説明

車輌用灯具及び車輌用灯具の光軸調整装置

【課題】 照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して、且つ、同時に行うことができるようにすると共に、コストダウンと小型化を図ることを課題とする。
【解決手段】凹所を有するランプボディ110と該ランプボディの開口部を覆う透明カバー120とで形成される灯室101内に一つの支点で支持されたランプユニット130を上下及び左右に傾動させる車輌用灯具の光軸調整装置140であって、ケース141と、前記ケースに対して前後方向に移動可能に設けられたスライダ144と、前記スライダに回転自在に支持されると共に前記ランプユニットに連結される出力部142と、前記スライダを前後方向に移動させる上下調整手段と、前記出力部を回転させる左右調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な車輌用灯具及び車輌用灯具の光軸調整装置に関する。詳しくは、照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して行うことができるようにすると共に、コストダウンと小型化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具、例えば、自動車用前照灯において、照射方向を上下及び左右の任意の方向に変更できるものがある。
【0003】
特許文献1に示されたものは、ランプユニットをブラケットに支持し、該ブラケットを左右及び上下に傾動させるものである。すなわち、左右傾動アクチュエータを駆動することによって、ブラケットを左右に傾動させ、また、上下駆動アクチュエータを駆動することによって、ブラケットを上下に傾動させるようになっている。
【0004】
特許文献2に示された車輌用灯具にあっては、左右方向への回動と上下方向への回動とが一つのアクチュエータによって為される。
【0005】
特許文献3に示された車輌用灯具にあっても、左右方向への回動と上下方向への回動とが一つのアクチュエータによって為される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−119463号公報
【特許文献2】特開2005−186731号公報
【特許文献3】特開2003−54310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に示された車輌用灯具にあっては、ブラケットを左右に傾動させる左右傾動アクチュエータと、上下に傾動させる上下傾動アクチュエータとが別個に設けられており、部品点数及び組付工数が多く、また、各アクチュエータへの給電や制御用のハーネスの数も多く必要となり、コスト増の原因となる。また、左右の灯具に関してアクチュエータを共通化することができず、この点でもコスト増の原因となる。
【0008】
前記特許文献2に示された車輌用灯具にあっては、アクチュエータの左右傾動のためのブラケットへの連結点と上下傾動のためのブラケットへの連結点とが離れており、且つ、互いの位置関係が固定されているため、汎用性がなく、当該アクチュエータ専用に設計されたブラケットが必要となり、また、左右の灯具に関してそれぞれ専用のアクチュエータが必要となる。
【0009】
前記特許文献3に示された車輌用灯具にあっては、アクチュエータの出力部が一つになっており、左右の灯具に共通のアクチュエータを使用することができるが、左右方向への傾動と上下方向への傾動とを同時に、且つ、独立に行うことができない。
【0010】
本発明は、上記した問題点に鑑みて為されたものであり、照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して、且つ、同時に行うことができるようにすると共に、コストダウンと小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明車輌用灯具の光軸調整装置は、凹所を有するランプボディと該ランプボディの開口部を覆う透明カバーとで形成される灯室内に一つの支点で支持されたランプユニットを上下及び左右に傾動させるものであって、ケースと、前記ケースに対して前後方向に移動可能に設けられたスライダと、前記スライダに回転自在に支持されると共に前記ランプユニットに連結される出力部と、前記スライダを前後方向に移動させる上下調整手段と、前記出力部を回転させる左右調整手段とを備えたものである。
【0012】
また、本発明車輌用灯具は、光源を備え該光源の光を前方へ向かって照射するランプユニットの上端部又は下端部の一方をほぼ前方に向かって開口した凹所を有するランプボディと該ランプボディの前面開口を覆う透明カバーとにより形成される灯室内にて一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持し、前記ランプユニットの上端部又は下端部の他方と出力部が連結した本発明に係る車輌用灯具の光軸調整装置を前記灯室内に備えるものである。
【0013】
従って、本発明にあっては、、照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して、且つ、同時に行うことができる。また、ランプユニットは灯室内で一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持されるので、ランプユニットの支持のための部品点数が削減され、コストダウンが可能になると共に小型化も可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明車輌用灯具の光軸調整装置は、ランプボディと該ランプボディの開口部を覆う透明カバーとで形成される灯室内に一つの支点で支持されたランプユニットを上下及び左右に傾動させる車輌用灯具の光軸調整装置であって、ケースと、前記ケースに対して前後方向に移動可能に設けられたスライダと、前記スライダに回転自在に支持されると共に前記ランプユニットに連結される出力部と、前記スライダを前後方向に移動させる上下調整手段と、前記出力部を回転させる左右調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
従って、本発明車輌用灯具の光軸調整装置にあっては、照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して、且つ、同時に行うことができる。また、ランプユニットは灯室内で一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持されるので、ランプユニットの支持のための部品点数が削減され、コストダウンが可能になると共に小型化も可能になる。
【0016】
請求項2に記載した発明にあっては、前記左右調整手段は、前記出力部の回転軸と直交する軸回りに回転可能に前記スライダに支持され、前記出力部に形成されたギヤ部と噛合するギヤ部材であるので、ランプユニットの照射方向を左右方向へ独立変化させることができる。また、スライダを軽量化することができる。
【0017】
請求項3に記載した発明にあっては、前記上下調整手段は、車輌の前後方向に延びて前記ケースに回転自在に支持され、前記スライダに形成された螺孔と螺合するボールネジ部材であるので、ランプユニットの照射方向を上下方向へ独立変化させることができる。
【0018】
請求項4に記載した発明にあっては、前記ボールネジ部材は、遠隔からの手動及び/又は自動操作により駆動される駆動源により車輌の前後方向に移動されるので、ランプユニットの照射方向を上下方向へ独立変化させることができる。
【0019】
本発明車輌用灯具は、光源を備え該光源の光を前方へ向かって照射するランプユニットの上端部又は下端部の一方をランプボディと該ランプボディの前面開口を覆う透明カバーとにより形成される灯室内にて一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持し、前記ランプユニットの上端部又は下端部の他方と出力部が連結した請求項1乃至請求項4の何れかに記載した車輌用灯具の光軸調整装置を前記灯室内に備えたことを特徴とする。
【0020】
従って、本発明車輌用灯具にあっては、照射方向の上下方向での変化と左右方向での変化を独立して行うことができる。また、ランプユニットは灯室内で一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持されるので、ランプユニットの支持のための部品点数が削減され、コストダウンが可能になると共に小型化も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明車輌用灯具及び車輌用灯具の光軸調整装置を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態は何れも本発明を自動車用前照灯及び自動車用前照灯の光軸調整装置に適用したものである。
【0022】
図1及び図2に本発明の第1の実施の形態を示す。
【0023】
自動車用前照灯10は、前方に開口した凹所を有するランプボディ110を有し、該ランプボディ110の前面開口が透明カバー120によって覆われて灯室101が形成される。そして、前記灯室101内にランプユニット130が上下及び左右方向に傾動可能に支持される。さらに、前記灯室101内には、ランプユニット130を上下及び左右方向で傾動する光軸調整装置としてアクチュエータ140が配置されている。
【0024】
ランプユニット130は少なくともリフレクタ131と投射レンズ132と図示しない光源を備え、照明光を前方へ向けて照射するようになっている。そして、ランプユニット130の上端部には前記ランプボディ110に結合されるボディ結合部133が形成され、また、ランプユニット130の下端部には前記アクチュエータ140に結合されるアクチュエータ結合部134が形成されている。前記ボディ結合部133は、本実施の形態では、球継ぎ手部の一部を構成する球体として形成されている。また、前記アクチュエータ結合部134は厚手の円板状に形成され、該アクチュエータ結合部134には下面に開口した連結凹部134aが形成され、該連結凹部134aの内周面には上下方向に延びる図示しない係合溝が形成されている。
【0025】
ランプボディ110の上面部111の下面にはランプユニット結合部112が形成されている。該ランプユニット結合部112は、球継ぎ手部の一部を構成する球受け体として形成され、該球受け体112には下面に開口した球状の凹部112aが形成されている。そして、該球状凹部112aにランプユニット130に形成された球体(ボディ結合部)133が内嵌され、ここに球継ぎ手が形成される。そして、前記球体(ボディ結合部)133が球状凹部112a内で回転することによって、ランプユニット130は上下及び左右方向に傾動することが可能になる。
【0026】
前記アクチュエータ140はケース141の上面から上方へ突出した出力部142を有する。ケース141内に構成された駆動源によって、前記出力部142が駆動される。前記出力部142は出力軸として形成されその外周面に軸方向に延びる係合凸条143、143、・・・が形成されている。そして、出力部142は、ケース141内に構成された駆動源の駆動態様によってほぼ鉛直方向に延びる回転軸回りに回転され、また、前記駆動源の別の駆動態様によって前後方向に移動される。なお、本明細書において、前後方向とは自動車用前照灯10が搭載される自動車の前後方向のことであり、また、左右方向とは同じく自動車の左右方向のことである。
【0027】
前記したアクチュエータ140はランプボディ110の下面部113の上面に固定され、そして、出力部142がランプユニット130の下端部に設けられた連結凹部134a内に嵌合する。このとき、出力部142の外周面に形成された係合凸条143、143、・・・が連結凹部134aの内周面に形成された図示しない係合溝と係合して、出力部142と連結凹部134aとの間の回転方向での滑りが防止される。
【0028】
上記した自動車用前照灯10にあっては、アクチュエータ140の出力部142がほぼ鉛直方向に延びる回転軸回りに回転されると、この出力部142と嵌合しているアクチュエータ結合部134がほぼ鉛直方向に延びる軸回りの回転力を受け、従って、該アクチュエータ結合部134が形成されているランプユニット130が左右方向で回転する。これによって、ランプユニット130による照射方向が左右方向で変更される。また、アクチュエータ140出力部142が前後方向に移動されると、ランプユニット130の上端のボディ結合部133の前後方向での位置が固定されている状態で、下端のアクチュエータ結合部134が前後方向で変位するので、ランプユニット130は上下方向で傾動される。これによって、ランプユニット130による照射方向が上下方向で変更される。
【0029】
従って、例えば、運転席からの手動操作により、又は、車軸の高さを検出する車軸センサー等の各種センサーによる車体の傾きを検出する検出手段の検出結果に基づく自動操作により、アクチュエータ140の駆動源が駆動されることによって、走行中において、随時に、ランプユニット130による照射方向を上下及び左右方向で変更することができる。
【0030】
また、工場からの出荷時、或いは、車検時等において、前方のスクリーンに照射されるパターンを目視しながら、或いは、スクリーン上の各測定点の照度を自動測定しながら、前記アクチュエータ140を駆動することによって、エーミング調整、すなわち、配光の初期調整を行うことができる。
【0031】
なお、前記した実施の形態では、ランプユニット130を球継ぎ手によりランプボディ110に結合したが、例えば、板バネ、コイルバネ等のバネ材料により、ランプユニットとランプボディとを結合して、ランプユニットが該結合点を支点として、ランプボディに対して上下及び左右に傾動可能なようにしても良い。これにより、ランプユニットのランプボディへの結合構造がより簡素になる。
【0032】
次に、アクチュエータ140の詳細について、図2を参照して説明する。
【0033】
アクチュエータ140のケース141内にはスライダ144が前後方向に移動自在に支持されていて、該スライダ144に出力部142が回転自在に支持されている。出力部142には左右方向に突出したセクタギヤ部142b、142bが形成されている。
【0034】
ケース141内には駆動源として2つのモータ145、145が配置され、該モータ145、145の駆動ギヤ145a、145aによって回転される伝達ギヤ146、146にはウオームギヤ146a、146aが一体に形成されている。
【0035】
ケース141内には、さらに、筒状ギヤ147、147が回転自在に支持され、該筒状ギヤ147、147の外周面には斜歯ギヤ147a、147aが形成され、また、筒状ギヤ147、147の中心孔には螺溝147b、147bが形成されている。そして、筒状ギヤ147、147の斜歯ギヤ147a、147aには前記伝達ギヤ146、146のウオームギヤ146a、146aが噛合されている。従って、モータ145、145が回転すると、筒状ギヤ147、147が回転される。
【0036】
前端部を除く部分が螺軸部148a、148aとされた伝達部材148、148の螺軸部148a、148aが前記筒状ギヤ147、147の螺溝147b、147bと螺合されている。従って、筒状ギヤ147、147が回転すると、その螺溝147b、147bによって螺軸部148a、148aが送られるので、伝達部材148、148が前後方向に移動する。
【0037】
前記伝達部材148、148の前端部はラック部材149、149に固定されている。そして、ラック部材149、149に形成されたラック歯149a、149aが前記出力部142のセクタギヤ部142a、142aと噛合されている。
【0038】
アクチュエータ140において、出力部142を回転させるときは、2つのモータ145、145を逆方向に駆動すると、一方のラック部材149は前方へ移動し、他方のラック部材149は後方へ移動するので、出力部142は回転する。また、2つのモータ145、145を同じ方向に駆動すると、2つのラック部材149、149が同じ方向へ移動するので、出力部142は前方へ又は後方へ移動することになる。
【0039】
図3乃至図6にアクチュエータの第2の実施の形態を示す。
【0040】
アクチュエータ20はケース210から上方に突出した出力部220を有し、該出力部220はほぼ鉛直方向に延びる軸回りに回転すると共に前後方向に移動可能に設けられている。そして、ケース210内には出力部220をほぼ鉛直方向に延びる軸回りに回転させる回転駆動機構230と出力部220を前後方向に移動させる水平駆動機構240とが構成されている。
【0041】
前記出力部220はほぼ円筒状を為し、中心を貫通した中心孔221を有する。また、出力部220の外周面のほぼ上半部には軸方向に延びる係合凸条222、222、・・・が突設されている。また、出力部220の外周面のほぼ下半部にはギヤ歯が形成されてホイールギヤ部231とされている。
【0042】
ケース210内にはスライダ241が前後方向に移動可能に設けられている。該スライダ241にはほぼ中央から上方へ向けて突出した支持軸241aと、該支持軸241aから左右にやや離間した位置で前後方向に延びて形成された支持壁241b、241bが形成されている。また、前後方向に貫通して螺孔241cが形成されている。前記スライダ241はその左右側面から突出した係合突片241d、241dがケース210の左右内側面に前後方向に延びて形成された案内溝211、211に摺動自在に係合され、これによって、ケース210内に前後方向に移動自在に支持される。
【0043】
前記出力部220は、その中心孔221にスライダ241の支持軸241aが挿通され、これによってスライダ241に回転自在に支持される。
【0044】
スライダ241の前記支持壁241bと241bとの間にはウオームギヤ232が回転自在に支持され、該ウオームギヤ232が前記出力部220のホイールギヤ部231と噛合している。従って、ウオームギヤ232が回転すると、出力軸220が回転することになる。前記ウオームギヤ232には前記支持壁241b、241bの一方から外側に突出した連結部232aが形成されており、該連結部232aには端面に開口した断面形状矩形の連結穴232bが形成されている。そして、このウオームギヤ232と出力部220に形成されたホイールギヤ部231とによって回転駆動機構230が構成される。
【0045】
水平駆動軸242が前記ケース210を前後に貫通して設けられ、該水平駆動軸242の外周面に形成された螺条242aが前記スライダ241の螺孔241cに螺合している。従って、前記水平駆動軸242の回転によりスライダ241の螺孔241cが水平駆動軸242の螺条242aにて送られることによって、また、水平駆動軸242がケース210に対して前後方向に移動されることによって、スライダ241がケース210に対して前後方向に移動し、従って、スライダ241に支持されている出力部220がケース210に対して前後方向に移動することになる。そして、前記水平駆動軸242とスライダ241とによって水平駆動機構240が構成される。なお、スライダ241とケース210の前端部内面との間には圧縮コイルバネ241eが介挿され、スライダ241のガタツキが防止される。
【0046】
なお、前記水平駆動軸242はアクチュエータ20の後端に連結されたレベリング駆動部30の駆動軸として、回転及び前後方向に移動されるようになっている。
【0047】
レベリング駆動部30は、そのケース310が前記アクチュエータ20のケース210の後端に一体的に結合された状態とされている。
【0048】
水平駆動軸242は、その先端部分、すなわち、アクチュエータ20のケース20内に位置している部分に螺条242aが形成されて螺軸とされると共に、後端部が連結部とされて、後端に開口した断面ほぼ矩形の連結穴242bが形成されている。また、前記螺軸部と後端部との間の中間部分242cは丸棒状の被支持部とされている。
【0049】
ケース310内には前記水平駆動軸242を中心として同心円状に配置された筒体320、ロータ330及びステータ340を有する。
【0050】
ケース310内に設けられた筒体320は、全体的に略円筒状を為すと共に中心孔321を有し、その外周面の中央部には螺条322が形成されると共に、後端には上下に突出した回り止め突起323、323が一体に形成されて成る。
【0051】
そして、水平駆動軸242は、筒体320の中心孔321にその後方から挿通すると共に、水平駆動軸242の筒体320から前後に突出した部分にワッシャ242d、242dを筒体320に当接するように外嵌し、これによって、水平駆動軸242は、筒体320に対して回転可能に、且つ、その軸方向には移動不能に支持されるようになる。
【0052】
ロータ330もまた、全体的に略円筒状を為し、上記筒体320の外径と略同じ内径を有する中心孔331に螺溝332が形成され、ケース310に回転自在に支持されている。なお、ロータ330の外周部には図示しない複数の永久磁石がロータマグネットとして取着されている。
【0053】
ステータ340は、上記ロータマグネットに対応して複数の図示しないステータコイルを有し、ケース310の内周面に沿って固定的に配置される。
【0054】
上記水平駆動軸242を上記したように支持した筒体320は、筒体320をロータ330の中心孔331にその後方から挿入して螺条322と螺溝332とを螺合させた状態とし、これら水平駆動軸242、筒体320及びロータ330は、ケース310内の所定の箇所に配置される。この時、筒体320の回り止め突起323、323は、ケース310に前後に延びるように形成された係合凹部311、311内に摺動自在に位置する。
【0055】
そして、水平駆動軸242は、その螺条242aが前記アクチュエータ20のスライダ241の螺孔241cに螺合される。
【0056】
そして、水平駆動軸242の連結穴242bにはフレキシブルワイヤー243の断面がほぼ矩形にされた先端部243aが嵌合固定される。また、前記回転駆動機構230のウオームギヤ232の連結穴232bにはフレキシブルワイヤー233の断面がほぼ矩形にされた先端部233aが嵌合固定される。そして、前記フレキシブルワイヤー243の後端部は、図3に示すエーミング操作部40に連結される。エーミング操作部40は、例えば、ランプボディの後面壁114に回転可能に支持された操作部材410に連結される。そして、操作部材410の後面には十字溝411が形成されており、該十字溝411はランプボディの後面壁114に形成された臨ませ孔114aから後方へ臨ませられている。従って、例えば、プラスドライバー50の先端部510を操作部材410の十字溝411に係合させて、プラスドライバー50を回転させると、操作部材410が回転し、さらに、操作部材410の回転がフレキシブルワイヤー243を介して水平駆動軸242に伝わり、これによって、アクチュエータ20のスライダ241が前後方向に移動する。すなわち、出力部220が前後方向に移動する。なお、回転駆動機構230のウオームギヤ232の連結穴232bに嵌合固定されたフレキシブルワイヤー233の後端部も前記エーミング操作部40と同様の図示しないエーミング操作部に接続される。従って、フレキシブルワイヤー233が回転されると、ウオームギヤ233が回転され、これによって、出力軸220が回転する。
【0057】
また、レベリング調整時、すなわち、走行途中における照射方向の上下での変更を行うときは、前記ロータ330とステータ340とから成るステッピングモータが作動、すなわち、ステータ340の図示しないステータコイルに駆動電流が供給されて、ロータ330が回転すると、これと螺合した筒体320が、回り止め突起323、323と係合凹部311、311との係合によってその回転を阻止されると共に、ロータ330の回転方向に応じて前方へ又は後方へ移動する。そして、この時、筒体320と一体化された水平駆動軸242もまた、筒体320と一体に前後に移動することになる。従って、アクチュエータ20のスライダ241が前後方向に移動することになる。
【0058】
そこで、前記アクチュエータ20の出力部220をランプユニット130のアクチュエータ結合部134と結合させれば、回転駆動機構230の駆動によってランプユニット130が左右方向に傾動し、水平駆動機構240の駆動によってランプユニット130が上下方向に傾動することになる。また、レベリング駆動部30の駆動によっても、ランプユニット130が上下方向に傾動する。
【0059】
図7にアクチュエータの第3の実施の形態を示す。
【0060】
この第3の実施の形態にかかるアクチュエータ60は、レベリング駆動部30が併設されていない点で前記第2の実施の形態にかかるアクチュエータ20と異なる。すなわち、アクチュエータ60は、水平駆動軸610及びその支持の構造がアクチュエータ20の水平駆動軸242と異なるだけで、その他の点は、アクチュエータ20と同様である。従って、前記異なる点についてのみ詳細に説明し、その他の部分については、アクチュエータ20における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
水平駆動軸610は外周面に螺条が形成された螺軸部611と該螺軸部611の後端に一体に形成された連結部612とから成る。そして、連結部612には断面形状が矩形の連結穴612aが形成されている。そして、このような水平駆動軸610はケース210に前後方向に延びる向きで回転可能に、しかし、前後方向への移動は不能に支持されている。そして、連結部612の連結穴612aは後方に臨まされており、該連結穴612aに外部から回転操作されるフレキシブルワイヤー613の断面形状が矩形をした先端部613aが嵌合固定されている。
【0062】
従って、フレキシブルワイヤー613が外部から、例えば、前記したエーミング操作部40のような操作部によって操作されて回転すると、これと連結された水平駆動軸610が回転し、スライダ241が水平駆動軸610に沿って前後方向に移動し、該スライダ241に支持されている出力軸220が前後方向に移動する。そして、出力軸220の前後方向への移動によってランプユニットが上下傾動される。
【0063】
なお、前記第2及び第3の実施の形態において、水平駆動軸及びウオームギヤとエイミング操作部との間をフレキシブルワイヤーで連携させた例を示したが、エイミング操作部をアクチュエータの近くに配置できる場合には、水平駆動軸やウオームギヤの連結部を真っ直ぐ延長し、該連結部をプラスドライバー等の治具によって直接操作したり、或いは、直交変換ギヤなどを介して操作したりできるように構成することもできる。
【0064】
なお、上記した各実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるようなことがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図2と共に本発明の第1の実施の形態を示すものであり、本図は自動車用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】アクチュエータの内部構造を一部を切り欠いて示す平面図である。
【図3】図4乃至図6と共にアクチュエータの第2の実施の形態を示すものであり、本図は概略斜視図である。
【図4】概略平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】アクチュエータの第3の実施の形態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0066】
10…自動車用前照灯(車輌用灯具)、101…灯室、110…ランプボディ、120…透明カバー、130…ランプユニット、140…アクチュエータ(光軸調整装置)、141…ケース、142…出力部、144…スライダ、145…モータ(駆動源)、20…アクチュエータ(光軸調整装置)、210…ケース、220…出力部、230…回動駆動機構(左右調整手段)、232…ウオームギヤ(左右調整手段、ギヤ部材)、240…水平駆動機構(上下駆動手段)、241…スライダ、241c…螺孔、242…水平駆動軸(上下駆動手段、ボールネジ部材)、310…ケース、330(ロータ)−340(ステータ)…駆動源、60…アクチュエータ(光軸調整装置)、610…水平駆動軸(上下駆動手段、ボールネジ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディと該ランプボディの開口部を覆う透明カバーとで形成される灯室内に一つの支点で支持されたランプユニットを上下及び左右に傾動させる車輌用灯具の光軸調整装置であって、
ケースと、
前記ケースに対して前後方向に移動可能に設けられたスライダと、
前記スライダに回転自在に支持されると共に前記ランプユニットに連結される出力部と、
前記スライダを前後方向に移動させる上下調整手段と、
前記出力部を回転させる左右調整手段とを備えた
ことを特徴とする車輌用灯具の光軸調整装置。
【請求項2】
前記左右調整手段は、前記出力部の回転軸と直交する軸回りに回転可能に前記スライダに支持され、前記出力部に形成されたギヤ部と噛合するギヤ部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具の光軸調整装置。
【請求項3】
前記上下調整手段は、車輌の前後方向に延びて前記ケースに回転自在に支持され、前記スライダに形成された螺孔と螺合するボールネジ部材である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具の光軸調整装置。
【請求項4】
前記ボールネジ部材は、遠隔からの手動及び/又は自動操作により駆動される駆動源により車輌の前後方向に移動される
ことを特徴とする請求項3に記載の車輌用灯具の光軸調整装置。
【請求項5】
光源を備え該光源の光を前方へ向かって照射するランプユニットの上端部又は下端部の一方をランプボディと該ランプボディの前面開口を覆う透明カバーとにより形成される灯室内にて一つの支点で上下及び左右に傾動可能に支持し、
前記ランプユニットの上端部又は下端部の他方と出力部が連結した請求項1乃至請求項4の何れかに記載した車輌用灯具の光軸調整装置を前記灯室内に備えた
ことを特徴とする車輌用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−123855(P2008−123855A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306788(P2006−306788)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】