁材51にあっては、その一部が外装パネル53で構成されている。
【0035】
外装パネル53は、例えば窯業系サイディング等といった硬質性の外装材により形成されている。外装パネル53は、内壁部37における駐車スペース側の壁面のうち高さ方向の中間部よりも上部、すなわち車庫床面31から高さH2よりも上部の壁面に配置されている。この高さH2は、車両Cにおいて壁との衝突の可能性が高い部位のうち、最も高い位置における車庫床面31からの高さよりも高くなるよう設定されている。具体的には、車両Cの車両ドアの開閉時に車両Cと壁とを衝突させやすい部位(すなわち車両ドアの最外部)の上端よりも高い高さ(例えば、100センチメートル)に設定されている。この設定に際しては、車高が高い(すなわち車両ドアの位置が高い)車両を考慮して高さH2を設定すれば、各種車両に適合させることができる。
【0036】
外装パネル53は、下地材41に固定されている。ここでは、縦フレーム材42aにおける駐車スペース側の側面に対して木フレーム48を取り付け、この木フレーム48に対しタッピングネジ等により外装パネル53が固定されている。すなわち、外装パネル53は、下地材41に対して位置決めされた状態になっている。なお、外装パネル53は、横フレーム材42bに固定されていてもよい。
【0037】
外装用壁材51は、外装パネル53以外の部材として、緩衝パネル52を備えている。そして、この緩衝パネル52によって外装パネル53と基礎11との間の壁面が形成されている。つまり、緩衝パネル52は、内壁部37における駐車スペース側の壁面のうち高さ方向の中間部に設けられている。具体的には、基礎11と車庫床面31から高さH2との間の領域に設けられている。
【0038】
緩衝パネル52は、高さ方向の中間部において水平方向全体に亘って配置されている。こうすることにより、外装パネル53と緩衝パネル52との境界が目立ちにくくなるため、外観上より好ましくすることができる。
【0039】
緩衝パネル52は、例えばウレタン樹脂、ABS樹脂などの柔軟性材料により形成されている。このため、パネル表面において弾力性を有している。その結果、駐車スペース側からパネル表面に作用する外力に対して緩衝機能を発揮することができる。また、緩衝パネル52は、外装パネル53と同一の模様及び色彩を有しており、一見して外装パネル53との区別がしにくくなっている。
【0040】
緩衝パネル52は、ダンパ54を介して下地材41に取り付けられている。
【0041】
ダンパ54は、壁の奥行き方向に作用する衝撃を緩和するための部材であり、具体的には、壁の奥行き方向に伸縮自在な部材である。より具体的には、蛇腹形状等を有するエアダンパである。ダンパ54は、その伸縮方向が壁面の奥行き方向と一致するように配置されており、壁面の奥行き方向(伸縮方向)に垂直な2面のうち一方が下地材41にボルト等を介して取り付けられ、他方が緩衝パネル52にボルト等を介して取り付けられている。
【0042】
緩衝パネル52及びダンパ54における下地材41への取り付けについて図4を用いて説明する。図4に示すように、下地材41のうち縦フレーム材42aには、貫通孔47が複数(図4では上下左右に4つ)設けられている。また、ダンパ54には、幅方向の両端側面のうち下地材41側の縁部であって貫通孔47に対向する位置にナット付きプレート56aが複数(図4では上下左右に4つ)取り付けられている。ダンパ54は、隣接する2つの縦フレーム材42a間に配置されており、貫通孔47とナット付きプレート56aとにボルト57がねじ込まれることにより(図4においては1のボルトのみを図示し、他のボルトは図示せず)、縦フレーム材42aに対して取り付けされている。言い換えれば、ダンパ54は、下地材41に対して壁の奥行き方向に伸縮可能な状態で固定されることとなる。
【0043】
更に、ダンパ54には、下地材41に固定された面に対向する面に緩衝パネル52が取り付けられている。具体的には、図4に示すように、ダンパ54には、下地材41に固定された面に対向する面の縁部にナット付きプレート56bが複数(図4では上下左右に4つ)取り付けられている。また、緩衝パネル52には、ナット付きプレート56bに対向する位置に貫通孔55が複数(図4では上下左右に4つ)設けられている。これらの貫通孔55とナット付きプレート56bとにはボルト57が着脱可能にねじ込まれており、緩衝パネル52がダンパ54に対して着脱自在に取り付けられている。したがって、車両の衝突時に緩衝パネル52の一部が破損したり傷付いたりした場合であっても、破損等した緩衝パネル52のみを交換することによって容易に補修することが可能になる。
【0044】
下地材41、ダンパ54及び緩衝パネル52は上記の相互関係により構成されている。つまり、下地材41に対してダンパ54が壁の奥行き方向に伸縮可能に固定されており、更にダンパ54に対して緩衝パネル52が下地材41に対向するようにして取り付けられた状態になっている。したがって、緩衝パネル52は、下地材41に対して壁の奥行き方向に相対移動可能な状態で取り付けられていることとなる。
【0045】
ここで、貫通孔47,55及びナット付きプレート56の数及び位置は、緩衝パネル52を着脱可能に取り付けできれば特に限定しない。また、緩衝パネル52及びダンパ54を取り付けた後は、同色のキャップ等によりボルト57の頭部を被覆することにより、緩衝パネル52上においてボルト57が目立たなくなり、外観上好ましい。
【0046】
ダンパ54は、外力が作用していない状態では、駐車スペース側の側面が外装パネル53よりもわずかに駐車スペース側に突出するよう構成されている。本実施形態においては、車庫20は、このダンパ54の突出(すなわち緩衝パネル52の突出)を規制するための規制構造を備えている。具体的には、外装パネル53に設けられ緩衝パネル52が所定位置で止まるよう規制する規制部材である。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、外装パネル53の下部側面に規制片58が設けられ、緩衝パネル52の上部側面に規制片59が設けられている。規制片58,59は、外装パネルの規制片58のうち駐車スペース側とは反対側の面と、緩衝パネル52の規制片59のうち駐車スペース側に対面する面とが、緩衝パネル52と外装パネル53とが面一の状態で当接可能に設けられている。これらの規制片58,59のうち、外装パネル53側の規制片58は、外装パネル53が下地材41に固定されているため、下地材41に対する位置が定められている。したがって、緩衝パネル52に壁の奥行き方向への外力が作用していない通常時には、規制片58,59同士が当接することにより外装パネル53側の規制片58が緩衝パネル52の位置を規制するため、緩衝パネル52と外装パネル53とが面一の状態に維持されることとなる。
【0048】
次に、本実施形態の内壁部37に車両Cが衝突した際における緩衝パネル52及びダンパ54の動作について図5を用いて説明する。なお、図5のうち(a)は車両Cの衝突前における通常時の内壁部37の状態を示す図2のA−A断面図であり、(b)は車両Cの衝突時における内壁部37の状態を示す図2のA−A断面図である。
【0049】
内壁部37は、図5(a)に示すように、車両Cの衝突前における通常時には、外装パネル53の規制片58と緩衝パネル52の規制片59とが当接している。このとき、外装パネル53の規制片58は下地材41に対して固定されているため、緩衝パネル52は、規制片59の存在によって駐車スペース側への移動が規制される。これにより、緩衝パネル52と外装パネル53とが面一の状態に維持されている。
【0050】
この状態において、車両Cの駐車や乗降の際に、内壁部37に車両ドア又は車両バンパが衝突した場合を考える。本実施形態の内壁部37においては、車両ドア及び車両バンパを内壁部37に衝突させやすい高さ位置における壁面が緩衝パネル52にて構成され、更に緩衝パネル52の裏面にはダンパ54が取り付けられている。このため、図5(b)に示すように、緩衝パネル52に対し壁面の奥行き方向(図5(b)における白抜き矢印方向)に力がかかると、ダンパ54が壁面の奥行き方向に収縮する。これに付随して、緩衝パネル52が壁面の奥行き方向に移動し、外装パネル53と緩衝パネル52との面一の状態が解除される。このようにして、内壁部37では車両Cからの衝撃が緩和される。
【0051】
また、本実施形態においては、例えば音や光などを発する警報装置63が設けられており、緩衝パネル52が通常の状態(図5(a)の状態)から壁面の奥行き方向に移動した状態(図5(b)の状態)になったことをブザー等により報知する。警報装置63は、制御装置62に接続され、同じく制御装置62に接続され下地材41と緩衝パネル52との接近距離を検出する距離センサ61からの距離に基づいて作動する。このとき、接近距離が短く、緩衝パネル52及びダンパ54にもはや緩衝作用がなくなる限界状態に近づくほど激しく報知するのが好ましい。なお、センサ61としては、例えば超音波などを利用した周知の距離センサなどを用いることができる。
【0052】
そして、車両Cが内壁部37から離れ、車両Cによる押圧が解除されると、ダンパ54が駐車スペース側に向かってゆっくりと伸張し、これに付随して緩衝パネル52がダンパ54の伸張方向と同じ方向に移動する。そして、緩衝パネル52が外装パネル53に対して縦並びになったところで緩衝パネル52の規制片59が外装パネル53の規制片58に当接される。このとき、外装パネル53の一部である規制片58は、下地材41に対して固定されているため、規制片58,59同士の当接により緩衝パネル52の移動が止まる。その結果、緩衝パネル52は、外装パネル53に対して壁の奥行き方向に後退した状態(図5(b)の状態)から元の位置(図5(a)の状態)に戻り、緩衝パネル52と外装パネル53とが面一の状態を再び形成する。
【0053】
以上の構成により、以下に示す有利な効果が得られる。
【0054】
本実施形態によれば、車庫23を構成する車庫壁32(内壁部37,38及び外壁部39)のうち車両Cの車両ドアや車両バンパ等を衝突させやすい中間部を緩衝パネル52で構成したため、壁そのものに緩衝機能を持たせることができる。このため、壁に対して新たに緩衝用の部材を取り付ける必要がない。その結果、車両C又は壁への傷の発生等を抑制するにあたり、外観上の好ましさを保持できる。
【0055】
また、緩衝パネル52は、外装パネル53と同一の模様及び色彩を有することから、一見しただけでは外装パネル53との材質の違いを区別しにくい点においても好ましい。特に、車庫23はインナガレージであるため、建物全体の美観を保持することが重要視されやすく好適である。
【0056】
また、緩衝パネル52は、高さ方向の中間部において水平方向全体に亘って設けられているため、水平方向の一部に設ける場合に比べて外観上より好適である。
【0057】
更に、緩衝パネル52は、内壁部37,38及び外壁部39の壁の一部を構成している上、規制片58により駐車スペース方向への動きが規制されているため、駐車スペースに張り出さない。これにより、十分な駐車スペースを確保できる。
【0058】
また、緩衝パネル52の移動を規制する規制手段として規制片58,59を採用したため、規制のための構造を設けても外観上目立ちにくく美観を保つことができる上、緩衝パネル52の規制を簡易な構成で実現できる。
【0059】
緩衝パネル52は、柔軟性材料により形成されているため、緩衝パネル52と車両Cとの接触時等においても、車両Cに傷が付きにくい。また、壁面には複数枚のパネルが着脱自在に取り付けられているため、万が一壁面に傷が付いたとしても、傷付いたパネルのみの交換が容易である。
【0060】
加えて、緩衝パネル52の裏面にダンパ54を取り付けたため、緩衝パネル52が壁面の奥行き方向に移動するのを許容する。その結果、車両Cが壁に衝突等した際にも、車両C及び壁における傷の発生や破損等を抑制できる。また、衝撃を緩衝するための部材として蛇腹形状のエアダンパを採用することにより、破損等の抑制を簡単な構成で実現できる。また、エアダンパであれば、緩やかな戻り力を有し安全性も高い。更に、緩衝パネル52は、複数箇所でダンパ54に固定されているため、通常時にその姿勢を安定に保持できる。
【0061】
車庫23には警報装置63が備えられているため、車両と壁との衝突時に、緩衝パネル52が設けられた部位において緩衝作用がなくなる前に、その危険な状態を運転者や乗降者が覚知できる。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、緩衝パネル52と下地材41との間に介在する緩衝手段の構成が、上記第1の実施形態で説明したダンパ54と異なっている。以下、この相違点を中心に説明する。
【0063】
図6は、本実施形態の緩衝手段を備えた内壁部37の横断面図である。図6のうち(a)は車両Cが衝突する前の通常時の状態を示し、(b)は車両Cが衝突した際の状態を示す。本実施形態においては、図6に示すように、縦フレーム材42aのうち駐車スペース側の側面に緩衝手段としての緩衝部材71が設けられている。
【0064】
なお、外装パネル53については、第1の実施形態では縦フレーム材42aに木フレーム48を組み付け、この木フレーム48に組み付けたが、本実施形態では木フレーム48を設けず、横フレーム材42bに組み付けるものとした。
【0065】
緩衝部材71は、本体73と、緩衝パネル52を壁面の奥行き方向に移動させる軸74とを備えている。
【0066】
本体73は、その底部に設けられた基部72を介して縦フレーム材42aの側面にネジ等により取り付けられている。本体73は、樹脂等により形成されたケースに、例えばコイルばね等の弾性体が収容されている。弾性体は、その一端が基部72側の底面に固定されており、他端が軸74の一端に連結されている。この弾性体は、軸74が基部72に向かって(すなわち下地材41に向かって)押し付けられた状態で軸74を基部72から離間させる方向(すなわち下地材41から離間させる方向)に弾性力を付与する。
【0067】
軸74は、弾性体との連結部分とは反対側の端部に球状面が形成されている。軸74は、本体73の内部から緩衝パネル52に向かって延出しており、先端に設けられた球状面が、緩衝パネル52の裏面(例えば、緩衝パネル52の各片の裏面中心部)に取り付けられた球面軸受け部材75に対し当接状態が解除されないように保持されている。これにより、緩衝パネル52は、弾性体の弾性力に抗して壁面の奥行き方向に移動可能であるとともに、軸74に対して回動可能に支持される。
【0068】
本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、緩衝パネル52は、複数のパネルが横並びに配置されている。具体的には、緩衝パネル52には、幅方向の両端側面のうち一方の側面に凸部79が設けられ、他方の側面には凸部79に対応する凹部81が設けられている。そして、緩衝パネル52の凸部79とこれに隣接する緩衝パネル52の凹部81とを当接させることにより、隣接する緩衝パネル52の端部同士が接合されている。
【0069】
隣接する緩衝パネル52の端部同士には、パネル接続部材77が取り付けられている。パネル接続部材77はシート状体であり、例えばゴムやウレタン樹脂などの伸縮性材料により形成されている。このため、隣接する緩衝パネル52同士は、パネル接続部材77が伸縮することにより、その端部間で屈曲可能に連結されることとなる。その結果、各々の緩衝パネル52を、それぞれ隣接する緩衝パネル52の動きに追従させることができる。
【0070】
また、隣接する緩衝パネル52の端部間には、凸部79と凹部81との接合部位に目地78が形成されている。このため、緩衝パネル52の変位が容易になる。
【0071】
緩衝パネル52は、車庫開口部33(図2参照)側の端部が内壁部37のコーナ壁82に当接している。コーナ壁82の内端側には、緩衝パネル52の駐車スペース側への突出を抑制する抑制部76が設けられている。具体的には、抑制部76は、コーナ壁82の一部であり、緩衝パネル52の凹部81に対し駐車スペース側から当接可能な凸状を有している。したがって、緩衝パネル52の凹部81が抑制部76に当接されることにより、緩衝パネル52が所定位置よりも駐車スペース側に突き出さないようにすることができる。その結果、緩衝パネル52に面一の状態を保持させる。
【0072】
なお、抑制部76は、緩衝部材71の弾性体を下地材41に向かって適度に押し付け可能な位置に設けられているのが好ましい。こうすれば、抑制部76と緩衝パネル52の端部とが確実に当接され、緩衝パネル52の位置を所定の位置に定めることができるからである。
【0073】
次に、本実施形態の内壁部37に車両Cが衝突した際における緩衝パネル52及び緩衝部材71の動作について図6を用いて説明する。
【0074】
内壁部37は、図6(a)に示すように、車両Cの衝突前における通常時には、抑制部76が緩衝パネル52を規制しているため、下地材41と緩衝パネル52との間の距離は一定に保たれる。このため、緩衝パネル52は、隣接するパネル同士が面一の状態に維持されている。
【0075】
続いて、車両Cの駐車や乗降の際に内壁部37に車両バンパが衝突した場合を考える。この場合、図6(b)に示すように、車両Cが衝突した緩衝パネル52(図6(a)中の52a)は、弾性体の弾性力に抗して壁面の奥行き方向(図6(b)における黒塗り矢印方向)に移動し、その姿勢を変える。また、これに隣接する緩衝パネル52(52b)も、緩衝パネル52aの動きに追従して移動又は回動し、その姿勢を変える。このとき、緩衝パネル52は、隣接する端部同士がパネル接続部材77によって連結されているため、隣接する端部同士が屈曲可能であり、面として連続した状態が保持される。したがって、隣接する緩衝パネル52同士の間に段差が生じてしまうことがない。
【0076】
車両Cによる押圧が解除されると、緩衝部材71の軸74が弾性体によって駐車スペース側に向けて付勢され、これに付随して緩衝パネル52が弾性体の付勢方向と同じ方向(すなわち駐車スペース側の方向)に移動する。そして、緩衝パネル52の凹部81が抑制部76に当接される。このとき、抑制部76は、コーナ壁82に対して固定されているため、凹部81が抑制部76に当接されることにより緩衝パネル52の移動が止まる。また、緩衝パネル52の端部間は、パネル接続部材77が復元することにより、屈曲した状態から平坦な状態に復帰する。その結果、緩衝パネル52同士が面一になった状態(図6(a)の状態)が再度形成される。
【0077】
以上により、本実施形態によれば、緩衝パネル52は、隣接する端部間がパネル接続部材77により屈曲可能に連結されているため、隣接する緩衝パネル52の動きに追従させることができる。これにより、車両Cが衝突したパネルと衝突していないパネルとの間に段差が生じず、長期に亘り外観を損なわないものにすることができる。これにより、車庫壁32の長寿命化に寄与することができる。また、段差が生じることに起因した違和感を使用者に与えずに済む。
【0078】
また、緩衝手段として弾性体を用いた構成を採用したため、車両Cが衝突して壁を押圧した後その押圧が解除された場合に、緩衝パネル52を面一の状態にすばやく戻すことができる。
【0079】
更に、緩衝パネル52同士をパネル接続部材77で連結したため、緩衝パネル52を複数片で構成した場合にも緩衝パネル52同士の接合が崩れにくい。また、パネル接続部材77は伸縮性材料で構成されているため、隣接する緩衝パネル52の動きに合わせて屈曲させやすい。
【0080】
加えて、緩衝パネル52の端部間には目地78が設けられているため、緩衝パネル52への車両Cの衝突時に、壁面に連続した状態を維持させやすい。
【0081】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、緩衝パネル52と下地材41との間に介在する緩衝手段の構成が、上記第1の実施形態で説明したダンパ54と異なっている。以下に、この相違点を中心に説明する。
【0082】
図7は、本実施形態の内壁部37を説明するための説明図である。図7のうち(a)は図2におけるB−B断面図であり、(b)は緩衝パネル52の背面の状態を示す斜視図である。本実施形態においては、緩衝手段として保持体91を備えている。
【0083】
保持体91は、壁の奥行き方向、高さ方向及び幅方向に少なくともその一部が変位可能であってかつ緩衝パネル52を着脱自在に引掛けて保持可能な部材である。具体的には、壁の高さ方向及び幅方向に張られた例えばワイヤなどの線状あるいは帯状の保持体91である。すなわち、保持体91は、高さ方向の保持体91aと水平方向の保持体91bとから構成されており、下地材41の前面に配置されている。高さ方向の保持体91aは、車庫天井面36と基礎11との間に所定間隔で複数張られており、水平方向の保持体91bは、保持体91aに直交するよう下地材41に対し所定間隔で複数張られている。この保持体91は、壁の奥行き方向、高さ方向及び幅方向に少なくともその一部を変位可能な構造を有している。具体的には、保持体91には、その一端に例えばコイルバネなどの弾性部92が設けられており、弾性部92の先端が車庫天井面36又は下地材41に固定されている。また、他端には例えばフック等が形成されており、そのフック等を利用して基礎11又は下地材41に固定されている。このため、保持体91は、弾性部92の弾性力により壁の奥行き方向、高さ方向及び幅方向に伸縮自在になっている。
【0084】
本実施形態における緩衝パネル52は、矩形平板状の複数のパネル小片52aで構成されており、このパネル小片52aが縦方向及び横方向に並べられている。パネル小片52aの裏面には、図7(b)に示すように、水平方向の保持体91bに引掛け可能なフック部材93が保持体91b同士の間隔に対応する位置に複数(本実施形態においては4つ)取り付けられている。このフック部材93を、配置したい位置に張られた保持体91bに引掛けることにより、緩衝パネル52が保持体91に対して着脱自在に取り付けられることとなる。
【0085】
緩衝パネル52が壁面を構成する様子を図8に示す。図8は、図2における本実施形態のA−A断面図である。図8に示すように、緩衝パネル52の各々のパネル小片52aは、保持体91bにフック部材93を引掛けることにより保持体91に対して取り付けられている。また、隣接するパネル小片52aの端部間は、隣接するパネル小片52aの動きに追従可能に当接されている。具体的には、パネル小片52aの高さ方向及び幅方向の両端側面のそれぞれには、一方の面に凹部が設けられ他方の面にその凹部に対応する形状の凸部が設けられており、これらが当接されている。したがって、所定のパネル小片52aに車両Cが接触した場合、車両Cが接触したパネル小片52aは、保持体91により種々の方向に変位させるとともに、隣接するパネル小片52aを追従させる。その結果、運転者が誤って車両Cを壁に接触させた場合であっても、壁面を変形させることによって、車両C及び壁に傷が付くのを防ぐことができる。
【0086】
以上により、本実施形態によれば、複数のパネル小片52aを保持体91に引掛ける構成としたため、緩衝パネル52に傷が付いた場合であっても、その傷付いた箇所のパネル小片52aだけを容易に取り外し及び取り付けすることができる。したがって、損傷した箇所のパネル交換を容易に行うことができる。
【0087】
また、緩衝パネル52はパネル小片52aで構成されており、また緩衝パネル52を保持体91に引掛けるだけという簡単な構成であるため、壁の補修に要するコストも低減できる。
【0088】
加えて、緩衝パネル52(パネル小片52a)を保持体91に引掛けることにより、緩衝パネル52は種々の方向に変位可能なため、車両Cからの外力の向きや隣接するパネル小片52aの動きに合わせて壁面を変形させやすい。したがって、車両Cの接触時には壁面がより滑らかな曲線を描くよう壁面を変形させることができ、外観上より好ましい。
【0089】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においても、第2及び第3の実施形態と同様に、緩衝パネル52と下地材41との間に介在される緩衝手段の構成が、上記第1の実施形態で説明したダンパ54と異なっている。以下、この相違点を中心に説明する。
【0090】
図9は、図2における本実施形態のA−A断面図である。本実施形態においては、図9に示すように、緩衝手段として断熱材46を用いる。
【0091】
本実施形態における緩衝パネル52は、断熱材46に取り付けられている。つまり、断熱材46は、石膏ボード45と下地フレーム42との間の空間だけでなく、下地フレーム42と緩衝パネル52との間の空間にも設けられている。そして、断熱材46のうち厚み方向の両端側面の一方の面が例えばタッカなどを介して石膏ボード45に取り付けられており、他方の面が例えば接着剤などを介して緩衝パネル52に取り付けられている。これにより、緩衝パネル52は、断熱材46のクッション性により、石膏ボード45(すなわち下地材41)に対して壁の奥行き方向に相対移動可能になっている。
【0092】
したがって、車両Cが壁面に衝突した場合には、緩衝パネル52は、断熱材46のクッション性により壁の奥行き方向に移動され、壁面への衝撃が緩和される。そして、車両Cによる緩衝パネル52への外力がなくなると、緩衝パネル52は、断熱材46のクッション性により、ゆっくりと元の位置に復帰することとなる。
【0093】
なお、断熱材46としては、上述したグラスウールのほか、ロックウール、ウレタンフォームなど当業者が断熱材として通常用いる材料を適宜用いることができる。
【0094】
以上により、本実施形態によれば、緩衝手段として断熱材46を用いるため、外観を保ちかつ駐車スペースを十分に確保するにあたり、簡単な構成で実現できる。また、断熱材46という汎用されている部材を緩衝手段として用いるため、手間やコスト等の面で有利である。
【0095】
更に、断熱材46の厚みや種類等を適宜選定することにより、緩衝手段における緩衝機能の程度や壁の厚みの調整等を容易に行うことができる。特に、広範囲の領域に緩衝機能を持たせる場合には、緩衝機能を壁面に対して均一に付与しやすいため好適である。
【0096】
[他の実施形態]
なお、以上説明した第1〜第4の実施形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0097】
・上記第1の実施形態では、緩衝パネル52は、高さ方向の中間部に設けたが、これに限定せず、中間部よりも更に上部の領域にも設けてもよい。あるいは、高さ方向の全体に設けてもよい。こうすれば、車高の高い車両Cにも確実に対応させることができる。
【0098】
・上記第1の実施形態では、緩衝パネル52は、高さ方向の中間部の水平領域全てに亘って設けているが、水平領域の一部の領域だけに設けてもよい。具体的には、水平領域のうち車両Cとの衝突の可能性が低い領域は外装パネル53にて構成してもよい。このような領域としては、例えば、車庫23の奥側コーナ付近などが挙げられる。こうすれば、壁面が移動可能な領域が最小限に抑えられるため、利用者に与える違和感を低減することができる。
【0099】
・上記各実施形態では、緩衝パネル52の全体を柔軟性材料で構成したが、緩衝パネル52の表層だけを柔軟性材料で構成してもよい。表層以外の部分を例えば硬質性材料で構成することにより、緩衝パネル52の強度を高めることができる。
【0100】
・上記各実施形態では、基礎11の上に緩衝パネル52を設けたが、基礎11の上に緩衝パネル52を必ずしも配置する必要はない。例えば、基礎11、外装パネル53、緩衝パネル52の順に配置してもよい。
【0101】
・上記各実施形態では、ダンパ54などの各種緩衝手段を設けたが、これらの緩衝手段は必ずしも必要でなく、緩衝手段を設けない構成であってもよい。この場合であっても、緩衝パネル52による弾力性により衝撃が緩和されるため、車両C及び壁に傷を付けにくくすることができる。
【0102】
・上記第1の実施形態では、緩衝手段として蛇腹形状のエアダンパを用いたが、一定のクッション性と戻り力とを有したものであればその形態や形状等は特に限定しない。例えば、チューブ式ダンパ、オイルダンパなど各種ダンパを用いることができる。また、ダンパ54は、緩衝パネル52の裏面全体に設ける必要はなく、その一部の領域に設けてもよい。この場合、1のダンパを取り付けてもよいが、十分な緩衝機能を付与するとともに緩衝パネル52を下地材41に対して確実に支持する観点から、複数のダンパを取り付けることが好ましい。
【0103】
・上記第1及び第2の実施形態では、緩衝パネル52が駐車スペース側に突出するのを規制する規制片58,59又は抑制部76を備えていたが、これらを備えていない構成であってもよい。また、規制片58,59及び抑制部76は、緩衝パネル52が駐車スペース側に突出するのを規制可能であれば、その形態は特に限定しない。例えば、第1の実施形態では、外装パネル53の一部を用いて緩衝パネル52の移動を規制する形態を採用したが、これとともに又はこれに代えて、基礎11に規制片を設け、これによって内装パネル52の移動を規制してもよい。
【0104】
・上記第2の実施形態において、隣接する緩衝パネル52の端部間を屈曲可能にするための形態は特に限定しない。上記においては、緩衝パネル52の幅方向の両端側面に凹部及び凸部を設けたが、これに限定せず、緩衝パネル52の端部間をフラットな状態にしてもよい。この場合、緩衝パネル52の端部間に目地を設けた状態でその端部間をパネル接続部材76により連結すれば、緩衝パネル52の端部間を屈曲可能にすることができる。また、隣接する緩衝パネル52の端部間はパネル接続部材76を用いて連結されたが、これに限定せず、例えば、両者の端部間を紐やワイヤ等を用いて連結してもよい。
【0105】
・上記第3の実施形態では、ワイヤ91の一端に弾性部を設け、この弾性部による弾性力を利用して緩衝パネル52を移動可能にしたが、緩衝パネル52を引掛け可能であるとともに引掛けた緩衝パネル52を変位可能とする構成であれば特に限定しない。例えば、弾性部の代わりに滑車を用いてもよい。具体的には、車庫天井面36又は下地材41に定滑車を取り付け、この滑車の溝に保持体91をかけた状態で、保持体91の一端を基礎11又は下地材41に固定し、他端におもり等を取り付ける。この場合にも、滑車が回転することにより支持体91が移動可能であるため、緩衝パネル52を保持させた場合にこの緩衝パネル52を変位させることができる。
【0106】
・上記各実施形態は、緩衝パネル52が着脱自在に取り付けられていたが、必ずしも着脱可能である必要はなく、着脱不能であってもよい。
【0107】
・上記第1の実施形態では、警告手段としての警報装置63を設けたが、これを備えていない構成であってもよい。
【0108】
・上記各実施形態では、インナガレージに適用した場合について説明したが、建物から独立して設けられた車庫に適用してもよい。また、車庫20は、側方又は奥方に壁を有していればよく、側方又は奥方の壁を有さない車庫や、天井を有さない車庫に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】建物全体の概略を表す縦断面図。
【図2】車庫周辺の平面構成を示す平面図。
【図3】第1の実施形態における車庫壁の構造を示す斜視図。
【図4】第1の実施形態における車庫壁の分解斜視図。
【図5】第1の実施形態における図2のA−A断面図。図5のうち(a)は車両Cの衝突前における通常時の状態を示し、(b)は車両Cの衝突時の状態を示す。
【図6】第2の実施形態における車庫壁の横断面図。図6のうち(a)は車両Cの衝突前における通常時の状態を示し、(b)は車両Cの衝突時の状態を示す。
【図7】第3の実施形態における車庫壁を説明する説明図。図7のうち(a)は図1におけるB−B断面図であり、(b)は緩衝パネルの斜視図である。
【図8】第3の実施形態における図1のA−A断面図。
【図9】第4の実施形態における図1のA−A断面図。
【符号の説明】
【0110】
10…建物、11…基礎、20…車庫、32…車庫壁、37,38…内壁部、39…外壁部、41…下地材、42…下地フレーム、46…断熱材、52…緩衝用壁材としての緩衝パネル、53…非緩衝用壁材としての外装パネル、54…緩衝手段としてのダンパ、63…警報装置、71…緩衝手段としての緩衝部材、76…規制手段としての規制片、77…パネル接続部材、91…緩衝手段としての保持材、93…フック部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車スペースを囲む壁が形成されてなる車庫であって、
前記壁のうち少なくとも高さ方向の中間部に、水平方向に延びかつ壁面の奥行き方向への緩衝機能を有する緩衝用壁材が設けられており、前記緩衝用壁材と他の壁材とにより又は前記緩衝用壁材により前記壁面が形成されていることを特徴とする車庫。
【請求項2】
前記緩衝用壁材の少なくとも表層が柔軟性材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車庫。
【請求項3】
前記壁の下地材と前記緩衝用壁材との間に、前記駐車スペース側からの衝撃を緩和する緩衝手段が介在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車庫。
【請求項4】
前記緩衝用壁材は、複数並べられており、かつ隣接する前記緩衝用壁材同士が両者の端部間で屈曲可能なように連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項5】
前記緩衝用壁材は、着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項6】
前記壁は、下部を構成する基礎と、上部のうち前記駐車スペース側の壁面の少なくとも一部を構成し前記緩衝機能が前記緩衝用壁材よりも劣る非緩衝用壁材とを備え、
前記緩衝用壁材は、前記基礎の上と前記非緩衝用壁材との間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項7】
前記緩衝用壁材と前記非緩衝用壁材とが面一になるよう前記緩衝用壁材を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車庫。
【請求項8】
前記壁において緩衝作用がなくなる限界状態に至ることを警告する警告手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車庫。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車庫が設けられていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−91867(P2009−91867A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266174(P2007−266174)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】