説明

転化率の向上および触媒使用量の減少のためのアルキル化プロセス

【課題】アルキル化芳香族化合物を製造するための改良プロセスの提供。
【解決手段】オレフィンおよび芳香族化合物を、アルキル化ユニット100の少なくとも第1および第2の縦方向に空間を空けた触媒的反応帯へアルキル化反応条件下で導入してアルキル化生成物を得るステップを含み、第2の触媒的反応帯103bは第1の触媒的反応帯103aの上に配置されており、第1および第2の触媒的反応帯からの芳香族化合物124は、アルキル化プロセスの発熱的な反応熱により気化された芳香族化合物の少なくとも一部を再液化するために冷却手段123と接触し、オレフィン104は、第1および第2のオレフィン供給流れ104a,104bを経由して、約10%未満だけ変化する少なくとも第1および第2の触媒的反応帯への入口でのオレフィン分圧を維持するようなオレフィン供給速度で第1および第2の触媒的反応帯に導入される方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンおよび芳香族化合物のアルキル化反応からアルキル化された芳香族化合物を製造するための改良された触媒的蒸留プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液相アルキル化プロセスに対する触媒的蒸留プロセスの利点は、よく認識されている。例えば、Smith,Jr.に対する特許文献1、特許文献2、特許文献3、Smith,Jr.らに対する特許文献4、およびJones,Jr.らに対する特許文献5を参照。
【0003】
最も一般的なアルキル化反応のいくつかとしては、エチレンまたはプロピレンのいずれかを用いてベンゼンをアルキル化し、それぞれエチルベンゼンまたはクメンを生成する反応が挙げられる。エチルベンゼンは、ポリスチレンの前駆体であるスチレンの製造において使用されるという点で特に重要であり、他方、クメンはフェノールおよびアセトンの製造において使用されるという点で特に重要である。
【0004】
これまで使用された触媒的蒸留ユニットは、それ自体で、オレフィンおよび芳香族化合物の反応物質をアルキル化された芳香族化合物生成物へと完全に転化することができない。従って、この触媒的蒸留プロセスは、通常、任意の残存する未反応のオレフィンおよび芳香族化合物をオレフィンのほぼ完全な転化を伴ってアルキル化された芳香族化合物生成物へと転化するための、液相で稼動するアルキル化最終反応器を備える。Pohlに対する公開された特許文献6を参照のこと。
【0005】
アルキル化反応についての触媒的蒸留法は多くの恩恵をもたらしたが、改良を必要とする領域がいくつか存在する。例えば、このプロセスは、反応効率の欠如(すなわち、オレフィン転化が妨げられること)という問題を抱えていることが知られている。このオレフィン転化が妨げられることは、アルキル化ユニットにおいて必要とされるオレフィン分圧を制御することができないことによって主に引き起こされる。
【0006】
特に、(触媒上で液相で起こる反応の)反応熱は、芳香族化合物の部分的な気化、および触媒の最下部から最上部までの蒸発速度の顕著な増加を引き起こす。反応器の中を対向して上向きに流れる気体状のオレフィンは液相に吸収され、触媒上での反応によって消費される。気液平衡はほぼ維持されるため、触媒の最下部から最上部までのオレフィン分圧の連続的な減少およびそれに対応する液相オレフィン濃度の減少という結果となる。この液相オレフィン濃度の減少は、対応してより低い反応速度を引き起こし、オレフィンが反応器を上に進むにつれて同じ漸増するオレフィン転化を維持するための触媒の量がますます多くなることが必要となる。
【0007】
触媒のコストは、通常、かなりのものであるため、より多量の触媒は、そのプロセスについてのかなりの資本投資となりかねない。加えて、より多量の触媒は、触媒を収容するためのより大きいアルキル化反応器を必要とするため、プロセスの資本コストおよび運転費にさらに悪影響を及ぼす。
【0008】
何らかの程度のオレフィン分圧の制御が当該分野で実現されているが、これらはすべての触媒床において満足できるオレフィン転化率を維持することはできていない。例えば、オレフィン注入点の数および各注入点への流量を制御することと組合せて、触媒的蒸留ユニットの塔底への最適のベンゼン蒸気供給速度を採用することにより、触媒的蒸留ユニット全体で改善されたオレフィン転化率が実現されている。しかしながら、この改善をもってしても、オレフィン転化率は、未だ中央から上方の触媒床において急激に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,307,254号明細書
【特許文献2】米国特許第4,443,559号明細書
【特許文献3】米国特許第4,849,569号明細書
【特許文献4】米国特許第5,243,115号明細書
【特許文献5】米国特許第4,439,350号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0254412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、オレフィンの改善された転化率を実現するアルキル化反応のための改良された触媒的蒸留プロセスに対するニーズが存在する。特に、触媒的蒸留ユニットの触媒全体にわたってより良好に所望のオレフィン分圧を維持することによって、オレフィンの転化率を改善するというニーズが存在する。かかる改良が実現すれば、より少ない量の触媒の使用、その結果としてアルキル化反応器のサイズの減少および/またはアルキル化反応器にわたるより高い全オレフィン転化率が可能になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的および他の目的は、まず、触媒的蒸留反応器中の蒸気導入量およびオレフィン分圧の変化が低減されており、反応段階の有効数を高めることができる、触媒的蒸留反応器においてアルキル芳香族化合物を製造するプロセスを提供することにより実現される。このプロセスは、
オレフィンおよび芳香族化合物を、アルキル化ユニットの少なくとも第1および第2の縦方向に空間を空けた触媒的反応帯へアルキル化反応条件下で導入して、アルキル化された生成物を得るステップを含み、前記第2の触媒的反応帯は前記第1の触媒的反応帯の上に配置されており、
前記少なくとも第1および第2の触媒的反応帯の各々からの蒸気状の芳香族化合物は前記蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するために冷却手段と接触し、
前記オレフィンは、それぞれ第1および第2のオレフィン供給流れを経由して、約10%未満だけ変化する少なくとも第1および第2の触媒的反応帯への入口でのオレフィン分圧を維持するようなそれぞれのオレフィン供給速度で、少なくとも前記第1および第2の触媒的反応帯に導入されることを特徴とする。
【0012】
具体的な実施形態では、前記プロセスは、
a)1つ以上の芳香族化合物および1つ以上のオレフィンを第1のアルキル化触媒の少なくとも2つの下方床、最下部床、および最上部床を有する触媒的蒸留ユニットに導入するステップであって、前記触媒的蒸留ユニットはアルキル化反応条件下で複合液相−気相モードで稼動され、前記最下部床の下へ排出するアルキル化された芳香族化合物および未反応の芳香族化合物を含む液体アルキル化装置塔底流出液、および前記最上部床の上へ排出する未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンを含むアルキル化装置蒸気塔頂流を生成するステップと、
b)前記アルキル化装置蒸気塔頂流を液化して液化されたアルキル化装置塔頂流を生成し、前記液化されたアルキル化装置塔頂流を、第2のアルキル化触媒を有しアルキル化反応条件下で液相で稼動される最終反応器へ導くステップであって、前記アルキル化装置塔頂流中の前記未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンは、前記未反応のオレフィンの実質的に完全な消費を伴ってアルキル化された芳香族化合物に変換され、これによってアルキル化された芳香族化合物を含み本質的に未反応のオレフィンを含まない最終反応器流出液を生成するステップと、
c)前記最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物の実質的な部分を除去して抜き取られた最終反応器流出液を生成するステップと、
d)前記最終反応器流出液の少なくとも一部を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するのに十分低い温度に冷却して、これによって抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するステップと、
e)前記触媒的蒸留ユニットの稼動の間、前記抜き取られ冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒の少なくとも前記2つの下方床の上へ導くステップと、
を含む。
【0013】
別の実施形態では、前記プロセスは、
a)1つ以上の芳香族化合物および1つ以上のオレフィンを第1のアルキル化触媒の少なくとも2つの下方床、最下部床、および最上部床を有する触媒的蒸留ユニットに導入するステップであって、前記触媒的蒸留ユニットはアルキル化反応条件下で複合液相−気相モードで稼動されて、前記最下部床の下に排出するアルキル化された芳香族化合物および未反応の芳香族化合物を含む液体アルキル化装置塔底流出液、ならびに前記最上部床の上に排出する未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンを含むアルキル化装置蒸気塔頂流を生成するステップと、
b)未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンの存在下でアルキル化された芳香族化合物を選択的に除去することができる適切な吸収剤を使用することにより前記アルキル化装置蒸気塔頂流中の任意のアルキル化された芳香族化合物を実質的に除去して、これによって洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成するステップと、
c)前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流を液化して液化され洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成し、前記液化され洗浄されたアルキル化装置塔頂流を第2のアルキル化触媒を有しかつアルキル化反応条件下で液相で稼動される最終反応器へと導くステップであって、前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流中の前記未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンは前記未反応のオレフィンの実質的に完全な消費を伴ってアルキル化された芳香族化合物に転化され、これによってアルキル化された芳香族化合物を含み本質的に未反応のオレフィンを含まない最終反応器流出液を生成するステップと、
d)前記最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物の実質的な部分を除去して、抜き取られた最終反応器流出液を生成するステップと、
e)前記抜き取られた最終反応器流出液の少なくとも一部を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するのに十分低い温度に冷却して、これによって抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するステップと、
f)前記触媒的蒸留ユニットの稼動の間、前記抜き取られ冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒の少なくとも前記2つの下方床の上へ導くステップと
を含む。
【0014】
別の実施形態では、前記プロセスは、
a)1つ以上の芳香族化合物および1つ以上のオレフィンを、3〜10つの充填された(baled)触媒ユニットの縦方向の配置を備えかつ最下部の充填された触媒ユニットおよび最上部の充填された触媒ユニットを有する第1のアルキル化触媒を有する触媒的蒸留ユニットに導入するステップであって、前記触媒的蒸留ユニットは、アルキル化反応条件下で複合液相−気相モードで稼動されて、前記最下部の充填された触媒ユニットの下に排出するアルキル化された芳香族化合物および未反応の芳香族化合物を含む液体アルキル化装置塔底流出液、ならびに前記最上部の充填された触媒ユニットの上に排出する未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンを含むアルキル化装置蒸気塔頂流を生成し、オレフィンは、3〜10つの充填された触媒ユニットの前記縦方向の配置の下方部の等しい数の充填された触媒ユニットに供給する2〜7本の分岐されたオレフィン供給ラインによって前記第1のアルキル化触媒に供給され、前記充填された触媒ユニットの数は前記分岐されたオレフィン供給ラインの数より大きく、これによって充填された触媒ユニットの上方部がオレフィン供給ラインを持たない状態で残る、ステップと、
b)未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンの存在下でアルキル化された芳香族化合物を選択的に除去することができる適切な吸収剤を使用することにより前記アルキル化装置塔頂流中の任意のアルキル化された芳香族化合物を実質的に除去して、これによって洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成するステップと、
c)前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流を液化して液化され洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成し、前記液化され洗浄されたアルキル化装置塔頂流を第2のアルキル化触媒を有しかつアルキル化反応条件下で液相で稼動される最終反応器へと導くステップであって、前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流中の前記未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンは前記未反応のオレフィンの実質的に完全な消費を伴ってアルキル化された芳香族化合物に転化され、これによってアルキル化された芳香族化合物を含み本質的に未反応のオレフィンを含まない最終反応器流出液を生成するステップと、
d)前記最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物の実質的な部分を除去して、抜き取られた最終反応器流出液を生成するステップと、
e)前記抜き取られた最終反応器流出液の少なくとも一部を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するのに十分低い温度に冷却して、これによって抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するステップと、
f)前記触媒的蒸留ユニットの稼動の間、前記抜き取られ冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒へ導くステップであって、冷却された最終反応器流出液は、前記分岐されたオレフィンラインの数以上の数の分岐された供給ラインへと分岐され、冷却された最終反応器流出液の前記分岐された供給ラインの各々がオレフィンによって供給されている充填された触媒ユニットの前記下方部の各々の上へと注入するステップと
を含む。
【0015】
本発明はさらに、上記のプロセスを実施するための触媒的蒸留装置を包含する。好ましい実施形態では、前記触媒的蒸留システムは、
a)触媒的蒸留ユニットであって、第1のアルキル化触媒、液体アルキル化装置塔底流出液を排出するための前記第1のアルキル化触媒の最下部より下のアルキル化装置塔底出口、およびアルキル化装置蒸気塔頂流を排出するための前記第1のアルキル化触媒の最上部より上のアルキル化装置塔頂出口を有し、アルキル化反応および蒸留の条件下で複合液体−気相で稼動できる、触媒的蒸留ユニットと、
b)前記アルキル化装置蒸気塔頂流中の任意のアルキル化された芳香族化合物を選択的かつ実質的に除去して洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成するための手段と、
c)前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流を液化してそれを、第2のアルキル化触媒および反応した最終反応器流出液を排出するための最終反応器出口を有する最終反応器に移すための手段であって、前記最終反応器はアルキル化条件下で液相で稼動できる、手段と、
d)前記最終反応器流出液を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化させるのに十分低い温度に冷却するための手段と、
e)冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒へと導くための手段と、
を備える。
【0016】
本発明は、発熱的な反応熱から気化された芳香族化合物、ほとんどは芳香族化合物反応物質(例えば、ベンゼン)でありそしてより小さい程度ではあるがアルキル化された芳香族化合物(例えば、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンなど)を再液化することによって、オレフィン分圧を有利に制御する。芳香族化合物を再液化することによって、芳香族化合物蒸気の流れは、もはや実質的にアルキル化塔まで上昇せず、このために触媒床の各々へのオレフィン分圧供給のより均一、最適/有益な分配およびより均一な対向流の蒸気−液体流動様式が可能になる。従って、先行技術において実施されてきたものとは対照的に、各注入点におけるオレフィン供給速度は、オレフィン分圧および反応速度を最大にするためには、もはや塔の上方へと高める必要はない。
【0017】
さらに、芳香族化合物蒸気の流れはもはや実質的にアルキル化装置塔の上方へと高められないため、アルキル化装置の塔底における初期の芳香族化合物蒸気供給は、アルキル化装置の頂部における蒸気導入量を維持または減少しつつ、先行技術におけるよりも有意に高くすることができる。アルキル化装置の頂部における蒸気導入量の減少によって、より小さい直径のアルキル化装置が可能になる。なぜなら、アルキル化装置の頂部における水圧荷重は制御されているからである。
【0018】
さらに、アルキル化装置の塔底における芳香族化合物蒸気のより高い初期流れによって、任意の設計のオレフィン分圧の制約を超えずに、アルキル化装置の塔底床におけるオレフィンのより高い初期流れが可能になる。例えば、先行技術のプロセスにおいて塔底から18%/21%/24%/37%に分布した4つのオレフィン供給注入口は、本発明においては33%/26%/22%/19%に分布した4つのオレフィン注入口とすることが可能である。
【0019】
下方の触媒床の各々へのより高いオレフィン流れ(前の床を出た未反応のオレフィンに加えて未使用のメイクアップオレフィン供給を含む)およびその結果生じるこれらの床の各々におけるより高いオレフィン転化は、下方の触媒床における触媒生産性(触媒の単位体積あたりの変換されたオレフィン)を著しく高める。これは、先行技術のより低いが増加し続けるオレフィンの流れおよびより低いオレフィン転化とは対照的である。
【0020】
さらに、同じ触媒床の高さを保ってアルキル化装置の直径が減少すると、下方の触媒床においてはるかにより高い触媒生産性がもたらされる。なぜなら、オレフィン転化が高まり、触媒体積が減少するからである。結果として生じるより高い触媒生産性は、負の結果をもたらさない。なぜなら、両方の場合の触媒生産性は、触媒の連続運転時間または寿命予想値において重要な因子とならないほどに顕著に低いからである。
【0021】
下方の床(すなわち、未使用のメイクアップオレフィン供給を受ける床)を横切って転化されるオレフィンの量は、本発明においては先行技術よりも有意に高い。例えば、先行技術プロセスにおける下方の4つの触媒床を横切って転化されるオレフィンは、通常、全オレフィン供給の70%である。これは、オレフィン転化が、40%少ない触媒を用いて通常全オレフィン供給の少なくとも72%である本発明とは対照的である。
【0022】
上方の触媒床(すなわち、未使用のメイックアップオレフィン供給を受けない床)もより良好に機能する。これらの触媒床は、全体のCDアルキル化装置オレフィン転化が少なくとも75−80%(最終反応器を用いる場合)であるように下方の床を出た転化されなかったオレフィンをさらに反応させ、そして連続運転時間(触媒の経時劣化)についての余裕度を提供する。第1に、先行技術のプロセスと比べて、気化された芳香族化合物の液化に起因して、未使用のメイクアップオレフィン供給の注入がない場合であってもオレフィンの分圧はより高い。第2に、先行技術のプロセスと比べて、本発明においては、下方の触媒床から出て上方の触媒床に入る転化されなかったオレフィンはより少ない。第3に、同じ全量の触媒とより小さい直径アルキル化装置のために、先行技術のプロセスと比べて、下方の床に収容される触媒は少なくなり、従ってより多くの触媒が上方の床に収容される。これは、本発明においては、同じ床高さを有するより多数の上方の触媒床が存在し、オレフィンに接触しオレフィンを転化するために利用できる上方の床全体の高さがより多いことを意味する。
【0023】
改良された下方の触媒床の稼動および改良された上方の触媒床の稼動は、同量の触媒を用いた場合に先行技術のプロセスと比べてアルキル化装置における有意に高いオレフィン転化(設計の連続運転時間に依存して、5%〜15%高いアルキル化装置転化率)、または先行技術のプロセスと比べて同じオレフィン転化を実現するために必要とされる有意に少ない触媒(連続運転時間についての触媒の余裕度に依存して、30%〜40%少ない触媒)をもたらす。
【0024】
本発明のより高いオレフィン転化によって、先行技術よりも、より小さい最終反応器およびより少ない最終反応器触媒の使用が可能になる。なぜなら、より少ないオレフィンしか最終反応器において転化される必要がないからである。本発明のオレフィン転化率が先行技術のプロセスとほぼ同じである場合、これはさらにより小さいアルキル化装置およびより少ないアルキル化装置触媒を可能にするであろう。いずれの場合も経済的な恩恵がもたらされる。
【0025】
さらに、同量の全触媒を有するより小さい直径アルキル化装置にはより多くの総数の触媒床が存在することができるため、先行技術において実施されているものとは対照的に、本発明では、付加的な触媒床にオレフィン供給を分配させるためのより多くの注入点が存在することができる。例えば、先行技術のプロセスにおける(塔底から)18%/21%/24%/37%に分布した4つのオレフィン供給注入口は、本発明においては28%/23%/19%/16%/14%に分布した5つのオレフィン注入口とすることができる。
【0026】
より多くの触媒床へのオレフィンのより均一な分配は、1)より多くの床が未使用のメイクアップオレフィン供給を受け取り、高い生産性で稼動すること;ならびに2)より多くの床が最大オレフィン分圧で稼動することを意味する。これは、効果的に反応段階の数を高める。オレフィン供給のより多い分配および下方の触媒床生産性は、より均一な触媒経時劣化およびより長い触媒連続運転時間の可能性をももたらす可能性がある。
【0027】
最大オレフィン分圧にあるCDアルキル化装置床がより多いと、転化率はさらに高くなり、下方の必要とされる最終反応器転化はより低くなる。全体として、触媒的蒸留ユニット全体の平均オレフィン分圧は本発明においてはより高く、それゆえ触媒的蒸留ユニット全体の平均反応速度はより高い。
【0028】
特に好ましい実施形態では、本発明は、アルキル化反応の間、最終反応器からの流出液を冷却し、この冷却された最終反応器流出液をアルキル化触媒に供給するためのプロセスを含めることによって、上記の利点を提供する。冷却された最終反応器流出液は、芳香族化合物の液化によって芳香族化合物の蒸気圧の低下をもたらすことによって、アルキル化触媒中の所望のオレフィン分圧を維持することを有利に補助する。このプロセスは、オレフィンの転化の改善(例えば、80%の代わりに90%)ならびに/または必要とされる触媒量の減少およびアルキル化反応器および/もしくは最終反応器のサイズの減少を可能にする。これらの改良点は、プロセスについてのコストの低下およびより良好な生成物の収量を可能にする。
【0029】
種々の実施形態は、図面を参照して本願明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好ましい触媒的蒸留プロセスの図である。
【図2】アルキル化装置塔底流ラインを有する要素106に連結された好ましい蒸留システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願明細書で使用する場合、「芳香族化合物」との用語は、非アルキル基含有芳香族化合物(ベンゼンおよびナフタレンなど)、ならびにアルキル含有芳香族化合物(トルエン、キシレンなど)を包含する。「アルキル化された芳香族化合物」との用語は、1つ以上の付加的なアルキル基が以下に記載する芳香族化合物アルキル化プロセスによって結合された化合物を指す。
【0032】
図1を参照すると、本発明のプロセスは、示されるとおり、要素100に対応するアルキル化ユニットを必要とする。このアルキル化ユニットでは、1つ以上のオレフィン化合物および1つ以上の芳香族化合物が、少なくとも2つの(すなわち、第1および第2の)縦方向に間隔を空けた、触媒的反応帯にアルキル化反応条件下で導入される。第2の触媒的反応帯は、第1の触媒的反応帯の上に配置される。アルキル化ユニットの稼動の間、オレフィンおよび芳香族化合物は反応帯の各々において触媒と接触して反応し、1つ以上のアルキル化された芳香族化合物を生成する。
【0033】
アルキル化ユニット100は、通常、当該技術分野で公知のとおり、適切なアルキル化反応条件下で複合液相−気相モードで稼動する、触媒的蒸留ユニットである。触媒的蒸留ユニット100は、約270psi〜約550psig(約1.9MPa〜約3.8MPa)の圧力、および約365°F〜約482°F(185℃〜約25O℃)の温度で、オレフィンに対する芳香族化合物の重量比を約2.0〜約3.5の好ましい範囲にして稼動されることが好ましい。先行技術で公知の触媒的蒸留ユニットは、これまでにSmith,Jrに対する米国特許第4,849,569号に詳細に記載されている。
【0034】
アルキル化触媒は、当該技術分野で公知の任意の適切なアルキル化触媒であってよい。かかるアルキル化触媒の好ましい組成および形態は、これまでにSmith,Jr.に対する米国特許第4,849,569号および同第4,443,559号(これらの特許文献はともに、参照によってその全体が本願明細書に引用されたものとする)に詳細に記載されている。適切なアルキル化触媒は、アルキル化反応を触媒することができることに加えて、Smith Jr.らに対する米国特許第5,243,115号ならびにSmith Jr.に対する同第4,215,011号および同第4,302,356号(これらの特許文献はすべて、参照によってその全体が本願明細書に引用されたものとする)に記載されているように、適切な表面積を有して蒸気がそれを通過することができるものであるべきである。
【0035】
アルキル化触媒は、適切な酸性触媒であることが好ましい。適切な酸性触媒としては、上で引用した特許文献に記載されているようなモレキュラーシーブ(モルシーブ)および陽イオン交換樹脂が挙げられる。いくつかの特に好ましい触媒としては、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトL、TMAオフレタイト、モルデナイト、非晶質シリカ−アルミナ、ゼオライト BEA(ベータ)、ゼオライト MWW、MFI触媒、およびゼオライト BEAが挙げられる。
【0036】
アルキル化触媒は、別々の触媒床の形態にあることが好ましい。好ましい実施形態では、触媒床は、触媒的蒸留ユニットの中に縦に配置された、詰め込まれた(すなわち、充填された)触媒ユニットの形態にある。縦に配置された充填された触媒ユニットの各々の間に適切な間隔が設けられていることがより好ましい。例えば、特に好ましい実施形態では、アルキル化触媒は、各充填された触媒ユニットが、18〜30インチ(約46〜約76cm)の間隔で、高さが約6フィート(約183cm)に限定されている、複数の縦に配置された充填された触媒ユニットを備える。
【0037】
特定の実施形態では、アルキル化触媒は、縦方向の配置で少なくとも2つ、より好ましくは3つ、そしてより好ましくは4つの充填された触媒ユニットを備える。別の実施形態では、アルキル化触媒は、縦方向の配置で5〜10つの充填された触媒ユニットを備える。例えば、アルキル化触媒は、各充填された触媒ユニット間にいくらかの間隔を有して、縦方向の配置の5つ、より好ましくは6つ、そしてさらに好ましくは図1(すなわち、要素103a−103g)に示すように7つの充填された触媒ユニットを備えることができる。
【0038】
上記のプロセスがさらに、最終反応器119を備えることが好ましい。この最終反応器は、未反応のオレフィンの実質的に完全消費を可能にする非常に効率的な液相プロセスにおいて、アルキル化装置塔頂流からの未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィン化合物をアルキル化された芳香族化合物へと反応させる。従って、基本的に、最終プロセス後は未反応のオレフィンは残留しない。
【0039】
最終反応器は触媒的蒸留ユニットの混合気−液相におけるアルキル化よりもより効率的に稼動するため、最終反応器は、通常、触媒的蒸留ユニットよりも少ない触媒しか必要としない。最終反応器119が約392°F〜約446°F(200℃〜約230℃)、約550psig〜約900psig(約3.8MPa〜約6.2MPa)の圧力、およびオレフィンに対する芳香族化合物のモル比約2.0〜約10.0で稼動することが好ましい。
【0040】
最終反応器のアルキル化触媒は、(組成において、および/または物理的な設計において)アルキル化ユニットのアルキル化触媒と同一であってもよく、異なっていてもよい。最終反応器が使用される場合のこれら2つのアルキル化触媒を区別するために、アルキル化ユニットのアルキル化触媒は以後「第1のアルキル化触媒」と呼ばれ、最終反応器のアルキル化触媒は「第2のアルキル化触媒」と呼ばれる。
【0041】
第1のアルキル化触媒は詰め込まれた充填物(bale)の形態にあることが好ましいのに対し、第2のアルキル化触媒は、第1のアルキル化触媒について上に記載したようなアルキル化触媒のための適切な組成物のいずれかを有する充填物ではない(loose)触媒の固定床の形態にあることが好ましい。第2のアルキル化触媒の組成物は、ゼオライトY、ゼオライト BEA(ベータ)、ゼオライト MWW、モルデナイト、またはMFI触媒から選択されることがより好ましい。
【0042】
本発明によれば、少なくとも第1の触媒的反応帯および第2の触媒的反応帯の各々からの蒸気状の芳香族化合物は、その蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するための冷却手段に接触する。当該技術分野で公知の任意の冷却手段がこの冷却手段として使用することができる。例えば、この冷却手段は、触媒的蒸留ユニットからより冷たいプロセス流れまたはユーティリティへと間接的に除熱するための冷却要素であってもよい。
【0043】
冷却要素のいくつかの例には、当該技術分野で公知の適切な冷却器または熱交換器のいずれもが含まれる。冷却要素のいくつかのより具体的な例としては、ポンプ周囲冷却器(pump−around cooler)および触媒床間に挿入されたバヨネット型U字管熱交換器(例えば、チューブ側に冷媒を有する)、ならびにアルキル化装置の床間(inter−bed)混合物が熱交換器のチューブ側を通って強制的に循環されている外部のシェル/チューブ型熱交換器(例えば、シェル側に冷媒を有する)が挙げられる。
【0044】
冷却手段はまた、冷却された芳香族化合物含有流れであってもよい。この場合、冷却された芳香族化合物含有流れは、気化された芳香族化合物の少なくとも一部(主要部分であることがより好ましい)を液化(再液化であることがより好ましい)するのに十分低い温度にあることが好ましい。例えば、供給源F−3からの冷却された芳香族化合物流れは、冷却された最終反応器流出液の代わりに、またはそれに加えて、触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物を液化するために使用することができる。
【0045】
冷却手段は、最終反応器からの冷却された流出液であることがより好ましい。例えば、好ましい実施形態では、冷却は、最終反応器流出液を冷却する前にまず(例えば、低沸点成分抜き取り装置102において)揮発性化合物の最終反応器流出液を抜き取り、次いでこの抜き取られ冷却された最終反応器流出液を少なくとも2つのより下方の触媒床の上に導くことにより実現される。
【0046】
冷却された最終反応器流出液は、有利なことに、発熱的な反応熱から気化された芳香族化合物の少なくとも主要部分(例えば、90%以上)を再液化することにより芳香族化合物の蒸気圧を低下させることによって、アルキル化触媒中の所望のオレフィン分圧を維持することを補助する。この改良によって、このプロセスにおけるオレフィンの転化率を改善することが可能になり、とりわけ必要とされる触媒量の減少およびアルキル化反応器のサイズの縮小が可能になる。これらの改良により、このプロセスについてのコストの低下およびより良好な収率が可能になる。
【0047】
第1のアルキル化触媒は、触媒的蒸留ユニット100の下方部に近接して置かれることが好ましい。芳香族化合物および/またはオレフィンの蒸気もしくは液体の導入および蓄積のために、第1のアルキル化触媒の最下部の下に十分な空間が提供されることがより好ましい。同様に、触媒的蒸留ユニット100が、吸収剤(例えば、101)および/または低沸点成分抜き取り装置(例えば、102)(これらの各々は、以下でさらに詳細に記載される)の収容のために、第1のアルキル化触媒の最上部の上に十分な空間を備えることが好ましい。第1のアルキル化触媒の最下部より下および/または最上部より上の空間は、例えば、アルキル化ユニットの高さの1/20〜1/2の範囲であることができる。この範囲は、例示の目的で示したものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。適切な場合には、この範囲外の値を使用することができる。
【0048】
オレフィン供給F−1および芳香族化合物供給F−2は、適切なオレフィン供給ラインおよび芳香族化合物供給ライン(すなわち、オレフィン含有流れおよび芳香族化合物含有流れ)によってアルキル化ユニットの少なくとも第1の触媒的反応帯および第2の触媒的反応帯へと導入される。各供給ラインは、独立に分岐していてもよく分岐していなくてもよく、オレフィン供給または芳香族化合物供給をアルキル化触媒と接触させる(すなわち、アルキル化触媒に入れる)ためにアルキル化ユニットに直接または間接的に接続されていてもよい。オレフィン供給および芳香族化合物供給は、別々のオレフィン供給ラインおよび芳香族化合物供給ラインの形態で、別々にアルキル化ユニットに導入されてもよく、あるいは1つ以上の供給ラインで合わされたオレフィン−芳香族化合物混合物として導入されてもよい。
【0049】
一実施形態では、オレフィンは、2つ以上のオレフィン流れを使用して触媒の2つ以上の場所で第1のアルキル化触媒に供給される。例えば、オレフィン供給ラインは、2〜10本、または4〜8本の分岐したオレフィン供給ラインへと分岐し、そのいずれかがそれぞれ第1のアルキル化触媒の2〜10本、または4〜8つの充填された触媒ユニットの縦方向の配置へと供給してもよい。各オレフィン供給ラインが、オレフィンを1つの充填された触媒ユニットへと(これよりも下であることがより好ましい)導くことが好ましい。分岐したオレフィン供給ラインの数および充填された触媒ユニットの数は、少なくともオレフィン供給ラインがあるのと同じ数だけの充填された触媒ユニットが存在する限り、互いに独立である。
【0050】
例えば、好ましい実施形態では、図1に示すように、オレフィン供給F−1はオレフィン供給ライン104を経由して第1のアルキル化触媒に送られる。オレフィン供給ライン104は4つの流れ104a−104dに分岐しており、その各々が、全部で7つの縦に配置された充填された触媒ユニット(すなわち、103a−g)のうちの4つの充填された触媒ユニット(すなわち、103a−d)の各々にオレフィンを供給する。必要に応じて、オレフィン供給ライン104は5本、6本、7本、または8本以上のオレフィン流れに分けられ、少なくとも5つ、6つ、7つ、または8つ以上の縦に配置された充填された触媒ユニットが存在して、分かれたオレフィン流れの各々が充填された触媒ユニットにオレフィンを導いてもよい。
【0051】
オレフィンは触媒床の下方部に注入され、これにより触媒床の上方部の1つ以上の(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つの)触媒床を直接オレフィンを供給しないで残すことが好ましい。オレフィンが触媒床の下方部の各触媒床の下へ注入されることがより好ましい。最上部のオレフィン供給点より上の触媒床を有することは、これらの上方の触媒床が触媒床から残留するオレフィンを最上部のオレフィン供給源より上で反応させるため、特に有利である。
【0052】
例えば、特定の実施形態では、オレフィンは、第1のアルキル化触媒の3〜10つの充填された触媒ユニットの縦方向の配置の下方部の等しい数の充填された触媒ユニットに供給する2〜7つの分岐したオレフィン供給ラインによって第1のアルキル化触媒に供給される。この場合、充填された触媒ユニットの数は分岐したオレフィン供給ラインの数より大きく、これによって充填された触媒ユニットの上方部がオレフィン供給ラインを持たない状態で残る。
【0053】
別の実施形態では、オレフィンは、第1のアルキル化触媒の4〜8つの充填された触媒ユニットの縦方向の配置の下方部の等しい数の充填された触媒ユニットに供給する3〜5本の分岐したオレフィン供給ラインによって第1のアルキル化触媒に供給される。この場合、充填された触媒ユニットの数は分岐したオレフィン供給ラインの数より大きく、これによって充填された触媒ユニットの上方部がオレフィン供給ラインを持たない状態で残る。
【0054】
各オレフィン供給ラインおよび芳香族化合物供給ラインが触媒的蒸留ユニット100に出会う場所に近接して、オレフィンまたは芳香族化合物が触媒の上(または中)へと分配されるための手段が提供される。オレフィンまたは芳香族化合物を分配させるための手段は、当該技術分野で公知の任意の適切な手段(散布または噴霧など)であってよい。
【0055】
芳香族化合物供給ラインF−2中の1つ以上の芳香族化合物は、単一の供給ライン105を経由して任意の触媒的蒸留ユニット上の任意の適切な場所で触媒的蒸留ユニットへと導入されることが好ましい。好ましい実施形態では、図1に示すように、芳香族化合物供給F−2は、第1のアルキル化触媒の最下部より下、例えば充填された触媒ユニット103aの下に導入される。
【0056】
F−1中のオレフィン供給およびF−2中の芳香族化合物供給は、液体または蒸気の形で独立に導入されてもよい。芳香族化合物は、充填された触媒ユニット103aより下で触媒的蒸留ユニット100の最下部へと導入されることが好ましい。気体状のオレフィンは、芳香族化合物の液相に分配され溶解される。触媒は液相で濡れ、アルキル化反応は触媒表面上で液相で起こる。
【0057】
オレフィン供給は、任意の適切な濃度のオレフィンを含有することができる。例えば、オレフィンは、低濃度、例えば、体積比、重量比もしくはモル比で5%、10%、15%、または20%、あるいは中程度の濃度、例えば、25%、35%、40%、50%、または60%で存在することができる。しかしながら、本発明は、より高濃度のオレフィン供給、例えば、体積比、重量比もしくはモル比で70%、80%、90%、95%、98%、またはこれ以上の濃度のオレフィン供給に対して特に有利である。
【0058】
オレフィンの供給源は任意の適切な供給源であってよい。例えば、オレフィンは高純度のもの(ポリマー用のエチレンまたはプロピレンなど)であってよい。あるいは、オレフィンは、あまり純度が高くなくてもよい(例えば流動接触分解(FCC)操作などの精油操作からのオフガスに由来するものなど)。エチレンのオフガス供給源は、例えば、約10体積%〜約30体積%のエチレンならびに約50%〜70%のメタンおよび水素、ならびに少量の他の低沸点の炭化水素成分(エタンおよびプロパンなど)を含有していてよい。他の低沸点成分としては、一酸化炭素、二酸化炭素および/または窒素を挙げることができる。
【0059】
オレフィン供給ライン104を経由して導入されるオレフィンは、本発明のプロセスによって1つ以上の芳香族化合物とのアルキル化反応を受けることができるものである必要がある。例えば、オレフィンは、2〜20個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有する1つ以上の炭化水素化合物であってよい。適切なオレフィンのいくつかの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、エチルベンゼン、スチレン、およびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0060】
エチレンおよびプロピレンは、本発明にかかる最も重要なオレフィンに含まれる。なぜなら、これらはベンゼンとアルキル化され、少なくとも2つの工業的に重要な最終製品である、それぞれエチルベンゼンおよびクメンを生成するからである。
【0061】
芳香族化合物供給ライン105を経由して導入される1つ以上の芳香族化合物は、本発明のプロセスによって1つ以上のオレフィン化合物とのアルキル化反応を受けることができる(すなわち、アルキル化できる)ものである必要がある。本願明細書に記載されるプロセスにおける供給成分として有用な適切なアルキル化できる芳香族化合物のいくつかの例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、o−キシレン、m−キシレン、およびp−キシレン)、ナフタレン、ビフェニル、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。ベンゼンが特に好ましい。
【0062】
オレフィンは、第1のアルキル化触媒の存在下で芳香族化合物と接触すると、その芳香族化合物と反応して、一部のポリアルキル化された芳香族化合物とともに、アルキル化された芳香族化合物、例えば、モノアルキル化された芳香族化合物(例えば、エチルベンゼンまたはクメン)を生成する。モノアルキル化された芳香族化合物が、通常は所望の生成物である。
【0063】
アルキル化装置塔底流出液106は第1のアルキル化触媒の最下部の下へ排出することが好ましいが、このアルキル化装置塔底流出液106は、いくらかの未反応の芳香族化合物(未反応のベンゼンなど)とともにこれらのアルキル化された芳香族化合物生成物を含む。アルキル化装置塔底流出液106からのアルキル化された芳香族化合物生成物は、以下でさらに考察するように、当該技術分野で公知の任意の適切なプロセスによって(蒸留によって、など)、互いからかつ未反応の芳香族化合物から分離することができる。
【0064】
第1のアルキル化触媒の最上部の上へ(例えば、充填された触媒ユニット103gの上へ、そしてアルキル化装置塔頂流108の中へ)排出される成分は、とりわけ、未反応の芳香族化合物、未反応のオレフィン、および通常、ある量のアルキル化された芳香族化合物を含む。アルキル化された芳香族化合物は、アルキル化装置塔頂流108から除去されない場合には、最終反応器119においてオレフィンと反応して、ポリアルキル化された芳香族化合物を生成する。従って、モノアルキル化された生成物への選択性を最大にすることが所望される場合、アルキル化装置塔頂流を最終反応器119において処理する前に、例えば、第1のアルキル化触媒の最上部の上でかつアルキル化装置塔頂流が排出される場所よりも下に配置されていることが好ましい適切な吸収剤101を使用することにより、かかるアルキル化された芳香族化合物が、実質的にアルキル化装置塔頂流108から除去されることが好ましい。
【0065】
吸収剤101は、アルキル化された芳香族化合物を、未反応の芳香族化合物およびオレフィン化合物の存在下で選択的に除去することができ、そして好ましくは適切な吸収剤を活用して少なくとも約2〜3段の理論段階の除去を提供することができる、トレイに入れた(trayed)かまたは押し固められた(packed)区画を備える。この吸収剤は、アルキル化された芳香族化合物を吸収する液体芳香族化合物であることが好ましい。この液体芳香族化合物は、最上部触媒床103gを出る成分に対してこの液体芳香族化合物の下向きの流れを生成するために、ライン125aを経由して吸収剤101の上方部へと導入されることが好ましい。
【0066】
液体芳香族化合物吸収剤の供給源、すなわち液体芳香族化合物供給ライン125a、は液体芳香族化合物供給源F−3に接続されている主液体芳香族化合物供給ライン125から分岐していることが好ましい。この液体芳香族化合物源は、適切な蒸留システム(以下に記載される図2に示されているものなど)を使用することによりアルキル化装置塔底流出液106から回収された再利用された芳香族化合物(例えば、再利用されたベンゼン)であってよい。未使用の芳香族化合物供給源はアルキル化された芳香族化合物をほとんどまたは全く含んでおらず、従って、アルキル化された芳香族化合物をより効率的に除去するため、上記吸収剤は未使用の芳香族化合物反応物質(例えば、未使用のベンゼン)であることがより好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、流れライン116を経由して最終反応器119に供給される前に、この時点でアルキル化された芳香族化合物が実質的に除去されてアルキル化されていない芳香族化合物、オレフィン、および低沸点成分を含むアルキル化装置塔頂流108は、塔頂流108を液化および/または過冷却(sub−cooling)することができる1つ以上の冷却要素109において液化または過冷却される(過冷却されないことがより好ましい)。液化された未反応のオレフィン/芳香族化合物流れライン111は、次に最終反応器供給ドラム110の中へ蓄積され、供給ドラム排出ライン113を経由して1つ以上の最終反応器供給ポンプ112に排出され、最終反応器供給ポンプ排出ライン113を通って、液化されたアルキル化装置塔頂流が最終反応器流出液ライン120によって予熱される熱交換器114へとポンプ輸送される。余熱されたアルキル化装置塔頂流は次に、さらに加熱するために、熱交換器114からライン113を経由して最終反応器供給加熱器117へと供給される。供給源F−3からの液体芳香族化合物は、次に芳香族化合物対オレフィンの比を制御するために分岐した供給ライン125b(未使用のベンゼンおよび/または再利用されたベンゼンを含有していることが好ましい)を経由して加熱された最終反応器供給と混合され、その後、アルキル化装置塔頂流からの加熱された未反応のオレフィンおよび芳香族化合物ならびにライン125bからの追加的な液体芳香族化合物および必要に応じていくらかの低沸点成分を含有する最終反応器入口流れ116を形成する。
【0068】
最終反応器流出液流れ120は、気体状の成分(すなわち、低沸点成分)とともに、主として、モノアルキル化された芳香族化合物、ポリアルキル化された芳香族化合物、および未反応の芳香族化合物を含む。気体状の成分としては、メタン、エタン、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、プロパンおよび/または窒素などの気体状の化学種が挙げられる。好ましい実施形態では、最終反応器流出液流れ120の少なくとも一部は、低沸点成分抜き取り帯102において処理される前に、(例えば、図1に示されるような熱交換器114中の冷却された流れライン113によって)抜き取り装置の最高圧に対応する沸点(bubble point temperature)までまず冷却されることが好ましい。低沸点成分抜き取り帯は、少なくとも1つの低沸点成分抜き取り装置を備える。この低沸点成分抜き取り装置は、最終反応器流出液120から、上に記載したような気体状の成分を選択的に除去することができる当該技術分野で公知の任意の適切な低沸点成分抜き取り装置であってよい。
【0069】
低沸点成分抜き取り帯102は触媒的蒸留ユニットの最上部の中に収容されていることが好ましく、そして1〜5つのトレイを備えることが好ましく、2〜4つのトレイを備えることがより好ましい。必要がある場合または所望される場合、最終反応器流出液は、当該技術分野で公知の脱エタン装置(de−ethanizer)を使用して、別個にエタンを除去されてもよい。低沸点成分抜き取り帯102において分離された低沸点成分は、通気管路128を通して塔頂成分として放出されてもよい。所望の場合、低沸点成分は液化されて蓄積タンクに送られてもよい。低沸点成分抜き取り帯102は、適切な塔底ポンプを備えた独立型のものであってもよい。
【0070】
抜き取られた最終反応器流出液流れ124は、低沸点成分抜き取り装置102からの塔底成分として受け取られる。抜き取りプロセスをさらに最適化するために、抜き取られた最終反応器流出液流れ124の一部は、低沸点成分抜き取り装置リボイラー126で加熱されて分岐したライン124eを経由して低沸点成分抜き取り装置102へと再循環されることが好ましい。
【0071】
先行技術のプロセスでは、未冷却で抜き取られていない最終反応器流出液が最上部触媒床の上の触媒的蒸留ユニットの頂部に還流として送り戻され、ユニット内での下向きの液体の動きを提供することが通常である。しかしながら、先行技術で公知のものとは異なり、本発明は、最終反応器流出液124が抜き取り装置102で低沸点成分を抜き取られ、次いで冷却器(複数個であってもよい)123によって冷却され、より好ましくは過冷却され、その後第1のアルキル化触媒の床(好ましくは、より下方の床)の間に分割されるプロセスを提供する。冷却された流れ124はオレフィンが供給される第1のアルキル化触媒のより下方の床の間にほぼ等しい部分に分割されることが好ましく、そして第1のアルキル化触媒のより下方の床の各床の上へと分割されることがより好ましい。冷却された流れ124は、好ましくは内部管式分配器(「はしご型」液体管式分配器など)を使用して触媒床の間に注入されることがより好ましい。
【0072】
流れ124は、触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物蒸気の少なくとも一部を液化させるのに十分低い温度まで冷却される。流れ124は、触媒的蒸留ユニットにおける反応熱によって気化された芳香族化合物の少なくとも主要部分を再液化するのに十分低い温度に冷却されることが好ましい。この「主要部分」は、触媒床において気化された芳香族化合物の少なくとも約90%であることが好ましい。
【0073】
冷却された流れ124が、下側で芳香族化合物が供給される触媒床において気化された芳香族化合物と同じ量を液化する温度に冷却されることがより好ましい。通常、流れは低圧力(LP)または中圧力(MP)の流れを生成するボイラー供給水(BFW)に対して冷却され、これによって、流れのレベルに依存して250°F〜350°F(約121℃〜約177℃)のどこかの流れ温度になるであろう。流れが他のプロセス流れと熱交換される熱統合も可能である。実際、冷却された液体が供給される触媒的蒸留ユニット中の地点の温度は通常365°F〜482°F(約185℃〜約250℃)の範囲にあるため、前述の温度範囲内または範囲の下の温度を有する液体はアルキル化装置中の蒸気を液化させるであろう。
【0074】
例えば、好ましい実施形態では、抜き取られ冷却された最終反応器流出液は、271°F(約133℃)のLP流れ温度に対して18°F(約10℃)の差がある約289°F(約143℃)の温度で触媒的蒸留ユニットに導入される。これによって、通常は、アルキル化装置塔底の温度(106流れ)は約430°F〜約436°F(約221℃〜約224℃)になるであろう。
【0075】
冷却された最終反応器流出液流れは、第1のアルキル化触媒において発生した反応熱によって生成した芳香族化合物蒸気(例えば、ベンゼン蒸気)を再液化する。芳香族化合物が液化する結果として、所望のオレフィン分圧が容易に維持され、オレフィンは第1のアルキル化触媒全体に、特に入口から少なくとも第1の触媒的反応帯および第2の触媒的反応帯に、より均一に分配される。
【0076】
オレフィン分圧の均圧化は、オレフィンが供給される第1のアルキル化触媒の中の触媒床の下方部にとっては特に重要である。直接のオレフィン供給を受けない、第1のアルキル化触媒の上方部の触媒床は、最上部触媒床の方向に減衰し続けるオレフィン分圧に支配されている。
【0077】
例えば、好ましい実施形態では、オレフィンが供給される下方の触媒床の入り口のオレフィン分圧の変化は、約10%を超えない。下方の触媒床の入り口のオレフィン分圧の変化は、約5%を超えないことがより好ましく、約1%を超えないことがさらにより好ましい。特に好ましい実施形態では、触媒床の下方部(例えば、オレフィン供給流れ104a−104dにおいて)、オレフィン分圧の変化は実質的に存在しない、すなわち1%未満である。そして触媒床の下方部におけるオレフィン分圧は、実質的に約3.5barの最大許容分圧に等しい。
【0078】
触媒的蒸留塔中のますますより高い触媒床での最大オレフィン分圧を維持するために連続的なより大きいオレフィン供給速度を必要とする先行技術のプロセスとは対照的に、本発明のプロセスは、触媒的蒸留塔において連続的により高い位置にあるオレフィン供給流れ(例えば、104a−104d)においてほぼ同じオレフィン供給速度を用いて最大オレフィン分圧を維持することができる。例えば、第2の触媒的反応帯(例えば、104b)のオレフィン供給流れのオレフィン供給速度は、第2の触媒的反応帯104bの下に配置されている第1の触媒的反応帯(例えば、104a)のオレフィン供給流れのオレフィン供給速度とほぼ同じであってよい。同様に、オレフィン供給流れ104cのオレフィン供給速度は、触媒的蒸留塔において104cより下に配置されているオレフィン供給流れ104bのオレフィン供給速度とほぼ同じであってよく、塔中の連続するより高いオレフィン供給に対しても同様である。
【0079】
さらに、塔中のより高い位置のオレフィン供給流れは、触媒的蒸留塔のより低い位置にあるオレフィン供給流れのオレフィン供給速度よりも低いオレフィン供給速度を有することができる。例えば、104aのオレフィン供給速度は、104b、104c、または104dと比べて、1〜5%低くてもよい。
【0080】
上記改良により触媒効率を高レベルに維持することが可能になるため、転化が実質的に喪失することなく、より高い速度でオレフィンを触媒に供給することができる。従って、この改良により先行技術で公知のプロセスに比べてより少ない触媒の使用が可能になる。
【0081】
抜き取られ冷却された最終反応器流出液流れ124が、流れ124からの2つ以上の分岐した供給ラインを使用することにより、2つ以上の場所で第1のアルキル化触媒に供給されることが好ましい。流れ124が、縦方向に配置された第1のアルキル化触媒の2〜10本(4〜8本がより好ましい)の充填された触媒ユニットに供給する2〜10本(4〜8本がより好ましい)の分岐した供給ラインに分岐されることがより好ましい。冷却された最終反応器流出液の各分岐された流れは少なくとも1つの充填された触媒ユニットへ(より好ましくは、触媒ユニットの上へ)導かれ、分岐された供給ラインの数および充填された触媒ユニットの数は、冷却された最終反応器流出液の分岐された供給ラインが存在する数と少なくとも同じだけの充填された触媒ユニットが存在する限り、互いに独立である。
【0082】
好ましい実施形態では、冷却された最終反応器流出液流れは、別々の流れを経由して、オレフィン供給が注入されている第1のアルキル化触媒の下方部の触媒床にのみ注入される。例えば、図1に示されるように、冷却された最終反応器流出液は、4本の流れ124a−124dに分岐された流れ124を経由して第1のアルキル化触媒に送られる。4本の流れ124a−124dは、その各々が冷却された最終反応器流出液を、触媒的蒸留ユニット100の全部で7つの縦に配置された充填された触媒ユニット(すなわち、103a−g)のうちの、オレフィン供給が注入されている触媒床の下方部の4つの充填された触媒ユニット(すなわち、103a−d)の各々に供給する。所望の場合、冷却された最終反応器流出液124は、5本、6本、7本、またはこれ以上の数の流れへと分割され、少なくとも5つ、6つ、7つ、またはこれ以上の数の縦に配置された充填された触媒ユニットが存在して、その分割された流れの各々が充填された触媒ユニットに供給してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、オレフィンが供給されていない触媒床の上に冷却された流れ124を注入することが好ましい場合がある。オレフィンが供給されていない触媒床の上方部において、最上部の触媒床に近づくにつれて、減少の一途をたどる量でいまだ未反応のオレフィンが存在し、反応速度は低下の一途をたどる。これらの上方の触媒床において芳香族化合物を液化することは、それでもなお、未反応のオレフィンの分圧を高めるという利点を有し、従って、これらの触媒床において芳香族化合物を液化させなかった場合よりは高いはずの反応速度へ、反応速度を高める働きをする。
【0084】
プロセスの改変、増強または最適化のために、任意の数の補完的構成要素または補助的構成要素が上記のプロセスに含まれていてよい。例えば、好ましい実施形態では、アルキル化装置塔底流出液106は、アルキル化装置塔底流出液中の生成物(例えば、モノアルキル化された芳香族化合物またはポリアルキル化された芳香族化合物)の1つ以上をアルキル化装置塔底流出液の他の成分から分離するため、および未反応の芳香族化合物(例えば、再利用されるベンゼン)を回収するために、適切な蒸留プロセスを介してさらに処理される。
【0085】
好ましい蒸留システムが図2に示されている。図2を参照すると、アルキル化装置塔底流出液106は、まず、ポンプ107を経由して示された蒸留ユニットの蒸留塔160へ供給されることが好ましい。塔160は、未反応の芳香族化合物をモノアルキル芳香族化合物およびより高沸点成分から分離する。例えば、塔160は、ベンゼンをエチルベンゼンおよびより高沸点成分から分離することができる。芳香族化合物は蒸気として塔頂へ蒸留され、好ましくはライン161を経由して液化装置162へ送られることにより液化される。その後、液化された芳香族化合物は、必要に応じて蓄積タンク163に保持することができる。蓄積タンク163からの液化された芳香族化合物は、その後、還流としてライン164を経由して塔160へと戻されてもよい。芳香族化合物の一部は、ライン164から液体芳香族化合物供給ライン125(これも図1に示されている)として引き出され、分岐されたライン125aを経由して直接にまたは任意の好ましい中間段階を介してアルキル化装置100へと戻されてもよい。塔底流れ167は、リボイラー168を介して塔160に再循環されることが好ましい。
【0086】
塔160からの塔底流れ166は、モノアルキル芳香族化合物成分をポリアルキル芳香族化合物成分から分離するための蒸留塔170に送られることが好ましい。モノアルキル芳香族化合物としては、例えば、エチルベンゼンまたはクメンを挙げることができる。ポリアルキル芳香族化合物としては、例えば、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラエチルベンゼン、ジ−n−プロピルベンゼン、エチル−n−プロピルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、およびトリイソプロピルベンゼンを挙げることができる。塔底流れ177は、リボイラー178を介して蒸留塔170へと再循環して戻されることが好ましい。
【0087】
塔170からの塔頂モノアルキル芳香族化合物蒸気流れ171は、液化装置172で液化され、蓄積タンク173に送られることが好ましい。塔頂成分の一部は、ライン174を経由して還流として塔170に戻されることが好ましい。塔頂成分171の別の一部は、モノアルキル化された芳香族化合物(例えば、エチルベンゼンまたはクメン)生成物Pとしてライン175を経由して引き出されることが好ましい。
【0088】
ポリアルキル化された芳香族化合物を含有する塔底流れ176は、塔頂流181としてのポリアルキル芳香族化合物(例えば、ジエチルベンゼン)を塔底流れ186としてのフラックスオイル(B)から分離するための蒸留塔180によって、さらに処理されることが好ましい。フラックスオイルは、通常、ジフェニルエタン、テトラエチルベンゼン、および他の高沸点成分を含有し、捨てられてもよいし、例えば熱伝導流体、燃料油または吸収剤として使用されてもよい。
【0089】
塔底流れ187は、リボイラー188を介して塔180に再循環して戻されることが好ましい。蒸留塔180からの塔底成分の一部は、ライン186を経由してフラックスオイルBとして引き出されてもよい。塔頂のポリアルキル化された芳香族化合物蒸気流れ181は、液化装置182で液化され、蓄積タンク183に送られることが好ましい。塔頂成分の一部は、ライン184を経由して還流として塔180に戻されてもよい。
【0090】
さらなる実施形態では、アルキル交換装置がプロセスに含まれていてもよい。アルキル交換装置は、ポリアルキル化された芳香族化合物生成物を非アルキル化芳香族化合物と反応させ、主にモノアルキル化された生成物を生成する。例えば、アルキル交換装置は、ジエチルベンゼンおよびベンゼンを反応させてエチルベンゼンを主生成物として得るために、プロセスに含めることができる。これを実現するために、ポリアルキル化された芳香族化合物流れ185は、アルキル交換装置に直接供給されてもよく、例えば、1つ以上の排出口抜き取り装置または排出口吸収剤を介して間接的に供給されてもよい。
【0091】
アルキル交換装置は、適切なアルキル交換触媒(ゼオライトベータ、ゼオライトYまたは他の適切なゼオライトなど)を含有し、当該技術分野で公知の適切なアルキル交換反応条件下で稼動される。例えば、アルキル交換装置は、365°F〜約482°F(185℃〜約250℃)の温度、約350psig〜約600psig(約2.4MPa〜約4.1MPa)の圧力、約3.5〜5.0WHSVの空間速度、および約2.0〜約5.0(3.0が好ましい)のフェニル対エチルのモル比で稼動させることができる。
【0092】
別の態様では、本発明は、上記のアルキル化プロセスのいずれかを実施するための装置に関する。この装置は、a)上記のような第1のアルキル化触媒を有する触媒的蒸留ユニットと、b)アルキル化装置蒸気塔頂流中の任意のアルキル化された芳香族化合物を選択的かつ実質的に除去し洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成するための手段と、c)洗浄されたアルキル化装置塔頂流を液化して上記のような第2のアルキル化触媒を有する最終反応器に移すための手段であって、この最終反応器は反応した最終反応器流出液を排出するための最終反応器出口を有する、手段と、d)この最終反応器流出液を、触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化させるために十分低い温度に冷却するための手段と、e)冷却された最終反応器流出液を上記第1のアルキル化触媒へと導くための手段と、を備えることが好ましい。
【0093】
さらなる実施形態では、上記装置はさらに、冷却するステップ(d)の前に最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物の実質的な部分を除去して、抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するための手段を備える。別の実施形態では、第1のアルキル化触媒は、少なくとも2つのより下方の床、最下部床および最上部床を備える。さらに別の実施形態では、抜き取られ冷却された最終反応器流出液を、第1のアルキル化触媒の少なくとも2つの床の上へと導くための手段が提供される。
【0094】
このように、現在本発明の好ましい実施形態であると思われるものを説明してきたが、当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく他の実施形態およびさらなる実施形態を為すことができ、そして添付の特許請求の範囲の真の範囲内に入るすべてのかかるさらなる改変および変更を包含することが意図されているということに気がつくであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化された芳香族化合物を製造するためのプロセスであって、
a)1つ以上の芳香族化合物および1つ以上のオレフィンを第1のアルキル化触媒の少なくとも2つの下方床、最下部床、および最上部床を有する触媒的蒸留ユニットに導入するステップであって、前記触媒的蒸留ユニットはアルキル化反応条件下で複合液相−気相モードで稼動され、前記最下部床の下へ排出するアルキル化された芳香族化合物および未反応の芳香族化合物を含む液体アルキル化装置塔底流出液、ならびに前記最上部床の上へ排出する未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンを含むアルキル化装置蒸気塔頂流を生成するステップと、
b)前記アルキル化装置蒸気塔頂流を液化して液化されたアルキル化装置塔頂流を生成し、前記液化されたアルキル化装置塔頂流を、第2のアルキル化触媒を有しアルキル化反応条件下で液相で稼動される最終反応器へ導くステップであって、前記アルキル化装置塔頂流中の前記未反応の芳香族化合物および未反応のオレフィンは、前記未反応のオレフィンの完全な消費を伴ってアルキル化された芳香族化合物に変換され、これによってアルキル化された芳香族化合物を含み未反応のオレフィンを含まない最終反応器流出液を生成するステップと、
c)前記最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物を除去して抜き取られた最終反応器流出液を生成するステップと、
d)前記最終反応器流出液の少なくとも一部を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化するのに十分低い温度に冷却して、これによって抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するステップと、
e)前記触媒的蒸留ユニットの稼動の間、前記抜き取られ冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒の少なくとも前記2つの下方床の上へ導くステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記芳香族化合物がベンゼンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オレフィンがエチレンまたはプロピレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルキル化装置塔底流出液がエチルベンゼンまたはクメンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルキル化装置塔底流出液が、さらに、ポリアルキル化されたベンゼンおよび未反応のベンゼンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒的蒸留ユニットの前記アルキル化反応条件が、270psig〜550psig(1.9MPa〜3.8MPa)の圧力、および185℃〜250℃の温度、ならびに2.0〜3.5のオレフィンに対する芳香族化合物の重量比を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1のアルキル化触媒が、各充填された触媒ユニット間に適切な間隔を有する、適切な酸性触媒の2つ以上の充填されたユニットの縦方向の配置を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1のアルキル化触媒が、5〜10つの充填された触媒ユニットの縦方向の配置を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1のアルキル化触媒が、7つの充填された触媒ユニットの縦方向の配置を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒的蒸留ユニットは、前記第1のアルキル化触媒が充填された触媒ユニットを3〜10個縦方向に配置したものであり、前記充填された触媒ユニットのうち下方部に配置されたものに対し、2〜7本に分岐されたオレフィン供給ラインから、前記オレフィン供給ラインと同じ数の前記充填された触媒ユニットへオレフィンが供給され、前記充填された触媒ユニットの数は前記分岐されたオレフィン供給ラインの数よりも大きく、上方部の前記充填された触媒ユニットには、オレフィンが供給されない、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒的蒸留ユニットは、前記第1のアルキル化触媒が充填された触媒ユニットを4〜8個縦方向に配置したものであり、前記充填された触媒ユニットのうち下方部に配置されたものに対し、3〜5本に分岐されたオレフィン供給ラインから、前記オレフィン供給ラインと同じ数の前記充填された触媒ユニットへオレフィンが供給され、前記充填された触媒ユニットの数は前記分岐されたオレフィン供給ラインの数よりも大きく、上方部の前記充填された触媒ユニットには、オレフィンが供給されない、請求項7に記載のプロセス。
【請求項12】
前記芳香族化合物が、蒸気として前記第1のアルキル化触媒の前記最下部の下に導入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
さらに、(i)前記アルキル化装置塔頂流を液化して液化されたアルキル化装置塔頂流を生成するステップと、(ii)前記アルキル化装置塔頂流を前記最終反応器に導入する前に、前記液化されたアルキル化装置塔頂流を加熱するステップとを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記揮発性化合物を除去するステップ(c)が、前記最終反応器流出液から気体状の成分を選択的に除去して抜き取られた最終反応器流出液を生成することができる低沸点成分抜き取り帯によるものであって、気体状の成分が除去される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記低沸点成分抜き取り帯が、前記触媒的蒸留ユニットの前記最上部に収容されている、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ステップ(c)にかかる冷却するステップが、1つ以上の冷却器または液化装置によって行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記冷却された最終反応器流出液が、1つ以上の分岐された供給ラインを経由して前記第1のアルキル化触媒に供給される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記触媒的蒸留ユニットは、前記第1のアルキル化触媒が充填された触媒ユニットを3〜10個縦方向に配置したものであり、前記充填された触媒ユニットのうち下方部に配置されたものに対し、2〜7本に分岐されたオレフィン供給ラインから、前記オレフィン供給ラインと同じ数の前記充填された触媒ユニットへオレフィンが供給され、前記充填された触媒ユニットの数は前記分岐されたオレフィン供給ラインの数よりも大きく、上方部の前記充填された触媒ユニットには、オレフィンが供給されず、冷却された最終反応器流出液は、前記オレフィン供給ラインと等しい数に分岐されて、オレフィンが供給されているのと同じ前記充填された触媒ユニットへ供給される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒的蒸留ユニットは、前記第1のアルキル化触媒が充填された触媒ユニットを4〜8個縦方向に配置したものであり、前記充填された触媒ユニットのうち下方部に配置されたものに対し、3〜5本に分岐されたオレフィン供給ラインから、前記オレフィン供給ラインと同じ数の前記充填された触媒ユニットへオレフィンが供給され、前記充填された触媒ユニットの数は前記分岐されたオレフィン供給ラインの数よりも大きく、上方部の前記充填された触媒ユニットには、オレフィンが供給されず、冷却された最終反応器流出液は、前記オレフィン供給ラインと等しい数に分岐されて、オレフィンが供給されているのと同じ前記充填された触媒ユニットへ供給される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
さらに、前記アルキル化装置塔底流出液の他の成分から所望のアルキル化された芳香族化合物を分離することができる蒸留プロセスによって前記アルキル化装置塔底流出液を処理するステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
アルキル化された芳香族化合物を製造するための装置であって、
a)触媒的蒸留ユニットであって、第1のアルキル化触媒、液体アルキル化装置塔底流出液を排出するための前記第1のアルキル化触媒の最下部より下のアルキル化装置塔底出口、およびアルキル化装置蒸気塔頂流を排出するための前記第1のアルキル化触媒の最上部より上のアルキル化装置塔頂出口を有し、アルキル化反応および蒸留の条件下で複合液体−気相で稼動できる、触媒的蒸留ユニットと、
b)前記アルキル化装置蒸気塔頂流中の任意のアルキル化された芳香族化合物を選択的に除去して洗浄されたアルキル化装置塔頂流を生成するための手段と、
c)前記洗浄されたアルキル化装置塔頂流を液化してそれを、第2のアルキル化触媒および反応した最終反応器流出液を排出するための最終反応器出口を有する最終反応器に移すための手段であって、前記最終反応器はアルキル化条件下で液相で稼動できる、手段と、
d)前記最終反応器流出液を、前記触媒的蒸留ユニット中の蒸気状の芳香族化合物の少なくとも一部を液化させるのに十分低い温度に冷却するための手段と、
e)冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒へと導くための手段と、
を備える、装置。
【請求項22】
さらに、冷却するステップ(d)の前に前記最終反応器流出液中の任意の揮発性化合物を除去して抜き取られ冷却された最終反応器流出液を生成するための手段を備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第1のアルキル化触媒が、少なくとも2つの下方床、最下部床、および最上部床を備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記抜き取られ冷却された最終反応器流出液を前記第1のアルキル化触媒の少なくとも前記2つの下方床の上へ導くための手段を備える、請求項23に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236827(P2012−236827A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127067(P2012−127067)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2009−520770(P2009−520770)の分割
【原出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500443589)ラマス テクノロジー インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】