説明

車速制限制御装置

【課題】車速制限制御に用いる制限車速を大きく変更しなければならない場合であっても、簡単な操作で、その変更を行うことが可能な車速制限制御装置を提供すること。
【解決手段】複数の制限速度を記憶可能な記憶装置3を有し、運転者によって操作される選択操作スイッチにより、車速制限制御に用いる制限速度Vとして、記憶装置3に記憶された複数の制限速度Vの中からいずれかの制限速度を選択する。このため、制限速度Vを大きく変更しなければならないような状況においても、予め、変更後の制限速度に対応する制限速度を記憶装置3に記憶させておくことで、その記憶した制限速度を選択するという簡単な操作で、制限速度Vの変更を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制限速度が設定されたとき、車両の走行速度が、設定された制限速度を超えないように車速制限制御を実行する車速制限制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の走行速度を制限する制限速度を、運転者によって設定可能な車速制限制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された車速制限制御装置では、メインスイッチがオン状態で、セット/コーストスイッチのオンが検知されると、その操作時点での実車速を、「記憶制限速度」としてメモリに記憶し、記憶制限速度を上限として車速を制御する。
【0003】
また、このような可変スピードリミッタ制御を実行中に、セット/コーストスイッチの所定時間以上のオンが検知された場合、メモリ内の記憶制限速度を一定時間ごとに所定車速(例えば、5km/h)だけ減少させる。また、セット/コーストスイッチの瞬間的なオン(例えば、0.5秒)が検知された場合、オン1回ごとにメモリ内の記憶制限速度を所定車速(例えば、1km/h)だけ減少させる。
【0004】
一方、可変スピードリミッタ制御を実行中に、リジューム/アクセルスイッチの所定時間以上のオンが検知された場合、メモリ内の記憶制限速度を一定時間ごとに所定車速(例えば、5km/h)だけ増加させる。また、リジューム/アクセルスイッチの瞬間的なオン(例えば、0.5秒)が検知された場合、オン1回ごとにメモリ内の記憶制限速度を所定車速(例えば、1km/h)だけ増加させる。
【0005】
このように、セット/コーストスイッチやリジューム/アクセルスイッチを用いることにより、運転者は、可変スピードリミッタ制御に用いられる制限速度として、所望の制限速度を設定することができる。
【0006】
そして、キャンセルスイッチのオンが検知された場合や、メインスイッチのオフが検知された場合、可変スピードリミッタ制御の実行が解除される。この際、キャンセルスイッチがオンされた場合には、リジュームスイッチの操作による、元の制限速度での可変スピードリミッタ制御の再開に備えて、記憶制限速度がメモリ内に保持されるが、メインスイッチがオフされた場合には、記憶制限速度はメモリ内に保持されない(消去される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−153147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の車速制限制御装置では、例えば、車両が走行する道路の種別や状況が変化(高速道路と一般道路など)するなどして、制限速度を大きく変更しなければならない場合に、そのための操作が煩雑となる不具合がある。
【0009】
すなわち、スピードリミッタ制御を有効としたまま、制限速度を変更させようとした場合には、比較的長い期間、セット/コーストスイッチまたはリジューム/アクセルスイッチをオンし続けなければならない。また、スピードリミッタ制御を一旦終了して、新たな道路種別の道路の走行を開始したときに、改めてスピードリミッタ制御を開始する場合には、キャンセルスイッチをオンし、その後、車両の走行速度が運転者の希望する車速となったときを見計らって、セット/コーストスイッチをオンする必要がある。
【0010】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、車速制限制御に用いる制限車速を大きく変更しなければならない場合であっても、簡単な操作で、その変更を行うことが可能な車速制限制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車速制限制御装置は、制限速度が設定されたとき、車両の走行速度が、設定された制限速度を超えないように車速制限制御を実行するものであって、
車両の運転者によって設定された制限速度を複数記憶可能な記憶手段と、
運転者によって操作されるものであり、記憶手段に複数の制限速度が記憶されているとき、運転者による操作に応じて、車速制限制御に用いる制限速度として、記憶手段に記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択する選択操作手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上述した従来の車速制限制御装置では、メモリ内に保持される記憶制限速度は1つのみである。このため、制限速度を大きく変更させることが必要な場合には、上述したような、長期間にわたるスイッチ操作や、制限速度を設定し直す操作が必要となる。
【0013】
それに対して、請求項1に記載の車速制限制御装置では、複数の制限速度を記憶可能な記憶手段を有し、運転者によって操作される選択操作手段により、車速制限制御に用いる制限速度として、記憶手段に記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度が選択されるように構成されている。このため、制限速度を大きく変更しなければならないような状況においても、予め、変更後の制限速度に対応する制限速度を記憶させておくことで、その記憶した制限速度を選択するという簡単な操作で、制限速度の変更を行うことが可能となる。このように、請求項1の車速制限制御装置によれば、従来に比較して、制限速度の変更に伴う運転者の操作負担を大幅に軽減することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載したように、車速制限制御を実行可能にするか否かを切り替えるメインスイッチと、車両の現在の走行速度を、制限速度として設定するためのセットスイッチと、車速制限制御をキャンセルするためのキャンセルスイッチと、車速制限制御がキャンセルされたときに、記憶手段に一時的に記憶される制限速度を、再度、車速制限制御に用いる制限速度として設定するためのリジュームスイッチと、を備え、記憶手段は、メインスイッチ、セットスイッチ、キャンセルスイッチ、及びリジュームスイッチの中で、複数のスイッチが所定のパターンで操作されたときに、その操作時の制限速度を記憶することが好ましい。
【0015】
所望の制限速度を記憶させるための専用のスイッチなどを設けることも可能であるが、その分、構成部品が増加して、コストの上昇を招くという不具合が生じる。
【0016】
ここで、上述したメインスイッチ、セットスイッチ、キャンセルスイッチ、及びリジュームスイッチは、車速制限制御装置における既存のスイッチである。従って、これらのスイッチの中で、複数のスイッチが所定のパターンで操作されたときに、その操作時の制限速度を記憶するようにすれば、特別な構成部品を追加することなく、所望の速度を、制限速度として記憶させることができる。また、制限速度の記憶のため、複数のスイッチが所定のパターンで操作されることを条件としているので、個々のスイッチが単独で操作されたときと明確に識別することができる。
【0017】
請求項3に記載したように、車速制限制御を実行可能にするか否かを切り替えるメインスイッチと、車両の現在の走行速度を、制限速度として設定するためのセットスイッチと、車速制限制御をキャンセルするためのキャンセルスイッチと、車速制限制御がキャンセルされたときに、記憶手段に一時的に記憶される制限速度を、再度、車速制限制御に用いる制限速度として設定するためのリジュームスイッチと、を備え、セットスイッチとリジュームスイッチとは、車速制限制御が実行されている間、設定されている制限速度を、増速又は減速するためのスイッチとして、または、選択操作手段として、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして機能するものであり、その操作時間に応じて、いずれのスイッチとして機能するかが切り替えられるようにすることが好ましい。
【0018】
このような構成を採用することにより、請求項2の場合と同様に、車速制限制御装置における既存のスイッチを利用して、記憶された複数の制限速度の中から所望の制限速度を選択することが可能になる。
【0019】
具体的には、請求項4に記載したように、セットスイッチとリジュームスイッチとの内、増速スイッチとして機能するスイッチが、その操作時間により、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より高い制限速度が選択され、減速スイッチとして機能するスイッチが、その操作時間により、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より低い制限速度が選択されることが好ましい。このように、増速スイッチとして機能するスイッチにより、より高い制限速度が選択され、減速スイッチとして機能するスイッチにより、より低い制限速度が選択されるように構成することで、運転者は、記憶された制限速度の中から、感覚的に、所望の制限速度を選択しやすくなる。
【0020】
さらに、請求項5に記載したように、セットスイッチまたはリジュームスイッチの操作により、記憶手段に記憶された複数の制限速度の中から1つの制限速度が選択されたとき、さらにセットスイッチ又はリジュームスイッチが操作されることにより、選択されている制限速度よりも次に高い又は次に低い制限速度が選択されるようにすることが好ましい。これにより、記憶手段に3個以上の制限速度が記憶されている場合でも、運転者は、所望の制限速度を選択することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載したように、車両の走行速度が制限速度を超えた場合に、運転者に対して警告を行う警告手段が複数設けられ、車速制限制御に用いる制限速度として、記憶手段に記憶された制限速度が選択された結果、車両の走行速度が制限速度を上回っている状況が発生した場合、複数の警告手段の内、少なくとも1つの警告手段の動作を停止させることが好ましい。
【0022】
車速制限制御に用いる制限速度として、記憶手段に記憶された制限速度の中から1つの制限速度を選択するようにすると、制限速度が、車両の現在の車速よりも低くなることが起こりえる。しかしながら、この場合、運転者は、自ら、現車速よりも低い制限速度を選択したのであるから、運転者は、車両の走行速度が制限速度を超えていることを十分に認識していると考えられる。従って、運転者に対して、車両の走行速度が制限速度を超えていることを警告する必要性は極めて乏しい。このため、このような場合には、複数の警告手段の内、少なくとも1つの警告手段の動作を停止させることにより、余計な警告を行って運転者に煩わしさを感じさせることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態による車速制限制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】記憶装置3に制限速度を記憶させるための処理を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートの処理による作動を説明するための作動説明図である。
【図4】リジュームスイッチによる制限車速切換処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートの処理による作動を説明するための作動説明図である。
【図6】車両の走行速度が制限速度を超えた場合に実行される警告処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態による車速制限制御装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による車速制限制御装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、車速制限制御装置は、各種のセンサやスイッチ、エンジンECU1、及びメーターECU11などから構成される。
【0025】
エンジンECU1には、エンジンの運転状態を検出するための各種のセンサの他、車速センサ8、アクセルセンサ9、及びブレーキスイッチ10からの信号も入力される。車速センサ8は、車両の走行速度に応じた車速信号を出力する。アクセルセンサ9は、自車両の運転者による、図示しないアクセルペダルの踏込量に応じた検出信号を出力する。また、ブレーキスイッチ10は、運転者によって図示しないブレーキペダルが踏み込まれたときに、ブレーキ操作信号を出力する。
【0026】
さらに、エンジンECU1には、車速制限制御(スピードリミッタ制御)用の作動スイッチである、メインスイッチ4、キャンセルスイッチ5、リジュームスイッチ6、及びセットスイッチ7からの信号が入力されている。このスピードリミッタ制御用の作動スイッチ4〜7は、例えば、ステアリングホイールの裏側などに設置される操作レバーに、一体的に形成することができる。すなわち、操作レバーを下方に動かすことでセットスイッチ7がオンし、上方に動かすことでリジュームスイッチ6がオンし、操作レバーを手前に動かすことで、キャンセルスイッチ5がオンするように構成することができる。メインスイッチ4は、例えば、操作レバーの先端に、プッシュスイッチとして形成される。このような操作レバーは、良く知られている定速走行制御装置の操作レバーと同様のものである。ただし、これらの各作動スイッチ4〜7は、操作レバーに一体的に設けられる以外にも、例えば、ステアリングパッド上や、インストルメントパネル上に個別に設けられても良い。
【0027】
各作動スイッチ4〜7のうち、メインスイッチ4は、スピードリミッタ制御の実行の可否を選択的に切り換えるためのものである。つまり、メインスイッチ4をオンすることにより、スピードリミッタ制御を実行可能な制御モードとなり、メインスイッチ4をオフすることにより、スピードリミッタ制御が実行不可の状態となる。
【0028】
セットスイッチ7は、メインスイッチ4がオンされており、かつ制限速度が未設定である場合に、セットスイッチ7がオンされたときの自車両の走行速度を制限速度として設定するものである。このセットスイッチ7は、設定された制限速度を減速させるためのコーストスイッチとしての機能も兼ねている。つまり、制限速度が設定されているときに、セットスイッチ7が操作されると、コーストスイッチとして機能し、制限速度を所定速度だけ減速させる。
【0029】
本実施形態においても、セットスイッチ7をコーストスイッチとして機能させる場合、その操作時間に応じて、制限速度を減速させる速度を異ならせている。具体的には、セットスイッチ7が短時間(例えば、0.5秒未満)だけオンされた場合、第1の所定速度(例えば1km/h)だけ制限速度が減速される。一方、セットスイッチ7が長時間(例えば1秒以上)に渡ってオンされ続けると、所定時間(例えば1秒)毎に、第1の所定速度よりも大きな第2の所定速度(例えば5km/h)ずつ制限速度が減速される。さらに、本実施形態では、このセットスイッチ7に、記憶装置3に記憶された制限速度から、所望の制限速度を選択するための選択操作スイッチとしての機能も担わせているが、この点については後に詳しく説明する。
【0030】
キャンセルスイッチ5は、スピードリミッタ制御を解除するためのものである。ただし、キャンセルスイッチ5がオンされて、スピードリミッタ制御が解除されても、それまでに実行されていたスピードリミッタ制御で用いられていた制限速度は、記憶装置3に保持される。
【0031】
リジュームスイッチ6は、キャンセルスイッチ5によりスピードリミッタ制御がキャンセル(解除)された後に、以前の制限速度にてスピードリミッタ制御の再開を指示するためのものである。すなわち、記憶装置3に、以前のスピードリミッタ制御で用いられていた制限速度が保持されているときに、リジュームスイッチ6がオンされると、記憶装置3に保持されている制限速度が、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度として再度設定される。
【0032】
また、リジュームスイッチ6は、設定された制限速度を増速させるためのアクセルスイッチとしての機能も兼ねている。つまり、制限速度が設定されているときに、リジュームスイッチ6が操作されると、アクセルスイッチとして機能し、制限速度が所定速度だけ増速される。
【0033】
このリジュームスイッチ6による増速操作に関しても、セットスイッチ7による減速操作と同様に、リジュームスイッチ6の操作時間に応じて、制限速度を増速させる速度を異ならせている。具体的には、リジュームスイッチ6が短時間(例えば、0.5秒未満)だけオンされた場合、第1の所定速度(例えば1km/h)だけ制限速度が増速される。一方、リジュームスイッチ6が長時間(例えば1秒以上)に渡ってオンされ続けると、所定時間(例えば1秒)毎に、第1の所定速度よりも大きな第2の所定速度(例えば5km/h)ずつ制限速度が増速される。さらに、本実施形態では、このリジュームスイッチ6にも、セットスイッチ7とともに、記憶装置3に記憶された制限速度から、所望の制限速度を選択するための選択操作スイッチとしての機能を担わせているが、この点については後述する。
【0034】
これらの作動スイッチ4〜7を操作することで、自車両の運転者は、所望の制限車速を設定して、スピードリミッタ制御を実行させることができるようになる。なお、上述した例では、セットスイッチ7にコーストスイッチとしての役割を担わせ、リジュームスイッチ6にアクセルスイッチとしての役割を担わせたが、逆の関係としても良い。すなわち、セットスイッチ7にアクセルスイッチとしての役割を担わせ、リジュームスイッチ6にコーストスイッチとしての役割を担わせても良い。
【0035】
エンジンECU1は、スピードリミッタ制御部2を備え、このスピードリミッタ制御部2は、上述した車速センサ8、及び各作動スイッチ4〜7からの信号に基づいて、スピードリミッタ制御を実行する。なお、スピードリミッタ制御部2は、エンジンECU1の動作プログラムの一部により構成されている。
【0036】
具体的には、スピードリミッタ制御部2は、メインスイッチ4がオンされて、スピードリミッタ制御が実行可能な制御モードとなっているときに、セットスイッチ1などにより、制限速度が設定されると、その制限速度を、記憶装置3に保持する。
【0037】
なお、記憶装置3は、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度を保持したり、キャンセルスイッチ5がオンされたときに、以前の制限速度を保持したりするものである。ただし、このようにして記憶装置3に保持された制限速度は、メインスイッチ4がオフされたとき消去される。
【0038】
さらに、記憶装置3は、運転者によって作動スイッチ4〜7が操作され、それが、現在設定されている制限速度の記憶を指示する所定の操作パターンに該当する場合、現在設定されている制限速度の記憶も行う。記憶装置3は、複数の制限速度を記憶する容量を備え、運転者によって制限速度の記憶が指示されるごとに、その指示時点において設定されている制限速度を記憶することができる。このようにして記憶された制限速度は、メインスイッチ4がオフされても、記憶装置3において記憶され続ける。
【0039】
そして、スピードリミッタ制御部2は、制限速度が設定されると、その制限速度に関する情報をメーターECU11に送信する。すると、メーターECU11は、メーター13内において、設定された制限速度を表示させる。これにより、運転者は、現在の制限速度を認識することが可能になる。
【0040】
スピードリミッタ制御部2は、車速センサ8によって出力される車速信号から算出された車両の走行速度と、設定されている制限速度とを比較する。車両の走行速度が制限速度を超えた場合、スピードリミッタ制御部2は、図示しないエンジンへの燃料噴射量を制限したり、エンジンの吸気管に設けられたスロットルバルブの開度を減少させたりして、車両の走行速度が制限速度以下となるように車速制御を行う。同時に、スピードリミッタ制御部2は、車両の走行速度が制限速度を超えた場合、メーターECU11に対し、警告を行うように指示する。すると、メーターECU11は、ブザー12を鳴らしたり、メーター13内に表示している制限速度の点滅や表示色の変更を行ったりして、運転者に対して警告を行う。
【0041】
上述したように、本実施形態の車速制限制御装置は、複数の制限車速を記憶可能な記憶装置3を備え、運転者によって記憶指示がなされたときに、そのときに設定されている制限速度を記憶装置3に記憶させる。従って、スピードリミッタ制御において使用頻度の高い、あるいは使用する可能性が高い制限速度を、事前に記憶装置3に記憶させておくことができる。
【0042】
そして、記憶装置3に記憶された制限速度の中から、選択操作スイッチとして、リジュームスイッチ6及び/又はセットスイッチ7を操作して、所望の制限速度を選択し、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度として設定することができる。
【0043】
従って、自車両が走行する道路の種類や状況が変化し、スピードリミッタ制御の制限速度を大きく変更しなければならないような状況においても、予め、変更後の制限速度に対応する制限速度を記憶装置3に記憶させておくことで、その記憶した制限速度を選択するという簡単な操作で、制限速度の変更を行うことが可能となる。このように、本実施形態の車速制限制御装置によれば、従来に比較して、制限速度の変更に伴う運転者の操作負担を大幅に軽減することができるようになる。
【0044】
以下に、記憶装置3に制限速度を記憶させるための処理方法、及び記憶装置3に記憶された制限速度の中から所望の制限速度を選択するための処理方法について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0045】
図2は、記憶装置3に制限速度を記憶させるための処理を示すフローチャートである。この図2のフローチャートに示す処理は、メインスイッチ4がオンされている間、所定の周期で繰り返し実行される。
【0046】
まず、ステップS1では、リジュームスイッチ6、セットスイッチ7からの操作信号を取り込み、短時間(例えば0.5秒未満)だけオンされたかどうかを検出する。続くステップS2では、タイマが動作中であるか否かを判定する。
【0047】
ここで、本実施形態においては、図3のタイムチャートに示すように、2秒間の間に、リジュームスイッチ6の短時間操作→セットスイッチ7の短時間操作→リジュームスイッチ6の短時間操作→セットスイッチ7の短時間操作が行われた場合に、現在設定されている制限速度の記憶を指示する所定の操作パターンの操作が行われたものとみなす。ステップS2のタイマは、所定の操作パターンに従うスイッチ操作が開始された場合に、その開始時点からの経過時間をカウントするためのものである。
【0048】
ステップS2においてタイマ動作中であると判定された場合には、ステップS3の処理に進み、タイマ動作中でないと判定された場合には、ステップS4の処理に進む。
【0049】
ステップS4では、リジュームスイッチ6が短時間操作されたか否かを判定する。図3に示すように、リジュームスイッチ6の短時間操作が、上述した所定の操作パターンに従う、最初のスイッチ操作である。従って、ステップS4にてリジュームスイッチ6が短時間操作されたと判定されると、ステップS7に進んで、タイマをスタートさせる。
【0050】
一方、ステップS3では、動作中のタイマのカウント時間が2秒以内であるか否かを判定する。もし2秒以上であれば、上述した所定の操作パターンに該当しないため、ステップS6に進んで、タイマをストップさせるとともに、そのカウント時間をクリアする。
【0051】
ステップS3にてタイマのカウント時間が2秒以内と判定された場合には、ステップS5に進む。ステップS5では、スイッチの短時間操作の順序が、予め定めされた所定の操作パターンに従ったものであるか否かを判定する。このとき、所定の操作パターンに従ったものであると判定されれば、ステップS8において、現在設定されている制限速度を、記憶装置3に記憶させる。さらに、タイマをストップさせるとともに、タイマのカウント時間をクリアする。
【0052】
このように、本実施形態では、車速制限制御装置における既存のスイッチである、リジュームスイッチ6及びセットスイッチ7が所定のパターンで操作されたときに、その操作時に設定されている制限速度を記憶するようにした。このため、制限速度記憶のための特別な(専用の)構成部品を追加することなく、所望の速度を、制限速度として記憶させることができる。また、制限速度の記憶のため、リジュームスイッチ6とセットスイッチ7とが所定のパターンで操作されることを条件としているので、個々のスイッチ6,7が単独で操作されたときと明確に識別することができる。
【0053】
次に、記憶装置3に記憶された制限速度の中から所望の制限速度を選択するための処理について、リジュームスイッチ6による場合を例として、図4のフローチャート及び図5のタイムチャートに基づいて説明する。なお、図4のフローチャートに示す制限車速切換処理も、メインスイッチ4がオンされている間、所定の周期で繰り返し実行される。
【0054】
上述したように、リジュームスイッチ6は、設定された制限速度を増速させるためのアクセルスイッチとしての機能も兼ねている。このリジュームスイッチ6を、さらに選択操作スイッチとしても機能させるため、本実施形態では、操作時間により、リジュームスイッチ6の操作を3種類に区分している。
【0055】
具体的には、図5に示すように、0.5秒未満の短時間操作がなされた場合、すなわち、図4のステップS11にて、リジュームスイッチ6がオンされてから0.5秒未満でオフされたと判定された場合、リジュームスイッチ6はアクセルスイッチとして機能し、第1の所定速度(1km/h)だけ制限速度を増加させる増速作用が実行される。この場合、ステップS12において、1km/hだけ増加した制限速度Vが、新たな制限速度Vに設定される。
【0056】
次に、図5に示すように、0.5秒以上1秒未満の中時間操作がなされた場合、すなわち、図4のステップS13において、リジュームスイッチ6がオンされてから0.5秒以上1秒未満でオフされたと判定された場合、リジュームスイッチ6は選択操作スイッチとして機能することになる。この場合、リジュームスイッチ6がオフされた時点で、ステップS14において、記憶装置3に記憶された制限速度の中でより高い制限速度VMHが選択され、スピードリミッタ制御に用いる制限速度として設定される。
【0057】
最後に、図5に示すように、1秒以上の長時間操作がなされた場合、すなわち、図4のステップS15にて、リジュームスイッチ6がオンされてから1秒以上経過したと判定された場合、リジュームスイッチ6はアクセルスイッチとして機能し、第1の所定速度(1km/h)よりも大きな第2の所定速度(5km/h)だけ制限速度を増加させる増速作用が実行される。この場合、ステップS16において、5km/hだけ増加した制限速度Vが、新たな制限速度Vに設定される。
【0058】
ただし、制限速度Vをいきなり5km/h変化させると、予期しない事態が発生する恐れもあるので、図5に示すように、リジュームスイッチ6がオンされてから1秒経過した時点から徐々に制限速度Vを5km/h分だけ増加させることが好ましい。また、リジュームスイッチ6がオンされている時間が1秒経過するごとに、制限速度Vは、5km/hずつ増加される。
【0059】
セットスイッチ7による制限車速切換処理も、上述したリジュームスイッチ6による制限車速切換処理と、ほぼ同様に実行される。すなわち、操作時間により、セットスイッチ7の操作が3種類に区分され、短時間操作の場合、第1の所定速度(1km/h)だけ制限速度Vが減少される。また、中時間操作の場合、記憶装置3に記憶された制限速度の中でより低い制限速度VMLが選択され、スピードリミッタ制御に用いる制限速度として設定される。さらに、長時間操作の場合、第1の所定速度(1km/h)よりも大きな第2の所定速度(5km/h)だけ制限速度が減少される。
【0060】
ここで、記憶装置3に記憶されている制限速度が、2つのみであれば、上述したリジュームスイッチ6又はセットスイッチ7を用いた制限車速切換処理により、いずれの制限速度も任意に選択することができる。しかしながら、記憶装置3に3つ以上の制限速度が記憶されている場合には、上述した処理のみでは、任意の制限速度を選択することができない。
【0061】
このような場合、次のようにすれば良い。すなわち、リジュームスイッチ6、又はセットスイッチ7が、中時間操作されて、選択操作スイッチとして機能したとき、記憶装置3に記憶されている制限速度の中で、操作されたスイッチに応じて、まず、最も高い制限速度、又は最も低い制限速度を選択しつつ、制限速度選択モードに移行するようにする。そして、この制限速度選択モードにおいて、リジュームスイッチ6が短時間操作されたときには、現在選択されている制限速度よりも次に高い制限速度が選択されるようにし、セットスイッチ7が短時間操作されたときには、現在選択されている制限速度よりも次に低い制限速度が選択されるようにする。制限速度選択モードにおいて、現在選択されている制限速度は、メーター13内に表示される。従って、運転者は、3つ以上の複数の制限速度が記憶されている場合であっても、その中から、所望の制限速度を選択することができるようになる。
【0062】
そして、所定時間の間、リジュームスイッチ6及びセットスイッチ7による制限速度を変更するための選択操作が行われなければ、制限速度選択モードを終了し、最後に選択されている制限速度を、スピードリミッタ制御に用いる制限速度として設定する。
【0063】
以上により、車速制限制御装置における既存のスイッチである、リジュームスイッチ6及びセットスイッチ7を利用して、記憶装置3に記憶された複数の制限速度の中から所望の制限速度を選択することが可能になる。
【0064】
そして、上述した例においては、アクセルスイッチとして機能するリジュームスイッチ6が、選択操作スイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より高い制限速度を選択し、コーストスイッチとして機能するセットスイッチ7が、選択操作スイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より低い制限速度を選択するように構成されている。このように、アクセルスイッチとして機能するリジュームスイッチ6により、より高い制限速度が選択され、コーストスイッチとして機能するセットスイッチ7により、より低い制限速度が選択されるように構成することで、運転者は、記憶された制限速度の中から、感覚的に、所望の制限速度を選択しやすくなる。
【0065】
次に、本実施形態の車速制限制御装置による、警告処理について説明する。車速制限制御装置は、原則として、車両の走行速度が制限速度を超えた場合、ブザー12を鳴らしたり、メーター13内の制限速度の表示を点滅させたりして、運転者への警告を行う。
【0066】
ただし、本実施形態のように、スピードリミッタ制御に用いる制限速度として、記憶装置3に記憶された制限速度の中から1つの制限速度を選択するようにすると、制限速度が、車両の現在の走行速度よりも大幅に低くなることが起こりえる。この場合、運転者は、自ら、現車速よりも低い制限速度を選択したのであるから、運転者は、車両の走行速度が制限速度を超えていることを十分に認識していると考えられる。従って、運転者に対して、車両の走行速度が制限速度を超えていることを警告する必要性は乏しいといえる。逆に、通常通りの警告を行うと、運転者に煩わしさを感じさせる虞がある。
【0067】
そこで、本実施形態においては、記憶装置3に記憶された制限速度Vを用いて設定された制限速度Vが、現在の車両の走行速度よりも低い場合には、ブザー12は鳴らないようにし、メーター13に表示される制限車速Vの点滅表示による警告のみを行うようにした。このような警告処理を行うための処理が、図6のフローチャートに示されている。
【0068】
まず、ステップS21で、現在の車両の走行速度Vが、制限速度Vを超えているか否かが判定される。現在の車両の走行速度Vが制限速度Vを超えていると判定された場合、ステップS23に進む。ステップS23では、記憶装置3に記憶された制限速度Vを用いて、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度Vが切り替えられたか否かを判定する。なお、記憶装置3に記憶された制限速度Vを用いて、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度Vが切り替えられた場合には、フラグ等を用いて、切換処理が行われたことを記録しておく。ステップS23では、その記録結果を参照して、記憶された制限速度Vを用いて、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度Vが切り替えられたか否かを判定する。
【0069】
ステップS23にて否定判定(S23での判定結果:NO)された場合、ステップS24に進み、ブザー12を鳴らし、かつメーター13内に表示される制限車速Vを点滅表示させて、運転者に対して警告を行う。ステップS23にて肯定判定(S23での判定結果:YES)された場合、ステップS25に進み、ブザー12を鳴らさずに、メーター13に表示される制限車速Vの点滅表示のみを行う。
【0070】
ステップS21にて、現在の車両の走行速度Vが制限車速Vを超えていないと判定された場合には、ステップS22に進み、記憶装置3に記憶された制限速度Vを用いて、スピードリミッタ制御に用いられる制限速度Vが切り替えられたことを記録した結果をリセットする。これにより、記憶した制限車速Vを用いて、現在の車両の走行速度Vよりも低い側に制限車速Vを切り替えた場合であっても、現在の車両の走行速度Vが制限車速Vよりも小さくなった後は、通常どおりの警告を実施することが可能となる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、車速制限制御装置における既存のスイッチを用いて、制限車速の記憶、及び記憶された制限車速の中からの所望の制限車速の選択を行うようにしたが、これらの処理を実施するためのスイッチを新設するようにしても良い。
【0073】
また、上述した実施形態では、車速制限制御装置における既存のスイッチとして、リジュームスイッチ6とセットスイッチ1とが所定の操作パターンで操作されたときに、そのときに設定されている設定速度を記憶するようにした。しかしながら、既存のスイッチとして、メインスイッチやキャンセルスイッチを用いることも可能である。さらに、所定の操作パターンとして、複数のスイッチが順番に操作されるだけでなく、複数のスイッチが同時に操作されることをもって、所定の操作パターンに従う操作が行われたと判定しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジンECU
2 スピードリミッタ制御部
3 記憶装置
4 メインスイッチ
5 キャンセルスイッチ
6 リジュームスイッチ
7 セットスイッチ
8 車速センサ
11 メーターECU
12 ブザー
13 メーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制限速度が設定されたとき、車両の走行速度が前記制限速度を超えないように車速制限制御を実行する車速制限制御装置において、
前記車両の運転者によって設定された制限速度を複数記憶可能な記憶手段と、
前記運転者によって操作されるものであり、前記記憶手段に複数の制限速度が記憶されているとき、前記運転者による操作に応じて、前記車速制限制御に用いる制限速度として、前記記憶手段に記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択する選択操作手段と、を備えることを特徴とする車速制限制御装置。
【請求項2】
前記車速制限制御を実行可能にするか否かを切り替えるメインスイッチと、
前記車両の現在の走行速度を、前記制限速度として設定するためのセットスイッチと、
前記車速制限制御をキャンセルするためのキャンセルスイッチと、
前記車速制限制御がキャンセルされたときに、前記記憶手段に一時的に記憶される前記制限速度を、再度、前記車速制限制御に用いる制限速度として設定するためのリジュームスイッチと、を備え、
前記記憶手段は、前記メインスイッチ、セットスイッチ、キャンセルスイッチ、及びリジュームスイッチの中で、複数のスイッチが所定のパターンで操作されたときに、その操作時の制限速度を記憶することを特徴とする請求項1に記載の車速制限制御装置。
【請求項3】
前記車速制限制御を実行可能にするか否かを切り替えるメインスイッチと、
前記車両の現在の走行速度を、前記制限速度として設定するためのセットスイッチと、
前記車速制限制御をキャンセルするためのキャンセルスイッチと、
前記車速制限制御がキャンセルされたときに、前記記憶手段に一時的に記憶される前記制限速度を、再度、前記車速制限制御に用いる制限速度として設定するためのリジュームスイッチと、を備え、
前記セットスイッチと前記リジュームスイッチとは、前記車速制限制御が実行されている間、設定されている制限速度を、増速又は減速するためのスイッチとして、または、前記選択操作手段として、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして機能するものであり、操作時間に応じて、いずれのスイッチとして機能するかが切り替えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の車速制限制御装置。
【請求項4】
前記セットスイッチと前記リジュームスイッチとの内、増速スイッチとして機能するスイッチが、その操作時間により、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より高い制限速度が選択され、減速スイッチとして機能するスイッチが、その操作時間により、記憶された複数の制限速度の中からいずれかの制限速度を選択するためのスイッチとして動作する場合、記憶された複数の制限速度の中から、より低い制限速度が選択されることを特徴とする請求項3に記載の車速制限制御装置。
【請求項5】
前記セットスイッチまたはリジュームスイッチの操作により、前記記憶手段に記憶された複数の制限速度の中から1つの制限速度が選択されたとき、さらに前記セットスイッチ又はリジュームスイッチが操作されることにより、選択されている制限速度よりも次に高い又は次に低い制限速度が選択されることを特徴とする請求項4に記載の車速制限制御装置。
【請求項6】
前記車両の走行速度が前記制限速度を超えた場合に、運転者に対して警告を行う警告手段を複数備え、
前記車速制限制御に用いる制限速度として、前記記憶手段に記憶された制限速度が選択された結果、前記車両の走行速度が制限速度を上回っている状況が発生した場合は、前記複数の警告手段の内、少なくとも1つの警告手段の動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車速制限制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−240605(P2012−240605A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114632(P2011−114632)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】