説明

軒天換気材

【課題】通気材部分と防火材部分とを一体化し、以て、取り扱いの便と施工の便とを図った軒天換気材を提供することを課題とする。
【解決手段】横長の背板12と、背板12の内側面に定着される帯状熱膨張材14と、適宜通気孔18が穿設されていて、背板12の内側面下部から斜め上方に延びる通気面15と、通気面15の端部を垂直方向に折曲延設された対向壁16と、背板12の外側面下部において水平方向に延びる固定板20とを備える。通例、上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材13が、背板12の内側面上部と対向壁16との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒天換気材に関するものであり、より詳細には、軒先の外壁材と鼻隠し材との間の間隙に収装されて、その部分の換気を司る軒天換気材であって、その設置を簡単確実に行い得る軒天換気材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築される建物は、壁を通して浸透してくる室内からの湿った空気を室外に流出させるために、外壁と内壁の間に通気層を設け、また、軒下に有孔板を配した構造となっている。この通気層並びに軒下有孔板から建物内に流入する空気は、屋根裏を通って外部に流出する。そのため、屋根裏には、種々の形状を有する換気口あるいは換気装置が設置される。
【0003】
例えば、特許第2683109号は、この用途に用いられる通気材を開示するもので、それは、幅方向(設置時における上下方向)に貫通する通気孔を全長に亘って連設したプラスチックプレートを複数枚積層し、その積層したプラスチックプレートをヒートカッターにて切断し、該切断面の隣接するプラスチックプレート同士を熱融着することにより、全体を一体化して成るものである。軒裏においては、この通気材が、外壁と鼻隠し板との間に設けられる間隙内に、その通気孔を上下方向に向けて設置される。そして、その通気孔が適度の長さを有するために、雨雪の侵入を阻止しつつ屋内外の通気を行うことが可能となるのである。
【0004】
しかるに、この通気材は樹脂製であるため、火災発生時には、火炎や熱気がこの通気材を溶融させ、あるいは、通り抜けて屋内に侵入し、また逆に、屋内側の火炎や熱気が外部に出ることによって延焼を引き起こすおそれがある。そこで、本出願人は先に、そのような問題のない換気装置として、上記通気材と不燃性熱膨張材を備えた防火部材を設け、通気材の方を室内側(奥側)に配置し、これに隣接させて防火部材を室外側に配置する防火換気装置を提案している(特開2003−82783号公報)。
【0005】
しかし、その提案にかかる防火換気装置の場合は、外壁と鼻隠し板との間の間隙内取り付け作業に際し、該装置を定位置に配置固定する作業を簡易且つ迅速に実施させるための手段が特に講じられていないため、その作業を簡易且つ迅速に実施することができなかった。
【0006】
また、外壁と鼻隠し板との間の間隙の室内側に配置される通気材と室外側に配置される防火換気部材とが別部材であるため、それぞれ個別に用意し、また、個別に設置する必要があり、当然のことながら施工に手間がかかるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2683109号公報
【特許文献2】特開2003−82783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来提案されている防火換気部材の場合は、それを外壁と鼻隠し板との間の間隙内に設置する作業を容易化するために格別の手段が講じられていないために、その取り付け作業に手間がかかるという問題があり、また、上記間隙の室内側に配置される通気材と室外側に配置される防火換気部材とが別部材であって、それぞれ個別に用意し、また、個別に設置しなければならない煩わしさがあり、施工に手間がかかるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような上記従来の換気装置における問題を解決するためになされたもので、軒天換気材を、外壁と鼻隠し板間の間隙内へ設置するに際し、その設置作業を容易且つ迅速に行うことを可能にし、また、通気材を合わせ用いる場合において、通気材と防火換気部材とを別途用意し、それぞれ個別に設置しなければならない煩わしさのない軒天換気材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、横長の背板と、前記背板の内側面に定着される帯状熱膨張材と、適宜通気孔が設けられていて、前記背板の内側面下部から斜め上方に延びる通気面と、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁と、前記背板の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板とから成る軒天換気材である。
【0011】
一実施形態においては、前記背板の内側面上部と前記対向壁との間に、上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材が配設される。また、一実施形態においては、前記背板と別体の1枚の金属板を、前記背板の下部を挟持し得るようにして折り返し、一方の側の中途を直角に折曲して前記固定板を形成すると共に、他方の側の中途を斜め上方に折曲して前記通気面を形成し、更に、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して前記対向壁が形成される。その場合は、前記一枚の金属板に、予め所定位置に前記通気孔が設けられる。
【0012】
また、一実施形態においては、前記対向壁の外側面に、施工時に前記対向壁の外側面と外壁との間に挟まれて圧潰状態となってその部分の気密・水密を保持するクッション材が定着される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述したとおりであって、横長の背板の外側面下部に水平方向に延びる固定板が備え付けられているので、この固定板を鼻隠し下地材の下面にあてがってそこに固定することにより、本装置を外壁と鼻隠し板との間の間隙内の定位置に配置できるので、施工を極めて容易、迅速且つ正確に行い得る効果がある。
【0014】
また、背板の内側面上部と対向壁との間に上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材を配設することができ、その場合は、通気材部分と防火材部分とが一体化されることになるため、取り扱いやすく、施工も容易となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る軒天換気材の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る軒天換気材の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。本発明に係る軒天換気材Aは、その使用状態を示す図2に示されるように、柱2及び軒桁3から成る構造材1の外側に通気胴縁7を介して張設される外壁材8と、鼻隠しを構成する鼻隠し下地材10との間の間隙9内に収装されて、その部分の換気を司るものである。
【0017】
軒天換気材Aは、図1に示されるように、横長の金属製背板12と、背板12の内側面に定着される帯状の熱膨張材14と、適宜通気孔18が設けられていて、背板12の内側面下部から斜め上方に延びる通気面15と、通気面15の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁16と、背板12の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板20とを含んで構成される。
【0018】
通例、対向壁16の外側面に、施工時に対向壁16と外壁8との間に挟まれて圧潰状態となってその部分の気密・水密を保持する、クッション材17が貼着される。
【0019】
通気面15には適宜サイズの通気孔18が、通例、定間隔置きに多数形成される。この通気孔18は、単なる開口であってもよいが、図示した例のように、縦に平行切線を入れ、その平行切線間を押し込んで形成したものであってもよい(上辺部分及び下辺部分がつながっている)。その場合の通気孔18は、横方向に抜けるものとなり、単なる開口の場合に比較して通気性は若干劣るが、雨雪侵入防止性能の面では、優位なものとなる。
【0020】
また、背板12の外側面の下部に、水平に延びる固定板20が配設される。固定板20は、背板12の全長に亘るように形成してもよいし、部分的に設けることとしてもよい。通例、固定板20には、釘を打ち込むための釘穴21が形成される。このように固定板20を設けた場合は、軒天換気材Aを外壁材8と鼻隠し下地材10との間隙9に設置する際、固定板20を鼻隠し下地材10の下面にあてがい、釘穴21を通して釘打ちしたり、接着したりすることにより、軒天換気材Aを簡単確実に定位置に固定することができるようになる。
【0021】
図示した実施形態は通気材を含むものであって、従来分離されていた通気材部分と防火材部分とを一体化したものである。この場合は、背板12の内側面上部と対向壁16とに挟まれるように、上下方向に抜ける通気路を多数有する横長の通気材13が配設される。
【0022】
好ましい実施形態においては、固定板20と通気面15とが、1枚の金属板から形成される。即ち、背板12とは別体の、予め所定位置に通気孔18(釘穴21を設ける場合は釘穴21も)を形成した1枚の金属板を用意し、これを背板12の下部を挟持し得るようにして折り返し、その一方の側の中途部分を直角に折曲して固定板20となし、他方の側の中途部分を斜め上方又は水平に折曲して通気面15となし、更に、通気面15の端部を垂直方向に折曲延長して対向壁16となすのである。そして、その折り返し部22に、予め通気材13と熱膨張材14とを定着した背板11の下部を差し込んで締め付けることにより、その折曲した金属板と背板11とを一体化する。
【0023】
このように、本発明に係る軒天換気材Aにおいては、通気材13と防火材部分である熱膨張材14とを一体化することができるために取り扱いやすいものとなり、また、外壁8と鼻隠し下地材10との間の間隙Aに挿入し、固定板20を鼻隠し下地材10の下面にあてがってそこに固定することにより、確実に定位置に設置することができるので、施工も極めて容易となる。
【0024】
また、小屋裏と大気間の空気の流れは、通気孔18から通気材13通してスムーズであり、強風雨時においても通気孔18及び通気材13の作用で雨雪の侵入が確実に阻止される。更に火災発生時には、加熱された熱膨張材14が膨張して間隙9部分を完全に閉塞するので、火炎や熱気による通気材13の溶融が防止されると共に、火炎や熱気が屋内に入り込み、また逆に、屋内側の火炎や熱気が外部に出ることによって延焼を引き起こすことが防止される。
【0025】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに更に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は添付請求の範囲において限定した以外は、その特定の実施形態に制約されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
A 軒天換気材
1 構造材
2 柱
3 軒桁
4 屋根材
5 垂木
6 野地板
7 通気胴縁
8 外壁材
9 間隙
10 鼻隠し下地材
11 化粧材
12 背板
13 通気材
14 熱膨張材
15 通気面
16 対向壁
17 クッション材
18 通気孔
20 固定板
21 釘穴
22 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の背板と、前記背板の内側面に定着される帯状熱膨張材と、適宜通気孔が設けられていて、前記背板の内側面下部から斜め上方に延びる通気面と、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して形成される対向壁と、前記背板の外側面下部に水平方向に延びるように形成される固定板とから成る軒天換気材。
【請求項2】
前記背板の内側面上部と前記対向壁との間に、上下方向に抜ける通気路を多数有する通気材を配設した、請求項1に記載の軒天換気材。
【請求項3】
前記背板と別体の1枚の金属板を、前記背板の下部を挟持し得るようにして折り返し、一方の側の中途を直角に折曲して前記固定板を形成すると共に、他方の側の中途を斜め上方に折曲して前記通気面を形成し、更に、前記通気面の端部を垂直方向に折曲延長して前記対向壁を形成した、請求項1又は2に記載の軒天換気材。
【請求項4】
前記一枚の金属板には、予め所定位置に前記通気孔が設けられる、請求項3に記載の軒天換気材。
【請求項5】
前記対向壁の外側面に、施工時に前記対向壁の外側面と外壁との間に挟まれて圧潰状態となってその部分の気密・水密を保持するクッション材が定着される、請求項1乃至4のいずれかに記載の軒天換気材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−44086(P2013−44086A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180061(P2011−180061)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(397025107)日本住環境株式会社 (43)
【Fターム(参考)】