説明

輝度向上用光学フィルム及びその製造方法

【課題】 費用が廉価で、製作工程が簡単な層で形成することができる輝度向上用光学フィルムを提供することにある。
【解決手段】 フィルムにドーパントを添加し、ドーパントの含有濃度がフィルムの厚さ方向に沿って順次に変わるように形成した輝度向上用光学フィルム及びその製造方法に関する。このように、輝度向上用光学フィルムにドーパントを注入し、ドーパントの含有濃度がフィルムの厚さにしたがって順次に変わるように形成することによって、工程が簡単で廉価な輝度向上フィルムを提供することができる。これによって大型LCDTV及びモニターの値段を低価格にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輝度向上用光学フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にLCD(liquid crystal display)装置はゲート線、データ線、薄膜トランジスタ及び画素電極などが形成されている薄膜トランジスタ表示板、これに対向してカラーフィルター及び共通電極などが形成されているカラーフィルター表示板及びこれら薄膜トランジスタ表示板とカラーフィルタ表示板との間に注入される液晶層などで構成される。
【0003】
LCD装置は画素電極と共通電極のと間に形成される電界によって液晶が回転しながら光の透過率が変わり、このような透過率の変化に応じて画像が表示される。画素電極と共通電極の間に形成される電界は画素電極によって調節され、画素電極の電圧の制御は、薄膜トランジスタ等のスイッチング素子によって行われる。ここで、薄膜トランジスタは、ゲート線に沿って伝送される走査信号によってデータ線に沿って伝送される画像信号を画素電極に伝達または遮断する。
【0004】
液晶層では、画素電極と共通電極とに電圧が加わらない場合には、薄膜トランジスタ表示板とカラーフィルタ表示板との表面に形成された配向膜によって、液晶分子が一定の方向に配列され、電圧が加わると電界の方向にしたがって回転する。
【0005】
液晶は受光素子であるため光源を別途に必要とし、光源から提供される光のうち多量が損失された後、残った分だけ表示装置の前面に透過する。したがって、光損失が大きく表示輝度が低くなるという短所がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような短所を克服するために液晶表示装置では様々なフィルムを付着して使用している。そのうちの一つが輝度向上フィルムである。
輝度向上フィルムは、フィルム表面にプリズムを形成したプリズム型輝度向上フィルムと反射偏光フィルムに区分される。
【0007】
反射偏光フィルムは、フィルムに入射する光のうち特定偏光方向の光は透過させ、これに垂直な偏光の光は反射させる。この時、反射した光がバックライトユニットなどで再び反射してフィルムに入射する時、この光のうち一部は偏光方向が変わってフィルムを透過する。このような段階を数回経ると、ほぼ全ての光がフィルムを透過して表示装置の輝度が向上する。
【0008】
しかし、このような反射偏光フィルムは屈折率が異なる二つの層が数百回以上にわたり反復形成されており、値段が高く製作工程が複雑であるという短所がある。
本発明の目的は、費用も廉価で製作工程も簡単な層で形成されている輝度向上用光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の輝度向上用光学フィルムは、高分子化合物フィルムと、該高分子化合物フィルムに含まれたドーパントとからなり、前記ドーパントは、前記高分子化合物フィルムの厚さ方向に濃度勾配を有することを特徴とする。
【0010】
この輝度向上用光学フィルムは、ドーパントが高分子化合物フィルム対して0.001〜0.1小さい屈折率を有する。
また、輝度向上用光学フィルムは、高分子化合物フィルム対して0.001〜0.2小さい屈折率を有する。
【0011】
さらに、ドーパントは、屈折率が1.3999以上の可塑剤及び有機化合物からなる群から選択される。
屈折率が1.3999以上の可塑剤は、エステル系可塑剤及び芳香族可塑剤からなる群から選択され、エステル系可塑剤は、脂肪族一塩基酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系及びリン酸エステル系からなる群から選択され、芳香族可塑剤は、パーフルオロ化芳香族、ハロゲン又は水酸基を有する芳香族及び二フェニル基含有芳香族からなる群から選択される。
【0012】
屈折率が1.3999以上の有機化合物は、ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。
また、高分子化合物は、ポリエチレンテレフタレート系、ポリカーボネート系、ポリビニリデン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセテート系、スルホン系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスチレン系、ポリビニルクロライド系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン系の化合物及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上である。
【0013】
輝度向上用光学フィルムの全体に対するドーパントの含有量は、0.1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜35重量%である。
また、本発明の輝度向上用光学フィルムの製造方法は、高分子化合物にドーパントを均一に混合してドーパントの含有量が異なる2以上のフィルム用混合材料をそれぞれ調製し、
前記形成された2以上のフィルム用混合材料を押出成形法を利用して薄膜状に積層し、
前記積層された薄膜を冷却及び熱延伸することを含む。
【0014】
この製造方法では、押出成形法でT−ダイが用いられる。
また、2以上のフィルム用混合材料のうち1つは、ドーパントを含有しないものである。
【0015】
2以上のフィルム用混合材料を、ドーパント含有量が大きい順序又は小さい順序で薄膜状に積層する。
熱延伸は、少なくともトランスバースダイレクション及びマシンダイレクションで2回行う。
【0016】
熱延伸において、ドーパント含有量が異なる2以上のフィルム間でドーパントを移動させて、フィルムの厚さ方向に漸次の濃度勾配をもたせる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の輝度向上用光学フィルムによれば、輝度向上用光学フィルムにドーパントを注入し、ドーパントの含有濃度がフィルムの厚さにしたがって順次に変わるように形成することによって、工程が簡単で廉価な輝度向上フィルムを提供することができる。これによって大型LCD−TV及びモニターのを安価に提供することが可能となる。
【0018】
また、本発明の輝度向上用光学フィルムの製造方法によれば、安価で高性能のフィルムを、簡便に、歩留まりよく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、上述したような課題を解決するために、フィルムにドーパントを添加し、ドーパントの含有濃度がフィルムの厚さ方向に沿って順次に変わるように形成した輝度向上用光学フィルム及びその製造方法を提供する。
【0020】
本発明で用いるフィルムは、高分子化合物から形成されたものであり、例えば、屈折率が、1.4から1.7程度、好ましくは1.49から1.66程度のものが挙げられる。また、高分子化合物は、例えば、ポリエチレンテレフタレート系列、ポリカーボネート系列、ポリビニリデン系列、ポリビニルアルコール系列、ポリビニルアセテート系、スルホン系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスチレン系、ポリビニルクロライド系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン系列及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上によって形成されていることが好ましい。共重合体は、上述した系のポリマーを形成するモノマーのいずれかを含んでいてもよく、これら以外のモノマーを含んでいてもよい。また、これらの高分子化合物は、フィルム特性を変化させない限り、上述したポリマーの誘導体又はその他の誘導体を含んでいてもよい。
【0021】
本発明で用いるドーパントは、フィルムの輝度を調整することができるものであれば特に限定されず、例えば、上述した高分子化合物フィルムよりも屈折率が小さい化合物が挙げられる。屈折率は、例えば、高分子化合物フィルムに対して0.001から0.1小さいものが好ましい。
【0022】
また、ドーパントは、高分子化合物フィルム又はその構成成分とは重合せず、透明度が高く維持できる材料であることが好ましい。
このようなドーパントとしては、例えば、可塑剤及び有機化合物からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。可塑剤としては、例えば、屈折率が1.3999以上のものであって、エステル系可塑剤及び芳香族可塑剤からなる群から選択される。エステル系可塑剤は、脂肪族一塩基酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系及びリン酸エステル系からなる群から選択される。
【0023】
脂肪族一塩基酸エステル系としては、酢酸系;ラウリン、ミリスチン系等が挙げられる。酢酸系としては、例えば、グリセロール-トリアセテート(glycerol-triacetate)等が挙げられる。ラウリン、ミリスチン系としては、例えば、イソプロピルミリステート(isopropyl myristate)、メチルラウレート(methyl laurate)等が挙げられる。
【0024】
脂肪族二塩基酸エステル系としては、サクシネート系(例えば、ジエチルサクシネート(diethyl succinate))、フタレート系(例えば、ジシクロヘキシルフタレート(dicyclohexyl phthalate)、ジイソデシルフタレート(diisodecyl phthalate)、ジエチルフタレート(diethyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)、ジイソオクチルフタレート(diisooctyl phthalate)、ジカプリルフタレート(dicapryl phthalate)、ブチルフタレート、オクチルフタレート(octyl phthalate)、ベンジルフタレート-n-ブチル(benzyl phthalate-n-butyl)、等)、アジペート系(例えば、ジイソブチルアジペート(diisobutyl adipate)、ジカプリルアジペート(dicapryl adipate)等)、ピメロイル系(例えば、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol diisobutyrate)等)、セバケート系(例えば、ジメチルセバケート(dimethyl sebacate)、、ジブチルセバケート(dibutyl sebacate)等)等が挙げられる。
【0025】
リン酸エステル系としては、例えば、トリブチルホスフェート(tributyl phosphate)、トリフェニルホスフェート(triphenyl phosphate)、トリクレシルホスフェート(tricresyl phosphate)等が挙げられる。
【0026】
また、芳香族可塑剤は、パーフルオロ化芳香族、ハロゲン又は水酸基を有する芳香族及び二フェニル基含有芳香族からなる群から選択される。パーフルオロ化芳香族としては、例えば、パーフロロナフタレン(perfluoro naphthalene)、パーフルオロ化エーテル系(perfluorinated ethers)及びパーフルオロ化ポリエーテル系(perfluorinated polyethers)のようなパーフルオロ化芳香族(perfluorinated aromatics)等が挙げられる。ハロゲン又は水酸基を有する芳香族としては、例えば、ブロモベンゼン(bromobenzene)、o-ジクロロベンゼン(o-dichlorobenzene)、m-ジクロロベンゼン(m-dichlorobenzene)、3-フェニル-1-プロパノール(3-phenyl-1-propanol)等が挙げられる。二フェニル基含有芳香族としては、例えば、ジベンジルエーテル(dibenzyl ether)、フェノキシトルエン(phenoxy toluene)、1,1-ビス-(3,4-ジメチルフェニル)エタン(1,1-bis-(3,4-dimethyl phenyl)ethane)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、
ビフェニル(biphenyl)、ジフェニルスルフィド(diphenyl sulfide)、ジフェニルスルフォキシド(diphenyl sulfoxide)、ジフェニルメタン(diphenyl methane)、1-メトキシフェニル-1-フェニルエタン(1-methoxyphenyl-1-phenylethane)、ベンジルベンゾエ−ト(benzyl benzoate)等が挙げられる。
【0027】
有機化合物は、例えば、同じく、屈折率が1.3999以上のものであって、ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、1,2-ジブロモメタン、トリブロモメタン、1,2-ジクロロメタン、1,2-ジフルオロメタン等が挙げられる。中でも、1,2-ジブロモメタンが好ましい。
【0028】
ドーパントは、輝度向上用光学フィルムの全体に対して、0.1重量%以上、50重量%以下で含有されていることが好ましく、1重量%以上、35重量%以下であることがより好ましい。これにより、フィルムの熱特性を維持し、屈折率の分布を均一にすることができる。なお、ドーパントは、高分子化合物フィルムの厚さ方向に濃度勾配を有しているが、この濃度勾配は、段階的であってもよいし、徐々に変化するものであってもよい。また、ドーパントを2種以上用いる場合には、フィルムの厚さ方向に渡って、それぞれが濃度勾配を形成しながら均一に分布されていてもよいし、フィルムの厚さ方向に渡って、ドーパントの種類が変化しながら濃度勾配を形成していてもよい。
【0029】
上述したように、ドーパントを含んで構成される高分子化合物フィルムである輝度向上用光学フィルムは、高分子化合物フィルムに対して、0.001から0.2程度小さい屈折率を有することが好ましい。
【0030】
また、本発明の輝度向上用光学フィルムの製造方法では、まず、フィルム用の高分子化合物を準備し、これにドーパントを均一に混合する。このような高分子化合物とドーパントの混合物を、ドーパントの種類及び/又は量を変化させて2種以上組み合わせて用いることが好ましい。あるいは、このような混合物の1つ以上と、ドーパントを全く含まない高分子化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
次に、これらの混合物のそれぞれを薄膜状にし、それらを積層することにより、輝度向上用光学フィルムを製造することができる。積層数は、2層、3層、4層、5層以上のいずれであってもよい。
【0032】
これらの混合物のそれぞれの薄膜化は、例えば、押出成形法を利用して行うことができる。押出成形法は、当該分野で公知の何れの装置を用いて、どのような条件で行ってもよいが、例えば、T−ダイを利用することが好ましい。また、薄膜を積層する際には、ドーパント含有量が大きい順序又は小さい順序で積層することが適切であり、特に、ドーパント含有量が小さいものを下側に配置して積層することが好ましい。これにより、後述する熱延伸を行えばドーパント濃度を徐々に変化させることができる。
【0033】
積層された薄膜は、冷却し、熱延伸することが好ましい。冷却は、限定されることなく、例えば、ロール急冷法(チルロール法)、水浴急冷法等の種々の方法を用いることができる。
【0034】
熱延伸は、用いた材料に応じて、得られた薄膜状の積層膜について、薄膜状を維持し、延伸することができる温度範囲で行うことが好ましい。つまり、熱延伸する際に、薄膜状のフィルムは溶融状態であることが好ましい。熱延伸は、少なくとも、トランスバースダイレクション及びマシンダイレクションの2方向において行うことが好ましい。これにより、所望の厚さのフィルムを簡便に得ることができる。なお、熱延伸の条件、例えば、温度、引っ張り圧力等を調整することにより、ドーパント含有量が異なる2以上のフィルム間でドーパントを移動させて、フィルムの厚さ方向に漸次の濃度勾配をもたせることができる。つまり、薄膜状の、混合材料が全て溶融状態であれば、上部層のドーパントが下部層に移動することが可能である。その結果、薄膜状の混合材料の境界部分で上部混合材料から下部混合材料にドーパントが移動して境界部分のドーパント含有濃度が上部混合材料と下部混合材料の含有濃度の中間程度の値を有するようになる。これによって輝度向上用光学フィルムの厚さ方向によるドーパントの含有濃度を徐々に変化させることができる。
【0035】
以下に、本発明の輝度向上用光学フィルム及びその製造方法の実施例について図面を参考にして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な相異した形態で実現でき、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0036】
図面で様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体を通じて類似する部分については同一の符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるとする時、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の“すぐ上に”あるとする時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0037】
図1は、この実施例の輝度向上用光学フィルムの断面図を示しており、図2は本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムのドーパント濃度を色で表示した断面図である。
【0038】
図1で示したように、輝度向上用光学フィルム100は高分子化合物フィルム10とドーパント20で構成されている。ドーパントは輝度向上用光学フィルム100の厚さ方向において、下側にいくにしたがってその濃度が減少するように形成されている。図2ではドーパント濃度を色で表示した。色が濃厚なほどドーパント20の濃度が大きい。
【0039】
つまり、輝度向上用光学フィルム100の高分子化合物フィルム10はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、ドーパントとしては、表1に示すものをそれぞれ用いた。表1は、トリフェニルホスフェート(TPP)、ジフェニルスルフィド(DPS)、ジフェニルスルフォキシド(DPSO)、ベンジルベンゾエ−ト(BEN)及びトリクレジルホスフェート(TCP)の構造式、分子量、分子体積、溶解性パラメータ(SP値)及び屈折率を示す。
【0040】
【表1】

輝度向上用光学フィルム100は、いずれも、その上部面にはドーパント20が20重量%含まれ、中央には10重量%が含まれ、最下部面にはドーパント20が含まれず、上部面と中央の間にはドーパント20が10重量%以上、20重量%以下含まれており、中央と下部面の間にはドーパント20が0重量%以上、10重量%以下含まれている。
【0041】
つまり、輝度向上用光学フィルム100のドーパントの濃度は、図4に示したように、表面から裏面にかけて、徐々に減少するように構成されている。なお、図4のX軸は輝度向上用光学フィルム100の厚さを標準化して示したものであって、Y軸は輝度向上用光学フィルム100に含まれたドーパント20の含有濃度を標準化して示したものである。X軸で0は輝度向上用光学フィルム100の上部面を示し、1は下部面を示す。また、図4において三角は実際に測定した点をしめし、実線はそのシュミレーションを示す。
【0042】
この輝度向上用光学フィルム100は、図3に示したように、液晶表示装置で用いられた場合、下方から入射する光を、輝度向上用光学フィルム100の中央に集光させる特性を有する。つまり、輝度向上用光学フィルム100は液晶表示装置でバックライトユニット200と表示パネル(図示せず)の間に位置するが、一般にバックライトユニットに形成されている拡散板300及び拡散シート350の上に位置する。
【0043】
本発明の輝度向上用光学フィルム100を用いると、図3に図示されているようにランプ250で放射した光がパネルの側面に抜け出ず、輝度向上用光学フィルム100を透過しながらパネルの前面に向かって屈折してパネルの中央に集光する。これはフィルムの下部に比べてフィルム100の上部がドーパント20によって屈折率が小さくなるように形成されたためである。
【0044】
このようにドーパント20の濃度が厚さ方向に沿って変わるため、後述するような輝度向上用光学フィルム100の特性が現れる。
また、この実施例による輝度向上用光学フィルム100は、図5に示したように、厚さ方向において、屈折率の差を有している。X軸は図4と同様で、Y軸は屈折率の差を示している。Y軸で示している屈折率差は輝度向上用光学フィルム100の全体屈折率(n)とその位置での屈折率(n0)の差である。
【0045】
図5によれば、輝度向上用光学フィルム100の上部表面では屈折率に差がなく、下部表面では大略0.008程度の屈折率の差が現れるのが分かる。
なお、この実施例で得られた輝度向上用光学フィルムに対して、比較例として、既存の輝度向上フィルムの輝度を測定した。その結果を表2に示す。なお、既存の輝度向上フィルムとしては、屈折率が異なる2つの層が数百回以上反復形成されている反射偏光フィルムを使用した。
【0046】
【表2】

表2においては、13点(または13p)及び5点(または5p)というのは、輝度測定装置で測定した位置の個数を示す。つまり、13点平均輝度は、輝度測定装置を使用してパネルの13ケ所を測定した輝度の平均値を意味しており、5点平均輝度はパネルの5ケ所を測定した輝度の平均値を意味する。また、輝度の均一性は測定された輝度値のうち最大値と最小値の輝度パーセント比を示す値である。
【0047】
輝度比較値は、バックライト200のランプ250で発生した光を100とした時、輝度向上フィルムを通過した光の輝度がどの程度であるかを示す値であり、輝度効率値は既存の輝度向上フィルムを通過した輝度と本発明の実施例を通過した輝度を百分率で比較する値を示している。
【0048】
表2に示したように、既存輝度向上フィルムと本発明の実施例による輝度向上用光学フィルムは互いに差がほとんどない。
なお、輝度比較値において既存の輝度向上フィルムが本発明の実施例より多少高い値を示しているが、この結果は本発明の実施例を測定して現れた値の差なので、ドーパント20濃度の最適化が行われれば十分に克服可能な数値と判断される。本発明の実施例は、表2でのように同様な輝度値を有するが、値段の面で圧倒的に廉価であるので本発明の実施例が実際工程で適用する時にメリットがある。
【0049】
次に、本発明の実施例である輝度向上用光学フィルム100を製造する方法について説明する。
図6は本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムの製造方法を示すフローチャートであり、図7は本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムを製造するのに用いられるT−ダイを示した側面図であり、図8はT−ダイの正面図である。
【0050】
図6には輝度向上用光学フィルムを製造する方法として3つの工程を記述している。
まず、フィルム用高分子と均一に混合されたドーパントを含む少なくとも2以上の混合材料を形成する。
【0051】
つまり、ドーパント20がフィルム用高分子化合物に20重量%含まれる第1フィルム用混合材料と、ドーパント20がフィルム用高分子化合物に10重量%含まれる第2フィルム用混合材料と、ドーパント20が含まれない第3フィルム用混合材料を形成する(S1)。これらのフィルム用高分子化合物とドーパント20は均一に混合されている。
【0052】
その後、第1から第3混合材料を、例えば、図7及び図8に示したように、T−ダイ1の第1の注入口2、第2の注入口3、第3の注入口(図示せず)にそれぞれ注入し、ダイ内の接着部位4で接着させて、押出口5から押出すことにより、薄く積層する(S2)。
【0053】
T−ダイは、注入された第1から第3混合材料を広く薄く広げて積層する装置であり、積層された第1から第3混合材料は、最下部に第3フィルム用混合材料が配置され、その上には第2フィルム用混合材料が積層され、最上部には第1フィルム用混合材料が積層され、ドーパントの含有濃度が小さい混合材料が下に積層されるように積層される。
【0054】
最後に、積層されたフィルム用混合材料をローラ及び熱処理装備を利用して所望の厚さ、広さ及び特性を有するように冷却し、TD(transverse direction)方向とMD(machinery direction)方向に少なくとも2回熱延伸する(S3)。
【0055】
この時、第1から第3フィルム用混合材料は全て溶融状態であるので上部の混合材料のドーパントが下部の混合材料に移動し、輝度向上用光学フィルム100の厚さ方向によってドーパント20の含有濃度が順次に変わる。
【0056】
これにより、輝度向上用光学フィルムの製造を完了する。
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムの断面図である。
【図2】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムのドーパント濃度を色で表示した断面図である。
【図3】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムが液晶表示装置で用いられる状態を示した使用状態図である。
【図4】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムの厚さによるドーパントの濃度を示すグラフである。
【図5】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムの厚さによる屈折率を示すグラフである。
【図6】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムを製造するのに用いられるT-dieを示した側面図である。
【図8】本発明による実施例である輝度向上用光学フィルムを製造するのに用いられるT-dieを示した正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 T−ダイ
2 第1の注入口
3 第2の注入口
4 接着部位
5 押出口
10 輝度向上用光学フィルムの本体
20 ドーパント
100 輝度向上用光学フィルム
200 バックライトユニット
250 ランプ
300 拡散板
350 拡散シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物フィルムと、該高分子化合物フィルムに含まれたドーパントとからなり、前記ドーパントは、前記高分子化合物フィルムの厚さ方向に濃度勾配を有することを特徴とする輝度向上用光学フィルム。
【請求項2】
前記ドーパントは前記高分子化合物フィルム対して0.001〜0.1小さい屈折率を有する請求項1に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項3】
前記輝度向上フィルムは、前記高分子化合物フィルム対して0.001〜0.2小さい屈折率を有する請求項1又は2に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項4】
ドーパントは、屈折率が1.3999以上の可塑剤及び有機化合物からなる群から選択される請求項1〜3に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項5】
屈折率が1.3999以上の可塑剤は、エステル系可塑剤及び芳香族可塑剤からなる群から選択される請求項4に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項6】
エステル系可塑剤は、脂肪族一塩基酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系及びリン酸エステル系からなる群から選択される請求項5に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項7】
芳香族可塑剤は、パーフルオロ化芳香族、ハロゲン又は水酸基を有する芳香族及び二フェニル基含有芳香族からなる群から選択される請求項4に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項8】
屈折率が1.3999以上の有機化合物は、ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される請求項4に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項9】
前記高分子化合物は、ポリエチレンテレフタレート系、ポリカーボネート系、ポリビニリデン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセテート系、スルホン系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスチレン系、ポリビニルクロライド系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン系の化合物及びこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上である請求項1〜8のいずれか1つに記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項10】
前記輝度向上用光学フィルムの全体に対する前記ドーパントの含有量は0.1重量%〜50重量%である請求項1〜9のいずれか1つに記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項11】
前記輝度向上用光学フィルムの全体に対する前記ドーパントの含有量は1重量%〜35重量%である請求項10に記載の輝度向上用光学フィルム。
【請求項12】
高分子化合物にドーパントを均一に混合してドーパントの含有量が異なる2以上のフィルム用混合材料をそれぞれ調製し、
前記形成された2以上のフィルム用混合材料を押出成形法を利用して薄膜状に積層し、
前記積層された薄膜を冷却及び熱延伸することを含む輝度向上用光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
押出成形法でT−ダイを用いる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2以上のフィルム用混合材料のうち1つは、ドーパントを含有しない請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記2以上のフィルム用混合材料を、ドーパント含有量が大きい順序又は小さい順序で薄膜状に積層する請求項12〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
熱延伸を、少なくともトランスバースダイレクション及びマシンダイレクションで2回行う請求項12〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
熱延伸において、ドーパント含有量が異なる2以上のフィルム間でドーパントを移動させて、フィルムの厚さ方向に漸次の濃度勾配をもたせる請求項12〜16のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−184842(P2006−184842A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97389(P2005−97389)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】