説明

転写装置及び転写方法

【課題】転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に半田等を付着させて複数のランドに転写する際に、隣接するランドに転写した半田等の転写パターンが当該半田等のはみ出しによりつながるブリッジ(ランド間のショート)が発生することを防止する。
【解決手段】転写治具の各転写ピン13のうちのブリッジの発生が予想される部分に凹状部21を形成する。凹状部21の形状は、円弧状であっても良いし、四角形状又は三角形状であっても良い。このように、各転写ピン13の下端のうちのブリッジの発生が予想される部分に凹状部21を形成すれば、ブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しを凹状部21によって抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤を付着させて転写対象となる複数のランドに転写する転写装置及び転写方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特許第3074985号公報)に記載されているように、転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤を付着させて転写対象となる複数のランドに転写するようにしたものがある。
【特許文献1】特許第3074985号公報(第1頁〜第2頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年の実装技術では、小型化・高密度配線化が進み、ランドが小型化し、ランドの間隔(ピッチ)も狭くなってきている。このため、狭ピッチのランドに半田等を転写する場合に、隣接するランドに転写した半田等の転写パターンが当該半田等のはみ出しによりつながるブリッジ(ランド間のショート)が発生することが問題となっている。
【0004】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、ランド間のブリッジの発生を防止できる転写装置及び転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤(以下これらを「半田等」という)を付着させて、当該複数の転写ピンの下端の半田等を転写対象となる複数のランドに転写する転写装置において、前記転写ピンの下端のうちの、半田等を転写するランド間が半田等のはみ出しによりつながるブリッジの発生が予想される部分に凹状部又はカット部を形成したものである。このように、転写ピンの下端のうちのブリッジの発生が予想される部分に凹状部又はカット部を形成すれば、ブリッジの発生原因となる半田等のはみ出しを凹状部又はカット部によって抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。
【0006】
この場合、請求項2のように、転写ピンの下端の形状を、隣接する転写ピンの凹状部どうし又はカット部どうしが対向するように形成すると良い。このようにすれば、ブリッジの発生をより確実に防止できる。
【0007】
更に、請求項3のように、ランドが角型の形状に形成されている場合には、転写ピンの下端の形状を角型の形状に形成すると良い。このようにすれば、ブリッジの発生を抑えながら、ランド上の半田等の転写パターンの面積を増加させることができ、実装信頼性を向上できる。
【0008】
本発明は、全ての転写ピンに凹状部又はカット部を形成するようにしても良いが、隣接するランドの間隔が広ければ、凹状部又はカット部を形成しなくても、ブリッジが発生しない。
【0009】
この点を考慮して、請求項4のように、隣接する転写ピンの間隔(ランドの間隔)が所定値以下の転写ピンに、凹状部又はカット部を形成するようにしても良い。このようにすれば、ブリッジの発生を防止する必要がある転写ピンについてのみ、凹状部又はカット部を形成するだけで済み、転写ピンの加工コストを抑えることができる。
【0010】
その他、本発明は、請求項5のように、1つのランドに転写する転写ピンを複数の分割部に分割し、前記複数の分割部で前記1つのランドに半田等を転写するようにしても良い。この場合、複数の分割部間の隙間が前記凹状部と同様の役割を果たし、ブリッジの発生を防止できる。
【0011】
ところで、隣接する転写ピン間の間隔が狭いと、転写を繰り返す回数が増加するに従って、隣接する転写ピン間に半田等の滓が詰まって、隣接するランド間でブリッジが発生しやすくなる。
【0012】
この点を考慮して、請求項6のように、少なくとも2回の転写工程でそれぞれ異なる転写治具を使用して転写対象となる複数のランドに半田等を転写するようにすると共に、転写対象となる複数のランドを、各転写工程で半田等を転写するランドの最小間隔が所定値以上となるようにグループ分けし、各転写工程で半田等を転写するランドに対応する位置に設けられた転写ピンで半田等を当該ランドに転写するようにしても良い。このようにすれば、隣接するランドの間隔が狭くても、各転写工程で使用する転写治具の転写ピンの最小間隔を半田等の滓が詰まりにくい間隔に広げることが可能となり、隣接するランド間でブリッジが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を図1乃至図6に基づいて説明する。
図1に示すように、転写治具11の下面には、転写対象となる複数のランド12の位置に対応する位置に複数の転写ピン13が下向きに設けられている。転写治具11と転写ピン13は、例えば金属の切削加工等により一体に形成しても良いし、転写治具11と転写ピン13とを別体に形成して、転写治具11に転写ピン13を取り付けるようにしても良い。転写対象となるランド12は、メイン基板14上に実装されたサブ基板15の上面に形成されている。
【0015】
この転写治具11は、例えば部品実装機の装着ヘッド(図示せず)に吸着ノズルと取換え可能に保持され、当該装着ヘッドによって転写治具11をXYZ方向に適宜移動させることで、該転写治具11の各転写ピン13の下端に、半田、フラックス又は接着剤を付着させた後、各転写ピン13の下端をサブ基板15の各ランド12に接触させることで、各ランド12に半田16等を一括して転写する。
【0016】
本実施例1では、転写治具11の複数の転写ピン13のうち、隣接する転写ピン13の間隔(ランド12の間隔)が所定値A以下の転写ピン13については、その下端の形状が図2乃至図6に示す例1〜例5のいずれかに形成されている。ここで、所定値Aは、半田16等を転写するランド12間が半田16等のはみ出しによりつながるブリッジが発生する可能性のある最大間隔に設定されている。従って、隣接する転写ピン13の間隔(ランド12の間隔)が所定値Aよりも広い場合は、ブリッジが発生しないとみなせるため、この様な広い間隔の転写ピン13については、その下端の形状を従来と同様の形状、例えば、ランド12の形状とほぼ相似形で、ランド12よりも少し小さく形成すれば良い(但し、本発明は、転写治具11の全ての転写ピン13を図2乃至図6に示す例1〜例5のいずれかの形状に形成しても良いことは言うまでもない)。
【0017】
上述したように、隣接する転写ピン13の間隔(ランド12の間隔)が所定値A以下の転写ピン13については、その下端の形状が図2乃至図6の例1〜例5のいずれかに形成されている。図2乃至図6の例1〜例5では、各ランド12が四角形等の角型の形状に形成され、これに対応して、各転写ピン13の下端の形状も角型の形状に形成されている。但し、本発明は、ランド12の形状が円形等の丸形であっても、適用して実施できる。
【0018】
[例1]
図2に示す例1では、各転写ピン13の下端のうちの、ブリッジの発生が予想される部分である隣接側の辺部の中央付近に、それぞれ凹状部21が形成されている。凹状部21の形状は、円弧状であっても良いし、四角形状又は三角形状であっても良い。このように、各転写ピン13の下端のうちの隣接側の辺部にそれぞれ凹状部21を形成すれば、ブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しを凹状部21によって抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。
【0019】
[例2]
図3に示す例2では、各転写ピン13の下端のうちの、ブリッジの発生が予想される部分である隣接側の辺部とその反対側の辺部に、それぞれ凹状部22が形成されている。凹状部22の形状は、四角形状又は三角形状であっても良いし、円弧状であっても良い。このように、各転写ピン13の下端のうちの隣接側の辺部とその反対側の辺部にそれぞれ凹状部22を形成しても、ブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しを凹状部22によって抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。
【0020】
[例3]
図4に示す例3では、1つのランド12に転写する転写ピン13を2つの分割部13a,13bに分割し、これら2つの分割部13a,13bで1つのランド12に半田16等を転写するようにしている。この場合、2つの分割部13a,13b間の隙間がブリッジの発生が予想される部分に位置するようにすれば良い。この構成では、2つの分割部13a,13b間の隙間が例1、例2の凹状部21,22と同様の役割を果たし、ブリッジの発生を防止できる。尚、1つのランド12に転写する転写ピン13を3つ以上に分割するようにしても良い。
【0021】
[例4]
図5に示す例4では、各転写ピン13の下端のうちの、各ランド12の4隅部に対応する部分に、それぞれカット部23が形成されている。このように、各転写ピン13の下端の4隅部をカットした形状に形成しても、ブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しを抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。
【0022】
[例5]
図6に示す例5では、ランド12の角部が隣接して、ランド12の角部間でブリッジがの発生する可能性があるため、各転写ピン13の隣接する角部にそれぞれカット部24が形成されている。このようにすれば、ランド12の角部間でのブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しをカット部24によって抑えることができて、ランド12の角部間でのブリッジの発生を防止できる。
【0023】
以上説明した図2乃至図6の例1〜例5のいずれかの転写ピン13で半田16等をランド12に転写する前と、転写した後に、それぞれ部品実装機のマークカメラ(回路基板の上面を撮像するカメラ)で、転写対象となるサブ基板15の上面を撮像し、転写前の画像と転写後の画像との差分画像に基づいて、各ランド12の半田16等の転写状態の良否やブリッジの有無を検査する。
【0024】
また、転写ピン13を何回も使用するうちに、ピン曲りやピン欠損等に加えて、転写ピン13に半田等の残り滓が付着して汚れてしまい、転写品質に悪影響を与える可能性がある。
【0025】
この対策として、本実施例1では、転写治具11の各転写ピン13に半田等を付着させる前に、部品実装機のパーツカメラ(吸着ノズルに吸着した部品を下方から撮像するカメラ)で、転写治具11の各転写ピン13の下端を下方から撮像して、各転写ピン13の下端の画像を認識し、これを予め登録された使用前の汚れのない正常な転写ピンの画像と比較することで、ピン曲り、ピン欠損、ピン先の汚れ等の不良の有無を検査し、その結果、不良が検出されれば、生産を中止して転写治具11を交換し、或は、ピン先の汚れの場合には、ピン先を清掃して汚れを取り除く。
【0026】
更に、本実施例1では、転写治具11の各転写ピン13に十分な量の半田等が付着しているか否かを検査するために、転写治具11の各転写ピン13に半田等を付着させる前と後に、それぞれ、部品実装機のパーツカメラで転写治具11の各転写ピン13の下端を下方から撮像して、各転写ピン13の下端の画像を認識し、半田等の付着前後の画像を比較することで、転写治具11の各転写ピン13の半田等の付着状態を検査する。
【0027】
以上説明した本実施例によれば、転写ピン13の下端のうちのブリッジの発生が予想される部分に凹状部又はカット部を形成し、或は転写ピン13の下端を複数に分割した形状に形成するようにしたので、ブリッジの発生原因となる半田16等のはみ出しを抑えることができて、ブリッジの発生を防止できる。
【実施例2】
【0028】
ところで、隣接する転写ピン13間の間隔が狭いと、転写を繰り返す回数が増加するに従って、隣接する転写ピン13間に半田等の滓が詰まって、隣接するランド12間でブリッジが発生しやすくなる。
【0029】
この点を考慮して、図7に示す本発明の実施例2では、2回の転写工程でそれぞれ異なる転写治具11a,11bを使用して転写対象となる複数のランド12に半田16等を転写するようにすると共に、転写対象となる複数のランド12を、各転写工程で半田16等を転写するランド12の最小間隔が所定値B以上となるようにグループ分けし、各転写工程で半田等を転写するランド12に対応する位置に設けられた転写ピン13で半田等を当該ランド12に転写するようにしている。ここで、所定値Bは、隣接する転写ピン13間に半田等の滓が詰まる可能性のある間隔の最大値に設定されている。従って、転写対象となるサブ基板15の複数のランド12を、各転写工程で半田16等を転写するランド12の最小間隔が所定値B以上となるようにグループ分けして、グループ毎に別々に転写するようにすれば、サブ基板15のランド12の間隔が狭くても、各転写工程で使用する転写治具11a,11bの転写ピン13の最小間隔を半田等の滓が詰まりにくい間隔に広げることが可能となり、隣接するランド12間でブリッジが発生することを防止できる。
【0030】
尚、本実施例2では、各転写ピン13の下端の形状は、従来と同様の形状、例えば、ランド12の形状とほぼ相似形で、ランド12よりも少し小さく形成すれば良いが、前記実施例1で説明した図2乃至図6の例1〜例5のいずれかの形状の転写ピン13を用いても良い。
【0031】
また、上記実施例1,2では、サブ基板15のランド12に半田16等を転写する場合について説明したが、メイン基板14(或は通常の回路基板)のランドに半田等を転写する場合も、同様に本発明を適用して実施でき、また、基板に実装した電子部品の上面に形成されたランドに半田等を転写する場合も、同様に本発明を適用して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1で用いる転写治具と基板と関係を説明する図である。
【図2】(a)は例1の転写ピンの下端形状とランド形状との関係を示す図、(b)は例1の転写ピンによる半田等の転写状態を示す図である。
【図3】(a)は例2の転写ピンの下端形状とランド形状との関係を示す図、(b)は例2の転写ピンによる半田等の転写状態を示す図である。
【図4】(a)は例3の転写ピンの下端形状とランド形状との関係を示す図、(b)は例3の転写ピンによる半田等の転写状態を示す図である。
【図5】(a)は例4の転写ピンの下端形状とランド形状との関係を示す図、(b)は例4の転写ピンによる半田等の転写状態を示す図である。
【図6】(a)は例5の転写ピンの下端形状とランド形状との関係を示す図、(b)は例5の転写ピンによる半田等の転写状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の転写方法を説明する図であり、(a)は1回目の転写工程を説明する図、(b)は2回目の転写工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
11,11a,11b…転写治具、12…ランド、13…転写ピン、13a,13b…分割部、15…サブ基板、16…半田、21,22…凹状部、23,24…カット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤(以下これらを「半田等」という)を付着させて、当該複数の転写ピンの下端の半田等を転写対象となる複数のランドに転写する転写装置において、
前記転写ピンの下端のうちの、半田等を転写するランド間が半田等のはみ出しによりつながるブリッジの発生が予想される部分に凹状部又はカット部を形成したことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記転写ピンの下端の形状を、隣接する転写ピンの前記凹状部どうし又はカット部どうしが対向するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記ランドが角型の形状に形成されている場合に、前記転写ピンの下端の形状を角型の形状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の転写装置。
【請求項4】
隣接する転写ピンの間隔が所定値以下の転写ピンに、前記凹状部又はカット部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の転写装置。
【請求項5】
転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤(以下これらを「半田等」という)を付着させて、当該複数の転写ピンの下端の半田等を転写対象となる複数のランドに転写する転写装置において、
1つのランドに転写する前記転写ピンを複数の分割部に分割し、前記複数の分割部で前記1つのランドに半田等を転写することを特徴とする転写装置。
【請求項6】
転写治具に下向きに設けた複数の転写ピンの下端に、半田、フラックス又は接着剤(以下これらを「半田等」という)を付着させて、当該複数の転写ピンの下端の半田等を転写対象となる複数のランドに転写する転写方法において、
少なくとも2回の転写工程でそれぞれ異なる転写治具を使用して前記転写対象となる複数のランドに半田等を転写する転写方法であって、
前記転写対象となる複数のランドを、各転写工程で半田等を転写するランドの最小間隔が所定値以上となるようにグループ分けし、各転写工程で半田等を転写するランドに対応する位置に設けられた転写ピンで半田等を当該ランドに転写することを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−56368(P2010−56368A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220941(P2008−220941)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】