車載用レーダ軸ずれ判定方法
【課題】 車載用レーダに関し、特に静止物を用いた車載用レーダ装置の軸ずれの誤判定を防止する軸ずれ判定方法を提供する。
【解決手段】 静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する際に、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルすることから成る。
【解決手段】 静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する際に、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルすることから成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用レーダに関し、特に静止物の軌跡を用いた車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型の車載用レーダ装置を使用するには、車両の直線走行方向の軸線とビームの走査中心軸とが正確に一致している必要がある。車両走行中のレーダ装置に加わる振動やその経年変化等によって軸ずれが生じると、前方車両等の被検出物体の位置を誤って検出することになる。そのため、車両の走行中も常時軸ずれを検出してそれを補正することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1及び2には、従来の軸ずれ検出方法の一例を示している。
図1には、白線などの中央線13の左右に走行レーン12及び14を有する道路であって、路側に静止物であるガードレール11及び15を配置した直線道路と、その左側走行レーン12を走行する車両10の一例を示している。
【0004】
また、図中には、車両10に搭載されたレーダ装置による軸ずれのない状態でのレーダ検知エリア18aと、右方に軸ずれ(軸ずれ角θ)を生じている状態でのレーダ検知エリア18bの双方を示している。ここで、引用符号16は車両10の直線走行方向の軸線を、引用符号17a及び17bは、レーダ検知エリア18a及び18bの各ビーム走査中心軸を示している。
【0005】
図2の(a)には、軸ずれのない状態における静止物の検出例を示している。
ここでは、レーダ検知エリア18a内でビームを走査して、ビーム角(Φi)毎に静止物であるガードレール11及び15の距離(Ri)を所定時間内で複数回検出する。その結果を、車両10の現在位置を中心に、その直進方向の距離をx軸、左右の横位置をy軸とするx−y座標上にプロットしている。図2の(b)は、軸ずれ(軸ずれ角θ)が生じたレーダ検知エリア18b内でビームを走査する以外は、図2の(a)と同様である。
【0006】
図2の(a)及び(b)には、検出データを基に所定のアルゴリズムを使って算出した道路と静止物であるガードレール11及び15との境界線(以降、「静止物演算ライン」という)を太実線で示している。図2の(a)の軸ずれのない状態では、静止物演算ラインは車両10の直線走行方向の軸線16と並行になる。一方、図2の(b)の軸ずれの生じている状態では、静止物演算ラインは車両10の直線走行方向の軸線16に対して軸ずれ角θ分だけ傾斜する。これにより、車両10に搭載されたレーダ装置の軸ずれが検出可能となり、必要なら車両10内部の軸ずれ調整手段によって検出された軸ずれ角θが補正される。
【0007】
【特許文献1】特開平2001−166051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の手法により判定される軸ずれは、現実にレーダ装置の軸ずれが生じている場合だけに限られず、車両の走行状態やその走行方法等によっても検出され得るものである。例えば、道路の一部に設けられた路側帯にもガードレールが設置されている場合、道路前方にガードレール幅よりも狭いトンネルの入り口がある場合、また2車線道路上で車両がレーンチェンジを行う場合、等には、一定時間内で複数回検出した静止物データの累積プロット表示は、図2の(a)及び(b)に示すような単純な直線形状とはならず、一定の広がりを有してその中に複数の山を含むような複雑な形状を呈するようになる。
【0009】
このように複雑な形状を呈する検出データからその静止物演算ラインを求めると、演算精度が悪化して、正しく設置されているレーダ装置(レーダ検知エリア18a)であっても誤って軸ずれと判定(レーダ検知エリア18b)され得るという問題があった。また、誤って判定された軸ずれを補償するようにレーダ角度を自動調整すると、かえって走行車両の制御に悪影響を与えるという問題もあった。
【0010】
そこで本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ビーム走査による静止物検出データが、所定の軸ずれ判定条件に該当する場合には、そのデータを含む静止物演算ラインの演算処理をキャンセルすることで、軸ずれの誤判定を防止し、また軸ずれの誤った調整を防止する車載用レーダの軸ずれ判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法が提供される。
【0012】
また本発明によれば、車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、所定時間内のビーム走査により静止物の位置情報及びその検出回数を取得する第1のステップと、前記位置情報を、車両現在位置を原点、車両左右方向の距離を横軸、そして車両進行方向の距離を縦軸とする格子状テーブルのアドレス情報に変換し、当該アドレス情報に対応する格子領域に前記検出回数を格納する第2のステップと、前記格子状テーブルにおける所定縦軸の格子列から、静止物演算ラインの基準となる最初の角度演算格子を決定する第3のステップと、前記角度演算格子とその左右の格子とを含む横軸の範囲内で、前記所定縦軸の車両進行方向における次の距離の格子列から、その格子列の角度演算格子を決定し、それを順次繰り返していく第4のステップと、前記第4のステップにおいて、前記角度演算格子とその左右の所定数の格子とを含む横軸の範囲内で、前記次の距離の格子列から前記検出回数の複数の山を検出したときは、前記決定された角度演算格子を結ぶ静止物演算ラインを求める演算を実行しない第5のステップと、で構成する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビーム走査による静止物検出データが、所定の軸ずれ判定条件に該当する場合には、その軸ずれ判定の演算処理をキャンセルすることで、軸ずれの誤判定を防止し、誤判定による軸ずれ調整が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明するが、先ずこれまでの軸ずれ判定手法について簡単に説明しておく。
【0015】
図3には、ビーム走査による静止物検出データ(静止物マップ)の一例であって、直線道路の前方にガードレール幅よりも狭いトンネルの入り口がある場合の例を示している。ここでは、走行車両の現在位置を縦軸の距離0m及び横軸の横位置0mとし、距離及び横位置で規定される格子上に、所定時間内(所定距離範囲20m〜70m内)におけるレーダ検知エリア内の静止物検出回数を、高軸の検出頻度として立体的に表示している。
【0016】
検出頻度 [回数] は、0〜25、0〜25、25〜50、50〜75、75〜100、100以上の5段階に分けられており、それぞれに異なる網掛を付すことで区別している。
【0017】
図3の(a)の部分は、左レーンを走行する車両が左側ガードレールよりも内側にあるトンネルの入り口へ近づく過程での静止物検出頻度を示している。例えば、左路側ガードレール、その内側に配置されたトンネル入り口近傍のデリニエータ、そしてトンネル内の左側壁、等の順序で累積されていく静止物の検出頻度を表している。
【0018】
図3の(b)の部分は、デリニエータを一定間隔で配置した中央分離帯の検出頻度を表している。そして、図3の(b)の部分は、対向レーンにおけるトンネル付近の静止物の検出頻度を表している。
【0019】
図4及び5には、図3の例における静止物演算ラインの演算手法を示している。
図4は、車両の左側(横位置0〜−8[m])に位置する静止物の静止物演算ラインの求め方を図式的に示したものである。ここでは、最初の角度演算に使用する格子を決定するため、車両の側に最も近い格子列に対して、横位置0から−8[m]の方向へ隣接格子同士の検出頻度値の差分演算を順次繰り返していく。この演算で最も立ち上がり傾斜角の大きな値を有する格子を検出し、それを角度演算の最初の基準格子と決定する。
【0020】
一例として、格子 [縦軸、横軸]と定義し、静止物演算ラインの演算を縦軸30mから開始する場合で、格子[30、0]の検出頻度を「0」、格子[30、−0.5]の検出頻度を「0」、格子[30、−1.0]の検出頻度を「5」、格子[30、−1.5]の検出頻度を「12」、格子[30、−2.0]の検出頻度を「5」、・・・とする。
【0021】
この場合、格子[30、−0.5]〜[30、−2.0]のそれぞれの差分値は、0(=0−0)、−5(=0−5)、−7(=5−12)、+7(=12−5)と求まる。その結果、最も立ち上がり傾斜の大きな値「−7」を有する格子[30、−1.5]が角度演算の最初の角度演算格子と決定される。このように、符号が負で絶対値が最大の差分値を有する格子が角度演算格子となり、図4の例では(1)の角度演算に使う格子が最初の角度演算格子と決定される。
【0022】
図4には、また次の角度演算格子を決定する際の格子選定範囲を白抜きの矢印で示している。図中の矢印で示すように、これまでは、静止物演算ラインの連続性を保ち且つその演算量を低減させるために、今回の演算に使用する角度演算格子とその左右に隣接する2つの格子を加えた範囲を、次回の演算で使用する角度演算格子の選定範囲として制限していた。
【0023】
図5には、次の角度演算格子の選定方法を図式的に示している。
図5の(a)は、図3の静止物マップの一部を切り出してきたものであり、前述した例と対応させて、決定された最初の角度演算格子[30、−1.5]を網掛格子で明示している。その結果、現時点(今回)における角度演算格子の選定範囲は、今回の演算対象となる縦軸32.5mの格子列で前回(最初)の角度演算格子と同じ横位置−1.5mを有する格子[32.5、−1.5]を中心に、その左側格子[32.5、−2.0]及び右側格子[32.5、−1.0]を加えた範囲となる。なお、図中に示すように、実際の角度演算格子の選定範囲は−1.0〜−2.5mの1.5m範囲内となる。
【0024】
従って、今回の角度演算格子の選定範囲である3つの格子[32.5、−1.0]〜格子[32.5、−2.0]のうちの1つが今回(距離32.5mの格子列)の角度演算格子として決定される。その際には、図4で説明したのと同じ手法により符号が負で絶対値がより大きな差分値を有する格子が選ばれる。今回の角度演算格子の決定により、次回(距離35.0mの格子列)の角度演算格子の選定範囲として、図中に示す3つの枠のうちで今回決定された角度演算格子を中心にもつ枠が選定される。
【0025】
図5の(b)及び(C)には、今回の角度演算格子の決定により、次回の角度演算格子の選定するための差分演算の例を図式的に示している。ここでは、理解の容易のために図4で説明したのと同じ検出頻度及び差分値を用いた例を示しており、それらについては更に説明しない。最終的に、最も大きな不値を有する格子が今回の角度演算格子として決定される。
【0026】
上述した手法は、図3の車両の右側(横位置0〜+8[m])に位置する静止物の静止物演算ラインを求める場合にも同様に適用される。但し、この場合には横位置0から+8[m]の方向へ差分演算を実行する。
【0027】
図4に戻って、これまでの説明から角度演算格子(網掛枠)及びその選定範(白抜きの矢印)は、距離が遠くなるにつれて(1)→(5)へとだんだん位置が遷移していくのが理解される。これは図2の(b)に示す軸ずれが生じた状態と同じ演算結果となる。このように、複雑な形状を呈する静止物検出データから静止物演算ラインを求めると、演算精度が悪化して軸ずれ判定を誤る場合が生じる。
【0028】
図6及び7は、上記の誤判定を防止するための改善された静止物演算ラインの演算手法を示したものである。
本例の理解を容易にするために、先ずその動作原理を説明しておく。本例では、各格子列の角度演算格子を中心とする所定範囲内で、複数の異なる静止物検出頻度の「山」を検出する。そして、複数の山が検出されたデータから求める静止物演算ラインは演算精度を満足しないものとして、軸ずれ判定演算をキャンセルする。これにより、演算精度が保証されない判定演算は排除され、それによる軸調整処理も発生しない。
【0029】
なお、前記角度演算格子を中心とする所定範囲内には、2車線道路においてレーンチェンジを行っても軸ずれ判定演算を誤らせる静止物データを生じさせない横幅(図6の白抜きの矢印)、例えば2.5〜3.6mが用いられる。また、「山」の検出は、「山」の部分で検出頻度の差分値の符号が「−」から「+」へ変化することを利用する。
【0030】
次に、本例の具体的な動作を、図7のシーケンスチャートに中心に、図6の動作と対応させて説明する。
2車線道路を走行していると、通常は左レーン側から見た左右ガードレールと、レーンチェンジ後に右レーン側から見た左右ガードレールの計4つのガードレール(静止物)が検出される。そのため、ステップS01ではその内の左ラインの1本目を最初に選択する。
【0031】
ステップS02では、選択したラインの一番手前(直近)の格子列を検索して最初の角度演算格子を決定する。ステップ3では、次の距離の格子列において、最初の角度演算格子の左右に隣接する格子(±1格子)を含む範囲、すなわち次の角度演算格子の選定範囲が決定される。ステップS4では、選定された3つの格子の差分値をそれぞれ求めて、そのうちの1つが次の角度演算格子に決定される。ここまでは、図4及び5で説明してきたのと同様である。
【0032】
次のステップS05では、図6の(1)に例示するように、決定された角度演算格子の左右2格子以内(白抜き矢印;長さ2.5m)に「山」があるか否かが判断される。「山」の有無自体は、「山」の部分では検出頻度の差分値の符号が「−」から「+」へ変化することを利用して検出する。
【0033】
角度演算格子の左2格子内に「山」を検出すると、ステップS1で選択したライン毎に設けられた「左山ありカウンタ」を1インクリメントする(S05及び06)。また、角度演算格子の右2格子内に「山」を検出すると、同様に選択したライン毎に設けられた「右山ありカウンタ」を1インクリメントする(S07及び08)。
【0034】
これまでの動作は、全ての距離範囲(図6の(1)→(5))で実行される(S09)。それらはまた、残りの全ての静止物ライン(例えば、残り3つのガードレール)に対しても実行される(S01参照)。
【0035】
次に、ステップS11では、前述した複数の静止物ラインから実際に軸ずれ角を演算するラインを選択する。その演算開始前に、選択された静止物ライン用の「左山ありカウンタ」及び「右山ありカウンタ」のカウント値を参照し、それらが両方ともゼロ以外の場合(「山」は2つ)には軸ずれ角の演算をすることなく終了する(S12及び15)。従って、図6に示す例(図3も同様)では、図6の(1)及び(2)に示す左右の「山」の検出によって軸ずれ角の演算は実行されない。なお、カウント値が所定の閾値以上の場合に、演算を終了するようにしてもよい。
【0036】
一方、選択された静止物ライン用の「左山ありカウンタ」及び「右山ありカウンタ」のカウント値の一方がゼロの場合(「山」は1つ)には、軸ずれ角の演算を実行して必要な処理を行なう(S13及び14)。
【0037】
図8〜10には、軸ずれ判定の一実施例を示している。
図8は、図3の(a)の部分を拡大して示しており、そこに付加された3本の線のうち、中央の線は距離毎の角度演算格子を結んだ線であり、その左右の線は前記角度演算格子の左右の「山」を検出するための範囲(左右2格子)を示している。
【0038】
図9は、図8の立体表示された静止物マップを、レーダ装置又は車両のECU装置のRAMメモリに静止物検出回数テーブルとして格納した一例を示している。ここでは、図8の高軸の静止物検出頻度 [回数] に代えて、距離と横軸でアドレスされるメモリ領域にその検出回数を格納する。但し、図9では、図8との対応関係を明確にするために、静止物が検出された回数ではなく、図8に示す5段階の検出頻度の網掛模様で示している。例えば、検出頻度が25−50の網掛けが付されたメモリ領域には、実際には35(25<35<50)等の検出回数が格納されている。
【0039】
図中の太実線で囲んだ部分は、決定された角度演算格子を示している。また、太点線で囲んだ部分は、左右の「山」を検出するための範囲(左右2格子)を示している。
【0040】
図10は、図9の静止物検出回数テーブルの差分値を格納するテーブルの一例を示している。
差分値の演算方法は図4及び5で説明した通りである。前述の例でいえば、格子[30、−0.5]〜[30、−2.0]のそれぞれの差分値、0(=0−0)、−5(=0−5)、−7(=5−12)、+7(=12−5)が各メモリ領域に格納される。
【0041】
但し、図10のテーブルには、差分値の符号のみを格納した一例を示している。この例では、符号変化を検出することで「山」の部分の検出が容易となり、また角度演算格子の存在ヶ所もその符号配列から簡易に予測可能となる。この場合、予想ヶ所周辺のみの演算だけで角度演算格子を決定することも可能となる。
【0042】
図11には、本発明を適用した場合の効果の一例を示したものである。
図11は、種々の走行環境において、レーダ軸を変えたときに実測された角度誤差データの一例を表している。横軸はレーダ取り付け軸角度(度)であり、縦軸は測定された角度誤差(度)である。図中の丸線内のデータは、走行環境(例えば、図3参照)によって角度誤差が大きくなっているが、本発明によってキャンセルされたデータを示している。他のデータは、角度誤差の許容範囲内である1度以内におさまっている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の軸ずれ検出方法の一例(1)を示した図である。
【図2】従来の軸ずれ検出方法の一例(2)を示した図である。
【図3】静止物マップの一例を示した図である。
【図4】図3の静止物演算ラインの演算手法(1)を図式的に示した図である。
【図5】図3の静止物演算ラインの演算手法(2)を図式的に示した図である。
【図6】本発明による静止物演算ラインの演算手法を図式的に示した図である。
【図7】本発明による演算フローチャートの一例を示した図である。
【図8】静止物マップの一例を示した図である。
【図9】図8の静止物マップをRAMメモリのテーブルで表した図である。
【図10】図9のテーブルを差分符号で表した図である。
【図11】本発明を適用した効果の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
11、15 ガードレール
16 車両の直線走行方向の軸線
17a、17b ビーム走査中心軸
18a、18b レーダ検知エリア
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用レーダに関し、特に静止物の軌跡を用いた車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型の車載用レーダ装置を使用するには、車両の直線走行方向の軸線とビームの走査中心軸とが正確に一致している必要がある。車両走行中のレーダ装置に加わる振動やその経年変化等によって軸ずれが生じると、前方車両等の被検出物体の位置を誤って検出することになる。そのため、車両の走行中も常時軸ずれを検出してそれを補正することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1及び2には、従来の軸ずれ検出方法の一例を示している。
図1には、白線などの中央線13の左右に走行レーン12及び14を有する道路であって、路側に静止物であるガードレール11及び15を配置した直線道路と、その左側走行レーン12を走行する車両10の一例を示している。
【0004】
また、図中には、車両10に搭載されたレーダ装置による軸ずれのない状態でのレーダ検知エリア18aと、右方に軸ずれ(軸ずれ角θ)を生じている状態でのレーダ検知エリア18bの双方を示している。ここで、引用符号16は車両10の直線走行方向の軸線を、引用符号17a及び17bは、レーダ検知エリア18a及び18bの各ビーム走査中心軸を示している。
【0005】
図2の(a)には、軸ずれのない状態における静止物の検出例を示している。
ここでは、レーダ検知エリア18a内でビームを走査して、ビーム角(Φi)毎に静止物であるガードレール11及び15の距離(Ri)を所定時間内で複数回検出する。その結果を、車両10の現在位置を中心に、その直進方向の距離をx軸、左右の横位置をy軸とするx−y座標上にプロットしている。図2の(b)は、軸ずれ(軸ずれ角θ)が生じたレーダ検知エリア18b内でビームを走査する以外は、図2の(a)と同様である。
【0006】
図2の(a)及び(b)には、検出データを基に所定のアルゴリズムを使って算出した道路と静止物であるガードレール11及び15との境界線(以降、「静止物演算ライン」という)を太実線で示している。図2の(a)の軸ずれのない状態では、静止物演算ラインは車両10の直線走行方向の軸線16と並行になる。一方、図2の(b)の軸ずれの生じている状態では、静止物演算ラインは車両10の直線走行方向の軸線16に対して軸ずれ角θ分だけ傾斜する。これにより、車両10に搭載されたレーダ装置の軸ずれが検出可能となり、必要なら車両10内部の軸ずれ調整手段によって検出された軸ずれ角θが補正される。
【0007】
【特許文献1】特開平2001−166051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の手法により判定される軸ずれは、現実にレーダ装置の軸ずれが生じている場合だけに限られず、車両の走行状態やその走行方法等によっても検出され得るものである。例えば、道路の一部に設けられた路側帯にもガードレールが設置されている場合、道路前方にガードレール幅よりも狭いトンネルの入り口がある場合、また2車線道路上で車両がレーンチェンジを行う場合、等には、一定時間内で複数回検出した静止物データの累積プロット表示は、図2の(a)及び(b)に示すような単純な直線形状とはならず、一定の広がりを有してその中に複数の山を含むような複雑な形状を呈するようになる。
【0009】
このように複雑な形状を呈する検出データからその静止物演算ラインを求めると、演算精度が悪化して、正しく設置されているレーダ装置(レーダ検知エリア18a)であっても誤って軸ずれと判定(レーダ検知エリア18b)され得るという問題があった。また、誤って判定された軸ずれを補償するようにレーダ角度を自動調整すると、かえって走行車両の制御に悪影響を与えるという問題もあった。
【0010】
そこで本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ビーム走査による静止物検出データが、所定の軸ずれ判定条件に該当する場合には、そのデータを含む静止物演算ラインの演算処理をキャンセルすることで、軸ずれの誤判定を防止し、また軸ずれの誤った調整を防止する車載用レーダの軸ずれ判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法が提供される。
【0012】
また本発明によれば、車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、所定時間内のビーム走査により静止物の位置情報及びその検出回数を取得する第1のステップと、前記位置情報を、車両現在位置を原点、車両左右方向の距離を横軸、そして車両進行方向の距離を縦軸とする格子状テーブルのアドレス情報に変換し、当該アドレス情報に対応する格子領域に前記検出回数を格納する第2のステップと、前記格子状テーブルにおける所定縦軸の格子列から、静止物演算ラインの基準となる最初の角度演算格子を決定する第3のステップと、前記角度演算格子とその左右の格子とを含む横軸の範囲内で、前記所定縦軸の車両進行方向における次の距離の格子列から、その格子列の角度演算格子を決定し、それを順次繰り返していく第4のステップと、前記第4のステップにおいて、前記角度演算格子とその左右の所定数の格子とを含む横軸の範囲内で、前記次の距離の格子列から前記検出回数の複数の山を検出したときは、前記決定された角度演算格子を結ぶ静止物演算ラインを求める演算を実行しない第5のステップと、で構成する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビーム走査による静止物検出データが、所定の軸ずれ判定条件に該当する場合には、その軸ずれ判定の演算処理をキャンセルすることで、軸ずれの誤判定を防止し、誤判定による軸ずれ調整が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明するが、先ずこれまでの軸ずれ判定手法について簡単に説明しておく。
【0015】
図3には、ビーム走査による静止物検出データ(静止物マップ)の一例であって、直線道路の前方にガードレール幅よりも狭いトンネルの入り口がある場合の例を示している。ここでは、走行車両の現在位置を縦軸の距離0m及び横軸の横位置0mとし、距離及び横位置で規定される格子上に、所定時間内(所定距離範囲20m〜70m内)におけるレーダ検知エリア内の静止物検出回数を、高軸の検出頻度として立体的に表示している。
【0016】
検出頻度 [回数] は、0〜25、0〜25、25〜50、50〜75、75〜100、100以上の5段階に分けられており、それぞれに異なる網掛を付すことで区別している。
【0017】
図3の(a)の部分は、左レーンを走行する車両が左側ガードレールよりも内側にあるトンネルの入り口へ近づく過程での静止物検出頻度を示している。例えば、左路側ガードレール、その内側に配置されたトンネル入り口近傍のデリニエータ、そしてトンネル内の左側壁、等の順序で累積されていく静止物の検出頻度を表している。
【0018】
図3の(b)の部分は、デリニエータを一定間隔で配置した中央分離帯の検出頻度を表している。そして、図3の(b)の部分は、対向レーンにおけるトンネル付近の静止物の検出頻度を表している。
【0019】
図4及び5には、図3の例における静止物演算ラインの演算手法を示している。
図4は、車両の左側(横位置0〜−8[m])に位置する静止物の静止物演算ラインの求め方を図式的に示したものである。ここでは、最初の角度演算に使用する格子を決定するため、車両の側に最も近い格子列に対して、横位置0から−8[m]の方向へ隣接格子同士の検出頻度値の差分演算を順次繰り返していく。この演算で最も立ち上がり傾斜角の大きな値を有する格子を検出し、それを角度演算の最初の基準格子と決定する。
【0020】
一例として、格子 [縦軸、横軸]と定義し、静止物演算ラインの演算を縦軸30mから開始する場合で、格子[30、0]の検出頻度を「0」、格子[30、−0.5]の検出頻度を「0」、格子[30、−1.0]の検出頻度を「5」、格子[30、−1.5]の検出頻度を「12」、格子[30、−2.0]の検出頻度を「5」、・・・とする。
【0021】
この場合、格子[30、−0.5]〜[30、−2.0]のそれぞれの差分値は、0(=0−0)、−5(=0−5)、−7(=5−12)、+7(=12−5)と求まる。その結果、最も立ち上がり傾斜の大きな値「−7」を有する格子[30、−1.5]が角度演算の最初の角度演算格子と決定される。このように、符号が負で絶対値が最大の差分値を有する格子が角度演算格子となり、図4の例では(1)の角度演算に使う格子が最初の角度演算格子と決定される。
【0022】
図4には、また次の角度演算格子を決定する際の格子選定範囲を白抜きの矢印で示している。図中の矢印で示すように、これまでは、静止物演算ラインの連続性を保ち且つその演算量を低減させるために、今回の演算に使用する角度演算格子とその左右に隣接する2つの格子を加えた範囲を、次回の演算で使用する角度演算格子の選定範囲として制限していた。
【0023】
図5には、次の角度演算格子の選定方法を図式的に示している。
図5の(a)は、図3の静止物マップの一部を切り出してきたものであり、前述した例と対応させて、決定された最初の角度演算格子[30、−1.5]を網掛格子で明示している。その結果、現時点(今回)における角度演算格子の選定範囲は、今回の演算対象となる縦軸32.5mの格子列で前回(最初)の角度演算格子と同じ横位置−1.5mを有する格子[32.5、−1.5]を中心に、その左側格子[32.5、−2.0]及び右側格子[32.5、−1.0]を加えた範囲となる。なお、図中に示すように、実際の角度演算格子の選定範囲は−1.0〜−2.5mの1.5m範囲内となる。
【0024】
従って、今回の角度演算格子の選定範囲である3つの格子[32.5、−1.0]〜格子[32.5、−2.0]のうちの1つが今回(距離32.5mの格子列)の角度演算格子として決定される。その際には、図4で説明したのと同じ手法により符号が負で絶対値がより大きな差分値を有する格子が選ばれる。今回の角度演算格子の決定により、次回(距離35.0mの格子列)の角度演算格子の選定範囲として、図中に示す3つの枠のうちで今回決定された角度演算格子を中心にもつ枠が選定される。
【0025】
図5の(b)及び(C)には、今回の角度演算格子の決定により、次回の角度演算格子の選定するための差分演算の例を図式的に示している。ここでは、理解の容易のために図4で説明したのと同じ検出頻度及び差分値を用いた例を示しており、それらについては更に説明しない。最終的に、最も大きな不値を有する格子が今回の角度演算格子として決定される。
【0026】
上述した手法は、図3の車両の右側(横位置0〜+8[m])に位置する静止物の静止物演算ラインを求める場合にも同様に適用される。但し、この場合には横位置0から+8[m]の方向へ差分演算を実行する。
【0027】
図4に戻って、これまでの説明から角度演算格子(網掛枠)及びその選定範(白抜きの矢印)は、距離が遠くなるにつれて(1)→(5)へとだんだん位置が遷移していくのが理解される。これは図2の(b)に示す軸ずれが生じた状態と同じ演算結果となる。このように、複雑な形状を呈する静止物検出データから静止物演算ラインを求めると、演算精度が悪化して軸ずれ判定を誤る場合が生じる。
【0028】
図6及び7は、上記の誤判定を防止するための改善された静止物演算ラインの演算手法を示したものである。
本例の理解を容易にするために、先ずその動作原理を説明しておく。本例では、各格子列の角度演算格子を中心とする所定範囲内で、複数の異なる静止物検出頻度の「山」を検出する。そして、複数の山が検出されたデータから求める静止物演算ラインは演算精度を満足しないものとして、軸ずれ判定演算をキャンセルする。これにより、演算精度が保証されない判定演算は排除され、それによる軸調整処理も発生しない。
【0029】
なお、前記角度演算格子を中心とする所定範囲内には、2車線道路においてレーンチェンジを行っても軸ずれ判定演算を誤らせる静止物データを生じさせない横幅(図6の白抜きの矢印)、例えば2.5〜3.6mが用いられる。また、「山」の検出は、「山」の部分で検出頻度の差分値の符号が「−」から「+」へ変化することを利用する。
【0030】
次に、本例の具体的な動作を、図7のシーケンスチャートに中心に、図6の動作と対応させて説明する。
2車線道路を走行していると、通常は左レーン側から見た左右ガードレールと、レーンチェンジ後に右レーン側から見た左右ガードレールの計4つのガードレール(静止物)が検出される。そのため、ステップS01ではその内の左ラインの1本目を最初に選択する。
【0031】
ステップS02では、選択したラインの一番手前(直近)の格子列を検索して最初の角度演算格子を決定する。ステップ3では、次の距離の格子列において、最初の角度演算格子の左右に隣接する格子(±1格子)を含む範囲、すなわち次の角度演算格子の選定範囲が決定される。ステップS4では、選定された3つの格子の差分値をそれぞれ求めて、そのうちの1つが次の角度演算格子に決定される。ここまでは、図4及び5で説明してきたのと同様である。
【0032】
次のステップS05では、図6の(1)に例示するように、決定された角度演算格子の左右2格子以内(白抜き矢印;長さ2.5m)に「山」があるか否かが判断される。「山」の有無自体は、「山」の部分では検出頻度の差分値の符号が「−」から「+」へ変化することを利用して検出する。
【0033】
角度演算格子の左2格子内に「山」を検出すると、ステップS1で選択したライン毎に設けられた「左山ありカウンタ」を1インクリメントする(S05及び06)。また、角度演算格子の右2格子内に「山」を検出すると、同様に選択したライン毎に設けられた「右山ありカウンタ」を1インクリメントする(S07及び08)。
【0034】
これまでの動作は、全ての距離範囲(図6の(1)→(5))で実行される(S09)。それらはまた、残りの全ての静止物ライン(例えば、残り3つのガードレール)に対しても実行される(S01参照)。
【0035】
次に、ステップS11では、前述した複数の静止物ラインから実際に軸ずれ角を演算するラインを選択する。その演算開始前に、選択された静止物ライン用の「左山ありカウンタ」及び「右山ありカウンタ」のカウント値を参照し、それらが両方ともゼロ以外の場合(「山」は2つ)には軸ずれ角の演算をすることなく終了する(S12及び15)。従って、図6に示す例(図3も同様)では、図6の(1)及び(2)に示す左右の「山」の検出によって軸ずれ角の演算は実行されない。なお、カウント値が所定の閾値以上の場合に、演算を終了するようにしてもよい。
【0036】
一方、選択された静止物ライン用の「左山ありカウンタ」及び「右山ありカウンタ」のカウント値の一方がゼロの場合(「山」は1つ)には、軸ずれ角の演算を実行して必要な処理を行なう(S13及び14)。
【0037】
図8〜10には、軸ずれ判定の一実施例を示している。
図8は、図3の(a)の部分を拡大して示しており、そこに付加された3本の線のうち、中央の線は距離毎の角度演算格子を結んだ線であり、その左右の線は前記角度演算格子の左右の「山」を検出するための範囲(左右2格子)を示している。
【0038】
図9は、図8の立体表示された静止物マップを、レーダ装置又は車両のECU装置のRAMメモリに静止物検出回数テーブルとして格納した一例を示している。ここでは、図8の高軸の静止物検出頻度 [回数] に代えて、距離と横軸でアドレスされるメモリ領域にその検出回数を格納する。但し、図9では、図8との対応関係を明確にするために、静止物が検出された回数ではなく、図8に示す5段階の検出頻度の網掛模様で示している。例えば、検出頻度が25−50の網掛けが付されたメモリ領域には、実際には35(25<35<50)等の検出回数が格納されている。
【0039】
図中の太実線で囲んだ部分は、決定された角度演算格子を示している。また、太点線で囲んだ部分は、左右の「山」を検出するための範囲(左右2格子)を示している。
【0040】
図10は、図9の静止物検出回数テーブルの差分値を格納するテーブルの一例を示している。
差分値の演算方法は図4及び5で説明した通りである。前述の例でいえば、格子[30、−0.5]〜[30、−2.0]のそれぞれの差分値、0(=0−0)、−5(=0−5)、−7(=5−12)、+7(=12−5)が各メモリ領域に格納される。
【0041】
但し、図10のテーブルには、差分値の符号のみを格納した一例を示している。この例では、符号変化を検出することで「山」の部分の検出が容易となり、また角度演算格子の存在ヶ所もその符号配列から簡易に予測可能となる。この場合、予想ヶ所周辺のみの演算だけで角度演算格子を決定することも可能となる。
【0042】
図11には、本発明を適用した場合の効果の一例を示したものである。
図11は、種々の走行環境において、レーダ軸を変えたときに実測された角度誤差データの一例を表している。横軸はレーダ取り付け軸角度(度)であり、縦軸は測定された角度誤差(度)である。図中の丸線内のデータは、走行環境(例えば、図3参照)によって角度誤差が大きくなっているが、本発明によってキャンセルされたデータを示している。他のデータは、角度誤差の許容範囲内である1度以内におさまっている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の軸ずれ検出方法の一例(1)を示した図である。
【図2】従来の軸ずれ検出方法の一例(2)を示した図である。
【図3】静止物マップの一例を示した図である。
【図4】図3の静止物演算ラインの演算手法(1)を図式的に示した図である。
【図5】図3の静止物演算ラインの演算手法(2)を図式的に示した図である。
【図6】本発明による静止物演算ラインの演算手法を図式的に示した図である。
【図7】本発明による演算フローチャートの一例を示した図である。
【図8】静止物マップの一例を示した図である。
【図9】図8の静止物マップをRAMメモリのテーブルで表した図である。
【図10】図9のテーブルを差分符号で表した図である。
【図11】本発明を適用した効果の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
11、15 ガードレール
16 車両の直線走行方向の軸線
17a、17b ビーム走査中心軸
18a、18b レーダ検知エリア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルすることを特徴とする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項2】
車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法は、
所定時間内のビーム走査により静止物の位置情報及びその検出回数を取得する第1のステップと、
前記位置情報を、車両現在位置を原点、車両左右方向の距離を横軸、そして車両進行方向の距離を縦軸とする格子状テーブルのアドレス情報に変換し、当該アドレス情報に対応する格子領域に前記検出回数を格納する第2のステップと、
前記格子状テーブルにおける所定縦軸の格子列から、静止物演算ラインの基準となる最初の角度演算格子を決定する第3のステップと、
前記角度演算格子とその左右の格子とを含む横軸の範囲内で、前記所定縦軸の車両進行方向における次の距離の格子列から、その格子列の角度演算格子を決定し、それを順次繰り返していく第4のステップと、
前記第4のステップにおいて、前記角度演算格子とその左右の所定数の格子とを含む横軸の範囲内で、前記次の距離の格子列から前記検出回数の複数の山を検出したときは、前記決定された角度演算格子を結ぶ静止物演算ラインを求める演算を実行しない第5のステップと、で構成することを特徴とする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項3】
前記第3のステップにおいて、前記格子列の相互に隣接する格子に格納された前記検出回数の差分が最大となる格子を前記角度演算格子とする、ことを特徴とする請求項2記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項4】
前記差分は、原点側の格子の検出回数からそれに隣接する格子の検出回数を減算することにより求める、ことを特徴とする請求項3記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項5】
前記第5のステップにおいて、前記検出回数の複数の山は前記角度演算格子の左右に位置すること、を特徴とする請求項2記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項6】
前記角度演算格子の左右に位置する複数の山は、左側の山の数を数える左山カウンタと右側の山の数を数える右山カウンタとによって個別に計数され、左山カウンタと右山カウンタの両方とも山の数を計数しているときにだけ、前記静止物演算ラインを求める演算を実行しないこと、を特徴とする請求項5記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項1】
静止物分布からレーダの軸ずれ量を判定する車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法であって、静止物分布に軸ずれ量の演算を間違う要素を検出したときは、その軸ずれ量の演算をキャンセルすることを特徴とする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項2】
車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法は、
所定時間内のビーム走査により静止物の位置情報及びその検出回数を取得する第1のステップと、
前記位置情報を、車両現在位置を原点、車両左右方向の距離を横軸、そして車両進行方向の距離を縦軸とする格子状テーブルのアドレス情報に変換し、当該アドレス情報に対応する格子領域に前記検出回数を格納する第2のステップと、
前記格子状テーブルにおける所定縦軸の格子列から、静止物演算ラインの基準となる最初の角度演算格子を決定する第3のステップと、
前記角度演算格子とその左右の格子とを含む横軸の範囲内で、前記所定縦軸の車両進行方向における次の距離の格子列から、その格子列の角度演算格子を決定し、それを順次繰り返していく第4のステップと、
前記第4のステップにおいて、前記角度演算格子とその左右の所定数の格子とを含む横軸の範囲内で、前記次の距離の格子列から前記検出回数の複数の山を検出したときは、前記決定された角度演算格子を結ぶ静止物演算ラインを求める演算を実行しない第5のステップと、で構成することを特徴とする車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項3】
前記第3のステップにおいて、前記格子列の相互に隣接する格子に格納された前記検出回数の差分が最大となる格子を前記角度演算格子とする、ことを特徴とする請求項2記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項4】
前記差分は、原点側の格子の検出回数からそれに隣接する格子の検出回数を減算することにより求める、ことを特徴とする請求項3記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項5】
前記第5のステップにおいて、前記検出回数の複数の山は前記角度演算格子の左右に位置すること、を特徴とする請求項2記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【請求項6】
前記角度演算格子の左右に位置する複数の山は、左側の山の数を数える左山カウンタと右側の山の数を数える右山カウンタとによって個別に計数され、左山カウンタと右山カウンタの両方とも山の数を計数しているときにだけ、前記静止物演算ラインを求める演算を実行しないこと、を特徴とする請求項5記載の車載用レーダ装置の軸ずれ判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−10584(P2006−10584A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190308(P2004−190308)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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