説明

軸受のゼロ荷重を取り除く方法および装置

【課題】 繊維ウェブ機械におけるゼロ荷重の問題を緩和するため、もしくは全面的に取り除くための方法および装置を提供する。
【解決手段】 繊維ウェブ機械の回転する機械機構(1)の支承部との関連でゼロ荷重を緩和する方法であって、前記機械機構(1)は荷重方向に荷重(Q,Q)をかけられる。本発明によると、前記機械機構(1)に対して前記荷重方向とは異なる荷重(F)が少なくとも加工時にゼロ荷重の危険がある領域に配置される。回転する前記機械機構には、外套、支持軸(2)、および前記軸(2)に配置された転がり軸受の型式の主軸受(3)が属している。前記機械機構(1)に対して、前記荷重方向とは異なる荷重が少なくとも1つの荷重機構(5−7)によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象物は、たとえば定置の転動機構からなる転がり軸受のためのころ軸受、ニードル軸受、球軸受などの軸受のゼロ荷重を取り除く方法である。
【0002】
本方法を具体化するための装置も、本発明の対象である。
【背景技術】
【0003】
紙、ボール紙、およびその他の繊維ウェブを製造するとき、製造中に、特に脱水をするため、プロセス物質を塗布するため、および製品表面を平滑化したり研磨するために、ロールの間でさまざまに異なるロールギャップが適用される。もっとも強い押圧力は、カレンダーのときや脱水プレスのときに生じる。それぞれのロールの間のロールギャップ荷重は、さまざまな種類のアクチュエータによって調節され、いくつかの状況においては、ロールの支持軸受のほうを向いた荷重が事実上なくなり、軸受がいわゆるゼロ荷重領域へ到達するように、ロールのほうを向いた力が補償されるようにすることが可能である。このことは、軸受の転動機構のほうを向いた荷重が転動接触を惹起するには小さすぎて、軸受が滑動し始めるような軸受の荷重状況を意味している。ゼロ荷重は軸受にとって有害である。というのも滑動接触は、軸受の転動機構をかなり急速に磨耗させるからである。したがってゼロ荷重の問題を排除するために、軸受メーカーは、軸受の支持能力の1−2%の荷重を推奨している。
【0004】
ゼロ荷重領域へと入る危険が生じるのは、カレンダーの場合が大半である。カレンダーのメインロールの軸受の荷重は、カレンダーの動作状況とともに変化する。カレンダーの線圧力の調節は、軸受の荷重に対して作用する。垂直方向のロール機構で押圧力により生成される力と、ロールを下方から持ち上げるロールギャップ力とが補償されていると、軸受には荷重が発生しない。同様に、両側の線圧力がロールのほうを向いていれば、さまざまな方向に作用するロールギャップ力と、ロール質量の引張力とが互いに補償される状況を生じさせることができる。転がり軸受は、軸受のころまたは球が回転し、滑動をしないようにするために、一定の荷重を必要とする。上に説明したゼロ荷重状況では、このような荷重基準が満たされていない。
【0005】
多重ロールカレンダーでは、いわゆる部分ロールギャップ動作のときにゼロ荷重が発生し、その際には2つまたは3つのロールだけが協働して機能する。ソフトカレンダーの場合にも問題は生じる。ゼロ荷重の問題を取り除くために、カレンダーの線圧力に対する調節範囲は制約されている。垂直方向のソフトカレンダーモデルおよび多重ロールカレンダーモデルでは、軸受メーカーにより推奨される最小の荷重の大きさは、特につや消し紙の種類の場合、利用することができる線圧力範囲を大幅に狭くする。制約される動作範囲は、ゼロ荷重の問題のために、典型的には20..,100kN/mである多重ロールカレンダーの部分ロールギャップ動作の線圧力範囲の30%にも及ぶことがある。本来ならこの範囲内でプロセスが最善に機能するはずであるとすれば、これは深刻な問題である。
【0006】
ゼロ荷重を除去または緩和するために、従来技術では特に次のような手段が適用されている:
−ロール機構を傾けて組み立てることができ、それによって荷重の横方向スラスト成分が、軸受にとって必要な最小の荷重を生じさせるようにする;このような種類の解決法は、国際公開第2006/051169号パンフレットに記載されている。
−外側リング円周に対する軸方向の荷重装置−米国特許第6,158,897号明細書。
−ゼロ荷重状況に対処するための軸受のコーティング。
−ゼロ荷重領域におけるカレンダーの荷重の防止。
−軸受を通って流れるオイルによる、軸受に対する制動力の生成−米国特許第4,322,117号明細書。
【0007】
垂直方向のカレンダーモデルにおける傾いたロール機構の組立は、ロール機構全体について、および各装置の位置決めについて、新たな計画作成を必要とする。そのためこの解決法は、少なくとも既存のカレンダーで適用するのには適していない。他の理由により垂直方向のカレンダーモデルを引き続き採用しようとする場合、傾いた組立は優れた選択肢ではない。そのような組立は、コストの集中するロールの変位装置につながるからである。ソフトカレンダーで軸方向の荷重装置を使用することも試みられている。この装置は、特に中高になった2列のころ軸受の場合、問題を完全に解決するものではない。というのも、この装置は一方のころ円環部に荷重をかけるにすぎないので、これと平行な円環部の荷重はいっそう減るからである。ゼロ荷重領域の問題を緩和するために、軸受のコーティングが1つの選択肢となる。しかしコーティングは問題を全面的に解決するものではない。しかもコーティングはコストが集中し、その適性は潤滑条件に大きく左右される。ロールは交換可能であるため、すべてのロールが、コストの集中するコーティングされた軸受を装備しなくてはならないことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、繊維ウェブ機械におけるゼロ荷重の問題を緩和するため、もしくは全面的に取り除くための方法および装置を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、繊維ウェブ機械のロールから軸受まで通じている軸が、荷重方向とは異なる半径方向の方向で荷重をかけられることに依拠するものである。
【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態では、荷重方向は実質的に水平方向である。それにより、機械の線圧力計算のときに考慮しなくてはならない荷重方向の成分が生じることがない。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、軸受まで通じている軸は直接的に荷重をかけられる。
【0012】
厳密に言えば、本発明に基づく方法について特徴をなすのは、請求項1の特徴部に記載されている事項である。
【0013】
本発明に基づく装置について特徴をなすのは、同じく、請求項6の特徴部に記載されている事項である。
【0014】
本発明によって重要な利点が得られる。
【0015】
本発明により、ゼロ荷重の問題によって引き起される軸受の損傷を取り除くことができる。各装置の利用度が向上し、予見不可能な生産中断が減る。本装置の具体化は簡単かつそれに応じて有利であり、既存の装置に適用することができる。もっとも有利な場合、本装置はカレンダーの機能に対して、動作範囲の不都合な制限を取り除く以外には、いかなる作用も及ぼさない。動作範囲の制限がなければ、機械操作者は、たとえば最高の品質を生産するために、生産をいっそう最適化することができる。本装置の利点はその単純性にあり、および、それによる少ない所要スペースにある。本装置は、ロール軸のために冷却式の密封された軸受ブッシュを必要としない。ロールの運動が本装置を複雑なものにすることはない。というのも、本装置は作動中にのみ、各ロールが直線状の位置にあるときにロールに取り付けられるからである。ロール機構が開かれると、本装置はロール軸からただちに外れる。
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1には、端部に軸2があるロール1が示されている。軸2は軸受ブッシュ3に取り付けられており、さらに軸受ブッシュは荷重アーム4に取り付けられている。ロール1、軸2、および軸受ブッシュ3は、荷重アームにより可動に支持されている。図1の例は、作動時にはあまり動かないが、たとえばウェブが途切れてロールギャップを開いたときには高速でかなり長い区間を動くカレンダーのロールであってもよい。本発明による荷重装置は、荷重フォーク5と、これを駆動する油圧シリンダ6と、磨耗リング7とが組み合わされてなっている。この荷重装置は、軸2との関連で、油圧シリンダ6の運動・荷重方向がカレンダーの作動時に水平方向に延びるように配置されている。本例では、シリンダ6は保持部10,11によって荷重アーム4にこれと同一方向へ取り付けられている。このようにしてシリンダの運動方向は、荷重アームと同一方向に延びている。荷重フォーク5の設計は図2にいっそう明らかに見ることができる。荷重フォークはY字型のフォーク本体8を含んでおり、その腕部が油圧シリンダ6に取り付けられており、それぞれのフォーク端部に、転がり支承された荷重輪9が配置されている。ロール1の軸2における荷重フォーク8の位置に磨耗リング7があり、荷重輪はこの磨耗リングに対して押圧される。荷重リングは表面圧力に基づいて設定されており、荷重リングの耐用寿命としてはロール交換のインターバルで十分である。リングは、交換可能なロールに取り付けられたまま保たれるからである。荷重輪および磨耗リングの幅は約100mmであってよい。
【0018】
ロールギャップ荷重に対して作用する垂直方向荷重成分が発生しないようにするために、荷重方向はできるだけ正確に水平方向に延びているのがよい。その場合には、ロールギャップ荷重を計算するときに、ゼロ荷重を阻止する荷重を考慮に入れなくてすむ。とはいえ現代の計算能力では、ロールギャップ荷重の計算に何らかの標準的荷重を追加することは、いかなる困難も引き起すものではない。
【0019】
図2では、ロールギャップ荷重に記号QおよびQが付されており、ゼロ荷重を阻止する荷重に記号Fが付されている。さらに、当然ながらロール質量がロールギャップ力および軸受力に作用する。それでも、増大された荷重力Fが水平方向に延びていれば、ないしは垂直方向の荷重に対して90°の角度をなして延びていれば、ロールギャップ荷重の計算は変更せずにおくことが可能であり、この点に関するカレンダーの機能への介入は必要ない。ゼロ荷重状況の危険性は、一般に、垂直方向の荷重の場合にのみ生じるが、垂直方向とは異なる方向に行われる荷重状況のときでも、支承部のほうを向いている諸力が、ゼロ荷重状況が発生するような形で合算されることがある。このような場合にも本発明を適用することができる。垂直方向の荷重力に対してゼロ荷重の補償が行われるのがもっとも有利ではあるが、この方向からの少しの相違は、同じくロールギャップ荷重にほとんど変化を与えない。たとえば、垂直方向の荷重のときにゼロ荷重を取り除く荷重が75−105°の範囲内で設定されれば、垂直方向成分の割合はかなり少なくなり、ロールギャップ荷重を計算するときには度外視することさえできる。垂直方向とは異なる方向に延びる荷重状況についても、同様のことが当てはまる。
【0020】
軸受により必要とされる最小荷重は、ロール1については、主軸受ブッシュ3と並んでロール1の軸2に荷重をかける、転がり支承された荷重輪9によって印加される。この荷重はほぼ水平方向に行われるので、カレンダーについての線圧力計算のときでさえ考慮に入れなくてすむ。本装置はこれ以外の方向の荷重について製作することもできるが、その場合には、線圧力計算にあたって荷重を考慮に入れることになる。水平方向の力はロールギャップに重大な形状変化を引き起さないので、カレンダーの線圧力の推移に影響を与えない。本装置は、カレンダーのゼロ荷重領域および当該領域の近傍でのみスイッチが入るのが好ましい。本装置は耐熱性ロールにもポリマーロールにも適している。なぜなら本装置によって、どのロールもその位置から変位することはなく、若干の荷重が惹起されるだけだからである。ロールには、荷重輪9に圧着された磨耗リング7が付け加わるにすぎない。本装置はロール交換時間を長引かせることがない。というのも本装置は、ロール交換時にカレンダーに取り付けられたままだからである。荷重輪の荷重は、たとえば油圧シリンダまたは空気圧シリンダによって、もしくは直接的な運動を引き起すその他のアクチュエータによって印加される。本装置はてこ比を有しており、シリンダの力がこのてこ比で荷重輪に伝達される。ゼロ荷重の問題が生じていない通常動作のとき、本装置はシリンダによってロール軸から連結解除される。
【0021】
上に説明した実施形態のほか、本発明はさらに別の実施形態も有している。本発明の他の実施形態では、主軸受ブッシュに位置決めされるべき滑り軸受部材によって荷重を印加することができる。この滑り軸受部材は、主軸受の潤滑領域を介して潤滑される。1つの考えられる解決法は、ロールの軸で別個に転がり支承された軸受ブッシュである。これらすべての実施形態において、スラスト荷重に代えて引張荷重を適用することが考えられる。引張荷重をロールまたはその軸に配置するための1つの解決法は、恒久的に、またはゼロ荷重の危険が生じる間だけ、特定の応力になるまで引き伸ばされたチェーンリンクまたはベルトリンクである。本発明は、シリンダならびにそれ以外の回転する機械機構の支承部との組み合わせでも適用することができる。ロールの端部で外套の空いている領域でも、そこに十分なスペースがあれば荷重を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を斜め上から見た概念図である。
【図2】本発明を横から見た概念図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ロール
2 軸
3 軸受ブッシュ
4 荷重アーム
5 荷重フォーク
6 油圧シリンダ
7 磨耗リング
8 フォーク本体
9 荷重輪
10 保持部
11 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブ機械の回転する機械機構(1)の支承部との関連でゼロ荷重を緩和する方法であって、前記機械機構(1)は荷重方向に荷重(Q,Q)をかけられる、そのような方法において、
前記機械機構(1)に対して前記荷重方向とは異なる荷重(F)が少なくとも加工時にゼロ荷重の危険がある領域に配置されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記異なる荷重はロールの荷重力に対して75−105°の角度で、好ましくは90°の角度で配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なる荷重の力(F)は前記ロールの軸(2)に対して向けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異なる荷重の力(F)は前記ロール(1)の外套に対して向けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記異なる荷重の力(F)は前記ロールの軸(2)に配置された別個の軸受に対して向けられることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
荷重をかけられるべき前記機械機構はカレンダーのロールであり、特に多重ロールギャップカレンダーのロールであることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
垂直方向へ荷重をかけられるべき回転する機械機構(1)のための軸受のゼロ荷重領域を緩和する装置であって、回転する前記機械機構には少なくとも1つの外套と、軸(2)に配置された転がり軸受の型式の主軸受(3)とが属している、そのような装置において、
前記機械機構(1)に対して前記荷重方向とは異なる荷重を形成するための少なくとも1つの荷重機構(5−7)を有していることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記荷重機構(5−7)は荷重力に対して75−105°の角度で、好ましくは90°の角度で配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記荷重機構(5−7)は、前記軸(2)に配置された荷重リング(7)と、直線運動を惹起するアクチュエータ(6)と、前記アクチュエータによって前記荷重リング(7)へ圧着可能である、前記アクチュエータ(6)と結合された荷重輪(5)とを含んでいることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記軸(2)へ荷重力を伝達するために前記軸(2)に配置された別個の軸受ブッシュを有していることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項11】
前記異なる荷重力(F)を、回転する前記機械機構(1)の外套に向けるための機構を有していることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項12】
引張荷重を形成するための同種の機構を含んでいることを特徴とする、請求項7,8,10または11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−261499(P2008−261499A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102118(P2008−102118)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】