説明

輸液ポンプ

【課題】輸液チューブが押圧される箇所を自動的に移動させて、輸液チューブの劣化防止と長時間に渡る液体移送を可能とする。
【解決手段】主回転軸31によって回転自在に軸支される主ローラ32と、主ローラの外周面に沿って設けられると共に主回転軸と平行な複数の副回転軸33によって夫々回転自在に軸支され、且つ外周面の一部を主ローラの外周面から外径方向へ突設させた複数の副ローラ34と、を備え、各副ローラの外径方向への突出部分の外周面間に跨って輸液チューブを添設することにより、主ローラの回転時に公転しながら自転する各副ローラにより輸液チューブを圧縮変形させて輸液チューブ内の液体を一方向へ移送する輸液ポンプ20であって、主ローラの上流側、又は下流側の少なくとも一方に、輸液チューブをベース部材22に対して相対的に移動させるチューブ移動機構40を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬液や血液等の液体を移送する際に用いられる輸液ポンプに関し、特に輸液チューブ内の液体を移送するに際し、回転するローラにより輸液チューブを押圧する回転ローラ方式、及び出没動作するフィンガにより輸液チューブを順次押圧するフィンガ方式の輸液ポンプを連続して運転する際に、輸液チューブの劣化を防止する輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性のある輸液チューブを外部から押圧して圧縮変形させることにより、輸液チューブ内の液体を連続的に移送する輸液ポンプが知られている。
例えば、特許文献1には、回転駆動される主ローラの外周面から外径方向へ突設させた複数の副ローラを有する回転ローラ型の輸液ポンプが記載されている。この輸液ポンプにおいては、主ローラの回転に伴って一定方向に移動する副ローラが輸液チューブを押圧し、連続的に液体を移送する。
また、特許文献2には、輸液チューブを押圧する複数のフィンガを備えたフィンガ型の輸液ポンプが記載されている。この輸液ポンプにおいては、夫々のフィンガを出没動作させて、上流から下流に向けて輸液チューブ側面を順次押圧することにより、連続的に液体を移送する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2記載の輸液ポンプにおいては、輸液ポンプに対して輸液チューブが相対的に移動せず、輸液チューブの特定の箇所のみが押圧されて劣化するという問題がある。また、輸液チューブが劣化すると、径が変化して輸液量が変動するため、輸液チューブが押圧される部分を変更する必要がある。このため、一定時間毎に輸液ポンプを停止しなければならず、数日間に渡る連続運転が事実上不可能であるという問題があった。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、輸液チューブが押圧される箇所を順次移動させることにより、輸液チューブの劣化を防止し、長時間に渡る液体移送を可能とした輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ベース部材と、ベース部材に設けた主回転軸によって回転自在に中心部を軸支されると共に駆動源によって回転駆動される主ローラと、前記主ローラの外周縁に沿った側面に所定の周方向配置にて配置されると共に前記主回転軸と並行な複数の副回転軸によって夫々回転自在に軸支され、且つ外周面の一部を該主ローラの外周面から外径方向へ突設させた複数の副ローラと、を備え、前記各副ローラの外径方向への突出部分の外周面間に跨って前記輸液チューブを添設することにより、前記主ローラの回転時に公転しながら自転する前記各副ローラにより前記輸液チューブを圧縮変形させて該輸液チューブ内の液体を一方向へ移送する輸液ポンプであって、前記主ローラの上流側、又は下流側の少なくとも一方に、前記輸液チューブを前記ベース部材に対して相対的に移動させるチューブ移動機構を配置した輸液ポンプを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、ベース部材と、該ベース部材に配置されて輸液チューブ外面を支持するガイドと、前記輸液チューブを間に挟んで前記ガイドと対向配置されると共に該輸液チューブの長手方向に沿って隣接配置され、且つ該輸液チューブに向けて個別に出没する複数のフィンガと、を備え、夫々の前記各フィンガを駆動源により順次出没させて前記ガイドとの間で前記輸液チューブを押圧することにより、該輸液チューブ内の液体を移送する蠕動式の輸液ポンプであって、前記フィンガの上流側、又は下流側の少なくとも一方に、前記輸液チューブを前記ベース部材に対して相対的に移動させるチューブ移動機構を配置した輸液ポンプを特徴とする。
【0005】
請求項3に記載の発明は、前記チューブ移動機構は、回転しつつ前記輸液チューブを挟圧して移動させる偏心ローラ対を備えた請求項1又は2記載の輸液ポンプを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記輸液チューブに刻印を行う刻印装置を備えた請求項1乃至3の何れか一項記載の輸液ポンプを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記刻印装置は、前記輸液チューブに所定の時間間隔にて刻印する請求項4記載の輸液ポンプを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記刻印装置が前記輸液チューブに刻んだ刻印を読み取る読取装置を備えた請求項4又は5記載の輸液ポンプを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベース部材に対して輸液チューブを相対的に移動させる輸液チューブ移動機構を備えたので、輸液チューブの劣化を防止し、長時間に渡る連続運転が可能な輸液ポンプ及び輸液装置を提供することができる。が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る輸液装置の概略構成図である。
【図2】第一の実施形態に係る輸液ポンプの拡大正面図である。
【図3】図2のチューブ移動機構部分の拡大図である。
【図4】輸液ポンプと輸液チューブとの相対的な位置関係を示す図であり、(a)は輸液チューブ使用開始直後の状態を示す図であり、(b)は輸液チューブ使用限界近辺まで使用した状態を示す図である。
【図5】第二の実施形態に係る輸液ポンプの要部拡大図である。
【図6】図6(a)乃至(d)は、フィンガと偏心ローラ対による輸液チューブの送り出し動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態について図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る輸液装置の概略構成図である。図2は、本実施形態に係る輸液ポンプの拡大正面図である。本実施形態に係る輸液ポンプは、輸液チューブをその長手方向に移動させる輸液チューブ移動機構を備えた点に特徴がある。
本実施形態に係る輸液装置1は、可撓性を有する樹脂製の輸液チューブ10内の液体(輸液)を移送する輸液ポンプ20と、輸液ポンプ20の動作を制御するコントロールボックス70と、を備える。輸液チューブ10の中間部は輸液ポンプ20に装着されており、液体移送方向からみて輸液チューブ10の上流側の端部には輸液バッグ81(図4参照)が接続され、下流側の端部には輸液針82(図4参照)が接続される。輸液ポンプ20は、輸液バッグ内81の液体を輸液針82に向けて定量移送する。なお、本実施形態において「上流」、「下流」は、輸液ポンプ20に対する液体移送方向を基準として表現する。
コントロールボックス70の筐体71内部には、輸液ポンプ20の動作を制御する制御部(不図示)及び警報音等を発生させるスピーカ(不図示)が内蔵されており、筐体71の正面には、輸液ポンプ20の動作を設定したり、輸液ポンプ20にセットされた輸液チューブ10の情報を入力したりするコントロールパネル72、及び設定内容及び動作状況等を表示する表示部73が配置されている。
【0009】
図2に示すように、輸液ポンプ20は、筐体21の正面に位置するベース部材22に配置されて、液体を移送するポンプ部30と、ポンプ部30の上流側に配置されて輸液チューブ10をベース部材22に対して相対的に移動させるチューブ移動機構40と、ポンプ部30の下流側に配置されて輸液チューブ10の表面に付された目盛や刻印を読み取る読取装置50及び輸液チューブ10の表面に刻印を付す刻印装置60と、を備えている。また、筐体71の内部にはポンプ部30及びチューブ移動機構40の駆動源となるモータ(不図示)が配置されている。
ポンプ部30は、ベース部材22に設けた主回転軸31によって回転自在に中心部を軸支されると共にモータによって矢印A方向に回転駆動される主ローラ32と、主ローラ32の外周縁に沿った側面に所定の周方向配置にて設けられると共に主回転軸31と平行な複数の副回転軸33によって夫々回転自在に軸支され、且つ外周面34aの一部を主ローラ32の外周面32aから外径方向へ突設させた複数の副ローラ34と、を備えている。複数の副ローラ34の外周面34aに跨って対向する位置には、主ローラ32と同心の円弧形状をなすポンプ部ガイド35が配置されている。
副ローラ34は、外周面34a間に跨って輸液チューブ10を添設した状態にて主ローラ32を回転させたときに、主回転軸31回りに公転しながら、輸液チューブ10を外径方向に向かって押圧して、輸液チューブ10内の液体を連続的に下流側へと移送する。また副ローラ34は、輸液チューブ10と接触したときに矢印B方向に自転し、摩擦による輸液チューブ10の劣化を最小限に止める。
ポンプ部ガイド35は、副ローラ34側が開口し、その他の部分において輸液チューブ10の外面を被覆する形状である。ポンプ部ガイド35は輸液チューブ10を保護するとともに、外周面34aとの間で輸液チューブ10を挟圧して、輸液チューブ10内の液体を下流側に移送する役割を果たす。また、副ローラ34側以外の部分を被覆することにより、後述する偏心ローラ対43が動作したときの輸液チューブ10の逃げを防止している。なお、ポンプ部ガイド35は、主回転軸31に対して近接又は離間する方向に移動可能に構成されており、輸液チューブ10の装着を容易にしている。
【0010】
チューブ移動機構について図3に基づいて説明する。図3は、図2のチューブ移動機構部分の拡大図である。
チューブ移動機構40は、対向配置された2つの偏心ローラ41を有する偏心ローラ対43と、偏心ローラ対43を回転駆動するモータ(駆動源:不図示)と、を備えている。偏心ローラ41は、ポンプ部30の上流側、具体的には、副ローラ34が輸液チューブ10と接触する部位の直上流に配置されており、夫々偏心軸42によって回転自在に軸支されている。
偏心ローラ41間に輸液チューブ10を装着した状態にて、偏心ローラ対43を液体の移送方向に沿った方向(矢印C方向)に回転させると、偏心ローラ対43が輸液チューブ10に撓み11を発生させる。
【0011】
ここで、偏心ローラ対43の動作タイミングについて説明する。副ローラ34は、主ローラ32の回転により、一定速度にて主回転軸31周りを公転している。制御部は、輸液チューブ10の弾力性の範囲内で発生した撓み11を副ローラ34が巻き込むように制御している。すなわち制御部は、副ローラ34が公転して輸液チューブ10と接触する直前に撓み11を形成するように、偏心ローラ対43の動作を制御している。
なお、副回転軸33に板バネを組み込む等により、図2の矢印B方向に回転する際に摩擦力による応力を発生させるようにしてもよい。応力により、撓み11を副ローラ34に確実に巻き込ませることができるようになる。
【0012】
撓み11が副ローラ34に巻き込まれると、副ローラ34の公転移動により輸液チューブ10が下流側へと移動し、輸液チューブ10とベース部材22の相対的な位置関係が変化する。このように、本実施形態においては、副ローラ34が押圧する輸液チューブ10の部位を自動的に移動させることができるので、輸液チューブ10の特定箇所のみが押圧されることによる劣化を防止し、輸液ポンプ20を長時間に渡って連続的に使用することが可能となる。
なお、偏心ローラ対43を連続的に動作させてもよいし、間欠的に動作させてもよい。つまり、各副ローラ34が新たに輸液チューブ10と接触する度に偏心ローラ対43を動作させてもよいが、例えば、主ローラ32が所定数回転したときに偏心ローラ対43を1回動作させるというように、偏心ローラ対43が主ローラ32の回転に対して間欠的に動作するように制御してもよい。このとき、偏心ローラ対43の動作量(動作回数)は、偏心ローラ対43が1回動作したときに送り出される輸液チューブ10の量に応じて決定することができる。例えば、輸液チューブ10の1回当たりの送り出し量が比較的多い場合には、偏心ローラ対43の動作回数を少なくし、送り出し量が比較的少ない場合には、偏心ローラ対43の動作回数を多くするように制御する。
さらに、輸液ポンプ20による液体の移送が間欠的であってもよい場合には、各偏心ローラ41が互いに最も接近したときに、輸液チューブ10が完全に押しつぶされるようにしてもよい。この場合、輸液チューブ10を確実に送り出すことができる。
【0013】
読取装置50及び刻印装置60について説明する。
輸液チューブ10の長手方向中間部の所定範囲には、予め一定の間隔にて目盛12が目視可能に付されている(図4参照)。目盛12は、安全に輸液ポンプ20を使用できる区間であることを示している。輸液チューブ10の長手方向両端部側に位置する目盛12は、輸液チューブ10の使用限界を示す識別印13である。
読取装置50は、ポンプ部30の下流側に配置されて目盛12を読み取る。読取装置50としては、例えばフォトダイオードやレーザスキャナ等を用いることができる。
制御部は、読み取った目盛12の数及び時間等に基づいて、輸液チューブ10が所望の速度で移動しているかを確認することができる。輸液チューブ10が所望の速度にて移動していない場合には、主ローラ32に対する偏心ローラ対43の動作回数を増減させて、所定の速度で輸液チューブ10が移動するように制御する。従って、輸液チューブ10の表面状態や部品精度のばらつきによる移動速度変動を起こさないように制御できる。
また、目盛12に合わせて数値等が付されている場合、制御部は残りの使用可能時間を確認することができる。また、目盛12は目視可能であるので、輸液チューブ10の使用開始からの経過時間及び輸液チューブ10の残余の使用可能時間を大まかに確認することができる。また、読取装置50が識別印13を読み取った場合、制御部は、輸液チューブ10の使用可能限界に至ったとして、警告を発するように制御する。例えば、筐体71内に収容されたスピーカから音を発したり、表示部へ表示する等の制御をして外部に報知することができる。
【0014】
刻印装置60は、読取装置50の下流側に配置されており、所定の時間間隔にて輸液チューブ10に刻印61を施すよう、制御部にて制御されている。刻印装置60としては、例えば輸液チューブ10の表面を熱により融かして刻印する熱刻印装置を用いることができる。刻印61は、輸液チューブ10が使用済みであることを示す。また、目盛12が加熱すると透明になるインクで描かれている場合は、目盛12をヒータにて熱して消去することにより、目盛12のない部分における使用を防止する構成としてもよい。
読取装置50が、刻印61の施された部分を読み取った場合、例えば刻印61の存在により目盛12を正常に読み取ることができず、輸液チューブ10が使用済みであると判断できる。この場合、制御部は、輸液チューブ10が使用済みである旨の警告を発するように制御する。
また、刻印装置60は、輸液チューブに対して、刻印61を目視確認することができるように付することが望ましい。例えば、使用可能限界を超えていない輸液チューブ10を一端輸液ポンプ20から取り外して再使用する場合、未使用部分をポンプ部30に装着することにより、輸液チューブ10を無駄なく使用することかできる。
もちろん、目盛12の付与されていない従来の輸液チューブを本発明に係る輸液ポンプ装置に装着して、刻印装置60により刻印しながら使用することも可能である。
【0015】
本実施形態に係る輸液ポンプと輸液チューブとの相対的な位置関係について図4に基づいて説明する。図4は、輸液ポンプと輸液チューブとの相対的な位置関係を示す図であり、(a)は輸液チューブ使用開始直後の状態を示す図であり、(b)は輸液チューブを使用限界近辺まで使用した状態を示す図である。
輸液チューブ10の一端部には、薬液の入った輸液バッグ81が接続され、他端部には輸液針82が接続されている。輸液チューブ10の中間部には点滴筒83が配置されている。点滴筒83よりも輸液針82側における輸液チューブ10には、目盛12が付されており、目盛12上に輸液ポンプ20が取り付けられている。
(a)において、輸液チューブ10に対する輸液ポンプ20の移動方向(図中上方向)には目盛12が付されており、未だ使用可能限界に至っていないので、輸液装置1は液体の移送を行いつつ、輸液ポンプ20を移動させていく。(a)に示す状態から、輸液ポンプが輸液チューブ10に対し相対的に移動すると、(b)に示す状態となる。輸液チューブ10の使用済み部位には、刻印61が付されている。読取装置50が輸液チューブ10の使用終了地点を示す識別印13bを読み取ると、使用可能限界に至ったとして、警告を発する。
【0016】
なお、図4は、本実施形態に係る輸液ポンプの使用方法及び場所を限定する趣旨ではない。例えば、図1に示すように、輸液ポンプをテーブル等の上に固定した状態にて使用してもよいし、特許文献3に記載されているようにスタンドから吊り下げて使用してもよいし、特許文献4に記載されているように専用のベストに装着して使用してもよい。
なお、偏心ローラ対43をポンプ部30の下流側に配置してもよいし、輸液ポンプに対する液体の移送方向と輸液チューブの移送方向とを異ならせてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、ベース部材に対して輸液チューブを相対的に移動させる輸液チューブ移動機構を備えたので、輸液チューブの劣化を防止し、長時間に渡る連続運転が可能な輸液ポンプ及び輸液装置を提供することができる。
【0017】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態について図5に基づいて説明する。図5は、本実施形態に係る輸液ポンプの要部拡大図である。本実施形態においては、チューブ移動機構を、輸液チューブの送出方向から見てポンプ部の下流側に配置した点に特徴がある。以下、第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
輸液ポンプ100は、複数のフィンガを備えたいわゆるフィンガ型のポンプであり、ポンプ部110とチューブ移動機構40と読取装置50と刻印装置60とがベース部材101に配置されている。
ポンプ部110は、ベース部材101に配置されて輸液チューブ10の外面を支持するガイド112と、輸液チューブ10を間に挟んでガイド112と対向配置されると共に輸液チューブ10の長手方向に沿って隣接配置され、且つ輸液チューブ10に向けて個別に出没する複数のフィンガ111と、を備えている。本実施形態における輸液ポンプ100は、夫々の各フィンガ111を駆動源により順次出没させてガイド112との間で輸液チューブ10を押圧することにより、輸液チューブ10内の液体を移送する蠕動式の輸液ポンプである。また、ポンプ部110は、フィンガ111の一端部と当接して、他端部側を輸液チューブ10に向けて出没動作させるカムシャフト113と、カムシャフト113を回転させる駆動源としてのモータ(不図示)と、を備える。
【0018】
カムシャフト113は、各フィンガ111に対応した複数の偏心カム114を備えている。偏心カム114に当接する各フィンガ111は、カムシャフト113の回転によって夫々出没動作し、輸液チューブ10を順次押圧する。
ガイド112は、輸液チューブ外面を支持する部材であり、突出したフィンガ111との間で輸液チューブ10を挟圧して、輸液チューブ10を弾性変形させる。カムシャフト113とガイド112との働きにより、輸液チューブ10に蠕動運動を発生させて、輸液チューブ10内の液体を移送する。
また、液体移送方向から見てフィンガ111の上流側には、チューブ移動機構40が配置されている。
チューブ移動機構40は、第一の実施形態と同様に、偏心ローラ41を備えた偏心ローラ対43と、偏心ローラ対43を回転駆動させるモータ(駆動源:不図示)と、を備えている。偏心ローラ41は、夫々偏心軸42によって回転自在に軸支されている。
本実施形態における偏心ローラ対43は、その回転によって輸液チューブ10を挟圧し、輸液チューブ10を偏心ローラ対43の回転方向(矢印D方向)に、輸液チューブ10の弾性変形可能な範囲内で延伸変形させる。
【0019】
ここで、偏心ローラ対43とフィンガ111の動作関係について図6に基づいて説明する。図6(a)乃至(d)は、フィンガと偏心ローラ対による輸液チューブの送り出し動作を説明するための模式図である。
(a)乃至(d)に示すように、フィンガ111は夫々出没動作し、順次輸液チューブを押圧することにより、輸液チューブに蠕動運動を発生させて、輸液チューブ10内部の液体を下流側(図中左方向)に移送している。
(a)において、偏心ローラ対43は輸液チューブ10を挟圧しておらず、偏心ローラ対43に最も近いフィンガ111aは、輸液チューブ10から離間した状態である。
この状態から偏心ローラ対43が輸液チューブ10を挟圧しながら回転して、輸液チューブ10を図中右方向(矢印E1方向)へ延伸変形させるタイミングでフィンガ111aが突出する。フィンガ111aが輸液チューブ10をガイド112に押しつけて(c)の状態となる。この状態では、輸液チューブ10の長手方向両端部に位置するフィンガ111a、及びフィンガ111bとの間において、輸液チューブ10に矢印E2方向の応力が働き、延伸変形された状態を保持する。このとき偏心ローラ対43は、輸液チューブ10を挟圧しない位置まで回転している。
さらにフィンガ111が蠕動動作して、フィンガ111bが輸液チューブ10から離間すると、輸液チューブ10に働いていた応力が開放され、輸液チューブ10が図中右方向(矢印E3方向)へ移動し、ベース部材101と輸液チューブ10の位置関係が相対的に変化する。(d)においてベース部材101を基準に観察すれば、輸液チューブ10は図中右側に移動することとなる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、ベース部材に対して輸液チューブを相対的に移動させる輸液チューブ移動機構を備えたので、輸液チューブの劣化を防止し、長時間に渡る連続運転が可能な輸液ポンプ及び輸液装置を提供することができる。
なお、本発明は、医療現場における点滴・輸液に限らず、液体を微量ずつ連続的に移送することが求められる分野においても使用可能な技術である。
【符号の説明】
【0021】
1…輸液装置、10…輸液チューブ、11…撓み、12…目盛、13、13b…識別印、20…輸液ポンプ、21…筐体、22…ベース部材、30…ポンプ部、31…主回転軸、32…主ローラ、32a…外周面、33…副回転軸、34…副ローラ、34a…外周面、35…ポンプ部ガイド、40…チューブ移動機構、41…偏心ローラ、42…偏心軸、43…偏心ローラ対、50…読取装置、60…刻印装置、61…刻印、70…コントロールボックス、71…筐体、72…コントロールパネル、73…表示部、81…輸液バッグ、82…輸液針、83…点滴筒、100…輸液ポンプ、101…ベース部材、110…ポンプ部、111、101a、101b…フィンガ、112…ガイド、113…カムシャフト、114…偏心カム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第3423633号
【特許文献2】特開平6−317257公報
【特許文献3】特許第3595135号
【特許文献4】特許第3260115号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、ベース部材に設けた主回転軸によって回転自在に中心部を軸支されると共に駆動源によって回転駆動される主ローラと、
前記主ローラの外周縁に沿った側面に所定の周方向配置にて配置されると共に前記主回転軸と並行な複数の副回転軸によって夫々回転自在に軸支され、且つ外周面の一部を該主ローラの外周面から外径方向へ突設させた複数の副ローラと、を備え、
前記各副ローラの外径方向への突出部分の外周面間に跨って前記輸液チューブを添設することにより、前記主ローラの回転時に公転しながら自転する前記各副ローラにより前記輸液チューブを圧縮変形させて該輸液チューブ内の液体を一方向へ移送する輸液ポンプであって、
前記主ローラの上流側、又は下流側の少なくとも一方に、前記輸液チューブを前記ベース部材に対して相対的に移動させるチューブ移動機構を配置したことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
ベース部材と、該ベース部材に配置されて輸液チューブ外面を支持するガイドと、前記輸液チューブを間に挟んで前記ガイドと対向配置されると共に該輸液チューブの長手方向に沿って隣接配置され、且つ該輸液チューブに向けて個別に出没する複数のフィンガと、を備え、夫々の前記各フィンガを駆動源により順次出没させて前記ガイドとの間で前記輸液チューブを押圧することにより、該輸液チューブ内の液体を移送する蠕動式の輸液ポンプであって、
前記フィンガの上流側、又は下流側の少なくとも一方に、前記輸液チューブを前記ベース部材に対して相対的に移動させるチューブ移動機構を配置したことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
前記チューブ移動機構は、回転しつつ前記輸液チューブを挟圧して移動させる偏心ローラ対を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
前記輸液チューブに刻印を行う刻印装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の輸液ポンプ。
【請求項5】
前記刻印装置は、前記輸液チューブに所定の時間間隔にて刻印することを特徴とする請求項4記載の輸液ポンプ。
【請求項6】
前記刻印装置が前記輸液チューブに刻んだ刻印を読み取る読取装置を備えたことを特徴とする請求項4又は5記載の輸液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239873(P2011−239873A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113230(P2010−113230)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】