説明

軸流ファン及び清掃方法

【課題】付着したゴミを自動的に清掃する軸流ファン及び清掃方法を提供する。
【解決手段】複数の羽根11と、羽根を径方向に沿って中央から外部に移動自在に収納する円盤状の収納部12と、ファン無回転時には羽根を収納部内に収納し、ファン回転時には遠心力により羽根を収納部外に突出するように付勢する弾性体14とを備え、この軸流ファン10がファン回転時からファン無回転時に移行する際に羽根11が弾性体14の収縮により収納溝15内に引き込まれるが、この引き込み時に羽根11に付着した埃が羽根11と収納溝15との間の接触部で掻き落とされるので、羽根11が自動的に清掃される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等を冷却するのに使用される軸流ファンおよび清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)は、CPU(Central Processing Unit)やHDD(Hard Disc Drive)等の高温になる電子部品を使用しており、それらを冷却する装置が必要である。
多くのPCでは、内部の空気を循環させる機構を採用し、ファンを一つ以上取り付けている。PC外部の冷たい空気を内部に取り込み、循環させている。
そのような機構のPCでは、外部から埃やゴミを吸い込んでしまい、ファンの羽根に付着させてしまう。その結果、ファンの回転数の低下や風量の低下をまねき、冷却効率が悪化してしまう。
【0003】
このため、ファンの清掃を実施させるようにマニュアルに清掃方法を記述したり、ホームページにて公開したり、ファン付近に開閉する窓を設けて清掃を容易にするような工夫がされている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の発明は、「塵埃除去機能付送風機」に関するものであり、具体的には「軸流ファンによって機器を冷却する塵埃除去機能付送風機において、前記軸流ファンの羽根が回転すると同時に回転し吸い込んだ空気中の塵埃を捕捉するエアフィルタと、該塵埃を捕集するために前記軸流ファンの外枠に配設されたブラシと、該捕集された塵埃を所定の箇所に収集する返しとを備えた」ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−65500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、ファン清掃にはブラシや刷毛の使用が理想だが、PCのファンは安全のために奥まった位置に取り付けられていることが多く、綿棒などの硬く細長いもので擦るように清掃されてしまう。すると羽根に力が加えられることになり、回転のために使用されているベアリングを破壊してしまう。また、ファンに直接触れない清掃方法としては、掃除機で吸引したり、ゴミを吹き飛ばすスプレーを使用したりするという、距離が多少離れていても実施できる手段がある。その場合、ファンが回転してしまい、ファンの回転による逆起電力が発生し、ファンもしくはファンを回転させるための回路を破壊してしまうことがある。
ファンの羽根に埃やゴミを付着させないような工夫があれば、掃除の必要性がなくなる。
【0006】
しかし、埃取り用のブラシをファンの外側に取り付けて、ブラシを回転するファンに接触させ掃除する等の機構では、あたかもブラシがブレーキのように機能し、摩擦によりファンの回転を抑えてしまうことや空気の通り道を狭くしてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、付着したゴミを自動的に清掃する軸流ファン及び清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、複数の羽根と、前記羽根を径方向に沿って中央から外部に移動自在に収納する円盤状の収納部と、ファン無回転時には前記羽根を前記収納部内に収納し、ファン回転時には遠心力により前記羽根を前記収納部外に突出するように付勢する弾性体と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記収納部の前記羽根の出入り口周囲に、前記羽根の突出時に前記羽根と接触するようにブラシを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記収納部の前記羽根の出入り口周囲に、前記羽根の収納時に前記羽根と接触するようにブラシを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか一項記載の発明において、前記羽根を、所定のピッチ角を有すると共に、隣接する羽根の一部が重なるように配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、円盤状の収納部に径方向に沿って中央から外部に移動自在な複数の羽根を弾性体で軸方向に付勢しつつ前記収納部を周方向に回転させることにより生じる遠心力で各羽根を前記収納部から突き出させることで送風させ、前記収納部の回転を停止することにより、前記遠心力を消滅させて各羽根を前記収納部に収納する際に、回転時に各羽根に付着した塵埃を前記収納部の側壁との接触部で除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、付着したゴミを自動的に清掃する軸流ファン及び清掃方法の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明に係る軸流ファン10のファン回転時の平面概念図の一例であり、(b)は、(a)に示した軸流ファン10のファン無回転時の平面概念図である。
【図2】(a)は、軸流ファン10が矢印B方向のファン回転時の平面図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、図1(a)に示した軸流ファン10のファン無回転時の側面図であり、(d)は、(b)の部分拡大斜視図であり、(e)は、(c)の部分拡大斜視図である。
【図3】(a)は、本発明に係る軸流ファンの他の実施の形態を示す、軸流ファン20のファン回転時の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、軸流ファン20のファン無回転時の側面図であり、(d)は、(b)の部分拡大斜視図であり、(e)は、(c)の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施の形態1>
図1(a)は、本発明に係る軸流ファン10の矢印A方向のファン回転時の平面概念図の一例であり、図1(b)は、図1(a)に示した軸流ファン10の無回転時の平面図である。
【0016】
図2(a)は、軸流ファン10が矢印B方向のファン回転時の平面図であり、図2(b)は、図2(a)の側面図であり、図2(c)は、図1(a)に示した軸流ファン10のファン無回転時の側面図であり、図2(d)は、図2(b)の部分拡大斜視図であり、図2(e)は、図2(c)の部分拡大斜視図である。
図2(b)、(c)において、16は軸流ファン10を回転させるモータである。
【0017】
軸流ファン10は、複数(図では8枚であるが限定されない。)の羽根11と、羽根11を径方向に沿って中央から外部に移動自在に収納する円盤状の収納部12と、ファン無回転時には羽根11を収納部12内に収納し、ファン回転時には遠心力により羽根11を収納部12外に突出するように付勢する弾性体14と、を備えたものである。
【0018】
収納部12は、円周状の側面から中心のボス13に向かうほぼ扇状の収納溝15が形成された中実の円盤であり、中央にボス13が形成されている。ボス13は、後述するモータ16の出力軸に取り付けられるようになっている。収納溝15は、ほぼ扇の地紙形状を有しており、ほぼ扇状の羽根11が収納できるようになっている。
収納溝15は収納部12の図示しない中心軸に対して所定の角度(ピッチ角:例えば、10°〜45°)で斜めに形成されている。これは軸流ファン10が回転したときに風を発生させるためであるが、斜めに形成されていることで収納溝15の数を増加させることが可能であり、羽根15の枚数を8枚から16枚にすることができる。
【0019】
羽根11及び収納部12の材質はプラスチックが挙げられるが、金属でもよい。
羽根11の付け根とボス13との間は弾性体としてのコイルバネ14(ゴムもしくスポンジでもよい。)で接続されている。コイルバネ14のバネ定数は、ファン無回転時には羽根11を収納部12内に収納し、ファン回転時には遠心力により羽根11を収納部12外に突出するように付勢することができる程度の値であればよい。
また、収納溝15には回転による遠心力がコイルバネ15に打ち勝って、羽根11が収納部12の外部に出過ぎたり外れたりしないように図示しないストッパを設けてもよく、羽根11とボスとの間を紐で接続してもよい。
コイルバネ14は図では円筒コイルバネが示されているが、円錐コイルバネであってもよい。
【0020】
軸流ファン10は、ファン回転時に羽根11が収納部12から外部に突出して風を発生させる。この軸流ファン10がファン回転時からファン無回転時に移行する際に羽根11がコイルバネ14の収縮により収納溝15内に引き込まれるが、この引き込み時に羽根11に付着した埃が羽根11と収納溝15との間の接触部で掻き落とされるので、羽根11が自動的に清掃される。
【0021】
<実施の形態2>
図3(a)は、本発明に係る軸流ファンの他の実施の形態を示す、軸流ファン20の矢印C方向のファン回転時の一例を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)の側面図であり、図3(c)は、軸流ファン20のファン無回転時の側面図であり、図3(d)は、図3(b)の部分拡大斜視図であり、図3(e)は、図3(c)の部分拡大斜視図である。
【0022】
実施形態2の実施形態1との相違点は、収納溝の開口部に清掃用のブラシ21を設けた点である。ブラシ21の材質は樹脂もしくは毛(豚毛)が好ましい。
軸流ファン20のファン回転時に羽根11に付着した埃が、軸流ファン20の無回転時に移行する際に、羽根11がコイルバネ14の収縮により収納溝15内に引き込まれるが、この引き込み時に羽根11に付着した埃が羽根11と収納溝15との間の接触部で掻き落とされると共に、ブラシ21で擦られるので、羽根11が自動的に清掃されると共に埃の収納溝15内への進入するのを防止することができる。
また、ファン回転時にはブラシ21が羽根11に接触しながら回転するので、風圧でブラシ21がなびいてファン回転時にも羽根11の一部が清掃される。羽根の回転数を制御し遠心力を調節すれば、羽根11の突出位置を、完全に突出した状態から収納された状態までの間のすべてに調節でき、通常使用時よりも長時間の羽根の清掃が可能になる。
さらに、羽根11及びブラシ21は、ファン回転時にはブラシ21は羽根11の基部に接触したまま回転するので、空気の流れを邪魔したり、羽根11の回転を邪魔したりすることがない。
【0023】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、電子機器の冷却ファンに利用することができ、換気扇にも利用できる。
【符号の説明】
【0025】
10、20 軸流ファン
11 羽根
12 収納部
13 ボス
14 コイルバネ(弾性体)
15 収納溝
16 モータ
21 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根と、
前記羽根を径方向に沿って中央から外部に移動自在に収納する円盤状の収納部と、
ファン無回転時には前記羽根を前記収納部内に収納し、ファン回転時には遠心力により前記羽根を前記収納部外に突出するように付勢する弾性体と、
を備えたことを特徴とする軸流ファン。
【請求項2】
前記収納部の前記羽根の出入り口周囲に、前記羽根の突出時に前記羽根と接触するようにブラシを備えたことを特徴とする請求項1記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記収納部の前記羽根の出入り口周囲に、前記羽根の収納時に前記羽根と接触するようにブラシを備えたことを特徴とする請求項1記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記羽根を、所定のピッチ角を有すると共に、隣接する羽根の一部が重なるように配置したことを特徴とする請求項1から3の何れか一項記載の軸流ファン。
【請求項5】
円盤状の収納部に径方向に沿って中央から外部に移動自在な複数の羽根を弾性体で軸方向に付勢しつつ前記収納部を周方向に回転させることにより生じる遠心力で各羽根を前記収納部から突き出させることで送風させ、
前記収納部の回転を停止することにより、前記遠心力を消滅させて各羽根を前記収納部に収納する際に、回転時に各羽根に付着した塵埃を前記収納部の側壁との接触部で除去することを特徴とする軸流ファンの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67649(P2012−67649A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212051(P2010−212051)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】