説明

転写成形用フィルム

【課題】樹脂成形体表面に一体成形される転写成形用フィルムに関し、高い耐候性や耐久性等に加え、成形性にも優れた転写成形用フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム11と金属化粧層30と接着剤層40を含み、樹脂成形体Mの成形と同時に一体に付着させた後、前記基材フィルム11を剥離することによって、金属化粧層30を一体に有する樹脂成形体を得るためのフィルム10であって、前記基材フィルム11を易成型二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより構成し、前記基材フィルム11の上面12に透明アクリルウレタン塗料よりなるクリア層20を形成し、次いで前記クリア層20の上面21にニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる金属化粧層30を形成し、さらに前記金属化粧層30の上面31に前記接着剤層40を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の外装部品等の樹脂成形体に成形と同時に一体に付着されるフィルムに関し、特に、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を得るための転写成形用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の外装部品等の樹脂成形体には、耐候性、耐久性、装飾性等の観点から、その表面に適宜の積層フィルムが一体成形される。このような積層フィルムとして、例えば、基材フィルムと離型層とハードコート層と金属化粧層と接着剤層からなり、インモールド転写によって前記樹脂成形体の表面に一体に成形した後、前記基材フィルムを剥離する転写成形用フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この転写成形用フィルムは、樹脂成形体と一体成形されるとともに、成形後に基材フィルムを剥離するものであるため、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を効率よく成形することができ、該転写成形用フィルムの膜厚も薄くすることができる。
【0003】
ところで、近年では、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を得るに際し、高い耐候性や耐久性等に加え、成形性にも優れた転写成形用フィルムが切望されている。
【特許文献1】特開平06−71692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、樹脂成形体表面に一体成形される転写成形用フィルムに関し、高い耐候性や耐久性等に加え、成形性にも優れた転写成形用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1の発明は、基材フィルムと金属化粧層と接着剤層を含み、樹脂成形体の成形と同時に一体に付着させた後、前記基材フィルムを剥離することによって、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を得るためのフィルムであって、前記基材フィルムを易成型二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより構成し、前記基材フィルムの上面に透明アクリルウレタン塗料よりなるクリア層を形成し、次いで前記クリア層の上面にニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる金属化粧層を形成し、さらに前記金属化粧層の上面に前記接着剤層を形成したことを特徴とする転写成形用フィルムに係る。
【0006】
請求項2の発明は、前記基材フィルムの伸び率が、縦方向に180〜400%、横方向に150〜300%である請求項1に記載の転写成形用フィルムに係る。
【0007】
請求項3の発明は、前記基材フィルムの上面に離型層が形成されているとともに、前記離型層と前記クリア層との間に前記クリア層を均一に塗着するためのアンダー層が形成されている請求項1又は2に記載の転写成形用フィルムに係る。
【0008】
請求項4の発明は、前記金属化粧層と接着剤層との間に両者の接合性を向上させるためのプライマー層が形成されている請求項3に記載の転写成形用フィルムに係る。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る転写成形用フィルムによれば、基材フィルムと金属化粧層と接着剤層を含み、樹脂成形体の成形と同時に一体に付着させた後、前記基材フィルムを剥離することによって、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を得るためのフィルムであって、前記基材フィルムを易成型二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより構成し、前記基材フィルムの上面に透明アクリルウレタン塗料よりなるクリア層を形成し、次いで前記クリア層の上面にニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる金属化粧層を形成し、さらに前記金属化粧層の上面に前記接着剤層を形成したため、樹脂成形体の凹凸等に対応して好適に一体成形することができるばかりでなく、高い耐候性や耐久性等を発揮することができる。したがって、高い耐候性や耐久性等に加え、成形性にも優れた転写成形用フィルムを提供することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、請求項1において、前記基材フィルムの伸び率が、縦方向に180〜400%、横方向に150〜300%であるため、転写成形用フィルムとしての成形性や生産加工性が良好となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2において、前記基材フィルムの上面に離型層が形成されているとともに、前記離型層と前記クリア層との間に前記クリア層を均一に塗着するためのアンダー層が形成されているため、基材フィルムの剥離性が向上し、前記基材フィルムの剥離作業を極めて容易かつ確実に行うことができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、請求項3において、前記金属化粧層と接着剤層との間に両者の接合性を向上させるためのプライマー層が形成されているため、金属化粧層と接着剤層との相性が悪い場合であっても両者を接合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の第一実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図、図2は第二実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図、図3は第三実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の第一実施例に係る転写成形用フィルム10は、基材フィルム11と金属化粧層30と接着剤層40を含み、樹脂成形体Mの成形と同時に一体に付着させた後、前記基材フィルム11を剥離することによって、金属化粧層30を一体に有する樹脂成形体を得るためのものであって、基材フィルム11の上面12にクリア層20を形成し、次いでクリア層20の上面21に金属化粧層30を形成し、さらに金属化粧層30の上面31に接着剤層40が形成される。前記樹脂成形体Mには、例えば、PC、ABS、PVC、PP等の樹脂が使用される。
【0015】
基材フィルム11は、当該転写成形用フィルム10の表面層を形成し、樹脂成形体Mの成形と同時に一体に付着された後に剥離されるものであって、厚さ約50μmの易成型二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、易成型二軸延伸PET)より構成される。基材フィルム11である易成型二軸延伸PETでは、請求項2の発明として規定したように、JIS−C−2318に準拠する引張強度の比較による伸び率が縦方向に180〜400%、横方向に150〜300%であることが好ましい。この基材フィルム11(易成型二軸延伸PET)では、縦方向の伸び率を180%より小さくし横方向の伸び率を150%より小さくすると、転写成形用フィルム10としての成形性が劣ってしまうことが問題となる。一方、縦方向の伸び率を400%より大きくし横方向の伸び率を300%より大きくすると、転写成形用フィルム10としての生産加工性に支障をきたすことが問題となる。また、特には、縦方向及び横方向の伸び率をそれぞれ190%〜250%とすれば、より成形性が向上し、生産加工性もより良好に構成することができる。このように、基材フィルム11は、上記易成型二軸延伸PETで構成されるため、機械的強度や寸法安定性、機械適性等が向上して成形性に優れる。
【0016】
クリア層20は、基材フィルム11の上面12に形成され、後述の金属化粧層30を外面に発現可能にするものであって、透明アクリルウレタン塗料よりなり、適宜の手法によって厚さ約25μmに塗工される。このクリア層20は、紫外線カット剤を含む合成樹脂よりなり、前記樹脂としては、熱硬化型のものが好ましく、アクリル、ウレタン、アクリルウレタン、ナイロン、ポリカーボネート等の高耐候性の樹脂が好適に使用される。実施例では、熱硬化型アクリル樹脂が使用されているが、アクリル樹脂は皮膜形成能に優れており、特に熱硬化型のものは、光沢、耐候性、耐光性、耐薬品性等に優れているため好ましい。前記紫外線カット剤は、無機系のものとしては酸化亜鉛、酸化チタン等が使用され、有機系のものとしてはベンゾトリアゾール等が使用される。
【0017】
金属化粧層30は、クリア層20の上面21に形成され、ニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる。実施例の金属化粧層30は、DCマグネトロンスパッタリング方式により約0.03〜0.15μmの厚さに形成される。なお、ニッケル合金としては、ニッケルを主成分とするモリブデン,クロム,鉄等を含むハステロイ(登録商標)が好ましく、特には、C−22が挙げられる。ハステロイは、耐蝕性、耐候性、耐水性、耐熱性等に優れていることは一般に知られている。
【0018】
接着剤層40は、金属化粧層30の上面31に形成され、樹脂成形体Mと前記金属化粧層30とを接着するためのものである。実施例の接着剤層40としては、2液反応型のポリウレタン系接着剤等の公知のホットメルト剤がグラビアロールコーティング法によって厚さ約3.0〜10.0μmに塗工される。
【0019】
上記の如く構成された転写成形用フィルム10は、樹脂成形体Mと押出成形、射出成形、真空成形等の適宜の成形方法によって、所定形状に一体に成形される。そして、成形後に転写成形用フィルム10の表面層である基材フィルム11が剥離されて、樹脂成形体Mの表面に金属化粧層を有する薄膜が形成される。
【0020】
以上説明したように、当該転写成形用フィルム10では、易成型二軸延伸PETより構成される基材フィルム11を備えることにより、樹脂成形体Mの凹凸等にも対応して好適に一体成形することができる。加えて、透明アクリルウレタン塗料よりなるクリア層20と、ニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる金属化粧層30とを有するため、高い耐候性や耐久性等を発揮することができる。したがって、高い耐候性や耐久性等に加え、成形性にも優れた転写成形用フィルムを提供することができる。
【0021】
次に、第二実施例に係る転写成形用フィルムについて説明する。なお、以下の各実施例において、第一実施例と同一符号は同一の構成を表すものとして、その説明を省略する。図2に示す第二実施例の転写成形用フィルム10Aは、請求項3の発明としても規定したように、基材フィルム11の上面12に離型層50が形成されているとともに、前記離型層50と前記クリア層20との間に前記クリア層20を均一に塗着するためのアンダー層60が形成されたものである。
【0022】
離型層50は、基材フィルム11の上面12に、ワックスや公知の熱硬化性樹脂がグラビアロールコーティング法によって厚さ約0.01〜0.5μmに塗工される。離型層50としては、パラフィン・カルナバ・ポリエチレン等のワックス類、アクリル系・メラミン系・エポキシ系・脂肪族エステル系・オレフィン系・シリコン樹脂・フッ素樹脂等の樹脂類が単独・または複合で使用され、場合により界面活性剤等が添加される。
【0023】
また、アンダー層60は、離型層50とクリア層20の相性によりクリア層20が均一に塗工できない事象が生じた場合に、前記離型層50とクリア層20との間に形成されるものであって、実施例では、グラビアロールコーティング法によって厚さ約0.5〜3.0μmに塗工され、前記クリア層20を均一に塗着するように構成される。このアンダー層60としては、例えば、アクリル系・メラミン系・エポキシ系・ポリエステル系・ポリウレタン系等の熱硬化性樹脂及びイソシアネート硬化剤とが併用される。
【0024】
上記の如く、離型層50とアンダー層60とを形成することにより、基材フィルム11の剥離性が向上し、当該転写成形用フィルム10Aと樹脂成形体Mとの一体成形後の前記基材フィルム11の剥離作業を極めて容易かつ確実に行うことができる。
【0025】
また、図3に示す第三実施例の転写成形用フィルム10Bは、請求項4の発明としても規定したように、金属化粧層30と接着剤層40との間に両者の接合性を向上させるためのプライマー層70が形成されている。このプライマー層70では、ポリウレタン系樹脂やシランカップリング剤等がグラビアロールコーティング法によって厚さ約0.1〜1.0μmで塗工される。これにより、金属化粧層30と接着剤層40との相性が悪い場合であっても両者を接合させることができる。
【0026】
なお、本発明の転写成形用フィルムは、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図である。
【図2】第二実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図である。
【図3】第三実施例に係る転写成形用フィルムの概略断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 転写成形用フィルム
11 基材フィルム
20 クリア層
30 金属化粧層
40 接着剤層
50 離型層
60 アンダー層
70 プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと金属化粧層と接着剤層を含み、樹脂成形体の成形と同時に一体に付着させた後、前記基材フィルムを剥離することによって、金属化粧層を一体に有する樹脂成形体を得るためのフィルムであって、
前記基材フィルムを易成型二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムより構成し、前記基材フィルムの上面に透明アクリルウレタン塗料よりなるクリア層を形成し、次いで前記クリア層の上面にニッケル合金又はニッケル合金及びクロムの積層スパッタリングからなる金属化粧層を形成し、さらに前記金属化粧層の上面に前記接着剤層を形成したことを特徴とする転写成形用フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムの伸び率が、縦方向に180〜400%、横方向に150〜300%である請求項1に記載の転写成形用フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの上面に離型層が形成されているとともに、前記離型層と前記クリア層との間に前記クリア層を均一に塗着するためのアンダー層が形成されている請求項1又は2に記載の転写成形用フィルム。
【請求項4】
前記金属化粧層と接着剤層との間に両者の接合性を向上させるためのプライマー層が形成されている請求項3に記載の転写成形用フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−237714(P2007−237714A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67413(P2006−67413)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(593227981)日本プライ株式会社 (8)
【出願人】(592197197)中井工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】