説明

軸流ファン及び軸流ファンを搭載した電子機器

【課題】
本発明は、電子機器筐体外に新たなスペースや大きな圧力損失成分を設けることなく、電子機器の低騒音化を図ることが可能な電子部品冷却用軸流ファン及び同軸流ファンを搭載する電子機器を提供する。
【解決手段】
送風方向に対して平行な外周部フレーム内に、羽根の回転軸を傾斜させて設け電子機器筐体高さ制約以上の羽根径を持たせた軸流ファンにより、電子機器冷却に必要な風量を最小限の運転騒音で実現し、新たなスペースや大きな圧力損失成分を設けることなく電子機器の低騒音化を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の低騒音化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる半導体、とりわけ情報処理装置のCPUに代表されるような半導体の進化は急激であり、高密度化・高発熱量化の一途をたどっているのは周知の事実である。これに伴い、半導体をはじめとする電子部品の冷却のため、ファンの実装数あるいは回転数を増加させており、装置の騒音値も上昇傾向にある。また近年の電子機器は筐体高さを抑えラックに多段搭載し高密度・高性能化を目指す傾向にある。このため電子機器筐体内では冷却に必要な風量を得るため筐体高さの制限内に収まるファンを並列に配置して使用する。しかし、上記ファンが単体で電子機器冷却上不十分な場合、直列に連結し性能を向上させたものを並列に配置して使用することが多く、これによりファン個数が増加することから著しく騒音値並びに消費電力が上昇していた。一方で電子機器が事務室などに置かれることが増えてきたことから、ユーザの低騒音化の要望は強くなっている。これらユーザからの低騒音化の要求に応えるため、従来は電子機器の筐体外部に消音器を取り付ける方法が行われてきた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−277956
【特許文献2】特開平11−212673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、電子機器筐体外部に消音器を設けており、消音器のためのスペースが筐体外に別途必要となる。またブロック状の吸音材等により構成される消音器が、電子機器背面の冷却流体の流路上に設置されることにより、電子機器に新たな圧力損失体が付加されることになるため、電子機器の騒音が低減する一方で、電子機器の冷却性能が著しく低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明では、送風方向に対して平行な外周部フレームを持たせ、羽根の回転軸を傾斜させることで電子機器筐体高さ制約以上の羽根径を持たせた軸流ファンにより電子機器冷却に必要な風量を最小限の運転騒音で実現することで、電子機器筐体外に新たなスペースや大きな圧力損失成分を設けることなく、電子機器の低騒音化を図ることを可能とする。
【0006】
水平入排気により冷却を行う電子機器筐体に内包される電子部品を冷却するため一般に用いられる軸流ファンは、羽根の回転軸が送風方向に対して平行に設けられており、電子機器筐体の上下端と平行して給排気を行う。このため外周部フレームを含めた軸流ファン全体の外形は軸流ファンの羽根径により決まる。したがって、電子機器筐体のサイズによって、搭載可能な軸流ファンの羽根径の最大値は自動的に決まっていた。このため電子機器筐体の高さが小さい場合は、冷却性能上不十分であっても、小さい羽根径の軸流ファンを使用することとなり、結果として必要な冷却性能を得るため2台若しくは3台直列に軸流ファンを設置して使用していた。これにより電子機器に必要な冷却性能は得ることが出来るが、一方で騒音値並びに消費電力がファンの台数増加に応じて上昇していた。
【0007】
上記騒音値、消費電力の増大を低減するため、送風方向に対して、外周部フレームのみを平行に保ち、回転軸を傾斜させることで電子機器筐体高さ制約以上の羽根径を持たせた軸流ファンにより電子機器冷却に必要な風量を得ることができる。
【0008】
また、本発明ファンの外周部フレームは、送風方向すなわち筐体の上下板と平行となる形状であるため、外周部フレームと筐体上下板が隙間無く接着した構造の電子機器を構成することが可能で、筐体高さ方向のスペースを最大限に活用できる点で、従来の軸流ファンと遜色が無い。同時にこの際、本発明のファンは筐体高さ最大限の入気・排気面高さを持つことになり風の回折による圧力損失も最小限に抑えることができ、筐体内隅々まで冷却風を送ることが可能となる。加えて、一つの羽根ユニットでは物理的に補えない風量が必要になる際は、本発明の軸流ファンは外周部フレームが送風方向すなわち筐体の上下板と平行な形状であるため、一フレーム内に複数の羽根ユニットを直列に内包させる構造にすることが可能で、これにより必要な風量を最小限の運転騒音、消費電力で実現することができる。上記構成は本発明の羽根ユニットを一つ持つ軸流ファンを複数直列に並べることでも可能であるが、この場合外周部フレームが別れているため、フレーム同士の接触による振動や、電子機器筐体内設置スペース並びにコストの増大が考えられ好ましくない。
【0009】
なお本発明の軸流ファンについて、フレームの材料、羽根枚数、羽根形状、羽根材質は問わない。また本発明の軸流ファンについて上記の一つのフレームの中に複数の羽根ユニットを内包するものも含める。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、送風方向に対して、平行な外周部フレームを持ち回転軸を傾斜させることで電子機器筐体高さ制約以上の羽根径を持たせた軸流ファンにより電子機器冷却に必要な風量を最小限のファン個数、運転騒音並びに消費電力で実現することが可能となるので、搭載ファン回転数・個数の増大が不要となり、騒音値並び消費電力、コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1の実施例となる軸流ファンの正面図と側面図を図1に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム2の上下端方向に対して羽根回転軸固定用のフレーム3を傾斜させて設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸1を傾斜させている。
【0012】
本発明の第2の実施例となる軸流ファンの正面図と側面図を図2に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム5の上下端方向に対して羽根回転軸固定用のフレーム3を傾斜させて設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸1を傾斜させている。なお、ファンを筐体内で固定しやすいように入気面を外周部フレーム5の上下端方向に対して鉛直になる形状としている。
【0013】
本発明の第3の実施例となる軸流ファンの正面図と側面図を図3に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム6の上下端方向に対して羽根回転軸固定用のフレーム3を傾斜させて設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸1を傾斜させている。なお、ファンを筐体内で固定しやすいように入気、排気面を羽根外周部フレーム6の上下端方向に対して鉛直になる形状としている。
【0014】
本発明の第4の実施例となる軸流ファンの正面図と側面図を図4に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム6の上下端方向に対して羽根回転軸固定用のフレーム3を傾斜させて設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸1を傾斜させている。なお、ファンを筐体内で固定しやすいように入気、排気面を外周部フレーム6の上下端方向に対して鉛直になる形状とし、羽根側のフレーム内面に吸音材7を設けている。
【0015】
本発明の第5の実施例となる軸流ファンの正面図と側面図を図5に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム8の上下端方向に対して3つの羽根回転軸固定用フレーム9を傾斜させて直列に設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸1を傾斜させている。なお、ファンを筐体内で固定しやすいように入気、排気面を外周部フレーム8の上下端方向に対して鉛直になる形状としている。
【0016】
本発明の第6の実施例となる電子機器の側面の断面図を図6に示す。本電子機器は、電子機器筐体10の上下板と本発明の軸流ファンの外周部フレーム2が接着するかたちで構成されており、筐体前面より入気12を行い電子機器筐体高さと同じ入排気面高さを持つ本発明の軸流ファンにより、ファン入気風13とファン排気風15を介し電子機器筐体内の発熱体11など筐体内隅々まで冷却し、筐体背面より排気14を行う。
【0017】
従来の軸流ファンの正面図と側面図を図7に示す。本軸流ファンは、外周部フレーム6の上下端方向に対して羽根回転軸固定用のフレーム16を鉛直に設けることで、送風方向4に対し羽根回転軸17を平行に設けている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例の正面図と側面図。
【図2】本発明の第2の実施例の正面図と側面図。
【図3】本発明の第3の実施例の正面図と側面図。
【図4】本発明の第4の実施例の正面図と側面図。
【図5】本発明の第5の実施例の正面図と側面図。
【図6】本発明の第6の実施例の側面の断面図。
【図7】従来の軸流ファンの正面図と側面図。
【符号の説明】
【0019】
1 羽根回転軸
2 外周部フレーム
3 羽根回転軸固定用のフレーム
4 送風方向
5 外周部フレーム
6 外周部フレーム
7 吸音材
8 外周部フレーム
9 3つの羽根回転軸固定用のフレーム
10 電子機器筐体
11 電子機器筐体内の発熱体
12 入気
13 ファン入気風
14 排気
15 ファン排気風
16 羽根回転軸固定用のフレーム
17 羽根回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風方向に対して、外周部フレームが平行で羽根の回転軸が傾斜していることを特徴とする電子部品冷却用の軸流ファン。
【請求項2】
送風方向に対して、外周部フレームが平行で羽根の回転軸が傾斜し、外周部フレーム内面の全部または一部に吸音材を設けたことを特徴とする電子部品冷却用の軸流ファン。
【請求項3】
送風方向に対して、外周部フレームが平行で羽根の回転軸が傾斜している電子部品冷却用の軸流ファンを、筐体内に搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
送風方向に対して、外周部フレームが平行で羽根の回転軸が傾斜し、外周部フレーム内面の全部または一部に吸音材を設けている軸流ファンを、筐体内に搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−106782(P2010−106782A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280703(P2008−280703)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】