説明

車載装置および輻輳制御方法

【課題】車両同士の通信用のパラメータの差を低減しつつ、輻輳を回避する車載装置および輻輳制御方法を提供する。
【解決手段】複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置は、無線信号を検出して輻輳レベルを測定する無線部と、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信する処理部と、無線部が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の所定パラメータの値が、処理部にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、自装置の所定パラメータの値を小さくする制御部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置および輻輳制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITS(Intelligent Transport Systems)では、無線電波を利用して車と車との間で情報をやりとりするために車車間通信が行われる。所定帯域内の無線電波を利用して行う車車間通信では、一定の領域内に存在する車車間通信を行う車の数が増加してくると、無線電波が輻輳し、車同士で通信ができなくなる恐れがある。
【0003】
基地局を介して行われる携帯電話機間の通信では、一般に、基地局が輻輳を回避する制御を行うが、車車間通信では、輻輳を回避する制御を行う基地局が存在しない。よって、一定の領域内に存在する車車間通信を行う車の数が増加してきたときには、車同士で輻輳を回避する制御を実施しなければならない。
【0004】
特許文献1には、輻輳を回避する制御を行う車両用通信装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の車両用通信装置は、チャネル利用率に基づき、輻輳の発生が近いか否かを示す輻輳状態レベルを推定する。なお、チャネル利用率は、送受信を行っているチャネルが使用中の割合を表す。
【0006】
特許文献1に記載の車両用通信装置は、輻輳状態レベルが所定レベル以上である場合に、自車両の送信電力を、輻輳状態レベルが所定レベル未満のときの自車両の送信電力よりも小さくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/099716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の車両用通信装置は、輻輳状態レベルが所定レベル以上である場合に、自車両の送信電力を、輻輳状態レベルが所定レベル未満のときの自車両の送信電力よりも小さくする。よって、車両用通信装置は、自車両の通信用のパラメータのうちの送信電力を小さくすることにより、輻輳を回避することが可能となる。
【0009】
このため、車両用通信装置は、送信電力が自車両よりも大きい周辺車両から電波が送信されている状況で、輻輳状態レベルが所定レベル以上であるときには、自車両の送信電力を小さくする。よって、自車両の送信電力が周辺車両の送信電力と比較して極端に小さくなり、車両同士の送信電力のバラツキが大きくなってしまう場合がある。
【0010】
したがって、輻輳を回避するためには、複数の車両同士の通信用のパラメータの差が大きくなってしまう場合があるという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、車両同士の通信用のパラメータの差を低減しつつ、輻輳を回避する車載装置および輻輳制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車載装置は、複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置であって、前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定手段と、前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信する受信手段と、前記測定手段が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記所定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には自装置の前記所定パラメータの値を小さくする制御手段と、を含む。
【0013】
本発明の車載装置は、複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置であって、前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定手段と、前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータの値を受信する受信手段と、前記測定手段が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記特定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には自装置の前記所定パラメータの値を大きくする制御手段と、を含む。
【0014】
本発明の輻輳制御方法は、複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置の輻輳制御方法であって、前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定ステップと、前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信する受信ステップと、前記測定ステップにて測定された輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記所定パラメータの値が、前記受信ステップにて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には自装置の前記所定パラメータの値を小さくする制御ステップと、を含む。
【0015】
本発明の輻輳制御方法は、複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置の輻輳制御方法であって、前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定ステップと、前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータの値を受信する受信ステップと、前記測定ステップにて測定された輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記特定パラメータの値が、前記受信ステップにて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には、自装置の前記所定パラメータの値を大きくする制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両同士の通信用のパラメータの差を低減しつつ、輻輳を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における車載装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】輻輳制御に用いられる通信パラメータの一例を示す図である。
【図3】複数の車載装置300を有する通信システムを説明するための図である。
【図4】車載装置300の輻輳制御方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態における車載装置の構成例を示すブロック図である。
【0020】
車載装置300は、車両に搭載される車載機である。車載装置300は、複数の車両のそれぞれに搭載された他の車載装置と無線信号により通信を行う。複数の車両のそれぞれに搭載された他の車載装置は、一般的に所定車載装置と呼ぶことができる。なお、他の車載装置は、車載装置300と同様の機能を有する。
【0021】
車載装置300は、無線部310と、処理部320と、制御部330と、を備える。無線部310は、アンテナ311と、スイッチ312と、無線受信部313と、無線送信部314と、を備える。処理部320は、受信処理部321と、アプリケーション部322と、送信処理部323と、を備える。
【0022】
無線部310は、一般的に測定手段と呼ぶことができる。
【0023】
無線部310は、他の車載装置と通信を行うために使用される無線信号を検出して、輻輳レベルを測定する。他の車載装置と通信を行うために使用される無線信号は、以下、単に「無線信号」と称される。また、輻輳レベルは、本実施形態では、チャネル負荷率と称される。
【0024】
アンテナ311は、パケットを無線信号として送信または受信するために用いられる。
【0025】
スイッチ312は、無線受信部313または無線送信部314のいずれか一方とアンテナ311との間を接続する。スイッチ312は、無線送信部314がパケットを出力する出力期間だけ、無線送信部314とアンテナ311との間を接続する。スイッチ312は、出力期間以外の期間に、無線受信部313とアンテナ311との間を接続する。
【0026】
無線受信部313は、アンテナ311を介して無線信号を受信する。無線受信部313は、無線信号を受信すると、無線信号に示されるパケットを取得する。
【0027】
また、無線受信部313は、車載装置300と他の車載装置とから送信された無線信号を検出する。無線受信部313は、無線信号を検出すると、所定期間内に無線信号を検出した検出期間の割合を示すチャネル負荷率を測定する。また、無線受信部302は、取得したパケットと、測定したチャネル負荷率とを、受信処理部321に供給する。
【0028】
処理部320は、一般的に受信手段と呼ぶことができる。
【0029】
処理部320は、他の車載装置のそれぞれから、他の車載装置の通信に関するパラメータのうちの送信電力の値(dBm)を受信する。送信電力は、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなるパラメータである。送信電力は、一般的に所定パラメータと呼ぶことができる。
【0030】
処理部320は、他の車載装置のそれぞれから、さらに、他の車載装置が測定したチャネル負荷率を受信する。
【0031】
さらに、処理部320は、他の車載装置のそれぞれから、他の車載装置の通信に関するパラメータのうち、受信感度(dBm)と、送信通信レート(Mbps:Mega bit per second)と、送信間隔(ms:millisecond)と、のそれぞれの値を受信する。受信感度と送信通信レートと送信間隔とのそれぞれは、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなるパラメータである。受信感度と送信通信レートと送信間隔とのそれぞれは、一般的に特定パラメータと呼ぶことができる。
【0032】
よって、処理部320は、他の車載装置のそれぞれから、他の車載装置の送信電力、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のそれぞれの値と、他の車載装置が測定したチャネル負荷率と、を受信する。
【0033】
本実施形態では、受信処理部321は、無線受信部313からパケットを受け付けるたびに、パケットに示される情報のうち、他の車載装置を識別する装置識別子と、チャネル負荷率を示す輻輳情報と、送信電力の値、受信感度の値、送信通信レートの値、および送信間隔の値を示すパラメータ情報と、を抽出する。
【0034】
受信処理部321は、装置識別子ごとに輻輳情報とパラメータ情報とを抽出すると、装置識別子と輻輳情報とパラメータ情報とを、制御部330に供給する。受信処理部321は、装置識別子、輻輳情報およびパラメータ情報以外のパケットに示される情報、例えば、他の車載装置の車両の位置または車種を示す車両情報を、アプリケーション部322に供給する。また、受信処理部321は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率を受け付けると、そのチャネル負荷率を、制御部330に供給する。
【0035】
制御部330は、一般的に制御手段と呼ぶことができる。
【0036】
制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が、判定閾値を超えるか否かを判断する。判定閾値は、車載装置300が通信可能な領域で輻輳が発生する可能性が高いか否かを判定するための閾値である。判定閾値は、一般的に所定閾値と呼ぶことができる。
【0037】
制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が判定閾値を超えると、処理部320にて受信された送信電力の値の平均値を算出し、車載装置(自装置)300の送信電力の値が、その平均値よりも大きいか否かを確認する。
【0038】
制御部330は、車載装置300の送信電力が、処理部320にて受信された送信電力の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信電力の値を小さくする。一方、制御部330は、車載装置300の送信電力が、処理部320にて受信された送信電力の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の送信電力の値を変更しない。
【0039】
また、制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が判定閾値を超えると、
処理部320にて受信された、受信感度の値の平均値と、送信通信レートの値の平均値と、送信間隔の値の平均値と、をそれぞれ算出する。
【0040】
制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が判定閾値を超えると、車載装置300の受信感度の値が、処理部320にて受信された受信感度の値の平均値よりも小さいか否かを確認する。
【0041】
制御部330は、車載装置300の受信感度の値が、処理部320にて受信された受信感度の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の受信感度の値を、処理部320にて受信された受信感度の値の平均値よりも大きくする。一方、制御部330は、車載装置300の受信感度の値が、処理部320にて受信された受信感度の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の受信感度の値を変更しない。
【0042】
また、制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が判定閾値を超えると、車載装置300の送信通信レートの値が、処理部320にて受信された送信通信レートの値の平均値よりも小さいか否かを確認する。
【0043】
制御部330は、車載装置300の送信通信レートの値が、処理部320にて受信された送信通信レートの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の送信通信レートの値を、処理部320にて受信された送信通信レートの値の平均値よりも大きくする。一方、制御部330は、車載装置300の送信通信レートの値が、処理部320にて受信された送信通信レートの値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信通信レートの値を変更しない。
【0044】
さらに、制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率が判定閾値を超えると、車載装置300の送信間隔の値が、処理部320にて受信された送信間隔の値の平均値よりも小さいか否かを確認する。
【0045】
制御部330は、車載装置300の送信間隔の値が、処理部320にて受信された送信間隔の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の送信間隔の値を、処理部320にて受信された送信間隔の値の平均値よりも大きくする。一方、制御部330は、車載装置300の送信間隔の値が、処理部320にて受信された送信間隔の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信間隔の値を変更しない。
【0046】
本実施形態では、制御部330は、受信処理部321から、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのパラメータ情報および輻輳情報と、を受け付ける。
【0047】
制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとの輻輳情報と、を受け付けると、輻輳情報のそれぞれが示すチャネル負荷率の平均値を算出し、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、のいずれかが、判定閾値を超えるか否かを判断する。判定閾値としては、例えば、40%を示す値が用いられる。なお、判定閾値として40%とは異なる値が用いられても良い。
【0048】
制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置のチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、判定閾値を超えない場合には、車載装置300の送信電力、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のいずれの値も変更しない。
【0049】
一方、制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置のチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが、判定閾値を超えると、送信電力、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のパラメータごとに、車載装置300のパラメータと、各パラメータ情報の示すパラメータと、を比較する。
【0050】
例えば、制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置のチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが、判定閾値を超えると、車載装置300の送信電力の値が、各パラメータ情報の示す送信電力の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信電力の値を、各パラメータ情報の示す送信電力の値の平均値よりも小さくする。
【0051】
なお、車載装置300が、自装置の送信電力の値を平均値ではなく、平均値よりも小さくするのは、他の車載装置の送信電力の初期値が同一であり、他の車載装置の送信電力の値が初期値から変更されていない状況を考慮したものである。この状況で、車載装置300の送信電力の値が平均値に設定されると、輻輳状態が解消されない場合でも、車載装置300と他の車載装置との送信電力が全て同じ値になるので、いずれの車載装置も自装置の送信電力の値を小さくしなくなる。よって、制御部330は、車載装置300の送信電力の値を平均値ではなく、平均値よりも小さくする。また、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のそれぞれのパラメータについて、車載装置300が、自装置のパラメータの値を平均値ではなく、平均値よりも大きくするのは、他の車載装置のパラメータの初期値が同一であり、他の車載装置のパラメータの値が初期値から変更されていない状況を考慮したものである。
【0052】
制御部330は、例えば、車載装置300の送信電力の値が、パラメータ情報が示す送信電力の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信電力の値を、平均値よりも所定値だけ小さくする。具体的には、制御部330は、無線送信部314の送信電力の値が、平均値よりも大きい場合には、平均値よりも僅かに小さな値を示す送信電力情報を、無線送信部314に供給する。無線送信部314は、制御部330から、送信電力情報を受け付けると、送信電力情報が示す値に送信電力を設定する。
【0053】
また、制御部330は、車載装置300の受信感度の値が、パラメータ情報が示す受信感度の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の受信感度の値を、平均値よりも所定値だけ大きくする。具体的には、制御部330は、無線受信部313の受信感度の値が、平均値よりも小さい場合には、平均値よりも僅かに大きな値を示す受信感度情報を、無線受信部313に供給する。無線受信部313は、制御部330から、受信感度情報を受け付けると、受信感度情報が示す値に受信感度を設定する。
【0054】
なお、制御部330は、車載装置300の送信電力の値が、パラメータ情報のそれぞれが示す送信電力の値の平均値と同じ場合にも、車載装置300の送信電力の値を、平均値よりも小さくするようにしてもよい。よって、車載装置300と他の車載装置との各送信電力の初期値が同一であり、各送信電力の値が初期値から変更されていない状況でも、チャネル負荷率が判定閾値を超えると、いずれかの車載装置が自装置の送信電力を小さくすることが可能となる。また、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のそれぞれのパラメータについて、制御部330は、車載装置300のパラメータの値が、パラメータ情報が示すパラメータの値の平均値と同じ場合にも、車載装置300のパラメータの値を平均値よりも大きくするようにしてもよい。
【0055】
制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、各輻輳情報の示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが判定閾値を超え、車載装置300の送信電力の値を小さくした後、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、各輻輳情報の示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが解除閾値を超えていないか否かを確認する。解除閾値は、輻輳制御を解除するための値であって、判定閾値よりも小さな閾値である。解除閾値は、一般的に特定閾値と呼ぶことができる。
【0056】
制御部330は、車載装置300の送信電力の値を小さくした後、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報のそれぞれが示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値を超えていない場合には、車載装置300の送信電力の値を大きくする。
【0057】
例えば、制御部330は、車載装置300の送信電力の値を小さくした後、無線受信部313が測定した輻輳レベルと、輻輳情報のそれぞれが示す輻輳レベルの平均値と、のいずれもが、解除閾値を超えていない場合には、車載装置300の送信電力が小さくされる直前の値(以下「基準値」と称する。)に戻す。
【0058】
なお、車載装置300の送信電力の値を基準値に戻す際、1回の変更で車載装置300の送信電力の基準値に戻すと、変更後直ぐに、輻輳状態に戻ってしまう可能性がある。よって、制御部330は、車載装置300の送信電力の値を、段階的に基準値まで大きくするようにしてもよい。
【0059】
また、車載装置300の受信感度の値を大きくした後、制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報のそれぞれが示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが解除閾値を超えていない場合には、車載装置300の受信感度の値を小さくする。例えば、制御部330は、車載装置300の受信感度の値を、段階的に受信感度の基準値まで小さくするようにしてもよい。
【0060】
制御部330は、車載装置300の送信通信レートの値を大きくした後、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報のそれぞれが示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値を超えていない場合には、車載装置300の送信通信レートの値を小さくする。例えば、制御部330は、車載装置300の送信通信レートの値を、段階的に送信通信レートの基準値まで小さくするようにしてもよい。
【0061】
制御部330は、車載装置300の送信間隔の値を大きくした後、無線受信部313が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報のそれぞれが示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値を超えていない場合には、車載装置300の送信間隔の値を小さくする。例えば、制御部330は、車載装置300の送信間隔の値を、段階的に送信間隔の基準値まで小さくするようにしてもよい。
【0062】
なお、車載装置300の受信感度、送信通信レートまたは送信間隔の値を基準値に戻す際、1回の変更で基準値に戻すと、変更後直ぐに、輻輳状態に戻ってしまう可能性がある。よって、制御部330は、車載装置300の受信感度、送信通信レートまたは送信間隔の値を、段階的に基準値まで小さくするようにしてもよい。
【0063】
また、制御部330は、無線受信部313が測定したチャネル負荷率を示す自車両輻輳情報と、車載装置300の送信電力の値、受信感度の値、送信通信レートの値、および送信間隔の値を示す自車両パラメータ情報と、を無線送信部314に供給する。
【0064】
アプリケーション部322は、受信処理部321から、輻輳情報およびパラメータ情報以外のパケットに示される情報(例えば、車両情報)を受け付ける。アプリケーション部322は、例えば、車両情報を受け付けると、所定の処理を実行する。アプリケーション部322は、所定の処理を実行して送信情報を生成する。アプリケーション部322は、送信情報を生成すると、その送信情報を送信処理部323に供給する。
【0065】
送信処理部323は、アプリケーション部322から送信情報を受け付けると、その送信情報をパケットに変換する。無線処理部323は、変換後のパケットを無線送信部314に供給する。
【0066】
無線送信部314は、自車両輻輳情報と自車両パラメータ情報とを、他の車載装置に送信する。
【0067】
本実施形態では、無線送信部314は、制御部330から自車両輻輳情報と自車両パラメータ情報とを受け付けると、車載装置300を識別する装置識別子と自車両輻輳情報と自車両パラメータ情報とをパケットのヘッダ部に格納し、装置識別子と自車両輻輳情報と自車両パラメータ情報とが格納されたパケットを、アンテナ311を介して送信する。
【0068】
例えば、無線送信部314は、送信処理部323からパケットを受け付けると、制御部330から受け付けた送信電力情報の示す値の送信電力で、装置識別子と自車両輻輳情報と自車両パラメータ情報とが格納されたパケットを出力する。
【0069】
図2は、車載装置300による輻輳制御の動作を説明するための図である。
【0070】
図2には、輻輳制御に用いられるパラメータとして、チャネル負荷率と、送信電力と、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔と、が示されている。送信電力と、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔とは、ETSI(the European Telecommunications Standards Institute)TS(Technical Specification)102 687に規定されている通信用のパラメータである。
【0071】
図2では、自車に搭載された車載装置300は、他車1〜4のそれぞれに搭載された他の車載装置の各々から、他の車載装置の輻輳情報と、他の車載装置のパラメータ情報と、を定期的に受信する。図2には、自車のパラメータの値と、他車1〜4のそれぞれのパラメータの値と、他車1〜4のパラメータの値の平均値と、が示されている。また、この例では、判定閾値が40%と定められ、解除閾値が20%と定められているものとする。
【0072】
輻輳制御開始時では、まず、自車のチャネル負荷率が10%であり、輻輳制御を行うまでには至っていない。一方、他車1〜4のチャネル負荷率の平均を採ると、平均値は40%となり、平均値が判定閾値を超える。よって、車載装置300は、輻輳制御を行う。
【0073】
輻輳制御において、車載装置300は、自装置の送信電力と、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔とのパラメータごとに、自車のパラメータの値と、他車1〜4のパラメータの値の平均値と、を比較する。
【0074】
図2では、自車の送信電力の値が他車1〜4の送信電力の値の平均値よりも大きく、自車の受信感度の値が他車1〜4の受信感度の値の平均値よりも小さい。よって、自車の送信電力20dBmと受信感度−90dBmとが、輻輳に特に寄与していると判断される。
【0075】
このため、車載装置300は、送信電力の値と受信感度の値とのそれぞれを、平均値よりも所定値だけ、輻輳が発生し難くなる方向に変更する。輻輳への寄与度については、送信電力の値が大きくなるほど、輻輳への寄与度が大きくなる。一方、受信感度、送信通信レートまたは送信間隔の値が小さくなるほど、輻輳への寄与度が大きくなる。
【0076】
よって、車載装置300は、送信電力の値を、平均値14dBmよりも僅かに小さな値13dBmに、受信感度の値を、平均値−78.75dBmよりも僅かに大きな値−78.00dBmに設定する。
【0077】
輻輳制御解除時では、自車のチャネル負荷率が15%であり、他車1〜4のチャネル負荷率の平均が17.5%であり、自車のチャネル負荷率と平均値とのいずれもが解除閾値を超えていない。よって、車載装置300は、輻輳制御の解除処理を行う。
【0078】
輻輳制御の解除処理において、車載装置300は、自装置の送信電力と受信感度とのそれぞれの値を、輻輳制御の開始直前の基準値に戻す。
【0079】
図3は、車載装置300による輻輳制御が必要な状況を示す図である。
【0080】
図3には、複数の車載装置300を有する通信システム100と、輻輳制御を行う必要がある混雑エリアとが、示されている。
【0081】
図3に示すように、車載装置300の搭載された車が混雑エリアに入ってくると、車車間通信に用いられる無線帯域が輻輳し、車車間通信ができなくなる恐れがある。混雑エリアに入ってきた車の車載装置(以下「混雑エリア内の車載装置」と称する。)300は、混雑エリア内の他の車載装置のそれぞれから、輻輳情報とパラメータ情報とを受信し、車載装置300が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報が示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが判定閾値を超えるか否かを判断する。
【0082】
混雑エリア内の車載装置300は、車載装置300が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報が示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが、判定閾値を超えると、送信電力、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のパラメータごとに、自装置のパラメータの値と、他の車載装置のパラメータの値の平均値と、を比較する。
【0083】
混雑エリア内の車載装置300は、自装置の送信電力の値が、他の車載装置の送信電力の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信電力の値を、他の車載装置の送信電力の値の平均値よりも小さくする。送信電力の値を小さくすると、送信した無線信号が到達する送信領域が狭くなるので、通信可能な車の台数が減り、輻輳が軽減される。
【0084】
混雑エリア内の車載装置300は、自装置の受信感度の値が、他の車載装置の受信感度の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の受信感度の値を、他の車載装置の受信感度の値の平均値よりも大きくする。受信感度の値を大きくすると、無線信号の受信可能な受信領域が狭くなるので、通信可能な車の台数が減り、輻輳が軽減される。
【0085】
混雑エリア内の車載装置300は、自装置の送信通信レートの値が、他の車載装置の送信通信レートの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の送信通信レートの値を、他の車載装置の送信通信レートの値の平均値よりも大きくする。送信通信レートの値を大きくすると、1ビットあたりの無線信号の送信電力が小さくなるので、通信可能な車の台数が減り、輻輳が軽減される。
【0086】
混雑エリア内の車載装置300は、自装置の送信間隔の値が、他の車載装置の送信間隔の値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の送信間隔の値を、他の車載装置の送信間隔の値の平均値よりも大きくする。送信間隔の値を大きくすると、単位時間あたりのパケットが占める時間が短くなるので、輻輳が緩和される。
【0087】
混雑エリア内の車載装置300は、自装置の送信電力の値を小さくした後、または、自装置の受信感度、送信通信レートまたは送信間隔の値を大きくした後に、混雑エリアを出る。その後、混雑エリア外の車載装置300は、混雑エリア外の他の車載装置のそれぞれから、輻輳情報とパラメータ情報とを受信すると、自装置が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報が示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが解除閾値を超えていないか否かを判断する。
【0088】
混雑エリア外の車載装置300は、例えば、自装置の送信電力の値を小さくした後、車載装置300が測定したチャネル負荷率と、輻輳情報が示すチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値を超えていなければ、自装置の送信電力の値を、送信電力の値が小さくされる直前の基準値に戻す。
【0089】
よって、複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と、所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置と、を有する通信システム100は、所定車載装置のそれぞれは、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を車載装置に送信し、車載装置は、無線信号を検出して輻輳レベルを測定する無線部と、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の所定パラメータの値を受信する処理部と、無線部が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の所定パラメータの値が、処理部にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、自装置の所定パラメータの値を小さくする制御部と、を含む。
【0090】
図4は、車載装置300の輻輳制御方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、無線部310が無線信号を検出してチャネル負荷率を測定し、処理部320が、他の車載装置ごとに、チャネル負荷率とパラメータ情報とを受信すると、制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが、判定閾値を超えたか否かを判断する(ステップS201)。
【0092】
制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれかが、判定閾値を超えると、車載装置300の送信電力の値、受信感度の値、送信通信レートの値、および送信間隔の値が、それぞれ、輻輳に大きく寄与しているか否かを確認する(ステップS202)。本実施形態では、制御部330は、車載装置300の送信電力の値が、他の車載装置の送信電力の値の平均値よりも大きいか否かを確認する。さらに、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のそれぞれのパラメータについて、制御部330は、車載装置300のパラメータの値が、他の車載装置のパラメータの値の平均値よりも大きいか否かを確認する。
【0093】
制御部330は、車載装置300の通信に関するパラメータのうち、輻輳に特に寄与しているパラメータがある場合には、そのパラメータの値を、輻輳を緩和する方向に変更する(ステップS203)。本実施形態では、制御部330は、車載装置300の送信電力の値が、他の車載装置の送信電力の値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の送信電力の値を、平均値よりも小さくする。また、受信感度、送信通信レートおよび送信間隔のそれぞれのパラメータについて、制御部330は、車載装置300のパラメータの値が、他の車載装置のパラメータの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300のパラメータの値を、平均値よりも大きくする。
【0094】
制御部330は、輻輳を緩和する方向にパラメータの値を変更すると、車載装置300のパラメータの値を変更してから一定期間経過するまで待機し(ステップS204)、一定期間経過すると、ステップS201に戻る。
【0095】
一方、制御部330は、車載装置300の通信に関するパラメータのうち、輻輳に寄与しているパラメータがない場合には、車載装置300の通信に関するパラメータの値を変更することなく、一定期間経過後にステップS201に戻る(ステップS204)。
【0096】
また、ステップS201の処理で、制御部330は、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、判定閾値を超えない場合には、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値未満であるか否かを判断する(ステップS205)。
【0097】
なお、ステップS201では、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、の「一方」が、判定閾値を超えることを条件とし、ステップS205では、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、の「双方」が、解除閾値を超えていないことを条件としている。これにより、輻輳制御により輻輳を緩和する方向にパラメータの値を変更してから、輻輳制御を解除するまでの期間を極力長くすることが可能となり、チャネル負荷率の変動が抑制し易くなる。
【0098】
制御部330は、輻輳を緩和する方向にパラメータの値を変更した後、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値未満である場合には、変更したパラメータの値を、変更する直前の基準値に戻す(ステップS206)。例えば、制御部330は、車載装置300の送信電力の値を小さくした後、無線部310が測定したチャネル負荷率と、他の車載装置ごとのチャネル負荷率の平均値と、のいずれもが、解除閾値未満である場合には、車載装置300の送信電力の値を基準値に戻す。
【0099】
車載装置300では、輻輳制御方法が終了するまで、ステップS201ないしS206の一連の処理手順が繰り返される。
【0100】
本実施形態によれば、無線部310が、無線信号を検出して輻輳レベルを測定し、処理部320が、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータ(例えば、送信電力)の値を受信する。そして、制御部330は、無線部310が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、車載装置300の所定パラメータの値が、処理部320にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、車載装置300の所定パラメータの値を小さくする。
【0101】
よって、車載装置300は、輻輳が発生する可能性が高くなると、車載装置300の所定パラメータの値が、他の車載装置の所定パラメータの平均値よりも大きい場合には、車載装置300の所定パラメータが輻輳の発生に大きく寄与していると判断し、車載装置300の所定パラメータの値を、他の車載装置の所定パラメータの値の平均値に近づける。一方、車載装置300は、輻輳が発生する可能性が高くなっても、車載装置300の所定パラメータの値が、他の車載装置の所定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の所定パラメータが輻輳にそれほど寄与していないと判断し、車載装置300の所定パラメータの値を変更しない。
【0102】
したがって、車載装置300は、輻輳を回避するのに、周辺の車両と比較して輻輳に大きく寄与している場合には自装置の所定パラメータの値を小さくし、周辺の車両と比較して輻輳にそれほど寄与していない場合には自装置の所定パラメータの値を変更しない。このため、輻輳を回避するのに、複数の車載装置300のうち、輻輳への寄与度が大きい所定パラメータの車載装置300から、自装置の所定パラメータの値を小さくしていくことになる。
【0103】
よって、本実施形態によれば、車載装置300は、車両同士の通信用のパラメータの値の差を低減しつつ輻輳を回避することが可能となる。このため、輻輳が発生する可能性のある領域に存在する車両同士の通信用のパラメータの値をバランス良く下げて、輻輳の発生を回避することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、制御部330が、車載装置300の所定パラメータの値が、平均値よりも大きい場合には、車載装置300の所定パラメータの値を、平均値よりも小さくする。
【0105】
よって、車載装置300は、周辺に存在する複数の他の車載装置の所定パラメータの値の平均値を基準に、自装置の所定パラメータの値を小さくするため、全体としてバランス良く各車両の所定パラメータの値を小さくすることが可能となる。
【0106】
また、車載装置300が、自装置の所定パラメータの値を、平均値ではなく、平均値よりも小さくするのは、他の車載装置の所定パラメータの初期値が同一であり、各所定パラメータの値が初期値から変更されていない状況を考慮したものである。例えば、輻輳レベルが所定閾値を超え、車載装置300の所定パラメータが、平均値に設定されたときに、輻輳状態が解消されない状況では、車載装置300と他の車載装置との所定パラメータが全て同じ値になるので、各車載装置は、さらに所定パラメータの値を小さくすることができなくなる。よって、車載装置300は、自装置の所定パラメータの値を、平均値よりも小さくすることにより、上述の問題を解消することが可能となる。
【0107】
また、本実施形態では、処理部320が、所定車載装置のそれぞれから、さらに、所定車載装置が測定した輻輳レベルを受信する。処理部320が輻輳レベルを受信すると、制御部330は、無線部310が測定した輻輳レベルと、処理部320にて受信された輻輳レベルの平均値と、のいずれかが、所定閾値を超える場合には、自装置の所定パラメータの値を小さくする。
【0108】
車載装置300は、他の車載装置のそれぞれから輻輳レベルを受信すると、その輻輳レベルの送信元の車載装置の通信領域内に、車載装置300自身が存在していると判断する。よって、車載装置300は、処理部320にて受信された輻輳レベルの平均値が所定閾値を超えるか否かを判断して、送信元の車載装置の通信領域内での輻輳に寄与しているか否かを判断することができる。
【0109】
このため、車載装置300は、送信元の車載装置の通信領域内の輻輳に寄与している場合に、自装置の所定パラメータの値が、他の車載装置の所定パラメータの平均値よりも大きいときは、車載装置300の所定パラメータの値を小さくして、送信元の車載装置の通信領域内の輻輳を緩和することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態によれば、処理部320が、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータ(例えば、受信感度、送信通信レート、送信間隔)の値を受信する。そして、制御部330は、無線部310が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、車載装置300の特定パラメータの値が、処理部320にて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の特定パラメータの値を大きくする。
【0111】
よって、車載装置300は、輻輳が発生する可能性が高くなると、車載装置300の特定パラメータの値が、他の車載装置の特定パラメータの平均値よりも小さい場合には、車載装置300の特定パラメータが輻輳の発生に大きく寄与していると判断し、車載装置300の特定パラメータの値を、他の車載装置の特定パラメータの値の平均値に近づける。一方、車載装置300は、輻輳が発生する可能性が高くなっても、車載装置300の特定パラメータの値が、他の車載装置の特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には、車載装置300の特定パラメータが輻輳にそれほど寄与していないと判断し、車載装置300の特定パラメータの値を変更しない。
【0112】
したがって、車載装置300は、輻輳を回避するのに、周辺の車両と比較して輻輳に大きく寄与している場合には自装置の特定パラメータの値を大きくし、周辺の車両と比較して輻輳にそれほど寄与していない場合には自装置の特定パラメータの値を変更しない。このため、輻輳を回避するのに、複数の車載装置300のうち、輻輳への寄与度が大きい特定パラメータの車載装置300から、自装置の特定パラメータの値を小さくしていくことになる。
【0113】
よって、本実施形態によれば、車載装置300は、車両同士の通信用のパラメータの差を低減しつつ輻輳を回避することが可能となる。
【0114】
また、本実施形態では、制御部330が、車載装置300の特定パラメータの値が、平均値よりも小さい場合には、車載装置300の特定パラメータの値を、平均値よりも大きくする。
【0115】
よって、車載装置300は、周辺に存在する複数の他の車載装置の特定パラメータの値の平均値を基準に、自装置の特定パラメータの値を大きくするため、全体としてバランス良く各車両の特定パラメータの値を大きくすることが可能となる。
【0116】
また、車載装置300が、自装置の特定パラメータの値を、平均値ではなく、平均値よりも大きくするのは、他の車載装置の特定パラメータの初期値が同一であり、各特定パラメータの値が初期値から変更されていない状況を考慮したものである。例えば、輻輳レベルが所定閾値を超え、車載装置300の特定パラメータの値が平均値に設定されたときに、輻輳状態が解消されない状況では、車載装置300と他の車載装置との特定パラメータが全て同じ値になるので、各車載装置は、さらに特定パラメータの値を大きくすることができなくなる。よって、車載装置300は、自装置の特定パラメータの値を、平均値よりも大きくすることにより、上述の問題を解消することが可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、処理部320が、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、特定パラメータの値と、所定パラメータの値と、を受信する。制御部330は、無線部310が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の所定パラメータの値が、処理部320にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には自装置の前記所定パラメータの値を小さくする。さらに、制御部330は、無線部310が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の特定パラメータの値が、処理部320にて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には自装置の特定パラメータの値を大きくする。
【0118】
このため、車載装置100は、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータと、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータと、の両者を使用して輻輳を回避することが可能となる。
【0119】
また、本実施形態では、所定パラメータとして、送信電力が使用され、特定パラメータとして、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔と、のうち少なくとも1つが使用される。
【0120】
よって、車載装置300は、例えば、送信電力の値を小さくすると、自装置が送信した無線信号の到達領域が狭くなり、通信可能な他の車載装置の台数が減るので、輻輳を軽減することが可能となる。
【0121】
また、車載装置300は、例えば、受信感度の値を大きくすると、他の車載装置から送信された無線信号の受信可能な領域が狭くなり、通信可能な他の車載装置の台数が減るので、輻輳を軽減することが可能となる。また、車載装置300は、例えば、送信通信レートの値を大きくすると、送信先の車載装置では、車載装置300が送信した無線信号を受信するのに最低限必要な電力が高くなるので、通信可能な他の車載装置の台数が減り、輻輳を緩和することが可能となる。また、車載装置300は、例えば、送信間隔の値を大きくすると、単位時間あたりのパケットが占める時間が短くなるので、輻輳を緩和することが可能となる。
【0122】
なお、本実施形態では、車載装置300の通信に関するパラメータのうち、送信電力と、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔と、が使用される例について説明したが、送信電力と、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔と、のうちの少なくともいずれか1つが使用されるようにしてもよい。
【0123】
(付記1)複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と、所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置と、を有する通信システムであって、所定車載装置のそれぞれは、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を車載装置に送信し、車載装置は、無線信号を検出して輻輳レベルを測定する無線部と、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の所定パラメータの値を受信する処理部と、無線部が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の所定パラメータの値が、処理部にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、自装置の所定パラメータの値を小さくする制御部と、を含む、通信システム。
【0124】
(付記2)複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と、所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置と、を有する通信システムの輻輳制御方法であって、所定車載装置のそれぞれが、所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を車載装置に送信するステップと、車載装置が、無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定ステップと、車載装置が、所定車載装置のそれぞれから、所定車載装置の所定パラメータの値を受信する受信ステップと、測定ステップにて測定された輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の所定パラメータの値が、受信ステップにて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、自装置の所定パラメータの値を小さくする制御ステップと、を含む輻輳制御方法。
【0125】
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0126】
100 通信システム
300 車載装置
310 無線部
311 アンテナ
312 スイッチ
313 無線受信部
314 無線送信部
320 処理部
321 受信処理部
322 アプリケーション部
323 送信処理部
330 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置であって、
前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定手段と、
前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信する受信手段と、
前記測定手段が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記所定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には自装置の前記所定パラメータの値を小さくする制御手段と、を含む車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記制御手段は、前記自装置の所定パラメータの値が前記平均値よりも大きい場合には、前記自装置の所定パラメータの値を前記平均値よりも小さくする、車載装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載装置において、
前記受信手段は、前記所定車載装置のそれぞれから、さらに該所定車載装置が測定した輻輳レベルを受信し、
前記制御手段は、前記受信手段が前記所定パラメータの値と前記輻輳レベルとを受信すると、前記測定手段が測定した輻輳レベルと、前記受信手段が受信した輻輳レベルの平均値と、のいずれかが前記所定閾値を超えるか否かを判断し、前記いずれかが前記所定閾値を超えると、前記自装置の所定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には、前記自装置の所定パラメータの値を小さくする、車載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載装置において、
前記制御手段は、前記自装置の所定パラメータの値を小さくした後、前記測定手段が測定した輻輳レベルと、前記受信手段が受信した輻輳レベルの平均値と、のいずれもが、前記所定閾値よりも小さな特定閾値を超えない場合には、前記自装置の所定パラメータの値を大きくする、車載装置。
【請求項5】
複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置であって、
前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定手段と、
前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータの値を受信する受信手段と、
前記測定手段が測定した輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記特定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には自装置の前記所定パラメータの値を大きくする制御手段と、を含む車載装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載装置において、
前記制御手段は、前記自装置の特定パラメータの値が前記平均値よりも小さい場合には、前記自装置の特定パラメータの値を前記平均値よりも大きくする、車載装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車載装置において、
前記受信手段は、さらに、前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信し、
前記制御手段は、さらに、前記測定手段が測定した輻輳レベルが前記所定閾値を超えると、自装置の前記所定パラメータの値が、前記受信手段にて受信された所定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には、自装置の前記所定パラメータの値を大きくする、車載装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車載装置において、
前記特定パラメータとしては、受信感度と、送信通信レートと、送信間隔と、のうち少なくとも1つが使用され、
前記所定パラメータとしては、送信電力が使用される、車載装置。
【請求項9】
複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置の輻輳制御方法であって、
前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定ステップと、
前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が大きくなる所定パラメータの値を受信する受信ステップと、
前記測定ステップにて測定された輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記所定パラメータの値が、前記受信ステップにて受信された所定パラメータの値の平均値よりも大きい場合には自装置の前記所定パラメータの値を小さくする制御ステップと、を含む輻輳制御方法。
【請求項10】
複数の車両のそれぞれに搭載される所定車載装置と無線信号により通信を行う車載装置の輻輳制御方法であって、
前記無線信号を検出して輻輳レベルを測定する測定ステップと、
前記所定車載装置のそれぞれから、該所定車載装置の通信に関するパラメータのうち、パラメータの値が大きいほど輻輳への寄与度が小さくなる特定パラメータの値を受信する受信ステップと、
前記測定ステップにて測定された輻輳レベルが所定閾値を超えると、自装置の前記特定パラメータの値が、前記受信ステップにて受信された特定パラメータの値の平均値よりも小さい場合には自装置の前記所定パラメータの値を大きくする制御ステップと、を含む輻輳制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−70324(P2012−70324A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215333(P2010−215333)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】