説明

車載油圧機器用補助動力装置および油圧機器搭載車

【課題】油圧機器搭載車による環境負荷を低減でき、接続が容易で、かつ、設置スペースの問題が生じない車載油圧機器用補助動力装置を提供する。
【解決手段】ミキサー車、クレーン車等の油圧機器搭載車1に搭載され、エンジン11の駆動力によって駆動される車載油圧ポンプ24により作動油を圧送される、油圧アクチュエータ等の油圧機器25と油圧タンク26に対して、一方の端部を各々脱着可能に構成された配管51、52と、それらの配管51、52の他方の端部に吐出口と吸入口を各々接続された油圧ポンプ41と、当該油圧ポンプ41を駆動するモータ42と、前記モータ42に電力を供給するバッテリ71と、前記モータ71を制御するための制御部6と、前記油圧ポンプ41、前記モータ42、前記バッテリ71および前記制御部6を固定して一体化させる基材81とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサー車やクレーン車等の車両に搭載される油圧機器を作動させるための車載油圧機器用補助動力装置、および、この車載油圧機器用補助動力装置との接続が可能な油圧機器搭載車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特殊な作業を行うための作業用車両として塵芥収集車、高所作業車、ミキサー車、クレーン車などの様々なタイプのものが知られている。こうした作業用車両は大出力を要するものが多く、目的に応じた形式の油圧機器が搭載された油圧機器搭載車として構成されるものが多い。
【0003】
油圧機器搭載車は、一般に油圧シリンダや油圧モータ等の油圧機器と、これらに作動油を送り込むための油圧ポンプと、作動油を内部に収容し油圧ポンプに対して作動油を供給するとともに油圧機器からの戻り油を受け入れる油圧タンクとを備えている。そして、エンジンによる駆動力を補助出力軸を介して分配して、前記油圧ポンプを駆動させるようになっている。
【0004】
すなわち、一般の油圧機器搭載車においては搭載した油圧機器を駆動させるために、エンジンを駆動させることが必要であり、油圧機器においてより大きな出力を要する際にはエンジンの回転数を上げて出力を増大させることが必要となっている。
【0005】
しかしながら、近年、環境問題に対する意識の高まりから、二酸化炭素の排出量削減や騒音対策等が重要視されるようになってきている。
【0006】
そこで、エンジンを駆動することなく油圧機器を動作させることができるように、電気エネルギを利用して油圧機器を動作させる方式が提案されている。
【0007】
こうした方式は大きくは以下の2つの方式に分類される。
【0008】
第1の方式は、車載油圧機器に作動油を供給する油圧ポンプを駆動するための駆動源として、エンジンに加えてモータとバッテリとを備えるものであり、例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【0009】
このものは、エンジンから動力を分配して取り出す動力取出装置(補助出力軸)とクラッチを介して連結されるドライブシャフトによって油圧ポンプを駆動できるようになっているとともに、このドライブシャフトに対してモータがベルト等の伝達機構を介して接続するように構成している。このように構成することで、1つの油圧ポンプを必要に応じてエンジンとモータのいずれかを選択して、または双方によって駆動させ、車載油圧機器を動作させることができるようになる。そのため、モータを駆動源とした際には騒音や排気ガスなどの上記環境問題を解消することができるとともに、バッテリ切れの際にエンジンを駆動源とすることで動作時間を延長することができるようになっている。
【0010】
第2の方式は、車載油圧機器を駆動するための車載油圧ポンプを2つ備えており、第1の車載油圧ポンプはエンジンによって駆動させ、第2の車載油圧ポンプはバッテリを備えたモータによって駆動させ、いずれの車載油圧ポンプからでも車載油圧機器に作動油を供給できるように構成するものであり、例えば下記特許文献2に記載するものが知られている。
【0011】
このものは、車載油圧機器と、内部に作動油を収容する油圧タンクを各一つずつ備えており、第1の車載油圧ポンプおよび第2の車載油圧ポンプのいずれもが、車載油圧機器と油圧タンクとの間を接続する管路を形成するように設けられている。このように構成することで、上記第1の方式と同様に、エンジンおよびモータのいずれか、または双方によって車載油圧機器を動作させることができるようになっている。そのため、モータを駆動源とした際には上記環境問題を解消することができるとともに、バッテリ切れの際にエンジンを駆動源として動作時間を延長することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−329871号公報
【特許文献2】特公平6−35263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、エンジンのみを油圧機器の駆動源とする既存の油圧機器搭載車に対して、モータを基にした新たな動力装置を追加して、上記第1の方式または第2の方式の構成を実現することを考えた場合、次のような不都合が生じる。
【0014】
まず、上述の第1の方式の構成に変更しようとした場合には、新たな補助動力装置としてモータおよびバッテリの設置が必要になるとともに、このモータから得られる駆動力を、油圧ポンプを駆動するドライブシャフトに伝達する伝達機構の設置も必要となる。この伝達機構はドライブシャフトに接続することから、ドライブシャフト(補助出力軸)との位置関係が限定されるため、これらの設置スペースを確保することが必要となる。また、機械的な構成部品が増え、これら部品間の接続関係を適切に調整することが必要となることから、設置作業も容易に行うことができない。
【0015】
また、上述の第2の方式の構成に変更しようとした場合には、新たな補助動力装置としてモータ、バッテリおよび第2の車載油圧ポンプが必要となる。この場合には、第1の方式と異なりドライブシャフトへの接続は必要ないため、機器の設置位置に関する自由度は比較的大きく、設置作業を容易に行うことが可能となる。しかしながら、第2の油圧ポンプを搭載することが必要になることから、機器の設置スペースの確保という課題はより大きくなる。
【0016】
さらには、第1の方式および第2の方式とも、新たな補助動力装置を取り付けることで車両重量の増加を招くために、通常走行時には燃費の悪化および二酸化炭素排出量の増加を招き、かえって環境負荷を悪化させることになる。
【0017】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、油圧機器搭載車による環境負荷を減少させるとともに、接続作業が容易であり、かつ、設置スペースの問題が生じない車載油圧機器用補助動力装置を提供することを目的とする。さらには、当該車載油圧機器用補助動力装置を好適に接続して用いることが可能な、環境負荷の少ない油圧機器搭載車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0019】
すなわち、本発明の車載油圧機器用補助動力装置は、油圧機器搭載車に搭載された油圧機器装置に対して一方の端部を各々脱着可能に構成された2本の配管と、それらの配管の他方の端部に接続されるものであって、油圧ポンプと当該油圧ポンプを駆動するモータとを含んだ油圧回路を構成するパワーユニットと、当該パワーユニットを制御するための制御部と、前記パワーユニット、前記バッテリおよび前記制御部を固定して一体化させる基材とを備えることを特徴とする。
【0020】
このように構成すると、油圧機器搭載車に搭載される油圧機器をエンジンを用いることなく動作させることができるため、騒音や排気ガス等の環境負荷を抑制することが可能となる。また、油圧機器を動作させるために必要な機器がユニットとして一体化して構成されるとともに、車両内の油圧機器装置への配管の脱着が可能とされているため、運搬や接続・取外しを容易に行うことができるようになる。そのため、内部に恒久的な設置スペースを準備することができない既存の油圧機器搭載車の場合であっても、電気による補助動力が必要な際にのみ簡単に接続させて上記の効果を得ることが可能となる。逆に、補助動力を必要としない通常の走行時には、この車載油圧機器用補助動力装置を取り外しておき、車両の重量を軽減して環境負荷を軽減することが可能となる。
【0021】
また、配管の接続をより容易にして、接続作業を短時間で行うことができるようにするためには、前記配管の前記一方の端部にワンタッチ継手を設けるように構成することが好適である。
【0022】
また、車載油圧機器に対して車載油圧ポンプと同時に作動油を供給することを防ぎ、予期せぬ機器の損傷を防止するためには、前記油圧機器搭載車に搭載され当該油圧機器搭載車のエンジンの駆動を制御するための車載コンピュータと前記制御部との間を接続可能な信号ケーブルを備えており、前記制御部を、前記パワーユニットを制御して前記油圧ポンプを駆動または駆動の維持を行う際に、前記信号ケーブルを介した前記制御部と前記車載コンピュータとの接続状態を確認するステップと、前記信号ケーブルを介して前記車載コンピュータより得られる前記エンジンの駆動信号が非入力であることを確認するステップとを経た上で、前記パワーユニットに対する駆動指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、前記信号ケーブルを介した前記制御部と前記車載コンピュータとの未接続状態、または前記信号ケーブルを介して前記車載コンピュータより得られる前記エンジンの駆動信号の入力状態を確認することによって、前記パワーユニットに停止指令を出力するように構成することが好適である。
【0023】
また、油圧機器搭載車に対して未接続の状態でバッテリに充電を行い、いつでも使用可能な状態にしておくことができるようにするために、前記制御部が、商用電源より得られる電気エネルギを用いて前記バッテリを充電するための充電コントローラを備えているように構成することが好適である。
【0024】
また、本発明の油圧機器搭載車は、上記の車載油圧機器用補助動力装置が備える前記配管の端部を脱着可能とする接続部を前記油圧機器装置が備えているように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
このように構成することで、上記車載油圧機器用補助動力装置を必要に応じて簡単に接続または取り外すことが可能となるため、車両内に特別な設置スペースを準備しなくても、必要な際にのみ車載油圧機器用補助動力装置を簡易的に取り付けるのみで足り、エンジンを使用することなく車載油圧機器を動作させることができるようになる。
【0026】
さらに、車載油圧機器用補助動力装置を用いて車載油圧機器を動作させている間は、安全上、エンジンの起動ができないようにすることが好ましいため、上記の車載油圧機器用補助動力装置が備える前記制御部と、前記信号ケーブルを介して接続可能に前記車載コンピュータを構成しており、当該車載コンピュータを、前記エンジンの駆動または駆動の維持を行う際に、前記信号ケーブルを介して前記制御部より得られる前記パワーユニットの駆動信号の未入力状態を確認するステップを経た上で、前記エンジンに対する駆動指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、前記信号ケーブルを介して前記制御部より得られる前記パワーユニットの駆動信号の入力状態を確認した際には、前記エンジンに対して停止指令を出力するように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した本発明によれば、油圧機器搭載車に対する接続が容易で、かつ、設置スペースの問題が生じないとともに、環境負荷を低減することが可能な車載油圧機器用補助動力装置、および、当該車載油圧機器用補助動力装置を好適に接続して用いることが可能な油圧機器搭載車を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載油圧機器用補助動力装置および油圧機器搭載車のシステムの構成を示す模式図。
【図2】同車載油圧機器用補助動力装置の斜視図。
【図3】同車載油圧機器用補助動力装置の油圧ポンプを駆動させる際のインターロック処理を示すフローチャート。
【図4】図1の油圧機器搭載車のエンジンを駆動させる際のインターロック処理を示すフローチャート。
【図5】図2における車載油圧機器用補助動力装置の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
この実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4および油圧機器搭載車1は、図1に模式的に示したような構成を採り、油圧機器搭載車1に搭載された車載油圧機器25に対して、補助的にモータ42から動力を与えることができるように構成されている。
【0031】
車載油圧機器25とは作動油によって動作するアクチュエータであり、作業目的に応じて油圧シリンダや油圧モータなどの形態に変更することができる。
【0032】
同図における油圧機器搭載車1は、本発明に関連する部分のみを抽出する形で簡略化して記載しており、一般の車両と同様に、エンジン11と当該エンジン11によって駆動され外部に動力を取り出すための出力軸としての駆動軸12と、当該駆動軸12によって駆動される駆動輪13とを有している。さらにはエンジン11からの動力を分配して取り出す第2補助出力軸14を有するとともに、当該第2補助出力軸14によってベルト15を介して駆動される発電機16と、当該発電機16によって生じた電気を蓄える車両用バッテリ17とを備えている。この車両用バッテリ17は、図示しないスタータや方向指示器やワイパー等の車両を走行させるために必要な機器を動作させるために設けられているものであり、一般的な車両が有するものとほぼ同一である。
【0033】
また、一般的な車両と同様に車載コンピュータ18を有しており、この車載コンピュータ18によってエンジン11の駆動制御が行われるようになっている。
【0034】
さらに、この油圧機器搭載車1には油圧機器装置としての車載油圧機器25と油圧タンク26とを備えており、当該車載油圧機器25をエンジン11の駆動力によって動作させることができるようになっている。具体的には、エンジン11の駆動力によって駆動されるドライブシャフト23と、当該ドライブシャフト23によって駆動される車載油圧ポンプ24と、作動油を収容する油圧タンク26とを備え、車載油圧ポンプ24によって油圧タンク26内の作動油を送り込まれることで車載油圧機器25の動作が行われるように構成されている。
【0035】
そのため、車載油圧ポンプ24の吸入口(図示せず)は油圧タンク26と配管32を介して接続されるとともに、車載油圧ポンプ24の吐出口(図示せず)は車載油圧機器25と配管31を介して接続されている。さらに、車載油圧機器25と油圧タンク26とは配管33を介して接続されており、この配管33を通じて車載油圧機器25からの戻り油が油圧タンク26内に帰還して収容されるようになっている。
【0036】
また、上記ドライブシャフト23への動力の伝達のため、エンジン11の駆動軸12の動力を分配して取り出す第1補助出力軸21が設けられているとともに、当該第1補助出力軸21と上記ドライブシャフト23の間にはクラッチ22が設けられており、クラッチ22によって上記第1補助出力軸21を介して駆動軸12とドライブシャフト23との接続および接続の解除を適宜選択して行うことができるようになっている。
【0037】
以上に説明したような油圧機器搭載車1の構成は従来から一般的に用いられている構成とほぼ同一であり、こうした構成に加えて本実勢形態における油圧機器搭載車1は以下において詳述する車載油圧機器用補助動力装置4との接続を行うことができるように、接続部が設けられている点に特徴がある。
【0038】
具体的には、油圧機器装置としての車載油圧機器25および油圧タンク26には車載油圧機器用補助動力装置4が備える配管52、53と接続するための接続部36、37が各々設けられている。また、車載コンピュータ18は後述するインターロック処理の機能を備えるとともに、車載油圧機器用補助動力装置4が備えるシステムコントローラ61と接続するための接続部19が設けられている。また、車載油圧機器25を車載油圧機器用補助動力装置4によって動作させる間、車載油圧ポンプ24に作動油が流入することがないようにするため、配管31および配管32の途中にはバルブ34、35を設けている。これらのバルブ34、35を閉じることによって車載油圧ポンプ24の吸入口および吐出口に至る管路を閉止することができ、予期せぬ作動油の流入や圧力変動から車載油圧ポンプ24の保護を図ることができるようになっている。
【0039】
このように構成された油圧機器搭載車1に対して接続される車載油圧機器用補助動力装置4は以下のように構成されている。
【0040】
まず、本実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4は、パワーユニットとして車載油圧機器25を駆動させるための第2油圧ポンプ41と、この第2油圧ポンプ41を駆動するためのモータ42とを備えている。図中での記載はないが、モータ42の出力特性に応じて、適宜第2油圧ポンプ41との間に減速機を設けることも好ましい。また、本実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4は、モータ42の回転数を制御することによって第2油圧ポンプ41の駆動を制御して、車載油圧機器25に所望の動作を行わせる制御部6と、モータ42の駆動用電源となるバッテリ71を備えている。
【0041】
第2油圧ポンプ41の吐出口(図示せず)は、配管51を通じて上述した車載油圧機器25の接続部36と接続されるようになっている。配管51はその先端に設けられた接続部55によって、車載油圧機器25側の接続部36との接続がなされるようになっており、双方の接続部36、55は一組の凸型と凹型のワンタッチ継手として構成されているため、簡単に接続ができるようになっている。また、接続部36、55として逆止弁機能付のワンタッチ継手を用いることによって、未接続時の際の油漏れを防止することができるようになっている。
【0042】
同様に、第2油圧ポンプ41の吸入口(図示せず)は、配管52を通じて上述した油圧タンク26の接続部37と接続されるようになっている。配管52はその先端に設けられた接続部56によって、油圧タンク26側の接続部37との接続がなされるようになっており、双方の接続部37、56は一組の凸型と凹型のワンタッチ継手として構成されているため、簡単に接続ができるようになっている。また、接続部37、56として逆止弁機能付のワンタッチ継手を用いることによって、未接続時の際の油漏れを防止することができるようになっている。
【0043】
また、配管51、52の管路の途中には、各々バルブ53、54が設けられており、これらを閉止することによって、第2油圧ポンプ41における作動油の流入・流出を停止することができるようになっている。
【0044】
以上のように配管51、52を介してパワーユニットの構成要素としての第2油圧ポンプ41と、油圧機器装置の構成要素としての車載油圧機器25および油圧タンク26とを接続することによって油圧回路を構成して、油圧タンク26に収容されている作動油を第2油圧ポンプ41によって車載油圧機器25に送り込み、所望の動作を行わせることができるようになっている。
【0045】
パワーユニットの構成要素としてのモータ42は、電動のインダクションモータとして構成されており、その回転数は制御部6によって制御されるように構成されている。
【0046】
制御部6は、大きくは、モータ42に対してこれを回転させるための周波数制御電圧を与えるためのインバータ62と、バッテリ71の充電を管理するための充電コントローラ63と、これらのインバータ62と充電コントローラ63を管理して制御指令を与えるシステムコントローラ61とから構成されている。また、システムコントローラ61には、運転情報を表示するための表示部64と、操作者からの命令を入力するための入力部65とが接続されており、システムコントローラ61は操作者から入力部65を通じて与えられた命令に応じて、各部を適切に動作させるべくインバータ62や充電コントローラ63に対する命令を与えるように構成されている。
【0047】
また、システムコントローラ61は、信号ケーブル66を介して車載コンピュータ18と接続できるようになっており、システムコントローラ61と車載コンピュータ18とは互いに運転情報を得て、安全に第2油圧ポンプ41またはエンジン11の動作を行うことができるように配慮してある。車載油圧機器用補助動力装置4から油圧機器搭載車1に対して与えられる運転情報としては、例えばモータ42の回転信号がある。また、油圧機器搭載車1から車載油圧機器用補助動力装置4に与えられる運転情報としては、例えばエンジン11の駆動信号(回転信号)がある。また、システムコントローラ61および車載コンピュータ18は、各々信号ケーブル66を介して互いに接続された状態を認識することも可能に構成してある。
【0048】
信号ケーブル66は先端にコネクタ67を有しており、車載コンピュータ18側に設けた接続部19との間で簡単に接続できるようになっている。なお、本図では、接続部67は車載コンピュータ18に直接的に設けられているように記載されているが、脱着を簡便に行うためには、車載コンピュータ18側からも信号ケーブルを引出すようにして接続部19を車内のアクセスが容易な箇所に設けることが好ましい。
【0049】
制御部6の外部にはバッテリ71が置かれ、このバッテリ71とインバータ62とが接続されていることで、システムコントローラ61からの命令に応じてインバータ62はバッテリ71に蓄えられた電気エネルギを変換した周波数制御電圧をモータ42に与えることができるようになっている。また、バッテリ71は充電コントローラ63にも接続されている。充電コントローラ63は商用電源72と電源ケーブル73を用いて接続可能に構成されており、システムコントローラ61からの指令に応じて、商用電源72から得られる電気エネルギを変換しつつバッテリ71に充電できるようになっている。
【0050】
以上のようなシステムとして構成される車載油圧機器用補助動力装置4は、外観上は図2のような形態として構成される。
【0051】
すなわち、矩形状に構成された1つの鉄製の基材81の上面に、パワーユニットの構成要素としての油圧ポンプ41およびモータ42と、制御部6と、バッテリ71とを固定し、基材81を介して一体化されたものである。
【0052】
各部の接続関係は、上述した説明の通りであり、配管51、52としては耐圧・耐油性ホースを用いており、これらの先端には各々接続部としてのワンタッチ継手55、56を設けている。また制御部6が備える表示部64としては液晶表示パネルを、入力部65としては複数の押し釦を設けている。車載コンピュータ18(図1参照)と接続するための信号ケーブル66はフラットケーブルとして構成している。また、この図では商用電源72(図1参照)と接続するための電源ケーブル73(図1参照)は取り外した状態としており、接続する際には電源コネクタ74を用いて容易に接続ができるようになっている。
【0053】
上記のように構成された車載油圧機器用補助動力装置4は、図1のように油圧機器搭載車1に接続することで次のようにして動作させることができる。
【0054】
まず、油圧機器搭載車1を作業現場に配置させエンジン11を停止させた後に、車載油圧機器用補助動力装置4を油圧機器搭載車1の近くにまで搬送させ、油圧機器搭載車1に隣接させた状態で設置する。この際、車載油圧機器用補助動力装置4は図2のように、ユニットとして一体化して構成しているために可搬性に優れ、短時間で設置を行うことができる。また、車載油圧機器用補助動力装置4は、油圧機器搭載車1の内部に搭載する必要がないために、設置スペースの問題が生じることもない。
【0055】
そして、図1のように、油圧機器搭載車1が備える油圧機器装置の構成要素としての車載油圧機器25および油圧タンク26と、パワーユニットの構成要素としての第2油圧ポンプ41とを配管51、52によって各々接続する。この際、各接続部36、37、55、56は対応する形状のワンタッチ継手として構成されているために、簡単に接続をおこなうことが可能である。
【0056】
また、油圧機器搭載車1が備える車載コンピュータ18とシステムコントローラ61とを信号ケーブル66によって接続する。この接続部19、67も脱着可能に構成されているために、簡単に接続を行うことができる。
【0057】
このように接続を行った後、操作者は油圧機器搭載車1が備える車載油圧ポンプ24に接続される配管31、32の管路の途中に設けられたバルブ34、35を各々閉止する。これにより、車載油圧機器用補助動力装置4を用いて車載油圧機器25を動作させた場合に予期せぬ圧力上昇が生じたとしても、車載油圧ポンプ24は保護される。
【0058】
さらに、操作者は第2油圧ポンプ41に接続される配管51、52の管路の途中に設けられたバルブ53、54を各々開放する。これにより、モータ42を回転させて第2油圧ポンプ41を駆動させることによって、油圧タンク26内の作動油を第2油圧ポンプ41によって車載油圧機器25に送り込んで動作させることができるようになる。
【0059】
上記のようにして接続および動作準備を終えた後、操作者は入力部65を通じて第2油圧ポンプ41を駆動させるよう命令を与える。この命令に従ってシステムコントローラ61は、インバータ62にモータ42を駆動させるための命令を与え、モータ42によって第2油圧ポンプ41を駆動させる。こうすることで第2油圧ポンプ41は、油圧タンク26内に収容されている作動油を配管52を通じて吸入口(図示せず)より吸い込み、吐出口(図示せず)より配管51を通じて車載油圧機器25に供給する。そして、車載油圧機器25は作動油の圧力により、所定の動作を行う。
【0060】
また、操作者が車載油圧機器25による出力または動作速度の変更を意図して、入力部65を通じて第2油圧ポンプ41の圧力上昇または圧力低下の命令を与えた場合には、こうした命令に従ってシステムコントローラ61は、インバータ62に対してモータ42の動作を変更するための命令を与え、モータ42による第2油圧ポンプ41の駆動条件を変更させる。このようにして車載油圧機器25の動作を変更することができる。
【0061】
上記のように車載油圧機器用補助動力装置4によって油圧機器搭載車1の車載油圧機器25を動作させる場合に、同時に油圧機器搭載車1が内部に備える車載油圧ポンプ24を動作させて車載油圧機器25に対して作動油を供給することで、より車載油圧機器25の出力を上昇させることも可能である。
【0062】
しかしながら、このように同時に2つの油圧ポンプ24、41を動作させることは、作動油の圧力の制御が不安定になる恐れがあり、場合によっては油圧ポンプ24、41に故障が生じる可能性がある。そのため、本実施形態における車載油圧機器用補助動力装置4および油圧機器搭載車1においては、同時に2つの油圧ポンプ24、41を駆動させることはできず、いずれか片方を動作させている間は他方の起動ができないようにインターロックがかかるように構成している。
【0063】
具体的には、パワーユニットを構成する第2油圧ポンプ41を駆動させる場合には、図3のようなインターロック処理が行われるように、制御部6(図1参照)を構成している。以下、図1を参照しつつ、図3を用いてこのインターロック処理について説明を行う。
【0064】
まず、第2油圧ポンプ41を駆動するモータ42が停止中の場合には、制御部6は待機状態として、第2油圧ポンプ41(モータ42)の起動スイッチのオン信号の入力を待つ(ST001)。起動スイッチのオン信号が入力されれば、次のステップに移行して制御部6と車載コンピュータ18とが信号ケーブル66を介して接続されているかを確認する(ST002)。制御部6と車載コンピュータ18との接続が確認できない場合には、第2油圧ポンプ41(モータ42)を停止させるステップ(ST006)に移行する。
【0065】
制御部6と車載コンピュータ18との接続が確認できる場合には、車載コンピュータ18から出力されるエンジン11の駆動信号が未入力状態であることを確認するステップ(ST003)に移行する。つまり、ここではエンジン11が駆動されていないことを確認する。エンジン11の駆動信号が入力状態である場合には、第2油圧ポンプ41(モータ42)を停止させるステップ(ST006)に移行する。
【0066】
エンジン11の駆動信号が未入力状態である場合には、エンジン11が駆動がされておらず、安全に第2油圧ポンプ41を動作させることができる状態となっているため、第2油圧ポンプ41(モータ42)の出力制御を行うことが可能となる(ST004)。本フローチャートではこのステップに関しては詳細を省略してあるが、操作者からの命令に応じて第2油圧ポンプ41(モータ42)の起動や回転数の増減等の目的に応じた種々の制御を行うことが可能となる。
【0067】
さらに、上記のようにして第2油圧ポンプ41(モータ42)に対してインバータ62より与える周波数制御電圧の変更を行った後、次のステップに進み第2油圧ポンプ41(モータ42)の停止スイッチがオンになっているかを確認する(ST005)。
【0068】
停止スイッチがオンになっていれば、第2油圧ポンプ41(モータ42)を停止するステップ(ST006)に進み、インバータ62からの指令によって第2油圧ポンプ41(モータ42)を停止させる。
【0069】
停止スイッチがオンになっていない場合には、再度ST002に戻って、停止スイッチがオンになるまでST002〜ST005の間をループする。このようにステップをループさせることによって、制御部6と車載コンピュータ18との接続状態、およびエンジン11の非駆動状態を監視することが可能となる。このループの間に、制御部6と車載コンピュータ18との間の信号ケーブル66による接続が解除された場合、または、エンジン11が駆動された場合には、ST002またはST003より分岐する右側のラインを通って、パワーユニットを構成する第2油圧ポンプ41(モータ42)を停止するステップ(ST006)に進むことになる。
【0070】
他方、油圧機器搭載車1のエンジンを駆動させる場合には、図4のようなインターロック処理が行われるように構成している。上述のようにして車載油圧機器用補助動力装置4の制御部6を構成することで、エンジン11駆動時にはパワーユニットを構成する第2油圧ポンプ41(モータ42)の起動ができず、同時に2つの油圧ポンプ24、41を同時に駆動することは回避可能であるが、誤ってエンジン11を駆動した際に動作する油圧ポンプ24、41が切り替わることで、作動油の圧力変動が生じる可能性があるために、これを防止するため油圧機器搭載車1側にもインターロックを組み込み、エンジン11の起動が制限されるように車載コンピュータ18を構成している。以下、図1を参照しつつ、図4を用いてこのインターロック処理について説明を行う。
【0071】
まず、エンジン11の停止時には待機状態として、エンジン11の起動スイッチがオンになるのを待ち(ST011)、起動スイッチのオンによって次のステップ(ST012)に移行する。このステップ(ST012)では、信号ケーブル66を通じて得られるパワーユニット構成要素としての第2油圧ポンプ41(モータ42)の回転信号が未入力状態であることを確認するものであり、回転信号が入力されていることを確認した場合には、エンジン11を停止状態とするステップ(ST015)に移行して、エンジン11の起動を行わせない。
【0072】
逆に、第2油圧ポンプ41(モータ42)の回転信号が未入力状態である場合には、次のエンジン出力制御を行うステップ(ST013)に移行する。なお、第2油圧ポンプ41(モータ42)の回転信号が未入力状態である場合とは、信号ケーブル66が接続されていない状態をも含むが、この場合には制御部6による第2油圧ポンプ41(モータ42)の起動を行うことができないために問題は生じない。
【0073】
上記エンジン11の出力制御を行うステップ(ST013)を経て、エンジン11の停止スイッチがオンになっているかを確認する(ST014)。なお、油圧機器搭載車1のタイプによってはエンジン11の停止スイッチが独立して設置されておらず、エンジン11の起動スイッチと一体化しているものもあるが、その場合にはエンジン11の起動スイッチのオフ信号として構成することで足りる。
【0074】
停止スイッチがオン(または起動スイッチがオフ)になっていれば、エンジン11を停止状態とするステップ(ST015)に進む。
【0075】
停止スイッチがオン(または起動スイッチがオフ)になっていない場合には、再度ST012に戻って、停止スイッチがオン(または起動スイッチがオフ)になるまでST012〜ST014の間をループする。このようにステップをループさせることによって第2油圧ポンプ41(モータ42)の非回転状態を監視することが可能となる。このループの間に、第2油圧ポンプ41(モータ42)が駆動された場合には、ST012より分岐する右側のラインを通って、エンジン11を停止状態とするステップ(ST015)に進むことになる。
【0076】
上記のようにして、安全に、補助動力として第2油圧ポンプ41を用いて車載油圧機器25を稼働させることができる。こうすることで、油圧機器搭載車1を同一の場所に停車させた状態で車載油圧機器25を用いた作業を行わせる場合において、エンジン11を駆動させることなく行うことができるために、排気ガスの放出、燃料の消費、および騒音を抑制することができ、環境負荷を低減させることができる。
【0077】
また、このようなパワーユニット構成要素としての第2油圧ポンプ41およびこれを動作させるためのモータ42と、制御部6と、バッテリ71とが車載油圧機器用補助動力装置4として一体化されて構成されているため可搬性に優れており、さらに油圧機器搭載車1への脱着が容易に構成されているために、油圧機器搭載車1が作業現場に到着した後に、作業現場に保管しておいた車載油圧機器用補助動力装置4を運搬して油圧機器搭載車1に隣接して設置し、接続して運転させることができる。こうした使用形態が実現できることから、油圧機器搭載車1に車載油圧機器用補助動力装置4を搭載する必要がなく、車両重量を増加させることなく走行時の燃料消費量を抑えることもできる。
【0078】
また、車載油圧機器用補助動力装置4のバッテリ71の残量が少なくなった際には、簡単に取り外して、エンジン11を駆動源として車載油圧機器25を動作させるように切り換えることが可能となっている。
【0079】
さらに、車載油圧機器用補助動力装置4は商用電源72と接続して充電可能に構成されていることから、様々な場所で簡便に充電を行うことができる。そのため、充電の機会を増やして使用に備えることができ、結果的に車載油圧機器用補助動力装置4を使用する場面および時間を増加させ、環境影響の低減を実現することが可能となる。
【0080】
また、車載油圧機器用補助動力装置4と油圧機器搭載車1とを一対一で対応させることは必須ではなく、複数の油圧機器搭載車1に対して車載油圧機器用補助動力装置4をつなぎ換えて使用することも可能である。こうすることで、製造コストの削減を図ることも可能である。
【0081】
以上のように、本発明の車載油圧機器用補助動力装置4は、油圧機器搭載車1に搭載された油圧機器装置としての油圧機器25および油圧タンク26に対して一方の端部を各々脱着可能に構成された配管51、52と、それらの配管51、52の他方の端部に接続されるものであって、油圧ポンプ41と当該油圧ポンプ41を駆動するモータ42とを含んだ油圧回路を構成するパワーユニットと、当該パワーユニットに電力を供給するバッテリ71と、前記パワーユニットを制御するための制御部6と、前記パワーユニット、前記バッテリ71および前記制御部6を固定して一体化させる基材81とを備えることを特徴とするものである。
【0082】
このように構成しているため、油圧機器搭載車1に搭載される車載油圧機器25をエンジン11を用いることなく動作させることができるため、騒音や排気ガス等による環境悪化を抑制することが可能となる。また、車載油圧機器25を動作させるために必要な機器がユニットとして一体化して構成されているため可搬性に優れ、運搬および設置が容易であるとともに、油圧機器搭載車1の油圧機器装置を構成する車載油圧機器25や油圧タンク26への配管51、52の脱着が可能とされているため、車載油圧機器25を車載油圧機器用補助動力装置4が備える油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)41を用いて駆動させるための事前準備作業を短時間で容易に行うことが可能となる。
【0083】
また、前記配管51、52の前記一方の端部にワンタッチ継手55、56を設けるように構成しているため、配管51、52の車載油圧機器25や油圧タンク26への接続がより容易になり、事前準備作業を短時間で容易に行うことができるという上記の効果をより高めることができる。
【0084】
また、前記油圧機器搭載車1に搭載され当該油圧機器搭載車1のエンジン11の駆動を制御するための車載コンピュータ18と前記制御部6との間を接続可能な信号ケーブル66を備えており、前記制御部6を、前記モータ42を制御して前記油圧ポンプ41を駆動または駆動の維持を行う際に、前記信号ケーブル66を介した前記制御部6と前記車載コンピュータ18との接続状態を確認するステップと、前記信号ケーブル66を介して前記車載コンピュータ18より得られる前記エンジン11の駆動信号が非入力であることを確認するステップとを経た上で、前記パワーユニットを構成するモータ42に対する駆動(回転)指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、前記信号ケーブル66を介した前記制御部6と前記車載コンピュータ18との未接続状態、または前記信号ケーブル66を介して前記車載コンピュータ18より得られる前記エンジン11の駆動信号の入力状態を確認することによって、前記パワーユニットを構成するモータ42に停止指令を出力するように構成しているため、車載油圧機器25に対して車載油圧ポンプ24と第2油圧ポンプ41とから同時に作動油を供給することを防ぎ、予期せぬ機器の損傷を防止することができる。
【0085】
また、前記制御部6が、商用電源72より得られる電気エネルギを用いて前記バッテリ71を充電するための充電コントローラ63を備えるように構成しているため、場所を問わず簡単にバッテリ71の充電を行うことができ、これによって充電機会を増やすことができるため、バッテリが充電されて使用可能な状態を増加させることができる。そのため、使用機会を増加させて結果的に環境負荷を低減させることが可能となる。
【0086】
さらに、本発明の油圧機器搭載車1は、上記の車載油圧機器用補助動力装置4が備える前記配管51、52の端部を脱着可能とする接続部36、37を前記パワーユニット構成要素としての前記油圧機器25および前記油圧タンク26が各々備えているように構成したことを特徴とするものである。
【0087】
このように構成しているため、必要に応じて簡単に上記の車載油圧機器用補助動力装置4を接続させて、エンジン11以外の駆動手段によって車載油圧機器25を動作させることが可能になる。
【0088】
また、上記の車載油圧機器用補助動力装置4が備える前記制御部6と、前記信号ケーブル66を介して接続可能に前記車載コンピュータ18を構成しており、当該車載コンピュータ18を、前記エンジン11の駆動または駆動の維持を行う際に、前記信号ケーブル66を介して前記制御部6より得られる前記パワーユニット構成要素としてのモータ42の駆動(回転)信号の未入力状態を確認するステップを経た上で、前記エンジン11に対する駆動指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、前記信号ケーブル66を介して前記制御部6より得られる前記パワーユニット構成要素としてのモータ42の駆動(回転)信号の入力状態を確認した際には、前記エンジン11に対して停止指令を出力するように構成しているため、補助動力としての第2油圧ポンプ41を用いて車載油圧機器25を動作させている際には、エンジン11を駆動することができず、車載油圧機器25の駆動源の切り替わりによる予期せぬ機器の損傷を防止することが可能となる。
【0089】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0090】
上述の実施形態では、車載油圧機器用補助動力装置4を、図2のような形態で構成していたが、機器のレイアウトを変更するなどして様々な形態に変形することが可能である。例えば、図5に示したように、鉄製の設置板181a〜181cを上下方向に三段に連結するようにして直方体状に基材181を構成して、それぞれの設置板181a〜181cに油圧ポンプ141およびモータ142、バッテリ171、制御部106を各々設置するようにして、縦型に配置しても良い。なお、本図では、制御部6とバッテリ171およびモータ142に対する電気配線は省略して記載してある。
【0091】
このように構成することで、よりコンパクトな形態にすることができるとともに、下部に車輪182〜182を設けることで、さらに可搬性を高めることが可能となる。また図では記載していないが、直方体状に構成された基材181の各面を塞ぐようにして化粧パネルを設ければ、機器内部へのゴミの侵入を防止することができ、より動作安定性を高めることも可能となる。
【0092】
上述したように、本実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4は、補助動力を必要とする際に油圧機器搭載車1に隣接するように設置して、接続することを想定していたが、必ずしも油圧機器搭載車1の外部に搭載することを要するものではない。例えば、油圧機器搭載車1の内部にスペースが十分にある場合には、そのスペース内に車載油圧機器用補助動力装置4を設置してもよい。このようにしても、必要に応じて車載油圧機器用補助動力装置4を簡単に脱着可能とすることができ、上記と同様に本発明の目的を達成することは可能である。
【0093】
さらに、図3を用いて説明した本実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4の制御部6におけるインターロック処理は、さらに検知項目および判定ステップを増加させて、より安全性を高めることも可能である。例えば、配管51、52の接続状態を検知する検知部や、配管31、32に設けられたバルブ34、35の閉状態を検知する検知部を設け、これらから得られる検知信号の有無を確認するように構成することも好ましい。
【0094】
また、エンジン11の駆動信号の非入力状態を確認することに代えて、クラッチ22の断絶状態を確認するような構成にしてもよい。このような構成にした上で、車載油圧機器用補助動力装置4を油圧機器搭載車1の内部に搭載する等、油圧機器搭載車1と共に移動可能とした場合には、車載油圧機器用補助動力装置4により車載油圧機器25を動作させつつエンジン11を起動して走行させることも可能になる。
【0095】
また、本実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4を接続する油圧機器搭載車1としては、油圧機器装置としての車載油圧機器25および油圧タンク26と、車載油圧ポンプ24とを備えており、エンジン11を駆動源として車載油圧ポンプ24を駆動することで油圧タンク26に収容された作動油を車載油圧機器25に送り込み、動作を行わせるものとして記載していたが、車載油圧機器用補助動力装置4を接続する車載油圧機器25と油圧タンク26とを有する限り、この形態には限らない。すなわち、車載油圧機器25に作動油を送り込む車載油圧ポンプ24や、当該車載油圧ポンプ24に対してエンジン11からの駆動力を分配する補助出力軸21、クラッチ22およびドライブシャフト23、さらには車載油圧ポンプに接続する配管31、32を備えておらず、油圧機器装置として車載油圧機器25および油圧タンク26に加えて、これらを接続する配管33のみを備えた形態であっても良い。この場合には、エンジン11によって車載油圧機器25を動作させることはできないものの、さらなる車両の軽量化を図るとともに、上記実施形態の車載油圧機器用補助動力装置4を用いることによって必要な際にのみ簡単に接続作業を行って、車載油圧機器25を動作させることができる。
【0096】
さらに、上記のような車載油圧機器25周りの構成を単純化した構成を進めて、油圧機器装置として油圧機器25のみを備えている形態とすることもできる。この場合には、車載油圧機器用補助動力装置4を構成するパワーユニットを、上述の実施形態のような第2油圧ポンプ41と、当該油圧ポンプ41を駆動するモータ42とに加えて、油圧タンク26までを含めた構成にすればよい。このように構成した上で、パワーユニットから油圧機器装置に接続される2本の配管を脱着可能と構成すれば、上記と同様に簡単に接続を行って車載油圧機器25の動作を行わせることが可能となり上記と同一の効果を得ることができる。
【0097】
なお、本発明においては作動流体として油を用いることを前提としているが、油に代えて別の作動流体を用いる機器に置き換えることは当業者にとって容易であり、本発明の均等の範囲に含まれる。
【0098】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…油圧機器搭載車
4…車載油圧機器用補助動力装置
6…制御部
11…エンジン
12…駆動軸
18…車載コンピュータ
24…車載油圧ポンプ
25…車載油圧機器
26…油圧タンク
31、32…配管
36、37…接続部(ワンタッチ継手)
41…第2油圧ポンプ
42…モータ
51、52…配管
55、56…接続部(ワンタッチ継手)
61…システムコントローラ
62…インバータ
63…充電コントローラ
66…信号ケーブル
71…バッテリ
72…商用電源
81…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器搭載車に搭載された油圧機器装置に対して一方の端部を各々脱着可能に構成された2本の配管と、
それらの配管の他方の端部に接続されるものであって、油圧ポンプと当該油圧ポンプを駆動するモータとを含んだ油圧回路を構成するパワーユニットと、
当該パワーユニットに電力を供給するバッテリと、
前記パワーユニットを制御するための制御部と、
前記パワーユニット、前記バッテリおよび前記制御部を固定して一体化させる基材と
を備えることを特徴とする車載油圧機器用補助動力装置。
【請求項2】
前記配管の前記一方の端部にワンタッチ継手を設けていることを特徴とする請求項1に記載の車載油圧機器用補助動力装置。
【請求項3】
前記油圧機器搭載車に搭載され当該油圧機器搭載車のエンジンの駆動を制御するための車載コンピュータと前記制御部との間を接続可能な信号ケーブルを備えており、
前記制御部を、
前記パワーユニットを制御して前記油圧ポンプを駆動または駆動の維持を行う際に、前記信号ケーブルを介した前記制御部と前記車載コンピュータとの接続状態を確認するステップと、前記信号ケーブルを介して前記車載コンピュータより得られる前記エンジンの駆動信号が非入力であることを確認するステップとを経た上で、前記パワーユニットに対する駆動指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、
前記信号ケーブルを介した前記制御部と前記車載コンピュータとの未接続状態、または前記信号ケーブルを介して前記車載コンピュータより得られる前記エンジンの駆動信号の入力状態を確認することによって、前記パワーユニットに停止指令を出力するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の車載油圧機器用補助動力装置。
【請求項4】
前記制御部が、
商用電源より得られる電気エネルギを用いて前記バッテリを充電するための充電コントローラを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載油圧機器用補助動力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車載油圧機器用補助動力装置が備える前記配管の端部を脱着可能とする接続部を前記油圧機器装置が備えているように構成したことを特徴とする油圧機器搭載車。
【請求項6】
請求項3に記載の車載油圧機器用補助動力装置が備える前記制御部と、前記信号ケーブルを介して接続可能に前記車載コンピュータを構成しており、
当該車載コンピュータを、
前記エンジンの駆動または駆動の維持を行う際に、
前記信号ケーブルを介して前記制御部より得られる前記パワーユニットの駆動信号の未入力状態を確認するステップを経た上で、
前記エンジンに対する駆動指令を出力するステップに移行するように構成するとともに、
前記信号ケーブルを介して前記制御部より得られる前記パワーユニットの駆動信号の入力状態を確認した際には、前記エンジンに対して停止指令を出力するように構成したことを特徴とする油圧機器搭載車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28316(P2013−28316A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167467(P2011−167467)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(597005370)いすゞ車体株式会社 (8)
【Fターム(参考)】