説明

車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構

【課題】動力源を小型小容量の燃料電池、太陽電池とすることを容易にした車輪に設けた駆動動力軽減機構を提供する。
【解決手段】車輪のハブを固定ハブ7と固定ハブで軸支する回転ハブ6に分割し、回転ハブに同心に内歯歯車6aと太陽歯車6bを設ける。車体本体からの駆動軸11を、固定ハブに軸支されるハブ内の駆動軸13とユニバーサルジョイント12で結合する。駆動軸13の先端に内歯歯車と噛合う第1駆動歯車21を、更に駆動軸13に軸支される第1キャリアと、太陽歯車軸6cに軸支される第2キャリアで両端を軸支される中間歯車19の大歯車19aに噛合う第2駆動歯車20を設ける。
また、中間歯車19の先端の小歯車29を太陽歯車に噛合わせる。第2キャリアの上部軸24aに軸受27を介して空転歯車28を設ける。空転歯車28は内歯歯車と噛合う第1空転歯車28aと、もう一つの大歯車19bに噛合う第2空転歯車28bで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等車両の走行エネルギーを軽減する車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車等車両はエンジンの出力を動力伝達軸により直接車輪に伝達している。図1、図2、図3に従来技術による自動車を一例として挙げる。自動車1の動力伝達は駆動軸2aをタイヤ2c、リム2bと一体となるハブ2、3に直接連結して行われる。この結果、各寸法諸元を図3の如く、車輪を押す力S1、S、輪重をW1、、車輪半径をR、転がり摩擦係数をf、坂角度をα、車輪回転数をn、角速度をω、伝達トルクをTqとすると、駆動動力PW0は下記となる。
【0003】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

従って、この式から分かるように、どこにも動力低減策が無いのが現状である。
尚、公知例調査の結果も特許文献1のパワートランスミッション及び動力源の組合体や特許文献2の遊星歯車式差動装置等が出願されているが、いずれも、現状の動力のハイブリット化あるいは多機能化が目的であり、根本的な動力そのものの軽減機構に関しては、見当たらない。
【特許文献1】特開平8-238945
【特許文献2】特開平5−187487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、石油等の化石燃料の枯渇および地球温暖化等地球規模での環境問題に対応すべく、燃料電池車、太陽電池車が開発されている。一方、燃料電池、太陽電池とも現状の車両等の機構では駆動動力が大きく、大掛かりな装置となり、高価で大衆化が困難な状況にある。
本発明は、かかる状況に鑑み、小型小容量の燃料電池、太陽電池で現状と同等の車両走行性能を発揮させる、新規な駆動動力軽減機構を提供するものである。
また、本発明の更なる目的は、すでに世に出ている自動車等車両の駆動動力を軽減し、化石燃料の枯渇および環境問題に対処できるアタッチメント式駆動動力軽減機構を提供することにある。
また、本発明の更なる目的は、人力で動かす乗物の駆動労力を軽減し、坂道も容易に上れ、活動範囲を広げられるようにした自転車や車椅子の駆動動力軽減機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
回転する車輪の中に垂直に静止し、車輪中心軸で軸支されるレバーを設ける。このレバーの下端を走行方向に押し、レバーの上端を回転車輪で支えかつ支点反力が車輪内で消去されるようにする。これを実現するとレバーはテコとなり、テコの原理でレバー下端の押力が増幅され車軸を押し続ける。この結果、新たな車輪転倒モーメントが駆動動力に付加され、結果的に駆動動力が軽減されることになる。
【0006】
上記を達成するためには、2つの難問がある。1つは、レバーの下端を新たなエネルギーを付加せずに、如何にして走行中押し続けるか。2つは、レバーの上端支点反力を如何にして、大地に接する車輪にもたせ、車体から切り離すか、である。
【0007】
本発明は上記難問を解決し、所期の目的を達成したものである。
本発明の動作原理を図4、図5、図6、図7、図8に基づいて詳述する。図4は本発明の基本動作原理を説明する1実施例の断面図で、図5は図4のa−a断面、図6、図7は図4のA−A断面、B−B断面を示し、図8は図6、図7の補足説明図である。
【0008】
初めに構造を説明する。
先ず、ハブをタイヤと一体となり回転する回転ハブ6と、車体に固定される固定ハブ7に分け、固定ハブで回転ハブを支持し、軸受9で回転ハブを回転自在に保持する。車体1からの駆動軸11は、ハブ内の固定ハブ7に軸支される駆動軸13とユニバーサルジョイント12で連結する。回転ハブ内には、これと一体に、同軸に内歯歯車6aと太陽歯車6bを設ける。駆動軸13の先端に、内歯歯車と噛合う第1駆動歯車21、また、第1キャリア16および第2キャリア24で軸支される中間歯車19の大歯車19aと噛合う第2駆動歯車20を設ける。20a、21aは、ばねの働きをする弾性体で、駆動軸13上を摺動回転する第1、第2駆動歯車の空間部20b、21bにあり、一端は駆動軸13に圧入された板22、23の凹部と接し、他端は第1、第2駆動歯車の空間壁に接する。一方、中間歯車の第2キャリア側に、中間歯車と一体となり太陽歯車6bと噛合う小歯車29を設ける。また、第2キャリアは太陽歯車軸6cで回転自在とし、上端に内歯歯車に平行に軸を設ける。この軸は空転歯車28を軸支する。また、空転歯車は内歯歯車と噛合う第1空転歯車28a、中間歯車のもう一方の大歯車19bと噛合う第2空転歯車28bで構成する。
【0009】
次に動作の基本原理を説明する。
各歯車の歯数、各寸法諸元、回転方向、力、モーメントを図6、図7とすると、各歯車の歯数は次の6、7の2式を満足しなければならない。
(A)回転数n=nの条件
【数6】

(B)歯車が互いに噛合う条件
【数7】

また、駆動軸13がn方向に回転すると、第1駆動歯車21は内歯歯車6aを図示方向にQの力で回す。同時に第2駆動歯車20は大歯車19aを図示方向にQの力で回す。このQ、Qの反作用力は、軸13に値は同じで方向が反対に図示の如く作用する。また、この反作用力は、駆動軸13と太陽歯車軸6cとが車体と一体であることから、車輪にとっては、太陽歯車軸6c(O支点)に駆動軸13に作用するのと全く同じく図示の如く作用する。
【0010】
一方、第2駆動歯車が大歯車19aに付加する力Qは大歯車軸芯(O支点)に方向、大きさとも同じで図示の如く作用する。この作用力Qは第2キャリア24に全く同じく作用し、第2キャリアがO支点でこの力を支えることになる。
【0011】
更に、大歯車19aと一体の小歯車29は大歯車の回転に伴い、太陽歯車6bにQの力を図示方向にかける。また、小歯車29のQの反力は中間歯車19の軸心O支点に大きさ同じで方向反対に図示の如く作用する。この結果、O支点には(Q−Q)の力が発生する。Qの値は大歯車と小歯車のトルクが同じであることから、次の如く求まる。
【数8】

【0012】
以上から、第2キャリアの空転歯車28の軸心Oが固定であれば、第2キャリアはOを支点とし、O点の(Q−Q)の力で車輪中心O点を押し続けるテコとなる。このO点で押し続ける力Qは次式で求まる。
【数9】

【0013】
また、Qは太陽歯車にTqなる回転トルクを与える。Tqは次式となる。
【数10】

【0014】
一方、第2キャリアが空転歯車28に与える力をQ、第1、第2空転歯車が内歯歯車に作用する力をQ41、大歯車19bに作用する力をQ42、小歯車29と太陽歯車6bに働く力をQ43とすると、Q、Q41、Q42、Q43は下記で求まる。
【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【0015】
以上の式から、歯車のモジュールをmとし、反時計回りのモーメントを正、時計回りのモーメントを負とすると、Qが車輪に与えるモーメントの総和Mは次式で求まる。
【数15】

一方、15式を計算すると、
【数16】

従って、空転歯車28が車輪に与える正逆の転倒モーメントの総和はゼロとなり、支点Oは回転する車輪の中にあって、上部に保持され、車輪走行に影響を与えない支点となる。
【0016】
以上から、第2キャリアの下端を押し続けるのは中間歯車19で確保でき、第2キャリアの上部O支点は、この支点反力が車輪走行になんら影響を与えないことから、第2キャリアはテコとなり、回転車輪の中にあって、新規なテコの原理を発揮することになる。
【0017】
図8に示すごとく、車輪中心であるO点に作用する合力をQとすると、Qは次式で求まる。
【数17】

この結果、駆動軸13の動力が車輪転倒に及ぼすモーメントの総和Mは次式となる。
【数18】

【0018】
一方、車輪が転倒し、走行するため条件は下記である。
【数19】

また、MはQ、Qで定まる。球状弾性体21a、20aのばね定数をk、kとし、駆動軸13の回転角をθ、駆動軸芯と球状弾性体加圧点までの距離をr、rとすると、Q、Qは次式となる。
【数20】

【数21】

従って、駆動軸13をθ回すとQ、Qが発生し、Mの値が変化し、あるθ値で19式を満足する。
このθ値から、Q、Qを求めると駆動軸13の駆動トルクTqが下記で求まる。
【数22】

【0019】
また、駆動軸13の角速度ωは、次の如くなる。
【数23】

【数24】

【0020】
以上から、歯車系の動力伝達損失を無視すると、駆動軸13の必要動力PW1および効率ηは下記の如くなる。
【数25】

【数26】

【0021】
効率ηは車輪半径R、歯車比、球状弾性体のばね定数k、kによって、変化するが、図9に示す如く、50%〜20%は確保できる。尚、上式は2輪駆動(前輪または後輪駆動)の式であるが、4輪駆動(全輪駆動)の場合は、W=0と置けば求まる。
【発明の効果】
【0022】
以上記載の如く請求項1の発明によれば、一本の駆動軸上の第1駆動歯車で内歯歯車を回し、第2駆動歯車で中間歯車の大歯車を同時に回すことにより、駆動力をハブ内で2系統に分断し車輪に伝達できる。更に大歯車側に伝達された駆動力は作用反作用力の差力を生む中間歯車に伝達される。
一方、中間歯車を軸支する第2キャリアは、回転ハブ中心軸に回転自在に支持され、上部の第2キャリア突起軸に第1、第2の空転歯車を軸支している。また、互いに一体となる第1、第2空転歯車が内歯歯車および大歯車に及ぼす力は車輪に正逆の転倒モーメントを発生させるが、この値が同じになる事から、空転歯車軸は回転車輪の中にあって、定位置となり、テコの支点になる。これは、駆動力を上記2系統に分断した結果達成できるものである。また、各歯車の歯数を内歯歯車の回転角と太陽歯車の回転角が同じになるようにしていることから、第2キャリアは車輪回転時も垂直状態を維持し続ける。
これらの結果、第2キャリアは空転歯車軸Oを支点とし、中間歯車軸中心Oに働く作用反作用力の差力で車輪中心軸Oを押すテコとなる。このテコの現象が走行中継続され、駆動動力の軽減が達成できる。
【0023】
尚、この軽減の程度は、効率をη(η=(本発明による動力)/(現状の必要動力))とすると、ηは車輪半径R、歯車比、球状弾性体のばね定数の関数となり、その数値は図9に示す如くη=1/2〜1/5となる。これは1/2〜1/5の燃料で現状と同距離を走行できることを表している。また、逆の言い方をすれば、同じ量の燃料で現状走行距離の2倍〜5倍の距離を走行できることを意味する。
【0024】
これはまた、燃比を50%〜80%改善することに相当する。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、駆動軸13と第1、第2駆動歯車間の弾性体20a、21aを介して駆動力が確実に内歯歯車と大歯車19aに伝わり、駆動2系統の機能を発揮させる事ができる。即ち、この弾性体を介さないと、各歯車は剛体であり、かつ歯車にバックラッシュがあることから、先に第1駆動歯車が内歯歯車に噛合うと、第2駆動歯車と大歯車19aとの間に隙間が生じ、第2駆動歯車系は機能しない。また反対に、先に第2駆動歯車が大歯車19aに噛合うと第1駆動歯車と内歯歯車との間に隙間が生じ、第1駆動歯車系は機能を発揮しない。この結果、どちらも駆動動力の軽減は達成でなくなるのである。
尚、弾性体20a、21aは歯車内壁と板22,23の凹部でガイドされ、弾性体20a、21aの保持が安定する。
【0026】
また、この弾性体(例えばシリコンゴム)20a、21aを球状とすることにより、ばね定数を非線形とすることができる。この結果、初期駆動軸の僅かの回転力で弾性体が変形し、第1駆動、第2駆動系の隙間が除去されると同時に両駆動系に与圧をかけることができる。また、球状がさらに僅か変形しただけで、今度は大きな反力の発生につながり、駆動動力の伝達が可能となる。このことから、ばね定数一定の直線ばねと比較して、小スペースで与圧メカニズムの目的が達成でき、装置をコンパクトにできる。
【0027】
請求項3記載の発明によれば、第1、第2駆動歯車の動力伝達系に別々の弾性体20a、21aを設けることにより、第1、第2駆動歯車の伝達動力が調整でき、テコの原理に基づく効率ηを最大に設定できる。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、大歯車19aと19bの歯面を歯面長手方向に対して同一面とすることができる。この結果、駆動軸13と空転歯車軸24aをほぼ同一軸に配置でき、第2キャリアのO、O、O支点が一直線となるテコの構造が達成できる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、テコの支点となる空転歯車軸24aの反力をすべて、大地に接する車輪に伝達し、車体本体で反力を受けないですむ。更に、空転歯車軸24aの反力は車輪に正転、逆転のモーメントを付加するが、このモーメントの値が同じくなることから、空転歯車軸の位置は変わらない。一方、駆動軸13と空転歯車軸24aとを一体とすると、空転歯車軸の反力は車体に軸支される駆動軸13に伝達され、車体本体に伝達される事から、テコの原理は失われ、駆動動力の軽減は達成できない。
【0030】
請求項6記載の発明によれば、第1駆動歯車が内歯歯車に与える力で発生する車輪回転駆動モーメントを最大とすることができ、駆動動力軽減に寄与する。
【0031】
請求項7記載の発明によれば、回転ハブと固定ハブの中をオイルバスとすることができる。この結果、歯車の潤滑ができ、また発熱、騒音を防止できることから、高速で走る自動車、電車にも、この走行動力軽減機構が採用できる。また、シールワッシャー付ねじを回転ハブに設けることにより、ブレーキ系統(図示せず)のオイルによる損傷を未然に防ぐと同時に、オイル交換もタイヤに空気を入れるのと同様に容易にできる。
【0032】
請求項8記載の発明によれば、車体本体からの駆動軸を車輪駆動短軸34と連結し、固定ハブ30を車体本体に連結することにより、駆動動力軽減機構付き車両ができあがる。即ち、既存の自動車等の車輪を本発明のアタッチメント式走行動力軽減機構付き車輪に交換できる。この結果、既存の自動車等に使用する石油等の化石燃料使用量を削減でき、かつ排出ガス量も軽減できる事から、地球温暖化等の地球規模の環境問題を一挙に軽減できる。
【0033】
請求項9記載の発明によれば、左右の固定ハブ、回転ハブに設けた軸支機構に、車体本体のステーを連結すれば、固定ハブと回転ハブ内の機構を車体本体のステーで挟持できる。この結果、機構内のスプロケットをチェーンで駆動すれば、車体を軽く動かすことができる。この構造は、図11、12、図15に示す、自転車40の41部やオートバイ80の81部にも適用できる。
【0034】
請求項10記載の発明によれば、駆動内歯歯車60cを丸ハンドル60aと一体化することにより、図13、図14に示す如く、駆動動力軽減機構62を車椅子60にも取付けることができる。この結果、平地の走行労力が軽減できるばかりでなく、坂道も軽く上ることができ、車椅子の活動範囲を広げることができる。
【0035】
その他の効果として、本発明は図16、図17に示す如く、各種荷役機械や電車等にも適用でき、石油等の化石燃料枯渇期間の延長と環境問題である排出ガス規制に対応できると同時に、今後の出力の少ない小型燃料電池や太陽電池でも、現状と同等の性能で自動車等の車両を走行させる事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
車輪のハブを車輪と一体の回転ハブと車体に固定される固定ハブにわけ、固定ハブで回転ハブを軸支し、両ハブの中に、メカニズムを内蔵させる。即ち、回転ハブに同心に内歯歯車、太陽歯車を設け、固定ハブで軸支される駆動軸の先端に内歯歯車と噛合う第1駆動歯車、中間歯車の大歯車と噛合う第2駆動歯車を設ける。中間歯車は、駆動軸で軸支される第1キャリアと太陽歯車軸に軸支される第2キャリアで軸支する。中間歯車はこれと一体に小歯車を持ち、小歯車と太陽歯車を噛合わせる。第2キャリアの他端は空転歯車を軸支する。空転歯車は内歯歯車と噛合う第1空転歯車と、中間歯車のもうひとつの大歯車と噛合う第2空転歯車で構成する。駆動軸は、車輪の最上部に設けテコとなる第2キャリアを垂直に維持する。
【実施例1】
【0037】
図4は、本発明の1実施例を示す断面図、図5は図4のa−a断面図、図6、図7は図4のA−A断面図、B−B断面図、図8は図6、図7の補足説明図である。
先ず構造を説明する。
6はタイヤ2cと一体のリム4をフランジ6d部でボルト5により連結された回転ハブである。7は車体(図示せず)と一体となり、駆動軸13を軸支し、回転ハブの6e部及び固定ハブの7c部で軸受9を介して、回転ハブを軸支する固定ハブである。10は油密シールである。駆動軸13は、固定ハブのボス7b部で軸受14により回転自在とし、車体からの駆動軸11とユニバーサルジョイント12で連結される。15は油密シールである。
一方、回転ハブにはこれと一体同心に内歯歯車6a、太陽歯車6bを設ける。ハブ内の駆動軸13には、内歯歯車6aと噛合う第1駆動歯車21、及び駆動軸13で軸支される第1キャリア16と太陽歯車の軸6cで軸支される第2キャリア24の両方で軸支された中間歯車19の大歯車19aと噛合う第2駆動歯車20を設ける。17、18は第1キャリアに設けた軸受である。25、26は第2キャリア24に設けた軸受である。小歯車29は中間歯車19の軸19fにスプライン結合し、太陽歯車6bと噛合う。第2キャリアの他端には空転歯車軸24aを設け、空転歯車28を軸支している。空転歯車は、内歯歯車6aと噛合い第1駆動歯車21と同じ歯数の第1空転歯車、中間歯車19のもう一つの大歯車19bと噛合い第2駆動歯車20と同歯数の第2空転歯車28bで構成されている。大歯車19aと大歯車19bの歯数は同じである。
また、図5に示す如く、第1、第2駆動歯車21、20には、球状弾性体20a、21aを内包する空間21b、20bがあり、球状弾性体は軸13に圧入された板22、23と歯車21、20の空間内壁に挟まれている。
【0038】
次にこの動作を説明する。車体の駆動軸11の動力は、ユニバーサルジョイント12、駆動軸13、駆動軸13の板23、22、球状弾性体21a、20aを通して、第1、第2駆動歯車21、20に伝わる。第1駆動歯車21は直接内歯歯車6aを回す。また、第2駆動歯車20は大歯車19a、及びこれと一体の小歯車29を介して太陽歯車6bを回す。第1駆動歯車21が回す車輪の回転方向と、第2駆動歯車20が車輪を回す方向は中間歯車19を介することにより、同一方向となる。
【0039】
この結果、空転歯車の支点Oの位置が一定に保持され、中間歯車19に働く作用反作用の力の差が第2キャリアの支点Oを押すことから、第2キャリアはテコのレバーとなり、支点Oに働く力が増幅されて、車軸芯Oを押し続けることになる。即ち、このテコの力による車輪の転倒モーメントが車体の駆動軸動力に付加され、結果的に駆動力が低減されるのである。
【実施例2】
【0040】
図10は既存の自動車等の車両にアタッチメント式に取付けられる本発明の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構の断面図である。図4との相違点は固定ハブ30にある。即ち、駆動軸13の一端をハブ内で止め、ハブボスの30aで駆動軸13を軸受38で回転自在、横移動不可に保持する。更に先端に第1駆動歯車21と同歯数のピニオンを設ける。一方、固定ボス30cに中心線で示す如く、太陽歯車6bと同心に駆動軸34を軸受35で回転自在、横移動不可に設ける。36は油密シールである。駆動軸34のハブ側にはスプライン34aで連結され、ピニオン32と噛合う内歯歯車33を設ける。内歯歯車33の歯数は内歯歯車6aと同数である。また、駆動軸34の先端の軸34bは固定ボス30bに軸受37で回転自在に保持し、駆動軸34の取付けを強固にしている。
【0041】
以上の構成から、固定ハブ30を車体に連結し、駆動軸34を従来の自動車等の駆動軸(図示せず)に連結すれば、既存の自動車等車両の駆動動力を容易に軽減できる。
【0042】
図12は本発明41を図11に示す自転車40に適用した動力軽減機構の1実施例の断面図である。図10との相違点は、固定ハブ43の中心軸44を、固定ボス43bにボルト45で固定し、他端を固定ボス43の穴43cに挿入し、固定ボスと一体化したこと。また、固定ボス43a部で軸受51により軸支される駆動軸50の他端のセレーション50aにピニオン52を圧入したこと。軸44には、軸受54で軸支されるスプロケット53を取付け、一方向クラッチ51aを介してピニオン52を回す内歯歯車51を設けたこと。また、回転ボス42を軸受44a、カバー45、ボルト46で固定ボス43上に回転自在に取付けたこと。回転ハブ42の外周には2つのフランジ42dを設け、自転車のタイヤを指示するスポーク40dを取付けたこと。一方、固定ハブ43の外部中心に軸43を設け、これに自転車のステー40aをナット48で固定したこと。また、回転ハブ42の外周中心に軸42cを設け、金具55との間に軸受56を設けたこと。この金具55で自転車のもう一方のステーをナット57で固定したこと。また、固定ボスには、チェーン取付け用穴43eを設け、ボルト59を固定ハブ43の回り止めとした事である。
【0043】
以上の構成から、動力軽減機構は2つの自転車のステーで保持され、かつ、チェーン40cでスプロケット53を駆動でき、スプロケットと一体の内歯歯車51がピニオン52を自転車進行方向に回すことから、自転車の駆動動力が軽減できる。
【実施例3】
【0044】
図12は本発明41を図11に示す自転車40に適用した動力軽減機構の1実施例の断面図である。図10との相違点は、固定ハブ43中心軸44を、固定ボス43bにぼると45で固定し、他端を固定ボス43の穴43cに挿入し、固定ボスと一体化したこと。また、固定ボス43a部で軸受51で軸支される駆動軸50の他端のセレーション50aにピニオン52を圧入したこと。軸44には、軸受54で軸支されるスプロケット53を取付け、一方向クラッチ51aを介してピニオン52を回す内歯歯車51を設けたこと。また、回転ボス42を軸受44a、カバー45、ボルト46で固定ボス43上に回転自在に取付けたこと。回転ハブ42の外周には2つのフランジ42dを設け、自転車のタイヤを指示するスポーク40dを取付けたこと。一方、固定ハブ43の外部中心に軸43dを設け、これに自転車のステー40aをナット48で固定したこと。また、回転ハブ42の外周中心に軸42cを設け、金具55との間に軸受56を設けたこと。この金具55で自転車のもう一方のステーをナット57で固定したこと。また、固定ボスには、チェーン取付け用穴43eを設け、ボルト59は固定ハブ43の回り止めとしたことである。
【0045】
以上の構成から、動力軽減機構は2つの自転車のステーで保持され、かつ、チェーン40cでスプロケット53を駆動でき、スプロケットと一体の内歯歯車51がピニオン52を自転車進行方向に回すことから、自転車の駆動動力軽減が達成される。
【実施例4】
【0046】
図14は、図13に示す車椅子60に本発明62を適用した駆動動力軽減機構の断面図である。図13において、60aは車椅子60を手押しし、車輪60bを回転させる手動丸ハンドルである。60cは車輪60bのスポーク、60dは本発明による回転ハブ63のフランジ63dに連結され、手動丸ハンドル60aを支持するスポークである。図14において、図12との相違点は内歯歯車60cを手動丸ハンドル60aのボス部で一体化し、固定ハブ66の先端軸66aで軸受73により回転自在とし、ナット74で固定ハブ66に一体化したこと。また、回転ハブ63の外側中央部に回転ハブと一体となる軸63cを設け、車椅子60のボス60eで軸受64を介し車輪60bを回転自在に保持したことである。65は連結固定ナットである。また、61は車椅子60に固定したステーで、これと固定ハブ66cを61a部で一体化し、固定ハブの回り止めをするものである。
【0047】
以上の構成から、車椅子60は車輪60bで走行できる。一方、手動丸ハンドルを回すと内歯
歯車60cが回り、ハブ内の駆動動力軽減機構が働き、手動丸ハンドルの回す力が軽減できる。従って、車椅子に乗る人の労力が軽減でき、坂道も上れ、活動範囲が広くなる。
【実施例5】
【0048】
図15は本発明81をオートバイに適用した1実施例である。図12と異なる点は、自転車にはある一方向クラッチ51aがオートバイには不要の1点だけである。
【実施例6】
【0049】
図16は荷役機械85に本発明の図4または図10の駆動動力軽減機構を設けた1実施例である。
【実施例7】
【0050】
図17は電車90に本発明の図4または図10の駆動動力軽減機構を設けた1実施例である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来例の自動車外観図である。
【図2】従来例の車輪断面図である。
【図3】従来例の駆動動力計算図である。
【図4】本発明による車輪ハブにもうける遊星歯車式走行動力軽減機構の断面図である。
【図5】図4のa−a断面図である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【図7】図4のB−B断面図である。
【図8】図6、図7の補足説明図である。
【図9】本発明の効果説明図である。
【図10】本発明をアタッチメント式とした1実施例を示す断面図である。
【図11】従来の自転車に本発明の機構を付けた説明図である。
【図12】本発明による自転車用遊星歯車式走行動力軽減機構の断面図である。
【図13】従来の車椅子に本発明の機構を付けた説明図である。
【図14】本発明による車椅子用遊星歯車式動力軽減機構の断面図である。
【図15】本発明をオートバイに適用したときの説明図である。
【図16】本発明を荷役機械に適用したときの説明図である。
【図17】本発明を電車に適用したときの説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1:自動車 2、3:ハブ 2a:駆動軸 2b、3b、4:リム
2c、3c:タイヤ 6:回転ハブ 6a:内歯歯車 6b:太陽歯車
6c:太陽歯車軸 6d:フランジ 7、30:固定ハブ 7b:ボス
9:軸受 10:オイルシール 11:駆動軸
12:ユニバーサルジョイント 13:駆動軸 14:軸受
15:オイルシール 16:第1キャリア 17、18:軸受
19:中間歯車 19a、19b:大歯車 19f:スプライン
21:第1駆動歯車 20:第2駆動歯車 21a、20a:球状弾性体
22、23:板 24:第2キャリア 24a:空転歯車軸
25、26、27:軸受 28:空転歯車 28a:第1空転歯車
28b:第2空転歯車 30a、30b、30c:ボス 31:駆動軸
31a:スプライン 32:ピニオン 33:内歯歯車 34:駆動短軸
34a:スプライン 34b:軸 35:軸受 36:オイルシール
37、38:軸受 40:自転車 40a、40b:ステー
40c:チェーン 40d:スポーク 41:駆動力軽減機構
42:回転ハブ 42c:軸 42d:フランジ 43:固定ハブ
43a、43b:ボス 43e:穴 44:軸 44a:軸受
47、48:ナット 50a:セレーション 51a:一方向クラッチ
52:ピニオン 55:金具 59:回り止め 60:車椅子
60a:手動丸ハンドル 60b:タイヤ 60e:内歯歯車
61:ステー 62:動力軽減機構 66:固定ボス 66a:軸
80:オートバイ 85:荷役機械 90:電車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等車輪の走行時回転する回転ハブ6中心に、同軸に内歯歯車6aと太陽歯車6bを固定した遊星歯車式動力伝達機構において、固定ハブ7に軸支され、車体本体からの動力伝達軸11とユニバーサルジョイントで結合される駆動軸13の車輪側先端に、第1、第2の駆動歯車を設け、第1駆動歯車21を内歯歯車に、第2駆動歯車20を第1キャリア16と第2キャリア24で軸支される中間歯車19の大歯車19aに噛合せ、更にこれと一体の小歯車29を太陽歯車6bに噛合せ、また、第2キャリアの中間部を太陽歯車軸6cで回転自在とし、一端に小歯車29を、他端に内歯歯車6aと大歯車19bにそれぞれ噛合い互いに一体となる第1空転歯車28a、第2空転歯車28bを軸支し、また各歯車の歯数を、歯車の回転角と太陽歯車の回転角が同じになるように設定することを特徴とする車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項2】
前記第1、第2駆動歯車と駆動軸の間において、第1、第2駆動歯車に駆動軸側に開口部を持つ空間を設け、軸に圧入された球状の凹みを持つ板と球状の弾性体をこの空間に入れ、かつ球状の弾性体を空間の歯車壁と軸圧入板とで挟持することを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項3】
前記車輪駆動軸の駆動歯車を、内歯歯車を駆動する第1駆動歯車、大歯車を駆動する第2駆動歯車の2つに分割したことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項4】
前記中間歯車の大歯車を内歯歯車との干渉を避けて、歯幅中央部を凹形状とし、一方を第2駆動歯車に、他方を第2空転歯車に噛合うようにしたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項5】
前記第1、第2駆動歯車軸と、第1、第2空転歯車軸を、内歯歯車との噛合い中間部で別々の軸に分割したことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項6】
前記車輪駆動軸および空転歯車軸を車輪の最上部に設けたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項7】
前記回転ハブと固定ハブの間および車体本体からの駆動軸と固定ハブの間に軸受と油密シールを設け、かつシールワッシャ付ねじを回転ハブに設けたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項8】
前記第1、第2駆動歯車軸を、固定ハブ内に収納し、車体側にピニオンを設け、車輪中心の固定ハブで軸支される車輪駆動短軸のハブ中側に、ピニオンと噛合う内歯歯車を設けたことを特徴とする請求項1記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項9】
前記車輪駆動短軸の内歯歯車の反対側にスプロケットを設け、固定ハブに動力伝達チェーンの通過穴を明け、更に固定ハブ、回転ハブの両外側に車体本体を軸支可能とする軸受部を設けたことを特徴とする請求項10記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。
【請求項10】
前記ピニオン駆動用内歯歯車を、車輪と同軸平行の手動ハンドルと一体化し、回転ハブで軸支する固定ハブを、車体本体のステーで回転不可としたことを特徴とする請求項10記載の車輪ハブに設ける遊星歯車式走行動力軽減機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−83935(P2006−83935A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268770(P2004−268770)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(500206722)
【Fターム(参考)】