説明

車止め

【課題】 地盤上に立設した柱状の車止めに設定条件下で車が衝突すると、車止めが屈曲して衝撃を緩和すると共に車を停止させることができるようにした車止めにおいて、その車止めに、車を止めることができる硬度と自己復元性とを付与し得るようにすること。
【解決手段】 地盤上に立設した柱状の車止めに車が衝突すると車止めが屈曲して衝撃を緩和すると共に車を停止させることができるようにした車止めにおいて、その車止めを、中空の支柱外皮とその中に充填発泡された発泡体とにより構成し、かつ、その支柱外皮を、ポリウレタンとABSとをPU/ABS=35/65〜70/30、好ましくは45/55〜60/40の配合比で混合させた複合材により構成して、車止めに必要な剛性と自己復元性とを具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道の保護や車道と歩道との境界標示用、あるいは、駐車場、公園、街路などへの自動車の進入禁止用などとして使用される車止めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車止めとしては、一般に、鋼製パイプや、石柱、コンクリート柱などが使用されているが、これらは大きな剛性を有するため、これに車輌が衝突すると人や車輌などに損傷を与えるという問題がある。
【0003】
このような点を改善するため、車輌などが衝突すると車止めが屈曲して衝撃を吸収緩和することができるようにしたものが多数提案されている。その一例を示すと下記のとおりである。
【特許文献1】特開平6−248619号公報
【特許文献2】実公平6−37051号公報
【特許文献3】実公平6−45450号公報
【特許文献4】特開平10−168844号公報
【0004】
これらの従来技術は、車輌が衝突すると屈曲してその衝撃を吸収緩和することができるけれども、何れも構造が複雑で高価であるばかりでなく、車止め自体の剛性の変更や屈曲特性の変更などをしたいときには全体構成を変更しなければならず、仕様,用途に応じた製品の提供ができにくいという問題がある。
【0005】
本発明者などは、このような従来技術の問題点を改善するため、弾性を有する中空の支柱外皮と、該支柱外皮の下端に一体に結合された台座と、該台座と一体に結合されて支柱外皮中に所望の高さ位置まで配設された補強体と、前記支柱外皮中に充填される発泡体とよりなり、前記支柱外皮中に前記発泡体を充填発泡させて支柱を構成し、前記支柱外皮の材質と発泡体の材質とを選択的に組み合せることにより支柱に所望とする剛性を付与すると共に、前記補強体の高さ位置における屈曲特性を付与せしめた車止めを発明し、特願2003−355404号として特許出願中である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の先願発明によれば、前記の如く、弾性を有する中空の支柱外皮とその内部に充填された発泡体とにより支柱を構成するので、これにより得られた支柱の剛性は支柱外皮の材質と発泡体の材質との組み合せを変更することにより任意に設定することができ、かつ、その支柱に車輌が衝突したときの衝撃力は支柱の屈曲によって吸収緩和すると共に、その屈曲位置は補強体の高さ位置によって特定されるので、補強体の高さを変えることにより所望とする仕様用途に適したものにすることができる。
【0007】
このように、先願発明においては、弾性を有する中空の支柱外皮と発泡体との組み合せを変更することにより支柱に車止めに必要とする剛性を与えることができるが、車の衝突により屈曲した支柱のその後の自己復元性の付与についての研究は不十分であって、車止めに必要とする剛性の付与と屈曲後車を離脱させた後の自己復元性の付与との両機能を満足させることはきわめて困難であった。すなわち、強度を重視すると復元性に劣り、復元性を重視すると強度が劣って車止めとしての機能を果すことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、前記の如き先願発明の問題点を改善し、車止めに必要とする強度とその後の自己復元性との双方の機能を満足させることができる車止めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、弾性を有する中空の支柱外皮と、該支柱外皮の下端に一体に結合された台座と、該台座と一体に結合された支柱外皮中に所望の高さ位置まで配設された補強体と、前記支柱外皮中に充填される発泡体とよりなり、前記支柱外皮中に前記発泡体を充填発泡させて支柱を構成し、前記支柱外皮の材質と発泡体の材質との組み合わせにより支柱に所望とする剛性を付与すると共に、前記補強体の高さ位置における屈曲特性を付与せしめた車止めにおいて、前記中空の支柱外皮を、重量比にて、弾性樹脂材(例えばポリウレタン)と強度樹脂材(例えばABSなど)とをPU/ABS=35/65〜70/30、好ましくは45/55〜60/40の配合比で混合させた複合材により形成させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記のように、先願発明の車止めにおいて、その支柱外皮を、弾性樹脂材(ポリウレタン)と強度樹脂材(ABSなど)とを混合させた複合材を用いて成形すると共に、PUとABSなどとの配合比を、PU/ABS=35/65〜70/30、好ましくは45/55〜60/40に設定したので、所定の速度以下で車が衝突した場合に支柱が屈曲して衝撃を緩和すると共に車を止める機能と、その後車をとり除くと支柱をほぼ垂直に復元させる機能とを具備させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面について本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明による車止めの一実施形態を示すもので、1は所望の強度と弾性とを有する中空の支柱外皮、2は該支柱外皮中に充填発泡された発泡体、3は台座、4はキャップ、5は反射シート、6は鍔付ボルト、7は補強体である。
【0013】
前記の支柱外皮1は、弾性樹脂材(例えばポリウレタン)と強度樹脂材(例えばABSなど)とを混合させた複合材を用いて円筒状に形成すると共に両者の配合比を特定の範囲に設定したものであるが、その配合比およびその決定理由については後述する。
【0014】
前記の発泡体2は、例えば下記表4に示す物性を有する半硬質発泡ポリウレタンであるが、その材質はこれに限定されるものではない。
【表4】

【0015】
前記の台座3は、例えば下記表5に示す物性を有するポリウレタンであるが、その材質はこれに限定されるものではない。
【表5】

【0016】
前記のキャップ4は、例えば下記表6に示す物性を有するポリエチレンであるが、その材質はこれに限定されるものではない。
【表6】

【0017】
前記の補強体7は、所望とする補強特性を有する材質のもの例えば金属板を支柱外皮より小径の円筒状に成形したものであるが、その材質はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明の車止めは、以上のような材料によって構成され、その支柱外皮1の下端に地盤に対する固定用鍔付きボルト6を底面から突設させた台座3を支柱外皮1および補強体7と共に一体に成型しておき、その支柱外皮1中に発泡体2を注入して発泡硬化させる。なお、キャップ4は、この実施例の場合、発泡体の注入前に支柱外皮の頂部にかぶせておき、発泡体2の充填発泡により支柱外皮1および発泡体2と一体化させたものであるが、その固定方法は任意に実施することができる。
【0019】
本発明においては、前記中空の支柱外皮を、弾性樹脂材(例えばポリウレタン)と強度樹脂材(例えばABSなど)を、重量比にて、PU/ABS=35/65〜70/30、好ましくは45/55〜60/40の配合比で混合させた複合材により形成させたことを特徴とする。なお、前記強度樹脂材として、ABSの代わりに、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート(PET)を使用することもできる。
【0020】
その具体的な配合比およびそれにより得られた支柱外皮の物性値を示すと下記表1,2,3に示すとおりである。
【表1】

【表2】

【表3】

【0021】
なお、これらの配合の元となるポリウレタンとABSの物性値を示すと下記表7および表8に示すとおりである。
【表7】

【表8】

【0022】
本発明において、弾性樹脂材と強度樹脂材との配合比を前記の如く設定したのは、次の理由による。すなわち、本発明者などは、ポリウレタンとABSとの配合比を変えた複数の支柱外皮を用いた車止めを試作してその車止機能と復元性とを試験した。試験に供した車止めは、図2に示すように、高さ約800mm、直径135mm、支柱外皮の肉厚2.5mm、補強体の高さ175mmで、これに速度5km以下の小型車を衝突させてトルク位置700mmに衝撃力が作用すると、補強体7の高さ位置付近が屈曲して車を止めることができるようにした。
【0023】
その結果は、図3(a)および(b)に示すとおりである。すなわち、図3(a)はPU/ABSと復元性との関係を示す説明図、図3(b)は同じくPU/ABSと車止め機能(硬度)との関係を示す説明図であって、これらの図に示すように、PU比率が低いときは復元性が殆んど認められないが、PU比率が30%以上になると復元性が急速に増大し、車を衝突させてほぼ90°に屈曲させたとき、PU/ABSが35/65〜70/30の場合には1時間後には角度で70%以上復元し、PU/ABSが45/55〜60/40の場合には1時間後には角度で90%以上復元し、何れの場合も、24時間後には略垂直状態まで復元させることができることを確認した。
【0024】
このように、本発明においては、先願発明にかかる車止めの支柱外皮を、重量比にて、弾性樹脂材/強度樹脂材=35/65〜70/30好ましくは45/55〜60/40の配合比で混合させた複合材により構成したもので、所定以下の速度で衝突した車を停止させる機能を具備しながら、その衝突により屈曲された車止めを確実に復元させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による車止めの一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1に示す実施形態の車止めの試験条件を示す説明図である。
【図3】PUとABSとの配合比率と屈曲復元性との関係と、PUとABSとの配合比と車止め機能(硬度)との関係とを説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・支柱外皮、2・・・発泡体、3・・・台座、4・・・キャップ、5・・・反射シート、6・・・鍔付ボルト、7・・・補強体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する中空の支柱外皮と、該支柱外皮の下端に一体に結合された台座と、該台座と一体に結合されて支柱外皮中に所望の高さ位置まで配設された補強体と、前記支柱外皮中に充填される発泡体とよりなり、前記支柱外皮中に前記発泡体を充填発泡させて支柱を構成し、前記支柱外皮の材質と発泡体の材質との組み合わせにより支柱に所望とする剛性を付与すると共に、前記補強体の高さ位置における屈曲特性を付与せしめた車止めにおいて、前記中空の支柱外皮を、重量比にて、弾性樹脂材と強度樹脂材とを、弾性樹脂材/強度樹脂材=35/65〜70/30、好ましくは45/55〜60/40の配合比で混合させた複合材により形成させたことを特徴とする車止め。
【請求項2】
支柱外皮を構成する弾性樹脂材をポリウレタン、強度樹脂材をABSまたはポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートとしたことを特徴とする請求項1に記載の車止め。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−70464(P2006−70464A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251906(P2004−251906)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】