転写定着装置及び画像形成装置
【課題】消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じずに定着性が良好な、転写定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体Pの転写定着面にトナー像Tを転写するとともに定着する転写定着装置66であって、トナー像Tを担持する転写定着部材27と、転写定着部材27に圧接してニップ部を形成する加圧部材68と、加熱体68aによって加熱されるとともにニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板68bと、伝熱板68bに案内される記録媒体Pを伝熱板68bに向けて付勢する付勢部材91と、を備える。
【解決手段】記録媒体Pの転写定着面にトナー像Tを転写するとともに定着する転写定着装置66であって、トナー像Tを担持する転写定着部材27と、転写定着部材27に圧接してニップ部を形成する加圧部材68と、加熱体68aによって加熱されるとともにニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板68bと、伝熱板68bに案内される記録媒体Pを伝熱板68bに向けて付勢する付勢部材91と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体上にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、転写工程と定着工程とを同時におこなう転写定着装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
このような転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、表面性の粗い記録媒体を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点がある。
【0003】
詳しくは、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置では、表面性の粗い記録媒体を使用すると、中間転写ベルト等の中間転写体が記録媒体の表面性に追従できずに中間転写体と記録媒体との間に微小ギャップが形成されてしまう。そのため、その微小ギャップが形成された部分で異常放電が発生して、中間転写体上に担持された画像が記録媒体上に正常に転写されずに、画像が全体としてボソボソになってしまう。
これに対して、転写定着装置を備えた画像形成装置では、トナー像に対して転写と同時に熱を加えるため、トナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になる。そのため、表面性の粗い記録媒体を使用して定着部材と記録媒体との間に微小ギャップが形成されても、その部分に画像が塊として転写されてしまう。したがって、画像は、ボソボソにならずに、良好で高画質なものになる。
【0004】
さらに、転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写・定着工程がおこなわれるニップ部(転写定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されないために、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、記録媒体の搬送経路に対する制約が少なくなる。すなわち、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置は、定着工程がおこなわれるニップ部(定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されるために、転写部から定着部に至る搬送経路には未定着トナー像に接触しないための制約が課せられる。したがって、転写定着装置を備えた画像形成装置は、記録媒体の搬送経路に対する設計上の自由度が高く、記録媒体の搬送性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の転写定着装置は、トナー像を担持する転写定着部材を加熱してトナー像を加熱・溶融しているために、長寿命化のために転写定着部材が厚くなったり、大型のタンデム型の画像形成装置に設置するために転写定着部材の周長が長くなったりした場合に、転写定着部材の熱効率が低下してしまっていた。そのため、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
さらに、従来の転写定着装置は、上述した転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多かった。このような加熱・冷却のサイクルが繰り返されるために、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
【0006】
本願発明者は、このような問題を解決するために研究を重ねた結果、転写定着部材の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体を効率的に加熱することで補足する方策を知得した。このような方策を具現化するためには、ニップ部に対して記録媒体の搬送方向上流側であってニップ部の近傍に、記録媒体の転写定着面に接触して熱を伝える伝熱部材を設けることが考えられる。しかし、その場合に、伝熱部材とニップ部との距離がある程度近くないと、伝熱部材によって加熱された記録媒体の表面(転写定着面)の熱が記録媒体の内部に拡散されてしまい、トナー像の定着性が不充分になる不具合が生じてしまうことも知得した。このような不具合は、記録媒体として厚紙を用いた場合に特に顕著になる。また、伝熱部材と記録媒体との密着力と密着時間とがある程度確保されていないと、ニップ部に搬送される直前に加熱される記録媒体の表面に温度ムラが発生してしまう。このような場合には、転写・定着工程後の出力画像に定着不良や光沢ムラが生じてしまうことになる。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じずに定着性が良好な、転写定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1記載の発明にかかる転写定着装置は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、トナー像を担持する転写定着部材と、前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、加熱体によって加熱されるとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内しながら当該記録媒体の前記転写定着面を加熱する伝熱板と、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する付勢部材と、を備えたものである。
【0009】
また、請求項2記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記付勢部材を、前記伝熱板に案内される記録媒体に接触するブラシ状部材としたものである。
【0010】
また、請求項3記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2に記載の発明において、前記ブラシ状部材は、ブラシ毛が前記ニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材を前記加圧部材の側に具備したものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ブラシ状部材は、中空構造のブラシ毛を有するとともに、前記伝熱板に案内される記録媒体に当該ブラシ毛を介して空気を吹き付けるように構成されたものである。
【0012】
また、請求項5記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状部材を、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する単数又は複数のブラシ状ローラとしたものである。
【0013】
また、請求項6記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5に記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、記録媒体との接触位置における線速度が記録媒体の搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されるものである。
【0014】
また、請求項7記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5又は請求項6に記載の発明において、記録媒体の搬送方向に対して前記ブラシ状ローラの上流側に、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に当接するとともに記録媒体を案内するガイド部材を設けたものである。
【0015】
また、請求項8記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に摺接して当該ブラシ状ローラをクリーニングするクリーニング部材を設けたものである。
【0016】
また、請求項9記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、前記加圧部材に摺接するように配設されたものである。
【0017】
また、請求項10記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、その外周面に可撓性を有する円筒状部材が覆設されたものである。
【0018】
また、請求項11記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項10に記載の発明において、前記円筒状部材は、低摩擦材料で形成されたものである。
【0019】
また、請求項12記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項10又は請求項11に記載の発明において、前記円筒状部材を加熱する加熱手段をさらに備えたものである。
【0020】
また、請求項13記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記付勢部材を、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板の側から空気とともに吸引する吸引機構としたものである。
【0021】
また、請求項14記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項13のいずれかに記載の発明において、前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の搬送方向先端部及び搬送方向後端部のみを当該伝熱板に向けて付勢するように制御されるものである。
【0022】
また、請求項15記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項14のいずれかに記載の発明において、前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の厚さ又は種類に応じて当該記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する条件が可変制御されるものである。
【0023】
また、請求項16記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項15のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凸状に形成された曲面からなる案内面を具備し、前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも小さくなるように構成されたものである。
【0024】
また、請求項17記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項16のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凹状に形成された曲面からなる案内面を具備し、前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも大きくなるように構成されたものである。
【0025】
また、請求項18記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項17のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板を、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する弾性ローラの外周面に覆設された金属層としたものである。
【0026】
また、この発明の請求項15記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の転写定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、転写定着部材と加圧部材とのニップ部に搬送される記録媒体を案内しながら記録媒体の転写定着面を加熱する伝熱板を設けるとともに、伝熱板に案内される記録媒体を伝熱板に向けて付勢する付勢部材を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じずに定着性が良好な、転写定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図3】転写定着装置に設置される加熱装置を幅方向にみた図である。
【図4】別の加熱装置の一部を幅方向にみた図である。
【図5】別の転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図6】別の加熱装置の一部を示す拡大図である。
【図7】この発明の実施の形態2における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図9】この発明の実施の形態4における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図11】この発明の実施の形態6における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態7における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図13】ブラシ状ローラの加圧機構を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態8における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態9における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態10における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図17】ブラシ状ローラを幅方向にみた断面図である。
【図18】この発明の実施の形態11における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図19】この発明の実施の形態12における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0030】
実施の形態1.
図1〜図3にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、20Y、20M、20C、20BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ、21は各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにそれぞれ収容された感光体ドラム(像担持体)、22は感光体ドラム21上を帯電する帯電部、23Y、23M、23C、23BKは感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する現像装置、24は感光体ドラム21上に形成されたトナー像を転写定着ベルト27に転写する転写バイアスローラ、25は感光体ドラム21上の未転写トナーを回収するクリーニング装置、を示す。
【0031】
また、27は複数色のトナー像が重ねて転写される転写定着部材としての転写定着ベルト、29は転写・定着工程後の転写定着ベルト27を清掃するクリーニング装置(ベルトクリーニング装置)、32Y、32M、32C、32BKは各現像装置23Y、23M、23C、23BKに各色のトナーを補給するトナー補給部、51は原稿Dを原稿読込部55に搬送する原稿搬送部、55は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、61は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、66は記録媒体P上にトナー像を転写・定着する転写定着装置、67は転写・定着工程直前の記録媒体Pを加熱する加熱装置、68は転写定着ベルト27に圧接してニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラ、85は転写定着ベルト27の幅方向温度分布を均一化する均しローラ、91は記録媒体をPを加熱装置67に向けて付勢する付勢部材としてのブラシ状部材、を示す。
【0032】
ここで、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱手段としての加熱装置67、加圧部材としての加圧ローラ68、均しローラ85、付勢部材としてのブラシ状部材91、等で構成される。
また、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電部22、クリーニング装置25が、一体化されたものである。そして、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにおける感光体ドラム21上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成がおこなわれる。
【0033】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部51の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部55のコンタクトガラス53上に載置される。そして、原稿読込部55で、コンタクトガラス53上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0034】
詳しくは、原稿読込部55は、コンタクトガラス53上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0035】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKの感光体ドラム21上に向けて発せられる。
【0036】
一方、4つの感光体ドラム21は、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム21の表面は、帯電部22との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム21上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラー3に入射して反射した後に、レンズ4、5を透過する。レンズ4、5を透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0037】
イエロー成分に対応したレーザ光は、ミラー6〜8で反射された後に、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー3により、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0038】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、ミラー9〜11で反射された後に、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、ミラー12〜14で反射された後に、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム21表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、ミラー15で反射された後に、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0039】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21表面は、それぞれ、現像装置23Y、23M、23C、23BKとの対向位置に達する。そして、各現像装置23Y、23M、23C、23BKから感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、複数のローラ部材28A〜28C、85に張架・支持された転写定着ベルト27との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、転写定着ベルト27の内周面に当接するように転写バイアスローラ24が設置されている。そして、転写バイアスローラ24の位置で、転写定着ベルト27上に、感光体ドラム21上に形成された各色の画像(トナー像)が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0040】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、クリーニング装置25との対向位置に達する。そして、クリーニング装置25で、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0041】
他方、感光体ドラム21上の各色のトナー像が重ねて転写・担持された転写定着ベルト27(転写定着部材)表面は、図中の矢印方向に走行して、加圧ローラ68(加圧部材)との当接位置(ニップ部である。)に達する。ここで、本実施の形態1における転写定着装置66は、従来のものとは異なり、転写定着ベルト27自体を直接的に加熱する装置が設置されていない(または、設置されているとしても加熱量の少ない装置である。)。
転写定着ベルト27に担持されたトナー像は、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部にて、記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に転写されるとともに定着される(転写・定着工程である。)。詳しくは、記録媒体Pの転写定着面がニップ部の直前で加熱装置67によって加熱されて、ニップ部にて転写定着面の熱によってトナー像が加熱・溶融されるとともに、ニップ部の圧力によってトナー像が転写定着面に定着される。なお、転写定着装置66の構成・動作については、後で図2及び図3を用いてさらに詳しく説明する。
その後、転写定着ベルト27表面は、ベルトクリーニング部29の位置に達する。そして、転写定着ベルト27上の残トナー等の付着物がベルトクリーニング装置29に回収されて、転写定着ベルト27上の一連の転写定着プロセスが完了する。
【0042】
ここで、転写定着装置66のニップ部に搬送される記録媒体Pは、給紙部61から搬送ガイド63、レジストローラ64、加熱装置67等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部61から、給紙ローラ62により給送された転写紙Pが、搬送ガイド63を通過した後に、レジストローラ64に導かれる。レジストローラ64に達した記録媒体Pは、転写定着ベルト27上のトナー像とタイミングを合わせて、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部に向けて搬送される。このとき、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pは伝加熱装置67の伝熱板67b(図2を参照できる。)に案内されるとともに、ブラシ状部材91によって伝熱板67bに向けて付勢されながら、記録媒体Pの転写定着面のみが加熱装置67(伝熱板67b)によって加熱される。
その後、フルカラー画像が転写・定着された記録媒体Pは、排紙搬送経路を通過して、排紙ローラ80によって装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。なお、本実施の形態1における画像形成装置は、記録媒体Pの搬送速度(又は、プロセス線速)が、300mm/秒程度に設定されている。
【0043】
なお、本実施の形態1において用いられるトナーは、低温定着に適したものであることが好ましい。具体的に、トナーの軟化点(1/2流出温度)は100℃程度であることが好ましい。
トナー結着樹脂としては、以下の組成のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体が挙げられる。
また、以下の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。この中で特に、ポリエステル樹脂を含有しているものは充分な定着性を得るために、好ましい。特に結晶性ポリエステル樹脂は、紙接触時に充分に軟化溶融し、定着強度とともに色再現性の高い画像形成が可能となる。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0044】
また、本実施の形態1に用いるトナーには、転写定着工程時の転写定着ベルト27表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることができる。離型剤として、公知のものをすべて使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックス、エステルワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不充分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不充分となる。ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。また、15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じる。
また、外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、シリカ、酸化チタン、アルミナ等、さらに必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加しても良い。
特に、転写定着装置66は、トナーを充分に加熱することが可能であるため、サブミクロンの大粒径シリカ等の添加剤を比較的多量に用いても定着性や定着温度に影響を与えないため、流動性・転写性を考慮した外添処方が可能である。
【0045】
次に、図2及び図3にて、本実施の形態1において特徴的な転写定着装置66について詳述する。
図2は、転写定着装置66の一部を示す拡大図である。図3は、加熱装置67を図2のX方向から幅方向にみた図である。
図2に示すように、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱装置67(加熱手段)、加圧部材としての加圧ローラ68、付勢部材としてのブラシ状部材91、等で構成される。
【0046】
ここで、転写定着部材としての転写定着ベルト27は、ベース層上に、弾性層、離型層が順次形成された多層構造のエンドレスベルトである。ベース層は、層厚が80μmのポリイミド樹脂で形成されている。弾性層は、記録媒体P表面の凹凸に追従するためのものであって、層厚が160μmのシリコーンゴムで形成されている。離型層は、ベルト表面のトナーや紙粉に対する離型性を確保するためのものであって、層厚が7μmのフッ素樹脂で形成されている。
【0047】
また、加圧ローラ68は、アルミニウム等からなる円筒状の芯金上に表面層(離型層)が形成されたものであって、図2の時計方向に回転する。加圧ローラ68は、不図示の加圧機構によって、転写定着ベルト27を介してローラ部材28Aに圧接する。こうして、加圧ローラ68と転写定着ベルト27との間に、所望のニップ部が形成される。
加圧ローラ68の表面層としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、等を用いることができる。
【0048】
加熱装置67は、転写定着装置66におけるニップ部の入口側の近傍に配設されている。加熱装置67は、加熱体67a、伝熱板67b、電極67c、等で構成される。
加熱体67aは、伝熱板67bと電極67cとに挟持されている。本実施の形態1では、加熱体67aとして、所定のキューリー点に達すると抵抗が急激に上昇する抵抗発熱体を用いている。具体的に、加熱体67aとして、チタン酸バリウム系半導体磁器素体からなる正特性サーミスタを用いている。また、本実施の形態1では、図3に示すように、加熱体67a(正特性サーミスタ)を幅方向に10個並設している。
伝熱板67b(伝熱部材)は、板厚が0.2mmのステンレス鋼板である。伝熱板67bは、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍にかけて延設されていて、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内する案内板(ガイド板)として機能する。また、伝熱板67bは、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に接触して、加熱体67aで発生した熱を記録媒体P(転写定着面)に伝熱する機能を有する。さらに、伝熱板67bには交流電源71が接続されていて、一方の電極としても機能することになる。
【0049】
加熱体67aを挟持する電極67c及び伝熱板67bには、交流電源71が接続されていて、スイッチ72が接続されることにより加熱体67aの両端にAC100ボルトの電圧が印加される。これにより、加熱体67a内に電流が流れて加熱体67aが発熱することになる。さらには、加熱体67aの熱が伝熱板67bから記録媒体Pの転写定着面に伝えられる。
なお、本実施の形態1では、伝熱板67bの材料として、熱伝導率が高く、同体積における熱容量が低く、比較的安価な銅を用いているために、加熱効率が高く比較的安価な加熱装置67を提供することができる。
【0050】
ここで、加熱体67aは、記録媒体Pの発火点よりも低いキューリー点を有するものを用いることが好ましい。これにより、加熱体67aは、その自己温度制御機能によって、記録媒体Pの発火点以上に昇温する不具合が抑止される。
具体的に、本実施の形態1では、加熱体67aのキューリー点を200℃に設定している。これにより、加熱体67aの温度が200℃を超えたときに、電極67cと伝熱板67bとの間の抵抗が急激に上昇して、加熱体67a内に流れる電流が低下する。詳しくは、加熱体67aの温度が210℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/2に低下して、加熱体67aの温度が220℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/4に低下する。
このように構成された加熱体67aは、1200ワットの電力で6秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。加熱体67aを210℃以下で制御する場合には、図示しない温度センサを用いてPID制御等によって所望の温度に制御する。制御回路が故障しても、上述のように210℃以上にはなり得ないので安全性が確保される。また、本実施の形態1では、幅方向に複数の加熱体67aを並設しているために、複数の加熱体67aによってそれぞれの自己温度制御がおこなわれて、幅方向の温度ムラを10℃以下にすることができる。
【0051】
このように構成された加熱装置67は、上述したように、転写・定着工程直前の記録媒体Pの転写定着面(おもて面)のみを加熱するものである。換言すると、加熱装置67は、記録媒体Pの裏面(転写定着面に対する裏面である。)が昇温する前に(おもて面から裏面に熱が伝達される前に)記録媒体Pがニップ部に搬送されるように転写定着面を加熱する。
【0052】
本願発明者は、160℃に加熱された銅板(厚さ1mm)に記録媒体P(厚紙300g紙)を60msec接触させてその後に雰囲気温度40℃の空中に搬送(空走)したときの、記録媒体Pの転写定着面の温度変動をシミレーションした。その結果、銅板によって約140℃まで加熱された記録媒体Pが、雰囲気温度40℃の空中に10msec(搬送速度300mm/秒の場合、3mmの搬送距離に相当する。)搬送されるだけで110℃まで温度が低下するのがわかった。したがって、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を上げるためには、記録媒体を加熱する伝熱部材(伝熱板)をできる限りニップ部に近接させることが必要になる。
本実施の形態1では、伝熱板67bを板状に形成して、その先端をできる限りニップ部に近づけるとともに、その搬送方向の長さをできる限り長く設定しているために、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を向上させることができる。
【0053】
本願発明者は、ブラシ状部材91を設置せずに、伝熱板67bの加熱温度を140〜200℃に設定して、伝熱板67bから送出された後の記録媒体P(リコー社製「コピー用紙6200」)の転写定着面の温度変動を確認した。その結果、伝熱板67bから送出されてから0〜60msecでは記録媒体Pの転写定着面の温度低下が15℃以下であることがわかった。
【0054】
ここで、本実施の形態1における伝熱板67bは、記録媒体Pを案内する案内面(記録媒体Pに接触する面である。)に、フッ素樹脂粒子を含有するニッケルメッキが覆設されている。具体的には、ニッケルメッキの皮膜中に30vol%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を分散させている。このようなコーティングは、析出状態の硬度がHv300程度であって通常の樹脂コーティングに比べて硬く、すべり性、耐摩耗性、離型性にも優れている。したがって、伝熱板67bにトナーや紙粉が付着する不具合を軽減できるとともに、伝熱板67bの耐久性を向上させることができる。
なお、伝熱板67bの案内面(記録媒体Pに接触する面である。)を、耐摩耗性が高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)やグラファイトライクカーボン(GLC)で覆設することもできる。
【0055】
本実施の形態1における加熱装置67は、記録媒体Pの転写定着面の温度が転写定着ベルト27の表面温度よりも高くなるように、転写定着面を加熱している。すなわち、転写定着ベルト27に担持されたトナー像Tは、ニップ部にて、記録媒体Pから受ける熱により加熱・溶融されることになる。
本実施の形態1では、記録媒体Pの転写定着面を加熱していて、出力画像上にて充分な光沢を得るための温度を独立して設定できるので、転写定着ベルト27の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録媒体Pは転写・定着工程の直前に加熱されるので、過剰に加熱されずに、トナーTと記録媒体Pとの密着性も必要以上に高められることはない。
すなわち、本実施の形態1の構成によれば、低温定着が可能であって、装置のウォームアップ時間を短縮できて、省エネルギ化を向上させることができる。また、転写定着ベルト27への熱移動を抑制できるので、転写定着ベルト27の耐久性を向上させることができる。さらに、転写定着ベルト27の加熱温度が低減されるために、転写定着ベルト27の熱劣化を抑制できる。
【0056】
また、本実施の形態1における転写定着装置66は、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを、ブラシ状部材91(付勢部材)によって伝熱板67bに押し付ける(付勢する)ように構成されている。このように構成することにより、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着力と密着時間が向上するために、伝熱板67bによって記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
【0057】
ここで、ブラシ状部材91は、耐熱性を有するポリイミド繊維(直径0.2mm)からなり密度50本/cm2にて植毛されたブラシ毛91aが、伝熱板67bに案内される記録媒体Pに複数個所で点接触又は線接触するように構成されたものである。記録媒体Pとの接触面積を極力小さくして記録媒体Pを伝熱板67bに押圧することで、ブラシ状部材91の側に熱が移動して記録媒体Pの加熱効率が低下する不具合を抑止することができるとともに、記録媒体Pの搬送性が低下する不具合を抑止することができる。
【0058】
なお、ブラシ状部材91のブラシ毛91aは、直毛状のもの以外に、ループ状のもの、先太状のもの、中空構造のもの、等を用いることができる。特に、中空構造のブラシ毛91a(外径0.24mm程度)を用いた場合に、ブラシ状部材91の下面側にファンを設置して、伝熱板67bに案内される記録媒体Pにブラシ毛67b(中空部)を介して空気を吹き付けることで、記録媒体Pを空気の力でも伝熱板67bに付勢することができるとともに、ブラシ毛67bの毛倒れを防止することができる。
【0059】
また、ブラシ状部材91のブラシ毛91aを磁性を有する材料(例えば、SUS304)で形成して、伝熱板67bの側にマグネットを設置することで、ブラシ毛91aがマグネットによる磁力に引き付けられるために、ブラシ毛91aの毛倒れを防止することができる。すなわち、ブラシ毛91bが記録媒体Pとの接触を繰り返すことにより毛倒れを起こして、記録媒体Pを伝熱板67bに付勢する力が弱まり記録媒体Pの加熱不良が生じるのを抑止することができる。
【0060】
このように、本実施の形態1における転写定着装置66は、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体Pを効率的に加熱することで補足するものである。しかし、その場合に、加熱された記録媒体Pから転写定着ベルト27が多量かつ不均一な分布の熱を受けて、転写定着ベルト27の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向である。)に温度ムラが生じて、定着ムラやオフセット等の定着不良画像が発生しやすくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、図2に示すように、ニップ部を通過した後の転写定着ベルト27の表面の幅方向の温度分布を均一化する均しローラ85を設置している。
均しローラ85は、ニップ部に対して転写定着ベルト27の走行方向下流側に配設されたローラ部材であって、3つのローラ部材28A〜28Cとともに転写定着ベルト27を張架・支持する。均しローラ85は、ヒートパイプであって、その内部で熱を効率的に対流させることで、転写定着ベルト27表面の幅方向の温度分布を均一化する。これにより、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えてニップ部に搬送される直前の記録媒体Pを加熱装置67によって加熱する場合であっても、定着ムラやオフセット等の定着不良が発生するのを抑止することができる。
【0061】
なお、加熱装置67は、本実施の形態1のものに限定されることなく、例えば、図4に示すように構成することもできる。図4は、加熱装置67の一部を幅方向にみた図である。図4に示す加熱装置67は、複数の加熱体67aを、2つに分割した電極67cと、伝熱板67bと、で挟んだものである。そして、2つに分割した電極67cにそれぞれ交流電源71を接続して双方の間に交流電圧を印加する。これにより、一方の電極67cから加熱体67a、伝熱板67b、加熱体67aを介して、他方の電極67cに電流が流れて(矢印方向の電流の流れである。)、加熱体67aが加熱されることになる。このような構成をとった場合、加熱体67aにかかる電圧が小さくなり加熱体67aの熱容量を小さくすることができる。これにより、PTC特性を有効に活用して、加熱装置67の制御応答性を高めることができる。
【0062】
また、図5に示すように加熱装置67を構成することもできる。図5に示すように、加熱装置67の伝熱板は、第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2とに分割されている。第1の伝熱板67b1は、加熱体67aの上面から側面に屈曲して、さらに加熱体67aの下面に達する位置から屈曲して記録媒体Pの案内面となるようにニップ部近傍まで延設されている。第2の伝熱板67b2は、加熱体67aの下面からレジストローラ64の近傍まで延設されている。第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2との間には、絶縁材67dが設置されている。そして、第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2とに交流電源71が接続されている。このように構成された加熱装置67を用いた場合であっても、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、図5に示すように、ブラシ状部材91に、ブラシ毛91aがニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材91b(規制部材)を、加圧ローラ68の側の端部に設置することもできる。具体的に、板状部材91bは、板厚が0.3mmのステンレス板であって、加圧ローラ68の曲率に合わせて湾曲されている。板状部材91bと加圧ローラ68との隙間は、1mm程度に設定することができる。
このような構成により、ブラシ状部材91のブラシ毛91aが毛倒れして加圧ローラ68に巻き込まれる不具合が防止される。
【0064】
また、本実施の形態1では、伝熱板67bを銅で形成したが、図6に示すように、高熱伝導性材料からなる複数の箔67b11〜67b13を積層して伝熱板67bを形成することもできる。その際、複数の箔67b11〜67b13は、記録媒体Pに静電気力等によって吸着しやすい材料を選択することが好ましい。
このような構成により、図6に示すように、記録媒体Pの表面に凹凸がある場合であっても、その凹凸形状に対して伝熱部材67bが追従しやすくなり記録媒体Pとの密着性が高まるために、記録媒体Pに対する加熱効率が向上するとともに、記録媒体Pの温度ムラが軽減される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0066】
なお、本実施の形態1では、加熱装置67の加熱体67aとして抵抗発熱体(正特性サーミスタ)を用いて伝熱板67bを加熱体67aによって加熱されるように構成した。これに対して、伝熱板67bを所定のキューリー点に達すると透磁率が低下する金属材料で形成して、伝熱板67bを電磁誘導により加熱することもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
具体的に、加熱装置は、ニッケル、鉄等の整磁合金からなる板厚0.3mm程度の伝熱板と、伝熱板に対向する誘導コイル(加熱体)と、等で構成される。このような構成により、誘導コイルに20kHzの高周波電圧が印加されると、伝熱板が電磁誘導加熱されて、記録媒体Pの転写定着面に熱を伝えることになる。なお、伝熱板は、整磁合金中のニッケル成分の比率が40%程度に設定されていて、その温度が200℃(キューリー点)に達すると透磁率が急激に低下して電磁誘導加熱されなくなる。具体的に、このように構成された伝熱板は、1200ワットの電力で3秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。
【0067】
また、本実施の形態1では、記録媒体Pを伝熱板67bの側に付勢する付勢部材としてブラシ状部材91を用いたが、付勢部材としてバネ材を用いることもできる。その場合、記録媒体Pとの摩擦を低減するために、バネ材の摺動面にフッ素樹脂等の低摩擦材料をコーティングすることが好ましい。
【0068】
実施の形態2.
図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における転写定着装置は、加熱装置67の伝熱板67bが案内される記録媒体Pの側に凸状に形成されている点と、伝熱板67bに達する前後の位置における記録媒体の搬送速度に差異を設けている点と、が前記実施の形態1のものと相違する。
【0069】
本実施の形態2における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
【0070】
ここで、本実施の形態2における加熱装置67の伝熱板67bは、図7に示すように、案内される記録媒体Pの側に凸状に形成された曲面からなる案内面が設けられている。具体的に、伝熱板67bは、300R程度の曲率で湾曲している。
さらに、その案内面に達する前の位置における記録媒体Pの搬送速度が、案内面に達した後の位置における記録媒体Pの搬送速度よりも小さくなるように構成されている。具体的には、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度減速されるように設定されている。
【0071】
このような構成により、記録媒体Pはニップ部側に引っ張られて凸状の伝熱板67bに沿うように搬送されるために、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着性がさらに高まって、記録媒体Pに対する加熱効率が向上する。具体的に、本願発明者がサーモグラフィで測定したところ、本実施の形態2における伝熱板67bを用いた場合には、本実施の形態1における伝熱板67bを用いた場合に比べて、伝熱板67bによって加熱される記録媒体Pの表面温度が5〜10℃上昇することが確認できた。
【0072】
なお、伝熱板67bは、加圧ローラ68がツヅミ状に形成されている場合に、その形状に合わせて形成することが好ましい。具体的に、加圧ローラ68の幅方向中央部の外径が軸方向両端部の外径よりも0.1mm小さく形成されている場合には、伝熱板67bの幅方向(図7の紙面垂直方向である。)の中央部における曲率を250Rとすることができる(幅方向両端部における曲率は300Rである。)。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、前記実施の形態1と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0074】
実施の形態3.
図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図8は、実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態3における転写定着装置は、加熱装置67の伝熱板67bが案内される記録媒体Pの側に凹状に形成されている点と、伝熱板67bに達する前後の位置における記録媒体の搬送速度に差異を設けている点と、が前記実施の形態1のものと相違する。
【0075】
本実施の形態3における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
【0076】
ここで、本実施の形態3における加熱装置67の伝熱板67bは、図8に示すように、案内される記録媒体Pの側に凹状に形成された曲面からなる案内面が設けられている。具体的に、伝熱板67bは、前記実施の形態2のものとは逆方向に300R程度の曲率で湾曲している。
さらに、その案内面に達する前の位置における記録媒体Pの搬送速度が、案内面に達した後の位置における記録媒体Pの搬送速度よりも大きくなるように構成されている。具体的には、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度増速されるように設定されている。
【0077】
このような構成により、記録媒体Pはニップ部側で詰まって凹状の伝熱板67bに沿うように搬送されるために、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着性がさらに高まって、記録媒体Pに対する加熱効率が向上する。具体的に、本願発明者がサーモグラフィで測定したところ、本実施の形態3における伝熱板67bを用いた場合には、本実施の形態1における伝熱板67bを用いた場合に比べて、伝熱板67bによって加熱される記録媒体Pの表面温度が5〜10℃上昇することが確認できた。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0079】
実施の形態4.
図9にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図9は、実施の形態4における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態2における図7に相当する図である。本実施の形態4における転写定着装置は、記録媒体Pに対してブラシ状部材91の接離動作がおこなわれる点が、前記実施の形態2のものと相違する。
【0080】
本実施の形態4における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
さらに、伝熱板67bは、前記実施の形態2のものと同様に、凸状に形成されている。また、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度減速されるように設定されている。
【0081】
ここで、本実施の形態4におけるブラシ状部材91(付勢部材)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの先端部及び後端部(搬送方向の先端部及び後端部である。)のみを伝熱板67bに向けて付勢するように制御される。
具体的に、図9(A)及ぶ図9(B)に示すように、ブラシ状部材91は、カム92の回転によって上下方向に移動可能に構成されている。そして、搬送中の記録媒体Pの先端部(搬送方向先端部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(A)に示すように、ブラシ状部材91を上方に移動して記録媒体Pの先端部を伝熱板67bに積極的に押し当てる。その後、記録媒体Pの中央部(搬送方向中央部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(B)に示すように、ブラシ状部材91を下方に移動して記録媒体Pの中央部を伝熱板67bに積極的に押し当てる動作を休止する。最後に、記録媒体Pの後端部(搬送方向後端部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(A)に示すように、再びブラシ状部材91を上方に移動して記録媒体Pの後端部を伝熱板67bに積極的に押し当てる。
【0082】
このような構成・制御により、記録媒体Pの裏面がブラシ状部材91のブラシ毛91aで擦られて紙粉が多量に発生する不具合が軽減される。さらに、両面プリント時の記録媒体Pの第1面がブラシ毛91aで擦られて第1面に形成された画像が傷つく不具合が軽減される。具体的に、本願発明者が1000枚の通紙をおこなって紙粉の発生量を確認したところ、ブラシ状部材91の接離動作をおこなった場合(本実施の形態4における構成・動作である。)には、ブラシ状部材91の接離動作をおこなわなかった場合(前記実施の形態2における構成・動作である。)に比べて、紙粉の発生量が大幅に低減された。なお、ブラシ状部材91を記録媒体Pから完全に離間させる動作の代わりに、記録媒体Pに対するブラシ状部材91の当接力を半分に弱める動作をおこなった場合にも、本実施の形態4のものと同様に紙粉の発生量が大幅に低減された。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態4によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0084】
実施の形態5.
図10にて、この発明の実施の形態5について詳細に説明する。
図10は、実施の形態5における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態5における転写定着装置は、付勢部材として吸引機構95、96が用いられている点が、付勢部材としてブラシ状部材91が用いられている前記実施の形態3のものと相違する。
【0085】
本実施の形態5における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。
さらに、伝熱板67bは、前記実施の形態3のものと同様に、凹状に形成されている。また、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度増速されるように設定されている。
【0086】
ここで、本実施の形態5では、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する付勢部材として、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bの側から空気とともに吸引する吸引機構95、96が用いられている。
詳しくは、吸引機構(付勢部材)は、加熱装置67の上方を覆うダクト96と、ダクト96の吸引口に設置された吸引ファン95と、で構成されている。また、伝熱板67bには、直径30μmの貫通穴が25mm×25mmの範囲ごとに形成されている。このような構成により、吸引ファン95が稼動すると、記録媒体Pが伝熱板67bに向けて吸引(付勢)されることになる。
【0087】
なお、本実施の形態5においては、吸引機構95、96を用いて、記録媒体Pに接触することなく記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢しているために、記録媒体Pの裏面から紙粉が生じる不具合が生じにくい。しかし、記録媒体Pの先後端部のみを伝熱板67bに付勢すれば記録媒体Pと伝熱板67bとの密着性が確保される場合等には、前記実施の形態4と同様に、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの先端部及び後端部(搬送方向の先端部及び後端部である。)のみを伝熱板67bに向けて付勢するように吸引ファン95のオン・オフ制御をおこなうことができる。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態5によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて吸引して付勢する吸引機構95、96(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0089】
実施の形態6.
図11にて、この発明の実施の形態6について詳細に説明する。
図11は、実施の形態6における画像形成装置の一部を示す構成図である。本実施の形態6における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21が設置されている点が、4つの感光体ドラム21が設置されている前記実施の形態1のものと相違する。
【0090】
本実施の形態6における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材91)が設置されている。
【0091】
図11に示すように、本実施の形態6における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21の周囲に、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した書込み部(不図示である。)、帯電部(不図示である。)、現像装置23Y、23M、23C、23BKや、クリーニング装置25、等が配設されている。そして、感光体ドラム21上で各色の画像(トナー像)が重ねて形成されて、そのカラー画像が転写バイアスローラ24との対向位置で転写定着ベルト27上に転写される。
その後、転写定着ベルト27上に担持されたトナー像Tは、加圧ローラ68とのニップ部の位置で、前記各実施の形態と同様に、加熱装置67によって加熱された記録媒体P上に転写・定着される。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態6によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0093】
実施の形態7.
図12及び図13にて、この発明の実施の形態7について詳細に説明する。
図12は、実施の形態7における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態7における転写定着装置は、ブラシ状部材(付勢部材)としてブラシ状ローラ191が用いられている点が、前記実施の形態1のものと相違する。
【0094】
図12を参照して、本実施の形態7における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材191が設置されている。
ここで、本実施の形態7におけるブラシ状部材は、前記実施の形態1における非回転で板状のブラシ状部材91とは異なり、記録媒体Pとの接触位置において記録媒体Pの搬送方向と同方向に回転するブラシ状ローラ191(図12の時計方向に回転する。)である。
【0095】
本実施の形態7における転写定着装置66は、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを、ブラシ状ローラ191(付勢部材)によって伝熱板67bに押し付ける(付勢する)ように構成されている。このように構成することにより、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着力と密着時間が向上するために、伝熱板67bによって記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
【0096】
図12及び図13を参照して、付勢部材としてのブラシ状ローラ191は、芯金上に、ポリイミド繊維やアラミド繊維等が植毛されたブラシ布が螺旋状に巻回された耐熱性を有するローラ状部材であって、図12の時計方向に回転する。そして、レジストローラ64の位置を通過した記録媒体Pは、伝熱板67b及びガイド部材65に案内されて、ニップ部の直前で、ブラシ状ローラ191に付勢されて伝熱板67bに押し当てられながら、伝熱板67bによって加熱された後に、ニップ部に送入されることになる。
なお、本実施の形態7におけるブラシ状ローラ191は、その外径が30mm、ブラシ毛の毛足長さが10mm、ブラシ毛の原糸太さが1330T/120F、ブラシ毛の密度が10万〜15万本/inch2に設定されている。また、ブラシ状ローラ191のブラシ毛は、上述のものに限定されることなく、フッ素樹脂や、耐熱性の樹脂や金属、又は、それらの表面に低摩耗材料をコーティングしたもの、等を用いることもできる。ブラシ状ローラ191に耐熱性をもたせることで、伝熱板67bの熱によってブラシ状ローラ191のブラシ毛が熱劣化する不具合を軽減することができる。
【0097】
ブラシ状ローラ191は、記録媒体Pとの接触位置における線速度が記録媒体Pの搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されることが好ましい。すなわち、ブラシ状ローラ191は、記録媒体Pの搬送速度と等速又はそれ以上の速度で、図12の時計方向に回転することが好ましい。
このような構成により、記録媒体Pがブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの接触位置に進入するときに、ブラシ状ローラ191に引っ掛かって搬送性が低下する不具合を防止することができる。なお、本実施の形態7では、ブラシ状ローラ191の記録媒体Pとの接触位置における線速度が、記録媒体Pの搬送速度に対して1〜3%速くなるように設定されている。
【0098】
ここで、本実施の形態7では、図12に示すように、記録媒体Pが左方から右方に略水平方向に搬送されて、その上方には伝熱板67bが配設され、その下方にはブラシ状ローラ191が配置されている。このように、記録媒体Pの重力方向にブラシ状ローラ191を配設することで、ブラシ状ローラ191に記録媒体Pを持ち上げる方向の反作用による力が作用するため、記録媒体Pとブラシ状ローラ191との接触力が高まり、記録媒体Pの搬送性が向上することになる。なお、本実施の形態7では、記録媒体Pの搬送方向を略水平方向としたが、記録媒体Pの搬送方向が斜方向に設定されている画像形成装置であっても、記録媒体Pの重力方向の分力が作用する方向にブラシ状ローラ191を配設することで、上述した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、付勢部材としてブラシ状ローラ191は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pに複数個所で点接触又は線接触することになる。記録媒体Pとの接触面積を極力小さくして記録媒体Pを伝熱板67bに押圧することで、ブラシ状ローラ191の側に熱が移動して記録媒体Pの加熱効率が低下する不具合を抑止することができるとともに、記録媒体Pの搬送性が低下する不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態7では、伝熱板67bに圧接するブラシ状ローラ191の加圧幅(ニップ幅)が3〜12mmになるように設定されている(3〜5kgf程度の加圧圧に相当する。)。
【0100】
ここで、本実施の形態7において、ブラシ状ローラ191(付勢部材)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する条件が可変制御されるように構成されている。
本実施の形態7における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ191によって伝熱板67bに向けて付勢される記録媒体Pに対する付勢力を可変する加圧機構192〜194が設置されている。また、装置本体1には、通紙される記録媒体Pの紙厚を検知する検知手段が設置されている。そして、検知手段によって取得した記録媒体Pの紙厚についての情報に基いて、加圧機構192〜194が可変制御されることになる。
なお、通紙される記録媒体Pの紙厚は、記録媒体Pの搬送経路中に紙厚センサを設置してこれにより検知することもできるし、ユーザーによって装置本体1の操作部に入力された記録媒体Pに関する情報に基いて判断してもよい。
【0101】
詳しくは、図13を参照して、加圧機構は、レバー192、カム193、引張スプリング194、駆動モータ(不図示である。)、等で構成されていて、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の相対的な位置を可変するように構成されている。レバー192は、支軸192aを中心にして回動可能に、装置本体の側板に保持されている。レバー192の、一端側にはブラシ状ローラ191が回動可能に保持されていて、他端側には引張スプリング194の一方のフック部が接続されている。引張スプリング194の他方のフック部は、装置本体の側板に接続されている。また、レバー192の中央部には、不図示の駆動モータに連結されたカム193が係合している。このような構成により、不図示の駆動モータによってカム193が回転駆動されてカム193の回転方向の姿勢が定まると、引張スプリング194のスプリング力によってレバー192が支軸192aを中心に回動して(レバー192がカム193に接触しながら回動して)、ブラシ状ローラ191の位置が上下方向に可変されることになる。
【0102】
具体的に、図13(A)は、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに対して所定の加圧幅(ニップ幅)で当接している状態である。この状態でカム193の回転方向の姿勢を所定角度だけ可変することで、加圧幅(記録媒体Pに対する付勢力)が増減される。そして、加圧機構192〜194(加圧幅可変機構)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(紙厚)が厚いときに、記録媒体Pの厚さ(紙厚)が薄いときよりも、上述した付勢力(加圧幅)が大きくなるように制御される。
厚さの厚い記録媒体(厚紙)は、厚さの薄い記録媒体(薄紙)に比べて、伝熱板67bによって加熱された転写定着面(おもて面)の熱が時間の経過とともに裏面側に伝達されてしまうために、ニップ部に到達するまでの転写定着面の温度低下の程度が大きい。これに対して、薄紙の場合には、厚紙に比べて、伝熱板67bによる加熱効率が高いために、厚紙を基準とした伝熱板67bの温度制御をおこなってしまうと、薄紙が過昇温してしまったり、温度上昇によってカールが発生してしまったりする。
したがって、上述した制御をおこなうことにより、厚さ(紙厚)が異なる記録媒体Pが通紙された場合であっても、伝熱板67bによって加熱される転写定着工程直前の記録媒体Pの温度にバラツキが生じることなく、安定した転写定着画像を形成することができる。これは、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅(付勢力)の大小が、伝熱板67bから記録媒体Pに与えられる熱量の大小に影響することに基くものである。
【0103】
本実施の形態7では、記録媒体Pの厚さに応じて伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅を可変しているために、記録媒体Pの厚さに関わらず転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。また、良好な転写定着画像を得るための必要最小限の熱量で記録媒体Pを加熱することができるために、装置全体としてのエネルギ効率を高めることができる。さらに、薄紙を通紙する場合に、必要最小限の熱量で加熱するために、加熱後に薄紙にカールが発生する不具合も防止することができる。
【0104】
なお、本実施の形態7では、記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて可変制御される、ブラシ状ローラ191(付勢部材)の付勢条件を、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅とした。これに対して、記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて可変制御される、ブラシ状ローラ191の付勢条件を、ブラシ状ローラの回転数とすることもできる。
具体的に、ブラシ状ローラ191の回転数を可変できるように、ブラシ状ローラ191の駆動モータを回転数可変型駆動モータとする。そして、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(紙厚)が厚いときに、記録媒体Pの厚さ(紙厚)が薄いときよりも、ブラシ状ローラ191の回転数が速くなるように制御する。これにより、厚紙を通紙するときには回転数が大きいブラシ状ローラ191によって厚紙が積極的に伝熱板67bに付勢されることになるため、上述した効果とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0105】
ここで、図13(B)は、上述した離間機構192〜194の動作によって、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bや加圧ローラ68に対して完全に離間している状態である。
本実施の形態7において、非通紙時(伝熱板67bとブラシ状ローラ191との間を記録媒体Pが通過しないときである。)には、伝熱板67bや加圧ローラ68やガイド部材65に対してブラシ状ローラ191を相対的に離間させる制御をおこなっている(図13(B)の状態である。)。
これにより、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接することになるため、伝熱板67bからブラシ状ローラ191に熱が伝わってブラシ状ローラ191が熱劣化する不具合が低減される。また、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bや加圧ローラ68やガイド部材65に当接して変形することになるため、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が長時間の変形によって毛倒れが復元しなくなる不具合を軽減することができる。
【0106】
また、図12及び図13(A)を参照して、本実施の形態7における転写定着装置66には、記録媒体Pの搬送方向に対してブラシ状ローラ191の上流側に、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に当接するとともに記録媒体Pを案内するガイド部材65が設けられている。詳しくは、ガイド部材65は、その下流側の先端部Wが、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に接触するように配設されている。
このような構成により、ブラシ状ローラ191のブラシ毛は、ガイド部材65との接触が開放された後に、伝熱板67bに接触することになる。すなわち、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置の搬送方向上流側は、ガイド部材65によって、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が密集していない状態が形成されている。したがって、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に送入される記録媒体Pが、ブラシ状ローラ191のブラシ毛による大きな抵抗を受けることなく、スムーズに搬送されることになる。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態7によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0108】
実施の形態8.
図14にて、この発明の実施の形態8について詳細に説明する。
図14は、実施の形態8における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。本実施の形態8における転写定着装置は、付勢部材としてのブラシ状ローラ191が加圧ローラ68に当接している点と、ブラシ状ローラ191に摺接するクリーニング部材200が設置されている点と、が前記実施の形態7のものと相違する。
【0109】
図14を参照して、本実施の形態8における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。
【0110】
ここで、本実施の形態8におけるブラシ状ローラ191は、前記実施の形態7のものとは異なり、加圧ローラ68(加圧部材)に摺接するように配設されている。詳しくは、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が加圧ローラ68の外周面に摺接するように構成されている。
このような構成によって、加圧ローラ68の表面が、ブラシ状ローラ191によってクリーニングされることになる。詳しくは、転写定着ベルト27上には地肌汚れトナーが付着しているために、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部を通過する記録媒体Pの幅方向サイズが小さいときに、そのサイズの領域外に付着した転写定着ベルト27上の地肌汚れトナーが加圧ローラ68に付着してしまう可能性がある。このように、加圧ローラ68の表面がトナーで汚れてしまっても、加圧ローラ68の表面に摺接するブラシ状ローラ191によって、加圧ローラ68がクリーニングされるために、ニップ部の位置で記録媒体Pの裏面が汚れる不具合が抑止される。また、このように加圧ローラ68のクリーニング手段をブラシ状ローラ191が兼ねることで、加圧ローラ68のクリーニング手段をブラシ状ローラ191とは別に設ける場合に比べて、転写定着装置66が低コスト化・小型化されることになる。
【0111】
また、本実施の形態8における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に摺接してブラシ状ローラ191をクリーニングするクリーニング部材200が設けられている。詳しくは、クリーニング部材200は、ブラシ状ローラ191と加圧ローラ68との摺接位置に対してブラシ状ローラ191の回転方向下流側の位置で、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に食い込むように配設されたフリッカーバー(棒状部材)である。
このように、クリーニング部材200を設けることによって、ブラシ状ローラ191に付着した紙粉(伝熱板67bとの当接位置で記録媒体Pから離脱した紙粉である。)や、加圧ローラ68から除去してブラシ状ローラ191に付着したトナー(上述した地肌汚れトナーである。)等が、ブラシ状ローラ191から除去されることになる。そして、ブラシ状ローラ191から除去された紙粉やトナーは、重力方向に落下して、受け皿201上に回収される。
なお、本実施の形態8では、クリーニング部材200をフリッカーバーとしたが、クリーニング部材として板状のブレードやスクレーパを用いることもできる。
【0112】
以上説明したように、本実施の形態8によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0113】
実施の形態9.
図15にて、この発明の実施の形態9について詳細に説明する。
図15は、実施の形態9における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。本実施の形態9における転写定着装置は、2つのブラシ状部材が設置されている点が、前記実施の形態7のものと相違する。
【0114】
図15(A)を参照して、本実施の形態9における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラが設置されている。
【0115】
ここで、本実施の形態9における転写定着装置66には、前記実施の形態7のものとは異なり、複数のブラシ状ローラ191A、191B(付勢部材)が設置されている。
詳しくは、図15(A)に示すように、搬送方向上流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向上流側である。)には外径の大きな第1ブラシ状ローラ191Aを設置して、搬送方向下流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向下流側である。)であってニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)に近い位置には外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bを設置している。2つのブラシ状ローラ191A、191Bはいずれも伝熱板67bに当接するとともに図15(A)の時計方向に回転して、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する。
このような構成により、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍にて、外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bによって記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢することができるために、ニップ部の近傍まで記録媒体Pの表面が充分に加熱されることになる。
【0116】
なお、図15(A)に示す転写定着装置66では、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍に、外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bを設置した。これに対して、図15(B)に示すように、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍に、板状のブラシ状部材91を設置することもできる。詳しくは、図15(B)に示す転写定着装置66は、搬送方向上流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向上流側である。)にブラシ状ローラ191を設置して、搬送方向下流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向下流側である。)であってニップ部に近い位置には板状のブラシ状部材91を設置している。このような構成をとった場合であっても、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍にて、板状のブラシ状部材91によって記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢することができるために、ニップ部の近傍まで記録媒体Pの表面が充分に加熱されることになる。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態9によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する複数のブラシ状ローラ191A、191B(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0118】
実施の形態10.
図16及び図17にて、この発明の実施の形態10について詳細に説明する。
図16は、実施の形態10における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。また、図17は、ブラシ状ローラ191を幅方向にみた断面図である。
本実施の形態10における転写定着装置は、ブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cが覆設されている点が、前記実施の形態7のものと相違する。
【0119】
図16を参照して、本実施の形態10における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。
【0120】
ここで、本実施の形態10におけるブラシ状ローラ191は、前記実施の形態7のものとは異なり、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cが覆設されている。詳しくは、図17に示すように、ブラシ状ローラ191は、芯金191a上にブラシ毛191b(ブラシ布)が巻装され、さらにブラシ毛191bを覆うように可撓性を有する円筒状部材191cが設けられている。この円筒状部材191cは、フッ素化合物等の低摩擦材料で形成された耐熱性を有する薄いチューブ状部材であって、芯金191aとブラシ毛191bとともに一体的に図16の時計方向に回転駆動される。このように構成されたブラシ状ローラ191は、円筒状部材191c及びブラシ毛191bが変形した状態で伝熱板67bに圧接してニップを形成することになる。
【0121】
ここで、本実施の形態10においても、伝熱板67bとブラシ状部材191(円筒状部材191c)との当接位置から、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部までの、距離がなるべく短くなるように形成されている。
また、伝熱板67bとブラシ状部材191(円筒状部材191c)との当接位置において、記録媒体Pに対する加熱時間を充分に確保するために、円筒状部材191c及びブラシ毛191bが僅かな当接力(3〜5kgf程度である。)で充分に変形するように構成されている。
また、図17に示すように、ブラシ状ローラ191の両端部には、ブラシ状ローラ191からの円筒状部材191cの脱落や軸方向のズレを防止するためのフランジ191dが圧入されている。
【0122】
このようにブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cを覆設することで、コート紙等のように厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときであっても、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置にて、記録媒体Pの表面の平滑性を損なうことなく記録媒体Pを良好に加熱することができる。
詳しくは、前記実施の形態7のように、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pに、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が摺接すると、コート紙等のように厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときに、記録媒体Pの表面に凹凸を形成してしまい記録媒体Pの平滑性を損なってしまう可能性があった。これに対して、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cを覆設しているために、ブラシ状ローラ191のブラシ毛191bが記録媒体Pに直接的に点接触又は線接触することがなく、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cが記録媒体Pにほぼ均一に面接触することになる。したがって、記録媒体Pの表面の平滑性を損なうことなく記録媒体Pを良好に加熱することができる。
【0123】
また、前記実施の形態7のように、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pに、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が直接的に摺接する構成の場合には、長時間の使用によって、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が抜け落ちたり切れたりする可能性があった。そして、脱落したブラシ毛が記録媒体Pや装置本体1の部品等に付着してしまうと、出力画像上に異常画像が発生したり装置本体1が故障したりしてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の外周面に円筒部材191cを覆設しているために、ブラシ状ローラ191のブラシ毛191bが抜け落ちたり切れたりする不具合が軽減される。
【0124】
また、本実施の形態10におけるブラシ状ローラ191は、円筒状部材191cの内周面側にブラシ毛191bによる空隙が形成されているために、ブラシ毛191bを耐熱アラミド繊維等で構成することにより、ブラシ状ローラ191の表面の熱伝導率を極めて小さくすることができる。このような場合には、伝熱板67bからブラシ状ローラ191への不必要な熱の移動を低減できるために、加熱装置67のエネルギ効率を向上させることができる。
【0125】
なお、本実施の形態10では、薄膜で変形自在の円筒状部材191cを柔軟なブラシ毛191bの外周に設けているために、ブラシ状ローラ191の表面の柔軟性が確保されている。したがって、ブラシ状ローラ191は、伝熱板67bに対して比較的低い加圧力で当接しても容易に変形することになり、双方の部材67b、191の間に良好なニップ幅(8〜12mm程度である。)のニップが形成される。なお、このニップでの加熱は、トナー像の加熱を含まない記録媒体Pのみの加熱であるため、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧力は50〜200g/cm2程度で充分である。なお、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧力を上述の上限値よりも大きく設定してしまうと、厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときに、カールやシワが生じてしまう可能性がある。
また、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の表面の柔軟性が確保されているために、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置の下流側にブラシ状ローラ191による曲率の小さな分離部が形成されて、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置から記録媒体Pが送出される際の分離性を高めることができる。
【0126】
ここで、本実施の形態10における転写定着装置67も、前記実施の形態7のものと同様に、非通紙時(伝熱板67bとブラシ状ローラ191との間を記録媒体Pが通過しないときである。)には、伝熱板67bに対してブラシ状ローラ191を離間させる制御をおこなっている(図16の破線で示す位置へのブラシ状ローラ191の移動である。)。
これにより、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接することになるため、伝熱板67bからブラシ状ローラ191に熱が伝わってブラシ状ローラ191が熱劣化する不具合が低減される。また、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接して変形することになるため、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cやブラシ毛191bが長時間の変形によって復元しなくなる不具合を軽減することができる。
【0127】
また、本実施の形態10における転写定着装置67は、不図示の可動機構によって、加熱装置67を上方(図16の破線で示す位置であって、記録媒体Pの搬送経路から離れる位置である。)に自動で移動させることができるように構成されている。そして、レジストローラ64とニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)との間の搬送経路中での記録媒体Pのジャムが発生した場合には、その状態をジャム検知センサで検知して、ブラシ状ローラ191を下方に離間させるとともに加熱装置67を上方に移動させるように制御する。その後、ユーザーは、その位置でジャムした記録媒体Pを取り出すジャム処理をおこなうことになる。
これにより、ユーザーのジャム処理作業が容易になるとともに、ジャムによって搬送停止した記録媒体Pを加熱装置67で加熱し続ける不具合もなくなる。
【0128】
また、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cを低摩擦材料で形成しているために、伝熱板67bとの摺動によるブラシ状ローラ191の耐久性を高めることができる。その反面、伝熱板67bとの当接位置における記録媒体Pのグリップ力が低下するために記録媒体Pの搬送性は低下してしまう。本実施の形態10では、このような記録媒体Pの搬送性の低下を抑止するために、レジストローラ64とニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)との間の搬送経路の長さが、この装置1で使用可能な最小サイズの記録媒体Pの搬送方向長さよりも短くなるように設定している。すなわち、記録媒体Pの搬送性は、ブラシ状ローラ191の表面性にほとんど影響されることなく、レジストローラ64による搬送力と、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とによる搬送力と、によって決定されることになる。
【0129】
以上説明したように、本実施の形態10によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0130】
実施の形態11.
図18にて、この発明の実施の形態11について詳細に説明する。
図18は、実施の形態11における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態10における図16に相当する図である。本実施の形態11における転写定着装置は、ブラシ状ローラ191に覆設された円筒部材191cを直接的に加熱する点が、前記実施の形態10のものと相違する。
【0131】
図18を参照して、本実施の形態11における転写定着装置66も、前記実施の形態10のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。さらに、ブラシ状ローラ191は、前記実施の形態10のものと同様に、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cがブラシ毛191bを覆うように設けられている。
【0132】
ここで、本実施の形態11における転写定着装置66は、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cを加熱する加熱手段211、212が設けられている。詳しくは、加熱手段は、ブラシ状ローラ191の外周面に対向する位置に配設されたヒータ211と、ヒータ211から射出された光をブラシ状ローラ191の外周面に向けて反射する反射板212と、で構成されている。そして、ブラシ状ローラ191の外周面(円筒状部材191c)は、ヒータ211の輻射熱によって加熱されて、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に搬送される記録媒体Pの裏面側を加熱する。
なお、本実施の形態11では、円筒状部材191cの加熱効率を高めるために、円筒状部材191cとして熱伝導が良くて耐熱性を有する金属ベルトが用いられている。具体的に、円筒状部材191cは、厚さが0.1mm程度のステンレスからなる金属ベルトである。
また、加熱手段121、122は、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に対して、ブラシ状ローラ191の回転方向上流側に配設されている。
【0133】
このような構成により、前記実施の形態10で述べた効果に加えて、記録媒体Pを裏面(転写定着面をおもて面としたときの裏面である。)の側から加熱することにより、厚紙通紙時や低温環境時の記録媒体Pの加熱効率の低下を低減する効果を得ることができる。
【0134】
以上説明したように、本実施の形態11によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0135】
実施の形態12.
図19にて、この発明の実施の形態12について詳細に説明する。
図19は、実施の形態12における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態10における図16に相当する図である。本実施の形態12における転写定着装置は、伝熱板として弾性ローラ217の外周面に覆設された金属層217aが用いられている点が、前記実施の形態10のものと相違する。
【0136】
図19を参照して、本実施の形態12における転写定着装置66も、前記実施の形態10のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで記録媒体Pを案内する案内板としても機能する伝熱板が設置されている。
ここで、本実施の形態12における伝熱板は、記録媒体Pとの接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向(図19の反時計方向である。)に回転する弾性ローラ217の外周面に覆設された金属層217aである。また、伝熱板217b(弾性ローラ217)に対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。さらに、ブラシ状ローラ191は、前記実施の形態10のものと同様に、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cがブラシ毛191bを覆うように設けられている。
【0137】
弾性ローラ217は、前記実施の形態11におけるブラシ状ローラ191と同様に構成されている。すなわち、弾性ローラ217(ブラシ状ローラ)は、芯金上にブラシ毛(ブラシ布)が巻装され、さらにブラシ毛を覆うように可撓性を有する円筒状部材217a(金属層)が設けられている。ここで、弾性ローラ217(ブラシ状ローラ)の外周面に覆設された円筒状部材217a(金属層)は、厚さが0.1mm程度のステンレスからなる金属ベルトである。
また、本実施の形態12では、弾性ローラ217(伝熱板としての金属層217a)を加熱する加熱体として、励磁コイル218が用いられている。そして、不図示の電源部から励磁コイル218に高周波交流電圧が印加されることで、伝熱板としての金属層217aが電磁誘導加熱されることになる。このように、伝熱板217a(金属層)の加熱に電磁誘導加熱を用いることで、伝熱板217a(金属層)の加熱効率が向上する。
【0138】
このような構成により、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pは、双方のローラ191、217の回転によってその当接位置から送出されて、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部に向けてスムーズに搬送(案内)されることになる。弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とは当接位置にて等速で接触するために、双方のローラ191、217の摩擦による磨耗は少なくなる。
また、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とは、どちらも、表面の柔軟性が確保されており、その表面硬度は同程度であるために、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とのニップがフラットな形状になる。したがって、厚さの薄い記録媒体Pを通紙する場合であっても、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とのニップを通過した記録媒体Pが熱によってカールする不具合が抑止される。
【0139】
以上説明したように、本実施の形態12によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板217b(金属層)を設けるとともに、伝熱板217b(弾性ローラ217)に案内される記録媒体Pを伝熱板217bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0140】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
27 転写定着ベルト(転写定着部材)、
28A〜28C ローラ部材、
66 転写定着装置、
67 加熱装置、
67a 加熱体、
67b、67b1、67b2 伝熱板、
67c 電極、
67d 絶縁材、
68 加圧ローラ(加圧部材)、
91 ブラシ状部材(付勢部材)、
91a ブラシ毛、
91b 板状部材、
92 カム、
95 吸引ファン(付勢部材、吸引機構)、
96 ダクト(吸引機構)、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】特開2005−37879号公報
【特許文献2】特開2002−99159号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体上にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、転写工程と定着工程とを同時におこなう転写定着装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
このような転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、表面性の粗い記録媒体を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点がある。
【0003】
詳しくは、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置では、表面性の粗い記録媒体を使用すると、中間転写ベルト等の中間転写体が記録媒体の表面性に追従できずに中間転写体と記録媒体との間に微小ギャップが形成されてしまう。そのため、その微小ギャップが形成された部分で異常放電が発生して、中間転写体上に担持された画像が記録媒体上に正常に転写されずに、画像が全体としてボソボソになってしまう。
これに対して、転写定着装置を備えた画像形成装置では、トナー像に対して転写と同時に熱を加えるため、トナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になる。そのため、表面性の粗い記録媒体を使用して定着部材と記録媒体との間に微小ギャップが形成されても、その部分に画像が塊として転写されてしまう。したがって、画像は、ボソボソにならずに、良好で高画質なものになる。
【0004】
さらに、転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写・定着工程がおこなわれるニップ部(転写定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されないために、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、記録媒体の搬送経路に対する制約が少なくなる。すなわち、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置は、定着工程がおこなわれるニップ部(定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されるために、転写部から定着部に至る搬送経路には未定着トナー像に接触しないための制約が課せられる。したがって、転写定着装置を備えた画像形成装置は、記録媒体の搬送経路に対する設計上の自由度が高く、記録媒体の搬送性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の転写定着装置は、トナー像を担持する転写定着部材を加熱してトナー像を加熱・溶融しているために、長寿命化のために転写定着部材が厚くなったり、大型のタンデム型の画像形成装置に設置するために転写定着部材の周長が長くなったりした場合に、転写定着部材の熱効率が低下してしまっていた。そのため、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
さらに、従来の転写定着装置は、上述した転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多かった。このような加熱・冷却のサイクルが繰り返されるために、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
【0006】
本願発明者は、このような問題を解決するために研究を重ねた結果、転写定着部材の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体を効率的に加熱することで補足する方策を知得した。このような方策を具現化するためには、ニップ部に対して記録媒体の搬送方向上流側であってニップ部の近傍に、記録媒体の転写定着面に接触して熱を伝える伝熱部材を設けることが考えられる。しかし、その場合に、伝熱部材とニップ部との距離がある程度近くないと、伝熱部材によって加熱された記録媒体の表面(転写定着面)の熱が記録媒体の内部に拡散されてしまい、トナー像の定着性が不充分になる不具合が生じてしまうことも知得した。このような不具合は、記録媒体として厚紙を用いた場合に特に顕著になる。また、伝熱部材と記録媒体との密着力と密着時間とがある程度確保されていないと、ニップ部に搬送される直前に加熱される記録媒体の表面に温度ムラが発生してしまう。このような場合には、転写・定着工程後の出力画像に定着不良や光沢ムラが生じてしまうことになる。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じずに定着性が良好な、転写定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1記載の発明にかかる転写定着装置は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、トナー像を担持する転写定着部材と、前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、加熱体によって加熱されるとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内しながら当該記録媒体の前記転写定着面を加熱する伝熱板と、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する付勢部材と、を備えたものである。
【0009】
また、請求項2記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記付勢部材を、前記伝熱板に案内される記録媒体に接触するブラシ状部材としたものである。
【0010】
また、請求項3記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2に記載の発明において、前記ブラシ状部材は、ブラシ毛が前記ニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材を前記加圧部材の側に具備したものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ブラシ状部材は、中空構造のブラシ毛を有するとともに、前記伝熱板に案内される記録媒体に当該ブラシ毛を介して空気を吹き付けるように構成されたものである。
【0012】
また、請求項5記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状部材を、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する単数又は複数のブラシ状ローラとしたものである。
【0013】
また、請求項6記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5に記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、記録媒体との接触位置における線速度が記録媒体の搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されるものである。
【0014】
また、請求項7記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5又は請求項6に記載の発明において、記録媒体の搬送方向に対して前記ブラシ状ローラの上流側に、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に当接するとともに記録媒体を案内するガイド部材を設けたものである。
【0015】
また、請求項8記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に摺接して当該ブラシ状ローラをクリーニングするクリーニング部材を設けたものである。
【0016】
また、請求項9記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、前記加圧部材に摺接するように配設されたものである。
【0017】
また、請求項10記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項5〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記ブラシ状ローラは、その外周面に可撓性を有する円筒状部材が覆設されたものである。
【0018】
また、請求項11記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項10に記載の発明において、前記円筒状部材は、低摩擦材料で形成されたものである。
【0019】
また、請求項12記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項10又は請求項11に記載の発明において、前記円筒状部材を加熱する加熱手段をさらに備えたものである。
【0020】
また、請求項13記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記付勢部材を、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板の側から空気とともに吸引する吸引機構としたものである。
【0021】
また、請求項14記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項13のいずれかに記載の発明において、前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の搬送方向先端部及び搬送方向後端部のみを当該伝熱板に向けて付勢するように制御されるものである。
【0022】
また、請求項15記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項14のいずれかに記載の発明において、前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の厚さ又は種類に応じて当該記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する条件が可変制御されるものである。
【0023】
また、請求項16記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項15のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凸状に形成された曲面からなる案内面を具備し、前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも小さくなるように構成されたものである。
【0024】
また、請求項17記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項16のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凹状に形成された曲面からなる案内面を具備し、前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも大きくなるように構成されたものである。
【0025】
また、請求項18記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項17のいずれかに記載の発明において、前記伝熱板を、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する弾性ローラの外周面に覆設された金属層としたものである。
【0026】
また、この発明の請求項15記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項14のいずれかに記載の転写定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、転写定着部材と加圧部材とのニップ部に搬送される記録媒体を案内しながら記録媒体の転写定着面を加熱する伝熱板を設けるとともに、伝熱板に案内される記録媒体を伝熱板に向けて付勢する付勢部材を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じずに定着性が良好な、転写定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図3】転写定着装置に設置される加熱装置を幅方向にみた図である。
【図4】別の加熱装置の一部を幅方向にみた図である。
【図5】別の転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図6】別の加熱装置の一部を示す拡大図である。
【図7】この発明の実施の形態2における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図9】この発明の実施の形態4における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図11】この発明の実施の形態6における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【図12】この発明の実施の形態7における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図13】ブラシ状ローラの加圧機構を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態8における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態9における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態10における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図17】ブラシ状ローラを幅方向にみた断面図である。
【図18】この発明の実施の形態11における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【図19】この発明の実施の形態12における転写定着装置の一部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0030】
実施の形態1.
図1〜図3にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、20Y、20M、20C、20BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ、21は各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにそれぞれ収容された感光体ドラム(像担持体)、22は感光体ドラム21上を帯電する帯電部、23Y、23M、23C、23BKは感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する現像装置、24は感光体ドラム21上に形成されたトナー像を転写定着ベルト27に転写する転写バイアスローラ、25は感光体ドラム21上の未転写トナーを回収するクリーニング装置、を示す。
【0031】
また、27は複数色のトナー像が重ねて転写される転写定着部材としての転写定着ベルト、29は転写・定着工程後の転写定着ベルト27を清掃するクリーニング装置(ベルトクリーニング装置)、32Y、32M、32C、32BKは各現像装置23Y、23M、23C、23BKに各色のトナーを補給するトナー補給部、51は原稿Dを原稿読込部55に搬送する原稿搬送部、55は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、61は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、66は記録媒体P上にトナー像を転写・定着する転写定着装置、67は転写・定着工程直前の記録媒体Pを加熱する加熱装置、68は転写定着ベルト27に圧接してニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラ、85は転写定着ベルト27の幅方向温度分布を均一化する均しローラ、91は記録媒体をPを加熱装置67に向けて付勢する付勢部材としてのブラシ状部材、を示す。
【0032】
ここで、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱手段としての加熱装置67、加圧部材としての加圧ローラ68、均しローラ85、付勢部材としてのブラシ状部材91、等で構成される。
また、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電部22、クリーニング装置25が、一体化されたものである。そして、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにおける感光体ドラム21上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成がおこなわれる。
【0033】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部51の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部55のコンタクトガラス53上に載置される。そして、原稿読込部55で、コンタクトガラス53上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0034】
詳しくは、原稿読込部55は、コンタクトガラス53上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0035】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKの感光体ドラム21上に向けて発せられる。
【0036】
一方、4つの感光体ドラム21は、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム21の表面は、帯電部22との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム21上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラー3に入射して反射した後に、レンズ4、5を透過する。レンズ4、5を透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0037】
イエロー成分に対応したレーザ光は、ミラー6〜8で反射された後に、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー3により、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0038】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、ミラー9〜11で反射された後に、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、ミラー12〜14で反射された後に、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム21表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、ミラー15で反射された後に、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0039】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21表面は、それぞれ、現像装置23Y、23M、23C、23BKとの対向位置に達する。そして、各現像装置23Y、23M、23C、23BKから感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、複数のローラ部材28A〜28C、85に張架・支持された転写定着ベルト27との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、転写定着ベルト27の内周面に当接するように転写バイアスローラ24が設置されている。そして、転写バイアスローラ24の位置で、転写定着ベルト27上に、感光体ドラム21上に形成された各色の画像(トナー像)が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0040】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、クリーニング装置25との対向位置に達する。そして、クリーニング装置25で、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0041】
他方、感光体ドラム21上の各色のトナー像が重ねて転写・担持された転写定着ベルト27(転写定着部材)表面は、図中の矢印方向に走行して、加圧ローラ68(加圧部材)との当接位置(ニップ部である。)に達する。ここで、本実施の形態1における転写定着装置66は、従来のものとは異なり、転写定着ベルト27自体を直接的に加熱する装置が設置されていない(または、設置されているとしても加熱量の少ない装置である。)。
転写定着ベルト27に担持されたトナー像は、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部にて、記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に転写されるとともに定着される(転写・定着工程である。)。詳しくは、記録媒体Pの転写定着面がニップ部の直前で加熱装置67によって加熱されて、ニップ部にて転写定着面の熱によってトナー像が加熱・溶融されるとともに、ニップ部の圧力によってトナー像が転写定着面に定着される。なお、転写定着装置66の構成・動作については、後で図2及び図3を用いてさらに詳しく説明する。
その後、転写定着ベルト27表面は、ベルトクリーニング部29の位置に達する。そして、転写定着ベルト27上の残トナー等の付着物がベルトクリーニング装置29に回収されて、転写定着ベルト27上の一連の転写定着プロセスが完了する。
【0042】
ここで、転写定着装置66のニップ部に搬送される記録媒体Pは、給紙部61から搬送ガイド63、レジストローラ64、加熱装置67等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部61から、給紙ローラ62により給送された転写紙Pが、搬送ガイド63を通過した後に、レジストローラ64に導かれる。レジストローラ64に達した記録媒体Pは、転写定着ベルト27上のトナー像とタイミングを合わせて、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部に向けて搬送される。このとき、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pは伝加熱装置67の伝熱板67b(図2を参照できる。)に案内されるとともに、ブラシ状部材91によって伝熱板67bに向けて付勢されながら、記録媒体Pの転写定着面のみが加熱装置67(伝熱板67b)によって加熱される。
その後、フルカラー画像が転写・定着された記録媒体Pは、排紙搬送経路を通過して、排紙ローラ80によって装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。なお、本実施の形態1における画像形成装置は、記録媒体Pの搬送速度(又は、プロセス線速)が、300mm/秒程度に設定されている。
【0043】
なお、本実施の形態1において用いられるトナーは、低温定着に適したものであることが好ましい。具体的に、トナーの軟化点(1/2流出温度)は100℃程度であることが好ましい。
トナー結着樹脂としては、以下の組成のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体が挙げられる。
また、以下の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。この中で特に、ポリエステル樹脂を含有しているものは充分な定着性を得るために、好ましい。特に結晶性ポリエステル樹脂は、紙接触時に充分に軟化溶融し、定着強度とともに色再現性の高い画像形成が可能となる。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0044】
また、本実施の形態1に用いるトナーには、転写定着工程時の転写定着ベルト27表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることができる。離型剤として、公知のものをすべて使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックス、エステルワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不充分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不充分となる。ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。また、15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じる。
また、外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、シリカ、酸化チタン、アルミナ等、さらに必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加しても良い。
特に、転写定着装置66は、トナーを充分に加熱することが可能であるため、サブミクロンの大粒径シリカ等の添加剤を比較的多量に用いても定着性や定着温度に影響を与えないため、流動性・転写性を考慮した外添処方が可能である。
【0045】
次に、図2及び図3にて、本実施の形態1において特徴的な転写定着装置66について詳述する。
図2は、転写定着装置66の一部を示す拡大図である。図3は、加熱装置67を図2のX方向から幅方向にみた図である。
図2に示すように、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱装置67(加熱手段)、加圧部材としての加圧ローラ68、付勢部材としてのブラシ状部材91、等で構成される。
【0046】
ここで、転写定着部材としての転写定着ベルト27は、ベース層上に、弾性層、離型層が順次形成された多層構造のエンドレスベルトである。ベース層は、層厚が80μmのポリイミド樹脂で形成されている。弾性層は、記録媒体P表面の凹凸に追従するためのものであって、層厚が160μmのシリコーンゴムで形成されている。離型層は、ベルト表面のトナーや紙粉に対する離型性を確保するためのものであって、層厚が7μmのフッ素樹脂で形成されている。
【0047】
また、加圧ローラ68は、アルミニウム等からなる円筒状の芯金上に表面層(離型層)が形成されたものであって、図2の時計方向に回転する。加圧ローラ68は、不図示の加圧機構によって、転写定着ベルト27を介してローラ部材28Aに圧接する。こうして、加圧ローラ68と転写定着ベルト27との間に、所望のニップ部が形成される。
加圧ローラ68の表面層としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、等を用いることができる。
【0048】
加熱装置67は、転写定着装置66におけるニップ部の入口側の近傍に配設されている。加熱装置67は、加熱体67a、伝熱板67b、電極67c、等で構成される。
加熱体67aは、伝熱板67bと電極67cとに挟持されている。本実施の形態1では、加熱体67aとして、所定のキューリー点に達すると抵抗が急激に上昇する抵抗発熱体を用いている。具体的に、加熱体67aとして、チタン酸バリウム系半導体磁器素体からなる正特性サーミスタを用いている。また、本実施の形態1では、図3に示すように、加熱体67a(正特性サーミスタ)を幅方向に10個並設している。
伝熱板67b(伝熱部材)は、板厚が0.2mmのステンレス鋼板である。伝熱板67bは、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍にかけて延設されていて、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pを案内する案内板(ガイド板)として機能する。また、伝熱板67bは、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に接触して、加熱体67aで発生した熱を記録媒体P(転写定着面)に伝熱する機能を有する。さらに、伝熱板67bには交流電源71が接続されていて、一方の電極としても機能することになる。
【0049】
加熱体67aを挟持する電極67c及び伝熱板67bには、交流電源71が接続されていて、スイッチ72が接続されることにより加熱体67aの両端にAC100ボルトの電圧が印加される。これにより、加熱体67a内に電流が流れて加熱体67aが発熱することになる。さらには、加熱体67aの熱が伝熱板67bから記録媒体Pの転写定着面に伝えられる。
なお、本実施の形態1では、伝熱板67bの材料として、熱伝導率が高く、同体積における熱容量が低く、比較的安価な銅を用いているために、加熱効率が高く比較的安価な加熱装置67を提供することができる。
【0050】
ここで、加熱体67aは、記録媒体Pの発火点よりも低いキューリー点を有するものを用いることが好ましい。これにより、加熱体67aは、その自己温度制御機能によって、記録媒体Pの発火点以上に昇温する不具合が抑止される。
具体的に、本実施の形態1では、加熱体67aのキューリー点を200℃に設定している。これにより、加熱体67aの温度が200℃を超えたときに、電極67cと伝熱板67bとの間の抵抗が急激に上昇して、加熱体67a内に流れる電流が低下する。詳しくは、加熱体67aの温度が210℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/2に低下して、加熱体67aの温度が220℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/4に低下する。
このように構成された加熱体67aは、1200ワットの電力で6秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。加熱体67aを210℃以下で制御する場合には、図示しない温度センサを用いてPID制御等によって所望の温度に制御する。制御回路が故障しても、上述のように210℃以上にはなり得ないので安全性が確保される。また、本実施の形態1では、幅方向に複数の加熱体67aを並設しているために、複数の加熱体67aによってそれぞれの自己温度制御がおこなわれて、幅方向の温度ムラを10℃以下にすることができる。
【0051】
このように構成された加熱装置67は、上述したように、転写・定着工程直前の記録媒体Pの転写定着面(おもて面)のみを加熱するものである。換言すると、加熱装置67は、記録媒体Pの裏面(転写定着面に対する裏面である。)が昇温する前に(おもて面から裏面に熱が伝達される前に)記録媒体Pがニップ部に搬送されるように転写定着面を加熱する。
【0052】
本願発明者は、160℃に加熱された銅板(厚さ1mm)に記録媒体P(厚紙300g紙)を60msec接触させてその後に雰囲気温度40℃の空中に搬送(空走)したときの、記録媒体Pの転写定着面の温度変動をシミレーションした。その結果、銅板によって約140℃まで加熱された記録媒体Pが、雰囲気温度40℃の空中に10msec(搬送速度300mm/秒の場合、3mmの搬送距離に相当する。)搬送されるだけで110℃まで温度が低下するのがわかった。したがって、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を上げるためには、記録媒体を加熱する伝熱部材(伝熱板)をできる限りニップ部に近接させることが必要になる。
本実施の形態1では、伝熱板67bを板状に形成して、その先端をできる限りニップ部に近づけるとともに、その搬送方向の長さをできる限り長く設定しているために、転写定着工程前の記録媒体Pの加熱効率を向上させることができる。
【0053】
本願発明者は、ブラシ状部材91を設置せずに、伝熱板67bの加熱温度を140〜200℃に設定して、伝熱板67bから送出された後の記録媒体P(リコー社製「コピー用紙6200」)の転写定着面の温度変動を確認した。その結果、伝熱板67bから送出されてから0〜60msecでは記録媒体Pの転写定着面の温度低下が15℃以下であることがわかった。
【0054】
ここで、本実施の形態1における伝熱板67bは、記録媒体Pを案内する案内面(記録媒体Pに接触する面である。)に、フッ素樹脂粒子を含有するニッケルメッキが覆設されている。具体的には、ニッケルメッキの皮膜中に30vol%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を分散させている。このようなコーティングは、析出状態の硬度がHv300程度であって通常の樹脂コーティングに比べて硬く、すべり性、耐摩耗性、離型性にも優れている。したがって、伝熱板67bにトナーや紙粉が付着する不具合を軽減できるとともに、伝熱板67bの耐久性を向上させることができる。
なお、伝熱板67bの案内面(記録媒体Pに接触する面である。)を、耐摩耗性が高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)やグラファイトライクカーボン(GLC)で覆設することもできる。
【0055】
本実施の形態1における加熱装置67は、記録媒体Pの転写定着面の温度が転写定着ベルト27の表面温度よりも高くなるように、転写定着面を加熱している。すなわち、転写定着ベルト27に担持されたトナー像Tは、ニップ部にて、記録媒体Pから受ける熱により加熱・溶融されることになる。
本実施の形態1では、記録媒体Pの転写定着面を加熱していて、出力画像上にて充分な光沢を得るための温度を独立して設定できるので、転写定着ベルト27の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録媒体Pは転写・定着工程の直前に加熱されるので、過剰に加熱されずに、トナーTと記録媒体Pとの密着性も必要以上に高められることはない。
すなわち、本実施の形態1の構成によれば、低温定着が可能であって、装置のウォームアップ時間を短縮できて、省エネルギ化を向上させることができる。また、転写定着ベルト27への熱移動を抑制できるので、転写定着ベルト27の耐久性を向上させることができる。さらに、転写定着ベルト27の加熱温度が低減されるために、転写定着ベルト27の熱劣化を抑制できる。
【0056】
また、本実施の形態1における転写定着装置66は、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを、ブラシ状部材91(付勢部材)によって伝熱板67bに押し付ける(付勢する)ように構成されている。このように構成することにより、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着力と密着時間が向上するために、伝熱板67bによって記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
【0057】
ここで、ブラシ状部材91は、耐熱性を有するポリイミド繊維(直径0.2mm)からなり密度50本/cm2にて植毛されたブラシ毛91aが、伝熱板67bに案内される記録媒体Pに複数個所で点接触又は線接触するように構成されたものである。記録媒体Pとの接触面積を極力小さくして記録媒体Pを伝熱板67bに押圧することで、ブラシ状部材91の側に熱が移動して記録媒体Pの加熱効率が低下する不具合を抑止することができるとともに、記録媒体Pの搬送性が低下する不具合を抑止することができる。
【0058】
なお、ブラシ状部材91のブラシ毛91aは、直毛状のもの以外に、ループ状のもの、先太状のもの、中空構造のもの、等を用いることができる。特に、中空構造のブラシ毛91a(外径0.24mm程度)を用いた場合に、ブラシ状部材91の下面側にファンを設置して、伝熱板67bに案内される記録媒体Pにブラシ毛67b(中空部)を介して空気を吹き付けることで、記録媒体Pを空気の力でも伝熱板67bに付勢することができるとともに、ブラシ毛67bの毛倒れを防止することができる。
【0059】
また、ブラシ状部材91のブラシ毛91aを磁性を有する材料(例えば、SUS304)で形成して、伝熱板67bの側にマグネットを設置することで、ブラシ毛91aがマグネットによる磁力に引き付けられるために、ブラシ毛91aの毛倒れを防止することができる。すなわち、ブラシ毛91bが記録媒体Pとの接触を繰り返すことにより毛倒れを起こして、記録媒体Pを伝熱板67bに付勢する力が弱まり記録媒体Pの加熱不良が生じるのを抑止することができる。
【0060】
このように、本実施の形態1における転写定着装置66は、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体Pを効率的に加熱することで補足するものである。しかし、その場合に、加熱された記録媒体Pから転写定着ベルト27が多量かつ不均一な分布の熱を受けて、転写定着ベルト27の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向である。)に温度ムラが生じて、定着ムラやオフセット等の定着不良画像が発生しやすくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、図2に示すように、ニップ部を通過した後の転写定着ベルト27の表面の幅方向の温度分布を均一化する均しローラ85を設置している。
均しローラ85は、ニップ部に対して転写定着ベルト27の走行方向下流側に配設されたローラ部材であって、3つのローラ部材28A〜28Cとともに転写定着ベルト27を張架・支持する。均しローラ85は、ヒートパイプであって、その内部で熱を効率的に対流させることで、転写定着ベルト27表面の幅方向の温度分布を均一化する。これにより、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えてニップ部に搬送される直前の記録媒体Pを加熱装置67によって加熱する場合であっても、定着ムラやオフセット等の定着不良が発生するのを抑止することができる。
【0061】
なお、加熱装置67は、本実施の形態1のものに限定されることなく、例えば、図4に示すように構成することもできる。図4は、加熱装置67の一部を幅方向にみた図である。図4に示す加熱装置67は、複数の加熱体67aを、2つに分割した電極67cと、伝熱板67bと、で挟んだものである。そして、2つに分割した電極67cにそれぞれ交流電源71を接続して双方の間に交流電圧を印加する。これにより、一方の電極67cから加熱体67a、伝熱板67b、加熱体67aを介して、他方の電極67cに電流が流れて(矢印方向の電流の流れである。)、加熱体67aが加熱されることになる。このような構成をとった場合、加熱体67aにかかる電圧が小さくなり加熱体67aの熱容量を小さくすることができる。これにより、PTC特性を有効に活用して、加熱装置67の制御応答性を高めることができる。
【0062】
また、図5に示すように加熱装置67を構成することもできる。図5に示すように、加熱装置67の伝熱板は、第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2とに分割されている。第1の伝熱板67b1は、加熱体67aの上面から側面に屈曲して、さらに加熱体67aの下面に達する位置から屈曲して記録媒体Pの案内面となるようにニップ部近傍まで延設されている。第2の伝熱板67b2は、加熱体67aの下面からレジストローラ64の近傍まで延設されている。第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2との間には、絶縁材67dが設置されている。そして、第1の伝熱板67b1と第2の伝熱板67b2とに交流電源71が接続されている。このように構成された加熱装置67を用いた場合であっても、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、図5に示すように、ブラシ状部材91に、ブラシ毛91aがニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材91b(規制部材)を、加圧ローラ68の側の端部に設置することもできる。具体的に、板状部材91bは、板厚が0.3mmのステンレス板であって、加圧ローラ68の曲率に合わせて湾曲されている。板状部材91bと加圧ローラ68との隙間は、1mm程度に設定することができる。
このような構成により、ブラシ状部材91のブラシ毛91aが毛倒れして加圧ローラ68に巻き込まれる不具合が防止される。
【0064】
また、本実施の形態1では、伝熱板67bを銅で形成したが、図6に示すように、高熱伝導性材料からなる複数の箔67b11〜67b13を積層して伝熱板67bを形成することもできる。その際、複数の箔67b11〜67b13は、記録媒体Pに静電気力等によって吸着しやすい材料を選択することが好ましい。
このような構成により、図6に示すように、記録媒体Pの表面に凹凸がある場合であっても、その凹凸形状に対して伝熱部材67bが追従しやすくなり記録媒体Pとの密着性が高まるために、記録媒体Pに対する加熱効率が向上するとともに、記録媒体Pの温度ムラが軽減される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0066】
なお、本実施の形態1では、加熱装置67の加熱体67aとして抵抗発熱体(正特性サーミスタ)を用いて伝熱板67bを加熱体67aによって加熱されるように構成した。これに対して、伝熱板67bを所定のキューリー点に達すると透磁率が低下する金属材料で形成して、伝熱板67bを電磁誘導により加熱することもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
具体的に、加熱装置は、ニッケル、鉄等の整磁合金からなる板厚0.3mm程度の伝熱板と、伝熱板に対向する誘導コイル(加熱体)と、等で構成される。このような構成により、誘導コイルに20kHzの高周波電圧が印加されると、伝熱板が電磁誘導加熱されて、記録媒体Pの転写定着面に熱を伝えることになる。なお、伝熱板は、整磁合金中のニッケル成分の比率が40%程度に設定されていて、その温度が200℃(キューリー点)に達すると透磁率が急激に低下して電磁誘導加熱されなくなる。具体的に、このように構成された伝熱板は、1200ワットの電力で3秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。
【0067】
また、本実施の形態1では、記録媒体Pを伝熱板67bの側に付勢する付勢部材としてブラシ状部材91を用いたが、付勢部材としてバネ材を用いることもできる。その場合、記録媒体Pとの摩擦を低減するために、バネ材の摺動面にフッ素樹脂等の低摩擦材料をコーティングすることが好ましい。
【0068】
実施の形態2.
図7にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図7は、実施の形態2における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における転写定着装置は、加熱装置67の伝熱板67bが案内される記録媒体Pの側に凸状に形成されている点と、伝熱板67bに達する前後の位置における記録媒体の搬送速度に差異を設けている点と、が前記実施の形態1のものと相違する。
【0069】
本実施の形態2における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
【0070】
ここで、本実施の形態2における加熱装置67の伝熱板67bは、図7に示すように、案内される記録媒体Pの側に凸状に形成された曲面からなる案内面が設けられている。具体的に、伝熱板67bは、300R程度の曲率で湾曲している。
さらに、その案内面に達する前の位置における記録媒体Pの搬送速度が、案内面に達した後の位置における記録媒体Pの搬送速度よりも小さくなるように構成されている。具体的には、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度減速されるように設定されている。
【0071】
このような構成により、記録媒体Pはニップ部側に引っ張られて凸状の伝熱板67bに沿うように搬送されるために、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着性がさらに高まって、記録媒体Pに対する加熱効率が向上する。具体的に、本願発明者がサーモグラフィで測定したところ、本実施の形態2における伝熱板67bを用いた場合には、本実施の形態1における伝熱板67bを用いた場合に比べて、伝熱板67bによって加熱される記録媒体Pの表面温度が5〜10℃上昇することが確認できた。
【0072】
なお、伝熱板67bは、加圧ローラ68がツヅミ状に形成されている場合に、その形状に合わせて形成することが好ましい。具体的に、加圧ローラ68の幅方向中央部の外径が軸方向両端部の外径よりも0.1mm小さく形成されている場合には、伝熱板67bの幅方向(図7の紙面垂直方向である。)の中央部における曲率を250Rとすることができる(幅方向両端部における曲率は300Rである。)。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、前記実施の形態1と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0074】
実施の形態3.
図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図8は、実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態3における転写定着装置は、加熱装置67の伝熱板67bが案内される記録媒体Pの側に凹状に形成されている点と、伝熱板67bに達する前後の位置における記録媒体の搬送速度に差異を設けている点と、が前記実施の形態1のものと相違する。
【0075】
本実施の形態3における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
【0076】
ここで、本実施の形態3における加熱装置67の伝熱板67bは、図8に示すように、案内される記録媒体Pの側に凹状に形成された曲面からなる案内面が設けられている。具体的に、伝熱板67bは、前記実施の形態2のものとは逆方向に300R程度の曲率で湾曲している。
さらに、その案内面に達する前の位置における記録媒体Pの搬送速度が、案内面に達した後の位置における記録媒体Pの搬送速度よりも大きくなるように構成されている。具体的には、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度増速されるように設定されている。
【0077】
このような構成により、記録媒体Pはニップ部側で詰まって凹状の伝熱板67bに沿うように搬送されるために、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着性がさらに高まって、記録媒体Pに対する加熱効率が向上する。具体的に、本願発明者がサーモグラフィで測定したところ、本実施の形態3における伝熱板67bを用いた場合には、本実施の形態1における伝熱板67bを用いた場合に比べて、伝熱板67bによって加熱される記録媒体Pの表面温度が5〜10℃上昇することが確認できた。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0079】
実施の形態4.
図9にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図9は、実施の形態4における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態2における図7に相当する図である。本実施の形態4における転写定着装置は、記録媒体Pに対してブラシ状部材91の接離動作がおこなわれる点が、前記実施の形態2のものと相違する。
【0080】
本実施の形態4における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材91が設置されている。
さらに、伝熱板67bは、前記実施の形態2のものと同様に、凸状に形成されている。また、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度減速されるように設定されている。
【0081】
ここで、本実施の形態4におけるブラシ状部材91(付勢部材)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの先端部及び後端部(搬送方向の先端部及び後端部である。)のみを伝熱板67bに向けて付勢するように制御される。
具体的に、図9(A)及ぶ図9(B)に示すように、ブラシ状部材91は、カム92の回転によって上下方向に移動可能に構成されている。そして、搬送中の記録媒体Pの先端部(搬送方向先端部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(A)に示すように、ブラシ状部材91を上方に移動して記録媒体Pの先端部を伝熱板67bに積極的に押し当てる。その後、記録媒体Pの中央部(搬送方向中央部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(B)に示すように、ブラシ状部材91を下方に移動して記録媒体Pの中央部を伝熱板67bに積極的に押し当てる動作を休止する。最後に、記録媒体Pの後端部(搬送方向後端部)がブラシ状部材91の対向位置に達したときには、図9(A)に示すように、再びブラシ状部材91を上方に移動して記録媒体Pの後端部を伝熱板67bに積極的に押し当てる。
【0082】
このような構成・制御により、記録媒体Pの裏面がブラシ状部材91のブラシ毛91aで擦られて紙粉が多量に発生する不具合が軽減される。さらに、両面プリント時の記録媒体Pの第1面がブラシ毛91aで擦られて第1面に形成された画像が傷つく不具合が軽減される。具体的に、本願発明者が1000枚の通紙をおこなって紙粉の発生量を確認したところ、ブラシ状部材91の接離動作をおこなった場合(本実施の形態4における構成・動作である。)には、ブラシ状部材91の接離動作をおこなわなかった場合(前記実施の形態2における構成・動作である。)に比べて、紙粉の発生量が大幅に低減された。なお、ブラシ状部材91を記録媒体Pから完全に離間させる動作の代わりに、記録媒体Pに対するブラシ状部材91の当接力を半分に弱める動作をおこなった場合にも、本実施の形態4のものと同様に紙粉の発生量が大幅に低減された。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態4によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0084】
実施の形態5.
図10にて、この発明の実施の形態5について詳細に説明する。
図10は、実施の形態5における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態5における転写定着装置は、付勢部材として吸引機構95、96が用いられている点が、付勢部材としてブラシ状部材91が用いられている前記実施の形態3のものと相違する。
【0085】
本実施の形態5における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。
さらに、伝熱板67bは、前記実施の形態3のものと同様に、凹状に形成されている。また、レジストローラ64の外周面における線速が、ニップ部の位置におけるローラ部材28Aの線速よりも、1%程度増速されるように設定されている。
【0086】
ここで、本実施の形態5では、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する付勢部材として、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bの側から空気とともに吸引する吸引機構95、96が用いられている。
詳しくは、吸引機構(付勢部材)は、加熱装置67の上方を覆うダクト96と、ダクト96の吸引口に設置された吸引ファン95と、で構成されている。また、伝熱板67bには、直径30μmの貫通穴が25mm×25mmの範囲ごとに形成されている。このような構成により、吸引ファン95が稼動すると、記録媒体Pが伝熱板67bに向けて吸引(付勢)されることになる。
【0087】
なお、本実施の形態5においては、吸引機構95、96を用いて、記録媒体Pに接触することなく記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢しているために、記録媒体Pの裏面から紙粉が生じる不具合が生じにくい。しかし、記録媒体Pの先後端部のみを伝熱板67bに付勢すれば記録媒体Pと伝熱板67bとの密着性が確保される場合等には、前記実施の形態4と同様に、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの先端部及び後端部(搬送方向の先端部及び後端部である。)のみを伝熱板67bに向けて付勢するように吸引ファン95のオン・オフ制御をおこなうことができる。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態5によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて吸引して付勢する吸引機構95、96(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0089】
実施の形態6.
図11にて、この発明の実施の形態6について詳細に説明する。
図11は、実施の形態6における画像形成装置の一部を示す構成図である。本実施の形態6における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21が設置されている点が、4つの感光体ドラム21が設置されている前記実施の形態1のものと相違する。
【0090】
本実施の形態6における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材91)が設置されている。
【0091】
図11に示すように、本実施の形態6における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21の周囲に、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した書込み部(不図示である。)、帯電部(不図示である。)、現像装置23Y、23M、23C、23BKや、クリーニング装置25、等が配設されている。そして、感光体ドラム21上で各色の画像(トナー像)が重ねて形成されて、そのカラー画像が転写バイアスローラ24との対向位置で転写定着ベルト27上に転写される。
その後、転写定着ベルト27上に担持されたトナー像Tは、加圧ローラ68とのニップ部の位置で、前記各実施の形態と同様に、加熱装置67によって加熱された記録媒体P上に転写・定着される。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態6によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状部材91(付勢部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0093】
実施の形態7.
図12及び図13にて、この発明の実施の形態7について詳細に説明する。
図12は、実施の形態7における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態7における転写定着装置は、ブラシ状部材(付勢部材)としてブラシ状ローラ191が用いられている点が、前記実施の形態1のものと相違する。
【0094】
図12を参照して、本実施の形態7における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材としてのブラシ状部材191が設置されている。
ここで、本実施の形態7におけるブラシ状部材は、前記実施の形態1における非回転で板状のブラシ状部材91とは異なり、記録媒体Pとの接触位置において記録媒体Pの搬送方向と同方向に回転するブラシ状ローラ191(図12の時計方向に回転する。)である。
【0095】
本実施の形態7における転写定着装置66は、伝熱板67bによってニップ部に案内される記録媒体Pを、ブラシ状ローラ191(付勢部材)によって伝熱板67bに押し付ける(付勢する)ように構成されている。このように構成することにより、伝熱板67bに対する記録媒体Pの密着力と密着時間が向上するために、伝熱板67bによって記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
【0096】
図12及び図13を参照して、付勢部材としてのブラシ状ローラ191は、芯金上に、ポリイミド繊維やアラミド繊維等が植毛されたブラシ布が螺旋状に巻回された耐熱性を有するローラ状部材であって、図12の時計方向に回転する。そして、レジストローラ64の位置を通過した記録媒体Pは、伝熱板67b及びガイド部材65に案内されて、ニップ部の直前で、ブラシ状ローラ191に付勢されて伝熱板67bに押し当てられながら、伝熱板67bによって加熱された後に、ニップ部に送入されることになる。
なお、本実施の形態7におけるブラシ状ローラ191は、その外径が30mm、ブラシ毛の毛足長さが10mm、ブラシ毛の原糸太さが1330T/120F、ブラシ毛の密度が10万〜15万本/inch2に設定されている。また、ブラシ状ローラ191のブラシ毛は、上述のものに限定されることなく、フッ素樹脂や、耐熱性の樹脂や金属、又は、それらの表面に低摩耗材料をコーティングしたもの、等を用いることもできる。ブラシ状ローラ191に耐熱性をもたせることで、伝熱板67bの熱によってブラシ状ローラ191のブラシ毛が熱劣化する不具合を軽減することができる。
【0097】
ブラシ状ローラ191は、記録媒体Pとの接触位置における線速度が記録媒体Pの搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されることが好ましい。すなわち、ブラシ状ローラ191は、記録媒体Pの搬送速度と等速又はそれ以上の速度で、図12の時計方向に回転することが好ましい。
このような構成により、記録媒体Pがブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの接触位置に進入するときに、ブラシ状ローラ191に引っ掛かって搬送性が低下する不具合を防止することができる。なお、本実施の形態7では、ブラシ状ローラ191の記録媒体Pとの接触位置における線速度が、記録媒体Pの搬送速度に対して1〜3%速くなるように設定されている。
【0098】
ここで、本実施の形態7では、図12に示すように、記録媒体Pが左方から右方に略水平方向に搬送されて、その上方には伝熱板67bが配設され、その下方にはブラシ状ローラ191が配置されている。このように、記録媒体Pの重力方向にブラシ状ローラ191を配設することで、ブラシ状ローラ191に記録媒体Pを持ち上げる方向の反作用による力が作用するため、記録媒体Pとブラシ状ローラ191との接触力が高まり、記録媒体Pの搬送性が向上することになる。なお、本実施の形態7では、記録媒体Pの搬送方向を略水平方向としたが、記録媒体Pの搬送方向が斜方向に設定されている画像形成装置であっても、記録媒体Pの重力方向の分力が作用する方向にブラシ状ローラ191を配設することで、上述した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、付勢部材としてブラシ状ローラ191は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pに複数個所で点接触又は線接触することになる。記録媒体Pとの接触面積を極力小さくして記録媒体Pを伝熱板67bに押圧することで、ブラシ状ローラ191の側に熱が移動して記録媒体Pの加熱効率が低下する不具合を抑止することができるとともに、記録媒体Pの搬送性が低下する不具合を抑止することができる。
なお、本実施の形態7では、伝熱板67bに圧接するブラシ状ローラ191の加圧幅(ニップ幅)が3〜12mmになるように設定されている(3〜5kgf程度の加圧圧に相当する。)。
【0100】
ここで、本実施の形態7において、ブラシ状ローラ191(付勢部材)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する条件が可変制御されるように構成されている。
本実施の形態7における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ191によって伝熱板67bに向けて付勢される記録媒体Pに対する付勢力を可変する加圧機構192〜194が設置されている。また、装置本体1には、通紙される記録媒体Pの紙厚を検知する検知手段が設置されている。そして、検知手段によって取得した記録媒体Pの紙厚についての情報に基いて、加圧機構192〜194が可変制御されることになる。
なお、通紙される記録媒体Pの紙厚は、記録媒体Pの搬送経路中に紙厚センサを設置してこれにより検知することもできるし、ユーザーによって装置本体1の操作部に入力された記録媒体Pに関する情報に基いて判断してもよい。
【0101】
詳しくは、図13を参照して、加圧機構は、レバー192、カム193、引張スプリング194、駆動モータ(不図示である。)、等で構成されていて、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の相対的な位置を可変するように構成されている。レバー192は、支軸192aを中心にして回動可能に、装置本体の側板に保持されている。レバー192の、一端側にはブラシ状ローラ191が回動可能に保持されていて、他端側には引張スプリング194の一方のフック部が接続されている。引張スプリング194の他方のフック部は、装置本体の側板に接続されている。また、レバー192の中央部には、不図示の駆動モータに連結されたカム193が係合している。このような構成により、不図示の駆動モータによってカム193が回転駆動されてカム193の回転方向の姿勢が定まると、引張スプリング194のスプリング力によってレバー192が支軸192aを中心に回動して(レバー192がカム193に接触しながら回動して)、ブラシ状ローラ191の位置が上下方向に可変されることになる。
【0102】
具体的に、図13(A)は、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに対して所定の加圧幅(ニップ幅)で当接している状態である。この状態でカム193の回転方向の姿勢を所定角度だけ可変することで、加圧幅(記録媒体Pに対する付勢力)が増減される。そして、加圧機構192〜194(加圧幅可変機構)は、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(紙厚)が厚いときに、記録媒体Pの厚さ(紙厚)が薄いときよりも、上述した付勢力(加圧幅)が大きくなるように制御される。
厚さの厚い記録媒体(厚紙)は、厚さの薄い記録媒体(薄紙)に比べて、伝熱板67bによって加熱された転写定着面(おもて面)の熱が時間の経過とともに裏面側に伝達されてしまうために、ニップ部に到達するまでの転写定着面の温度低下の程度が大きい。これに対して、薄紙の場合には、厚紙に比べて、伝熱板67bによる加熱効率が高いために、厚紙を基準とした伝熱板67bの温度制御をおこなってしまうと、薄紙が過昇温してしまったり、温度上昇によってカールが発生してしまったりする。
したがって、上述した制御をおこなうことにより、厚さ(紙厚)が異なる記録媒体Pが通紙された場合であっても、伝熱板67bによって加熱される転写定着工程直前の記録媒体Pの温度にバラツキが生じることなく、安定した転写定着画像を形成することができる。これは、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅(付勢力)の大小が、伝熱板67bから記録媒体Pに与えられる熱量の大小に影響することに基くものである。
【0103】
本実施の形態7では、記録媒体Pの厚さに応じて伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅を可変しているために、記録媒体Pの厚さに関わらず転写定着工程においてニップ部に送入される際の記録媒体Pの転写定着面の温度を適正化することができる。また、良好な転写定着画像を得るための必要最小限の熱量で記録媒体Pを加熱することができるために、装置全体としてのエネルギ効率を高めることができる。さらに、薄紙を通紙する場合に、必要最小限の熱量で加熱するために、加熱後に薄紙にカールが発生する不具合も防止することができる。
【0104】
なお、本実施の形態7では、記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて可変制御される、ブラシ状ローラ191(付勢部材)の付勢条件を、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧幅とした。これに対して、記録媒体Pの厚さ(又は種類)に応じて可変制御される、ブラシ状ローラ191の付勢条件を、ブラシ状ローラの回転数とすることもできる。
具体的に、ブラシ状ローラ191の回転数を可変できるように、ブラシ状ローラ191の駆動モータを回転数可変型駆動モータとする。そして、伝熱板67bに案内される記録媒体Pの厚さ(紙厚)が厚いときに、記録媒体Pの厚さ(紙厚)が薄いときよりも、ブラシ状ローラ191の回転数が速くなるように制御する。これにより、厚紙を通紙するときには回転数が大きいブラシ状ローラ191によって厚紙が積極的に伝熱板67bに付勢されることになるため、上述した効果とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0105】
ここで、図13(B)は、上述した離間機構192〜194の動作によって、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bや加圧ローラ68に対して完全に離間している状態である。
本実施の形態7において、非通紙時(伝熱板67bとブラシ状ローラ191との間を記録媒体Pが通過しないときである。)には、伝熱板67bや加圧ローラ68やガイド部材65に対してブラシ状ローラ191を相対的に離間させる制御をおこなっている(図13(B)の状態である。)。
これにより、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接することになるため、伝熱板67bからブラシ状ローラ191に熱が伝わってブラシ状ローラ191が熱劣化する不具合が低減される。また、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bや加圧ローラ68やガイド部材65に当接して変形することになるため、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が長時間の変形によって毛倒れが復元しなくなる不具合を軽減することができる。
【0106】
また、図12及び図13(A)を参照して、本実施の形態7における転写定着装置66には、記録媒体Pの搬送方向に対してブラシ状ローラ191の上流側に、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に当接するとともに記録媒体Pを案内するガイド部材65が設けられている。詳しくは、ガイド部材65は、その下流側の先端部Wが、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に接触するように配設されている。
このような構成により、ブラシ状ローラ191のブラシ毛は、ガイド部材65との接触が開放された後に、伝熱板67bに接触することになる。すなわち、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置の搬送方向上流側は、ガイド部材65によって、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が密集していない状態が形成されている。したがって、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に送入される記録媒体Pが、ブラシ状ローラ191のブラシ毛による大きな抵抗を受けることなく、スムーズに搬送されることになる。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態7によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0108】
実施の形態8.
図14にて、この発明の実施の形態8について詳細に説明する。
図14は、実施の形態8における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。本実施の形態8における転写定着装置は、付勢部材としてのブラシ状ローラ191が加圧ローラ68に当接している点と、ブラシ状ローラ191に摺接するクリーニング部材200が設置されている点と、が前記実施の形態7のものと相違する。
【0109】
図14を参照して、本実施の形態8における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。
【0110】
ここで、本実施の形態8におけるブラシ状ローラ191は、前記実施の形態7のものとは異なり、加圧ローラ68(加圧部材)に摺接するように配設されている。詳しくは、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が加圧ローラ68の外周面に摺接するように構成されている。
このような構成によって、加圧ローラ68の表面が、ブラシ状ローラ191によってクリーニングされることになる。詳しくは、転写定着ベルト27上には地肌汚れトナーが付着しているために、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部を通過する記録媒体Pの幅方向サイズが小さいときに、そのサイズの領域外に付着した転写定着ベルト27上の地肌汚れトナーが加圧ローラ68に付着してしまう可能性がある。このように、加圧ローラ68の表面がトナーで汚れてしまっても、加圧ローラ68の表面に摺接するブラシ状ローラ191によって、加圧ローラ68がクリーニングされるために、ニップ部の位置で記録媒体Pの裏面が汚れる不具合が抑止される。また、このように加圧ローラ68のクリーニング手段をブラシ状ローラ191が兼ねることで、加圧ローラ68のクリーニング手段をブラシ状ローラ191とは別に設ける場合に比べて、転写定着装置66が低コスト化・小型化されることになる。
【0111】
また、本実施の形態8における転写定着装置66には、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に摺接してブラシ状ローラ191をクリーニングするクリーニング部材200が設けられている。詳しくは、クリーニング部材200は、ブラシ状ローラ191と加圧ローラ68との摺接位置に対してブラシ状ローラ191の回転方向下流側の位置で、ブラシ状ローラ191のブラシ毛に食い込むように配設されたフリッカーバー(棒状部材)である。
このように、クリーニング部材200を設けることによって、ブラシ状ローラ191に付着した紙粉(伝熱板67bとの当接位置で記録媒体Pから離脱した紙粉である。)や、加圧ローラ68から除去してブラシ状ローラ191に付着したトナー(上述した地肌汚れトナーである。)等が、ブラシ状ローラ191から除去されることになる。そして、ブラシ状ローラ191から除去された紙粉やトナーは、重力方向に落下して、受け皿201上に回収される。
なお、本実施の形態8では、クリーニング部材200をフリッカーバーとしたが、クリーニング部材として板状のブレードやスクレーパを用いることもできる。
【0112】
以上説明したように、本実施の形態8によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0113】
実施の形態9.
図15にて、この発明の実施の形態9について詳細に説明する。
図15は、実施の形態9における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。本実施の形態9における転写定着装置は、2つのブラシ状部材が設置されている点が、前記実施の形態7のものと相違する。
【0114】
図15(A)を参照して、本実施の形態9における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラが設置されている。
【0115】
ここで、本実施の形態9における転写定着装置66には、前記実施の形態7のものとは異なり、複数のブラシ状ローラ191A、191B(付勢部材)が設置されている。
詳しくは、図15(A)に示すように、搬送方向上流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向上流側である。)には外径の大きな第1ブラシ状ローラ191Aを設置して、搬送方向下流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向下流側である。)であってニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)に近い位置には外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bを設置している。2つのブラシ状ローラ191A、191Bはいずれも伝熱板67bに当接するとともに図15(A)の時計方向に回転して、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する。
このような構成により、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍にて、外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bによって記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢することができるために、ニップ部の近傍まで記録媒体Pの表面が充分に加熱されることになる。
【0116】
なお、図15(A)に示す転写定着装置66では、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍に、外径の小さな第2ブラシ状ローラ191Bを設置した。これに対して、図15(B)に示すように、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍に、板状のブラシ状部材91を設置することもできる。詳しくは、図15(B)に示す転写定着装置66は、搬送方向上流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向上流側である。)にブラシ状ローラ191を設置して、搬送方向下流側(伝熱板67bに案内される記録媒体Pの搬送方向下流側である。)であってニップ部に近い位置には板状のブラシ状部材91を設置している。このような構成をとった場合であっても、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部の近傍にて、板状のブラシ状部材91によって記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢することができるために、ニップ部の近傍まで記録媒体Pの表面が充分に加熱されることになる。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態9によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢する複数のブラシ状ローラ191A、191B(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0118】
実施の形態10.
図16及び図17にて、この発明の実施の形態10について詳細に説明する。
図16は、実施の形態10における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態7における図12に相当する図である。また、図17は、ブラシ状ローラ191を幅方向にみた断面図である。
本実施の形態10における転写定着装置は、ブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cが覆設されている点が、前記実施の形態7のものと相違する。
【0119】
図16を参照して、本実施の形態10における転写定着装置66も、前記実施の形態7のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。
【0120】
ここで、本実施の形態10におけるブラシ状ローラ191は、前記実施の形態7のものとは異なり、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cが覆設されている。詳しくは、図17に示すように、ブラシ状ローラ191は、芯金191a上にブラシ毛191b(ブラシ布)が巻装され、さらにブラシ毛191bを覆うように可撓性を有する円筒状部材191cが設けられている。この円筒状部材191cは、フッ素化合物等の低摩擦材料で形成された耐熱性を有する薄いチューブ状部材であって、芯金191aとブラシ毛191bとともに一体的に図16の時計方向に回転駆動される。このように構成されたブラシ状ローラ191は、円筒状部材191c及びブラシ毛191bが変形した状態で伝熱板67bに圧接してニップを形成することになる。
【0121】
ここで、本実施の形態10においても、伝熱板67bとブラシ状部材191(円筒状部材191c)との当接位置から、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部までの、距離がなるべく短くなるように形成されている。
また、伝熱板67bとブラシ状部材191(円筒状部材191c)との当接位置において、記録媒体Pに対する加熱時間を充分に確保するために、円筒状部材191c及びブラシ毛191bが僅かな当接力(3〜5kgf程度である。)で充分に変形するように構成されている。
また、図17に示すように、ブラシ状ローラ191の両端部には、ブラシ状ローラ191からの円筒状部材191cの脱落や軸方向のズレを防止するためのフランジ191dが圧入されている。
【0122】
このようにブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cを覆設することで、コート紙等のように厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときであっても、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置にて、記録媒体Pの表面の平滑性を損なうことなく記録媒体Pを良好に加熱することができる。
詳しくは、前記実施の形態7のように、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pに、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が摺接すると、コート紙等のように厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときに、記録媒体Pの表面に凹凸を形成してしまい記録媒体Pの平滑性を損なってしまう可能性があった。これに対して、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の外周面に可撓性を有する円筒部材191cを覆設しているために、ブラシ状ローラ191のブラシ毛191bが記録媒体Pに直接的に点接触又は線接触することがなく、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cが記録媒体Pにほぼ均一に面接触することになる。したがって、記録媒体Pの表面の平滑性を損なうことなく記録媒体Pを良好に加熱することができる。
【0123】
また、前記実施の形態7のように、伝熱板67bとブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pに、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が直接的に摺接する構成の場合には、長時間の使用によって、ブラシ状ローラ191のブラシ毛が抜け落ちたり切れたりする可能性があった。そして、脱落したブラシ毛が記録媒体Pや装置本体1の部品等に付着してしまうと、出力画像上に異常画像が発生したり装置本体1が故障したりしてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の外周面に円筒部材191cを覆設しているために、ブラシ状ローラ191のブラシ毛191bが抜け落ちたり切れたりする不具合が軽減される。
【0124】
また、本実施の形態10におけるブラシ状ローラ191は、円筒状部材191cの内周面側にブラシ毛191bによる空隙が形成されているために、ブラシ毛191bを耐熱アラミド繊維等で構成することにより、ブラシ状ローラ191の表面の熱伝導率を極めて小さくすることができる。このような場合には、伝熱板67bからブラシ状ローラ191への不必要な熱の移動を低減できるために、加熱装置67のエネルギ効率を向上させることができる。
【0125】
なお、本実施の形態10では、薄膜で変形自在の円筒状部材191cを柔軟なブラシ毛191bの外周に設けているために、ブラシ状ローラ191の表面の柔軟性が確保されている。したがって、ブラシ状ローラ191は、伝熱板67bに対して比較的低い加圧力で当接しても容易に変形することになり、双方の部材67b、191の間に良好なニップ幅(8〜12mm程度である。)のニップが形成される。なお、このニップでの加熱は、トナー像の加熱を含まない記録媒体Pのみの加熱であるため、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧力は50〜200g/cm2程度で充分である。なお、伝熱板67bに対するブラシ状ローラ191の加圧力を上述の上限値よりも大きく設定してしまうと、厚さの薄い記録媒体Pを通紙するときに、カールやシワが生じてしまう可能性がある。
また、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の表面の柔軟性が確保されているために、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置の下流側にブラシ状ローラ191による曲率の小さな分離部が形成されて、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置から記録媒体Pが送出される際の分離性を高めることができる。
【0126】
ここで、本実施の形態10における転写定着装置67も、前記実施の形態7のものと同様に、非通紙時(伝熱板67bとブラシ状ローラ191との間を記録媒体Pが通過しないときである。)には、伝熱板67bに対してブラシ状ローラ191を離間させる制御をおこなっている(図16の破線で示す位置へのブラシ状ローラ191の移動である。)。
これにより、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接することになるため、伝熱板67bからブラシ状ローラ191に熱が伝わってブラシ状ローラ191が熱劣化する不具合が低減される。また、必要最小限のタイミングでのみ、ブラシ状ローラ191が伝熱板67bに当接して変形することになるため、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cやブラシ毛191bが長時間の変形によって復元しなくなる不具合を軽減することができる。
【0127】
また、本実施の形態10における転写定着装置67は、不図示の可動機構によって、加熱装置67を上方(図16の破線で示す位置であって、記録媒体Pの搬送経路から離れる位置である。)に自動で移動させることができるように構成されている。そして、レジストローラ64とニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)との間の搬送経路中での記録媒体Pのジャムが発生した場合には、その状態をジャム検知センサで検知して、ブラシ状ローラ191を下方に離間させるとともに加熱装置67を上方に移動させるように制御する。その後、ユーザーは、その位置でジャムした記録媒体Pを取り出すジャム処理をおこなうことになる。
これにより、ユーザーのジャム処理作業が容易になるとともに、ジャムによって搬送停止した記録媒体Pを加熱装置67で加熱し続ける不具合もなくなる。
【0128】
また、本実施の形態10では、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cを低摩擦材料で形成しているために、伝熱板67bとの摺動によるブラシ状ローラ191の耐久性を高めることができる。その反面、伝熱板67bとの当接位置における記録媒体Pのグリップ力が低下するために記録媒体Pの搬送性は低下してしまう。本実施の形態10では、このような記録媒体Pの搬送性の低下を抑止するために、レジストローラ64とニップ部(加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部である。)との間の搬送経路の長さが、この装置1で使用可能な最小サイズの記録媒体Pの搬送方向長さよりも短くなるように設定している。すなわち、記録媒体Pの搬送性は、ブラシ状ローラ191の表面性にほとんど影響されることなく、レジストローラ64による搬送力と、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とによる搬送力と、によって決定されることになる。
【0129】
以上説明したように、本実施の形態10によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0130】
実施の形態11.
図18にて、この発明の実施の形態11について詳細に説明する。
図18は、実施の形態11における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態10における図16に相当する図である。本実施の形態11における転写定着装置は、ブラシ状ローラ191に覆設された円筒部材191cを直接的に加熱する点が、前記実施の形態10のものと相違する。
【0131】
図18を参照して、本実施の形態11における転写定着装置66も、前記実施の形態10のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで延設されて案内板としても機能する伝熱板67bが設置されている。また、伝熱板67bに対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。さらに、ブラシ状ローラ191は、前記実施の形態10のものと同様に、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cがブラシ毛191bを覆うように設けられている。
【0132】
ここで、本実施の形態11における転写定着装置66は、ブラシ状ローラ191の円筒状部材191cを加熱する加熱手段211、212が設けられている。詳しくは、加熱手段は、ブラシ状ローラ191の外周面に対向する位置に配設されたヒータ211と、ヒータ211から射出された光をブラシ状ローラ191の外周面に向けて反射する反射板212と、で構成されている。そして、ブラシ状ローラ191の外周面(円筒状部材191c)は、ヒータ211の輻射熱によって加熱されて、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に搬送される記録媒体Pの裏面側を加熱する。
なお、本実施の形態11では、円筒状部材191cの加熱効率を高めるために、円筒状部材191cとして熱伝導が良くて耐熱性を有する金属ベルトが用いられている。具体的に、円筒状部材191cは、厚さが0.1mm程度のステンレスからなる金属ベルトである。
また、加熱手段121、122は、ブラシ状ローラ191と伝熱板67bとの当接位置に対して、ブラシ状ローラ191の回転方向上流側に配設されている。
【0133】
このような構成により、前記実施の形態10で述べた効果に加えて、記録媒体Pを裏面(転写定着面をおもて面としたときの裏面である。)の側から加熱することにより、厚紙通紙時や低温環境時の記録媒体Pの加熱効率の低下を低減する効果を得ることができる。
【0134】
以上説明したように、本実施の形態11によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板67bを設けるとともに、伝熱板67bに案内される記録媒体Pを伝熱板67bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0135】
実施の形態12.
図19にて、この発明の実施の形態12について詳細に説明する。
図19は、実施の形態12における転写定着装置の一部を示す構成図であって、前記実施の形態10における図16に相当する図である。本実施の形態12における転写定着装置は、伝熱板として弾性ローラ217の外周面に覆設された金属層217aが用いられている点が、前記実施の形態10のものと相違する。
【0136】
図19を参照して、本実施の形態12における転写定着装置66も、前記実施の形態10のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、レジストローラ64の近傍からニップ部の近傍まで記録媒体Pを案内する案内板としても機能する伝熱板が設置されている。
ここで、本実施の形態12における伝熱板は、記録媒体Pとの接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向(図19の反時計方向である。)に回転する弾性ローラ217の外周面に覆設された金属層217aである。また、伝熱板217b(弾性ローラ217)に対向する位置には、付勢部材(ブラシ状部材)としてのブラシ状ローラ191が設置されている。さらに、ブラシ状ローラ191は、前記実施の形態10のものと同様に、その外周面に可撓性を有する円筒状部材191cがブラシ毛191bを覆うように設けられている。
【0137】
弾性ローラ217は、前記実施の形態11におけるブラシ状ローラ191と同様に構成されている。すなわち、弾性ローラ217(ブラシ状ローラ)は、芯金上にブラシ毛(ブラシ布)が巻装され、さらにブラシ毛を覆うように可撓性を有する円筒状部材217a(金属層)が設けられている。ここで、弾性ローラ217(ブラシ状ローラ)の外周面に覆設された円筒状部材217a(金属層)は、厚さが0.1mm程度のステンレスからなる金属ベルトである。
また、本実施の形態12では、弾性ローラ217(伝熱板としての金属層217a)を加熱する加熱体として、励磁コイル218が用いられている。そして、不図示の電源部から励磁コイル218に高周波交流電圧が印加されることで、伝熱板としての金属層217aが電磁誘導加熱されることになる。このように、伝熱板217a(金属層)の加熱に電磁誘導加熱を用いることで、伝熱板217a(金属層)の加熱効率が向上する。
【0138】
このような構成により、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191との当接位置に送入される記録媒体Pは、双方のローラ191、217の回転によってその当接位置から送出されて、加圧ローラ68と転写定着ベルト27とのニップ部に向けてスムーズに搬送(案内)されることになる。弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とは当接位置にて等速で接触するために、双方のローラ191、217の摩擦による磨耗は少なくなる。
また、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とは、どちらも、表面の柔軟性が確保されており、その表面硬度は同程度であるために、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とのニップがフラットな形状になる。したがって、厚さの薄い記録媒体Pを通紙する場合であっても、弾性ローラ217とブラシ状ローラ191とのニップを通過した記録媒体Pが熱によってカールする不具合が抑止される。
【0139】
以上説明したように、本実施の形態12によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される記録媒体Pを案内しながら記録媒体Pの転写定着面を加熱する伝熱板217b(金属層)を設けるとともに、伝熱板217b(弾性ローラ217)に案内される記録媒体Pを伝熱板217bに向けて付勢するブラシ状ローラ191(ブラシ状部材)を設けているために、消費エネルギが低く、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止して、良好な定着性を得ることができる。
【0140】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
27 転写定着ベルト(転写定着部材)、
28A〜28C ローラ部材、
66 転写定着装置、
67 加熱装置、
67a 加熱体、
67b、67b1、67b2 伝熱板、
67c 電極、
67d 絶縁材、
68 加圧ローラ(加圧部材)、
91 ブラシ状部材(付勢部材)、
91a ブラシ毛、
91b 板状部材、
92 カム、
95 吸引ファン(付勢部材、吸引機構)、
96 ダクト(吸引機構)、 P 記録媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】特開2005−37879号公報
【特許文献2】特開2002−99159号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
トナー像を担持する転写定着部材と、
前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
加熱体によって加熱されるとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内しながら当該記録媒体の前記転写定着面を加熱する伝熱板と、
前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする転写定着装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体に接触するブラシ状部材であることを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項3】
前記ブラシ状部材は、ブラシ毛が前記ニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材を前記加圧部材の側に具備したことを特徴とする請求項2に記載の転写定着装置。
【請求項4】
前記ブラシ状部材は、中空構造のブラシ毛を有するとともに、前記伝熱板に案内される記録媒体に当該ブラシ毛を介して空気を吹き付けるように構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の転写定着装置。
【請求項5】
前記ブラシ状部材は、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する単数又は複数のブラシ状ローラであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項6】
前記ブラシ状ローラは、記録媒体との接触位置における線速度が記録媒体の搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されることを特徴とする請求項5に記載の転写定着装置。
【請求項7】
記録媒体の搬送方向に対して前記ブラシ状ローラの上流側に、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に当接するとともに記録媒体を案内するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の転写定着装置。
【請求項8】
前記ブラシ状ローラのブラシ毛に摺接して当該ブラシ状ローラをクリーニングするクリーニング部材を設けたことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項9】
前記ブラシ状ローラは、前記加圧部材に摺接するように配設されたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項10】
前記ブラシ状ローラは、その外周面に可撓性を有する円筒状部材が覆設されたことを特徴とする請求項5〜請求項9に記載の転写定着装置。
【請求項11】
前記円筒状部材は、低摩擦材料で形成されたことを特徴とする請求項10に記載の転写定着装置。
【請求項12】
前記円筒状部材を加熱する加熱手段をさらに備えたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の転写定着装置。
【請求項13】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板の側から空気とともに吸引する吸引機構であることを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項14】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の搬送方向先端部及び搬送方向後端部のみを当該伝熱板に向けて付勢するように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項15】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の厚さ又は種類に応じて当該記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する条件が可変制御されることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項16】
前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凸状に形成された曲面からなる案内面を具備し、
前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項17】
前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凹状に形成された曲面からなる案内面を具備し、
前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも大きくなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項18】
前記伝熱板は、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する弾性ローラの外周面に覆設された金属層であることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項19】
請求項1〜請求項18のいずれかに記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
トナー像を担持する転写定着部材と、
前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
加熱体によって加熱されるとともに、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体を案内しながら当該記録媒体の前記転写定着面を加熱する伝熱板と、
前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする転写定着装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体に接触するブラシ状部材であることを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項3】
前記ブラシ状部材は、ブラシ毛が前記ニップ部に巻き込まれるのを防止する板状部材を前記加圧部材の側に具備したことを特徴とする請求項2に記載の転写定着装置。
【請求項4】
前記ブラシ状部材は、中空構造のブラシ毛を有するとともに、前記伝熱板に案内される記録媒体に当該ブラシ毛を介して空気を吹き付けるように構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の転写定着装置。
【請求項5】
前記ブラシ状部材は、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する単数又は複数のブラシ状ローラであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項6】
前記ブラシ状ローラは、記録媒体との接触位置における線速度が記録媒体の搬送速度に対して同等以上になるように回転駆動されることを特徴とする請求項5に記載の転写定着装置。
【請求項7】
記録媒体の搬送方向に対して前記ブラシ状ローラの上流側に、前記ブラシ状ローラのブラシ毛に当接するとともに記録媒体を案内するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の転写定着装置。
【請求項8】
前記ブラシ状ローラのブラシ毛に摺接して当該ブラシ状ローラをクリーニングするクリーニング部材を設けたことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項9】
前記ブラシ状ローラは、前記加圧部材に摺接するように配設されたことを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項10】
前記ブラシ状ローラは、その外周面に可撓性を有する円筒状部材が覆設されたことを特徴とする請求項5〜請求項9に記載の転写定着装置。
【請求項11】
前記円筒状部材は、低摩擦材料で形成されたことを特徴とする請求項10に記載の転写定着装置。
【請求項12】
前記円筒状部材を加熱する加熱手段をさらに備えたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の転写定着装置。
【請求項13】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体を当該伝熱板の側から空気とともに吸引する吸引機構であることを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項14】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の搬送方向先端部及び搬送方向後端部のみを当該伝熱板に向けて付勢するように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項15】
前記付勢部材は、前記伝熱板に案内される記録媒体の厚さ又は種類に応じて当該記録媒体を当該伝熱板に向けて付勢する条件が可変制御されることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項16】
前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凸状に形成された曲面からなる案内面を具備し、
前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項17】
前記伝熱板は、案内される記録媒体の側に凹状に形成された曲面からなる案内面を具備し、
前記案内面に達する前の位置における記録媒体の搬送速度が、前記案内面に達した後の位置における記録媒体の搬送速度よりも大きくなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項18】
前記伝熱板は、記録媒体との接触位置において記録媒体の搬送方向と同方向に回転する弾性ローラの外周面に覆設された金属層であることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項19】
請求項1〜請求項18のいずれかに記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−256839(P2010−256839A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161181(P2009−161181)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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