転写装置及びそれを用いた画像形成装置
【課題】装置の小型化を図りつつも、対向部材への画像の転写を防止して、良好な画像を得られる転写装置を提供する。
【解決手段】像担持体の像担持面21aと対向する位置に設けられ記録媒体Pと接触する接触面30aを有する対向部材30と、像担持面と接触面の間の転写ニップNに圧力を加える付勢手段45と、像担持面と接触面とを接離する接離手段40と、転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に像担持面に形成された画像Tを転写する転写手段を有する転写装置20において、画像は転写ニップに搬送される先の記録媒体Paと後の記録媒体Pbの間に形成される調整用パターンT1であり、接離手段は、調整用パターンが転写ニップNを通過する際に像担持面と接触面の間隔Xを広げる。
【解決手段】像担持体の像担持面21aと対向する位置に設けられ記録媒体Pと接触する接触面30aを有する対向部材30と、像担持面と接触面の間の転写ニップNに圧力を加える付勢手段45と、像担持面と接触面とを接離する接離手段40と、転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に像担持面に形成された画像Tを転写する転写手段を有する転写装置20において、画像は転写ニップに搬送される先の記録媒体Paと後の記録媒体Pbの間に形成される調整用パターンT1であり、接離手段は、調整用パターンが転写ニップNを通過する際に像担持面と接触面の間隔Xを広げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に転写部材が当接して形成される転写ニップで記録媒体に画像を転写する転写装置と、これを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付勢手段の付勢力によって像担持体に当接して転写ニップを形成することが可能な対向部材を像担持体に対して接離させる機構を備える画像形成装置において、記録媒体として厚紙を用いる場合、ショックジターと呼ばれる線状の濃度ムラを引き起こすことがある。この濃度ムラは、厚紙が転写ニップに進入する際に、像担持体に対する負荷を急激に高めて、像担持体の線速を瞬間的に大きく低下させることによって生じるものである。
【0003】
ショックジターの発生を抑えるものとしては、例えば特許文献1が挙げられる。同文献には、対向部材としての転写ローラが、円柱状のローラ部と、これと一体に回転するようにローラ部の両端面からそれぞれ突出する軸部材とを備え、それぞれの軸部材に回転カムを空転可能に設けている。そして、それら回転カムに、それぞれ回転カムを軸部材の周面上で空転せしめられる回転カムは所定の回転角度位置において凸部を形成し、像担持体としての感光体における軸線方向の端部に突き当てている。この突き当てにより、加圧手段によって感光体に向けて付勢されている転写ローラを付勢力に抗して感光体から遠ざける方向に強制移動させることで、感光体と転写ローラとの軸間距離を調整可能としている。そして記録媒体として厚紙が用いられる場合には、カムによる転写ローラの強制移動によって、軸間距離を広げて転写圧を低下させるか、あるいは転写ローラを感光体から離間させる。これにより、厚紙進入時に発生してしまう感光体に対する急激な負荷上昇を抑えている。
【0004】
特許文献1の構成では、軸間距離を広げているので、急激な負荷上昇を抑えられる反面、転写圧不足に起因する転写不良を引き起こすおそれがある。転写不良の発生を回避し得る画像形成装置としては、特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の画像形成装置は、記録媒体としての厚紙を転写ニップに進入させるのに先立って、回転カムの駆動によって転写ローラを感光体から離間させて、転写ローラと感光体との間に微小ギャップを形成することで、ショックジターの発生を抑えている。そして厚紙先端を前述の微小ギャップに進入させた直後にソレノイド動作を解除することで、転写ローラの強制移動を解除して転写ローラを加圧手段となるバネの付勢力に任せて感光体に向けて押圧する。これにより、転写処理中に十分な転写圧を記録媒体に与えることで転写不良を抑えている。
【0005】
複数の像担持体を有し、像担持体に形成された画像を中間転写体で重ね合わせ、中間転写体と対向配置された対向部材で記録媒体に一括転写する転写装置を備えた画像形成装置では、画像品質の安定化を目的として、所定のタイミングで調整用パターンを記録媒体に転写されない位置に所定の作像条件で形成し、検知することで像形成性能などの作像性能をテストする技術が一般的に知られている。例えば特許文献3では、紙間に調整用パターンを作像した場合には2次転写ニップを離間させる方式が提案されている。調整パターンが2次転写ニップを通過する際に対向部材を中間転写体から離間させ、かつ検知用センサのシャッタを開く、つまり対向部材の接離と検知用センサのシャッタ開閉を同期させる方式が特許文献4で提案されている。特許文献5には、調整パターンを2次転写体に転写しないために、2次転写ニップを通過する際に中間転写体と2次転写体を当接させた状態でトナーと同極性、つまり、記録媒体への転写時とは逆極性の電圧を印加することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の構成によると、記録媒体となる厚紙が突入するまで、転写ローラを像担持体から離間させているため、記録媒体の突入における像担持体の回転負荷を抑制することは期待できるが、転写ローラの離間を解除したときには、像担持体、記録媒体、転写ローラ間が加圧手段の付勢力によって、一瞬で接触して衝突するため、像担持体に回転負荷や振動が生じ、画像劣化の一要因となってしまう。
【0007】
特許文献3、4に記載のものは、対向部材(転写ローラ)の接離のタイミングは提案されているものの、離間量については考慮されていない。そのため、近年の高速化において特許文献3、4に記載のように紙間で2次転写ニップを離間させた場合、記録媒体が2次転写ニップに侵入した際に対向部材(転写ローラ)の当接が間に合わず、画像先端部が転写されない異常画像の発生や、対向部材(転写ローラ)の当接の衝撃による位置ズレなどが発生してしまう問題があった。
【0008】
対向部材(転写ローラ)を中間転写体(像担持体)に常時当接させてしまうと、紙間での調整用パターンは対向部材に転写されることとなり、対向部材にクリーニング機構を設ける必要が出てくるため、装置の大型化は避けられないばかりか、記録媒体、特に厚紙の場合に2次転写ニップに用紙進入時ならびに用紙排出時の衝撃による異常画像(画像乱れ)が発生してしまう問題があった。
【0009】
特許文献5に記載のものは、調整パターンの2次転写体への転写は軽減されるものの、依然として2次転写体にクリーニング機構は設ける必要があり、さらに、記録媒体への転写時に2次転写体を離間させていないことからも、記録媒体、特に厚紙の場合に2次転写部に用紙進入時ならびに用紙排出時の衝撃による異常画像(画像乱れ)が発生してしまう問題があった。
【0010】
本発明は、装置の小型化を図りつつも、対向部材への画像の転写を防止して、良好な画像を得られる転写装置及び画像形成装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、対向部材の衝撃、ならびに記録媒体進入時、排出時における急激な負荷変動を軽減し、「色ずれ」や「ドット位置ずれ」などの画像乱れによる画像品質の劣化を低減して良好な画像を得られる転写装置及び画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる転写装置は、像担持体の像担持面と対向する位置に設けられ記録媒体と接触する接触面を有する対向部材と、像担持面と接触面の間の転写ニップに圧力を加える付勢手段と、像担持面と接触面とを接離する接離手段と、転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に像担持面に形成された画像を転写する転写手段を有し、画像は、転写ニップに搬送される先の記録媒体と後の記録媒体の間に形成される調整用パターンであり、接離手段は、調整用パターンが転写ニップを通過する際に像担持面と接触面の間隔を広げることを特徴としている。
【0012】
本発明にかかる転写装置において、接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、カムは、カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、像担持面と接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、調整パターンが転写ニップを通過する際に、像担持面と接触面の間隔を最小間隔とする位置を前記カムが占めるように、カム駆動手段が制御されることを特徴としている。このため、像担持体の像担持面と対向部材の接触面の間隔を最も小さくすることで、記録媒体への印刷時に確実に対向部材で記録媒体を像担持面に当接させることができるとともに、対向部材当接時の振動による異常画像を防止することができる。
【0013】
本発明にかかる転写装置において、接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、カムは、カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、調整パターンが転写ニップを通過する際に、間隔が記録媒体の厚みに応じて変化するように、カム駆動手段が制御されることを特徴としている。このため、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、像担持体の像担持面と対向部材の接触面の間隔が記録媒体の厚みに応じて変化するので、対向部材への調整用パターンの転写をなくして記録媒体への裏写りを防止することができる。また、記録媒体への印刷時に確実に対向部材で記録媒体を像担持面に当接させることができるとともに、対向部材当接時の振動による異常画像を防止することができる。
【0014】
本発明にかかる転写装置において、像担持面と接触面の間隔は、転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、カムを所定の回転角度で停止させて、対向部材を付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで間隔を広げることを特徴としている。このため、像担持面と対向部材の接触面の間隔が記録媒体排出時に広げられるので、調整用パターンが対向部材に転写されることを防止することができる。
【0015】
本発明にかかる転写装置において、像担持面と接触面の間隔は、転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、カムを所定の回転角度で停止させて、間隔を狭めることを特徴としている。このため、対向部材の接触面と像担持体の像担持面との間隔が記録媒体進入前に狭められるので、記録媒体への転写不良を防止することができる。
本発明にかかる転写装置において、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、転写バイアスの付与を停止、すなわちオフするようにしてもよい。このような構成とすると、調整用パターンの転写を、より効果的になくして記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
本発明にかかる転写装置において、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与するようにしてもよい。このような構成とすると、調整用パターンの転写を、より効果的になくし記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
本発明にかかる転写装置において、逆極性のバイアスは、記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さくすると、すなわち、逆極性の転写バイアスが記録媒体に転写時の印加電圧より絶対値で小さくすることで、調整パターン通過時の空隙での放電による転写出力異常を防止することになる。
本発明にかかる転写装置において、転写バイアスの切替えを、カムの駆動と同期するように構成すると、転写バイアス切替えの遅延による、離間時の異常放電による転写出力異常、および当接時の記録媒体への転写バイアス不足による異常画像を防止することができる。
本発明にかかる画像形成装置は、上記何れかの特徴を有する転写装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接離手段は、調整用パターンが転写ニップを通過する際に像担持体の像担持面と接触面の間隔が広げられるので、対向部材の接触面への調整用パターンの転写をなくして記録媒体への裏写りを防止できるとともに、対向部材のクリーニング機構を省き、装置の小型化を図ることができる。
本発明によれば、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、転写バイアスの付与を停止、すなわちオフするようにしたので、調整用パターンの転写を、より効果的になくして記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る転写装置における2次転写ニップとその周囲構成の拡大模式図である。
【図3】2次転写ニップの周囲構成を示す拡大断面図である。
【図4】2次転写対向ローラのカムの外径形状を示す拡大図である。
【図5】カムのカム変位プロファイルを示す図である。
【図6】転写装置における記録媒体を進入させる直前の2次転写ニップの状態を示す拡大模式図である。
【図7】転写装置における厚紙を進入させる直前の2次転写ニップの状態を示す拡大模式図である。
【図8】転写装置における厚紙が2次転写ニップ進入直後の状態を示す拡大模式図である。
【図9】転写装置における厚紙が2次転写ニップを排出する直後を示す拡大模式図である。
【図10】(a)は中間転写体に作像された画像を2次転写部で先の記録媒体に転写している状態を示し、(b)は調整パターンが通過した後に、次の記録媒体の先端が2次転写ニップに侵入する際の状態を示す模式図である。
【図11】第1の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置に関するタイミングチャートである。
【図12】第2の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置に関するタイミングチャートである。
【図13】転写装置における2次転写ニップとその周囲構成の別な形態を示す拡大模式図である。
【図14】画像パターンの一形態を示す図である。
【図15】第3及び第4の実施形態における2次転写ニップの周囲構成を示す拡大断面図である。
【図16】第3の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置、2次転写バイアスに関するタイミングチャートである。
【図17】第4の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置、2次転写バイアスに関するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示す画像形成装置は、タンデム型のカラー複写機(以下、単に「複写機」という)の一例である。この複写機は、プリンタ部100と、給紙部200と、プリンタ部100の上に取り付けられたスキャナ部300と、スキャナ部300の上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。最初に複写機全体の構成と動作を説明し、次に本形態の特徴部分の構成と動作について説明する。
【0019】
プリンタ部100は、像担持体であり中間転写体でもある無端ベルト状の中間転写ベルト21を備えている。中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状になる姿勢で、複数の回転部材となる駆動ローラ22、従動ローラ23及び支持部材となる2次転写対向ローラ24に掛け回されており、駆動ローラ22の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト21の上方には、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kが、ベルト移動方向に沿って並ぶように配設されている。
【0020】
画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kは、ドラム状の像担持体となる感光体2C,M,2Y,2Kと、現像ユニット3C,3M,3Y,3Kと、感光体用のクリーニング装置4C,4M,4Y,4Kを有している。感光体2C,2M,2Y,2Kは、それぞれ中間転写ベルト21に当接してC,M,Y,K用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。現像ユニット3C,3M,3Y,3Kは、感光体2C,2M,2Y,2Kに形成された静電潜像をC,M,Y,Kのトナーによって現像するものである。クリーニング装置4C,4M,4Y,4Kは、1次転写ニップを通過した後の感光体2C,2M,2Y,2Kに付着している転写残トナーをクリーニングするものである。本プリンタでは、ベルト移動方向に沿って並べられた4つの画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kにより、タンデム画像形成部10が構成されている。
【0021】
プリンタ部100内において、タンデム画像形成部10の上方には、光書込ユニット15が配設されている。光書込ユニット15は、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体2C,2M,2Y,2Kの像担持面となる表面に対し、光走査による光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。各感光体の表面は、それぞれその光書込処理に先立って、画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kの一様の図示しない帯電手段によって一様帯電せしめられる。
【0022】
中間転写ベルト21等を具備する転写装置となる転写ユニット20は、中間転写ベルト21のループ内側に、1次転写ローラ25C,25M,25Y,25Kを有している。これら1次転写ローラは、C,M,Y,K用の1次転写ニップの裏側で中間転写ベルト21を感光体2C,2M,2Y,2Kに向けてそれぞれ押圧している。
【0023】
中間転写ベルト21の下方には、対向部材となる2次転写ローラ30が配設されている。2次転写ローラ30は、中間転写ベルト21の像担持面となるベルト表面21aと反対側となる内側で中間転写ベルト21を支持するとともに、中間転写ベルト21を介して2次転写ローラ30と対向配置された2次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所に、ベルト表面21a側から当接して2次転写ニップNを形成している。2次転写ニップNには、記録媒体Pが所定のタイミングで送り込まれる。そして、ベルト表面21aには、1次転写ニップで各色のトナー像が4色重ね合わせて転写される。4色重ね合わさったトナー像は、2次転写ニップNで記録媒体Pに一括で2次転写される。
【0024】
スキャナ部300は、コンタクトガラス301上に載置された原稿の画像情報を読取センサ302で読み取り、読み取った画像情報をプリンタ部100の制御手段600に送るものである。制御手段600は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の光書込ユニット15におけるレーザーダイオードやLED等の光源を制御して、C,M,Y,K用のレーザー書込光を出射して、感光体2C,2M,2Y,2Kを光走査する。この光走査により、各感光体の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経てC,M,Y,Kトナー像に現像される。
【0025】
給紙部200は、ペーパーバンク201内に多段に配設された給紙カセット202、給紙カセット202から記録媒体Pを送り出す給紙ローラ203、送り出された記録媒体Pを分離して給紙路204に導く分離ローラ205、プリンタ部100の給紙路99に記録媒体Pを搬送する搬送ローラ206等を備えている。
【0026】
給紙については、給紙部200以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差記録媒体レイ98、手差記録媒体レイ98上の記録媒体を手差し給紙路97に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ96も設けられている。プリンタ部100内において、手差し給紙路97は給紙路99に合流している。
【0027】
給紙路99の末端付近には、記録媒体供給手段となるレジストローラ対95が配設されている。レジストローラ対95は、給紙路99内を搬送されてくる記録媒体Pをローラ間に挟み込んだ後、所定のタイミングで2次転写ニップNに向けて送り込む。
【0028】
本実施形態に係る複写機において、カラー画像のコピーをとるには、ADF400の原稿台401上に原稿をセットする、又はADF400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス301上に原稿をセットしてADF400を閉じることで原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿がADF400にセットされている場合には、原稿がコンタクトガラス301上に搬送される。その後、スキャナ部300が駆動を開始し、第1走行体303及び第2走行体304が原稿面に沿った走行を開始する。そして、第1走行体303にて光源から発した光を原稿面で発射させるとともに、得られた反射光を折り返して第2走行体304に向ける。折り返し光は、第2走行体304のミラーで更に折り返された後、結像レンズ305を通して読取センサ302に入射される。これにより、原稿内容が読み取られる。
【0029】
プリンタ部100は、スキャナ部300から画像情報を受け取ると、画像情報に応じたサイズの記録媒体Pを給紙路99に給紙する。また、これに伴って、不図示の駆動モータで駆動ローラ22を回転駆動して中間転写ベルト21を図中時計回り方向に無端移動させる。同時に、画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kの感光体2C,2M,2Y,2Kの回転駆動を開始した後、各感光体に対する一様帯電処理、光書込処理、現像処理などを行う。これらの処理によって各感光体の表面上に形成されたC,M,Y,Kのトナー像は、C,M,Y,K用の1次転写ニップで順次重ね合わせて中間転写ベルト21上に1次転写されて、4色重ね合わせトナー像になる。
【0030】
給紙部200では、給紙ローラ203の1つが記録媒体サイズに応じて選択的に回転され、3つの給紙カセット202のうちの1つから記録媒体Pが送り出される。送り出された記録媒体Pは、分離ローラ205で1枚ずつ分離されてから給紙路206に導入された後、搬送ローラ206を経由してプリンタ部100内の給紙路99に送られる。また、手差記録媒体トレイ98を用いる場合には、トレイの給紙ローラが回転駆動して、トレイ上の記録媒体を分離ローラ96で分離しながら手差し給紙路97に送り込まれて給紙路99の末端付近に至る。給紙路99の末端付近では、記録媒体Pが先端をレジストローラ対95に突き当てて止まる。その後、中間転写ベルト21上の4色重ね合わせトナー像に同期し得るタイミングでレジストローラ対95が回転駆動すると、記録媒体Pは2次転写ニップN内に送り込まれてベルト上の4色重ね合わせトナー像に密着する。そして、転写圧や転写用電界となる2次転写バイアスなどの影響によって記録媒体P上に一括に2次転写される。
【0031】
2次転写ニップNで4色重ね合わせトナー像が2次転写された記録媒体Pは、用紙搬送ベルト70によってプリンタ部100内に配置された定着装置71内に送り込まれる。そして、定着装置71で加圧ローラ72と定着ベルト73との間の定着ニップに挟み込まれると、加圧や加熱処理によって4色重ね合わせトナー像が表面に定着せしめられる。このようにしてカラー画像が形成された記録媒体Pは、排出ローラ対74を経由して機外の排紙トレイ75上にスタックされる。
【0032】
記録媒体Pのもう一方の面(裏面)にも画像が形成される場合には、記録媒体Pは定着装置71から排出された後、切替爪76による進路切り換えによって記録媒体反転装置75に送られる。そして、上下反転された後、再びレジストローラ対95に戻されてから、2次転写ニップN及び定着装置71を再経由して画像定着が行われた後、排紙トレイ75上にスタックされる。
【0033】
2次転写ニップNを通過した後、4色のうちで1次転写工程が最も上流となるC用の1次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト21のベルト表面21aには、ベルトクリーニング装置26が当接している。このベルトクリーニング装置26は、ベルト表面21aに付着している転写残トナーをクリーニングする。
【0034】
図2は、実施形態に係る複写機のプリンタ部100における転写ユニット20における2次転写ニップNとその周囲構成の拡大模式図である。同図において、中間転写ベルト21のループ内側で自らの周面にベルトを部分的に掛け回している2次転写対向ローラ24は、変形自在な中間転写ベルト21を自らの周面でバックアップして一定の曲率に沿った形状に維持する役割を担っている。この意味で2次転写対向ローラ24はバックアップローラとして機能している。中間転写ベルト21における2次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写ローラ30がベルト表面21a側から当接して2次転写ニップNを形成している。
【0035】
2次転写ローラ30は、図示しない軸受を介して、ローラユニット保持体40に回転自在に保持されている。ローラユニット保持体40は、2次転写ローラ30の回転軸線と平行な姿勢をとるように配設された回動軸40aを中心にして回動可能に構成されている。ローラユニット保持体40が回動軸40aを中心にして図中反時計回り方向に回転すると、ローラユニット保持体40に保持されている2次転写ローラ30が中間転写ベルト21に押し当てられて2次転写ニップNが形成される。また、ローラユニット保持体40が回動軸40aを中心にして図中時計回り方向に回転すると、ローラユニット保持体40に保持されている2次転写ローラ30が中間転写ベルト21から離間する。本実施形態に係る転写ユニット20では、付勢手段となる付勢コイルバネ45によってローラユニット保持体40における回動軸40aとは反対側の端部40bが中間転写ベルト21に向けて常に付勢されている。付勢コイルバネ45により、ローラユニット保持体40に対して、回動軸40aを中心にして図中反時計回り方向に回転させる力を常に付与することで、2次転写ローラ30を中間転写ベルト21に向けて付勢している。
【0036】
2次転写ローラ30は、図示しないローラ駆動モータの回転駆動力が図示しないギヤ等の駆動伝達手段を介して伝達されることで、図中反時計回り方向に回転駆動される。これらローラ駆動モータや駆動伝達手段は、ローラユニット保持体40に保持されていて、2次転写ローラ30やローラユニット保持体40とともに回動するように構成されている。ローラユニット保持体40には、図13に示すようにクリーニングブレード39、固形潤滑剤41、潤滑剤押し当て器43等の2次転写クリーニング機構を設けることもできる。
【0037】
トナー像を担持する中間転写ベルト21のベルト表面21aに接触している2次転写ローラ30の表面30aは接触面をなし、ベルト表面21a上のトナーが付着する。この付着トナーをそのままにしておくと、2次転写ニップNで記録媒体Pの裏面に転移させていわゆる裏汚れを発生させてしまう。このため、複写機においては、クリーニングブレード39のエッジを2次転写ローラ30の表面30aに当接させることで、2次転写ローラ30の表面からトナーを機械的に除去可能としている。ただこのような構成では、クリーニングブレード39の当接により、2次転写ローラ30に対して回転を阻害する負荷をかけることになるので、2次転写ローラ30を中間転写ベルト21との連れ回りによって従動回転させることができなくなるため、2次転写ローラ30を上述したローラ駆動モータによって回転駆動するように構成するとよい。
【0038】
潤滑剤押し当て器43は、ステアリン酸亜鉛塊等からなる固形潤滑剤41を付勢コイルバネ42によって2次転写ローラ30の表面30aに押し当てることで、潤滑剤粉末を2次転写ローラ30の表面30aに塗布する。このように潤滑剤を塗布することで、クリーニングブレード39と2次転写ローラ30の表面30aとの当接による回転負荷上昇、ブレードエッジの巻き込みの発生を抑えている。固形潤滑剤41を2次転写ローラ30の表面30aに押し当てる代わりに、固形潤滑剤41から潤滑剤を掻き取りながら2次転写ローラ30の表面30aに塗布する回転塗布ブラシを設けてもよい。
【0039】
次に、転写ユニット20及び複写機の特徴的な構成について説明する。上記のような中間転写ベルト21とのベルト表面21aと2次転写ローラ30の表面30aとの間に形成される2次転写ニップNに記録媒体先端が突入する際や、2次転写ニップNから記録媒体後端が抜ける瞬間に、従来は中間転写ベルト21に衝撃が発生し、結果的に中間転写ベルト21の速度変動が発生してしまう。特に、最近は様々な種類の記録媒体Pに対応する紙種対応力を高めた画像形成装置が求められており、記録媒体Pが、300g/m2程度の坪量の大きい厚紙になると、その衝撃は大きなものとなり、ショックジターが大きな問題となっている。
(第1の実施形態)
図3は、転写ユニット20の2次転写ニップNの周囲構成を示す拡大断面図である。2次転写ローラ30は、記録部材搬送方向と直交する幅方向に延在するローラ部31と、これの軸線方向の両端面からそれぞれ突出して回転軸線方向に延在する第1軸部材32及び第2軸部材33と、後述する第1空転コロ34及び第2空転コロ35とを有している。ローラ部31は、円筒状の中空芯金31aと、これの周面に固定された弾性体からなる弾性層31bと、弾性層31bの周面に固定された表面層31cとを備えている。
【0040】
中空芯金31aを構成する金属としては、ステンレス、アルミニウムなどを例示することができるが、これらの材料に限定されるものではない。弾性層31bについては、JIS−A硬度で70[°]以下とすることが望ましい。しかし、ローラ部31には、クリーニングブレード39を当接させていることから、弾性層31bが柔らかすぎると様々な不具合を引き起こしてしまう。よって、弾性層31bについては、JIS−A硬度で40[°]以上にすることが望ましい。ある程度の導電性を発揮するエピクロルヒドリンゴムにより、JIS−A硬度で50[°]程度の弾性層31bを形成してもよい。導電性を発揮するゴム材料として、前述した導電性のエピクロルヒドリンゴムの代わりに、カーボンを分散せしめたEPDMやSiゴム、イオン導電機能を有するNBR、ウレタンゴムなどを使用してもよい。ゴム材料の多くがトナーに対して良好な化学的親和性を発揮したり、比較的大きな摩擦係数を発揮したりすることから、ゴム材からなる弾性層31bの表面は、表面層31cで被覆されている。これにより、ローラ部31の表面に対するトナー付着を抑えるとともに、クリーニングブレード39との摺擦負荷を低減している。表面層31cの材料としては、低摩擦係数で且つ良好なトナー離型性を発揮するフッ素樹脂系樹脂にカーボンやイオン導電剤などの抵抗調整材を含有させたものが好適である。
【0041】
2次転写ローラ30は、中間転写ベルト21のベルト表面21aと接触して回転する際に、ベルト表面21aと微小な線速差をもつことがある。この線速差によってベルトをスリップさせないように、表面層31cとしては、摩擦係数を0.3以下に調整している。中間転写ベルト21については、各色の画像を色ズレなく重ねて転写する狙いから、一定速度で駆動することが求められるため、2次転写ローラ30の表面層31cの表面摩擦抵抗を低くすることは重要である。このような構成の2次転写ローラ30は、2次転写対向ローラ24に掛け回されている中間転写ベルト21に向けて付勢コイルバネ45で付勢されている(図2参照)。
【0042】
中間転写ベルト21を掛け回している2次転写対向ローラ24は、円柱状の本体部であるローラ部24bと、ローラ部24bの回転中心箇所に対して回転軸線方向に貫通しつつ、ローラ部24bを自らの表面上で空転させる貫通軸部材24aとを有している。貫通軸部材24aは金属部材からなり、その周面上でローラ部24bを回転自在に支持して空転可能としている。本体部としてのローラ部24bは、ドラム状の中空芯金24cと、これの周面上に固定された弾性体からなる弾性層24dと、中空芯金24cの軸線方向両端にそれぞれ圧入された玉軸受24eとを有している。このため、玉軸受24eが中空芯金24cを支えながら、中空芯金24cとともに貫通軸部材24a上で回転する。弾性層24dは、中空芯金24cの外周面に圧入されている。
【0043】
貫通軸部材24aは、中間転写ベルト21を張架する転写ユニット20の第1側板28に固定された第1軸受52と、第2側板29に固定された第2玉軸受53によって回転自在に支持されている。但し、プリントジョブ時における殆どの時間、貫通軸部材24aは回転駆動されずに停止している。貫通軸部材24aは、中間転写ベルト21の無端移動に伴って連れ回ろうとするローラ部24bを、自らの周面上で自在に空転させる。
【0044】
中空芯金24cの周面上に固定された弾性層24dは、7.5[LogΩ]以上の抵抗を発揮するように、イオン導電剤の添加によって抵抗値が調整された導電性ゴム材料から構成されている。弾性層24dの電気抵抗を所定の範囲に調整しているのは、A5サイズなどの、ローラ軸線方向のサイズが比較的小さな記録媒体を使用する際に、2次転写ニップN内において、記録媒体Pの介在なしにベルト表面21aとローラ表面とが直接接触している箇所に転写電流を集中させてしまうのを防止する狙いからである。弾性層24dの電気抵抗を、記録媒体Pの抵抗よりも大きな値にすることで、そのような転写電流の集中を抑えることは可能になる。
【0045】
弾性層24dを構成する導電性ゴム材料としては、Asker−C硬度で40[°]程度の弾性を発揮するように、発泡ゴムを用いている。このような発泡ゴムで弾性層24dを構成することで、2次転写ニップN内で弾性層24dを厚み方向に柔軟に変形させて、記録媒体搬送方向にある程度の広さを有する2次転写ニップNを形成することができる。弾性層24dは、端部の外径よりも中央部の外径が大きいタイコ形状にしている。すなわち、2次転写対向ローラ24は、その中央部24Aよりその端部24B、24Cを小さい外径としたタイコ形状に形成されている。このようなタイコ形状のローラとすることにより、付勢コイルバネ45(図2参照)によって、2次転写ローラ30が中間転写ベルト21に向けて付勢されて2次転写ニップNを形成する際に、撓みが発生して中央部24Aの圧が抜けるのを防止することが可能となる。
【0046】
なお、本複写機では、図2で既に述べたように、2次転写ローラ30にクリーニングブレード39を当接させる都合上、2次転写ローラ30のローラ部の材料として、弾性に富む材料を使用することが困難である。そこで、2次転写ローラ30の代わりに、2次転写対向ローラ24のローラ部24bを弾性変形させるようにしている。
【0047】
2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aにおいて、その長手方向の全領域のうち、ローラ部24bの中に位置していない両端部領域には、それぞれ2次転写ローラ30に突き当てるための突当部材であり、ここでは接離手段の一部を構成する一対のカム50,51が、貫通軸部材24aと一体的に回転させるように固定されている。すなわち、貫通軸部材24aの長手方向の一端部領域には、第1カム50を固定している。カム50には、カム部50Aと、真円形のコロ部50Bとが軸線方向に並んで一体形成されている。カム50は、コロ部50Bに貫通させたネジ80を貫通軸部材24aに螺合させることで貫通軸部材24aに固定されている。
カム51は、カム部51Aと、真円形のコロ部51Bとが軸線方向に並んで一体形成されていて、カム50と同様の構成で、貫通軸部材24aの長手方向の他端部領域に固定している。貫通軸部材24aの軸線方向におけるカム51よりも外側の領域には、駆動受入プーリ54が固定されている。駆動受入プーリ54の更に外側には、被検知円盤59が固定されている。
【0048】
転写ユニット20の第2側板29には、カム50,51を正転方向及び逆転方向に回転駆動するカム駆動手段となるカム駆動モータ58が固定されて配置されている。カム駆動モータ58は、その出力軸上に設けられたモータプーリ57を回転させ、タイミングベルト56を介して貫通軸部材24aに固定された駆動受入プーリ54に駆動力を伝達する。このような構成にすると、カム駆動モータ58を作動することにより、貫通軸部材24aを回転させることが可能である。この際、貫通軸部材24aを回転させても、ローラ部24bについては貫通軸部材24a上で自在に空転させることが可能であるので、中間転写ベルト21によるローラ部24bの連れ回りを阻害することはない。また、カム駆動モータ58としては、ステッピングモータを用いることで、エンコーダ等の回転角検知手段を設けることなく、モータ回転角を自由に設定可能にしている。無論回転角検知手段を設けてカム駆動モータ58の回転角を検知するようにしてもよい。
【0049】
カム50とカム51は、貫通軸部材24aが所定の回転角度で回転を停止したときに、それぞれのカム部50A,51Aを2次転写ローラ30に突き当てて、2次転写ローラ30をローラユニット保持体40の付勢コイルバネ45の付勢力に抗して押し返すように、カム部50A,51Aの外周面50C,51Cが形成されている。つまり、カム50,51の回転位置を制御して、2次転写ローラ30を2次転写対向ローラ24(ひいては中間転写ベルト21)に対して近接する方向に移動させることで、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整する。2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整することで、2次転写ニップNにおける2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト21のベルト表面21aとの隙間Xを調整することができる。
【0050】
本形態では、少なくともカム50,カム51、カム駆動モータ58により、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整する、すなわち、2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト24のベルト表面21aとを接離する接離手段500が構成されている。回転可能な支持部材としての2次転写対向ローラ24は、その円柱状のローラ部24bに対して貫通せしめた貫通軸部材24a上で、ローラ部24bを自在に空転させる。貫通軸部材24aが回転すると、貫通軸部材24aの軸線方向の両端部にそれぞれ固定されたカム50,51が一体となって回転するので、貫通軸部材24aに駆動を伝達するための駆動伝達機構を軸線方向の一端側に設けるだけで、両端側のカム50,51をそれぞれ回転させることができる。
【0051】
本複写機では、2次転写ローラ30の中空芯金31aを接地している一方で、2次転写対向ローラ24の中空芯金24cに対してトナーと同極性の2次転写バイアスを印加する。これにより、2次転写ニップN内において、トナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ30側に向けて静電移動させる2次転写電界を両ローラ間に形成している。すなわち、2次転写対向ローラ30の金属製の貫通軸部材24aを回転自在に受けている第1軸受52は、導電性のすべり軸受から構成されている。この導電性の第1軸受52には、2次転写バイアスを出力する転写手段となる高圧電源61が接続されている。高圧電源61から出力される2次転写バイアスは、導電性の第1軸受52を介して2次転写対向ローラ30に供給される。そして、2次転写対向ローラ30内では、金属製の貫通軸部材24aと、金属製の玉軸受24eと、金属製の中空芯金24cと、導電性の弾性層24dとを順に伝わっていく。
【0052】
貫通軸部材24aの一端に固定された被検知円盤59は、貫通軸部材24aの回転方向における所定の位置において軸線方向に立ち上がる被検部59aを有している。一方、転写ユニット20の第2側板29に固定されたセンサブラケット501には、検知手段となる光学センサ60が固定されている。貫通軸部材24aが回転する過程において、貫通軸部材24aが所定の回転角度範囲に位置すると、被検知円盤59の被検部59aが、光学センサ60の発光素子と受光素子との間に入り込んで両者間の光路を遮断する。光学センサ60の受光素子は、発光素子からの光を受光すると受光信号を制御手段600に送信する。
【0053】
制御手段600は、周知のコンピュータで構成されていて、ここでは特に光学センサ70とカム駆動モータ58が接続されている。制御手段600は、光学センサ60の受光素子からの受光信号が途絶えたタイミングや、そのタイミングからのカム駆動モータ58の駆動量を算出してカム駆動モータ58を作動するとともに、算出した駆動量に基づいて、貫通軸部材24aに固定されたカム50,51のカム部50a,51aの回転角度位置を検知して、カム50,51を予め定められた位置で停止させる機能を備えている。予め定められた位置については図4以降で説明する。
【0054】
カム50,51は、所定の回転角度で2次転写ローラ30に突き当たって、2次転写ローラ30を付勢コイルバネ45の付勢力に抗して2次転写対向ローラ24から遠ざける方向に押し返す(以下、この押し返しを「押し下げ」と記す)。このときの押し返し量(以下、「押し下げ量」と記す)は、カム50,51の回転角度位置によって決まる。このカム50,51による2次転写ローラ30の押し下げ量が大きくなるほど、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lは大きくなる。
【0055】
2次転写ローラ30において、ローラ部31と一体になって回転する第1軸部材32には、第1空転コロ34が空転可能に設けられている。第1空転コロ34は、外径がローラ部31よりも少し大きなドーナッツ円盤状の形状をなしている。そして、それ自体が玉軸受としての機能を有していて、第1軸部材32の周面上で空転することができる。2次転写ローラ30の第2軸部材33には、第1空転コロ34と同様の構成の第2空転コロ35が空転可能に設けられている。
【0056】
2次転写対向ローラ24において、貫通軸部材24aに固定されたカム50,51は、所定の回転角度位置で、空転コロ34,35に突き当たるようにカム部50A,51Aの外周面50C,51Cが形成されている。具体的には、貫通軸部材24aの一端側に固定された第1カム50のカム部50Aは、2次転写ローラ24の第1空転コロ34に突き当たる。このとき同時に、貫通軸部材24aの他端側に固定された第2カム51のカム部51Aが、2次転写ローラ24の第2空転コロ35に突き当たる。カム50,51にそれぞれ突き当てられた空転コロ34,35は、その突き当てに伴って回転を阻止されるが、それによって2次転写ローラ30の回転が妨げられることはない。空転コロ34,35が回転を停止しても、空転コロが玉軸受になっているので、2次転写ローラ30の軸部材32,33は、空転コロ34,35から独立して自在に回転することができるからである。カムのカム部50A,51Aによる突き当てに伴って空転コロ34,35の回転を停止させることで、両者の摺擦の発生を回避するとともに、摺擦によるベルト駆動モータや2次転写ローラ30の駆動モータのトルク上昇の発生を回避することもできる。
【0057】
図4〜図11を用いて、カム50,51の特徴と動作について説明する。
図4は、2次転写対向ローラ24のカム50,51の外径形状を示し、図5はカム50,51のカム変位プロファイルを示す。カム50,51は、2段の変位をもった形状で構成することにより、カムの回転角度によって、カム位置A、B,C,Dと4段階の変位位置に設定することが可能とされている。
【0058】
カム位置Aとカム位置Cは、外径は同外径に設定し、カム位置Bは、変位量δ=1mm(カム位置A、Cよりも1mm外径が大きく設定)、カム位置Dは変位量δ=0.7mm(カム位置A、Cよりも0.7mm外径が大きく設定)している。
【0059】
カム位置Bおよびカム位置Dが2次転写ローラ軸上の空転コロ34,35と接触することで、2次転写ローラを押下げ、2次転写ローラ24の表面24aと2次転写対向ローラ30の表面30aとの表面距離を変更できるように構成した。カム位置Aおよびカム位置Cでは、2次転写ローラを押下げ動作を行わないようにカム外径を設定している。すなわち、カム部50A、51Aは、その外周面50C、51Cのカム位置Bとカム位置Dにおいてカム部50a,51aとカム部50b,51bが形成されている。
【0060】
カム50,51の変位プロファイルは、図5に示すように、それぞれ対称になるように構成している。具体的には、カム位置A中心とカム位置B中心への変位プロファイルとカム位置B中心からカム位置C中心への変位プロファイルを同じにすることで、カム位置B中心からカム50,51をどちらの方向に回転させても、同じように変位するように構成している。同様に、カム位置C中心とカム位置D中心への変位プロファイルとカム位置D中心とカム位置Aへの変位プロファイルを同じように変位するような形状にしている。
【0061】
図6は、記録媒体として普通紙P1を進入させる直前の2次転写ニップNの状態を示す拡大模式図である。本複写機において、普通紙P1を2次転写ニップNに進入させる際には、図6に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、制御手段600によって2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Cが下向きになるような位置)で、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aの回転を停止させるように、カム駆動モータ58の動作を制御する。つまり、普通紙P1を使用するときには、カム50,51による2次転写ローラ30の押し下げを実施しない。厚みの比較的薄い普通紙P1では、2次転写ローラ30の押し下げを実施しなくても、2次転写ニップNへの進入時の中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動が生じないからである。
【0062】
図7〜図9は、記録媒体として厚紙P2を通紙中の2次転写ニップNの状態を示す拡大模式図である。図7は厚紙P2を進入させる直前の2次転写ニップNの状態、図8は厚紙P2が2次転写ニップNへ進入直後の状態、図9は厚紙P2が2次転写ニップNを通過して排出された直後の状態をそれぞれ示す拡大模式図である。
【0063】
本複写機において、厚紙P2を2次転写ニップNに進入させる際には、図7に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てる位置(カム位置B)で、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aの回転を停止させるべく、制御手段600でカム駆動モータ58の動作を制御する。つまり、厚紙P2を使用するときには、カム50,51よる2次転写ローラ30の押し下げを実施し、2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面隙間が間隔Xになるように設定する。
【0064】
このように、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24の軸間距離、すなわち、2次転写ローラ30の表面30aとベルト表面21aの隙間Xを形成した状態にすることで、厚みの大きい厚紙P2が進入しても、2次転写ニップNへの進入時の中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動が生じ難くなる。
【0065】
しかし、2次転写ローラ30をカム50,51で押下げた状態で2次転写ニップNに記録媒体を通紙させると、負荷変動の発生が少なくなり、ショックジターの発生を抑えられるが、転写に十分なニップ圧が得られず、トナー画像の転写性が低下する。特に、表面の平滑性が悪い記録媒体は顕著に転写率低下がみられた。したがって、本発明では、記録媒体が2次転写ニップNに進入直後は、図8に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置になるように、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aを回転させるべく、制御手段600でカム駆動モータ58の作動を制御して時計周りにカム50,51を回転し、カム位置Cが下向きになるような位置で停止させる。この回転動作は、記録媒体の2次転写ニップNへの進入直後に作動させ、トナー画像が2次転写ニップNに来るまでに完了する必要がある。
【0066】
画像転写中は、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Cが下向きになるような位置)に保ち続ける。つまり、カム駆動モータ8の作動は停止状態とする。図9に示すように、中間転写ベルト21のベルト表面21a上の画像を転写終了後、記録媒体(厚紙P2)の後端が2次転写ニップNを抜けるまでの間に、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、逆転動作させ(本実施例では反時計回りに回転させ)るべく、制御手段600でカム駆動モータ58を作動し、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てる位置(カム位置B)になるようで停止させる。
【0067】
これは、厚みの大きい厚紙P2では、2次転写ニップNからの排出時も中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動を発生させてしまうため、用紙先端突入時と同様に2次転写ローラ30を押下げることで、このような不具合を防止することができる。
【0068】
続いて、次の記録媒体の先端が2次転写ニップNに進入までは、2次転写ローラ30を押下げた状態になるように、カムを(カム位置Bが下向きになるように)停止させるべく、カム駆動モータ58は停止状態とする。このことで、1枚目(先)と同様に、2枚目(後)の記録媒体が2次転写ニップNへの突入時に発生する、中間転写ベルト21や2次転写ローラ30への負荷変動を防止できる。
【0069】
2枚目(後)の用紙先端のニップ突入後は、一枚目(先)の用紙先端突入後の動作とは、逆転方向に(本実施例では反時計回りに)カム50,51を回転させるべくカム駆動モータ58の作動を制御手段600で制御し、先端白抜け幅領域内で、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Aが下向きになるような位置)まで回転動作させる。
【0070】
図4,図5に示すように、カム50,51の変位プロファイルを対称にすることで、1枚目(先)の通紙時と2枚目(後)の通紙時のカム50,51の移動位置を変えることにより、カム50,51の駆動部およびカム表面の磨耗等の耐久寿命の向上を図っている。
【0071】
これは、変位プロファイルが対称でないと、例えば図4のaとbあるいはcとdが非対称の場合、aかbあるいはcかdのどちらかの傾斜で正逆転を繰り返し使用することになり、寿命としては本発明の半分になってしまう。また、記録媒体の坪量によってはシート先端が突入してしばらくしてから大きなベルト速度変動が見られる場合もある。例えば、図4,図5のカム位置B(変位量δ:1mm)で坪量300[g/m^2]の記録媒体を2次転写ニップNに通紙した場合、紙突入時から排紙時まで中間転写ベルト21の速度変動がないのに対して、坪量160[g/m^2]では、紙突入時及び排出時のベルト速度変動はないが、押し下げを解除したときに速度変動が起こる。これは、2次転写ローラ30を押下げていたカム50,51を回転して2次転写ローラ30の押下げを解除した時に、2次転写ローラ30が中間転写ベルト21を介して2次転写対向ローラ24と接触する振動で、中間転写ベルト21の速度変動を引き起こしているためである。
【0072】
そこで、2次転写ローラ30の押し下げ量を少なくしたカム位置D(変位量δ:0.7mm)として押し下げ解除時の振動を抑えることとしたが、坪量160[g/m^2]では中間転写ベルト21の速度変動がないのに対し、坪量300[g/m^2]では押し下げ量が少ないために、紙突入時に速度変動が発生し、許容レベルではあるが、画像乱れが発生していた。
【0073】
これより、記録媒体の厚みによって押し下げ量を変えることが好ましく、本複写機では、図3に示すように、2次転写ニップNに供給される記録媒体の厚み情報を取得する厚み情報取得手段700を設けている。厚み情報取得手段700としては、給紙路99内を搬送される用紙の厚みを実際に検知する厚み検知センサを用いてもよいし、操作者からの厚み情報のデータ入力を受け付けるデータ入力手段を用いてもよい。また、厚み検知センサとしては、厚み方向の光透過率を検知する光学センサや、搬送ローラ対に用紙を挟み込んだときのローラ移動量を検知するセンサなどを例示することができる。
【0074】
そして、厚み情報取得手段700による取得結果に応じて、2次転写ローラ30の押し下げ量を調整するように、制御手段600を構成している。具体的には、制御手段600におけるROM等のデータ記憶手段に、記録媒体の厚み情報と、それに対応する貫通軸部材24aの回転停止位置(押し下げ量と同意)との関係を示すデータテーブルを記憶させている。そして、記録媒体の厚みの取得結果に対応する回転停止位置をデータテーブルから特定し、その回転停止位置まで貫通軸部材24aを回転させるべく、カム駆動モータ58を作動することで、多段のカム50,51の停止位置を決定してから、記録媒体を2次転写ニップNに進入させる処理を実行するように、制御手段600を構成している。これにより、記録媒体の厚みに適した2次転写押し下げ量を設定(カム位置を設定)することにより、紙先端進入時のショックおよび押下げ解除時のショックとの両方を抑えることができる。
【0075】
なお、貫通軸部材24aの回転停止位置については、上述したように、光学センサ60が被検知円盤59の被検部59aを検知したタイミングや、タイミングからのカム駆動モータ58であるステッピングモータの駆動量に基づいて、把握するように制御手段600を構成している。
【0076】
本形態では、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24に巻きかけられた中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を調節するカム50,51が2次転写対向ローラ24側に配置した場合を示したが、2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を他の方法で調節することも、もちろん可能で、例えばローラユニット保持体40に押下げ部材を設け、カム50,51により2次転写ローラ30とベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を調節するような構成としてもよい。
【0077】
次に記録媒体とカム位置、および調整用パターンの関係について説明する。なお、調整用パターンとしては、例えば濃度調整用、位置ズレ調整用、ブレード捲れ防止用のパターンなどがあり、紙間に作像されるパターンであれば、特に限定されるものではない。
【0078】
図10は複数枚の記録媒体を連続して通紙したときの紙間における2次転写の位置と中間転写ベルト21上の画像位置を模式的に表したものである。図10(a)は中間転写ベルト21に作像された画像Tを2次転写ニップNで先の記録媒体Paに転写している状態である。このとき次の画像が来る前、つまり紙間に調整用パターンT1が中間転写ベルト21のベルト表面21aに作像されている。そして、現在転写中の記録媒体が排出される際に上述したカム50,51が回転して2次転写ローラ30とベルト表面21aとの表面距離が広げられる。
【0079】
次に図10(b)に示すように、調整パターンT1が通過した後に、後の記録媒体Pbの先端が2次転写ニップNに侵入する際に、再びカム50,51を回転させて当接させている。このときの記録媒体Pb(坪量300[g/m^2])、画像、カム位置のタイミングチャートを図11に示す。
【0080】
本形態では、紙間で調整パターンT1を作像する場合、変位量δが少ないカム位置D(変位量δ:0.7mm)となるよう貫通軸部材24aの回転をカム駆動モータ58の作動を制御手段600で制御することで、コントロールしている。まず、図11において、カム50,51は位置Aで2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aと当接(接触)しており、記録媒体が進入するのに先立ってカム50,51が回転し、坪量300[g/m^2]用の離間位置である位置Bへと移動し、2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aを離間する。次に記録媒体が進入した後にカム50,51は再び回転して位置Cへ移動し、2次転写ローラ30とベルト表面21aと当接(接触)させ、記録媒体に画像を転写する。そして、用紙排出に先立ってカム50,51が回転し、2次転写ローラ30と転写ベルト表面21aを離間するが、本来は位置Bに向かって移動するところ、紙間で調整パターンが作像されているため、変位量δの少ない位置Dへ移動して離間する。離間状態で調整パターンが2次転写ニップNを過ぎ、次の記録媒体の先端が進入するのに先立って、再びカム50,51は回転して位置Aへ移動して当接し、記録媒体に画像を転写する。つまり、本実施形態において、カム50,51は、カム駆動モータ58が制御手段600で制御されることで、位置A→位置B→位置C→位置Dの順番で回転変異する。
【0081】
上記構成により、紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、押し下げ機構となる接離手段500を用いていることで、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れを防止することもできる。
(第2の実施形態)
本形態は、第1の実施形態の構成に対して、紙間で調整パターンを作像する場合でも、記録媒体の厚みに応じた離間量としたものであり、装置構成は第1の実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略し、図12を用いて記録媒体、画像、カム位置のタイミングについてのみ説明する。本形態では、制御手段600によるカム駆動モータ58の作動を制御することによるカム50,51の回転制御が、第1の実施形態のように位置A→位置B→位置C→位置Dではなく、位置A→位置B→位置C→位置Bとされている。
【0082】
図12は記録媒体(坪量300[g/m^2])、画像、カム位置のタイミングチャートを示す。まず、カム50,51は位置Aで2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aと当接(接触)しており、記録媒体が進入するのに先立ってカム50,51が回転し、坪量300[g/m^2]用の離間位置である位置Bへと移動し、2次転写ローラ30とベルト表面21aを離間する。次に記録媒体が進入した後にカム50,51は再び回転し位置Cへ移動し2次転写ローラ30とベルト表面21aとを当接(接触)させ、記録媒体に画像を転写する。そして、用紙排出に先立ってカム50,51が回転し2次転写ローラ30とベルト表面21aを離間する。紙間では調整パターンが作像されているため、第1の実施形態では変位量δの小さい位置Dへ移動させたが、本形態では、紙厚情報どおりの位置Bへ移動して離間する。離間状態で調整パターンが2次転写ニップNを過ぎ、後続の用紙先端が進入するのに先立って、再びカムは回転して位置Aへ移動して当接(接触)し、記録媒体に画像を転写する。
【0083】
このような構成により、第1の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構となる接離手段500を紙厚に応じた変位量としているため、記録媒体の先端が進入する際や、記録媒体の後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(第3の実施形態)
本形態は、第2の実施形態の構成に対し、紙間で調整パターンを作像する際の2次転写バイアスをオフしたものである。装置構成は第1の実施形態と略同様であるため違う点を説明し、ここでは用紙とカム位置、および2次転写バイアスの関係について説明する。
【0084】
第3の実施形態において、2次転写バイアスは画像部では定電流制御を行い、2次転写対向ローラ30にトナー(本実施例ではマイナス極性)と同極性のバイアスを印加して転写する斥力転写方式を用いる。また、非画像部及びカム回転時の2次転写バイアスは定電圧制御を行っている。このような2次転写バイアスの制御は、図15に示すように、高圧電源61と制御手段600とを信号線で接続して高圧電源61を制御手段600の制御下におくことで実施する。
【0085】
図16は用紙として厚紙P2を2枚通紙したときの用紙、画像、カム位置、2次転写バイアスのタイミングチャートである。本形態では、2次転写バイアスは画像部では定電流制御を行い、2次転写対向ローラ30にトナー(本実施例ではマイナス極性)と同極性のバイアスを印加して転写する斥力転写方式を用いている。また、非画像部及びカム回転時の2次転写バイアスは定電圧制御を行っている。
【0086】
本形態において、1枚目の印刷が開始されると、2次転写ローラ30は中間転写ベルト21に当接する。このときのカム50,51は、本形態では位置Aとなる。このときに非画像部の2次転写バイアスが印加される(本実施例では+500V)。次に厚紙P2が2次転写ニップNに近づくと、カム50,51は位置B(変位量δ:1mm)へと移動を開始する。2次転写バイアスはカム50,51の回転と同期して、カム回転時のバイアスへと切り替わる(本実施例では+200V)。カム50,51が位置Bに到達したときは、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は離間している。この離間状態で用紙:厚紙P2が搬送され、2次転写ニップNに到達、つまり紙先端が進入したと同時にカム50,51が正転動作(本実施例では時計回りに回転)を開始する。
【0087】
次に画像先端が2次転写ニップNへ到達したときカム50,51は位置Cへ移動して停止し、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は接触している状態になり、2次転写バイアスは定電流制御へと切り替わり、画像部電流(本実施例では−30μA。印加電圧:−1000V)となる。
【0088】
次に2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が接触状態で画像部転写電流を印加して印刷を行い、画像後端が2次転写ニップNへ到達したときに、カム50,51は位置Bへの逆転動作(本実施例では反時計回りに回転)を開始し、離間動作を始める。この逆転動作の開始に同期して2次転写バイアスは定電流制御である画像部バイアスから定電圧制御のカム回転時バイアスへと切り替わるのだが、この紙間では調整パターンが作像されるため、2次転写バイアスを0、つまりオフしている。このとき、2次転写印加電圧は、画像部で−1000Vに対して、調整用パターン通過時は0Vである。つまり、画像部より調整用パターン通過時の電圧は絶対値で小さいこととなる。そして、用紙後端が2次転写ニップNへ到達したときにカム50,51は位置Bへ移動して停止する。このとき、通常ではカムの動作停止と同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアスから非画像部バイアスへと切り替わるのだが、紙間で調整パターンを作像するため、カム回転時と同様に2次転写バイアスは0Vとする。つまり紙間で作像された調整パターンは、2次転写バイアスがオフで且つ、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が離間した状態で通過することとなる。
【0089】
続いて2枚目の用紙が2次転写ニップNへ搬送され、用紙先端が同ニップへ到達したときにカム50,51は1枚目とは反対方向(本実施例では逆転動作:反時計回りに回転)へと回転し、この回転開始に同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアスへと切り替わるが、調整パターンを作像した紙間であるため、2次転写バイアスは0Vのままである。以降、1枚目と同様にカム50,51の回転による2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24の接離と、カム回転に同期した2次転写バイアスの切替えを行いながら2枚目を印刷し、最終用紙を印刷した後、カム50,51は位置Cへ移動して停止する。このとき非画像部バイアスはカム停止と同期してオフにして印刷を終了する。
【0090】
このような第3の実施形態の構成によると、第1の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構を紙厚P2に応じた変位量としていることから、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態の構成に対して、紙間で調整パターンが作像される場合は、用紙転写時と逆極性のバイアスを印加するようにした。このバイアス制御は、高圧電源61を制御する制御手段600によって行われる。装置構成および、2次転写バイアスの印加タイミングは第3の実施形態と同様であるため割愛し、ここでは調整用パターンが紙間で作像されたときの2次転写バイアスについて図17を用いて説明する。
【0091】
図17は第3の実施形態に用紙として厚紙P2を2枚通紙したときの用紙、画像、カム位置、2次転写バイアスのタイミングチャートである。本形態でも1枚目の画像印刷が終わり、1枚目と2枚目の紙間で調整用パターンが作像される。2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が中間転写ベルト21を介して接触状態で画像部転写電流(本実施例では−30μA。印加電圧:−1000V)を印加して1枚目の印刷を行い、画像後端が2次転写ニップNへ到達したときに、カム50,51は位置Bへの逆転動作(本実施例では反時計回りに回転)を開始し、離間動作をはじめる。この逆転動作の開始に同期して2次転写バイアスは定電流制御である画像部バイアスから定電圧制御のカム回転時バイアスへと切り替わる。本形態ではカム回転時から用紙転写時と逆極性のバイアスを印加する方式としており、本形態でのカム回転時バイアスは+200Vである。
【0092】
このとき、2次転写印加電圧は、画像部で−1000Vに対して、カム回転時バイアスは−200Vである。つまり、画像部よりカム回転時の電圧は絶対値で小さいこととなる。そして、用紙後端が2次転写ニップNへ到達したときにカム50,51は位置Bへ移動して停止する。このとき、これらカムの動作停止と同期して、2次転写バイアスはカム回転時バイアスから非画像部バイアスへと切り替わり、紙間で調整パターン通過に備える。本形態での非画像部バイアスは用紙転写時と逆極性のバイアスで+500Vであり、非画像部バイアスも、画像部の印加電圧(−1000V)に対して小さいこととなる。
【0093】
この動作により紙間で作像された調整パターンは、2次転写バイアスが用紙転写時と逆極性且つ2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が離間した状態で通過することとなる。
【0094】
続いて2枚目の用紙が2次転写ニップNへ搬送され、用紙先端がニップへ到達したときにカム50,51は1枚目とは反対方向(本実施例では逆転動作:反時計回りに回転)へと回転し、この回転開始に同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアス(+200V)へと切り替わり、用紙進入後はカム駆動と同期して画像部バイアスへと切り替わり、2枚目を印刷して終了する。
【0095】
このような第4の実施形態の構成によると、第3の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構を紙厚P2に応じた変位量としていることから、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(比較例1)
比較例1は第1の実施形態の構成に対して、2次転写ローラ用の押し下げ機構となる接離手段500を廃し、画像印刷時は2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aは常時当接している構成である。2次転写ローラ30とベルト表面21aが常時当接していることから、図13のように2次転写部にクリーニング機構を設ける必要がある。
(比較例2)
比較例2は第1の実施形態の構成に対して、2次転写ローラ用の押し下げ機構となる接離手段500を廃し、画像印刷時は2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aは常時当接している構成である。さらに、2次転写ローラ30とベルト表面21aが常時当接しているが、図2に示すように2次転写部にクリーニング機構となるクリーニングブレード39を設けていない。
(比較例3)
比較例3は比較例2の構成に対し、紙間で調整パターンが作像される際は、2次転写バイアスをオフする構成である。2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は常時当接しているが、紙間で2次転写バイアスをオフすることで、調整パターンの2次転写ローラ30への転写を軽減しようとしている。
(通紙実験)
第1〜第4の実施形態と比較例1〜3の各構成において以下の条件で通紙実験を行った。
印刷枚数: A3 10枚 片面通紙
調整パターン:1回/3枚 紙間で実施
用紙:Mondi社製 「Color Copy(坪量300g/m^2)」「Color Copy(坪量160g/m^2)」
画像パターン:図14に示すハーフトーン画像
評価項目:画像部の異常画像(用紙突入による画像乱れ)
用紙裏面の汚れ(裏汚れ)
通紙実験の結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表内の○印は各異常の発生がなかったこと、△印は異常はあるが許容レベルであること、×印は異常の発生があったことを示す。
【0098】
第1〜第4の実施形態は、いずれも異常画像の発生は許容範囲内であり、特に第2〜第4の実施形態ではまったく異常が無かった。これに対し比較例1は用紙進入時の衝撃による中間転写体の速度変動が原因で画像乱れが発生し、比較例2では画像乱れに加え、紙間で2次転写ローラに転写された調整パターンが用紙裏面に写る、所謂裏汚れも発生していた。比較例3では2次転写バイアスをオフしているため、紙間で2次転写ローラ30に転写された調整パターンは、比較例2と比べると少なくなっているが、用紙裏汚れをなくすことはできなかった。以上より、本発明の効果を確認することができた。
【0099】
以上、第1〜第4の実施形態を基に本発明の説明を行なったが、本発明の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明をなんら限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良、変形が可能である。たとえば、画像形成装置は複写機に限定されるものではなく、ファクシミリやプリンタあるいはこれらの複合機に適用することができる。画像形成装置はタンデム型の複写機ではなく、4サイクル型の複写機、または像担持体を1つしか持たない複写機などにも適用できる。
【0100】
また、上記形態では、記録媒体Pの進入箇所を二次転写ニップNとしているが、各感光体と中間転写ベルト21と1次転写ローラ25C,25M,25Y,25Kによって形成される1次転写ニップへ記録媒体Pを搬送してトナー画像Tを記録媒体Pに転写するタイプの転写装置およびこれを備えた画像形勢装置に適用しても、本形態と同様の作用効果を得ることができる。また、画像形成装置の形態としては、カラー画像を形成するものに限定されるものではなく、単色のトナーによる印刷を行う画像形成装置であっても良い。
【0101】
上記形態では、カム50,51によって対向部材となる2次転写ローラ30を接離するように構成したが、カム50,51及びその支持機構とカム駆動モータ58を2次転写ローラ30に配置して、2次転写対向ローラ24(中間転写ベルト21)側を2次転写ローラ30に対して接離するように構成して、中間転写ベルト21のベルト表面21aと2次転写ローラ30の表面30aとの間隔Xを調整可能としてもよい。
【0102】
上記形態では、高圧電源61からの2次転写対向ローラ24に対して2次転写バイアスを供給しているが、2次転写ローラ30側に2次転写バイアスを供給する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
20 転写装置
21 像担持体
21a 像担持面
30 対向部材
30a 接触面
40 接離手段
45 付勢手段
50,51 カム
50a,50b カム部
51a,51b カム部
58 カム駆動手段
61 転写手段
500 接離手段
N 転写ニップ
P 記録媒体
Pa 先の記録媒体
Pb 後の記録媒体
T1 調整用パターン
X 像担持面と接触面との間隔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開平10−83124号公報
【特許文献2】特開平6−274051号公報
【特許文献3】特開2007−286176号公報
【特許文献4】特開2009-145778号公報
【特許文献5】特開2006−047779号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に転写部材が当接して形成される転写ニップで記録媒体に画像を転写する転写装置と、これを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付勢手段の付勢力によって像担持体に当接して転写ニップを形成することが可能な対向部材を像担持体に対して接離させる機構を備える画像形成装置において、記録媒体として厚紙を用いる場合、ショックジターと呼ばれる線状の濃度ムラを引き起こすことがある。この濃度ムラは、厚紙が転写ニップに進入する際に、像担持体に対する負荷を急激に高めて、像担持体の線速を瞬間的に大きく低下させることによって生じるものである。
【0003】
ショックジターの発生を抑えるものとしては、例えば特許文献1が挙げられる。同文献には、対向部材としての転写ローラが、円柱状のローラ部と、これと一体に回転するようにローラ部の両端面からそれぞれ突出する軸部材とを備え、それぞれの軸部材に回転カムを空転可能に設けている。そして、それら回転カムに、それぞれ回転カムを軸部材の周面上で空転せしめられる回転カムは所定の回転角度位置において凸部を形成し、像担持体としての感光体における軸線方向の端部に突き当てている。この突き当てにより、加圧手段によって感光体に向けて付勢されている転写ローラを付勢力に抗して感光体から遠ざける方向に強制移動させることで、感光体と転写ローラとの軸間距離を調整可能としている。そして記録媒体として厚紙が用いられる場合には、カムによる転写ローラの強制移動によって、軸間距離を広げて転写圧を低下させるか、あるいは転写ローラを感光体から離間させる。これにより、厚紙進入時に発生してしまう感光体に対する急激な負荷上昇を抑えている。
【0004】
特許文献1の構成では、軸間距離を広げているので、急激な負荷上昇を抑えられる反面、転写圧不足に起因する転写不良を引き起こすおそれがある。転写不良の発生を回避し得る画像形成装置としては、特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の画像形成装置は、記録媒体としての厚紙を転写ニップに進入させるのに先立って、回転カムの駆動によって転写ローラを感光体から離間させて、転写ローラと感光体との間に微小ギャップを形成することで、ショックジターの発生を抑えている。そして厚紙先端を前述の微小ギャップに進入させた直後にソレノイド動作を解除することで、転写ローラの強制移動を解除して転写ローラを加圧手段となるバネの付勢力に任せて感光体に向けて押圧する。これにより、転写処理中に十分な転写圧を記録媒体に与えることで転写不良を抑えている。
【0005】
複数の像担持体を有し、像担持体に形成された画像を中間転写体で重ね合わせ、中間転写体と対向配置された対向部材で記録媒体に一括転写する転写装置を備えた画像形成装置では、画像品質の安定化を目的として、所定のタイミングで調整用パターンを記録媒体に転写されない位置に所定の作像条件で形成し、検知することで像形成性能などの作像性能をテストする技術が一般的に知られている。例えば特許文献3では、紙間に調整用パターンを作像した場合には2次転写ニップを離間させる方式が提案されている。調整パターンが2次転写ニップを通過する際に対向部材を中間転写体から離間させ、かつ検知用センサのシャッタを開く、つまり対向部材の接離と検知用センサのシャッタ開閉を同期させる方式が特許文献4で提案されている。特許文献5には、調整パターンを2次転写体に転写しないために、2次転写ニップを通過する際に中間転写体と2次転写体を当接させた状態でトナーと同極性、つまり、記録媒体への転写時とは逆極性の電圧を印加することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の構成によると、記録媒体となる厚紙が突入するまで、転写ローラを像担持体から離間させているため、記録媒体の突入における像担持体の回転負荷を抑制することは期待できるが、転写ローラの離間を解除したときには、像担持体、記録媒体、転写ローラ間が加圧手段の付勢力によって、一瞬で接触して衝突するため、像担持体に回転負荷や振動が生じ、画像劣化の一要因となってしまう。
【0007】
特許文献3、4に記載のものは、対向部材(転写ローラ)の接離のタイミングは提案されているものの、離間量については考慮されていない。そのため、近年の高速化において特許文献3、4に記載のように紙間で2次転写ニップを離間させた場合、記録媒体が2次転写ニップに侵入した際に対向部材(転写ローラ)の当接が間に合わず、画像先端部が転写されない異常画像の発生や、対向部材(転写ローラ)の当接の衝撃による位置ズレなどが発生してしまう問題があった。
【0008】
対向部材(転写ローラ)を中間転写体(像担持体)に常時当接させてしまうと、紙間での調整用パターンは対向部材に転写されることとなり、対向部材にクリーニング機構を設ける必要が出てくるため、装置の大型化は避けられないばかりか、記録媒体、特に厚紙の場合に2次転写ニップに用紙進入時ならびに用紙排出時の衝撃による異常画像(画像乱れ)が発生してしまう問題があった。
【0009】
特許文献5に記載のものは、調整パターンの2次転写体への転写は軽減されるものの、依然として2次転写体にクリーニング機構は設ける必要があり、さらに、記録媒体への転写時に2次転写体を離間させていないことからも、記録媒体、特に厚紙の場合に2次転写部に用紙進入時ならびに用紙排出時の衝撃による異常画像(画像乱れ)が発生してしまう問題があった。
【0010】
本発明は、装置の小型化を図りつつも、対向部材への画像の転写を防止して、良好な画像を得られる転写装置及び画像形成装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、対向部材の衝撃、ならびに記録媒体進入時、排出時における急激な負荷変動を軽減し、「色ずれ」や「ドット位置ずれ」などの画像乱れによる画像品質の劣化を低減して良好な画像を得られる転写装置及び画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる転写装置は、像担持体の像担持面と対向する位置に設けられ記録媒体と接触する接触面を有する対向部材と、像担持面と接触面の間の転写ニップに圧力を加える付勢手段と、像担持面と接触面とを接離する接離手段と、転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に像担持面に形成された画像を転写する転写手段を有し、画像は、転写ニップに搬送される先の記録媒体と後の記録媒体の間に形成される調整用パターンであり、接離手段は、調整用パターンが転写ニップを通過する際に像担持面と接触面の間隔を広げることを特徴としている。
【0012】
本発明にかかる転写装置において、接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、カムは、カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、像担持面と接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、調整パターンが転写ニップを通過する際に、像担持面と接触面の間隔を最小間隔とする位置を前記カムが占めるように、カム駆動手段が制御されることを特徴としている。このため、像担持体の像担持面と対向部材の接触面の間隔を最も小さくすることで、記録媒体への印刷時に確実に対向部材で記録媒体を像担持面に当接させることができるとともに、対向部材当接時の振動による異常画像を防止することができる。
【0013】
本発明にかかる転写装置において、接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、カムは、カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、調整パターンが転写ニップを通過する際に、間隔が記録媒体の厚みに応じて変化するように、カム駆動手段が制御されることを特徴としている。このため、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、像担持体の像担持面と対向部材の接触面の間隔が記録媒体の厚みに応じて変化するので、対向部材への調整用パターンの転写をなくして記録媒体への裏写りを防止することができる。また、記録媒体への印刷時に確実に対向部材で記録媒体を像担持面に当接させることができるとともに、対向部材当接時の振動による異常画像を防止することができる。
【0014】
本発明にかかる転写装置において、像担持面と接触面の間隔は、転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、カムを所定の回転角度で停止させて、対向部材を付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで間隔を広げることを特徴としている。このため、像担持面と対向部材の接触面の間隔が記録媒体排出時に広げられるので、調整用パターンが対向部材に転写されることを防止することができる。
【0015】
本発明にかかる転写装置において、像担持面と接触面の間隔は、転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、カムを所定の回転角度で停止させて、間隔を狭めることを特徴としている。このため、対向部材の接触面と像担持体の像担持面との間隔が記録媒体進入前に狭められるので、記録媒体への転写不良を防止することができる。
本発明にかかる転写装置において、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、転写バイアスの付与を停止、すなわちオフするようにしてもよい。このような構成とすると、調整用パターンの転写を、より効果的になくして記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
本発明にかかる転写装置において、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与するようにしてもよい。このような構成とすると、調整用パターンの転写を、より効果的になくし記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
本発明にかかる転写装置において、逆極性のバイアスは、記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さくすると、すなわち、逆極性の転写バイアスが記録媒体に転写時の印加電圧より絶対値で小さくすることで、調整パターン通過時の空隙での放電による転写出力異常を防止することになる。
本発明にかかる転写装置において、転写バイアスの切替えを、カムの駆動と同期するように構成すると、転写バイアス切替えの遅延による、離間時の異常放電による転写出力異常、および当接時の記録媒体への転写バイアス不足による異常画像を防止することができる。
本発明にかかる画像形成装置は、上記何れかの特徴を有する転写装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接離手段は、調整用パターンが転写ニップを通過する際に像担持体の像担持面と接触面の間隔が広げられるので、対向部材の接触面への調整用パターンの転写をなくして記録媒体への裏写りを防止できるとともに、対向部材のクリーニング機構を省き、装置の小型化を図ることができる。
本発明によれば、調整用パターンが転写ニップを通過する際に、カムの回転位置によって像担持面と接触面の間隔を広げるとともに、転写バイアスの付与を停止、すなわちオフするようにしたので、調整用パターンの転写を、より効果的になくして記録媒体への裏写りを防止するとともに、クリーニング機構を省き、装置の小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る転写装置における2次転写ニップとその周囲構成の拡大模式図である。
【図3】2次転写ニップの周囲構成を示す拡大断面図である。
【図4】2次転写対向ローラのカムの外径形状を示す拡大図である。
【図5】カムのカム変位プロファイルを示す図である。
【図6】転写装置における記録媒体を進入させる直前の2次転写ニップの状態を示す拡大模式図である。
【図7】転写装置における厚紙を進入させる直前の2次転写ニップの状態を示す拡大模式図である。
【図8】転写装置における厚紙が2次転写ニップ進入直後の状態を示す拡大模式図である。
【図9】転写装置における厚紙が2次転写ニップを排出する直後を示す拡大模式図である。
【図10】(a)は中間転写体に作像された画像を2次転写部で先の記録媒体に転写している状態を示し、(b)は調整パターンが通過した後に、次の記録媒体の先端が2次転写ニップに侵入する際の状態を示す模式図である。
【図11】第1の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置に関するタイミングチャートである。
【図12】第2の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置に関するタイミングチャートである。
【図13】転写装置における2次転写ニップとその周囲構成の別な形態を示す拡大模式図である。
【図14】画像パターンの一形態を示す図である。
【図15】第3及び第4の実施形態における2次転写ニップの周囲構成を示す拡大断面図である。
【図16】第3の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置、2次転写バイアスに関するタイミングチャートである。
【図17】第4の実施形態における用紙、調整パターン、カム位置、2次転写バイアスに関するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示す画像形成装置は、タンデム型のカラー複写機(以下、単に「複写機」という)の一例である。この複写機は、プリンタ部100と、給紙部200と、プリンタ部100の上に取り付けられたスキャナ部300と、スキャナ部300の上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。最初に複写機全体の構成と動作を説明し、次に本形態の特徴部分の構成と動作について説明する。
【0019】
プリンタ部100は、像担持体であり中間転写体でもある無端ベルト状の中間転写ベルト21を備えている。中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状になる姿勢で、複数の回転部材となる駆動ローラ22、従動ローラ23及び支持部材となる2次転写対向ローラ24に掛け回されており、駆動ローラ22の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト21の上方には、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kが、ベルト移動方向に沿って並ぶように配設されている。
【0020】
画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kは、ドラム状の像担持体となる感光体2C,M,2Y,2Kと、現像ユニット3C,3M,3Y,3Kと、感光体用のクリーニング装置4C,4M,4Y,4Kを有している。感光体2C,2M,2Y,2Kは、それぞれ中間転写ベルト21に当接してC,M,Y,K用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。現像ユニット3C,3M,3Y,3Kは、感光体2C,2M,2Y,2Kに形成された静電潜像をC,M,Y,Kのトナーによって現像するものである。クリーニング装置4C,4M,4Y,4Kは、1次転写ニップを通過した後の感光体2C,2M,2Y,2Kに付着している転写残トナーをクリーニングするものである。本プリンタでは、ベルト移動方向に沿って並べられた4つの画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kにより、タンデム画像形成部10が構成されている。
【0021】
プリンタ部100内において、タンデム画像形成部10の上方には、光書込ユニット15が配設されている。光書込ユニット15は、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体2C,2M,2Y,2Kの像担持面となる表面に対し、光走査による光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。各感光体の表面は、それぞれその光書込処理に先立って、画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kの一様の図示しない帯電手段によって一様帯電せしめられる。
【0022】
中間転写ベルト21等を具備する転写装置となる転写ユニット20は、中間転写ベルト21のループ内側に、1次転写ローラ25C,25M,25Y,25Kを有している。これら1次転写ローラは、C,M,Y,K用の1次転写ニップの裏側で中間転写ベルト21を感光体2C,2M,2Y,2Kに向けてそれぞれ押圧している。
【0023】
中間転写ベルト21の下方には、対向部材となる2次転写ローラ30が配設されている。2次転写ローラ30は、中間転写ベルト21の像担持面となるベルト表面21aと反対側となる内側で中間転写ベルト21を支持するとともに、中間転写ベルト21を介して2次転写ローラ30と対向配置された2次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所に、ベルト表面21a側から当接して2次転写ニップNを形成している。2次転写ニップNには、記録媒体Pが所定のタイミングで送り込まれる。そして、ベルト表面21aには、1次転写ニップで各色のトナー像が4色重ね合わせて転写される。4色重ね合わさったトナー像は、2次転写ニップNで記録媒体Pに一括で2次転写される。
【0024】
スキャナ部300は、コンタクトガラス301上に載置された原稿の画像情報を読取センサ302で読み取り、読み取った画像情報をプリンタ部100の制御手段600に送るものである。制御手段600は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の光書込ユニット15におけるレーザーダイオードやLED等の光源を制御して、C,M,Y,K用のレーザー書込光を出射して、感光体2C,2M,2Y,2Kを光走査する。この光走査により、各感光体の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経てC,M,Y,Kトナー像に現像される。
【0025】
給紙部200は、ペーパーバンク201内に多段に配設された給紙カセット202、給紙カセット202から記録媒体Pを送り出す給紙ローラ203、送り出された記録媒体Pを分離して給紙路204に導く分離ローラ205、プリンタ部100の給紙路99に記録媒体Pを搬送する搬送ローラ206等を備えている。
【0026】
給紙については、給紙部200以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差記録媒体レイ98、手差記録媒体レイ98上の記録媒体を手差し給紙路97に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ96も設けられている。プリンタ部100内において、手差し給紙路97は給紙路99に合流している。
【0027】
給紙路99の末端付近には、記録媒体供給手段となるレジストローラ対95が配設されている。レジストローラ対95は、給紙路99内を搬送されてくる記録媒体Pをローラ間に挟み込んだ後、所定のタイミングで2次転写ニップNに向けて送り込む。
【0028】
本実施形態に係る複写機において、カラー画像のコピーをとるには、ADF400の原稿台401上に原稿をセットする、又はADF400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス301上に原稿をセットしてADF400を閉じることで原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿がADF400にセットされている場合には、原稿がコンタクトガラス301上に搬送される。その後、スキャナ部300が駆動を開始し、第1走行体303及び第2走行体304が原稿面に沿った走行を開始する。そして、第1走行体303にて光源から発した光を原稿面で発射させるとともに、得られた反射光を折り返して第2走行体304に向ける。折り返し光は、第2走行体304のミラーで更に折り返された後、結像レンズ305を通して読取センサ302に入射される。これにより、原稿内容が読み取られる。
【0029】
プリンタ部100は、スキャナ部300から画像情報を受け取ると、画像情報に応じたサイズの記録媒体Pを給紙路99に給紙する。また、これに伴って、不図示の駆動モータで駆動ローラ22を回転駆動して中間転写ベルト21を図中時計回り方向に無端移動させる。同時に、画像形成ユニット1C,1M,1Y,1Kの感光体2C,2M,2Y,2Kの回転駆動を開始した後、各感光体に対する一様帯電処理、光書込処理、現像処理などを行う。これらの処理によって各感光体の表面上に形成されたC,M,Y,Kのトナー像は、C,M,Y,K用の1次転写ニップで順次重ね合わせて中間転写ベルト21上に1次転写されて、4色重ね合わせトナー像になる。
【0030】
給紙部200では、給紙ローラ203の1つが記録媒体サイズに応じて選択的に回転され、3つの給紙カセット202のうちの1つから記録媒体Pが送り出される。送り出された記録媒体Pは、分離ローラ205で1枚ずつ分離されてから給紙路206に導入された後、搬送ローラ206を経由してプリンタ部100内の給紙路99に送られる。また、手差記録媒体トレイ98を用いる場合には、トレイの給紙ローラが回転駆動して、トレイ上の記録媒体を分離ローラ96で分離しながら手差し給紙路97に送り込まれて給紙路99の末端付近に至る。給紙路99の末端付近では、記録媒体Pが先端をレジストローラ対95に突き当てて止まる。その後、中間転写ベルト21上の4色重ね合わせトナー像に同期し得るタイミングでレジストローラ対95が回転駆動すると、記録媒体Pは2次転写ニップN内に送り込まれてベルト上の4色重ね合わせトナー像に密着する。そして、転写圧や転写用電界となる2次転写バイアスなどの影響によって記録媒体P上に一括に2次転写される。
【0031】
2次転写ニップNで4色重ね合わせトナー像が2次転写された記録媒体Pは、用紙搬送ベルト70によってプリンタ部100内に配置された定着装置71内に送り込まれる。そして、定着装置71で加圧ローラ72と定着ベルト73との間の定着ニップに挟み込まれると、加圧や加熱処理によって4色重ね合わせトナー像が表面に定着せしめられる。このようにしてカラー画像が形成された記録媒体Pは、排出ローラ対74を経由して機外の排紙トレイ75上にスタックされる。
【0032】
記録媒体Pのもう一方の面(裏面)にも画像が形成される場合には、記録媒体Pは定着装置71から排出された後、切替爪76による進路切り換えによって記録媒体反転装置75に送られる。そして、上下反転された後、再びレジストローラ対95に戻されてから、2次転写ニップN及び定着装置71を再経由して画像定着が行われた後、排紙トレイ75上にスタックされる。
【0033】
2次転写ニップNを通過した後、4色のうちで1次転写工程が最も上流となるC用の1次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト21のベルト表面21aには、ベルトクリーニング装置26が当接している。このベルトクリーニング装置26は、ベルト表面21aに付着している転写残トナーをクリーニングする。
【0034】
図2は、実施形態に係る複写機のプリンタ部100における転写ユニット20における2次転写ニップNとその周囲構成の拡大模式図である。同図において、中間転写ベルト21のループ内側で自らの周面にベルトを部分的に掛け回している2次転写対向ローラ24は、変形自在な中間転写ベルト21を自らの周面でバックアップして一定の曲率に沿った形状に維持する役割を担っている。この意味で2次転写対向ローラ24はバックアップローラとして機能している。中間転写ベルト21における2次転写対向ローラ24に対する掛け回し箇所には、2次転写ローラ30がベルト表面21a側から当接して2次転写ニップNを形成している。
【0035】
2次転写ローラ30は、図示しない軸受を介して、ローラユニット保持体40に回転自在に保持されている。ローラユニット保持体40は、2次転写ローラ30の回転軸線と平行な姿勢をとるように配設された回動軸40aを中心にして回動可能に構成されている。ローラユニット保持体40が回動軸40aを中心にして図中反時計回り方向に回転すると、ローラユニット保持体40に保持されている2次転写ローラ30が中間転写ベルト21に押し当てられて2次転写ニップNが形成される。また、ローラユニット保持体40が回動軸40aを中心にして図中時計回り方向に回転すると、ローラユニット保持体40に保持されている2次転写ローラ30が中間転写ベルト21から離間する。本実施形態に係る転写ユニット20では、付勢手段となる付勢コイルバネ45によってローラユニット保持体40における回動軸40aとは反対側の端部40bが中間転写ベルト21に向けて常に付勢されている。付勢コイルバネ45により、ローラユニット保持体40に対して、回動軸40aを中心にして図中反時計回り方向に回転させる力を常に付与することで、2次転写ローラ30を中間転写ベルト21に向けて付勢している。
【0036】
2次転写ローラ30は、図示しないローラ駆動モータの回転駆動力が図示しないギヤ等の駆動伝達手段を介して伝達されることで、図中反時計回り方向に回転駆動される。これらローラ駆動モータや駆動伝達手段は、ローラユニット保持体40に保持されていて、2次転写ローラ30やローラユニット保持体40とともに回動するように構成されている。ローラユニット保持体40には、図13に示すようにクリーニングブレード39、固形潤滑剤41、潤滑剤押し当て器43等の2次転写クリーニング機構を設けることもできる。
【0037】
トナー像を担持する中間転写ベルト21のベルト表面21aに接触している2次転写ローラ30の表面30aは接触面をなし、ベルト表面21a上のトナーが付着する。この付着トナーをそのままにしておくと、2次転写ニップNで記録媒体Pの裏面に転移させていわゆる裏汚れを発生させてしまう。このため、複写機においては、クリーニングブレード39のエッジを2次転写ローラ30の表面30aに当接させることで、2次転写ローラ30の表面からトナーを機械的に除去可能としている。ただこのような構成では、クリーニングブレード39の当接により、2次転写ローラ30に対して回転を阻害する負荷をかけることになるので、2次転写ローラ30を中間転写ベルト21との連れ回りによって従動回転させることができなくなるため、2次転写ローラ30を上述したローラ駆動モータによって回転駆動するように構成するとよい。
【0038】
潤滑剤押し当て器43は、ステアリン酸亜鉛塊等からなる固形潤滑剤41を付勢コイルバネ42によって2次転写ローラ30の表面30aに押し当てることで、潤滑剤粉末を2次転写ローラ30の表面30aに塗布する。このように潤滑剤を塗布することで、クリーニングブレード39と2次転写ローラ30の表面30aとの当接による回転負荷上昇、ブレードエッジの巻き込みの発生を抑えている。固形潤滑剤41を2次転写ローラ30の表面30aに押し当てる代わりに、固形潤滑剤41から潤滑剤を掻き取りながら2次転写ローラ30の表面30aに塗布する回転塗布ブラシを設けてもよい。
【0039】
次に、転写ユニット20及び複写機の特徴的な構成について説明する。上記のような中間転写ベルト21とのベルト表面21aと2次転写ローラ30の表面30aとの間に形成される2次転写ニップNに記録媒体先端が突入する際や、2次転写ニップNから記録媒体後端が抜ける瞬間に、従来は中間転写ベルト21に衝撃が発生し、結果的に中間転写ベルト21の速度変動が発生してしまう。特に、最近は様々な種類の記録媒体Pに対応する紙種対応力を高めた画像形成装置が求められており、記録媒体Pが、300g/m2程度の坪量の大きい厚紙になると、その衝撃は大きなものとなり、ショックジターが大きな問題となっている。
(第1の実施形態)
図3は、転写ユニット20の2次転写ニップNの周囲構成を示す拡大断面図である。2次転写ローラ30は、記録部材搬送方向と直交する幅方向に延在するローラ部31と、これの軸線方向の両端面からそれぞれ突出して回転軸線方向に延在する第1軸部材32及び第2軸部材33と、後述する第1空転コロ34及び第2空転コロ35とを有している。ローラ部31は、円筒状の中空芯金31aと、これの周面に固定された弾性体からなる弾性層31bと、弾性層31bの周面に固定された表面層31cとを備えている。
【0040】
中空芯金31aを構成する金属としては、ステンレス、アルミニウムなどを例示することができるが、これらの材料に限定されるものではない。弾性層31bについては、JIS−A硬度で70[°]以下とすることが望ましい。しかし、ローラ部31には、クリーニングブレード39を当接させていることから、弾性層31bが柔らかすぎると様々な不具合を引き起こしてしまう。よって、弾性層31bについては、JIS−A硬度で40[°]以上にすることが望ましい。ある程度の導電性を発揮するエピクロルヒドリンゴムにより、JIS−A硬度で50[°]程度の弾性層31bを形成してもよい。導電性を発揮するゴム材料として、前述した導電性のエピクロルヒドリンゴムの代わりに、カーボンを分散せしめたEPDMやSiゴム、イオン導電機能を有するNBR、ウレタンゴムなどを使用してもよい。ゴム材料の多くがトナーに対して良好な化学的親和性を発揮したり、比較的大きな摩擦係数を発揮したりすることから、ゴム材からなる弾性層31bの表面は、表面層31cで被覆されている。これにより、ローラ部31の表面に対するトナー付着を抑えるとともに、クリーニングブレード39との摺擦負荷を低減している。表面層31cの材料としては、低摩擦係数で且つ良好なトナー離型性を発揮するフッ素樹脂系樹脂にカーボンやイオン導電剤などの抵抗調整材を含有させたものが好適である。
【0041】
2次転写ローラ30は、中間転写ベルト21のベルト表面21aと接触して回転する際に、ベルト表面21aと微小な線速差をもつことがある。この線速差によってベルトをスリップさせないように、表面層31cとしては、摩擦係数を0.3以下に調整している。中間転写ベルト21については、各色の画像を色ズレなく重ねて転写する狙いから、一定速度で駆動することが求められるため、2次転写ローラ30の表面層31cの表面摩擦抵抗を低くすることは重要である。このような構成の2次転写ローラ30は、2次転写対向ローラ24に掛け回されている中間転写ベルト21に向けて付勢コイルバネ45で付勢されている(図2参照)。
【0042】
中間転写ベルト21を掛け回している2次転写対向ローラ24は、円柱状の本体部であるローラ部24bと、ローラ部24bの回転中心箇所に対して回転軸線方向に貫通しつつ、ローラ部24bを自らの表面上で空転させる貫通軸部材24aとを有している。貫通軸部材24aは金属部材からなり、その周面上でローラ部24bを回転自在に支持して空転可能としている。本体部としてのローラ部24bは、ドラム状の中空芯金24cと、これの周面上に固定された弾性体からなる弾性層24dと、中空芯金24cの軸線方向両端にそれぞれ圧入された玉軸受24eとを有している。このため、玉軸受24eが中空芯金24cを支えながら、中空芯金24cとともに貫通軸部材24a上で回転する。弾性層24dは、中空芯金24cの外周面に圧入されている。
【0043】
貫通軸部材24aは、中間転写ベルト21を張架する転写ユニット20の第1側板28に固定された第1軸受52と、第2側板29に固定された第2玉軸受53によって回転自在に支持されている。但し、プリントジョブ時における殆どの時間、貫通軸部材24aは回転駆動されずに停止している。貫通軸部材24aは、中間転写ベルト21の無端移動に伴って連れ回ろうとするローラ部24bを、自らの周面上で自在に空転させる。
【0044】
中空芯金24cの周面上に固定された弾性層24dは、7.5[LogΩ]以上の抵抗を発揮するように、イオン導電剤の添加によって抵抗値が調整された導電性ゴム材料から構成されている。弾性層24dの電気抵抗を所定の範囲に調整しているのは、A5サイズなどの、ローラ軸線方向のサイズが比較的小さな記録媒体を使用する際に、2次転写ニップN内において、記録媒体Pの介在なしにベルト表面21aとローラ表面とが直接接触している箇所に転写電流を集中させてしまうのを防止する狙いからである。弾性層24dの電気抵抗を、記録媒体Pの抵抗よりも大きな値にすることで、そのような転写電流の集中を抑えることは可能になる。
【0045】
弾性層24dを構成する導電性ゴム材料としては、Asker−C硬度で40[°]程度の弾性を発揮するように、発泡ゴムを用いている。このような発泡ゴムで弾性層24dを構成することで、2次転写ニップN内で弾性層24dを厚み方向に柔軟に変形させて、記録媒体搬送方向にある程度の広さを有する2次転写ニップNを形成することができる。弾性層24dは、端部の外径よりも中央部の外径が大きいタイコ形状にしている。すなわち、2次転写対向ローラ24は、その中央部24Aよりその端部24B、24Cを小さい外径としたタイコ形状に形成されている。このようなタイコ形状のローラとすることにより、付勢コイルバネ45(図2参照)によって、2次転写ローラ30が中間転写ベルト21に向けて付勢されて2次転写ニップNを形成する際に、撓みが発生して中央部24Aの圧が抜けるのを防止することが可能となる。
【0046】
なお、本複写機では、図2で既に述べたように、2次転写ローラ30にクリーニングブレード39を当接させる都合上、2次転写ローラ30のローラ部の材料として、弾性に富む材料を使用することが困難である。そこで、2次転写ローラ30の代わりに、2次転写対向ローラ24のローラ部24bを弾性変形させるようにしている。
【0047】
2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aにおいて、その長手方向の全領域のうち、ローラ部24bの中に位置していない両端部領域には、それぞれ2次転写ローラ30に突き当てるための突当部材であり、ここでは接離手段の一部を構成する一対のカム50,51が、貫通軸部材24aと一体的に回転させるように固定されている。すなわち、貫通軸部材24aの長手方向の一端部領域には、第1カム50を固定している。カム50には、カム部50Aと、真円形のコロ部50Bとが軸線方向に並んで一体形成されている。カム50は、コロ部50Bに貫通させたネジ80を貫通軸部材24aに螺合させることで貫通軸部材24aに固定されている。
カム51は、カム部51Aと、真円形のコロ部51Bとが軸線方向に並んで一体形成されていて、カム50と同様の構成で、貫通軸部材24aの長手方向の他端部領域に固定している。貫通軸部材24aの軸線方向におけるカム51よりも外側の領域には、駆動受入プーリ54が固定されている。駆動受入プーリ54の更に外側には、被検知円盤59が固定されている。
【0048】
転写ユニット20の第2側板29には、カム50,51を正転方向及び逆転方向に回転駆動するカム駆動手段となるカム駆動モータ58が固定されて配置されている。カム駆動モータ58は、その出力軸上に設けられたモータプーリ57を回転させ、タイミングベルト56を介して貫通軸部材24aに固定された駆動受入プーリ54に駆動力を伝達する。このような構成にすると、カム駆動モータ58を作動することにより、貫通軸部材24aを回転させることが可能である。この際、貫通軸部材24aを回転させても、ローラ部24bについては貫通軸部材24a上で自在に空転させることが可能であるので、中間転写ベルト21によるローラ部24bの連れ回りを阻害することはない。また、カム駆動モータ58としては、ステッピングモータを用いることで、エンコーダ等の回転角検知手段を設けることなく、モータ回転角を自由に設定可能にしている。無論回転角検知手段を設けてカム駆動モータ58の回転角を検知するようにしてもよい。
【0049】
カム50とカム51は、貫通軸部材24aが所定の回転角度で回転を停止したときに、それぞれのカム部50A,51Aを2次転写ローラ30に突き当てて、2次転写ローラ30をローラユニット保持体40の付勢コイルバネ45の付勢力に抗して押し返すように、カム部50A,51Aの外周面50C,51Cが形成されている。つまり、カム50,51の回転位置を制御して、2次転写ローラ30を2次転写対向ローラ24(ひいては中間転写ベルト21)に対して近接する方向に移動させることで、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整する。2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整することで、2次転写ニップNにおける2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト21のベルト表面21aとの隙間Xを調整することができる。
【0050】
本形態では、少なくともカム50,カム51、カム駆動モータ58により、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lを調整する、すなわち、2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト24のベルト表面21aとを接離する接離手段500が構成されている。回転可能な支持部材としての2次転写対向ローラ24は、その円柱状のローラ部24bに対して貫通せしめた貫通軸部材24a上で、ローラ部24bを自在に空転させる。貫通軸部材24aが回転すると、貫通軸部材24aの軸線方向の両端部にそれぞれ固定されたカム50,51が一体となって回転するので、貫通軸部材24aに駆動を伝達するための駆動伝達機構を軸線方向の一端側に設けるだけで、両端側のカム50,51をそれぞれ回転させることができる。
【0051】
本複写機では、2次転写ローラ30の中空芯金31aを接地している一方で、2次転写対向ローラ24の中空芯金24cに対してトナーと同極性の2次転写バイアスを印加する。これにより、2次転写ニップN内において、トナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ30側に向けて静電移動させる2次転写電界を両ローラ間に形成している。すなわち、2次転写対向ローラ30の金属製の貫通軸部材24aを回転自在に受けている第1軸受52は、導電性のすべり軸受から構成されている。この導電性の第1軸受52には、2次転写バイアスを出力する転写手段となる高圧電源61が接続されている。高圧電源61から出力される2次転写バイアスは、導電性の第1軸受52を介して2次転写対向ローラ30に供給される。そして、2次転写対向ローラ30内では、金属製の貫通軸部材24aと、金属製の玉軸受24eと、金属製の中空芯金24cと、導電性の弾性層24dとを順に伝わっていく。
【0052】
貫通軸部材24aの一端に固定された被検知円盤59は、貫通軸部材24aの回転方向における所定の位置において軸線方向に立ち上がる被検部59aを有している。一方、転写ユニット20の第2側板29に固定されたセンサブラケット501には、検知手段となる光学センサ60が固定されている。貫通軸部材24aが回転する過程において、貫通軸部材24aが所定の回転角度範囲に位置すると、被検知円盤59の被検部59aが、光学センサ60の発光素子と受光素子との間に入り込んで両者間の光路を遮断する。光学センサ60の受光素子は、発光素子からの光を受光すると受光信号を制御手段600に送信する。
【0053】
制御手段600は、周知のコンピュータで構成されていて、ここでは特に光学センサ70とカム駆動モータ58が接続されている。制御手段600は、光学センサ60の受光素子からの受光信号が途絶えたタイミングや、そのタイミングからのカム駆動モータ58の駆動量を算出してカム駆動モータ58を作動するとともに、算出した駆動量に基づいて、貫通軸部材24aに固定されたカム50,51のカム部50a,51aの回転角度位置を検知して、カム50,51を予め定められた位置で停止させる機能を備えている。予め定められた位置については図4以降で説明する。
【0054】
カム50,51は、所定の回転角度で2次転写ローラ30に突き当たって、2次転写ローラ30を付勢コイルバネ45の付勢力に抗して2次転写対向ローラ24から遠ざける方向に押し返す(以下、この押し返しを「押し下げ」と記す)。このときの押し返し量(以下、「押し下げ量」と記す)は、カム50,51の回転角度位置によって決まる。このカム50,51による2次転写ローラ30の押し下げ量が大きくなるほど、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ30との軸間距離Lは大きくなる。
【0055】
2次転写ローラ30において、ローラ部31と一体になって回転する第1軸部材32には、第1空転コロ34が空転可能に設けられている。第1空転コロ34は、外径がローラ部31よりも少し大きなドーナッツ円盤状の形状をなしている。そして、それ自体が玉軸受としての機能を有していて、第1軸部材32の周面上で空転することができる。2次転写ローラ30の第2軸部材33には、第1空転コロ34と同様の構成の第2空転コロ35が空転可能に設けられている。
【0056】
2次転写対向ローラ24において、貫通軸部材24aに固定されたカム50,51は、所定の回転角度位置で、空転コロ34,35に突き当たるようにカム部50A,51Aの外周面50C,51Cが形成されている。具体的には、貫通軸部材24aの一端側に固定された第1カム50のカム部50Aは、2次転写ローラ24の第1空転コロ34に突き当たる。このとき同時に、貫通軸部材24aの他端側に固定された第2カム51のカム部51Aが、2次転写ローラ24の第2空転コロ35に突き当たる。カム50,51にそれぞれ突き当てられた空転コロ34,35は、その突き当てに伴って回転を阻止されるが、それによって2次転写ローラ30の回転が妨げられることはない。空転コロ34,35が回転を停止しても、空転コロが玉軸受になっているので、2次転写ローラ30の軸部材32,33は、空転コロ34,35から独立して自在に回転することができるからである。カムのカム部50A,51Aによる突き当てに伴って空転コロ34,35の回転を停止させることで、両者の摺擦の発生を回避するとともに、摺擦によるベルト駆動モータや2次転写ローラ30の駆動モータのトルク上昇の発生を回避することもできる。
【0057】
図4〜図11を用いて、カム50,51の特徴と動作について説明する。
図4は、2次転写対向ローラ24のカム50,51の外径形状を示し、図5はカム50,51のカム変位プロファイルを示す。カム50,51は、2段の変位をもった形状で構成することにより、カムの回転角度によって、カム位置A、B,C,Dと4段階の変位位置に設定することが可能とされている。
【0058】
カム位置Aとカム位置Cは、外径は同外径に設定し、カム位置Bは、変位量δ=1mm(カム位置A、Cよりも1mm外径が大きく設定)、カム位置Dは変位量δ=0.7mm(カム位置A、Cよりも0.7mm外径が大きく設定)している。
【0059】
カム位置Bおよびカム位置Dが2次転写ローラ軸上の空転コロ34,35と接触することで、2次転写ローラを押下げ、2次転写ローラ24の表面24aと2次転写対向ローラ30の表面30aとの表面距離を変更できるように構成した。カム位置Aおよびカム位置Cでは、2次転写ローラを押下げ動作を行わないようにカム外径を設定している。すなわち、カム部50A、51Aは、その外周面50C、51Cのカム位置Bとカム位置Dにおいてカム部50a,51aとカム部50b,51bが形成されている。
【0060】
カム50,51の変位プロファイルは、図5に示すように、それぞれ対称になるように構成している。具体的には、カム位置A中心とカム位置B中心への変位プロファイルとカム位置B中心からカム位置C中心への変位プロファイルを同じにすることで、カム位置B中心からカム50,51をどちらの方向に回転させても、同じように変位するように構成している。同様に、カム位置C中心とカム位置D中心への変位プロファイルとカム位置D中心とカム位置Aへの変位プロファイルを同じように変位するような形状にしている。
【0061】
図6は、記録媒体として普通紙P1を進入させる直前の2次転写ニップNの状態を示す拡大模式図である。本複写機において、普通紙P1を2次転写ニップNに進入させる際には、図6に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、制御手段600によって2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Cが下向きになるような位置)で、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aの回転を停止させるように、カム駆動モータ58の動作を制御する。つまり、普通紙P1を使用するときには、カム50,51による2次転写ローラ30の押し下げを実施しない。厚みの比較的薄い普通紙P1では、2次転写ローラ30の押し下げを実施しなくても、2次転写ニップNへの進入時の中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動が生じないからである。
【0062】
図7〜図9は、記録媒体として厚紙P2を通紙中の2次転写ニップNの状態を示す拡大模式図である。図7は厚紙P2を進入させる直前の2次転写ニップNの状態、図8は厚紙P2が2次転写ニップNへ進入直後の状態、図9は厚紙P2が2次転写ニップNを通過して排出された直後の状態をそれぞれ示す拡大模式図である。
【0063】
本複写機において、厚紙P2を2次転写ニップNに進入させる際には、図7に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てる位置(カム位置B)で、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aの回転を停止させるべく、制御手段600でカム駆動モータ58の動作を制御する。つまり、厚紙P2を使用するときには、カム50,51よる2次転写ローラ30の押し下げを実施し、2次転写ローラ30の表面30aと中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面隙間が間隔Xになるように設定する。
【0064】
このように、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24の軸間距離、すなわち、2次転写ローラ30の表面30aとベルト表面21aの隙間Xを形成した状態にすることで、厚みの大きい厚紙P2が進入しても、2次転写ニップNへの進入時の中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動が生じ難くなる。
【0065】
しかし、2次転写ローラ30をカム50,51で押下げた状態で2次転写ニップNに記録媒体を通紙させると、負荷変動の発生が少なくなり、ショックジターの発生を抑えられるが、転写に十分なニップ圧が得られず、トナー画像の転写性が低下する。特に、表面の平滑性が悪い記録媒体は顕著に転写率低下がみられた。したがって、本発明では、記録媒体が2次転写ニップNに進入直後は、図8に示すように、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置になるように、2次転写対向ローラ24の貫通軸部材24aを回転させるべく、制御手段600でカム駆動モータ58の作動を制御して時計周りにカム50,51を回転し、カム位置Cが下向きになるような位置で停止させる。この回転動作は、記録媒体の2次転写ニップNへの進入直後に作動させ、トナー画像が2次転写ニップNに来るまでに完了する必要がある。
【0066】
画像転写中は、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Cが下向きになるような位置)に保ち続ける。つまり、カム駆動モータ8の作動は停止状態とする。図9に示すように、中間転写ベルト21のベルト表面21a上の画像を転写終了後、記録媒体(厚紙P2)の後端が2次転写ニップNを抜けるまでの間に、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、逆転動作させ(本実施例では反時計回りに回転させ)るべく、制御手段600でカム駆動モータ58を作動し、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てる位置(カム位置B)になるようで停止させる。
【0067】
これは、厚みの大きい厚紙P2では、2次転写ニップNからの排出時も中間転写ベルト21や2次転写ローラ30に対する大きな負荷変動を発生させてしまうため、用紙先端突入時と同様に2次転写ローラ30を押下げることで、このような不具合を防止することができる。
【0068】
続いて、次の記録媒体の先端が2次転写ニップNに進入までは、2次転写ローラ30を押下げた状態になるように、カムを(カム位置Bが下向きになるように)停止させるべく、カム駆動モータ58は停止状態とする。このことで、1枚目(先)と同様に、2枚目(後)の記録媒体が2次転写ニップNへの突入時に発生する、中間転写ベルト21や2次転写ローラ30への負荷変動を防止できる。
【0069】
2枚目(後)の用紙先端のニップ突入後は、一枚目(先)の用紙先端突入後の動作とは、逆転方向に(本実施例では反時計回りに)カム50,51を回転させるべくカム駆動モータ58の作動を制御手段600で制御し、先端白抜け幅領域内で、2次転写対向ローラ24のカム50,51を、2次転写ローラ30の空転コロ34,35に突き当てない位置(カム位置Aが下向きになるような位置)まで回転動作させる。
【0070】
図4,図5に示すように、カム50,51の変位プロファイルを対称にすることで、1枚目(先)の通紙時と2枚目(後)の通紙時のカム50,51の移動位置を変えることにより、カム50,51の駆動部およびカム表面の磨耗等の耐久寿命の向上を図っている。
【0071】
これは、変位プロファイルが対称でないと、例えば図4のaとbあるいはcとdが非対称の場合、aかbあるいはcかdのどちらかの傾斜で正逆転を繰り返し使用することになり、寿命としては本発明の半分になってしまう。また、記録媒体の坪量によってはシート先端が突入してしばらくしてから大きなベルト速度変動が見られる場合もある。例えば、図4,図5のカム位置B(変位量δ:1mm)で坪量300[g/m^2]の記録媒体を2次転写ニップNに通紙した場合、紙突入時から排紙時まで中間転写ベルト21の速度変動がないのに対して、坪量160[g/m^2]では、紙突入時及び排出時のベルト速度変動はないが、押し下げを解除したときに速度変動が起こる。これは、2次転写ローラ30を押下げていたカム50,51を回転して2次転写ローラ30の押下げを解除した時に、2次転写ローラ30が中間転写ベルト21を介して2次転写対向ローラ24と接触する振動で、中間転写ベルト21の速度変動を引き起こしているためである。
【0072】
そこで、2次転写ローラ30の押し下げ量を少なくしたカム位置D(変位量δ:0.7mm)として押し下げ解除時の振動を抑えることとしたが、坪量160[g/m^2]では中間転写ベルト21の速度変動がないのに対し、坪量300[g/m^2]では押し下げ量が少ないために、紙突入時に速度変動が発生し、許容レベルではあるが、画像乱れが発生していた。
【0073】
これより、記録媒体の厚みによって押し下げ量を変えることが好ましく、本複写機では、図3に示すように、2次転写ニップNに供給される記録媒体の厚み情報を取得する厚み情報取得手段700を設けている。厚み情報取得手段700としては、給紙路99内を搬送される用紙の厚みを実際に検知する厚み検知センサを用いてもよいし、操作者からの厚み情報のデータ入力を受け付けるデータ入力手段を用いてもよい。また、厚み検知センサとしては、厚み方向の光透過率を検知する光学センサや、搬送ローラ対に用紙を挟み込んだときのローラ移動量を検知するセンサなどを例示することができる。
【0074】
そして、厚み情報取得手段700による取得結果に応じて、2次転写ローラ30の押し下げ量を調整するように、制御手段600を構成している。具体的には、制御手段600におけるROM等のデータ記憶手段に、記録媒体の厚み情報と、それに対応する貫通軸部材24aの回転停止位置(押し下げ量と同意)との関係を示すデータテーブルを記憶させている。そして、記録媒体の厚みの取得結果に対応する回転停止位置をデータテーブルから特定し、その回転停止位置まで貫通軸部材24aを回転させるべく、カム駆動モータ58を作動することで、多段のカム50,51の停止位置を決定してから、記録媒体を2次転写ニップNに進入させる処理を実行するように、制御手段600を構成している。これにより、記録媒体の厚みに適した2次転写押し下げ量を設定(カム位置を設定)することにより、紙先端進入時のショックおよび押下げ解除時のショックとの両方を抑えることができる。
【0075】
なお、貫通軸部材24aの回転停止位置については、上述したように、光学センサ60が被検知円盤59の被検部59aを検知したタイミングや、タイミングからのカム駆動モータ58であるステッピングモータの駆動量に基づいて、把握するように制御手段600を構成している。
【0076】
本形態では、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24に巻きかけられた中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を調節するカム50,51が2次転写対向ローラ24側に配置した場合を示したが、2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を他の方法で調節することも、もちろん可能で、例えばローラユニット保持体40に押下げ部材を設け、カム50,51により2次転写ローラ30とベルト表面21aとの表面距離(間隔X)を調節するような構成としてもよい。
【0077】
次に記録媒体とカム位置、および調整用パターンの関係について説明する。なお、調整用パターンとしては、例えば濃度調整用、位置ズレ調整用、ブレード捲れ防止用のパターンなどがあり、紙間に作像されるパターンであれば、特に限定されるものではない。
【0078】
図10は複数枚の記録媒体を連続して通紙したときの紙間における2次転写の位置と中間転写ベルト21上の画像位置を模式的に表したものである。図10(a)は中間転写ベルト21に作像された画像Tを2次転写ニップNで先の記録媒体Paに転写している状態である。このとき次の画像が来る前、つまり紙間に調整用パターンT1が中間転写ベルト21のベルト表面21aに作像されている。そして、現在転写中の記録媒体が排出される際に上述したカム50,51が回転して2次転写ローラ30とベルト表面21aとの表面距離が広げられる。
【0079】
次に図10(b)に示すように、調整パターンT1が通過した後に、後の記録媒体Pbの先端が2次転写ニップNに侵入する際に、再びカム50,51を回転させて当接させている。このときの記録媒体Pb(坪量300[g/m^2])、画像、カム位置のタイミングチャートを図11に示す。
【0080】
本形態では、紙間で調整パターンT1を作像する場合、変位量δが少ないカム位置D(変位量δ:0.7mm)となるよう貫通軸部材24aの回転をカム駆動モータ58の作動を制御手段600で制御することで、コントロールしている。まず、図11において、カム50,51は位置Aで2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aと当接(接触)しており、記録媒体が進入するのに先立ってカム50,51が回転し、坪量300[g/m^2]用の離間位置である位置Bへと移動し、2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aを離間する。次に記録媒体が進入した後にカム50,51は再び回転して位置Cへ移動し、2次転写ローラ30とベルト表面21aと当接(接触)させ、記録媒体に画像を転写する。そして、用紙排出に先立ってカム50,51が回転し、2次転写ローラ30と転写ベルト表面21aを離間するが、本来は位置Bに向かって移動するところ、紙間で調整パターンが作像されているため、変位量δの少ない位置Dへ移動して離間する。離間状態で調整パターンが2次転写ニップNを過ぎ、次の記録媒体の先端が進入するのに先立って、再びカム50,51は回転して位置Aへ移動して当接し、記録媒体に画像を転写する。つまり、本実施形態において、カム50,51は、カム駆動モータ58が制御手段600で制御されることで、位置A→位置B→位置C→位置Dの順番で回転変異する。
【0081】
上記構成により、紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、押し下げ機構となる接離手段500を用いていることで、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れを防止することもできる。
(第2の実施形態)
本形態は、第1の実施形態の構成に対して、紙間で調整パターンを作像する場合でも、記録媒体の厚みに応じた離間量としたものであり、装置構成は第1の実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略し、図12を用いて記録媒体、画像、カム位置のタイミングについてのみ説明する。本形態では、制御手段600によるカム駆動モータ58の作動を制御することによるカム50,51の回転制御が、第1の実施形態のように位置A→位置B→位置C→位置Dではなく、位置A→位置B→位置C→位置Bとされている。
【0082】
図12は記録媒体(坪量300[g/m^2])、画像、カム位置のタイミングチャートを示す。まず、カム50,51は位置Aで2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aと当接(接触)しており、記録媒体が進入するのに先立ってカム50,51が回転し、坪量300[g/m^2]用の離間位置である位置Bへと移動し、2次転写ローラ30とベルト表面21aを離間する。次に記録媒体が進入した後にカム50,51は再び回転し位置Cへ移動し2次転写ローラ30とベルト表面21aとを当接(接触)させ、記録媒体に画像を転写する。そして、用紙排出に先立ってカム50,51が回転し2次転写ローラ30とベルト表面21aを離間する。紙間では調整パターンが作像されているため、第1の実施形態では変位量δの小さい位置Dへ移動させたが、本形態では、紙厚情報どおりの位置Bへ移動して離間する。離間状態で調整パターンが2次転写ニップNを過ぎ、後続の用紙先端が進入するのに先立って、再びカムは回転して位置Aへ移動して当接(接触)し、記録媒体に画像を転写する。
【0083】
このような構成により、第1の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構となる接離手段500を紙厚に応じた変位量としているため、記録媒体の先端が進入する際や、記録媒体の後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(第3の実施形態)
本形態は、第2の実施形態の構成に対し、紙間で調整パターンを作像する際の2次転写バイアスをオフしたものである。装置構成は第1の実施形態と略同様であるため違う点を説明し、ここでは用紙とカム位置、および2次転写バイアスの関係について説明する。
【0084】
第3の実施形態において、2次転写バイアスは画像部では定電流制御を行い、2次転写対向ローラ30にトナー(本実施例ではマイナス極性)と同極性のバイアスを印加して転写する斥力転写方式を用いる。また、非画像部及びカム回転時の2次転写バイアスは定電圧制御を行っている。このような2次転写バイアスの制御は、図15に示すように、高圧電源61と制御手段600とを信号線で接続して高圧電源61を制御手段600の制御下におくことで実施する。
【0085】
図16は用紙として厚紙P2を2枚通紙したときの用紙、画像、カム位置、2次転写バイアスのタイミングチャートである。本形態では、2次転写バイアスは画像部では定電流制御を行い、2次転写対向ローラ30にトナー(本実施例ではマイナス極性)と同極性のバイアスを印加して転写する斥力転写方式を用いている。また、非画像部及びカム回転時の2次転写バイアスは定電圧制御を行っている。
【0086】
本形態において、1枚目の印刷が開始されると、2次転写ローラ30は中間転写ベルト21に当接する。このときのカム50,51は、本形態では位置Aとなる。このときに非画像部の2次転写バイアスが印加される(本実施例では+500V)。次に厚紙P2が2次転写ニップNに近づくと、カム50,51は位置B(変位量δ:1mm)へと移動を開始する。2次転写バイアスはカム50,51の回転と同期して、カム回転時のバイアスへと切り替わる(本実施例では+200V)。カム50,51が位置Bに到達したときは、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は離間している。この離間状態で用紙:厚紙P2が搬送され、2次転写ニップNに到達、つまり紙先端が進入したと同時にカム50,51が正転動作(本実施例では時計回りに回転)を開始する。
【0087】
次に画像先端が2次転写ニップNへ到達したときカム50,51は位置Cへ移動して停止し、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は接触している状態になり、2次転写バイアスは定電流制御へと切り替わり、画像部電流(本実施例では−30μA。印加電圧:−1000V)となる。
【0088】
次に2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が接触状態で画像部転写電流を印加して印刷を行い、画像後端が2次転写ニップNへ到達したときに、カム50,51は位置Bへの逆転動作(本実施例では反時計回りに回転)を開始し、離間動作を始める。この逆転動作の開始に同期して2次転写バイアスは定電流制御である画像部バイアスから定電圧制御のカム回転時バイアスへと切り替わるのだが、この紙間では調整パターンが作像されるため、2次転写バイアスを0、つまりオフしている。このとき、2次転写印加電圧は、画像部で−1000Vに対して、調整用パターン通過時は0Vである。つまり、画像部より調整用パターン通過時の電圧は絶対値で小さいこととなる。そして、用紙後端が2次転写ニップNへ到達したときにカム50,51は位置Bへ移動して停止する。このとき、通常ではカムの動作停止と同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアスから非画像部バイアスへと切り替わるのだが、紙間で調整パターンを作像するため、カム回転時と同様に2次転写バイアスは0Vとする。つまり紙間で作像された調整パターンは、2次転写バイアスがオフで且つ、2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が離間した状態で通過することとなる。
【0089】
続いて2枚目の用紙が2次転写ニップNへ搬送され、用紙先端が同ニップへ到達したときにカム50,51は1枚目とは反対方向(本実施例では逆転動作:反時計回りに回転)へと回転し、この回転開始に同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアスへと切り替わるが、調整パターンを作像した紙間であるため、2次転写バイアスは0Vのままである。以降、1枚目と同様にカム50,51の回転による2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24の接離と、カム回転に同期した2次転写バイアスの切替えを行いながら2枚目を印刷し、最終用紙を印刷した後、カム50,51は位置Cへ移動して停止する。このとき非画像部バイアスはカム停止と同期してオフにして印刷を終了する。
【0090】
このような第3の実施形態の構成によると、第1の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構を紙厚P2に応じた変位量としていることから、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態の構成に対して、紙間で調整パターンが作像される場合は、用紙転写時と逆極性のバイアスを印加するようにした。このバイアス制御は、高圧電源61を制御する制御手段600によって行われる。装置構成および、2次転写バイアスの印加タイミングは第3の実施形態と同様であるため割愛し、ここでは調整用パターンが紙間で作像されたときの2次転写バイアスについて図17を用いて説明する。
【0091】
図17は第3の実施形態に用紙として厚紙P2を2枚通紙したときの用紙、画像、カム位置、2次転写バイアスのタイミングチャートである。本形態でも1枚目の画像印刷が終わり、1枚目と2枚目の紙間で調整用パターンが作像される。2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が中間転写ベルト21を介して接触状態で画像部転写電流(本実施例では−30μA。印加電圧:−1000V)を印加して1枚目の印刷を行い、画像後端が2次転写ニップNへ到達したときに、カム50,51は位置Bへの逆転動作(本実施例では反時計回りに回転)を開始し、離間動作をはじめる。この逆転動作の開始に同期して2次転写バイアスは定電流制御である画像部バイアスから定電圧制御のカム回転時バイアスへと切り替わる。本形態ではカム回転時から用紙転写時と逆極性のバイアスを印加する方式としており、本形態でのカム回転時バイアスは+200Vである。
【0092】
このとき、2次転写印加電圧は、画像部で−1000Vに対して、カム回転時バイアスは−200Vである。つまり、画像部よりカム回転時の電圧は絶対値で小さいこととなる。そして、用紙後端が2次転写ニップNへ到達したときにカム50,51は位置Bへ移動して停止する。このとき、これらカムの動作停止と同期して、2次転写バイアスはカム回転時バイアスから非画像部バイアスへと切り替わり、紙間で調整パターン通過に備える。本形態での非画像部バイアスは用紙転写時と逆極性のバイアスで+500Vであり、非画像部バイアスも、画像部の印加電圧(−1000V)に対して小さいこととなる。
【0093】
この動作により紙間で作像された調整パターンは、2次転写バイアスが用紙転写時と逆極性且つ2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24が離間した状態で通過することとなる。
【0094】
続いて2枚目の用紙が2次転写ニップNへ搬送され、用紙先端がニップへ到達したときにカム50,51は1枚目とは反対方向(本実施例では逆転動作:反時計回りに回転)へと回転し、この回転開始に同期して2次転写バイアスはカム回転時バイアス(+200V)へと切り替わり、用紙進入後はカム駆動と同期して画像部バイアスへと切り替わり、2枚目を印刷して終了する。
【0095】
このような第4の実施形態の構成によると、第3の実施形態同様に紙間で2次転写体(中間転写ベルト21)にトナーが転写されることは無いため、2次転写クリーニング機構が不要となり、装置の小型化が可能になる。また、紙間での押し下げ機構を紙厚P2に応じた変位量としていることから、用紙先端が進入する際、用紙後端が排出される際の速度変動を抑えることができ、画像乱れも防止することができる。
(比較例1)
比較例1は第1の実施形態の構成に対して、2次転写ローラ用の押し下げ機構となる接離手段500を廃し、画像印刷時は2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aは常時当接している構成である。2次転写ローラ30とベルト表面21aが常時当接していることから、図13のように2次転写部にクリーニング機構を設ける必要がある。
(比較例2)
比較例2は第1の実施形態の構成に対して、2次転写ローラ用の押し下げ機構となる接離手段500を廃し、画像印刷時は2次転写ローラ30と中間転写ベルト21のベルト表面21aは常時当接している構成である。さらに、2次転写ローラ30とベルト表面21aが常時当接しているが、図2に示すように2次転写部にクリーニング機構となるクリーニングブレード39を設けていない。
(比較例3)
比較例3は比較例2の構成に対し、紙間で調整パターンが作像される際は、2次転写バイアスをオフする構成である。2次転写ローラ30と2次転写対向ローラ24は常時当接しているが、紙間で2次転写バイアスをオフすることで、調整パターンの2次転写ローラ30への転写を軽減しようとしている。
(通紙実験)
第1〜第4の実施形態と比較例1〜3の各構成において以下の条件で通紙実験を行った。
印刷枚数: A3 10枚 片面通紙
調整パターン:1回/3枚 紙間で実施
用紙:Mondi社製 「Color Copy(坪量300g/m^2)」「Color Copy(坪量160g/m^2)」
画像パターン:図14に示すハーフトーン画像
評価項目:画像部の異常画像(用紙突入による画像乱れ)
用紙裏面の汚れ(裏汚れ)
通紙実験の結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表内の○印は各異常の発生がなかったこと、△印は異常はあるが許容レベルであること、×印は異常の発生があったことを示す。
【0098】
第1〜第4の実施形態は、いずれも異常画像の発生は許容範囲内であり、特に第2〜第4の実施形態ではまったく異常が無かった。これに対し比較例1は用紙進入時の衝撃による中間転写体の速度変動が原因で画像乱れが発生し、比較例2では画像乱れに加え、紙間で2次転写ローラに転写された調整パターンが用紙裏面に写る、所謂裏汚れも発生していた。比較例3では2次転写バイアスをオフしているため、紙間で2次転写ローラ30に転写された調整パターンは、比較例2と比べると少なくなっているが、用紙裏汚れをなくすことはできなかった。以上より、本発明の効果を確認することができた。
【0099】
以上、第1〜第4の実施形態を基に本発明の説明を行なったが、本発明の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明をなんら限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改良、変形が可能である。たとえば、画像形成装置は複写機に限定されるものではなく、ファクシミリやプリンタあるいはこれらの複合機に適用することができる。画像形成装置はタンデム型の複写機ではなく、4サイクル型の複写機、または像担持体を1つしか持たない複写機などにも適用できる。
【0100】
また、上記形態では、記録媒体Pの進入箇所を二次転写ニップNとしているが、各感光体と中間転写ベルト21と1次転写ローラ25C,25M,25Y,25Kによって形成される1次転写ニップへ記録媒体Pを搬送してトナー画像Tを記録媒体Pに転写するタイプの転写装置およびこれを備えた画像形勢装置に適用しても、本形態と同様の作用効果を得ることができる。また、画像形成装置の形態としては、カラー画像を形成するものに限定されるものではなく、単色のトナーによる印刷を行う画像形成装置であっても良い。
【0101】
上記形態では、カム50,51によって対向部材となる2次転写ローラ30を接離するように構成したが、カム50,51及びその支持機構とカム駆動モータ58を2次転写ローラ30に配置して、2次転写対向ローラ24(中間転写ベルト21)側を2次転写ローラ30に対して接離するように構成して、中間転写ベルト21のベルト表面21aと2次転写ローラ30の表面30aとの間隔Xを調整可能としてもよい。
【0102】
上記形態では、高圧電源61からの2次転写対向ローラ24に対して2次転写バイアスを供給しているが、2次転写ローラ30側に2次転写バイアスを供給する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
20 転写装置
21 像担持体
21a 像担持面
30 対向部材
30a 接触面
40 接離手段
45 付勢手段
50,51 カム
50a,50b カム部
51a,51b カム部
58 カム駆動手段
61 転写手段
500 接離手段
N 転写ニップ
P 記録媒体
Pa 先の記録媒体
Pb 後の記録媒体
T1 調整用パターン
X 像担持面と接触面との間隔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【特許文献1】特開平10−83124号公報
【特許文献2】特開平6−274051号公報
【特許文献3】特開2007−286176号公報
【特許文献4】特開2009-145778号公報
【特許文献5】特開2006−047779号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の像担持面と対向する位置に設けられ記録媒体と接触する接触面を有する対向部材と、前記像担持面と前記接触面の間の転写ニップに圧力を加える付勢手段と、前記像担持面と前記接触面とを接離する接離手段と、前記転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に前記像担持面に形成された画像を転写する転写バイアスを付与する転写手段を有する転写装置において、
前記画像は、前記転写ニップに搬送される先の記録媒体と後の記録媒体の間に形成される調整用パターンであり、
前記接離手段は、前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に前記像担持面と前記接触面の間隔を広げることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、
前記カムは、前記カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、前記像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、
前記調整パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記像担持面と前記接触面の間隔を最小間隔とする位置を前記カムが占めるように、前記カム駆動手段が制御されることを特徴とする請求項1記載の転写装置。
【請求項3】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記転写バイアスの付与を停止することを特徴とする請求項2記載の転写装置。
【請求項4】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与することを特徴とする請求項2記載の転写装置。
【請求項5】
前記逆極性のバイアスは、前記記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さいことを特徴とする請求項4記載の転写装置。
【請求項6】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、前記対向部材を前記付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで上記間隔を広げることを特徴とする請求項2ないし5の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項7】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、上記間隔を狭めることを特徴とする請求項ないし5の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項8】
転写バイアスの切替えが、前記カムの駆動と同期していることを特徴とする請求項3ないし7の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項9】
前記接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、
前記カムは、前記カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、前記像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、
前記調整パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記間隔が前記記録媒体の厚みに応じて変化するように、前記カム駆動手段が制御されることを特徴とする請求項1記載の転写装置。
【請求項10】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記転写バイアスの付与を停止することを特徴とする請求項9記載の転写装置。
【請求項11】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与することを特徴とする請求項9記載の転写装置。
【請求項12】
前記逆極性のバイアスは、前記記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さいことを特徴とする請求項11記載の転写装置。
【請求項13】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、前記対向部材を前記付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで上記間隔を広げることを特徴とする請求項9ないし12の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項14】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、上記間隔を狭めることを特徴とする請求項9ないし12の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項15】
転写バイアスの切替えが、前記カムの駆動と同期していることを特徴とする請求項10ないし14の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1つに記載の転写装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像担持体の像担持面と対向する位置に設けられ記録媒体と接触する接触面を有する対向部材と、前記像担持面と前記接触面の間の転写ニップに圧力を加える付勢手段と、前記像担持面と前記接触面とを接離する接離手段と、前記転写ニップに搬送されて同ニップ部で挟まれる記録媒体に前記像担持面に形成された画像を転写する転写バイアスを付与する転写手段を有する転写装置において、
前記画像は、前記転写ニップに搬送される先の記録媒体と後の記録媒体の間に形成される調整用パターンであり、
前記接離手段は、前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に前記像担持面と前記接触面の間隔を広げることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、
前記カムは、前記カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、前記像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、
前記調整パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記像担持面と前記接触面の間隔を最小間隔とする位置を前記カムが占めるように、前記カム駆動手段が制御されることを特徴とする請求項1記載の転写装置。
【請求項3】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記転写バイアスの付与を停止することを特徴とする請求項2記載の転写装置。
【請求項4】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与することを特徴とする請求項2記載の転写装置。
【請求項5】
前記逆極性のバイアスは、前記記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さいことを特徴とする請求項4記載の転写装置。
【請求項6】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、前記対向部材を前記付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで上記間隔を広げることを特徴とする請求項2ないし5の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項7】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、上記間隔を狭めることを特徴とする請求項ないし5の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項8】
転写バイアスの切替えが、前記カムの駆動と同期していることを特徴とする請求項3ないし7の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項9】
前記接離手段は、カムと、当該カムを回転駆動するカム駆動手段とを有し、
前記カムは、前記カム駆動手段によって回転されて所定の角度で停止することで、前記像担持面と前記接触面の間隔を異なる間隔とする複数のカム部が形成されていて、
前記調整パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記間隔が前記記録媒体の厚みに応じて変化するように、前記カム駆動手段が制御されることを特徴とする請求項1記載の転写装置。
【請求項10】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記転写バイアスの付与を停止することを特徴とする請求項9記載の転写装置。
【請求項11】
前記調整用パターンが前記転写ニップを通過する際に、前記カムの回転位置によって前記像担持面と前記接触面の間隔を広げるとともに、前記記録媒体に画像を転写する時の転写バイアスに対し逆極性のバイアスを付与することを特徴とする請求項9記載の転写装置。
【請求項12】
前記逆極性のバイアスは、前記記録媒体への画像転写時の転写バイアスより絶対値で小さいことを特徴とする請求項11記載の転写装置。
【請求項13】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップを通過している先の記録媒体の後端が同転写ニップを通過する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、前記対向部材を前記付勢手段の付勢力に抗して押し返すことで上記間隔を広げることを特徴とする請求項9ないし12の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項14】
前記像担持面と前記接触面の間隔は、前記転写ニップへ搬送される後の記録媒体の先端が同転写ニップに進入する前に、前記カムを所定の回転角度で停止させて、上記間隔を狭めることを特徴とする請求項9ないし12の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項15】
転写バイアスの切替えが、前記カムの駆動と同期していることを特徴とする請求項10ないし14の何れか1つに記載の転写装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1つに記載の転写装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−18369(P2012−18369A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194913(P2010−194913)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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