軌道構造用の遮音マットとその製造方法
【課題】軌道側のエネルギーを床版側に伝播させないことで床版、鉄道橋の鋼床版における騒音低減を可能にした簡素な構成の軌道構造用の遮音マットとその遮音マットの製造方法の提供。
【解決手段】本発明の軌道構造用の遮音マットは、床版の上部に積載されるバラスト20を介して鉄道車両が走行するレール15を支持する軌道構造における遮音マット30である。遮音マット30は、床版とバラスト20との間に設けられ、遮音マットの外皮を形成するマット外皮体31と、マット外皮体の内部に封入され、レール15側から床版10側に伝播されるエネルギーを遮断するための不凍性の粘性液状体36とから構成されている。遮音マット30とバラスト20との間には、路盤マット21が設けられているとよい。
【解決手段】本発明の軌道構造用の遮音マットは、床版の上部に積載されるバラスト20を介して鉄道車両が走行するレール15を支持する軌道構造における遮音マット30である。遮音マット30は、床版とバラスト20との間に設けられ、遮音マットの外皮を形成するマット外皮体31と、マット外皮体の内部に封入され、レール15側から床版10側に伝播されるエネルギーを遮断するための不凍性の粘性液状体36とから構成されている。遮音マット30とバラスト20との間には、路盤マット21が設けられているとよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が走行する軌道構造において遮音効果を備えた軌道構造用の遮音マットとその製造方法に関する。更に詳しくは、床版、鉄道橋の鋼床版等に設けられる軌道構造において遮音効果を備えた簡素な構成の軌道構造用の遮音マットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な環境を求める要望が強まり、騒音を低減する対策に関しても社会的要求が高まっている。この要望は、年々、より静かな、より快適な環境を求める方向にあり、新しい騒音低減対策を開発し施行しなければならない。鉄道車両は、バラスト道床、コンクリート道床、鋼桁等の上部に付設されたまくらぎに固定されたレール上を走行する。鉄道輸送は、他の交通手段に比べると、環境に優しいものといわれているが、鉄道車両が走行すると、鉄道沿線において、振動、騒音等問題を発生する。そのため、鉄道沿線に居住している住宅地、市街地の住民等から、厳しい騒音対策が求められている。
【0003】
特に、車輪がレールの継ぎ目部を通過するとき、大きな騒音が発生する。そのため、所定の長さ(例えば25m)のレールを複数溶接したロングレールにするとともに、継ぎ目を斜めにした伸縮継ぎ目にするなどの対策が施されている。また、騒音被害の大きい住宅地、住宅地近傍では、住宅との間に防音壁を設置する対策なども施されている。
【0004】
特許文献においても、軌道等に関して、いろいろな騒音低減対策が提案されている。
例えば、スラブ軌道上に吸音材料を敷設し、レール・車輪間で発生し、スラブ軌道面で反射される転動騒音を低減させる吸音構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、レールの頂面、側面等に防音部材を設けて騒音を緩和することも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。さらに、重いスラブ版、軽いスラブ版、重いスラブ版を重ねるとともに、このスラブ版間に弾性材を挿入する構成にしたスラブ軌道の騒音低減構造も知られている(例えば、特許文献4参照)。また、レール間の空間に粒形物を敷き詰めて吸音効果を持たせた省力型軌道構造も知られている(例えば、特許文献5参照)。さらに、マクラギと、マクラギの下部のブロックとの間に弾性部材を組み込んだマクラギ一体型コンクリート道床構造も知られている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特許第3285774号公報
【特許文献2】特開2003−082602号公報
【特許文献3】特開2001−342602号公報
【特許文献4】特開2006−249881号公報
【特許文献5】特許第2622492号公報
【特許文献6】特開2002−227101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1から6の技術に記載された対策、レールの継ぎ目に関する対策等を施しても、まだまだ、鉄道沿線の騒音対策としては不十分なものであった。すなわち、沿線住民が要求する静かな生活環境となるようにするには、さらなる改良策、改善策が必要であった。
【0006】
例えば、鉄道沿線において、騒音の大きい場所の一つとして鉄道橋がある。鉄道橋の騒音は、鉄道車両が走行するときに車輪、レール、架線、パンタグラフ等から発生する音(走行音)、橋桁、鋼床版等に伝わった音エネルギー、振動エネルギーによる放射音(構造物音)等が複合されたものである。すなわち、走行音に対する低減対策だけでなく、構造物音に対する対策として鋼床版、橋桁等に振動エネルギー等が伝わらないようにしないと、騒音を低減させることができないという問題点があった。
【0007】
近年、新しく設置される鉄道橋には、特許文献5に記載されたような技術を採用したいわゆる弾性バラスト軌道の技術が使われるようになって、従来に比べ、低振動、低騒音を達成しているが、コスト、工事期間等の関係で全部の鉄道橋に採用できるものではない。また、特許文献5の技術は、既設の鉄道橋に採用するのは困難である。そこで、構成が簡素で、工事期間も短縮され、安価で、かつ、既設の鉄道橋にも採用可能なものの開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決するためになされたもので、次の目的を達成する。
【0009】
本発明の目的は、床版、鉄道橋の鋼床版等において、軌道側のエネルギーを床版側に伝播させないことで床版、鉄道橋の鋼床版等における騒音低減を可能にした簡素な構成で、長期間性能劣化が生じない軌道構造用の遮音マットを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、安価に、効率よく遮音マットを製造することができる軌道構造用の遮音マットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1の軌道構造用の遮音マットは、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットであって、前記遮音マットは、前記床版と前記バラストとの間に設けられ、前記遮音マットの外皮を形成するマット外皮体と、前記マット外皮体の内部に封入され、前記レール側から前記床版側に伝播されるエネルギーを減衰させるための不凍性の粘性液状体とから構成され、前記鉄道車両が走行したとき、前記床版を含む構造物から発生する構造物音を減少させることを特徴とする。
【0012】
本発明2の軌道構造用の遮音マットは、本発明1において、
前記遮音マットと前記バラストとの間には、路盤マットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明3の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、袋状に形成されたものであり、このマット外皮体には、前記粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明4の軌道構造用の遮音マットは、本発明3において、
前記マット外皮体は、隣り合う軌道構造用遮音マットのマット外皮体と連結するための連結部が少なくとも両端に形成されているものであることを特徴とする。
【0015】
本発明5の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両端の開口部を密閉し、封入された前記粘性液状体を漏洩させない扁平状の封入栓とから構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明6の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両方の端部位置、または、前記マット外皮本体の端部位置及び所定の中間位置に設けられ、前記マット外皮本体を両側から挟み込むための一対の当て板と、この一対の当て板を締結するための締結手段とから構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明7の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から4において、
前記マット外皮体は、補強繊維または補強コードとゴムとが圧着されたマット素材、または、補強繊維または補強コードとゴムとが加硫されたマット素材で形成されているものであることを特徴とする。
【0018】
本発明8の軌道構造用の遮音マットは、本発明5または6において、
前記マット外皮本体は、芯材に巻きつけられた補強繊維または補強コードとゴムとが加硫された後、前記芯材から抜き取ったものであることを特徴とする。
【0019】
本発明9の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から8において、
前記粘性液状体は、液状ゴム、または、液状ゴムを主成分とする液状体であることを特徴とする。
【0020】
本発明10の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から9において、
前記鉄道橋の床版は、鋼床版であることを特徴とする。
【0021】
本発明11の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、補強繊維または補強コードとゴムとを圧着させたシート状のマット素材を作成する工程と、前記マット素材を所定の大きさの略四角形状に切断する工程と、切断した前記マット素材の4隅の角部を中心側に折りたたむ工程と、折りたたんだ前記マット素材が重なり合う部分を接合して袋状のマット外皮材を作成する工程と、前記マット外皮材の所定の位置に、粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓を設ける工程と、前記液状体注入栓から前記マット外皮体の内部に不凍性の前記粘性液状体を注入し遮音マットを製造する工程とからなっている。
【0022】
本発明12の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、本発明11において、
前記マット外皮材を作成する工程の後に、隣り合うマット外皮体同士を連結するための連結部を接合する工程を備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明13の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、前記芯型に巻きつけた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から、反転させながら芯型に面した平滑な面を表面になるよう抜き取る工程と、抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、前記マット外皮本体の開口している一方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記一方の端部を密閉する工程と、前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、前記マット外皮本体の開口している他方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記他方の端部を密閉する工程とからなっている。
【0024】
本発明14の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、巻きつけられた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から、反転させながら芯型に面した平滑な面を表面になるよう抜き取る工程と、抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、前記マット外皮体の開口している一方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と、前記一方の側を下にし、前記マット外皮体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、前記マット外皮体の開口している他方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程とからなっている。
【0025】
本発明15の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、本発明13または14において、
前記芯型から抜き取る工程は、反転させながら芯型に面した平滑な面が表面となるよう抜き取る工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の軌道構造用の遮音マットは、床版とバラストの間に、簡素な構成の遮音マットを設けることで、床版側例えば鉄道橋の鋼床版側に伝播しようとする振動エネルギー、音エネルギー等を減衰させることができ、床版、鉄道橋等における構造物音を低減させることができる。すなわち、鉄道沿線における騒音を低減させることができる。また、既存の鉄道橋においても、施行することができ、騒音低減対策として有効である。遮音マットは、簡素な構成であり、長期間使用しても、安全性、信頼性が高く、騒音低減(減衰)性能が劣化するおそれがない。既設の鉄道橋への敷設も容易であるとともに長期間にわたって性能低下が生じるおそれがない。
【0027】
また、本発明の軌道構造用遮音マットの製造方法は、簡単で、効率よく、安価で遮音マットを製造することができる。また、遮音マットの信頼性も高くすることができる。さらに、床版、鉄道橋の鋼床版における防音対策を行う際の工事費を、従来の方法に比べ、低減させることができるとともに効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の軌道構造用の遮音マット及びその製造方法の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の軌道構造用の遮音マットが設置された鉄道橋の断面図、図2は、鉄道橋を一部断面にして図示した正面図である。なお、図2はバラストを除去した状態で図示している。図3から図6は軌道構造用の遮音マットの製造方法1の説明図であって、図3は、シート状の繊維布の形状を示す平面図、図4は、シート状の繊維布の折りたたみ方法を説明するための説明図、図5(a)は、袋状のマット外皮体の接合を説明するための説明図、図5(b)は角部補強材の斜視図、図5(c)は張り合わせ部補強材の斜視図、図6(a)は、遮音マットの平面図、図6(b)は遮音マットの正面図である。
【0030】
図7、8は、軌道構造用の遮音マットの製造方法2を説明するための図であって、図7は、芯材にゴム(または、補強繊維、補強コード)を巻きつけている過程の説明図、図8(a)は、マット外皮本体に封入栓を密閉している過程の説明図、図8(b)は、封入栓を拡大した断面図である。図9は、軌道構造用の遮音マットの製造方法3で製造した遮音マットの斜視図であって、(a)は単体型、(b)は2連結型を示す図である。
【0031】
鉄道橋1は、主桁11、横桁12、縦桁13、鋼床版10等から構成されている。鋼床版10は、下部床版10a、側部床版10bとから構成され、下部床版10aの上部には複数の遮音マット30が敷設されている。例えば、この形態では、レール15の長手方向と直交する方向に6枚の遮音マット30が敷設されている(図1参照)。遮音マット30は、隣り合った遮音マットと連結されているとよい。遮音マット10aの上部には、路盤マット(バラストマット)21が敷設されており、路盤マット21の上部には、バラスト20が積まれている。側部床版10bとバラスト20との間にも遮音マット30が設けられている。
【0032】
バラスト20の上部には、まくらぎ16が設置され、まくらぎ16の上部にレール15が、レール締結装置17を介して固定されている。このレール15の上部を、鉄道車両(図示せず)が走行する。まくらぎは、コンクリート製のもの、いわゆるPCまくらぎと呼ばれているものであってもよい。なお、レール締結装置17は、周知な構成のものである。例えば、本出願人も、特開平10−18203号公報、特開2006−45989号公報等で開示している周知な技術であり、この実施の形態ではレール締結装置に関して詳しい説明をしない。
鉄道車両が走行すると、一般的には、車輪とレール、架線とパンタグラフ等から発生する音(走行音)、車体等が風を切る風切り音、橋桁、鋼床版10等に伝播する振動エネルギー、音エネルギー等による放射音(構造物音)とが複合された音が発生する。この複合された音が、鉄道沿線の住民にとって騒音となる。
【0033】
鉄道橋において、まくらぎ16の下部に、バラスト20、路盤マット21を設ける構成は、防音効果が生じると言われているが、まだまだ、不十分なものである。鉄道橋近傍等の鉄道沿線において、静かな生活環境を取り戻すためには、さらなる工夫が必要である。
【0034】
本実施の形態では、バラスト20の下部に敷かれた路盤マット21と、鋼床版10との間に、遮音マット30、30A、30Bを置き、レール15側から発生し、鋼床版10側に伝播されようとする音エネルギー、振動エネルギー等を減衰させている。すなわち、放射音(構造物音)を少なくして騒音減少対策としようとするものである。振動エネルギー、音エネルギーは、遮音マット30、30A、30B内で、熱エネルギーになり減衰する。遮音マット30、30A、30Bは、補強繊維、補強コードにゴム弾性体を被覆または一体化したマット外皮材31、50、50A、50Bと、マット外皮材31、50、50A、50Bの内部に封入される不凍性の粘性液状体36とから構成されている。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。ゴム弾性体は、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等を使用できる。
【0035】
粘性液状体36は、所定の粘性の液状体、液状ゴムなど好ましく、例えば、ウレタンゴム用ポリオール、液状イソプレンゴム、イソパラフィンなどが好ましい。また、液状ゴムに、ゴムスポンジ、ゴムチップ等が混入されたものであってもよい。粘性液状体36は、所定の粘性(例えば、液状イソプレンゴムの場合;100〜300Pa・s、測定温度;38℃)を有している液状体であればよい。粘性液状体36、マット外皮体31からなる遮音マット30、30A、30Bは、レール15、まくらぎ16側の振動エネルギー、音エネルギーなどを吸収して減衰させ、鋼床版10側に伝播させないように、または伝播させにくくする。例えば、鉄道沿線の騒音の大きい場所においては、周波数250〜2000Hz付近の騒音が大きく、特に1000Hz付近の騒音が顕著であるとされ、吸音材、遮音材には、前述した周波数範囲に対して高い吸音効果、遮音効果が求められ、バラスト20、路盤マット21を介して、鋼床版10側に伝播しようとするのを遮断または減衰させている。その結果、鋼床版10、主桁11等構造物から発生する構造物音を低減させることができる。
【0036】
〔遮音マットの製造方法1〕
本実施の形態の遮音マット30の製造方法の実施の形態(製造方法1)を、図3から図6に基づいて、説明する。
(1)接着処理した補強繊維(または補強コード)と、ゴムとを、カレンダーロール装置等でトッピング(圧着)したマット素材30aであるシート状の繊維布を作成する。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(2)トッピングしたシート状の繊維布を、図3に示すような所定の大きさに切断する。
【0037】
(3)図4に示すように、切断した繊維布を、折り線30bに沿って、折り紙式にたたみ込み、重なり合った部位である張り合わせ部30cを張り合わせ接合する。ゴム及び補強布、補強コードからなる繊維布は、未加硫状態で溶剤、ゴム糊(例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊)等を使用して成型し、加硫することで接合され、堅固な接着力を発揮する。4隅の角部に、角部補強体32を張り合わせ補強する。袋状にした張り合わせ部に補強体33を張り付け補強する(図5参照)。角部補強体32、補強体33は、未加硫状態で溶剤、ゴム糊(例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊)等を使用して成型し、加硫することで接合するとよい。角部補強体32、補強体33は、ゴムと、補強繊維、補強コードをトッピングしたもの等であることが好ましい。角部補強体32、補強体33は、接着剤による接合などで接合されていてもよい。
【0038】
(4)中央部に、逆止弁機能を備えた液状体注入栓34を取り付ける(図6参照)。すなわち、袋状のマット外皮体31の内部に、液状体注入装置(図示せず)から不凍性の粘性液状体36を注入する場合、液状体注入栓34に注入ノズル(図示せず)を差し込んだ状態で注入可能である。液状体注入栓34から注入ノズルを離脱させた状態では、液状体注入栓34は、袋状のマット外皮体31の内部から、注入した粘性液状体36が漏洩しないよう逆止弁機能を備えたものになっている。
【0039】
(5)両端に、取り付け穴35aが形成された取り付け部材35を取り付け、取り付け部付き袋状の外皮体31が形成される(図6参照)。
(6)不凍性の粘性液状体(例えば、ゲルまたはジェル状のウレタン系ゴム用ポリオール、液状イソプレンゴム、イソパラフィン)36を、液状体注入栓34から袋状のマット外皮体31に注入し、遮音マット30が製造される。
なお、遮音マットを、高耐圧製品仕様とする場合には、2枚または複数枚のマット素材(シート状の繊維布)を折りたたみ加硫して接合するとよい。加硫は、加硫缶による方法が好ましい。加硫缶で加硫する際、マット素材(シート状の繊維布)の内側は、上下のマット素材が接着しないように、離型材または打粉等を内面に塗り処理するとよい。
【0040】
〔遮音マットの製造方法2〕
本実施の形態の遮音マット30Aの製造方法の他の実施の形態(製造方法2)を、図7、8に基づいて、説明する。なお、この製造方法2のマット外皮体50は、マット外皮本体51と封入栓54a,54bとから形成される。
(1)芯型60を成型旋盤61または回転台にセットする(図7参照)。芯型60の直径は、円周の長さが、芯型60から抜いた素材Sを扁平状にし、後述する扁平状の封入栓54a、54bが着脱可能に挿入できる断面の長さ及び幅寸法に相当するようになっているとよい。
【0041】
(2)芯型60に、所定の長さ(例えば、芯型60に1〜1.1回転できる長さ)に裁断した所定の厚さ(例えば、2〜3mm)のゴムを、芯型60を回転させながら巻きつける。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
(3)ゴムの上に、所定の長さ(例えば、芯型60に1.2〜3回転できる長さ)に裁断した補強繊維または補強コードを、回転させながら巻きつける。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(4)補強繊維または補強コードの上に、内面ゴムとなる所定の厚さ(例えば、厚さ1〜2mm)のゴムを張りつける。この内面ゴムは、例えば、「芯型60の1回転+張り合わせ代」の長さを有するとよい。内面ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0042】
(5)内面ゴムを張りつけた上に固定用テープを巻き締めた後、加硫缶内で加硫して一体化する。この時の加硫条件は、例えば、加硫温度は150℃、加硫時間は30〜90分で行うとよい。
(6)芯型60から加硫して一体化した中空状で、かつ、円筒状のマット素材Sを、反転させながら、芯型60から抜き取る。すなわち、芯型60側のゴムの面が表面に、内面ゴムが内側に位置する。このようにすることで、芯型60に面した平滑な面が表面になるので好ましい。必要があれば所定の長さに切断する。
【0043】
(7)円筒状のマット素材Sの両方の端部側の内面を研削した後、中空状、かつ、円筒状のマット素材を扁平状にして、扁平状のマット外皮本体51とする。研削は、非金属用で粗めの汎用砥石で接着する部分全面に行うとよい。一方の端部内面に接着剤を塗布する。接着剤として、例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊を塗り、乾燥後、更に未加硫のゴムシート(厚さ0.3〜0.5mm)を張るとよい。マット外皮本体51の一方の端面側に、別途作成した扁平状の封入栓54aを、接合金型にて加硫接合する。扁平状の封入栓54aの表面にも、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊を塗り、乾燥後、更に未加硫のゴムシート(厚さ0.3〜0.5mm)を張る処理を施しておくとよい。この扁平状の封入栓の外周部の先端側は、耐圧性を向上させるためのリップ54dが形成されていることが好ましい〔図8(b)参照〕。
【0044】
(8)扁平状のマット外皮本体51を、一方の側を下にするとともに、傾斜させ、開口している他方の側から封入する不凍性の粘性液状体36を流し込む。
(9)マット外皮本体51の他方の端面側の内面に接着剤を塗布する。他方の端面側に、扁平状の封入栓54bを挿入し、接合金型にて加硫接合して密閉する。この扁平状の封入栓54bの外周部の先端側にも、耐圧性を向上させるためのリップ54dが形成されていることが好ましい。
(10)また、粘性液状体の種類によっては、マット外皮本体51、封入栓54a、54bを一体にした後、粘性液状体を注入してもよい。この場合、開閉バルブを備えた注入ノズルを注入側封入栓に差し込んで注入する。また、反対側封入栓には空気抜穴を設けておくことが好ましい。この場合の封入栓には、注入時開いて、注入終了時には閉じる逆止弁機能を設けておくとよい。このように製作されたものが、遮音マット50となる。
【0045】
〔遮音マットの製造方法3〕
本実施の形態の遮音マット30Bの製造方法のさらに他の実施の形態(製造方法3)を、図7、9に基づいて、説明する。なお、この製造方法3のマット外皮体50A、50Bは、マット外皮本体52と当て板55a,55b、締結手段とから形成される。
(1)芯型60を成型旋盤61または回転台にセットする(図7参照)。
(2)芯型60に、所定の長さ(例えば、芯型60に1〜1.1回転できる長さ)に裁断した所定の厚さ(例えば、2〜3mm)のゴムを、芯型60を回転させながら巻きつける。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0046】
(3)ゴムの上に、所定の長さ(例えば、芯型60に1.2〜3回転できる長さ)に裁断した補強繊維または補強コードを、回転させながら巻きつける。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(4)補強繊維または補強コードの上に、内面ゴムとなる所定の厚さ(例えば、厚さ1〜2mm)のゴムを張りつける。この内面ゴムは、例えば、「芯型60の1回転+張り合わせ代」の長さを有するとよい。内面ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0047】
(5)内面ゴムを張りつけた上に固定用テープを巻き締めた後、加硫缶内で加硫して一体化する。この時の加硫条件は、例えば、加硫温度は150℃、加硫時間は30〜90分で行うとよい。
(6)芯型60から加硫した一体化した中空状、かつ、円筒状のマット素材Sを、反転させながら、芯型60から抜き取る。すなわち、芯型60側のゴムの面が表面に、内面ゴムが内側に位置する。このようにすることで、芯型60に面した平滑な面が表面になるので好ましい。必要があれば所定の長さに切断する。円筒状のマット素材Sを扁平状にして、扁平状のマット外皮本体52とする。
【0048】
(7)一方の端部に、当て板55a,55bを当てて、小ネジ、ボルト、ナット等締結手段で密閉状態で固定する。この実施の形態では、一方の当て板55aには、皿小ねじ用のざぐり穴とボルト穴が形成され、他方の当て板55bには皿小ねじ用の雌ねじが形成されている。また、マット外皮本体52にも、皿小ねじ56がねじ部が貫通可能な貫通穴が形成されている。そして、一方の当て板55a側から皿小ねじ56を挿入し、他方の当て板55bのねじ穴に皿小ねじ56のねじ部をねじ込んで締結し、一方の端部側を密閉状態で固定している。当て板55a、55b、締結手段、皿小ねじ56は、防錆対策が施されているものであることが好ましい。例えば、当て板は、ステンレス製の材料のもの、クロム鍍金、亜鉛鍍金等を施したものがよい。また、締結手段、皿小ねじは、ステンレス製のものとすればよい。このとき、マット外皮本体52の密閉される内面には、接着剤、シール剤などが塗布されていてもよい。
【0049】
(8)マット外皮本体52の内部に不凍性の粘性液状体36を流し込む。
(9)マット外皮本体52の他方の端部に、当て板55a、55bをあて、一方の当て板55a側から皿小ねじ56を挿入し、他方の当て板55bのねじ穴に皿小ねじ56のねじ部をねじ込んで締結し、他方の端部側を密閉状態で固定する。マット外皮本体52の所定の位置には、皿小ねじ56用の貫通穴が形成され、マット外皮本体52の密閉される内面には、接着剤、シール剤などが塗布されているとよい。
(10)2連型または複数連型の遮音マット(図9(b)参照)の場合、工程(8)、(9)の手順を繰り返す。このように製作されたものが、遮音マット50A、50Bとなる。
すなわち、この製造方法では、長手方向に、連続した遮音マットの製造が容易である。
【0050】
〔鉄道橋への施行工程手順〕
遮音マット30、30A、30Bを備えた軌道構造の施工手順を説明する。鋼床版10の下部床版10aの上部、側部床版10bの側部に、軌道構造用の遮音マット30、30A、30Bを敷設する。遮音マット30、30A、30Bは、左右のレールを各々異なる遮音マット30、30A、30Bで支持する程度の大きさが好ましい。この形態では、図1の断面図に図示したように、下部床版10aの上に6個、左右の側部床版10bに各々1個敷設している。遮音マット30、30A、30Bは、隣り合う遮音マット30、30A、30Bの連結部35の穴部35a同士を紐状部材などで連結しておくとよい。このようにすると、間仕切りされた複数の遮音マットが、軌道構造を支えることになり、偏荷重がかかった場合の影響を少なくすることができる。例えば、軌道がカーブなどに差し掛かった場合、内輪側に多くの荷重がかかるおそれあるが問題が生じない。路盤マット21を遮音マット30、30A、30Bの上部に敷き、路盤マット21の上部にバラスト20を積載する。バラスト20上部にまくらぎ16を設置し、まくらぎ16にレール15をレール固定装置17で固定する(図1、図2参照)。
【0051】
このように、鋼床版10と路盤マット21の間に、遮音マット30、30A、30Bを敷設する工程が増加するだけであり、施行期間の増加も限定的である。また、この遮音マット設置による防音対策は、走行音、風切り音などに対する他の防音対策を併用して行うとより効果的であり好ましい。さらに、この遮音マットは、既設の鉄道橋に敷設して、防音削減効果を発揮させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の、目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、床版を鉄道橋の鋼床版で説明を行っているが、コンクリート床版等であってもよい。また、遮音マットの平面視の形状は、長方形、正方形などであることが好ましいが、他の形状であってもよい。さらに、遮音マットは、両端に連結部を設けた形態で説明を行ったが、前後、左右の四方の端部に連結部を設け、前後、左右に隣接する遮音マットと連結するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の軌道構造用の遮音マットが設けられた鉄道橋を示す断面図である。
【図2】図2は、鉄道橋の一部を断面にして図示した正面図である。
【図3】図3は、遮音マットの製造方法1において、シート状の繊維布の形状を示す平面図である。
【図4】図4は、製造方法1において、シート状の繊維布の折りたたみ方法を説明するための説明図である。
【図5】図5は、製造方法1で製造される遮音マットであって、図5(a)は袋状のマット外皮体の接合を説明するための説明図、図5(b)は角部補強材の斜視図、図5(c)は張り合わせ部補強材の斜視図である。
【図6】図6は、製造方法1で製造された遮音マットであって、図6(a)は、遮音マットの平面図、図6(b)は遮音マットの正面図である。
【図7】図7は、遮音マットの製造方法2、3の説明図であって、芯型にゴムを巻きつける過程を示す説明図である。
【図8】図8は、製造方法2で製造された遮音マットの説明図であって、図8(a)は、外皮本体に封入栓を組み付ける過程を示す説明図、図8(b)は、封入栓を拡大した断面図である。
【図9】図9は、製造方法3で製造された遮音マットの斜視図であって、(a)は単体型、(b)は2個連結型の図である。
【符号の説明】
【0054】
1 … 鉄道橋
10 … 鋼床版
11 … 主桁
12 … 横桁
15 … レール
16 … まくらぎ
17 … レール締結装置
20 … バラスト
21 … 路盤マット(バラストマット)
30,30A,30B … 遮音マット
31,50,50A,50B … マット外皮体
32 … 角部補強体
33 … 張り合わせ部補強体
34 … 液状体注入栓
35 … 連結部材
36 … 粘性液状体
51,52 … マット外皮本体
54a,54b … 封入栓
55a,55b … 当て板
56 … 皿小ねじ
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が走行する軌道構造において遮音効果を備えた軌道構造用の遮音マットとその製造方法に関する。更に詳しくは、床版、鉄道橋の鋼床版等に設けられる軌道構造において遮音効果を備えた簡素な構成の軌道構造用の遮音マットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な環境を求める要望が強まり、騒音を低減する対策に関しても社会的要求が高まっている。この要望は、年々、より静かな、より快適な環境を求める方向にあり、新しい騒音低減対策を開発し施行しなければならない。鉄道車両は、バラスト道床、コンクリート道床、鋼桁等の上部に付設されたまくらぎに固定されたレール上を走行する。鉄道輸送は、他の交通手段に比べると、環境に優しいものといわれているが、鉄道車両が走行すると、鉄道沿線において、振動、騒音等問題を発生する。そのため、鉄道沿線に居住している住宅地、市街地の住民等から、厳しい騒音対策が求められている。
【0003】
特に、車輪がレールの継ぎ目部を通過するとき、大きな騒音が発生する。そのため、所定の長さ(例えば25m)のレールを複数溶接したロングレールにするとともに、継ぎ目を斜めにした伸縮継ぎ目にするなどの対策が施されている。また、騒音被害の大きい住宅地、住宅地近傍では、住宅との間に防音壁を設置する対策なども施されている。
【0004】
特許文献においても、軌道等に関して、いろいろな騒音低減対策が提案されている。
例えば、スラブ軌道上に吸音材料を敷設し、レール・車輪間で発生し、スラブ軌道面で反射される転動騒音を低減させる吸音構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、レールの頂面、側面等に防音部材を設けて騒音を緩和することも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。さらに、重いスラブ版、軽いスラブ版、重いスラブ版を重ねるとともに、このスラブ版間に弾性材を挿入する構成にしたスラブ軌道の騒音低減構造も知られている(例えば、特許文献4参照)。また、レール間の空間に粒形物を敷き詰めて吸音効果を持たせた省力型軌道構造も知られている(例えば、特許文献5参照)。さらに、マクラギと、マクラギの下部のブロックとの間に弾性部材を組み込んだマクラギ一体型コンクリート道床構造も知られている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特許第3285774号公報
【特許文献2】特開2003−082602号公報
【特許文献3】特開2001−342602号公報
【特許文献4】特開2006−249881号公報
【特許文献5】特許第2622492号公報
【特許文献6】特開2002−227101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1から6の技術に記載された対策、レールの継ぎ目に関する対策等を施しても、まだまだ、鉄道沿線の騒音対策としては不十分なものであった。すなわち、沿線住民が要求する静かな生活環境となるようにするには、さらなる改良策、改善策が必要であった。
【0006】
例えば、鉄道沿線において、騒音の大きい場所の一つとして鉄道橋がある。鉄道橋の騒音は、鉄道車両が走行するときに車輪、レール、架線、パンタグラフ等から発生する音(走行音)、橋桁、鋼床版等に伝わった音エネルギー、振動エネルギーによる放射音(構造物音)等が複合されたものである。すなわち、走行音に対する低減対策だけでなく、構造物音に対する対策として鋼床版、橋桁等に振動エネルギー等が伝わらないようにしないと、騒音を低減させることができないという問題点があった。
【0007】
近年、新しく設置される鉄道橋には、特許文献5に記載されたような技術を採用したいわゆる弾性バラスト軌道の技術が使われるようになって、従来に比べ、低振動、低騒音を達成しているが、コスト、工事期間等の関係で全部の鉄道橋に採用できるものではない。また、特許文献5の技術は、既設の鉄道橋に採用するのは困難である。そこで、構成が簡素で、工事期間も短縮され、安価で、かつ、既設の鉄道橋にも採用可能なものの開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決するためになされたもので、次の目的を達成する。
【0009】
本発明の目的は、床版、鉄道橋の鋼床版等において、軌道側のエネルギーを床版側に伝播させないことで床版、鉄道橋の鋼床版等における騒音低減を可能にした簡素な構成で、長期間性能劣化が生じない軌道構造用の遮音マットを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、安価に、効率よく遮音マットを製造することができる軌道構造用の遮音マットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1の軌道構造用の遮音マットは、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットであって、前記遮音マットは、前記床版と前記バラストとの間に設けられ、前記遮音マットの外皮を形成するマット外皮体と、前記マット外皮体の内部に封入され、前記レール側から前記床版側に伝播されるエネルギーを減衰させるための不凍性の粘性液状体とから構成され、前記鉄道車両が走行したとき、前記床版を含む構造物から発生する構造物音を減少させることを特徴とする。
【0012】
本発明2の軌道構造用の遮音マットは、本発明1において、
前記遮音マットと前記バラストとの間には、路盤マットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明3の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、袋状に形成されたものであり、このマット外皮体には、前記粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明4の軌道構造用の遮音マットは、本発明3において、
前記マット外皮体は、隣り合う軌道構造用遮音マットのマット外皮体と連結するための連結部が少なくとも両端に形成されているものであることを特徴とする。
【0015】
本発明5の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両端の開口部を密閉し、封入された前記粘性液状体を漏洩させない扁平状の封入栓とから構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明6の軌道構造用の遮音マットは、本発明1または2において、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両方の端部位置、または、前記マット外皮本体の端部位置及び所定の中間位置に設けられ、前記マット外皮本体を両側から挟み込むための一対の当て板と、この一対の当て板を締結するための締結手段とから構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明7の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から4において、
前記マット外皮体は、補強繊維または補強コードとゴムとが圧着されたマット素材、または、補強繊維または補強コードとゴムとが加硫されたマット素材で形成されているものであることを特徴とする。
【0018】
本発明8の軌道構造用の遮音マットは、本発明5または6において、
前記マット外皮本体は、芯材に巻きつけられた補強繊維または補強コードとゴムとが加硫された後、前記芯材から抜き取ったものであることを特徴とする。
【0019】
本発明9の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から8において、
前記粘性液状体は、液状ゴム、または、液状ゴムを主成分とする液状体であることを特徴とする。
【0020】
本発明10の軌道構造用の遮音マットは、本発明1から9において、
前記鉄道橋の床版は、鋼床版であることを特徴とする。
【0021】
本発明11の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、補強繊維または補強コードとゴムとを圧着させたシート状のマット素材を作成する工程と、前記マット素材を所定の大きさの略四角形状に切断する工程と、切断した前記マット素材の4隅の角部を中心側に折りたたむ工程と、折りたたんだ前記マット素材が重なり合う部分を接合して袋状のマット外皮材を作成する工程と、前記マット外皮材の所定の位置に、粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓を設ける工程と、前記液状体注入栓から前記マット外皮体の内部に不凍性の前記粘性液状体を注入し遮音マットを製造する工程とからなっている。
【0022】
本発明12の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、本発明11において、
前記マット外皮材を作成する工程の後に、隣り合うマット外皮体同士を連結するための連結部を接合する工程を備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明13の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、前記芯型に巻きつけた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から、反転させながら芯型に面した平滑な面を表面になるよう抜き取る工程と、抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、前記マット外皮本体の開口している一方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記一方の端部を密閉する工程と、前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、前記マット外皮本体の開口している他方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記他方の端部を密閉する工程とからなっている。
【0024】
本発明14の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、巻きつけられた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から、反転させながら芯型に面した平滑な面を表面になるよう抜き取る工程と、抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、前記マット外皮体の開口している一方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と、前記一方の側を下にし、前記マット外皮体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、前記マット外皮体の開口している他方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程とからなっている。
【0025】
本発明15の軌道構造用の遮音マットの製造方法は、本発明13または14において、
前記芯型から抜き取る工程は、反転させながら芯型に面した平滑な面が表面となるよう抜き取る工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の軌道構造用の遮音マットは、床版とバラストの間に、簡素な構成の遮音マットを設けることで、床版側例えば鉄道橋の鋼床版側に伝播しようとする振動エネルギー、音エネルギー等を減衰させることができ、床版、鉄道橋等における構造物音を低減させることができる。すなわち、鉄道沿線における騒音を低減させることができる。また、既存の鉄道橋においても、施行することができ、騒音低減対策として有効である。遮音マットは、簡素な構成であり、長期間使用しても、安全性、信頼性が高く、騒音低減(減衰)性能が劣化するおそれがない。既設の鉄道橋への敷設も容易であるとともに長期間にわたって性能低下が生じるおそれがない。
【0027】
また、本発明の軌道構造用遮音マットの製造方法は、簡単で、効率よく、安価で遮音マットを製造することができる。また、遮音マットの信頼性も高くすることができる。さらに、床版、鉄道橋の鋼床版における防音対策を行う際の工事費を、従来の方法に比べ、低減させることができるとともに効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の軌道構造用の遮音マット及びその製造方法の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の軌道構造用の遮音マットが設置された鉄道橋の断面図、図2は、鉄道橋を一部断面にして図示した正面図である。なお、図2はバラストを除去した状態で図示している。図3から図6は軌道構造用の遮音マットの製造方法1の説明図であって、図3は、シート状の繊維布の形状を示す平面図、図4は、シート状の繊維布の折りたたみ方法を説明するための説明図、図5(a)は、袋状のマット外皮体の接合を説明するための説明図、図5(b)は角部補強材の斜視図、図5(c)は張り合わせ部補強材の斜視図、図6(a)は、遮音マットの平面図、図6(b)は遮音マットの正面図である。
【0030】
図7、8は、軌道構造用の遮音マットの製造方法2を説明するための図であって、図7は、芯材にゴム(または、補強繊維、補強コード)を巻きつけている過程の説明図、図8(a)は、マット外皮本体に封入栓を密閉している過程の説明図、図8(b)は、封入栓を拡大した断面図である。図9は、軌道構造用の遮音マットの製造方法3で製造した遮音マットの斜視図であって、(a)は単体型、(b)は2連結型を示す図である。
【0031】
鉄道橋1は、主桁11、横桁12、縦桁13、鋼床版10等から構成されている。鋼床版10は、下部床版10a、側部床版10bとから構成され、下部床版10aの上部には複数の遮音マット30が敷設されている。例えば、この形態では、レール15の長手方向と直交する方向に6枚の遮音マット30が敷設されている(図1参照)。遮音マット30は、隣り合った遮音マットと連結されているとよい。遮音マット10aの上部には、路盤マット(バラストマット)21が敷設されており、路盤マット21の上部には、バラスト20が積まれている。側部床版10bとバラスト20との間にも遮音マット30が設けられている。
【0032】
バラスト20の上部には、まくらぎ16が設置され、まくらぎ16の上部にレール15が、レール締結装置17を介して固定されている。このレール15の上部を、鉄道車両(図示せず)が走行する。まくらぎは、コンクリート製のもの、いわゆるPCまくらぎと呼ばれているものであってもよい。なお、レール締結装置17は、周知な構成のものである。例えば、本出願人も、特開平10−18203号公報、特開2006−45989号公報等で開示している周知な技術であり、この実施の形態ではレール締結装置に関して詳しい説明をしない。
鉄道車両が走行すると、一般的には、車輪とレール、架線とパンタグラフ等から発生する音(走行音)、車体等が風を切る風切り音、橋桁、鋼床版10等に伝播する振動エネルギー、音エネルギー等による放射音(構造物音)とが複合された音が発生する。この複合された音が、鉄道沿線の住民にとって騒音となる。
【0033】
鉄道橋において、まくらぎ16の下部に、バラスト20、路盤マット21を設ける構成は、防音効果が生じると言われているが、まだまだ、不十分なものである。鉄道橋近傍等の鉄道沿線において、静かな生活環境を取り戻すためには、さらなる工夫が必要である。
【0034】
本実施の形態では、バラスト20の下部に敷かれた路盤マット21と、鋼床版10との間に、遮音マット30、30A、30Bを置き、レール15側から発生し、鋼床版10側に伝播されようとする音エネルギー、振動エネルギー等を減衰させている。すなわち、放射音(構造物音)を少なくして騒音減少対策としようとするものである。振動エネルギー、音エネルギーは、遮音マット30、30A、30B内で、熱エネルギーになり減衰する。遮音マット30、30A、30Bは、補強繊維、補強コードにゴム弾性体を被覆または一体化したマット外皮材31、50、50A、50Bと、マット外皮材31、50、50A、50Bの内部に封入される不凍性の粘性液状体36とから構成されている。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。ゴム弾性体は、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等を使用できる。
【0035】
粘性液状体36は、所定の粘性の液状体、液状ゴムなど好ましく、例えば、ウレタンゴム用ポリオール、液状イソプレンゴム、イソパラフィンなどが好ましい。また、液状ゴムに、ゴムスポンジ、ゴムチップ等が混入されたものであってもよい。粘性液状体36は、所定の粘性(例えば、液状イソプレンゴムの場合;100〜300Pa・s、測定温度;38℃)を有している液状体であればよい。粘性液状体36、マット外皮体31からなる遮音マット30、30A、30Bは、レール15、まくらぎ16側の振動エネルギー、音エネルギーなどを吸収して減衰させ、鋼床版10側に伝播させないように、または伝播させにくくする。例えば、鉄道沿線の騒音の大きい場所においては、周波数250〜2000Hz付近の騒音が大きく、特に1000Hz付近の騒音が顕著であるとされ、吸音材、遮音材には、前述した周波数範囲に対して高い吸音効果、遮音効果が求められ、バラスト20、路盤マット21を介して、鋼床版10側に伝播しようとするのを遮断または減衰させている。その結果、鋼床版10、主桁11等構造物から発生する構造物音を低減させることができる。
【0036】
〔遮音マットの製造方法1〕
本実施の形態の遮音マット30の製造方法の実施の形態(製造方法1)を、図3から図6に基づいて、説明する。
(1)接着処理した補強繊維(または補強コード)と、ゴムとを、カレンダーロール装置等でトッピング(圧着)したマット素材30aであるシート状の繊維布を作成する。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(2)トッピングしたシート状の繊維布を、図3に示すような所定の大きさに切断する。
【0037】
(3)図4に示すように、切断した繊維布を、折り線30bに沿って、折り紙式にたたみ込み、重なり合った部位である張り合わせ部30cを張り合わせ接合する。ゴム及び補強布、補強コードからなる繊維布は、未加硫状態で溶剤、ゴム糊(例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊)等を使用して成型し、加硫することで接合され、堅固な接着力を発揮する。4隅の角部に、角部補強体32を張り合わせ補強する。袋状にした張り合わせ部に補強体33を張り付け補強する(図5参照)。角部補強体32、補強体33は、未加硫状態で溶剤、ゴム糊(例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊)等を使用して成型し、加硫することで接合するとよい。角部補強体32、補強体33は、ゴムと、補強繊維、補強コードをトッピングしたもの等であることが好ましい。角部補強体32、補強体33は、接着剤による接合などで接合されていてもよい。
【0038】
(4)中央部に、逆止弁機能を備えた液状体注入栓34を取り付ける(図6参照)。すなわち、袋状のマット外皮体31の内部に、液状体注入装置(図示せず)から不凍性の粘性液状体36を注入する場合、液状体注入栓34に注入ノズル(図示せず)を差し込んだ状態で注入可能である。液状体注入栓34から注入ノズルを離脱させた状態では、液状体注入栓34は、袋状のマット外皮体31の内部から、注入した粘性液状体36が漏洩しないよう逆止弁機能を備えたものになっている。
【0039】
(5)両端に、取り付け穴35aが形成された取り付け部材35を取り付け、取り付け部付き袋状の外皮体31が形成される(図6参照)。
(6)不凍性の粘性液状体(例えば、ゲルまたはジェル状のウレタン系ゴム用ポリオール、液状イソプレンゴム、イソパラフィン)36を、液状体注入栓34から袋状のマット外皮体31に注入し、遮音マット30が製造される。
なお、遮音マットを、高耐圧製品仕様とする場合には、2枚または複数枚のマット素材(シート状の繊維布)を折りたたみ加硫して接合するとよい。加硫は、加硫缶による方法が好ましい。加硫缶で加硫する際、マット素材(シート状の繊維布)の内側は、上下のマット素材が接着しないように、離型材または打粉等を内面に塗り処理するとよい。
【0040】
〔遮音マットの製造方法2〕
本実施の形態の遮音マット30Aの製造方法の他の実施の形態(製造方法2)を、図7、8に基づいて、説明する。なお、この製造方法2のマット外皮体50は、マット外皮本体51と封入栓54a,54bとから形成される。
(1)芯型60を成型旋盤61または回転台にセットする(図7参照)。芯型60の直径は、円周の長さが、芯型60から抜いた素材Sを扁平状にし、後述する扁平状の封入栓54a、54bが着脱可能に挿入できる断面の長さ及び幅寸法に相当するようになっているとよい。
【0041】
(2)芯型60に、所定の長さ(例えば、芯型60に1〜1.1回転できる長さ)に裁断した所定の厚さ(例えば、2〜3mm)のゴムを、芯型60を回転させながら巻きつける。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
(3)ゴムの上に、所定の長さ(例えば、芯型60に1.2〜3回転できる長さ)に裁断した補強繊維または補強コードを、回転させながら巻きつける。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(4)補強繊維または補強コードの上に、内面ゴムとなる所定の厚さ(例えば、厚さ1〜2mm)のゴムを張りつける。この内面ゴムは、例えば、「芯型60の1回転+張り合わせ代」の長さを有するとよい。内面ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0042】
(5)内面ゴムを張りつけた上に固定用テープを巻き締めた後、加硫缶内で加硫して一体化する。この時の加硫条件は、例えば、加硫温度は150℃、加硫時間は30〜90分で行うとよい。
(6)芯型60から加硫して一体化した中空状で、かつ、円筒状のマット素材Sを、反転させながら、芯型60から抜き取る。すなわち、芯型60側のゴムの面が表面に、内面ゴムが内側に位置する。このようにすることで、芯型60に面した平滑な面が表面になるので好ましい。必要があれば所定の長さに切断する。
【0043】
(7)円筒状のマット素材Sの両方の端部側の内面を研削した後、中空状、かつ、円筒状のマット素材を扁平状にして、扁平状のマット外皮本体51とする。研削は、非金属用で粗めの汎用砥石で接着する部分全面に行うとよい。一方の端部内面に接着剤を塗布する。接着剤として、例えば、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊を塗り、乾燥後、更に未加硫のゴムシート(厚さ0.3〜0.5mm)を張るとよい。マット外皮本体51の一方の端面側に、別途作成した扁平状の封入栓54aを、接合金型にて加硫接合する。扁平状の封入栓54aの表面にも、未加硫ゴムを有機溶剤で溶かしたゴム糊を塗り、乾燥後、更に未加硫のゴムシート(厚さ0.3〜0.5mm)を張る処理を施しておくとよい。この扁平状の封入栓の外周部の先端側は、耐圧性を向上させるためのリップ54dが形成されていることが好ましい〔図8(b)参照〕。
【0044】
(8)扁平状のマット外皮本体51を、一方の側を下にするとともに、傾斜させ、開口している他方の側から封入する不凍性の粘性液状体36を流し込む。
(9)マット外皮本体51の他方の端面側の内面に接着剤を塗布する。他方の端面側に、扁平状の封入栓54bを挿入し、接合金型にて加硫接合して密閉する。この扁平状の封入栓54bの外周部の先端側にも、耐圧性を向上させるためのリップ54dが形成されていることが好ましい。
(10)また、粘性液状体の種類によっては、マット外皮本体51、封入栓54a、54bを一体にした後、粘性液状体を注入してもよい。この場合、開閉バルブを備えた注入ノズルを注入側封入栓に差し込んで注入する。また、反対側封入栓には空気抜穴を設けておくことが好ましい。この場合の封入栓には、注入時開いて、注入終了時には閉じる逆止弁機能を設けておくとよい。このように製作されたものが、遮音マット50となる。
【0045】
〔遮音マットの製造方法3〕
本実施の形態の遮音マット30Bの製造方法のさらに他の実施の形態(製造方法3)を、図7、9に基づいて、説明する。なお、この製造方法3のマット外皮体50A、50Bは、マット外皮本体52と当て板55a,55b、締結手段とから形成される。
(1)芯型60を成型旋盤61または回転台にセットする(図7参照)。
(2)芯型60に、所定の長さ(例えば、芯型60に1〜1.1回転できる長さ)に裁断した所定の厚さ(例えば、2〜3mm)のゴムを、芯型60を回転させながら巻きつける。ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0046】
(3)ゴムの上に、所定の長さ(例えば、芯型60に1.2〜3回転できる長さ)に裁断した補強繊維または補強コードを、回転させながら巻きつける。補強繊維、補強コードは、伸びの少ない補強繊維、補強コードであることが好ましい。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが使用できる。補強コードとしては、例えば、ビニロンコード等が使用できる。
(4)補強繊維または補強コードの上に、内面ゴムとなる所定の厚さ(例えば、厚さ1〜2mm)のゴムを張りつける。この内面ゴムは、例えば、「芯型60の1回転+張り合わせ代」の長さを有するとよい。内面ゴムは、耐候性に優れたものが好ましく、例えば、CR系ゴム(クロロプレンゴム)、EPDM系ゴム(エチレンプロビレンゴム)等が使用できる。
【0047】
(5)内面ゴムを張りつけた上に固定用テープを巻き締めた後、加硫缶内で加硫して一体化する。この時の加硫条件は、例えば、加硫温度は150℃、加硫時間は30〜90分で行うとよい。
(6)芯型60から加硫した一体化した中空状、かつ、円筒状のマット素材Sを、反転させながら、芯型60から抜き取る。すなわち、芯型60側のゴムの面が表面に、内面ゴムが内側に位置する。このようにすることで、芯型60に面した平滑な面が表面になるので好ましい。必要があれば所定の長さに切断する。円筒状のマット素材Sを扁平状にして、扁平状のマット外皮本体52とする。
【0048】
(7)一方の端部に、当て板55a,55bを当てて、小ネジ、ボルト、ナット等締結手段で密閉状態で固定する。この実施の形態では、一方の当て板55aには、皿小ねじ用のざぐり穴とボルト穴が形成され、他方の当て板55bには皿小ねじ用の雌ねじが形成されている。また、マット外皮本体52にも、皿小ねじ56がねじ部が貫通可能な貫通穴が形成されている。そして、一方の当て板55a側から皿小ねじ56を挿入し、他方の当て板55bのねじ穴に皿小ねじ56のねじ部をねじ込んで締結し、一方の端部側を密閉状態で固定している。当て板55a、55b、締結手段、皿小ねじ56は、防錆対策が施されているものであることが好ましい。例えば、当て板は、ステンレス製の材料のもの、クロム鍍金、亜鉛鍍金等を施したものがよい。また、締結手段、皿小ねじは、ステンレス製のものとすればよい。このとき、マット外皮本体52の密閉される内面には、接着剤、シール剤などが塗布されていてもよい。
【0049】
(8)マット外皮本体52の内部に不凍性の粘性液状体36を流し込む。
(9)マット外皮本体52の他方の端部に、当て板55a、55bをあて、一方の当て板55a側から皿小ねじ56を挿入し、他方の当て板55bのねじ穴に皿小ねじ56のねじ部をねじ込んで締結し、他方の端部側を密閉状態で固定する。マット外皮本体52の所定の位置には、皿小ねじ56用の貫通穴が形成され、マット外皮本体52の密閉される内面には、接着剤、シール剤などが塗布されているとよい。
(10)2連型または複数連型の遮音マット(図9(b)参照)の場合、工程(8)、(9)の手順を繰り返す。このように製作されたものが、遮音マット50A、50Bとなる。
すなわち、この製造方法では、長手方向に、連続した遮音マットの製造が容易である。
【0050】
〔鉄道橋への施行工程手順〕
遮音マット30、30A、30Bを備えた軌道構造の施工手順を説明する。鋼床版10の下部床版10aの上部、側部床版10bの側部に、軌道構造用の遮音マット30、30A、30Bを敷設する。遮音マット30、30A、30Bは、左右のレールを各々異なる遮音マット30、30A、30Bで支持する程度の大きさが好ましい。この形態では、図1の断面図に図示したように、下部床版10aの上に6個、左右の側部床版10bに各々1個敷設している。遮音マット30、30A、30Bは、隣り合う遮音マット30、30A、30Bの連結部35の穴部35a同士を紐状部材などで連結しておくとよい。このようにすると、間仕切りされた複数の遮音マットが、軌道構造を支えることになり、偏荷重がかかった場合の影響を少なくすることができる。例えば、軌道がカーブなどに差し掛かった場合、内輪側に多くの荷重がかかるおそれあるが問題が生じない。路盤マット21を遮音マット30、30A、30Bの上部に敷き、路盤マット21の上部にバラスト20を積載する。バラスト20上部にまくらぎ16を設置し、まくらぎ16にレール15をレール固定装置17で固定する(図1、図2参照)。
【0051】
このように、鋼床版10と路盤マット21の間に、遮音マット30、30A、30Bを敷設する工程が増加するだけであり、施行期間の増加も限定的である。また、この遮音マット設置による防音対策は、走行音、風切り音などに対する他の防音対策を併用して行うとより効果的であり好ましい。さらに、この遮音マットは、既設の鉄道橋に敷設して、防音削減効果を発揮させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の、目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、床版を鉄道橋の鋼床版で説明を行っているが、コンクリート床版等であってもよい。また、遮音マットの平面視の形状は、長方形、正方形などであることが好ましいが、他の形状であってもよい。さらに、遮音マットは、両端に連結部を設けた形態で説明を行ったが、前後、左右の四方の端部に連結部を設け、前後、左右に隣接する遮音マットと連結するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の軌道構造用の遮音マットが設けられた鉄道橋を示す断面図である。
【図2】図2は、鉄道橋の一部を断面にして図示した正面図である。
【図3】図3は、遮音マットの製造方法1において、シート状の繊維布の形状を示す平面図である。
【図4】図4は、製造方法1において、シート状の繊維布の折りたたみ方法を説明するための説明図である。
【図5】図5は、製造方法1で製造される遮音マットであって、図5(a)は袋状のマット外皮体の接合を説明するための説明図、図5(b)は角部補強材の斜視図、図5(c)は張り合わせ部補強材の斜視図である。
【図6】図6は、製造方法1で製造された遮音マットであって、図6(a)は、遮音マットの平面図、図6(b)は遮音マットの正面図である。
【図7】図7は、遮音マットの製造方法2、3の説明図であって、芯型にゴムを巻きつける過程を示す説明図である。
【図8】図8は、製造方法2で製造された遮音マットの説明図であって、図8(a)は、外皮本体に封入栓を組み付ける過程を示す説明図、図8(b)は、封入栓を拡大した断面図である。
【図9】図9は、製造方法3で製造された遮音マットの斜視図であって、(a)は単体型、(b)は2個連結型の図である。
【符号の説明】
【0054】
1 … 鉄道橋
10 … 鋼床版
11 … 主桁
12 … 横桁
15 … レール
16 … まくらぎ
17 … レール締結装置
20 … バラスト
21 … 路盤マット(バラストマット)
30,30A,30B … 遮音マット
31,50,50A,50B … マット外皮体
32 … 角部補強体
33 … 張り合わせ部補強体
34 … 液状体注入栓
35 … 連結部材
36 … 粘性液状体
51,52 … マット外皮本体
54a,54b … 封入栓
55a,55b … 当て板
56 … 皿小ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットであって、
前記遮音マットは、前記床版と前記バラストとの間に設けられ、前記遮音マットの外皮を形成するマット外皮体と、
このマット外皮体の内部に封入され、前記レール側から前記床版側に伝播されるエネルギーを減衰させるための不凍性の粘性液状体とから構成され、
前記鉄道車両が走行したとき、前記床版を含む構造物から発生する構造物音を減少させる
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項2】
請求項1に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記遮音マットと前記バラストとの間には、路盤マットが設けられている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項3】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、袋状に形成されたものであり、
このマット外皮体には、前記粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓が設けられている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項4】
請求項3に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、隣り合う遮音マットのマット外皮体と連結するための連結部が少なくとも両端に形成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項5】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両端の開口部を密閉し、封入された前記粘性液状体を漏洩させない扁平状の封入栓とから構成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項6】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、
このマット外皮本体の両方の端部位置、または、前記マット外皮本体の端部位置及び所定の中間位置に設けられ、前記マット外皮本体を両側から挟み込むための一対の当て板と、
この一対の当て板を締結するための締結手段とから構成されている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、補強繊維または補強コードとゴムとが圧着されたマット素材、または、補強繊維または補強コードとゴムとが加硫されたマット素材で形成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項8】
請求項5または6に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮本体は、芯材に巻きつけられた補強繊維または補強コードとゴムとが加硫された後、前記芯材から抜き取ったものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記粘性液状体は、液状ゴム、または、液状ゴムを主成分とする液状体である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記鉄道橋の床版は、鋼床版である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項11】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
補強繊維または補強コードとゴムとを圧着させたシート状のマット素材を作成する工程と、
前記マット素材を所定の大きさの略四角形状に切断する工程と、
切断した前記マット素材の4隅の角部を中心側に折りたたむ工程と、
折りたたんだ前記マット素材が重なり合う部分を接合して袋状のマット外皮材を作成する工程と、
前記マット外皮材の所定の位置に、粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓を設ける工程と、
前記液状体注入栓から前記マット外皮体の内部に不凍性の前記粘性液状体を注入し遮音マットを製造する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載された遮音マットの製造方法において、
前記マット外皮材を作成する工程の後に、隣り合うマット外皮体同士を連結するための連結部を接合する工程を備えている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項13】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、
前記芯型に巻きつけた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から抜き取る工程と、
抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、
前記マット外皮本体の開口している一方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記一方の端部を密閉する工程と、
前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、
前記マット外皮本体の開口している他方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記他方の端部を密閉する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項14】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、
巻きつけられた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から抜き取る工程と、
抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、
前記マット外皮本体の開口している一方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と、
前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、
前記マット外皮本体の開口している他方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載された軌道構造用の遮音マットの製造方法において、
前記芯型から抜き取る工程は、反転させながら芯型に面した平滑な面が表面となるよう抜き取る工程である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項1】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットであって、
前記遮音マットは、前記床版と前記バラストとの間に設けられ、前記遮音マットの外皮を形成するマット外皮体と、
このマット外皮体の内部に封入され、前記レール側から前記床版側に伝播されるエネルギーを減衰させるための不凍性の粘性液状体とから構成され、
前記鉄道車両が走行したとき、前記床版を含む構造物から発生する構造物音を減少させる
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項2】
請求項1に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記遮音マットと前記バラストとの間には、路盤マットが設けられている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項3】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、袋状に形成されたものであり、
このマット外皮体には、前記粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓が設けられている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項4】
請求項3に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、隣り合う遮音マットのマット外皮体と連結するための連結部が少なくとも両端に形成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項5】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、このマット外皮本体の両端の開口部を密閉し、封入された前記粘性液状体を漏洩させない扁平状の封入栓とから構成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項6】
請求項1または2に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、中空状に、かつ、扁平状に形成されたマット外皮本体と、
このマット外皮本体の両方の端部位置、または、前記マット外皮本体の端部位置及び所定の中間位置に設けられ、前記マット外皮本体を両側から挟み込むための一対の当て板と、
この一対の当て板を締結するための締結手段とから構成されている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮体は、補強繊維または補強コードとゴムとが圧着されたマット素材、または、補強繊維または補強コードとゴムとが加硫されたマット素材で形成されているものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項8】
請求項5または6に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記マット外皮本体は、芯材に巻きつけられた補強繊維または補強コードとゴムとが加硫された後、前記芯材から抜き取ったものである
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記粘性液状体は、液状ゴム、または、液状ゴムを主成分とする液状体である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された軌道構造用の遮音マットにおいて、
前記鉄道橋の床版は、鋼床版である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マット。
【請求項11】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
補強繊維または補強コードとゴムとを圧着させたシート状のマット素材を作成する工程と、
前記マット素材を所定の大きさの略四角形状に切断する工程と、
切断した前記マット素材の4隅の角部を中心側に折りたたむ工程と、
折りたたんだ前記マット素材が重なり合う部分を接合して袋状のマット外皮材を作成する工程と、
前記マット外皮材の所定の位置に、粘性液状体を注入可能であるとともに逆止弁機能を備えた液状体注入栓を設ける工程と、
前記液状体注入栓から前記マット外皮体の内部に不凍性の前記粘性液状体を注入し遮音マットを製造する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載された遮音マットの製造方法において、
前記マット外皮材を作成する工程の後に、隣り合うマット外皮体同士を連結するための連結部を接合する工程を備えている
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項13】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、
前記芯型に巻きつけた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から抜き取る工程と、
抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、
前記マット外皮本体の開口している一方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記一方の端部を密閉する工程と、
前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、
前記マット外皮本体の開口している他方の端部に、扁平状の封入栓を接合して前記他方の端部を密閉する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項14】
床版の上部に積載されるバラストを介して鉄道車両が走行するレールを支持する軌道構造における遮音マットの製造方法であって、
円筒の芯型の外周に、ゴムを回転させながら巻きつける工程と、
巻きつけられた前記ゴムの外周に、補強繊維または補強コードを回転させながら巻きつけ、更に固定用テープを締め付ける工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが順次巻きつけられたものを、加硫して一体化させる工程と、
前記ゴムと、前記補強繊維または前記繊維コードが一体化したマット素材を、前記芯型から抜き取る工程と、
抜き取った円筒状の前記マット素材を扁平状にしマット外皮本体とする工程と、
前記マット外皮本体の開口している一方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と、
前記一方の側を下にし、前記マット外皮本体の中に不凍性の粘性液状体を注入する工程と、
前記マット外皮本体の開口している他方の端部に当て板を当てて締結部材で密封固定する工程と
からなる軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載された軌道構造用の遮音マットの製造方法において、
前記芯型から抜き取る工程は、反転させながら芯型に面した平滑な面が表面となるよう抜き取る工程である
ことを特徴とする軌道構造用の遮音マットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−208530(P2008−208530A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43609(P2007−43609)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000220147)東京ファブリック工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000220147)東京ファブリック工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
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