説明

車載電源装置

【課題】コスト及び重量を従来より低減することが可能で且つ補機類の補修を簡便に行い得る車載電源装置を提供する。
【解決手段】車両のシャシフレーム2に沿わせて棚部11を架装せしめ、該棚部11の上面にバッテリを搭載すると共に、前記棚部11の下面に取り付けたブラケット12a〜12fによりインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13等の補機類を吊り下げ固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に用いられる車載電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル−電気ハイブリッドエンジンの開発が進められているが、この種のディーゼル−電気ハイブリッドエンジンは、ディーゼルエンジンのフライホイールハウジング内に超薄型の三相交流機を内蔵させ、エンジンの起動時には三相交流機をスタータとして作動させ、車両の発進加速時には三相交流機をトルクアシスト用モータとして作動させ、車両の制動時には三相交流機を電気ブレーキとして作動させることによって、三相交流機にディーゼルエンジンの補佐をさせ、ディーゼルエンジンの負担を軽減して、燃費の向上を図り且つディーゼルエンジンによる大気汚染物質の排出量を低減させるようにしたものである。
【0003】
このようなディーゼル−電気ハイブリッドエンジンを搭載したハイブリッド自動車においては、モータ駆動用のバッテリ(ニッケル水素電池)と、インバータ,電子制御ボックス,ラジエータ,その他の補機類とを搭載する必要があるが、特にハイブリッド自動車がキャブオーバトラック等である場合には、バッテリや補機類をキャブ側に搭載することがスペース的に困難であるため、バッテリや補機類をまとめて収容した車載電源装置をシャシフレームに沿わせて架装させるようにしている。
【0004】
図6に示す如く、従来における車載電源装置は、バッテリを上載するための上段棚部1をシャシフレーム2に対しブラケット3を介して架装すると共に、前記上段棚部1の下に補機類を上載するための下段棚部4を取り付けた構造となっており、この下段棚部4の詳細な構造は、図7に示す如く、底板5を備えた下部フレーム枠6と、内側を開放した上部フレーム枠7とを補強柱部材8により連結して強固な剛性を持たせた骨組構造となっていて、下部フレーム枠6と上部フレーム枠7との間にインバータ9や電子制御ボックス10等といった補機類を収容するようになっている。
【0005】
ここで、上段棚部1には、バッテリの上載後に図示しないアッパーカバーが装着されてバッテリが被覆されるようになっており、また、下段棚部4には、下部フレーム枠6と上部フレーム枠7との間の隙間を塞ぐ図示しないサイドカバーが装着されて補機類が被覆されるようになっている。
【0006】
尚、この種の車載電源装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−80930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如き従来の車載電源装置においては、特に下段棚部4が、下部フレーム枠6、上部フレーム枠7、補強柱部材8といった強度部品を組み付けて成るビルドアップ品となっており、更には、下部フレーム枠6や上部フレーム枠7自体も複数のフレーム部材から成るビルドアップ品となっていたため、部品点数が多く必要となってコストや重量の増加を招くという問題があった。
【0009】
また、下段棚部4全体の剛性が高く、走行振動等により下段棚部4全体がうねるように変形するため、インバータ9等の一部の補機類にねじれ荷重による破損が生じないようラバーマウントによるフローティング構造を適用しなければならず、このフローティング構造の適用によってもコストが増加していた。
【0010】
更に、下段棚部4の補機類を補修するのに、上段棚部1ごと全体をシャシフレーム2から取り外さなければならない上に、上段棚部1からバッテリを取り外して下段棚部4の補強柱部材8等の取り付け用ボルトを露出させないと、下段棚部4の上から上段棚部1を取り外す作業が行えないため、下段棚部4の補機類の補修に取り掛かるまでに多大な手間を要するという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、コスト及び重量を従来より低減することが可能で且つ補機類の補修を簡便に行い得る車載電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、車両のシャシフレームに沿わせて棚部を架装せしめ、該棚部の上面にバッテリを搭載すると共に、前記棚部の下面に取り付けたブラケットにより補機類を吊り下げ固定したことを特徴とする車載電源装置、に係るものである。
【0013】
而して、このようにすれば、棚部の下面に取り付けたブラケットにより補機類を吊り下げ固定したことにより、従来の如き下部フレーム枠、上部フレーム枠、補強柱部材といった強度部品を組み付けて成る剛性の高い下段棚部が不要となり、補機類を支持するのに適当な数のブラケットがあれば済むので、部品点数が大幅に削減されてコストや重量が従来より著しく低減されることになる。
【0014】
しかも、補機類をブラケットを介し棚部の下面に吊り下げ固定するようにしているので、各ブラケットが個別に撓ることで走行振動等が無理なく吸収され、補機類にねじれ荷重が作用することが回避されて補機類の破損が防止される。この結果、インバータ等の一部の補機類に対しラバーマウントによるフローティング構造を適用する必要がなくなり、その適用に要していたコスト分を更に低減することが可能となる。
【0015】
また、棚部を車両のシャシフレームに架装させた状態のまま、棚部のバッテリを取り外すことなく、補機類を棚部の下方から取り外して補修することが可能となるため、従来の如き補機類の補修に取り掛かるまでに多大な手間を要するといった事態が起こらなくなり、補機類の補修を従来より簡便に行うことが可能となる。
【0016】
更に、本発明においては、補機類を被覆し得るよう棚部の下方にロアカバーを着脱可能に装着することが好ましく、このようにすれば、通常時に補機類をロアカバーで保護しつつ必要時にロアカバーを取り外して補機類の補修を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、棚部の下面に対しブラケットを着脱可能に取り付けることが好ましく、このようにすれば、補機類をブラケットごと棚部の下面から取り外すことが可能となり、しかも、その際にジャッキ等で前記ブラケットを介して支えることも可能となるため、補機類を損傷する虞れなく補修作業を行うことが可能となる。
【0018】
更に、本発明においては、ブラケットの下部にロアカバーを着脱するための取付部を設けることが好ましく、このようにすれば、ブラケットを利用してロアカバーの一部を支えることが可能となり、該ロアカバーをブラケットにより補強することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記した本発明の車載電源装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0020】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、部品点数を大幅に削減してコスト及び重量を従来より著しく低減することができ、しかも、棚部を車両のシャシフレームに架装させた状態のまま、棚部のバッテリを取り外すことなく、補機類を棚部の下方から取り外して補修することができるので、補機類の補修を従来より簡便に行うことができる。
【0021】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、補機類を被覆し得るよう棚部の下方にロアカバーを着脱可能に装着しているので、通常時に補機類をロアカバーで保護しつつ必要時にロアカバーを取り外して補機類の補修を行うことができる。
【0022】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、棚部の下面に対しブラケットを着脱可能に取り付けているので、補機類をブラケットごと棚部の下面から取り外すことができ、しかも、その際にジャッキ等で前記ブラケットを介して支えることで補機類を損傷させないように補修作業を行うことができる。
【0023】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、ブラケットの下部にロアカバーを着脱するための取付部を設けているので、ブラケットを利用してロアカバーの一部を支えることができ、該ロアカバーをブラケットにより補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の各ブラケットによる補機類の具体的な支持状態を示す斜視図である。
【図3】図1の棚部の単品図である。
【図4】図1の車載電源装置の模式的に表わした断面図である。
【図5】図1の車載電源装置の最終的な架装状態を示す斜視図である。
【図6】従来の車載電源装置の一例を示す斜視図である。
【図7】図6の下段棚部の詳細な構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1〜図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図6及び図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0027】
図1に示す如く、本形態例の車載電源装置においては、前述した図6及び図7における従来の車載電源装置のような上段棚部と下段棚部とによる上下二段の構造を廃止し、車両のシャシフレーム2に沿わせて一段の棚部11をブラケット3を介して架装せしめ、前記棚部11の下面に取り付けたブラケット12a〜12fによりインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13等の補機類を吊り下げ固定するようにしている。
【0028】
また、前記棚部11の下方には、前記インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13等の補機類を被覆するロアカバー14を着脱可能に装着できるようになっており、より具体的には、前記補機類を吊り下げ固定している各ブラケット12a〜12fの下部を取付部として、前記ロアカバー14の底面を図示しないボルトやリテーナにより固定(図4の固定部ア,イを参照)すると共に、前記棚部11の車幅方向外側面と前記ロアカバー14の車幅方向外側面上部とを重ね合わせて図示しないクリップにより固定し、更には、前記ロアカバー14の車両前後方向の両側面上端部と前記棚部11のブラケット3下面とをリテーナ等により固定することができるようになっている。
【0029】
図2は各ブラケット12a〜12fによるインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の具体的な支持状態を示すもので、インバータ9を三つのブラケット12a,12b,12cで吊り下げ固定すると共に、電子制御ボックス10を三つのブラケット12d,12e,12fで吊り下げ固定し、ラジエータ13をインバータ9及び電子制御ボックス10の相互間に挟み、前述したブラケット12a〜12fのうちの一部のブラケット12b,12eを流用して吊り下げ固定するようにしてある。尚、ここに図示している例では、一部のブラケット12c,12fに開けた孔を利用してワイヤーハーネス15を固縛するクリップ16を留められるようにもなっている。
【0030】
更に、図3に棚部11を単品図で示しているように、この棚部11の上面には、シャシフレーム2と平行に延びる一対のロンジ部材17が締結固定(図4の締結部ウ,エ,オ,カを参照)されており、図4に断面図で示す如く、前記各ロンジ部材17上にバッテリ18が締結固定(図4の締結部キ,クを参照)されてアッパーカバー19により被覆されていると共に、前記各ブラケット12a〜12f(図4中には代表してブラケット12b,12cのみを図示)の上部が前記各ロンジ部材17の棚部11の上面に対する締結箇所で共締め(図4の締結部エ,オを参照)等されており、前記各ロンジ部材17により補強された部位で前記各ブラケット12a〜12fが支えられるようになっている。尚、前記各ブラケット12a〜12fに対しインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13(図4中には代表してインバータ9のみを図示)等の補機類はボルト等で締結固定(図4の締結部ケ,コを参照)されている。
【0031】
ここで、前記各ブラケット12a〜12fの上部の締結作業は、下方から行えるようになっていて、その組み付け後においても、棚部11の下面に対し各ブラケット12a〜12fの上部を任意に着脱できるようになっている。この際、前記各ブラケット12a〜12fの上部の締結部(図4の締結部エ,オを参照)は、インバータ9等の補機類がオフセットされて締結作業の邪魔にならないような配置にしておくことが望ましい。このように棚部11の下面に対する各ブラケット12a〜12fの取り付けを一方向から(図示例では下方から)行えるようにしておけば作業性が良好であり、自動組み付けで作業を行うことも容易である。
【0032】
図5は車載電源装置の最終的な架装状態を示すもので、このように棚部11の上面に搭載されるバッテリ18(図4参照)はアッパーカバー19により被覆され、棚部11の下面に吊り下げ固定されるインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13等の補機類(図1参照)はロアカバー14により被覆されることになる。尚、このロアカバー14は、合成樹脂等の軽量素材により構成することが可能である。
【0033】
而して、このようにすれば、棚部11の下面に取り付けたブラケット12a〜12fによりインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を吊り下げ固定したことにより、従来の如き下部フレーム枠、上部フレーム枠、補強柱部材といった強度部品を組み付けて成る剛性の高い下段棚部が不要となり、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を支持するのに適当な数のブラケット12a〜12fがあれば済むので、部品点数が大幅に削減されてコストや重量が従来より著しく低減されることになる。
【0034】
しかも、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13をブラケット12a〜12fを介し棚部11の下面に吊り下げ固定するようにしているので、各ブラケット12a〜12fが個別に撓ることで走行振動等が無理なく吸収され、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13にねじれ荷重が作用することが回避されてインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の破損が防止される。この結果、インバータ9等の補機類に対しラバーマウントによるフローティング構造を適用する必要がなくなり、その適用に要していたコスト分を更に低減することが可能となる。
【0035】
また、棚部11を車両のシャシフレーム2に架装させた状態のまま、ロアカバー14を取り外せば、棚部11のバッテリ18を取り外すことなく、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を棚部11の下方から取り外して補修することが可能となるため、従来の如きインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の補修に取り掛かるまでに多大な手間を要するといった事態が起こらなくなり、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の補修を従来より簡便に行うことが可能となる。
【0036】
従って、上記形態例によれば、部品点数を大幅に削減してコスト及び重量を従来より著しく低減することができ、しかも、棚部11を車両のシャシフレーム2に架装させた状態のまま、棚部11のバッテリ18を取り外すことなく、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を棚部11の下方から取り外して補修することができるので、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の補修を従来より簡便に行うことができる。
【0037】
また、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を被覆し得るよう棚部11の下方にロアカバー14を着脱可能に装着しているので、通常時にインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13をロアカバー14で保護しつつ必要時にロアカバー14を取り外してインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13の補修を行うことができる。
【0038】
更に、棚部11の下面に対しブラケット12a〜12fを着脱可能に取り付けているので、インバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13をブラケット12a〜12fごと棚部11の下面から取り外すことができ、しかも、その際にジャッキ等で前記ブラケット12a〜12fを介して支えることでインバータ9,電子制御ボックス10,ラジエータ13を損傷させないように補修作業を行うことができる。
【0039】
また、ブラケット12a〜12fの下部にロアカバー14を着脱するための取付部を設けているので、ブラケット12a〜12fを利用してロアカバー14の一部を支えることができ、該ロアカバー14をブラケット12a〜12fにより補強することができる。
【0040】
尚、本発明の車載電源装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、補機類はインバータ,電子制御ボックス,ラジエータに限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
2 シャシフレーム
9 インバータ(補機類)
10 電子制御ボックス(補機類)
11 棚部
12a〜12f ブラケット
13 ラジエータ(補機類)
14 ロアカバー
18 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシャシフレームに沿わせて棚部を架装せしめ、該棚部の上面にバッテリを搭載すると共に、前記棚部の下面に取り付けたブラケットにより補機類を吊り下げ固定したことを特徴とする車載電源装置。
【請求項2】
補機類を被覆し得るよう棚部の下方にロアカバーを着脱可能に装着したことを特徴とする請求項1に記載の車載電源装置。
【請求項3】
棚部の下面に対しブラケットを着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載電源装置。
【請求項4】
ブラケットの下部にロアカバーを着脱するための取付部を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の車載電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81830(P2012−81830A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228413(P2010−228413)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】