説明

転写箔

【課題】 転写箔の利用において、特殊な装置を使用することなく、実用上の問題がなく、優れた偽造防止性と絵柄のデザイン付与を容易に行なえる転写箔を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材2上に、インクジェットインキの受容層3を設けた転写箔1において、該受容層3は紫外線照射により発光する発光材を2種類以上含有し、該発光材は夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なり、該受容層3はインクジェット記録による印字部5を有し、該受容層3の上に、接着層4が設けられたことを特徴とする。鮮明なインクジェット記録の印字が可能となり、その印字部により各種デザインの絵柄を形成することができる。さらに、異なる波長の紫外線を照射すると、波長の違いによって、発光する色の違いが現れて、偽造防止効果が非常に高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に、インクジェットインキの受容層を設けた転写箔に関し、更に詳しくは、該受容層に異なる波長の紫外線を照射すると、異なる色で発光する転写箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写箔は、商品(被転写体)の表面に絵柄を付与させるために、使用されるものである。商品と転写装置(アイロンや転写ロール)の間に、その転写箔を置いて、商品にアイロンなどを押し付けることで、転写箔の絵柄を商品に転写するものである。このような転写箔で、例えば衣類などに、再帰反射性を有する絵柄を転写箔により、形成することが行なわれている。(特許文献1)
【0003】
上記の再帰反射とは、光学上特殊な反射機構で、入射した光が再び入射方向へ帰る反射現象を指す。入射角と反射角が等しくなる鏡などの反射とは異なり、受けた光をそのまま光源にはね返します。暗い所でライトを当てると印刷部分の色が鮮やかに浮かび上がるものである。このような再帰反射性を有する転写箔により、通学服,トレーニングウェア,ジョギングウェア,シューズなどに絵柄を転写形成すると、これらの衣服の一部が自動車のヘッドライト照射に対する再帰反射性を有することになる。この衣服を着用した学童などは、薄暮や夜間における交通事故に遭遇する危険性を未然に回避できる。
【0004】
転写箔は、上記のような用途に限らず、Tシャツに各種デザインを付与させる、また各種カードのデザイン付与や偽造防止対策などで、利用されている。転写箔の絵柄を目立たせるために、その絵柄を形成する印刷層の厚さを確保して、印刷濃度を高めるように、シルクスクリーン印刷により絵柄を形成している。しかし、このようなシルクスクリーン印刷では、製版作業が必要であり、また特殊な印刷機を用意する必要があり、個人的な実施において、制約があり問題であった。
【0005】
また、高級ブランドの衣類などで、偽造防止対策として、タグや値札に、ホログラムやICチップを取り付けることが行なわれている(特許文献2参照)が、偽造防止性を高めた機能を持たせると、そのホログラム等の製造コストが高くなり、実用上の問題が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−226199号公報
【特許文献2】特開2011−59992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、転写箔の利用において、特殊な装置を使用することなく、実用上の問題がなく、優れた偽造防止性と絵柄のデザイン付与を容易に行なえる転写箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は基材上に、インクジェットインキの受容層を設けた転写箔において、該受容層は紫外線照射により発光する発光材を2種類以上含有し、該発光材は夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なり、該受容層はインクジェット記録による印字部を有し、該受容層の上に、接着層が設けられたことを特徴とする転写箔である。
【0009】
これにより、転写箔の基材上に受容層を有するので、インクジェット記録による印字部が滲む等の印字不良を生じることなく、鮮明なインクジェット記録の印字が可能となり、その印字部により各種デザインの絵柄を形成することができる。さらに、本発明の転写箔により、インクジェット記録の印字部を転写された商品は、転写された面に、異なる波長の紫外線を照射すると、波長の違いによって、発光する色の違いが現れて、偽造防止効果が非常に高いものである。この偽造防止効果は、今までに無く、高度なセキュリティー性を有するものである。また、本発明の転写箔を利用して商品に絵柄を転写する上で、実用上の問題は全く無い。
【0010】
また、本発明は、前記の受容層と接着層との間に、隠蔽層を設けたことを特徴とする。これにより、インクジェット記録の印字部を転写された商品で、印字部を含む転写された受容層が、転写された商品の表面の地色の影響をうけることなく、より鮮明な印字部による絵柄が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転写箔により、特殊な装置を使用することなく、実用上の問題がなく、優れた偽造防止性と絵柄のデザイン付与を有した転写された商品を、容易に得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の転写箔である一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の転写箔である他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について、詳述する。
図1に、本発明の転写箔1である一つの実施形態を示す。
図1は、基材2に、インクジェット記録による印字部5を有する受容層3、接着層4を積層した転写箔1である。この転写箔1は、接着層4と被転写体である商品を接するように重ねて、転写箔1側から、アイロンなどの加熱手段にて、加熱及び加圧して、商品に接着層4、受容層3(印字部を含め)を転写させることができる。上記の受容層3は紫外線照射により発光する発光材を2種類以上含有し、該発光材は夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なるものである。
【0014】
また、図2は本発明の転写箔である他の実施形態を示すものであり、基材2上に、剥離層7、アンカー層8、インクジェット記録による印字部5を有する受容層3、隠蔽層6、接着層4を積層した転写箔1である。この転写箔1では、接着層4と被転写体である商品を接するように重ねて、転写箔1側から、アイロンなどの加熱手段にて、加熱及び加圧して、剥離層7とアンカー層8の間で剥離して、商品に接着層4、隠蔽層6、受容層3(印字部を含め)、アンカー層8を転写させることができる。この場合でも、上記の受容層3は紫外線照射により発光する発光材を2種類以上含有し、該発光材は夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なるものである。図2において、受容層が剥離層と直接に接して、両者の加熱時の剥離性が高ければ、アンカー層を設ける必要がなく、また受容層自体が(白色)隠蔽性が高ければ、隠蔽層を設ける必要がない。
【0015】
以下に、本発明の転写箔を構成する要素について、詳しく説明する。
(基材)
転写箔の基材2として、転写箔の製造及び転写作業に耐える機械的強度、耐熱性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン(登録商標)6、ナイロン(登録商標)66などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、高衝撃ポリスチレン、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネートなどがある。
【0016】
基材は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材の厚さは、通常、2.5〜100μm程度が適用できるが、4〜50μmが好適で、6〜25μmが最適である。この範囲を超える厚さでは、熱伝導性が悪くなって、転写が安定せず、コストも高く、また、この範囲未満では、機械的強度が不足し、転写時に切断などが発生して、作業性が低下する。
【0017】
通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、強度、耐熱性、価格面でバランスがよく、好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレートが最適である。該基材は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。
【0018】
(受容層)
本発明の転写箔のインクジェットインキの受容層3は、紫外線照射により発光する発光材、顔料と親水性ポリマーからなる微小な多孔質層を設けた空隙型の受容層であることが好ましい。インクジェットのインキ吸収性及び乾燥性に優れるために、高精度の印画品質が得られるからである。上記の紫外線照射により発光する発光材は、2種類以上含有させ、その発光材は、夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なるものである。
【0019】
上記の発光材としては、例えば、254nmの紫外線照射により赤色発光する3価のユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu)、3価のユウロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y22S:Eu)などを挙げることができる。また、365nmの紫外線照射により緑色発光するマンガン付活ケイ酸亜鉛蛍光体(Zn2SiO4:Mn)が挙げられる。上記に挙げた発光材を、2種類以上含有させ、該発光材は、夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なる条件である。実用上、発光材である蛍光体を2種用いることが好ましい。ユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu)とマンガン付活ケイ酸亜鉛蛍光体(Zn2SiO4:Mn)の混合した蛍光体を用いることが、特に実用上好ましい。
【0020】
上記のユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体は、酸化イットリウムにユウロピウムを付活させたもので、すなわち酸化イットリウムを構成する元素の一部に、ユウロピウムを付活剤として、置換させた構造で、蛍光体として特有の蛍光発光する機能をもたせている。また、上記のマンガン付活ケイ酸亜鉛蛍光体は、ケイ酸亜鉛にマンガンを付活させたもので、すなわちケイ酸亜鉛を構成する元素の一部に、マンガンを付活剤として、置換させた構造で、蛍光体として特有の蛍光発光する機能をもたせている。
【0021】
このような蛍光体混合物は、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、カチオン性基等の官能基含有変成重合体ラテックス、ポリウレタン系、不飽和ポリエステル系,ポリビニルブチラール系、アルキッド樹脂系等の合成樹脂などのバインダー、及び溶剤と混合して蛍光体ペーストを調製する。この蛍光体ペーストに、顔料と親水性ポリマーを混合して、受容層の塗工液を調整する。
【0022】
その使用する顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の微粒子を、1次粒子のまま、または2次凝集粒子を形成した状態で使用することができる。特に、平均粒子径が100nm以下の気相法により合成されたシリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトを用いることが好ましい。
【0023】
親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールが好ましく、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールを使用することができる。また、受容層中には、受容層の造膜性を改善し、皮膜強度を上げるためのほう酸、またはその塩、記録後の耐水性や耐湿性を上げるためのカチオン媒染剤等の各種添加剤を添加することもできる。このように調整した受容層塗工液を用いて、グラビア印刷、スクリーン印刷、バーコートなど公知の方法で、受容層を形成することができる。受容層の厚さは、乾燥状態で、5〜30μm程度である。
【0024】
(接着層)
接着層4は、転写箔の最表面に位置するもので、接着層を構成する材料は、それ自体が粘接着性を有する材料であるか、加熱により接着性を付与するヒートシール性接着剤のいずれであっても良い。転写箔から転写される受容層等を、被転写体である商品に接着させ得るものであればよく、通常はヒートシール性の接着剤を使用する。具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、CMC等のセルロース系材料などが挙げられる。該材料樹脂を溶剤に溶解または分散させて、適宜顔料などの添加剤を添加して、公知のロールコーティング、グラビアコーティングなどの方法で塗布し乾燥させて、厚さ0.1μmから30μmの接着層を得る。
【0025】
本発明の転写箔は、基材上に設けた受容層は、インクジェット記録により印字して印字部を形成し、その後に接着層を積層する構成であるが、インクジェット記録後で、上記のようなウェット処理として、液を塗工して接着層を設けるのではなく、ドライ処理として、接着シート、例えば、熱で圧着することで、強固に接着できる、熱接着シートにより、被転写体と転写箔を重ねて、加熱及び加圧して、印字された受容層を転写させることが実用しやすく、好ましい。
【0026】
(隠蔽層)
本発明の転写箔では、受容層と接着層との間に、隠蔽層6を設けることにより、転写箔から転写されたインクジェット記録による印字部を有する受容層が、商品の表面の地色の影響をうけることなく、鮮明な印字部による絵柄が形成できる。隠蔽層は、樹脂をバインダーとして、それに白色顔料や、カーボンブラックや金属色を有する金属顔料などの顔料を含有させた組成物から形成することができる。
【0027】
使用するバインダー樹脂としては、受容層、接着層との接着性を考慮して、塩素化ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、MMA、PMMA、ポリエステル、ポリスチレン等の公知の樹脂及びこれらの変性体、そして、公知の樹脂の各種共重合体を用いることができる。また、これらの樹脂を複数ブレンドしたものを用いることも可能である。使用する白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛等公知の無機顔料を用いることができる。その中でも、白色性、隠蔽性等を考慮すると、アナターゼ型の酸化チタンを用いることが好ましい。
【0028】
バインダーと顔料の比率は、バインダー100部に対して30部〜300部が好ましい。顔料の比率が上記未満の場合は、隠蔽性に劣る。また、顔料の比率が上記の値を越えた場合には、加工安定性に劣るとともに、形成した塗膜が非常に脆くなる。 隠蔽層は、上記受容層、接着層と同様に公知の方法で、塗布し、乾燥させて、膜厚は0.5〜5μm程度とすることが好ましい。
【0029】
本発明の転写箔は、基材上に設けた受容層は、インクジェット記録により印字して印字部を形成し、その後に隠蔽層、接着層を積層する構成であるが、インクジェット記録後で、上記のようなウェット処理として、液を塗工して隠蔽層を設けるのではなく、ドライ処理として、予め用意した隠蔽層を熱転写により転写形成できる熱転写シート(例えば、特許第4139478号に記載する熱転写シート)を用いて、インクジェット記録による印字部を有する受容層の上に、隠蔽層を転写させることが実用しやすく、好ましい。
【0030】
(剥離層)
基材の受容層の形成面には、剥離を容易化するために、剥離層7を設けることができる。剥離層の材料としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂などである。離型剤を含んだ樹脂は、例えば、弗素系樹脂・シリコーン・各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などである。電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で重合(硬化)する官能基を有するモノマー・オリゴマーなどを含有させた樹脂である。剥離層は、上記受容層、接着層と同様に公知の方法で、塗布し、乾燥させて、膜厚は0.5〜5μmが好適であるが、これらに限定されることはない。
【0031】
(アンカー層)
本発明の転写箔における受容層と、剥離層との間に、アンカー層8を設けて、両者の接着性を向上させることができる。そのアンカー層としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物、石油系樹脂、アルキルチタネ−ト系化合物、ポリエチレンイミン系化合物、イソシアネ−ト系化合物、メラミン樹脂、澱粉、カゼイン、アラビアゴム、セルロ−ス誘導体、ワックス類などを使用することができる。
【0032】
上記の樹脂又はそのモノマー、オリゴマー、若しくはプレポリマー等の一種乃至複数を主成分とし、これに、必要ならば、例えば、各種の安定剤、充填剤、反応開始剤、硬化剤ないし架橋剤、などの添加剤を単独又は複数を任意に添加したり、主剤と硬化剤とを組み合わせて、1液硬化型、又は2液硬化型等のいずれのものでも使用したりすることができる。これらの樹脂を、適宜溶剤に溶解又は分散し、必要に応じて充分に混練して、コーティング剤組成物(インキ、塗布液)を調製し、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スプレイコート法、エアナイフコート法、キスコート法、リバースロールコート法等の公知のコーティング法で塗布し乾燥するか、乾燥又は乾燥した後のエージング処理によって反応させて、アンカー層を形成する。該アンカー層の厚さは、乾燥時0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μmである。但し、剥離層を構成する樹脂が、受容層との離型性が高ければ、このアンカー層を設ける必要はない。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
転写箔の基材2として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、剥離ニス45−3(昭和インク(株)製、アクリル系樹脂の剥離インキ商品名)を固形分10質量%となるように溶剤で希釈して、ロールコーティング法で、乾燥後の厚さが2μmになるように塗布し乾燥して、剥離層7を形成した。
【0034】
上記の剥離層の上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタンアクリレート樹脂(電離放射線硬化性樹脂)のそれぞれの固形分が1:1になるようにして、調整したインキ(DNPファインケミカル(株)製プライマー)により、ロールコーティング法で塗工し、80℃で乾燥させて、厚さが2μmになるようにアンカー層8を形成した。そのアンカー層の上に、下記の受容層塗工液で、グラビア印刷により、乾燥時の厚さが5μmの受容層3を形成した。
【0035】
<受容層塗工液>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ポリカチオン性フィックス剤(日東紡績社製;ダンフィックス505RE) 2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μm) 1部
ユウロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu) 1部
マンガン付活ケイ酸亜鉛蛍光体(Zn2SiO4:Mn) 1部
溶媒(水:IPA=3:1) 80部
但し、上記の各蛍光体は、ポリビニルアルコールからなるバインダー及び溶剤と混合して蛍光体ペーストを調製して、塗工液に混合したものである。
【0036】
市販されているエプソン製インクジェットプリンターを用いて、上記の受容層の上に、可変情報の個人情報を含んだテストパターンの印字を行なって、印字部5を形成した。そのインクジェット記録による印字部5を有する受容層3の上に、熱接着シート(DIC製;商品名 DAITAC LT6003W、2枚の剥離シートの間に、ポリエステル系感熱接着剤による接着層が設けられた熱接着シートである。)の片面の剥離シートを剥がして、アイロンで加熱及び加圧して、接着層4を転写して設け、実施例1の転写箔を作製した。尚、この接着層4の上には、上記と別の剥離シートが積層されている。
【0037】
(実施例2)
実施例1で作製した転写箔と同様に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材2の片面に、剥離ニス45−3(昭和インク(株)製、アクリル系樹脂の剥離インキ商品名)を固形分10質量%となるように溶剤で希釈して、ロールコーティング法で、乾燥後の厚さが2μmになるように塗布し乾燥して、剥離層7を形成した。上記の剥離層の上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタンアクリレート樹脂(電離放射線硬化性樹脂)のそれぞれの固形分が1:1になるようにして、調整したインキ(DNPファインケミカル(株)製プライマー)により、ロールコーティング法で塗工し、80℃で乾燥させて、厚さが2μmになるようにアンカー層8を形成した。
【0038】
上記アンカー層の上に、実施例1で使用した受容層塗工液で、グラビア印刷により、乾燥時の厚さが5μmの受容層3を形成した。その受容層の上に、市販されているエプソン製インクジェットプリンターを用いて、可変情報の個人情報を含んだテストパターンの印字を行なって、印字部5を形成した。そのインクジェット記録による印字部5を有する受容層3の上に、特許第4139478号に記載する実施例1の熱転写シートを用いて、アイロンで加熱及び加圧して、隠蔽層6(白色)を転写して形成した。その隠蔽層の上に、熱接着シート(DIC製;商品名 DAITAC LT6003W、2枚の剥離シートの間に、ポリエステル系感熱接着剤による接着層が設けられた熱接着シートである。)の片面の剥離シートを剥がして、アイロンで加熱及び加圧して、接着層4を転写して設け、実施例2の転写箔を作製した。尚、この接着層4の上には、上記と別の剥離シートが積層されている。
【0039】
上記で作製した各実施例1、2の転写箔で、表面の剥離シートを剥がして、露出した接着層と、Tシャツ(薄いクリーム色)の布地とを接するように重ねて、転写箔側から、温度180℃で、圧力(250g/cm2)と時間(15秒)を加え、冷めてから転写箔の基材を剥がしたところ、Tシャツの表面に鮮明なプリントを施すことが出来た。すなわち、特殊な装置を使用することなく、実用上の問題がなく、絵柄のデザイン性に優れたTシャツが容易に作製できた。
【0040】
さらに、得られたTシャツに、254nmの紫外線を照射すると、受容層に赤色の蛍光発光が認められ、また365nmの紫外線を照射すると、受容層に緑色の蛍光発光が認められ、偽造防止効果が非常に高いものであった。この偽造防止効果は、今までに無く、高度なセキュリティー性を有するものであった。実施例2の転写箔を使用して作製したTシャツは、転写されたTシャツの表面の地色の影響を全くうけることなく、より鮮明なプリントによる絵柄が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の転写箔は、上記のTシャツ等の布、衣類の被転写体に限らず、紙類を使用した帳票類、タグ等に、広く適用できるものであり、偽造防止の対策が必要である用途であれば、本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 転写箔
2 基材
3 受容層
4 接着層
5 印字部
6 隠蔽層
7 剥離層
8 アンカー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、インクジェットインキの受容層を設けた転写箔において、該受容層は紫外線照射により発光する発光材を2種類以上含有し、該発光材は夫々異なる波長の紫外線照射で発光し、該発光する色が夫々異なり、該受容層はインクジェット記録による印字部を有し、該受容層の上に、接着層が設けられたことを特徴とする転写箔。
【請求項2】
前記の受容層と接着層との間に、隠蔽層を設けたことを特徴とする請求項1に記載する転写箔。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−14094(P2013−14094A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149342(P2011−149342)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】