説明

輪郭形状測定機

【課題】測定から解析を含めた一連の動作の自動化を可能とした輪郭形状測定機を提供する。
【解決手段】測定マクロの実行と解析マクロの実行の間に、過去の測定によって取得した形状データと、新しく測定した形状データとを比較してその偏差を算出し、解析マクロ実行時にこの偏差の修正を行うベストフィット処理をする手段を設け、新しく測定した形状データを解析する解析マクロの基準点を過去の測定に使用した基準点と一致させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪郭形状測定機に関するものであり、特に、同一形状の被測定物を複数個測定する場合に、測定から解析を含む一連の動作を自動的に行うようにして、被測定物の評価を効率よく行うことを可能にする輪郭形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
スタイラスを被測定物表面に接触させてトレースし、その輪郭形状を測定する輪郭形状測定機において、同一形状の被測定物を複数個測定する場合、それら複数個の被測定物の測定条件に合わせて、測定動作、及び解析動作をそれぞれ測定マクロ、解析マクロとしてコンピュータ上のファイルとして保存しておき、これ等のファイルを実行することにより、測定動作及び解析動作を自動化し、被測定物の評価時間の短縮を図っている。
【特許文献1】特開2007−121146号公報
【特許文献2】特開平10−274521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の輪郭形状測定機では、測定終了後に解析動作を行う際、測定者が解析マクロ実行の基準点を指定する必要があり、測定から解析を含めた一連の動作が自動化された輪郭形状測定機知られていなかった。
【0004】
本発明に係る輪郭形状測定機は、上記課題を解決するためになされたもので、測定マクロの実行と解析マクロの実行の間にベストフィット処理を加え、過去の測定によって取得した形状データと、新しく測定した形状データとを比較してその偏差を算出し、解析マクロ実行時にこの偏差を最小にするように新しく測定した形状データの補正を行うことによって、新しく測定した形状データを解析する解析マクロの基準点を過去の測定に使用した基準点と一致させるようにし、測定から解析を含めた一連の動作の自動化を可能とした輪郭形状測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
スタイラスを被測定物表面に接触させてトレースし、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定機を使用した輪郭形状測定機であって、
スタイラスを被測定物の表面に沿って一定方向に走査して走査データを生成する測定装置と、
該測定装置が出力する走査データを処理して輪郭形状テータを生成する制御・操作ユニットと、
該制御・操作ユニットが処理した測定データを取得して、該輪郭形状のデータを予め解析マクロとして記憶しておいた手順に従って解析して該輪郭形状の評価を行なう解析手段と、同一形状の被測定物を複数個測定する場合に、2個目以降の測定において、1個目に生成した輪郭形状データと2個目以降の測定で生成した輪郭形状データを比較して偏差値を算出する比較手段と、算出した偏差値を最小にするよう2個目以降の輪郭形状データを修正するベストフィット処理手段とを備える解析装置と、を有することを特徴とする輪郭形状測定機を提供する。
【0006】
具体的には、該解析装置は実質的にパーソナルコンピュータであり、該解析マクロは、該パーソナルコンピュータに接続された記憶装置に記憶されたプログラムファイルとすることができる。
【0007】
又、2個目の測定による輪郭形状データの生成が行なわれた後に、自動的に該ベストフィット処理を実行し、更に該解析マクロを実行するように構成することができる。
【0008】
さらに又、1個目の測定での輪郭形状データを、該2個目以降の被測定物の輪郭形状の測定を開始する前に、該解析装置に読み込ませることができる。
【0009】
さらに、該解析装置は、測定条件、測定手順、測定した形状データ及び解析手順を、関連付けられたファイルとして保存する手段を有し、さらに、該ファイルを選択する際にプレビュー表示する手段を有し、測定者が必要とする測定条件、測定手順及び解析手順を容易に選択する手段を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定終了後に解析動作を行う際に、その都度測定者が解析マクロの基準点を指定する必要がなくなり、測定から解析を含めた一連の動作として自動化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る輪郭形状測定機の一実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、輪郭形状測定器10は測定装置12と、制御・操作ユニット14と、解析装置16と、記録装置18とから構成されている。測定装置12及びそれに関連する制御・操作ユニット14の機能は、図2に示すように、輪郭形状測定部102、測定値記憶部104、測定装置制御部106、輪郭形状測定部102による測定値に所定の演算処理を施すCPU108、演算結果及び演算のための中間データを保存するデータ保存部110、CPU108の動作プログラムを記憶しておくプログラム記憶部112、測定者が測定器の操作のために入力をする操作・入力部114を有している。また、制御・操作ユニット14は、解析装置12に対して測定データを提供し、解析装置から測定装置に対する制御の情報を受け取るためのインタフェース部116も備えている。
【0013】
前記解析装置16は実質的にパーソナルコンピュータであってもよく、制御・操作ユニット14との間でデータ乃至情報の授受を行うためのインタフェース部と、記録装置18との間で情報の授受を行う記録装置インタフェース部とを備えている。
【0014】
図1において、測定装置12は、被測定物(図示せず)を載置する定盤26と、該定盤上の被測定物表面に接触するスタイラス20を支持し、その上下方向の変位量を電気的な信号として検出する検出器22と、検出器22を支持して図面で見て左右方向に移動させる送り装置24と、定盤26上に立設されて送り装置24を上下方向に移動可能に支持するコラム28とからなっている。
【0015】
制御・操作ユニット14は、測定装置制御信号ケーブル30を介して測定装置12の測定動作の制御を行う機能を有しており、又、スタイラス20の上下方向の変位が検出器22によって変換された電気信号を、検出信号ケーブル32を介して取り込んで測定データとして処理し、このデータと、送り装置24による検出器の移動データと組み合わせて、被測定物の輪郭形状を表すデータとして演算する。演算結果はデータ保存部110に保存することができ、又、インタフェース部116を通じて解析装置16に提供することもできる。
【0016】
次に、図3を参照して測定、解析の手順について説明をする。図3は従来の輪郭形状の測定、解析の手順を示すフロー図であり、以下のような手順で実行される;
(1)測定条件を設定する(ステップS1010)
(2)制御・操作ユニットを操作して測定を開始する(ステップS1020)
(3)設定された条件に従って測定が行われる(ステップS1030)
(4)測定の終了点まで進んで、測定が終了する(ステップS1040)
(5)解析条件を設定する(ステップS1050)
(6)解析装置を操作して解析を開始する(ステップS1060)
(7)設定された条件に従って解析が行われる(ステップS1070)
(8)解析が終了する(ステップS1080)
ここで、上記(1)から(4)までが形状測定に関するステップであり、(5)から(8)が解析に関するステップである。
【0017】
輪郭形状の測定における解析は、測定した形状データから被測定物の形状品質を、公的な規格や、個別に設定された基準に対して評価するための指標を求めるものである。以下の段落で例として用いる形状について説明すると、鍔のある容器のような物品の断面形状の測定結果を例にしており、鍔から計った容器の深さが想定されている。図4(c)の解析線L1を回帰直線として求め、この解析線L1から容器の底に設定した解析点A1までの距離D1を求めることになる。
【0018】
上記(5)の条件の設定は、被測定物がそれぞれ異なる形状の場合は勿論のこと、大量生産品のような同一形状の複数の被測定物を連続的に測定する場合にも、個々の被測定物に対して解析の条件を設定する必要がある。それを図4(a)〜図4(c)と図5を用いて説明する。
【0019】
図4(a)〜図4(c)に示す例では、以下のような手順で、図4(c)の解析線L1と解析点A1の距離D1を求める。即ち;
(1)図4(a)のように、測定された形状データに対して、P1〜P6の6つの点を指定する。
(2)図4(b)のように、指定された点P1〜P6から3つの区間S1〜S3を判定する。
(3)図4(c)のように、区間S1と区間S2から解析線L1を求め、更に、区間S3の範囲から解析点A1を求める。
(4)解析線L1と解析点A1との距離D1を求める。
【0020】
本発明においては、図5(a)〜図5(c)に示す手順でベストフィット処理を行う。ベストフィットとは、2つの形状の間で形状偏差の二乗平均平方和や、形状偏差の最大値などの指標が最小となるように、基準に対する位置を決定するフィッティング手法である。2次元の点群データ同士であれば、単純に自由度は3(回転方向、水平方向、鉛直方向)であるが、例えば3次元的に射影を考慮したフィッティングであってもよい。
【0021】
図5(a)〜図5(c)において、X軸は測定装置の機械座標系の水平方向(スタイラスのトレース方向)であり、Z軸は同じく上下方向である。また、測定形状F1が1個目、F2が2個目の測定結果であるとする。一般に、同一形状の被測定物に関する測定であっても、測定装置12へ被測定物を載置するときのずれや、測定開始位置のずれがあり、測定された形状データは図5(a)に示すF1とF2のように一致しない。
【0022】
例えば、水平方向のみをフィッティング対象とし、垂直方向を拘束した状態とすれば、偏差の二乗和が最小になるのは図5(b)に示すような位置となる。また、図5(b)のような状態であれば、垂直方向のみをフィッティング対象すれば、F1に対するF2の偏差値は最小となる。このようにして測定結果F2をF1に重ね合わせれば、解析のために設定する点P1〜P6の座標はほぼ一致することとなるので、解析の条件を設定し直す必要がなくなる。
【0023】
なお、ベストフィットのアルゴリズムは、特定のアルゴリズムに限定されるものではなく、被測定物の形状の特性に応じて適切なアルゴリズムを採用することが望ましい。
【0024】
図6は、同一形状の複数の被測定物を連続的に測定、解析する場合や、過去に測定実績のある被測定物の測定、解析の場合に、形状測定ステップが終了した後に、上記のようなベストフィット処理を自動的に実行し、被測定物ごとに解析条件設定(図3のS1050)を行わずに、解析処理までを自動的に行うようにした場合のフロー図である。
【0025】
すなわち、以下のような手順で測定、解析が行われる;
(1)過去(または1個目)の測定形状を解析装置に取り込ませる(S2010)。
(2)被測定物を測定装置の載置台にセットし、スタイラスを測定開始位置へ移動する(S2020)。
(3)測定マクロを実行する(S2040)。
(4)ベストフィット処理を行う(S2040)。
(5)解析マクロを実行する(S2050)。
【0026】
以上説明した通り、複数の同一形状の被測定物を測定する際に、新しい形状測定結果を過去の形状測定結果に対してベストフィットする処理を行うことにより、形状測定から解析までの一連の手順を自動的に実行させることが可能となり、被測定物の形状評価を効率よく行うことができるようになる。
【0027】
また、解析装置を、測定条件、測定手順、測定した形状データ及び解析手順を、関連付けられたファイルとして保存する手段を有するようにして、後でそのファイルを選択する際にプレビュー表示できるようにすることが望ましい。このようにすることにより、形状測定、解析を行う際に、測定条件のパラメータを一つひとつ確認することなく、適切なファイルを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の輪郭形状測定機の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す実施形態の機能ブロック図である。
【図3】従来の輪郭形状の測定、解析のフロー図である。
【図4】輪郭形状測定機における解析の説明図である。
【図5】ベストフィットの説明図である。
【図6】本発明に係る輪郭形状の測定、解析のフロー図である。
【図7】輪郭形状測定機の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
10 輪郭形状測定機
12 測定装置
14 制御・操作ユニット
16 解析装置
18 記録装置
20 スタイラス
22 検出器
24 送り装置
26 定盤
28 コラム
30 測定装置制御信号ケーブル
32 検出信号ケーブル
102 輪郭形状測定部
104 測定値記憶部
106 測定装置制御部
108 CPU
110 データ保存部
112 プログラム記憶部
114 操作・入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイラスを被測定物表面に接触させてトレースし、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定機であって、
該輪郭形状測定機は、
スタイラスを被測定物の表面に沿って一定方向に走査して走査データを生成する測定装置と、
該測定装置が出力する走査データを処理して輪郭形状テータを生成する制御・操作ユニットと、
該制御・操作ユニットが処理した測定データを取得して、該輪郭形状のデータを予め解析マクロとして記憶しておいた手順に従って解析して該輪郭形状の評価を行なう解析手段と、同一形状の被測定物を複数個測定する場合に、2個目以降の測定において、1個目に生成した輪郭形状データと2個目以降の測定で生成した輪郭形状データを比較して偏差値を算出する比較手段と、算出した偏差値を最小にするよう2個目以降の輪郭形状データを修正するベストフィット処理手段とを備える解析装置と、
を有することを特徴とする輪郭形状測定機。
【請求項2】
該解析装置は実質的にパーソナルコンピュータであることを特徴とする、請求項1に記載の輪郭形状測定機。
【請求項3】
該測定マクロの実行が終了した後、該ベストフィット処理を実行し、更に該解析マクロを実行するように構成したことを特徴とする請求項1乃至2に記載の輪郭形状測定機。
【請求項4】
該1個目に測定した形状データを、該2個目以降の被測定物の輪郭形状の測定を開始する前に、該解析装置に読み込ませることを特徴とする請求項1乃至3に記載の輪郭形状測定機。
【請求項5】
該解析装置は、測定条件、測定手順、測定した形状データ及び解析手順を、関連付けられたファイルとして保存する手段を有し、さらに、該ファイルを選択する際にプレビュー表示する手段を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載の輪郭形状測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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