説明

軸受機能評価方法

【課題】軸受の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価可能とした軸受機能評価方法を提供する。
【解決手段】軸受回転状態で当該軸受の各種機能を同時に評価することが可能な軸受機能評価方法であって、気密性を持たせた回転計測装置に評価対象となる軸受6を組替可能にセットした後、回転計測装置で軸受を回転させながら軸受に対して圧縮空気を可変に付加した状態において、回転計測装置の消費電力を測定することで当該軸受の動摩擦トルクを評価すると同時に、軸受を通過した空気圧を測定することで当該軸受の耐圧性能を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価可能とした軸受機能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の各種機能を評価するための種々の軸受機能評価方法が知られている。その一例として特許文献1には、評価対象となる軸受が用いられる回転系を数学的にモデル化し、当該数学的モデルに基づいて、軸受の耐久性や振動特性などの各種機能を評価する方法が提案されている。このような評価方法において、例えば密封型シール付き軸受のシール密封性能(耐圧性能)の評価は、軸受を動作させずに静的な非回転状態とし、その状態で当該軸受に対して圧力を増減変化させながら付加して行われている。また、密封型シール付き軸受の動摩擦トルクの評価は、軸受を動的な回転状態とし、その状態で当該軸受に対して一定の圧力を付加して行われている。
【0003】
ところで、従来の評価方法では、その評価結果が実際の使用条件下での軸受機能と異なる場合があった。例えば密封型の接触シールでは、外力(圧力)を受けると当該接触シール接触圧が変化し、その際の摩擦抵抗が変化することで、動摩擦トルクの評価に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、従来の評価方法では、かかる影響を考慮した評価を行うことができないといった問題がある。
【特許文献1】特開2001−50863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、軸受の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価可能とした軸受機能評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明は、軸受回転状態で当該軸受の各種機能を同時に評価することが可能な軸受機能評価方法であって、気密性を持たせた回転計測装置に評価対象となる軸受を組替可能にセットした後、回転計測装置で軸受を回転させながら軸受に対して圧縮空気を可変に付加した状態において、回転計測装置の消費電力を測定することで当該軸受の動摩擦トルクを評価すると同時に、軸受を通過した空気圧を測定することで当該軸受の耐圧性能を評価する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、軸受の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価可能とした軸受機能評価方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態に係る軸受機能評価方法について、添付図面を参照して説明する。なお、当該評価方法の評価対象となる軸受としては、例えば転がり軸受やすべり軸受など各種の軸受を適用することができるが、ここでは一例として転がり軸受を想定する。この場合、転がり軸受としては、ラジアル軸受やスラスト軸受があり、それぞれが更に玉軸受やころ軸受の軸受形式に分類されるが、ここでは一例として玉軸受を想定する。
【0008】
図1には、本実施の形態に係る軸受機能評価方法を実現するための回転計測装置の構成例が示されている。当該回転計測装置において、本体ハウジング2内には、気密性を持たせた円筒形状のチャンバが形成されていると共に、当該チャンバ内に各種の軸受を回転可能にセットするための回転軸4が設けられている。この場合、評価対象となる軸受(玉軸受)6は、回転軸4の一端側にセットされ、その他端側には、サポート軸受8がセットされる。
【0009】
ここで、評価対象となる玉軸受6は、例えばチャンバ上部を覆っている蓋体10を外すだけで、回転軸4の一端側のチャンバ内に簡単にセットすることができる。これにより、チャンバは、評価対象となる玉軸受6とサポート軸受8との間の蓄圧用チャンバ12と、評価対象となる玉軸受6と蓋体10との間の計測用チャンバ14とに区分けされる。
【0010】
また、サポート軸受8は、予め回転軸4の他端側のチャンバ内にセットされており、当該サポート軸受8と評価対象となる玉軸受6とで回転軸4を安定して且つ回転自在に支持するようになっている。これにより、評価対象となる玉軸受6の機能評価の精度を一定に維持することができる。なお、サポート軸受8は、回転軸4の他端側を安定して且つ回転自在に支持できれば、任意の形式の軸受を適用することができるが、ここでは一例として玉軸受を想定する。
【0011】
この場合、サポート軸受8は、相対回転可能に対向配置された環状の内輪8a及び外輪8bと、内外輪8a,8b間に転動自在に配列された複数の転動体(玉)8cとを備えており、内輪8aは回転軸4の外周に外嵌され、外輪8bは本体ハウジング2の内周に内嵌されている。一方、評価対象となる玉軸受6は、相対回転可能に対向配置された環状の内輪6a及び外輪6bと、内外輪6a,6b間に転動自在に配列された複数の転動体(玉)6cとを備えており、内輪6aは回転軸4の外周に外嵌され、外輪6bは本体ハウジング2の内周に内嵌されている。
【0012】
また、回転軸4の回転状態(例えば、回転数、回転方向)は、モータドライバ16で回転制御されるようになっており、当該モータドライバ16の消費電力は、所定の計測器18で計測される。なお、ここでは計測器18の一例として電流計を想定し、当該電流計18でモータドライバ16の消費電流が計測される。また、本体ハウジング2内の蓄圧用チャンバ12には、エア導管20を通って圧縮空気が導入されるようになっており、蓄圧用チャンバ12に導入される圧縮空気の圧力は、エア導管20に増設されたレギュレータ22で可変調整される。
【0013】
この場合、蓄圧用チャンバ12に導入される圧縮空気は、第1の圧力計24で計測されるようになっている。なお、第1の圧力計24は、第1の計測用導管26を介してレギュレータ22と蓄圧用チャンバ12との間のエア導管20に連通接続されている。また、蓄圧用チャンバ12に圧縮空気が導入された状態において、評価対象となる玉軸受6を通過して計測用チャンバ14に流れ込んだ空気の圧力は、第2の圧力計28で計測されるようになっている。なお、第2の圧力計28は、第2の計測用導管30を介して計測用チャンバ14に連通接続されている。
【0014】
このような回転計測装置によれば、まず、評価対象となる玉軸受6を回転軸4の一端側のチャンバ内にセットした後、モータドライバ16で回転軸4を回転制御しながら圧縮空気を蓄圧用チャンバ12に導入する。このとき導入する圧縮空気の圧力は、第1の圧力計24で計測しつつレギュレータ22で可変調整される。これにより、評価対象となる玉軸受6は、回転しながら同時に所定の空気圧が付加された状態となる。
【0015】
そして、かかる状態において、モータドライバ16の消費電流を電流計18で計測することにより、評価対象となる玉軸受6の動摩擦トルクが評価され、同時に、当該玉軸受6を通過して計測用チャンバ14に流れ込んだ空気の圧力を第2の圧力計28で計測することにより、評価対象となる玉軸受6の耐圧性能が評価される。
【0016】
ここで、動摩擦トルクは、評価対象となる玉軸受6を回転させる回転力であり、内外輪6a,6bが相対回転する際に生じるころがり摩擦が大きく(小さく)なると、これに応じて回転力が大きく(小さく)なる。この場合、回転力が大きく(小さく)なると、その分だけモータドライバ16の消費電流値が増加(減少)するため、当該電流値を計測することで動摩擦トルクを評価することができる。また、耐圧性能は、密封性の良し悪しを評価する指標値である。この場合、評価対象となる玉軸受6を通過して計測用チャンバ14に流れ込む空気量が増加(減少)すると、その分だけ計測用チャンバ14内の空気圧が大きく(小さく)なるため、当該空気圧を計測することで耐圧性能を評価することができる。
【0017】
以上、本実施の形態によれば、軸受回転状態で評価対象となる玉軸受6の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価することができる。これにより、実際の使用条件下での軸受機能を反映した評価結果を得ることができる。
【0018】
なお、上述した実施の形態において、蓄圧用チャンバ12に導入する圧縮空気の圧力や回転軸4の回転数については、特に具体的な値に言及しなかったが、これは例えば評価対象となる玉軸受6の種類や大きさ、回転計測装置の使用環境などに応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定しない。また、回転計測装置については、図1の構成に限定されるものでは無く、軸受回転状態で評価対象となる玉軸受6の各種機能(特に、耐圧性能、動摩擦トルク)を同時に評価することができれば、任意の装置構成を適用することが可能である。例えばサポート軸受8の無い回転計測装置としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軸受機能評価方法を実現するための回転計測装置の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0020】
2 本体ハウジング
4 回転軸
6 評価対象となる軸受
8 サポート軸受
12 蓄圧用チャンバ
14 計測用チャンバ
22 レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受回転状態で当該軸受の各種機能を同時に評価することが可能な軸受機能評価方法であって、
気密性を持たせた回転計測装置に評価対象となる軸受を組替可能にセットした後、回転計測装置で軸受を回転させながら軸受に対して圧縮空気を可変に付加した状態において、回転計測装置の消費電力を測定することで当該軸受の動摩擦トルクを評価すると同時に、軸受を通過した空気圧を測定することで当該軸受の耐圧性能を評価することを特徴とする軸受機能評価方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−64640(P2008−64640A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243582(P2006−243582)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】