説明

軸流送風機

【課題】ハブ本体の内面での作業を極力削減することにより、作業性の向上を図り、組立時間を短縮する送風機を実現することを目的としている。
【解決手段】ハブ本体1とブレード5とブレードブラケット3と中間ブラケット2で構成され、中間ブラケット2をブレード5とブレードブラケット3の中間に配置して、ブレード5の組付け作業をハブ本体1の外側から行うことができるようにすることにより作業性の向上を図り、組立時間を短縮するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼の角度を任意に変更することにより風量を変更することが可能な送風機の動翼機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路トンネル内の換気装置に用いられる軸流送風機においては、トンネル内の交通量の変化などに対応して、送風量を変化させる制御が取り入れられていることが多い。その送風量を変化させる方法としては、送風機の回転数をインバータなどを用いて変化させる方法もある。しかし、大型の送風機では高価なインバータを用いずに送風機の動翼の角度を変更して送風量を変化させる方法も多くとられている。
【0003】
その風量を可変とすることが可能な送風機の動翼機構では油圧又は空気圧を用いて羽根車内に配置した動翼の軸を回転させる方法が知られている。
【0004】
以下、その方法について、図6を参照しながら説明する。
【0005】
図6に示すように、ブレード105を保持するためのブラケットリテーナ102は、ハブ本体101に加工されたブレード取付孔113内面に密着し、締結ボルト109で取り付けられている。ブレードブラケット103は、ハブ本体101の内面に配置され、ブレード105を回転可能に保持する。ブレード105は、ブレード105に加工されたねじ106によりブレードブラケット103に結合されている。ブレードブラケット103には、カウンタウエイト111がカウンタバランスメンバ112を介して結合されている。カウンタバランスメンバ112は、カウンタウエイト111をブレード105に対して適切な位置に支持するものである。また、カウンタウエイト111はブレード105に発生する力とカウンタウエイト111により発生する力をバランスさせるためのものである。羽根車が回転しているとき、ブレード105には、遠心力によりブレード105とハブ本体101との取付角度が小さくなる方向へ回転しようとする力が発生する。カウンタウエイト111は、ブレード105に対して適切な位置に配置することにより、遠心力によりブレード105とハブ本体101との取付角度が大きくなる方向へ回転させる力を発生させるのである。ブレード105の最下端部107には、ハブ本体101内部にある動翼可変機構(図示せず)からの駆動力をブレード105に伝達するためのカムフロア108が結合されている。ブレードブラケット103とブラケットリテーナ102の間には軸受104が配置されているため、油圧または空気圧を動力とした動翼可変機構からの駆動力をカムフロア108に与えることによりブレード105が軸を中心として回転してブレード105の角度を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−2199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の構成では、組立時にハブ本体101の内面よりブレードブラケット103、カウンタバランスメンバ112、カムフロア108などを組付けることになり、ハブ本体101の直径が比較的小さい場合、組立作業性が著しく低下する。また、カウンタバランスメンバ112の取り付け角度を調整後、固定ねじ110を締め付けることにより固定するため、これもハブ本体101内面での作業となり、作業性を低下させる一因となる。また、ブラケットリテーナ102は締結ボルト109によりハブ本体101に固定するため、ハブ本体101にはそのためのねじ穴加工がブレード105一枚につき複数必要となるため製造コストを上昇させる要因となる。という課題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ハブ本体の内面での作業を極力削減することにより、作業性の向上を図り、組立時間を短縮する送風機を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明は、
ハブ本体と、このハブ本体の外周側に放射状に設けられるブレードと、このブレードをハブ本体に取り付けるブレード固定手段と、前記ハブ本体の内部にあってブレード角を変更するカムフロアとを有し、前記ブレード固定手段は、外周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Aと、内周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Bとで構成され、前記ブレード固定手段Aと前記ブレード固定手段Bは、前記ハブ本体に設けられたブレード取付用開口に、前記ハブ本体を挟むようにして取り付けられ、前記ブレード固定手段Aに外周側から前記ブレードを固定し、前記ブレード固定手段Bに内周側から前記カムフロアを接続したものであり、ブレード組立部品をハブ本体の外側からの作業で組立を可能とすることができるようにするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブレード固定手段は、外周側からブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Aと、内周側からブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Bとで構成され、ブレード固定手段Aとブレード固定手段Bは、ハブ本体に設けられたブレード取付用開口に、ハブ本体を挟むようにして取り付けられ、ブレード固定手段Aに外周側からブレードを固定し、ブレード固定手段Bに内周側からカムフロアを接続したので、ハブ本体にブレードを組付ける作業においては、組立初期にハブ本体の内面でブレード固定手段を取り付ける以外の作業は、ハブ本体の外側から行うことができる。従って、組立作業性の向上を図り、組立時間を短縮する送風機を実現することができる。また、ハブの直径が比較的小さい場合でも作業性を低下させることなく組立を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1によるブレード固定の構成を示す図
【図2】同ハブ本体の内側から見た平面図
【図3】同ブレードブラケットとカウンタバランスメンバを一体化した構成図
【図4】同軸流送風機の全体図
【図5】同ブレード取付の分解構成図
【図6】従来の構成を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の手段は、ハブ本体と、このハブ本体の外周側に放射状に設けられるブレードと、このブレードをハブ本体に取り付けるブレード固定手段と、前記ハブ本体の内部にあってブレード角を変更するカムフロアとを有し、前記ブレード固定手段は、外周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Aと、内周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Bとで構成され、前記ブレード固定手段Aと前記ブレード固定手段Bは、前記ハブ本体に設けられたブレード取付用開口に、前記ハブ本体を挟むようにして取り付けられ、前記ブレード固定手段Aに外周側から前記ブレードを固定し、前記ブレード固定手段Bに内周側から前記カムフロアを接続した構成で、ブレード組立部品をハブ本体の外側からの作業で組立を可能とすることができるようにするものである。
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1〜5を用いて本発明の第1実施の形態について説明する。
【0015】
図4に本願発明を適用した軸流送風機20を示す。この軸流送風機20には、放射状にブレード5(図4では図示せず)を持つ羽根車21を有している。
【0016】
図1に示すように、ハブ本体1の円周上には、円形のブレード取付用開口12が等間隔に加工され、このブレード取付用開口12の内側面には、ブレード固定手段Bとなるブレードブラケット3が配置されている。ブレードブラケット3は、軸受4を介してハブ本体1に接している。ブレード固定手段Aとなる中間ブラケット2は、ブレード取付用開口12の外周側から取り付けられる。そして、ブレードブラケット3と中間ブラケット2は、ハブ本体1を挟むようにしてブレード取付用開口12に中間ブラケット固定ねじ7により結合されて取り付けられる。すなわち、中間ブラケット2とブレードブラケット3は、ハブ本体1に対して回動可能になっている。ブレード取付用開口12は、径の異なる開口を同心に形成したものとなっている。言い換えれば、大径の円形開口(円形開口12a)内に、同心に小径の円形開口(円形開口12b)が形成されている。大径の円形開口12aは、外周側に設けられている。ハブ本体1の回転時は遠心力によりブレードブラケット3が小径の円形開口12bに押し付けられるため、軸受4は小径の円形開口12b側のみに配置することでブレード5の角度を滑らかに変化させることができる。ハブ本体1の内面側の中間ブラケット2のハブ本体1外周側の面には、ブレード5がブレード固定ねじ6により接続されている。また、ブレードブラケット3のハブ本体1内側の面には、カウンタバランスメンバ9がカウンタバランスメンバ固定ねじ11により接続されている。そして、カウンタバランスメンバ9には、カウンタウエイト8とカムフロア10が固定されている。カムフロア10は、ハブ本体1内に設けた駆動装置(図示せず)からの駆動力をブレード固定手段Bに伝達し、ブレード5の角度を変更することになる。
【0017】
カウンタウエイト8は、ブレード5に対して適切な位置に配置することにより、ハブ本体1が回転したときに発生する遠心力によりブレード5に作用するハブ本体1に対する取付角度が小さくなる方向への力を、打ち消す様に作用させることができる。ここで、カウンタバランスメンバ9の形状は、カウンタウエイト8を適切な位置に配置することができるように、決定される。また、油圧または空気圧を動力とした動翼可変機構からの駆動力を適切にブレード5へ伝達するためにカムフロア10の位置を決定し、その位置を保持するためにカウンタバランスメンバ9の形状を決定する。
【0018】
次に、上記構成の軸流送風機の組立について説明する。ブレードブラケット3には、あらかじめカウンタバランスメンバ9、カウンタウエイト8、カムフロア10を固定し、軸受4を取り付けた後にハブ本体1の内面に保持する。そして、ハブ本体1の外面側から中間ブラケット2を中間ブラケット固定ねじ7でブレードブラケット3に接続する。それからブレード5をブレード固定ねじ6で中間ブラケット2へ接続するという手順で組立を行うことができる。
【0019】
このように、ハブ本体1にブレード5を組み付ける作業において、ハブ本体1の内面での作業は組立初期にブレードブラケット3を保持するのみで、それ以降の組立作業はハブ本体1の外部から行うことができるので組立作業性の向上を図り、組立時間を短縮する送風機を実現することができる。また、ハブ本体1の直径が比較的小さい場合でも作業性を低下させることなく組立を行うことができる。
【0020】
また、ブレード固定手段A(中間ブラケット2)とブレード固定手段B(ブレードブラケット3)は、小径の円形開口12bを形成するハブ本体1を挟んで取り付けられており、その構成のみでブレード固定手段A(中間ブラケット2)、ブレード固定手段B(ブレードブラケット3)の取付位置が決まるので、ブレードブラケット3の取付位置を決めるためのブラケットリテーナが不要となる。そのため、ブラケットリテーナを固定するためのハブ本体1の穴加工及び締結ボルトが不要となり、部品点数の削減及び作業工数の削減ができる。
【0021】
また、図3の様にブレードブラケット3をダイキャストなどの製法によりカウンタバランスメンバ9と一体化した構造とすることにより、カウンタバランスメンバ9が不要となる。そして、ブレードブラケット3に直接カウンタウエイト8とカムフロア10を取付けることができるようになる。これにより、カウンタバランスメンバ9をブレードブラケット3へ取付ける工数を削減し、また、カウンタウエイト8およびカムフロア10をより精度良くブレードブラケット3へ取付けることができるという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
比較的大風量で、風量を可変できる送風機を提供することができるため、工場、駐車場、道路トンネル、倉庫等の広い空間の換気用途に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 ハブ本体
2 中間ブラケット
3 ブレードブラケット
4 軸受
5 ブレード
6 ブレード固定ねじ
7 中間ブラケット固定ねじ
8 カウンタウエイト
9 カウンタバランスメンバ
10 カムフロア
11 カウンタバランスメンバ固定ねじ
12 ブレード取付用開口
12a (大径の)円形開口
12b (小径の)円形開口
20 軸流送風機
21 羽根車
101 ハブ本体
102 ブラケットリテーナ
103 ブレードブラケット
104 軸受
105 ブレード
106 ねじ
107 最下端部
108 カムフロア
109 締結ボルト
110 固定ねじ
111 カウンタウエイト
112 カウンタバランスメンバ
113 ブレード取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ本体と、
このハブ本体の外周側に放射状に設けられるブレードと、
このブレードをハブ本体のブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段と、
前記ハブ本体の内部にあってブレード角を変更するカムフロアとを有し、
前記ブレード固定手段は、
外周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Aと、
内周側から前記ブレード取付用開口に取り付けるブレード固定手段Bとで構成され、
前記ブレード固定手段Aと前記ブレード固定手段Bは、前記ハブ本体に設けられたブレード取付用開口に、前記ハブ本体を挟むようにして取り付けられ、
前記ブレード固定手段Aに外周側から前記ブレードを固定し、
前記ブレード固定手段Bに内周側から前記カムフロアを接続した動翼可変機構を有する軸流送風機。
【請求項2】
前記ブレード固定手段Bと前記ハブ本体との間に軸受を設けた請求項1記載の軸流送風機。
【請求項3】
前記ブレード取付用開口は、外周側の大径の開口と、内周側の小径の開口とで構成され、
前記ブレード固定手段は、この内周側の小径の開口を挟むように取り付けられる請求項1または2記載の軸流送風機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−246770(P2012−246770A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116577(P2011−116577)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】