説明

車載機器遠隔操作システム

【課題】車室内送信機による携帯機の検知エリアを適切に設定することが可能な車載機器遠隔操作システムを提供すること。
【解決手段】車両10において、望ましい車室内検知エリアの外縁位置に設置され、車室内LF送信機2eから送信される信号を受信する基準LF受信機9を備え、基準LF受信機9における受信結果に基づいて、車室内LF送信機2eの信号送信出力レベルを調整することとした。これにより、車室内LF送信機2eから送信されるリクエスト信号の到達範囲である検知エリアが各車両ごとにばらついたり、車両10が置かれた電波環境に応じて変化しても、常に望ましい検知エリアが得られるように車室内LF送信機2eの信号送信出力を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側ユニットと携帯機との双方向通信により、車載機器の動作を制御する車載機器遠隔操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載機器遠隔操作システムとして、携帯型電子キー(携帯機)と車両側ユニットとの双方向通信によるIDコードの照合結果をもとに、各ドアのロック・アンロック等の状態を切換制御したり、電子キーの保持者が車室内にいる場合に、ステアリングロックの解除やエンジンの始動を許可したりする電子キーシステムが知られている。
【0003】
この電子キーシステムの車両側ユニットは、電子キーに対してリクエスト信号を送信する車室外送信機及び車室内送信機、電子キーからのレスポンス信号を受信する受信機、及び電子キーとの送受信結果に基づいて、ドア等の車載機器を制御するECUから構成される。車室外送信機及び車室内送信機は、所定の送信出力でリクエスト信号を送信する。これにより、車室外送信機及び車室内送信機の信号到達範囲に電子キーの検知エリアが形成される。このようにして、電子キーの保持者の車両への接近、車両への乗車や車両からの降車を監視している。
【0004】
例えば、電子キーの保持者が車両への乗車のために車両に接近し、検知エリアに侵入すると、リクエスト信号に応答して電子キーがIDコードを含むレスポンス信号を車両側ユニットに送信する。車両側ユニットは、電子キーから取得したIDコードが登録IDコードに一致する等、所定の関係を満足すると判定される場合に、車載機器としてのドアロック制御装置に対して、各ドアをアンロックスタンバイ状態にするように制御信号を与える。この状態となった時に、電子キーの保持者がドアハンドルに触れると、ドアロック制御装置は、それをタッチセンサ等で検出し、ドアをアンロックする。
【0005】
そして、電子キーの保持者が車両に乗車することによって、電子キーの検知エリアが車外から車室内に移動すると、IDコードの照合結果に基づいて、車両側ユニットは、車載機器の制御として、ステアリングロックの解除やエンジンの始動許可を行なう。
【0006】
また、電子キーの保持者が、車両のエンジンを停止した後に降車すると、電子キーの検知エリアは、車室内から車室外へ移る。この場合、車両側ユニットは、ドアロック制御装置に対して、例えばドアハンドルの近傍に設けられたドアロックスイッチが操作された場合にドアロックするよう指示する。ただし、ドアロックスイッチが操作されても、電子キーの検知エリアが車室内である場合には、キーの閉じ込みを防止するために、車両側ユニットは、ドアロック制御装置に対してドアロックの実行を禁止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の電子キーシステムにおいては、電子キーの検知エリアが車外であるか、車室内であるかに応じて、各種の制御を実行する。従って、車室外送信機及び車室内送信機それぞれの検知エリアを正しく設定する必要がある。
【0008】
特に、車室内検知エリアが狭く、車室内全体をカバーできていないと、実際は電子キーが車室内にあるにもかかわらず、車室内において電子キーを検知できない可能性が生じる。この場合、車両のステアリングロックを解除できなかったり、エンジンを始動できなくなってしまう。逆に車室内検知エリアが広すぎて、車室外までカバーしてしまうと、電子キーの保持者が車外に出てドアをロックしようとしても、ドアがロックできない事態が発生する。
【0009】
このため、従来の電子キーシステムにおいては、車両の開発段階において、各車両モデルごとに、電流制限抵抗の抵抗値を変えることによって送信機のアンテナに流れる電流を調整していた。これにより、望ましい検知エリアを有するように、車室内送信機の信号送信出力が調整できる。
【0010】
しかしながら、車両モデルごとの調整を行なったとしても、各車両ごとに検知エリアのばらつきが発生することがある。従来の手法では、このような各車両ごとのばらつきに対応することはできない。
【0011】
また、車両が置かれた電波環境の良否によって、検知エリアの大きさは変化するが、従来の手法では、このような電波環境に依存する検知エリアの大きさの変化にも対応することできない。
【0012】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、車室内送信機による携帯機の検知エリアを適切に設定することが可能な車載機器遠隔操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車載機器遠隔操作システムは、
リクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を送信する携帯機と、
車両に搭載される車両側ユニットとして、当該車両の車室内にリクエスト信号を送信する送信機と、携帯機のレスポンス信号を受信する受信機と、レスポンス信号を受信した場合に、車載機器の動作制御を実行する制御手段とを備えた車載機器遠隔操作システムであって、
車両に設置され、送信機から送信される信号を受信する基準受信機と、
基準受信機における受信結果に基づいて、送信機の信号送信出力を調整する出力調整手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
上述したように、請求項1の車載機器遠隔操作システムは、車室内エリアに、送信機の送信信号を受信する基準受信機を備える。そして、出力調整手段が、基準受信機における受信結果に基づいて、送信機の信号送信出力を調整する。これにより、送信機から送信されるリクエスト信号の到達範囲である検知エリアが各車両ごとにばらついたり、車両が置かれた電波環境に応じて変化しても、常に望ましい検知エリアが得られるように送信機の信号送信出力を調整することができる。
【0015】
請求項2に記載したように、基準受信機は、車両内において、送信機による望ましい検知エリアの外縁近傍に対応する位置に設置されることが好ましい。これにより、基準受信機の信号受信状態に基づいて、精度良く、送信機による検知エリアを望ましい検知エリアに合わせ込むことができる。
【0016】
具体的には、請求項3に記載したように、出力調整手段は、送信機の信号送信出力を段階的に変化させ、基準受信機が受信不可状態から受信可能状態、又は受信可能状態から受信不可状態に変化したときの信号送信出力に基づいて、送信機の信号送信出力を決定することが好ましい。つまり、基準受信機を望ましい検知エリアの外縁近傍に位置させることにより、受信可能状態と受信不可能状態とが切り換わる信号送信出力を基準として、容易に、望ましい検知エリアに対応する信号送信出力を決定できるのである。
【0017】
請求項4に記載の車載機器遠隔操作システムは、
リクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を送信する携帯機と、
車両に搭載される車両側ユニットとして、当該車両の車室内にリクエスト信号を送信する送信機と、携帯機のレスポンス信号を受信する受信機と、レスポンス信号を受信した場合に、車載機器の動作制御を実行する制御手段とを備えた車載機器遠隔操作システムであって、
車両に設置され、送信機から送信される信号を受信するとともに、信号受信時には、受信機が受信可能な所定の返送信号を送信する基準送受信機と、
基準送受信機からの返送信号に基づいて、送信機の信号送信出力を調整する出力調整手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
このように、請求項4の車載機器遠隔操作システムは、送信機から送信される信号を受信するとともに、信号受信時には、車両側ユニットの受信機が受信可能な所定の返送信号を送信する基準送受信機を備えている。このため、出力調整手段は、基準送受信機における受信結果を、返送信号により取得できる。このため、基準送受信機と出力調整手段とを信号線を介して接続することが不要となり、基準送受信機の設置が容易となる。
【0019】
なお、請求項5及び請求項6に記載した車載機器遠隔操作システムの作用・効果は、上述した請求項2及び請求項3とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明による車載機器遠隔操作システムの第1実施形態を図に基づいて説明する。なお、以下の実施形態においては、車載機器遠隔操作システムを電子キーシステムとして構成した例について説明するが、他の車載機器の遠隔操作に適用することも可能である。
【0021】
図1は、本実施形態による電子キーシステムの全体の構成を示す構成図である。本実施形態における電子キーシステムは、携帯機(電子キー)1と車両側ユニットとの双方向通信によるIDコードの照合結果を基に、車両側ユニットの1つである電子キーECU4が各ドアのロック・アンロック状態を制御する。さらに、電子キーECU4は、車両10のセキュリティ性を向上するために、ステアリングロック状態の制御、さらに車両10のエンジン始動の許可・禁止状態の制御も行なう。
【0022】
車両10には、各ドア11〜14に車室外LF送信機2a〜2dが設けられ、車室内に車室内LF送信機2eが設けられている。これらの車室外送信機2a〜2d及び車室内送信機2eは、電子キーECU4からの指示信号に基づいてリクエスト信号(質問信号)を送信する。なお、電子キーECU4は、車両10のエンジンが停止され、かつ各ドア11〜14がロックされた状態で駐車されている場合に、車室外送信機2a〜2dに対してリクエスト信号の送信を指示する。また、電子キーECU4は、運転席のドア11の開閉時、エンジンの始動時、後述するドアロックスイッチによるドアのロック時等に車室内送信機2eに対してリクエスト信号の送信を指示する。
【0023】
車室外LF送信機2a〜2d及び車室内LF送信機2eは、リクエスト信号を示すリクエスト信号コード及び送信機毎にでそれぞれ異なるコードを発生するコード発生回路、所定の低周波数(Low Frequency)のクロック信号を発生するクロック発生回路、及びそのクロック信号を用いてコードを変調し、変調コード信号を生成する変調回路等から構成される。つまり、リクエスト信号は、所定の低周波数(Low Frequency)のクロック信号によって変調された変調コード信号からなる。
【0024】
車室外送信機2a〜2dから送信されるリクエスト信号の到達距離は、例えば0.7〜1.0m程度となるように、その信号送信出力が予め調整されている。従って、車両10の駐車時には、リクエスト信号の到達距離に応じた検知エリアが車両10の各ドア11〜14の周囲に形成され、携帯機1の保持者が車両10に接近したことを検知できる。
【0025】
一方、車室内LF送信機2eは、その信号送信出力を変更可能な、出力変更回路部2e1を有する。例えば、この出力変更回路部2e1は電圧可変回路からなり、車室内LF送信機2eからリクエスト信号を送信する際に、アンテナに電流を流すために印加される電圧を変更する。これにより、車室内送信機2eから送信されるリクエスト信号の到達距離が変化し、車室内検知エリアの大きさを調整することができる。なお、本実施形態においては、車室内LF送信機2eの信号送信出力は、出力変更回路部2eによって複数段階のレベルに調整される。
【0026】
車両10には、車室内LF送信機2eから送信されるリクエスト信号、あるいはエリア調整用信号を受信する基準LF受信機9が設けられている。この基準LF受信機9は、公知のように、増幅回路、復調回路等の信号受信回路を備え、接続線を介して信号受信回路における信号受信結果を電子キーECU4に出力する。なお、車室内LF受信機9は、車室内LF送信機2eによる望ましい検知エリアの外縁近傍に対応する位置に設置される。これにより、車室内LF受信機9の信号受信状態に基づいて、車室内LF送信機2eの信号送信出力を調整することにより、車室内LF送信機2eの検知エリアを望ましい検知エリアに合わせ込むことができる。
【0027】
携帯機1は、車室外送信機2a〜2dあるいは車室内送信機2eからのリクエスト信号を受信するLF受信部1a、このリクエスト信号の受信に応答して、IDコード等を含むレスポンス信号(応答信号)を送信するRF送信部1b、さらには、図1には図示していないが、これらLF受信部1a及びRF送信部1bの動作を制御する制御部とを備えている。なお、携帯機1は、所定の高周波数(Radio frequency)帯のクロック信号によって変調されたコード信号をレスポンス信号として送信する。
【0028】
車両10には、携帯機1からのレスポンス信号を受信するRF受信機3が1台のみ設けられている。受信機3が受信したレスポンス信号は、受信信号として電子キーECU4に出力される。
【0029】
ここで、車室外送信機2a〜2dあるいは車室内送信機2eと携帯機1間で行なわれる通信について説明する。なお、以下の説明では、携帯機1が車室外送信機2aと通信する場合を例として説明する。
【0030】
通信が開始される以前は、携帯機1のLF受信部1a及びRF送信部1bは、スリープ状態にある。そのため、車室外送信機2aは、携帯機1のLF受信部1a及びRF送信部1bをウエイクアップさせるための第1のリクエスト信号を送信する。携帯機1は、この第1のリクエスト信号によってウエイクアップし、第1のレスポンス信号としてアクノリッジ信号(以下、ACK信号)を返送する。RF受信機3がこのACK信号を受信すると、車室外送信機2aは、第2のリクエスト信号として、車両ごとに異なる車両IDコードを含む信号を送信する。携帯機1は、送信された車両IDコードと同様の車両IDコードを有している場合に、第2のレスポンス信号として、再度ACK信号を返送する。
【0031】
RF受信機3が車両IDコードに対するACK信号を受信すると、車室外送信機2aは、第3のリクエスト信号として、各送信機ごとに異なるコードを含む信号を送信する。携帯機1は、この信号に含まれるコードを利用してレスポンスコードを作成し、自身のIDコードとともに第3のレスポンス信号として送信する。なお、車室外送信機2aが第1及び第2のリクエスト信号を送信したときに、携帯機1からACK信号が返送されないと、検知エリア内に携帯機1は存在しないとみなして、通信を終了する。
【0032】
上述したように、レスポンスコードは、送信機ごとに異なるコードを利用して作成されるので、電子キーECU4は、第3のレスポンス信号におけるレスポンスコードから、携帯機1がいずれの送信機からのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を送信したかを把握できる。また、電子キーECU4は、第3のレスポンス信号に含まれるIDコードが、予め登録されているIDコードと一致するか等、所定の関係を満足するか否かを判別する(IDコードの照合)。そして、電子キーECU4において、受信したIDコードと登録IDコードとが所定の関係を満足したと判別されると(IDコードの照合OK)、電子キーECU4は、ドア、ステアリング、エンジン等の車載機器の動作を制御する。
【0033】
車両10の各ドア11〜14には、その各ドア11〜14をロック、アンロックしたり、ロックされているが、携帯機1の保持者がドアアウトサイドハンドル(以下、ドアハンドル)に触れることによってアンロック可能なアンロックスタンバイ状態に設定したりするドアECU5a〜5dが設けられている。このドアECU5a〜5dは、電子キーECU4からの指示信号に応じて動作する。
【0034】
すなわち、電子キーECU4において、受信したIDコードと登録IDコードとが所定の関係を満足したと判別されると(IDコードの照合OK)、電子キーECU4は、まず、レスポンスコードから携帯機1の保持者の位置を判別する。そして、携帯機1の保持者の位置が車外である場合には、その位置に該当するドアのロックをアンロックスタンバイ状態にするように、対応するドアECU5a〜5dに指示信号を与える。この指示信号に基づいて、指示信号を受けた何れか1つのドアECU5a〜5dは、対応するドア11〜14をアンロックスタンバイ状態に設定する。
【0035】
例えば、ドアECU5aのドア11に対応する位置に携帯機1の保持者が居る場合、ドアECU5aがドア11をアンロックスタンバイ状態にする。なお、このとき、ドアECU5a以外のドアECU5b〜5dに対応するドア12〜14は、ロック状態に維持されたままである。
【0036】
車両10の各ドア11〜14のドアハンドル6a〜6dには、タッチセンサ6a1〜6d1が設けられており、携帯機1の保持者が、ドアハンドル6a〜6dに触れたことを検出することが可能である。また、ドアハンドル6a〜6dには、プッシュスイッチとして構成されたドアロックスイッチ6a2〜6d2も設けられており、IDコードの照合が完了している場合、このドアロックスイッチ6a2〜6d2を操作すると、各ドア11〜14をロックすることができる。また、ドアハンドル6a〜6dは、上述した車室外送信機2a〜2dのアンテナとしての役割も果たしている。
【0037】
電子キーECU4からの指示信号に基づいて、ドアECU5a〜5dの何れか1つが、対応するドア11〜14をアンロックスタンバイ状態に設定した時に、タッチセンサ6a1〜6d1によって携帯機1の保持者がドアハンドル6a〜6dに触れたことが検出されると、その情報を電子キーECU4に送信する。そして、電子キーECU4は、全てのドア11〜14をアンロックする。すなわち、携帯機1の保持者がドアを開けるための開扉動作を行なうと、自動的に全てのドア11〜14がアンロックされる。
【0038】
具体的には、ドア11がアンロックスタンバイ状態となっているときに、ドア11に設けられたタッチセンサ6a1に触れたことが検出されると、全てのドア11〜14がアンロックされる。なお、ドア11がアンロックスタンバイ状態であるときは、他のドア12〜14はロック状態のままであるため、タッチセンサ6b1〜6d1が携帯機1を保持していない他の乗員等によって触られたとしても、ドア11〜14はアンロックされない。
【0039】
ただし、携帯機1の保持者による開扉動作の検出は、タッチセンサ6a1〜6d1によらず、ドアハンドル6a〜6dが手前に引かれたことを機械的に検出する検出機構等を用いても良い。また、ドアハンドルに、アンロックボタンを設置し、このアンロックボタンの操作により、開扉動作の開始を検出しても良い。また、IDコードの照合がOKとなったとき、すべてのドアにおいて、アンロックスタンバイ状態に設定しても良い。
【0040】
本実施形態による電子キーシステムは、車両10のセキュリティ性を向上するため、ステアリングロックECU7及びエンジンECU8を備えている。これらのステアリングロックECU7及びエンジンECU8も、電子キーECU4からの指示信号に基づいて、ステアリングロックをオン・オフしたり、車両のエンジンの始動の許可・禁止を切換制御する。
【0041】
すなわち、ドアを開閉して携帯機1の保持者が車両10に乗車すると、電子キーECU4は、車室内に設けられた車室内送信機2e及び受信機3を用いて携帯機1との間で双方向通信を行ない、再度、IDコードの照合を行なう。一方、予め車両に設けられているエンジンスイッチが操作されると、ステアリングロックECU7がステアリングロックを解除しても良いかを電子キーECU4に確認する。電子キーECU4は、IDコードの照合の結果がOKである場合には、ステアリングロックECU7に対してステアリングロックの解除を許可する応答を行ない、ステアリングロックECU7は、その応答に基づいてステアリングロックをアンロックする。このとき、電子キーECU4は、同時に、エンジンECU8に対してエンジンの始動禁止を解除するように指示信号を出力する。このようにして、携帯機1の保持者は、携帯機1を手に取ることなく、ドアのアンロックによる乗車からエンジンの始動までを行なうことができる。
【0042】
一方、車両10が停車し、エンジンスイッチ9がオフされた後に携帯機1の保持者が降車し、ドアハンドル6a〜6dに設けられたドアロックスイッチ6a2〜6d2の何れか1つが操作されたことを検知すると、電子キーECU4は、各ドアECU5a〜5dに対して車両の各ドア11〜14をロックするように指示信号を出力する。このドアロックと同時に、電子キーECU4は、エンジンECU8に対してエンジンを始動禁止状態に設定するよう指示する。
【0043】
なお、携帯機1の保持者による各ドア11〜14のロックは、上述したドアロックスイッチ6a2〜6d2によらず、例えばドアロック用のタッチセンサを設ける等、他の手段によって行なうようにしても良い。
【0044】
このように、本実施形態における電子キーシステムは、携帯機1を保持しているのみで、ドアのロック・アンロック及び車両のセキュリティの設定・解除を自動的に行なうことができる。
【0045】
次に、上述した本実施形態の電子キーシステムにおいて、車室内LF送信機2eの信号送信出力の調整方法について、図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、図2のフローチャートによる処理は、携帯機1の保持者が車両に乗車して、車室内LF送信機2eから携帯機1へリクエスト信号が送信される以前に行なわれることが好ましい。このように、事前に信号送信出力の調整を完了しておけば、車室内の検知エリアが適切に形成されるので、携帯機1が車室内にある限り、携帯機1と車両側ユニットとの間で通信を行なうことができる。また、車両10が停止して、エンジンが切られたときに、再度、図2のフローチャートによる処理が実行されることが好ましい。一旦、車室内LF送信機2eの信号送信出力のレベル調整を行なっても、車両が移動した場合、電波環境が変化することがある。従って、その電波環境の変化に対応するように、再度、車室内LF送信機2eの信号送信出力を調整することが好ましいためである。
【0046】
まず、ステップS10では、車室内LF送信機2eの信号送信レベルを最小にして信号を送信させる。このとき、送信される信号は、携帯機1に対して出力されるリクエスト信号であっても良いし、車室内LF送信機2eの信号送信出力調整のために専用に設定されたエリア調整用信号であっても良い。
【0047】
ステップS20では、基準LF受信機9による信号受信状態を判定する。すなわち、基準LF受信機9において、車室内LF送信機2eから送信された信号が受信できたか否かを判定する。このとき、受信したと判定されると、ステップS30に進んで、車室内LF送信機2eの信号送信出力レベルを、そのときの出力レベルに固定する。一方、ステップS20にて受信できないと判定された場合には、ステップS40に進んで、車室内LF送信機2eの信号送信出力レベルを1段階アップさせ、その1段階アップされた出力レベルにて、車室内LF送信機2eから信号を送信させる。そして、再びステップS20の処理が行なわれ、出力レベルを1段階アップしたことによって信号の受信が可能になったか否かを判定する。
【0048】
このようにして、車室内LF送信機2eの信号送信出力を調整することにより、車両ごとのばらつきや、車両が置かれた電波環境に係らず、常に適切な車室内検知エリアを形成することができる。
【0049】
図4は、車室内検知エリアの大きさが適正である状態を示し、図5は、車室内検知エリアの大きさが過小である状態を示し、図6は、車室内検知エリアの状態が過大である状態を示している。
【0050】
図5に示すように、車室内検知エリアの大きさが過小であると、携帯機1が車室内に持ち込まれたにも係らず、携帯機1は車室内LF送信機2eからのリクエスト信号を受信することができない場合がある。この場合、予め車両に設けられているエンジンスイッチが操作されても、車両のステアリングロックが解除されなかったり、エンジンを始動できなくなってしまう。逆に、図6に示すように、車室内検知エリアの大きさが過大で、車室外までカバーしてしまうと、携帯機1の保持者が車外に出てドアをロックしようとしても、ドアがロックできない事態が発生する。従って、車室内LF送信機2eの検知エリアは、常に、図4に示す適正状態に調整されていることが必要である。
【0051】
本実施形態では、図4に示すように、車室内検知エリアの大きさが適正である場合の外縁位置に対応するように基準LF受信機9を設けている。従って、この基準LF受信機9が受信可能となるレベルまで車室内LF送信機2eの出力レベルを序々に増加させることで、簡単に車室内検知エリアの大きさを適正状態に調整できる。
【0052】
なお、本実施形態では、アンテナ及び信号受信回路を備えた基準LF受信機9を検知エリアの外縁位置に配置しているので、その外縁位置における信号の受信レベルを正しく検出することができる。例えば、単に外縁位置にアンテナのみを設置し、信号受信回路を電子キーECU4等に内蔵することも考えられる、しかしながら、その場合、アンテナと信号受信回路との接続線の長さが長くなり、アンテナによる受信信号はノイズの影響を受け易くなる。それに対して、検知エリアの外縁位置にアンテナ及び信号受信回路を備えた受信機を設置すれば、受信機において、増幅、復調等の処理が行なわれるので、ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0053】
ただし、基準LF受信機9は、車室内検知エリアの外縁位置に正確に設置することが好ましいが、その近傍に設置されても良い。この場合、基準LF受信機9が、適正な検知エリア外に位置するのであれば、車室内LF送信機2eの出力レベルを、基準LF受信機9が受信できない範囲で最も高い出力レベルに調整すれば良い。逆に、基準LF受信機9が検知エリアの外縁位置よりも内部に位置するのであれば、基準LF受信機9が受信可能な範囲で最も低い出力レベルよりも僅かに高い出力レベルに車室内LF送信機2eの出力レベルを調整すれば良い。
【0054】
さらに、車室内LF送信機2eの信号送信出力の調整方法は、上述した方法に限られず、例えば、図3のフローチャートに示す方法を採用することもできる。図3に示す調整方法では、図2に示す方法とは逆に、ステップS50において、車室内LF送信機2eの信号送信レベルを最大にして信号を送信させる。
【0055】
ステップS60では、基準LF受信機9による信号受信状態を判定する。すなわち、基準LF受信機9において、車室内LF送信機2eから送信された信号が受信できたか否かを判定する。このとき、受信したと判定されると、ステップS80に進んで、車室内LF送信機2eの信号送信出力レベルを1段階ダウンさせ、その1段階ダウンされた出力レベルにて、車室内LF送信機2eから信号を送信させる。このようにして、車室内LF送信機2eの信号送信出力が低下され、ステップS60にて、基準LF受信機9が受信できないと判定された場合には、ステップS70に進んで、車室内LF送信機2eの信号送信出力レベルを1段階アップさせて固定する。このようにしても、車室内検知エリアの大きさが適正となるように、車室内LF送信機2eの信号送信出力を調整することができる。
【0056】
(他の実施形態)
上述した第1実施形態では、望ましい車室内検知エリアの外縁に対応する位置に基準LF送信機9を設けたが、図7に示すように、同様の位置に基準送受信機20を設けても良い。なお、その他の構成については、上述した第1実施形態と同様である。
【0057】
この基準送受信機20は、LF受信部20aとRF送信部20bとを備え、車室内LF送信機2eからの信号を受信すると、その受信状態をRF送信部20bから送信する。このRF送信部20bからの送信信号は車両側ユニットのRF受信機3によって受信される。
【0058】
このように、基準LF受信機9に代えて、基準送受信機20を用いると、その基準送受信機20への配線の取りまわしの必要がなくなるので、車両10への設置を簡単に行なうことができるとともに、設置位置の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態による電子キーシステムの全体の構成を示す構成図である。
【図2】車室内LF送信機2eの信号送信出力の調整方法を示すフローチャートである。
【図3】車室内LF送信機2eの信号送信出力の調整方法の他の例を示すフローチャートである。
【図4】車室内LF送信機2eによる車室内検知エリアの大きさが適正である状態を示す説明図である。
【図5】車室内検知エリアの大きさが過小である状態を示す説明図である。
【図6】車室内検知エリアの大きさが過大である状態を示す説明図である。
【図7】変形例による電子キーシステムの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1…携帯機
2a〜2d…車室外送信機
2e…車室内送信機
3…受信機
4…電子キーECU
5a〜5d…ドアECU
6a〜6d…ドアハンドル
6a1〜6d1…タッチセンサ
6a2〜6d2…ドアロックスイッチ
7…ステアリングロックECU
8…エンジンECU
9…基準LF受信機
10…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を送信する携帯機と、
車両に搭載される車両側ユニットとして、当該車両の車室内に前記リクエスト信号を送信する送信機と、前記携帯機のレスポンス信号を受信する受信機と、前記レスポンス信号を受信した場合に、車載機器の動作制御を実行する制御手段とを備えた車載機器遠隔操作システムであって、
前記車両に設置され、前記送信機から送信される信号を受信する基準受信機と、
前記基準受信機における受信結果に基づいて、前記送信機の信号送信出力を調整する出力調整手段とを備えることを特徴とする車載機器遠隔操作システム。
【請求項2】
前記基準受信機は、前記車両内において、前記送信機による望ましい検知エリアの外縁近傍に対応する位置に設置されることを特徴とする請求項1に記載の車載機器遠隔操作システム。
【請求項3】
前記出力調整手段は、前記送信機の信号送信出力を段階的に変化させ、前記基準受信機が受信不可状態から受信可能状態、又は受信可能状態から受信不可状態に変化したときの前記信号送信出力に基づいて、前記送信機の信号送信出力を決定することを特徴とする請求項2に記載の車載機器遠隔操作システム。
【請求項4】
リクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を送信する携帯機と、
車両に搭載される車両側ユニットとして、当該車両の車室内に前記リクエスト信号を送信する送信機と、前記携帯機のレスポンス信号を受信する受信機と、前記レスポンス信号を受信した場合に、車載機器の動作制御を実行する制御手段とを備えた車載機器遠隔操作システムであって、
前記車両に設置され、前記送信機から送信される信号を受信するとともに、信号受信時には前記受信機が受信可能な所定の返送信号を送信する基準送受信機と、
前記基準送受信機からの返送信号に基づいて、前記送信機の信号送信出力を調整する出力調整手段とを備えることを特徴とする車載機器遠隔操作システム。
【請求項5】
前記基準送受信機は、望ましい車室内エリアの外縁近傍に対応する位置に設置されることを特徴とする請求項4に記載の車載機器遠隔操作システム。
【請求項6】
前記出力調整手段は、前記送信機の信号送信出力を段階的に変化させたときの前記基準送受信機からの返送信号の有無に応じて、前記基準送受信機が受信不可状態から受信可能状態、又は受信可能状態から受信不可状態に変化したときの前記信号送信出力を認識し、この認識した信号送信出力に基づいて、前記送信機の信号送信出力を決定することを特徴とする請求項5に記載の車載機器遠隔操作システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−45908(P2006−45908A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228405(P2004−228405)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(390001812)アンデン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】